把持装置
【課題】ワークの重さまたは硬さに応じた好適な把持力でワークを把持し得る把持装置を提供する。
【解決手段】把持装置1は、一対のアーム5によりワーク9を把持する。一対のアーム5は、それぞれアームベース5aを有し、一対のアームベース5aが近接及び離隔可能で、一対のアームベース5aの間隔が開閉機構3によって変えられる。一方のアーム5は、一対のアームベース5aの間にてアームベース5aに近接及び離隔可能に設けられる中間部材5bと、中間部材5bを他方のアーム5に向けて付勢する中間付勢部材と、中間部材5bに対して近接及び離隔可能に設けられかつワーク9に接触可能な接触部材5cと、中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材5cを他方のアーム5に向けて付勢する先端付勢部材とを有する。
【解決手段】把持装置1は、一対のアーム5によりワーク9を把持する。一対のアーム5は、それぞれアームベース5aを有し、一対のアームベース5aが近接及び離隔可能で、一対のアームベース5aの間隔が開閉機構3によって変えられる。一方のアーム5は、一対のアームベース5aの間にてアームベース5aに近接及び離隔可能に設けられる中間部材5bと、中間部材5bを他方のアーム5に向けて付勢する中間付勢部材と、中間部材5bに対して近接及び離隔可能に設けられかつワーク9に接触可能な接触部材5cと、中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材5cを他方のアーム5に向けて付勢する先端付勢部材とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のアームによってワークを把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の把持装置は、一対のアームと、一対のアームの間隔を変える開閉機構を有する。各アームは、開閉機構によって移動されるアームベースと、アームベースにリンク機構によって移動可能に取付けられる把持プレートと、把持プレートをアームに対して付勢するスプリングを有する。一対のアームを近接させ、把持プレートがワークに当り、把持プレートがスプリングの付勢力に抗して上方にかつアームベースに向けて移動し、把持プレートがスプリングの付勢力によってワークを把持する。
【0003】
特許文献2に記載の把持装置のアームは、アームベースと、アームベースにシーソー動作可能に取付けられるホルダと、ホルダの上部に取付けられる柔らかいゴム板と、ホルダの下部に取付けられる硬いゴム板を有する。アームによって複数段のワークを挟んだ場合、下段のワークが硬いゴム板によって保持され、上段のワークが柔らかいゴム板によって保持される。そのため把持装置は、複数段のワークを安定良く保持し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−149052号公報
【特許文献2】特開平2−81896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし把持装置は、重いワークを弱い把持力で把持した場合にワークを落とす場合がある。一方、柔らかいワークを強い把持力で把持した場合にはワークを破損させる場合がある。そのためワークの重さまたは硬さに応じた好適な把持力でワークを把持し得る把持装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの把持装置であることを特徴とする。一つの特徴によると把持装置は、一対のアームによりワークを把持する。一対のアームは、それぞれアームベースを有し、一対のアームベースが近接及び離隔可能で、一対のアームベースの間隔が開閉機構によって変えられる。少なくとも一方のアームは、一対のアームベースの間にてアームベースに近接及び離隔可能に設けられる中間部材と、中間部材を他方のアームに向けて付勢する中間付勢部材と、中間部材に対して近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な接触部材と、中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材を他方のアームに向けて付勢する先端付勢部材とを有する。
【0007】
したがって一対のアームを近接させると、接触部材がワークに当る。接触部材が先端付勢部材の付勢力に抗して力を受け、中間部材が中間付勢部材の付勢力に抗して力を受ける。先端付勢部材の付勢力と中間付勢部材の付勢力が異なるために、小さい付勢力に抗して中間部材と接触部材のいずれか一部材が先に移動し、小さい把持力によってワークを把持し得る小把持力状態が得られる。さらに一対のアームを近接させると、一部材の移動が規制されて他の部材が大きい付勢力に抗して移動して、大きい把持力によってワークを把持する大把持力状態が得られる。そのため把持装置は、小把持力状態において柔らかいワークを破損させることなく小さい把持力で把持でき、大把持力状態において重いワークを落とすことなく確実に把持し得る。
【発明の効果】
【0008】
したがって本発明によると把持装置は、ワークの重さまたは硬さに応じた好適な把持力によってワークを把持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】把持装置の斜視図である。
【図2】アームとワークの斜視図である。
【図3】小把持力状態におけるアームとワークの斜視図である。
【図4】大把持力状態におけるアームとワークの斜視図である。
【図5】把持装置の制御ブロック図である。
【図6】他の形態にかかる把持装置の一部概略上面図である。
【図7】図6の把持装置の小把持力状態における一部概略上面図である。
【図8】図6の把持装置の小把持力状態における一部概略上面図である。
【図9】図6の把持装置の大把持力状態における一部概略上面図である。
【図10】図6の把持装置の大把持力状態における一部概略上面図である。
【図11】図6の把持装置の大ワーク大把持力状態における一部概略上面図である。
【図12】他の形態にかかるアームの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの実施の形態を図1〜5にしたがって説明する。把持装置(搬送装置)1は、図1に示すようにベース2と一対のアーム5を有する。ベース2は、上下に延出する一対の柱2aと、柱2aの下部を連結する下梁2bと、柱2aの上部を連結する上梁2cと、各柱2aの下部から前方に延出する脚2dと、脚2dより高い位置において柱2aの後方に延出する台2fを有する。なお上下方向とは、重力方向であり、図1における上下方向である。前後方向は、把持装置1の走行方向であり、前方が図1の右方向、後方が図1の左方向である。左右方向は、把持装置1の走行方向に対して直交しかつ水平な方向である。
【0011】
脚2dの先端部下側には、図1に示すように車輪2eが転動可能に取付けられる。台2fの左右部下側には、車輪2gが転動可能に取付けられる。台2fにはバッテリ7と制御装置2iが搭載される。台2fの後部には、台2fから上方に延出するハンドル2hが設けられる。ハンドル2hには、操作盤2jが装着される。ベース2の前部には、リフタ6と開閉機構3が設けられる。
【0012】
リフタ6は、図1に示すように雄ねじ部材6aと雌ねじ部材6bとモータ6dを有する。雄ねじ部材6aは、上下方向に延出し、上下端部が上梁2cと下梁2bに軸回転可能に取付けられる。雌ねじ部材6bは、雄ねじ部材6aに螺合される。雌ねじ部材6bには、ブラケット6cを介して開閉機構3が取付けられる。モータ6dは、下梁2bに取付けられ、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材6aを軸回転させる。雄ねじ部材6aが軸回転することで雌ねじ部材6bが雄ねじ部材6aに沿って昇降する。
【0013】
開閉機構3は、図1に示すように機構ベース3aと雄ねじ部材3bを有する。機構ベース3aは、左右方向に延出し、左右端部が柱2aに上下方向に移動可能に取付けられる。機構ベース3aは、ブラケット6cによってリフタ6の雌ねじ部材6bに取付けられ、リフタ6によって昇降される。雄ねじ部材3bは、左右方向に延出し、左右端部が機構ベース3aに軸回転可能に取付けられる。
【0014】
開閉機構3は、さらに図1に示すように一対の雌ねじ部材3cとモータ3dを有する。雌ねじ部材3cは、雄ねじ部材3bに螺合される。モータ3dは、機構ベース3aに取付けられ、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材3bを軸回転させる。雄ねじ部材3bと一対の雌ねじ部材3cには、雄ねじ部材3bが軸回転することで一対の雌ねじ部材3cが近接・離隔するように雄ねじおよび雌ねじが形成される。
【0015】
アーム5は、図2に示すようにアームベース5aと中間部材5bと接触部材5cを有する。アームベース5aと中間部材5bと接触部材5cは、略板状であって起立されかつ並設される。アームベース5aは、前後方向に延出して、後部が開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。
【0016】
アームベース5aと中間部材5bは、図2に示すように中間リンク機構5dによって連結される。中間リンク機構5dは、上下に並設される中間リンク5d1,5d2を有する。中間リンク5d1,5d2の一端部は、アームベース5aに上下方向に回転可能に取付けられる。中間リンク5d1,5d2の他端部は、一端部よりも高い位置において中間部材5bに上下方向に回転可能に取付けられる。上下の中間リンク5d1,5d2は、アームベース5aの前部と、アームベース5aの後部の両方に設けられる。
【0017】
中間部材5bと接触部材5cは、図2に示すように先端リンク機構5eによって連結される。先端リンク機構5eは、上下に並設される先端リンク5e1,5e2を有する。先端リンク5e1,5e2の一端部は、中間部材5bに上下方向に回転可能に取付けられる。先端リンク5e1,5e2の他端部は、一端部よりも高い位置において接触部材5cに上下方向に回転可能に取付けられる。上下の先端リンク5e1,5e2は、中間部材5bの前部と、中間部材5bの後部の両方に設けられる。
【0018】
アーム5は、図2に示すように中間付勢部材5fと先端付勢部材5gを有する。中間付勢部材5fは、アームベース5aに取付けられる一端部と、一端部よりも上方において中間部材5bに取付けられる他端部を有する。中間付勢部材5fは、引っ張りばねであって、中間部材5bをアームベース5aに対して下方へかつ離隔する方向へ付勢する。
【0019】
先端付勢部材5gは、図2に示すように中間部材5bに取付けられる一端部と、一端部よりも上方において接触部材5cに取付けられる他端部を有する。先端付勢部材5gは、引っ張りばねであって、接触部材5cを中間部材5bに対して下方へかつ離隔する方向へ付勢する。
【0020】
先端付勢部材5gの付勢力は、中間付勢部材5fの付勢力より小さい。具体的には、先端付勢部材5gのばね定数が中間付勢部材5fのばね定数より小さい。そのため先端付勢部材5gの付勢力は、同じ長さ弾性変形された際の中間付勢部材5fの付勢力より小さい。したがって先端付勢部材5gが接触部材5cを水平方向へ付勢する付勢力は、中間付勢部材5fが中間部材5bを水平方向へ付勢する付勢力よりも小さい。
【0021】
中間部材5bとアームベース5aの間には、図2に示すように中間部材5bとアームベース5aの距離が所定値以下になったことを検知する中間部材用センサ4aが設けられる。中間部材用センサ4aは、スイッチセンサであって、中間部材5bがアームベース5aに対して近接することで中間リンク5d1,5d2もしくは中間部材5bに押されて検知信号を発信する。
【0022】
接触部材5cと中間部材5bの間には、図2に示すように接触部材5cと中間部材5bの距離が所定値以下になったことを検知する接触部材用センサ4bが設けられる。接触部材用センサ4bは、スイッチセンサであって、接触部材5cが中間部材5bに対して近接することで先端リンク5e1,5e2もしくは接触部材5cに押されて検知信号を発信する。
【0023】
中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bは、図5に示すように制御装置2iに電気的に接続される。制御装置2iには、操作盤2jとモータ3d,6dが電気的に接続される。操作盤2jには、ワークに対する情報等が作業者によって入力され、該情報に対応する情報信号を制御装置2iに発信する。制御装置2iは、操作盤2jからの情報信号と、中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bからの検知信号に基づいてモータ3d,6dを制御する。
【0024】
把持装置1によってワーク9を把持する場合は、図1,2に示すように車輪2eによって把持装置1を棚10の近傍に移動させる。操作盤2jを操作し、操作盤2jからの信号に基づいて制御装置2iがリフタ6を制御し、アーム5がワーク9の高さに移動する。ワーク9の硬さまたは重さなどの情報が作業者によって操作盤2jから入力される。
【0025】
制御装置2iは、操作盤2jから発信された情報信号に基づいてワーク9が柔らかいまたは軽いと判断すると、図2,3に示すように開閉機構3によって一対のアーム5を近接させる。接触部材5cがワーク9に接触し、接触部材5cが先端付勢部材5gの付勢力に抗して中間部材5bに向けて移動しかつ上昇する。
【0026】
先端付勢部材5gは、中間付勢部材5fよりも付勢力が小さく、中間付勢部材5fに比べて多く変形する。そのため接触部材5cの中間部材5bに対する移動量が中間部材5bのアームベース5aに対する移動量より大きくなる。図2,3に示すように接触部材5cがワーク9を把持し、ワーク9を持上げる。これによりワーク9は、棚10に対して持上げられる。
【0027】
図3に示すように接触部材5cまたは先端リンク機構5eが中間部材5bに当り、接触部材5cの中間部材5bへの移動が規制される。先端リンク機構5eが接触部材用センサ4bを押し、接触部材用センサ4bが検知信号を制御装置2iに発信する(図5参照)。制御装置2iは、接触部材用センサ4bからの検知信号に基づいて開閉機構3を制御して一対のアーム5の間隔を保持する。これにより一対のアーム5は、小さい把持力によってワーク9を把持する。
【0028】
制御装置2iは、操作盤2jからの情報信号に基づいてワーク9が重いまたは硬いと判断すると、図3,4に示すように開閉機構3によって一対のアーム5をさらに近接させる。これにより中間部材5bが中間付勢部材5fの付勢力に抗してアームベース5aに向けて移動しかつ上昇する。中間付勢部材5fは、先端付勢部材5gよりも付勢力が大きく、中間部材5bを強くワーク9に向けて付勢する。そのため接触部材5cがワーク9に強く当られ、接触部材5cがワーク9を強く把持する。
【0029】
図4に示すように中間部材5bは、中間部材5bまたは中間リンク機構5dがアームベース5aに当ってアームベース5aへの移動が規制される。中間リンク機構5dが中間部材用センサ4aを押し、中間部材用センサ4aが検知信号を制御装置2iに発信する(図5参照)。制御装置2iは、中間部材用センサ4aからの検知信号に基づいて開閉機構3を制御して一対のアーム5の間隔を保持する。これにより一対のアーム5は、大きい把持力によってワーク9を把持する。
【0030】
以上のように把持装置1は、図2に示すように一対のアーム5によりワーク9を把持する。一対のアーム5は、それぞれアームベース5aを有し、一対のアームベース5aが近接及び離隔可能で、一対のアームベース5aの間隔が開閉機構3によって変えられる。一方のアーム5は、一対のアームベース5aの間にてアームベース5aに近接及び離隔可能に設けられる中間部材5bと、中間部材5bを他方のアーム5に向けて付勢する中間付勢部材5fと、中間部材5bに対して近接及び離隔可能に設けられかつワーク9に接触可能な接触部材5cと、中間付勢部材5fの付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材5cを他方のアーム5に向けて付勢する先端付勢部材5gとを有する。
【0031】
したがって一対のアーム5を近接させると、接触部材5cがワーク9に当る。接触部材5cが先端付勢部材5gの付勢力に抗して力を受け、中間部材5bが中間付勢部材5fの付勢力に抗して力を受ける。先端付勢部材5gの付勢力と中間付勢部材5fの付勢力が異なるために、小さい付勢力に抗して中間部材5bと接触部材5cのいずれか一部材(接触部材5c)が先に移動し、小さい把持力によってワーク9を把持し得る小把持力状態が得られる。さらに一対のアーム5を近接させると、一部材(接触部材5c)の移動が規制され、他の部材(中間部材5b)が大きい付勢力に抗して移動して、大きい把持力によってワーク9を把持する大把持力状態が得られる。そのため把持装置1は、小把持力状態において柔らかいワーク9を破損させることなく小さい把持力で把持でき、大把持力状態において重いワーク9を落とすことなく確実に把持し得る。
【0032】
把持装置1は、図2に示すようにアームベース5aと中間部材5bとの間にて上下に並設される中間リンク5d1,5d2と、中間部材5bと接触部材5cの間にて上下に並設される先端リンク5e1,5e2とを有する。各中間リンク5d1,5d2は、アームベース5aと中間部材5bに、アームベース5aにおける連結部分より中間部材5bにおける連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される。各先端リンク5e1,5e2は、中間部材5bと接触部材5cに、中間部材5bにおける連結部分より接触部材5cにおける連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される。
【0033】
したがって中間リンク5d1,5d2は、中間部材5bをアームベース5aに移動可能に連結する。先端リンク5e1,5e2は、接触部材5cを中間部材5bに移動可能に連結する。一対のアーム5を近接させると、接触部材5cがワーク9に当り、接触部材5cが先端リンク5e1,5e2の傾動によって中間部材5bに対して上昇し、中間部材5bが中間リンク5d1,5d2の傾動によってアームベース5aに対して上昇する。したがってワーク9は、先端リンク5e1,5e2と中間リンク5d1,5d2の2段の傾動によって持上げられるため大きく持上げられる。例えば1段のリンクによってワーク9を持上げる構造に比べて、アーム5の構成を大きくすることなく、ワーク9を大きく持上げることができる。
【0034】
中間付勢部材5fと先端付勢部材5gは、夫々ばねであり、かつ、中間付勢部材5fとしてのばねと、先端付勢部材5gとしてのばねのばね定数が異なる。したがって中間付勢部材5fの付勢力と先端付勢部材5gの付勢力は、ばね定数の差によって変えられ得る。
【0035】
把持装置1は、図2に示すように接触部材5cと中間部材5bの距離を検知する接触部材用センサ4bと、中間部材5bとアームベース5aの距離を検知する中間部材用センサ4aとを有する。接触部材5cと中間部材5bとの距離、もしくは中間部材5bとアームベース5aとの距離がそれぞれ所定値以下であると判断した時に、開閉機構3を停止させ、一対のアームの間隔を保持する(図1に示す)制御装置2iを有する。
【0036】
したがって中間部材5bと接触部材5cの一つ(接触部材5c)が、中間付勢部材5fと先端付勢部材5gの付勢力のいずれか小さい付勢力に抗して先に移動する。先に移動した部材の移動が規制される時または規制される前である小把持力状態をいずれか1つのセンサ4a,4bからの検知信号に基づいて制御装置2iが判断し、制御装置2iが開閉機構3を停止させて小把持力状態を保持する。付勢力の大きい付勢部材に抗して他の1つ(中間部材5b)が移動し、該移動が規制される時または規制される前である大把持力状態を他の1つのセンサ4a,4bからの検知信号に基づいて制御装置2iが判断し、制御装置2iが開閉機構3を停止させることで大把持力状態を保持する。
【0037】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、例えば把持装置1は、図3等に示すアーム5に代えて図6〜11に示すアーム12を有していても良い。アーム12は、図6に示すようにアームベース12aと中間部材12bと第一接触部材12cと第二接触部材12hを有する。アームベース12aは、前後方向に延出し、後端部が開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。
【0038】
図6に示すようにアームベース12aと中間部材12bの間には、中間リンク機構12dと中間付勢部材12fが設けられる。中間リンク機構12dは、中間部材12bとアームベース12aを移動可能に連結する上下の中間リンクを有する。中間付勢部材12fは、中間部材12bを第一接触部材12cに向けかつ下方に付勢する。中間部材12bと第一接触部材12cの間には、先端リンク機構12eと先端付勢部材12gが設けられる。先端リンク機構12eは、第一接触部材12cと中間部材12bを移動可能に連結する上下の先端リンクを有する。先端付勢部材12gは、第一接触部材12cを他方のアーム12に向けかつ下方に付勢する。
【0039】
図6に示すように第二接触部材12hは、アームベース12aの前端部に設けられる。アームベース12aと第二接触部材12hの間には、並設リンク機構12iと並設付勢部材12jが設けられる。並設リンク機構12iは、第二接触部材12hとアームベース12aを移動可能に連結する上下の並設リンクを有する。並設付勢部材12jは、第二接触部材12hを他のアーム12に向けかつ下方に付勢する。第二接触部材12hは、中間部材12bに並設され、第一接触部材12cよりもアームベース12aに近い位置に設置される。
【0040】
図6〜11に示すように先端付勢部材12gは、中間付勢部材12fと並設付勢部材12jよりも小さい付勢力を生じる。先端付勢部材12gの付勢力は、例えば中間付勢部材12fの2分の1以下である。中間付勢部材12fと並設付勢部材12jの付勢力は、例えば略同じである。先端付勢部材12gと中間付勢部材12fと並設付勢部材12jは、引っ張りばねである。先端付勢部材12gのばね定数は、中間付勢部材12fのばね定数と並設付勢部材12jのばね定数より小さい。
【0041】
図7に示すようにワーク9aが小さくて柔らかい場合は、制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9aに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。第一接触部材12cの移動が中間部材12bによって規制されたことを接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9aを小さい把持力で把持する。
【0042】
図8に示すようにワーク9bが大きくて柔らかい場合は、上記と同様に制御装置が検知信号に基づいてアーム12の距離を保持する。この時、第二接触部材12hとワーク9bの間に隙間12kが形成される。あるいは隙間12kが形成されないが第二接触部材12hがワーク9bを第一接触部材12cよりも強い力で押さない。これによりワーク9bに大きな力が加わらない。
【0043】
ワーク9cが小さくて重い場合は、把持装置1が図9に示す方法または図10に示す方法でワーク9cを把持する。図9の方法では制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9cに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。中間部材12bが中間付勢部材12fの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第一接触部材12cの移動がアームベース12aによって規制されたことを中間部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9cを大きい把持力で把持する。
【0044】
図10の方法では制御装置が開閉機構3を操作し、第二接触部材12hがワーク9cに接触する。第二接触部材12hが並設付勢部材12jの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hの移動がアームベース12aによって規制されたことを第二接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9cを大きい把持力で把持する。
【0045】
図11に示すようにワーク9dが大きくて重い場合は、制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9dに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。中間部材12bが中間付勢部材12fの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hがワーク9dに接触し、第二接触部材12hが並設付勢部材12jの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hの移動がアームベース12aによって規制されたことを第二接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9dを大きい把持力で把持する。
【0046】
以上のように把持装置1は、図6に示すように第一接触部材12cと、第一接触部材12cと別個に一方のアーム12のアームベース12aに対して一対のアーム12の間にて近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な第二接触部材12hと、第二接触部材12hを他方のアーム12に向けて付勢する並設付勢部材12jを有する。したがって把持装置1は、第一接触部材12cと第二接触部材12hの1つまたは両方を利用してワークを把持し得る。
【0047】
図6に示すようにアームベース12aが開閉機構3から前方に延出し、第一接触部材12cと第二接触部材12hが前後方向に並設される。したがってワークに対してアームベース12aの前後位置を調整することで、第一接触部材と第二接触部材のいずれか1つによってワークを把持し得るように選択できる。
【0048】
図6に示すようにワークが一対のアーム12によって把持されていない状態において第二接触部材12hが第一接触部材12cよりもアームベース12aに近い位置にある。したがってアーム12をワークに近接して第一接触部材12cがワークに当った際に第二接触部材12hがワークに当ることを確実に避け得る。そのため第一接触部材12cのみによってワークを把持し得る状態を確実に得ることができる(図7参照)。
【0049】
図6,8に示すように一対のアーム12を近接させてワーク9dが第一接触部材12cに当り、第一接触部材12cの中間部材12bに対する移動または中間部材12bのアームベース12aに対する移動のいずれか先の移動が規制された際の、第一接触部材12cにおけるワーク接触面からアームベース12aまでの距離が、第二接触部材12hにおけるワーク接触可能面までの距離より長い。
【0050】
したがって中間付勢部材12fと先端付勢部材12gの付勢力のいずれか小さい付勢力に抗して第一接触部材12cと中間部材12bのいずれか1つが先に移動する小把持力状態を確実に得ることができる(図8参照)。また付勢力の大きい付勢部材に抗して他の1つが移動しかつ第二接触部材12hが並設付勢部材12jに抗して移動する図11に示す大ワーク大把持力状態も得られる。かくして把持装置1は、大きなワーク9dを確実に把持し得る。
【0051】
把持装置1は、図3に示すアーム5に代えて図12に示すアーム13を有していても良い。アーム13は、アームベース13aと中間部材13bと接触部材13cを有する。アームベース13aは、板状で前後方向に向く。アームベース13aの左右領域の一領域13a2は、開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。アームベース13aの他領域には、複数のガイド孔13a1が形成される。ガイド孔13a1は、上下方向に延出し、かつ上部よりも下部が他のアーム13の近くに位置するように曲線状または直線状に延出する。
【0052】
図12に示すようにアームベース13aの前側に板状の中間部材13bが並設される。アームベース13aの後側に板状の取付部材13fが並設される。中間部材13bの左右領域の一領域に複数のガイドピン13b1が取付けられる。ガイドピン13b1は、中間部材13bから後方に延出してアームベース13aのガイド孔13a1を貫通する。ガイドピン13b1の先端部は、取付部材13fの取付孔13f1に螺合される。これにより中間部材13bは、アームベース13aに対して上下方向および左右方向に移動可能に取付けられる。
【0053】
図12に示すように中間部材13bの他領域には、複数のガイド孔13b2が形成される。ガイド孔13b2は、上下方向に延出し、かつ上部より下部が他のアーム13の近くに位置するように曲線状または直線状に延出する。中間部材13bのガイド孔13b2の前側に接触部材13cが設けられる。中間部材13bのガイド孔13b2の後側に板状の取付部材13gが設けられる。
【0054】
図12に示すように接触部材13cは、中間部材13bに並設される基部13c1と、基部13c1の前面から前方に延出する前部13c2を有する。前部13c2は、板状であってワーク9に対面する。基部13c1には、複数のガイドピン13c3が取付けられる。ガイドピン13c3は、基部13c1から後方に延出し、中間部材13bのガイド孔13b2を貫通する。ガイドピン13c3の先端部は、取付部材13gの取付孔13g1に螺合される。これにより接触部材13cは、中間部材13bに対して上下方向および左右方向に移動可能に取付けられる。
【0055】
図12に示すようにアーム13は、さらに中間付勢部材13dと先端付勢部材13eを有する。中間付勢部材13dは、アームベース13aと中間部材13bに取付けられて、中間部材13bを他のアーム13に向けて付勢する。先端付勢部材13eは、中間部材13bと接触部材13cに取付けられて、先端付勢部材13eを他のアーム13に向けて付勢する。中間付勢部材13dと先端付勢部材13eは、引っ張りばねであって、中間付勢部材13dのばね定数が先端付勢部材13eのばね定数より大きい。
【0056】
図12に示すように把持装置1は、ワーク9を把持する場合に、開閉機構3によって一対のアーム13を近接させる。接触部材13cがワーク9に接触し、接触部材13cが先端付勢部材13eの付勢力に抗して中間部材13bに近接しかつ上昇する。接触部材13cと中間部材13bの距離が設定値以下になったことが接触部材用センサによって検知されて、接触部材用センサが制御装置に検知信号を発信する。制御装置は、操作盤からの情報信号によってワーク9が柔らかいと判断している場合、接触部材用センサからの検知信号に基づいて開閉機構3によってアーム13の距離を保持する。これによりアーム13は、ワーク9を小さい把持力によって把持する。
【0057】
図12に示すように制御装置は、操作盤からの情報信号に基づいてワーク9が重いまたは硬いと判断している場合、開閉機構3によって一対のアーム13をさらに近接させる。中間部材13bが中間付勢部材13dの付勢力に抗してアームベース13aに近接しかつ上昇する。中間部材13bとアームベース13aの距離が設定値以下になったことが中間部材用センサによって検知されて、中間部材用センサが制御装置に検知信号を発信する。制御装置は、検知信号に基づいて開閉機構3によってアーム13の距離を保持する。これによりアーム13は、ワーク9を大きい把持力によって把持する。
【0058】
把持装置1は、一対のアーム5,12,13を有し、各アーム5,12,13がアームベース5a,12a,13aと中間部材5b,12b,13bと接触部材5c,12c,13cを有していても良いし、1つのアーム5,12,13のみが該構成であって、他の1つのアームが他の構成でも良い。例えば他のアームがアームベースのみを有する構成、あるいはアームベースと中間部材を有し接触部材を有さない構成であっても良い。
【0059】
開閉機構3は、一対のアーム5,12,13を移動させても良いし、1つのアーム5,12,13のみを移動させても良い。
【0060】
アームベース5aと中間部材5bは、板状でも良いし、複数の棒部材から形成されるなどの他の構成でも良い。
【0061】
中間付勢部材5f,12f,13dの付勢力は、先端付勢部材5g,12g,13eの付勢力より大きくても良いし、小さくても良い。例えば中間付勢部材5f,12f,13dのばね定数が先端付勢部材5g,12g,13eのばね定数よりも小さくても良い。中間付勢部材5f,12f,13dの付勢力が先端付勢部材5g,12g,13eの付勢力より小さい場合、接触部材5c,12c,13cがワークに当ると、中間部材5b,12b,13bのアームベース5a,12a,13aに対する移動が接触部材5c,12c,13cの中間部材5b,12b,13bに対する移動よりも先に大きく移動する。中間部材5b,12b,13bとアームベース5a,12a,13aの距離が設置値以下になり、該状態が保持されることで一対のアーム5,12,13が小さい把持力でワークを保持し得る。さらに一対のアーム5,12,13を近接させ、接触部材5c,12c,13cと中間部材5b,12b,13bの距離が設置値以下になり、該状態が保持されることで一対のアーム5が大きい把持力でワーク9を保持し得る。
【0062】
中間付勢部材5f,12f,13dと先端付勢部材5g,12g,13eは、ばねでも良いし、油圧シリンダ、ゴムなどでも良い。中間付勢部材5f,12f,13dと先端付勢部材5g,12g,13eは、水平線に対して略同じ角度に設置されても良いし、水平線に対する傾きが異なり、これにより中間付勢部材5fによる水平方向の付勢力と先端付勢部材5gによる水平方向の付勢力が異なる構成でも良い。
【0063】
中間部材5bは、アームベース5aに対して中間リンク機構5dによって接続されても良いし、レールによって水平方向のみあるいは水平方向と上下方向に移動可能に接続されても良い。接触部材5cは、中間部材5bに対して先端リンク機構5eによって接続されても良いし、レールによって水平方向のみあるいは水平方向と上下方向に移動可能に接続されても良い。
【0064】
第二接触部材12hは、第一接触部材12cよりも前側に位置しても良いし、第一接触部材12cよりも後側または上側または下側に位置しても良い。
【0065】
中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bは、スイッチセンサでも良いし、中間リンク5d1,5d2または先端リンク5e1,5e2の角度を測定するポテンショメータなどでも良い。
【0066】
把持装置1は、中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bに代えて、アームベース5aと中間部材5bの距離またはアームベース5aと接触部材5cの距離を測定する距離測定センサを有し、距離測定センサからの検知信号に基づいて制御装置が小把持力状態と、大把持力状態とを判断しても良い。
【0067】
アーム5,12,13は、アームベース5a,12a,13aと接触部材5c,12c,13cの間に1つの中間部材5b,12b,13bを有していても良いし、2つ以上の中間部材を有していても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 把持装置
2 ベース
2i 制御装置
2j 操作盤
3 開閉機構
3d,6d モータ
4a 中間部材用センサ
4b 接触部材用センサ
5,12,13 アーム
5a,12a,13a アームベース
5b,12b,13b 中間部材
5c,12c,13c 接触部材
5d,12e 中間リンク機構
5d1,5d2 中間リンク
5e,12e 先端リンク機構
5e1,5e2 先端リンク
5f,12f,13d 中間付勢部材
5g,12g,13e 先端付勢部材
6 リフタ
9,9a〜9d ワーク
12h 第二接触部材
12i 並設リンク機構
12j 並設付勢部材
12k 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のアームによってワークを把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の把持装置は、一対のアームと、一対のアームの間隔を変える開閉機構を有する。各アームは、開閉機構によって移動されるアームベースと、アームベースにリンク機構によって移動可能に取付けられる把持プレートと、把持プレートをアームに対して付勢するスプリングを有する。一対のアームを近接させ、把持プレートがワークに当り、把持プレートがスプリングの付勢力に抗して上方にかつアームベースに向けて移動し、把持プレートがスプリングの付勢力によってワークを把持する。
【0003】
特許文献2に記載の把持装置のアームは、アームベースと、アームベースにシーソー動作可能に取付けられるホルダと、ホルダの上部に取付けられる柔らかいゴム板と、ホルダの下部に取付けられる硬いゴム板を有する。アームによって複数段のワークを挟んだ場合、下段のワークが硬いゴム板によって保持され、上段のワークが柔らかいゴム板によって保持される。そのため把持装置は、複数段のワークを安定良く保持し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭50−149052号公報
【特許文献2】特開平2−81896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし把持装置は、重いワークを弱い把持力で把持した場合にワークを落とす場合がある。一方、柔らかいワークを強い把持力で把持した場合にはワークを破損させる場合がある。そのためワークの重さまたは硬さに応じた好適な把持力でワークを把持し得る把持装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの把持装置であることを特徴とする。一つの特徴によると把持装置は、一対のアームによりワークを把持する。一対のアームは、それぞれアームベースを有し、一対のアームベースが近接及び離隔可能で、一対のアームベースの間隔が開閉機構によって変えられる。少なくとも一方のアームは、一対のアームベースの間にてアームベースに近接及び離隔可能に設けられる中間部材と、中間部材を他方のアームに向けて付勢する中間付勢部材と、中間部材に対して近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な接触部材と、中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材を他方のアームに向けて付勢する先端付勢部材とを有する。
【0007】
したがって一対のアームを近接させると、接触部材がワークに当る。接触部材が先端付勢部材の付勢力に抗して力を受け、中間部材が中間付勢部材の付勢力に抗して力を受ける。先端付勢部材の付勢力と中間付勢部材の付勢力が異なるために、小さい付勢力に抗して中間部材と接触部材のいずれか一部材が先に移動し、小さい把持力によってワークを把持し得る小把持力状態が得られる。さらに一対のアームを近接させると、一部材の移動が規制されて他の部材が大きい付勢力に抗して移動して、大きい把持力によってワークを把持する大把持力状態が得られる。そのため把持装置は、小把持力状態において柔らかいワークを破損させることなく小さい把持力で把持でき、大把持力状態において重いワークを落とすことなく確実に把持し得る。
【発明の効果】
【0008】
したがって本発明によると把持装置は、ワークの重さまたは硬さに応じた好適な把持力によってワークを把持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】把持装置の斜視図である。
【図2】アームとワークの斜視図である。
【図3】小把持力状態におけるアームとワークの斜視図である。
【図4】大把持力状態におけるアームとワークの斜視図である。
【図5】把持装置の制御ブロック図である。
【図6】他の形態にかかる把持装置の一部概略上面図である。
【図7】図6の把持装置の小把持力状態における一部概略上面図である。
【図8】図6の把持装置の小把持力状態における一部概略上面図である。
【図9】図6の把持装置の大把持力状態における一部概略上面図である。
【図10】図6の把持装置の大把持力状態における一部概略上面図である。
【図11】図6の把持装置の大ワーク大把持力状態における一部概略上面図である。
【図12】他の形態にかかるアームの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの実施の形態を図1〜5にしたがって説明する。把持装置(搬送装置)1は、図1に示すようにベース2と一対のアーム5を有する。ベース2は、上下に延出する一対の柱2aと、柱2aの下部を連結する下梁2bと、柱2aの上部を連結する上梁2cと、各柱2aの下部から前方に延出する脚2dと、脚2dより高い位置において柱2aの後方に延出する台2fを有する。なお上下方向とは、重力方向であり、図1における上下方向である。前後方向は、把持装置1の走行方向であり、前方が図1の右方向、後方が図1の左方向である。左右方向は、把持装置1の走行方向に対して直交しかつ水平な方向である。
【0011】
脚2dの先端部下側には、図1に示すように車輪2eが転動可能に取付けられる。台2fの左右部下側には、車輪2gが転動可能に取付けられる。台2fにはバッテリ7と制御装置2iが搭載される。台2fの後部には、台2fから上方に延出するハンドル2hが設けられる。ハンドル2hには、操作盤2jが装着される。ベース2の前部には、リフタ6と開閉機構3が設けられる。
【0012】
リフタ6は、図1に示すように雄ねじ部材6aと雌ねじ部材6bとモータ6dを有する。雄ねじ部材6aは、上下方向に延出し、上下端部が上梁2cと下梁2bに軸回転可能に取付けられる。雌ねじ部材6bは、雄ねじ部材6aに螺合される。雌ねじ部材6bには、ブラケット6cを介して開閉機構3が取付けられる。モータ6dは、下梁2bに取付けられ、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材6aを軸回転させる。雄ねじ部材6aが軸回転することで雌ねじ部材6bが雄ねじ部材6aに沿って昇降する。
【0013】
開閉機構3は、図1に示すように機構ベース3aと雄ねじ部材3bを有する。機構ベース3aは、左右方向に延出し、左右端部が柱2aに上下方向に移動可能に取付けられる。機構ベース3aは、ブラケット6cによってリフタ6の雌ねじ部材6bに取付けられ、リフタ6によって昇降される。雄ねじ部材3bは、左右方向に延出し、左右端部が機構ベース3aに軸回転可能に取付けられる。
【0014】
開閉機構3は、さらに図1に示すように一対の雌ねじ部材3cとモータ3dを有する。雌ねじ部材3cは、雄ねじ部材3bに螺合される。モータ3dは、機構ベース3aに取付けられ、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材3bを軸回転させる。雄ねじ部材3bと一対の雌ねじ部材3cには、雄ねじ部材3bが軸回転することで一対の雌ねじ部材3cが近接・離隔するように雄ねじおよび雌ねじが形成される。
【0015】
アーム5は、図2に示すようにアームベース5aと中間部材5bと接触部材5cを有する。アームベース5aと中間部材5bと接触部材5cは、略板状であって起立されかつ並設される。アームベース5aは、前後方向に延出して、後部が開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。
【0016】
アームベース5aと中間部材5bは、図2に示すように中間リンク機構5dによって連結される。中間リンク機構5dは、上下に並設される中間リンク5d1,5d2を有する。中間リンク5d1,5d2の一端部は、アームベース5aに上下方向に回転可能に取付けられる。中間リンク5d1,5d2の他端部は、一端部よりも高い位置において中間部材5bに上下方向に回転可能に取付けられる。上下の中間リンク5d1,5d2は、アームベース5aの前部と、アームベース5aの後部の両方に設けられる。
【0017】
中間部材5bと接触部材5cは、図2に示すように先端リンク機構5eによって連結される。先端リンク機構5eは、上下に並設される先端リンク5e1,5e2を有する。先端リンク5e1,5e2の一端部は、中間部材5bに上下方向に回転可能に取付けられる。先端リンク5e1,5e2の他端部は、一端部よりも高い位置において接触部材5cに上下方向に回転可能に取付けられる。上下の先端リンク5e1,5e2は、中間部材5bの前部と、中間部材5bの後部の両方に設けられる。
【0018】
アーム5は、図2に示すように中間付勢部材5fと先端付勢部材5gを有する。中間付勢部材5fは、アームベース5aに取付けられる一端部と、一端部よりも上方において中間部材5bに取付けられる他端部を有する。中間付勢部材5fは、引っ張りばねであって、中間部材5bをアームベース5aに対して下方へかつ離隔する方向へ付勢する。
【0019】
先端付勢部材5gは、図2に示すように中間部材5bに取付けられる一端部と、一端部よりも上方において接触部材5cに取付けられる他端部を有する。先端付勢部材5gは、引っ張りばねであって、接触部材5cを中間部材5bに対して下方へかつ離隔する方向へ付勢する。
【0020】
先端付勢部材5gの付勢力は、中間付勢部材5fの付勢力より小さい。具体的には、先端付勢部材5gのばね定数が中間付勢部材5fのばね定数より小さい。そのため先端付勢部材5gの付勢力は、同じ長さ弾性変形された際の中間付勢部材5fの付勢力より小さい。したがって先端付勢部材5gが接触部材5cを水平方向へ付勢する付勢力は、中間付勢部材5fが中間部材5bを水平方向へ付勢する付勢力よりも小さい。
【0021】
中間部材5bとアームベース5aの間には、図2に示すように中間部材5bとアームベース5aの距離が所定値以下になったことを検知する中間部材用センサ4aが設けられる。中間部材用センサ4aは、スイッチセンサであって、中間部材5bがアームベース5aに対して近接することで中間リンク5d1,5d2もしくは中間部材5bに押されて検知信号を発信する。
【0022】
接触部材5cと中間部材5bの間には、図2に示すように接触部材5cと中間部材5bの距離が所定値以下になったことを検知する接触部材用センサ4bが設けられる。接触部材用センサ4bは、スイッチセンサであって、接触部材5cが中間部材5bに対して近接することで先端リンク5e1,5e2もしくは接触部材5cに押されて検知信号を発信する。
【0023】
中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bは、図5に示すように制御装置2iに電気的に接続される。制御装置2iには、操作盤2jとモータ3d,6dが電気的に接続される。操作盤2jには、ワークに対する情報等が作業者によって入力され、該情報に対応する情報信号を制御装置2iに発信する。制御装置2iは、操作盤2jからの情報信号と、中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bからの検知信号に基づいてモータ3d,6dを制御する。
【0024】
把持装置1によってワーク9を把持する場合は、図1,2に示すように車輪2eによって把持装置1を棚10の近傍に移動させる。操作盤2jを操作し、操作盤2jからの信号に基づいて制御装置2iがリフタ6を制御し、アーム5がワーク9の高さに移動する。ワーク9の硬さまたは重さなどの情報が作業者によって操作盤2jから入力される。
【0025】
制御装置2iは、操作盤2jから発信された情報信号に基づいてワーク9が柔らかいまたは軽いと判断すると、図2,3に示すように開閉機構3によって一対のアーム5を近接させる。接触部材5cがワーク9に接触し、接触部材5cが先端付勢部材5gの付勢力に抗して中間部材5bに向けて移動しかつ上昇する。
【0026】
先端付勢部材5gは、中間付勢部材5fよりも付勢力が小さく、中間付勢部材5fに比べて多く変形する。そのため接触部材5cの中間部材5bに対する移動量が中間部材5bのアームベース5aに対する移動量より大きくなる。図2,3に示すように接触部材5cがワーク9を把持し、ワーク9を持上げる。これによりワーク9は、棚10に対して持上げられる。
【0027】
図3に示すように接触部材5cまたは先端リンク機構5eが中間部材5bに当り、接触部材5cの中間部材5bへの移動が規制される。先端リンク機構5eが接触部材用センサ4bを押し、接触部材用センサ4bが検知信号を制御装置2iに発信する(図5参照)。制御装置2iは、接触部材用センサ4bからの検知信号に基づいて開閉機構3を制御して一対のアーム5の間隔を保持する。これにより一対のアーム5は、小さい把持力によってワーク9を把持する。
【0028】
制御装置2iは、操作盤2jからの情報信号に基づいてワーク9が重いまたは硬いと判断すると、図3,4に示すように開閉機構3によって一対のアーム5をさらに近接させる。これにより中間部材5bが中間付勢部材5fの付勢力に抗してアームベース5aに向けて移動しかつ上昇する。中間付勢部材5fは、先端付勢部材5gよりも付勢力が大きく、中間部材5bを強くワーク9に向けて付勢する。そのため接触部材5cがワーク9に強く当られ、接触部材5cがワーク9を強く把持する。
【0029】
図4に示すように中間部材5bは、中間部材5bまたは中間リンク機構5dがアームベース5aに当ってアームベース5aへの移動が規制される。中間リンク機構5dが中間部材用センサ4aを押し、中間部材用センサ4aが検知信号を制御装置2iに発信する(図5参照)。制御装置2iは、中間部材用センサ4aからの検知信号に基づいて開閉機構3を制御して一対のアーム5の間隔を保持する。これにより一対のアーム5は、大きい把持力によってワーク9を把持する。
【0030】
以上のように把持装置1は、図2に示すように一対のアーム5によりワーク9を把持する。一対のアーム5は、それぞれアームベース5aを有し、一対のアームベース5aが近接及び離隔可能で、一対のアームベース5aの間隔が開閉機構3によって変えられる。一方のアーム5は、一対のアームベース5aの間にてアームベース5aに近接及び離隔可能に設けられる中間部材5bと、中間部材5bを他方のアーム5に向けて付勢する中間付勢部材5fと、中間部材5bに対して近接及び離隔可能に設けられかつワーク9に接触可能な接触部材5cと、中間付勢部材5fの付勢力と異なる大きさの付勢力によって接触部材5cを他方のアーム5に向けて付勢する先端付勢部材5gとを有する。
【0031】
したがって一対のアーム5を近接させると、接触部材5cがワーク9に当る。接触部材5cが先端付勢部材5gの付勢力に抗して力を受け、中間部材5bが中間付勢部材5fの付勢力に抗して力を受ける。先端付勢部材5gの付勢力と中間付勢部材5fの付勢力が異なるために、小さい付勢力に抗して中間部材5bと接触部材5cのいずれか一部材(接触部材5c)が先に移動し、小さい把持力によってワーク9を把持し得る小把持力状態が得られる。さらに一対のアーム5を近接させると、一部材(接触部材5c)の移動が規制され、他の部材(中間部材5b)が大きい付勢力に抗して移動して、大きい把持力によってワーク9を把持する大把持力状態が得られる。そのため把持装置1は、小把持力状態において柔らかいワーク9を破損させることなく小さい把持力で把持でき、大把持力状態において重いワーク9を落とすことなく確実に把持し得る。
【0032】
把持装置1は、図2に示すようにアームベース5aと中間部材5bとの間にて上下に並設される中間リンク5d1,5d2と、中間部材5bと接触部材5cの間にて上下に並設される先端リンク5e1,5e2とを有する。各中間リンク5d1,5d2は、アームベース5aと中間部材5bに、アームベース5aにおける連結部分より中間部材5bにおける連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される。各先端リンク5e1,5e2は、中間部材5bと接触部材5cに、中間部材5bにおける連結部分より接触部材5cにおける連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される。
【0033】
したがって中間リンク5d1,5d2は、中間部材5bをアームベース5aに移動可能に連結する。先端リンク5e1,5e2は、接触部材5cを中間部材5bに移動可能に連結する。一対のアーム5を近接させると、接触部材5cがワーク9に当り、接触部材5cが先端リンク5e1,5e2の傾動によって中間部材5bに対して上昇し、中間部材5bが中間リンク5d1,5d2の傾動によってアームベース5aに対して上昇する。したがってワーク9は、先端リンク5e1,5e2と中間リンク5d1,5d2の2段の傾動によって持上げられるため大きく持上げられる。例えば1段のリンクによってワーク9を持上げる構造に比べて、アーム5の構成を大きくすることなく、ワーク9を大きく持上げることができる。
【0034】
中間付勢部材5fと先端付勢部材5gは、夫々ばねであり、かつ、中間付勢部材5fとしてのばねと、先端付勢部材5gとしてのばねのばね定数が異なる。したがって中間付勢部材5fの付勢力と先端付勢部材5gの付勢力は、ばね定数の差によって変えられ得る。
【0035】
把持装置1は、図2に示すように接触部材5cと中間部材5bの距離を検知する接触部材用センサ4bと、中間部材5bとアームベース5aの距離を検知する中間部材用センサ4aとを有する。接触部材5cと中間部材5bとの距離、もしくは中間部材5bとアームベース5aとの距離がそれぞれ所定値以下であると判断した時に、開閉機構3を停止させ、一対のアームの間隔を保持する(図1に示す)制御装置2iを有する。
【0036】
したがって中間部材5bと接触部材5cの一つ(接触部材5c)が、中間付勢部材5fと先端付勢部材5gの付勢力のいずれか小さい付勢力に抗して先に移動する。先に移動した部材の移動が規制される時または規制される前である小把持力状態をいずれか1つのセンサ4a,4bからの検知信号に基づいて制御装置2iが判断し、制御装置2iが開閉機構3を停止させて小把持力状態を保持する。付勢力の大きい付勢部材に抗して他の1つ(中間部材5b)が移動し、該移動が規制される時または規制される前である大把持力状態を他の1つのセンサ4a,4bからの検知信号に基づいて制御装置2iが判断し、制御装置2iが開閉機構3を停止させることで大把持力状態を保持する。
【0037】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、例えば把持装置1は、図3等に示すアーム5に代えて図6〜11に示すアーム12を有していても良い。アーム12は、図6に示すようにアームベース12aと中間部材12bと第一接触部材12cと第二接触部材12hを有する。アームベース12aは、前後方向に延出し、後端部が開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。
【0038】
図6に示すようにアームベース12aと中間部材12bの間には、中間リンク機構12dと中間付勢部材12fが設けられる。中間リンク機構12dは、中間部材12bとアームベース12aを移動可能に連結する上下の中間リンクを有する。中間付勢部材12fは、中間部材12bを第一接触部材12cに向けかつ下方に付勢する。中間部材12bと第一接触部材12cの間には、先端リンク機構12eと先端付勢部材12gが設けられる。先端リンク機構12eは、第一接触部材12cと中間部材12bを移動可能に連結する上下の先端リンクを有する。先端付勢部材12gは、第一接触部材12cを他方のアーム12に向けかつ下方に付勢する。
【0039】
図6に示すように第二接触部材12hは、アームベース12aの前端部に設けられる。アームベース12aと第二接触部材12hの間には、並設リンク機構12iと並設付勢部材12jが設けられる。並設リンク機構12iは、第二接触部材12hとアームベース12aを移動可能に連結する上下の並設リンクを有する。並設付勢部材12jは、第二接触部材12hを他のアーム12に向けかつ下方に付勢する。第二接触部材12hは、中間部材12bに並設され、第一接触部材12cよりもアームベース12aに近い位置に設置される。
【0040】
図6〜11に示すように先端付勢部材12gは、中間付勢部材12fと並設付勢部材12jよりも小さい付勢力を生じる。先端付勢部材12gの付勢力は、例えば中間付勢部材12fの2分の1以下である。中間付勢部材12fと並設付勢部材12jの付勢力は、例えば略同じである。先端付勢部材12gと中間付勢部材12fと並設付勢部材12jは、引っ張りばねである。先端付勢部材12gのばね定数は、中間付勢部材12fのばね定数と並設付勢部材12jのばね定数より小さい。
【0041】
図7に示すようにワーク9aが小さくて柔らかい場合は、制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9aに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。第一接触部材12cの移動が中間部材12bによって規制されたことを接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9aを小さい把持力で把持する。
【0042】
図8に示すようにワーク9bが大きくて柔らかい場合は、上記と同様に制御装置が検知信号に基づいてアーム12の距離を保持する。この時、第二接触部材12hとワーク9bの間に隙間12kが形成される。あるいは隙間12kが形成されないが第二接触部材12hがワーク9bを第一接触部材12cよりも強い力で押さない。これによりワーク9bに大きな力が加わらない。
【0043】
ワーク9cが小さくて重い場合は、把持装置1が図9に示す方法または図10に示す方法でワーク9cを把持する。図9の方法では制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9cに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。中間部材12bが中間付勢部材12fの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第一接触部材12cの移動がアームベース12aによって規制されたことを中間部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9cを大きい把持力で把持する。
【0044】
図10の方法では制御装置が開閉機構3を操作し、第二接触部材12hがワーク9cに接触する。第二接触部材12hが並設付勢部材12jの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hの移動がアームベース12aによって規制されたことを第二接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9cを大きい把持力で把持する。
【0045】
図11に示すようにワーク9dが大きくて重い場合は、制御装置が開閉機構3を操作し、第一接触部材12cがワーク9dに接触する。第一接触部材12cが先端付勢部材12gの付勢力に抗して中間部材12bに向けて移動しかつ上昇する。中間部材12bが中間付勢部材12fの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hがワーク9dに接触し、第二接触部材12hが並設付勢部材12jの付勢力に抗してアームベース12aに向けて移動しかつ上昇する。第二接触部材12hの移動がアームベース12aによって規制されたことを第二接触部材用センサが検知して検知信号を発信する。制御装置が該検知信号に基づいてアーム12の距離を保持し、アーム12がワーク9dを大きい把持力で把持する。
【0046】
以上のように把持装置1は、図6に示すように第一接触部材12cと、第一接触部材12cと別個に一方のアーム12のアームベース12aに対して一対のアーム12の間にて近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な第二接触部材12hと、第二接触部材12hを他方のアーム12に向けて付勢する並設付勢部材12jを有する。したがって把持装置1は、第一接触部材12cと第二接触部材12hの1つまたは両方を利用してワークを把持し得る。
【0047】
図6に示すようにアームベース12aが開閉機構3から前方に延出し、第一接触部材12cと第二接触部材12hが前後方向に並設される。したがってワークに対してアームベース12aの前後位置を調整することで、第一接触部材と第二接触部材のいずれか1つによってワークを把持し得るように選択できる。
【0048】
図6に示すようにワークが一対のアーム12によって把持されていない状態において第二接触部材12hが第一接触部材12cよりもアームベース12aに近い位置にある。したがってアーム12をワークに近接して第一接触部材12cがワークに当った際に第二接触部材12hがワークに当ることを確実に避け得る。そのため第一接触部材12cのみによってワークを把持し得る状態を確実に得ることができる(図7参照)。
【0049】
図6,8に示すように一対のアーム12を近接させてワーク9dが第一接触部材12cに当り、第一接触部材12cの中間部材12bに対する移動または中間部材12bのアームベース12aに対する移動のいずれか先の移動が規制された際の、第一接触部材12cにおけるワーク接触面からアームベース12aまでの距離が、第二接触部材12hにおけるワーク接触可能面までの距離より長い。
【0050】
したがって中間付勢部材12fと先端付勢部材12gの付勢力のいずれか小さい付勢力に抗して第一接触部材12cと中間部材12bのいずれか1つが先に移動する小把持力状態を確実に得ることができる(図8参照)。また付勢力の大きい付勢部材に抗して他の1つが移動しかつ第二接触部材12hが並設付勢部材12jに抗して移動する図11に示す大ワーク大把持力状態も得られる。かくして把持装置1は、大きなワーク9dを確実に把持し得る。
【0051】
把持装置1は、図3に示すアーム5に代えて図12に示すアーム13を有していても良い。アーム13は、アームベース13aと中間部材13bと接触部材13cを有する。アームベース13aは、板状で前後方向に向く。アームベース13aの左右領域の一領域13a2は、開閉機構3の雌ねじ部材3cに取付けられる。アームベース13aの他領域には、複数のガイド孔13a1が形成される。ガイド孔13a1は、上下方向に延出し、かつ上部よりも下部が他のアーム13の近くに位置するように曲線状または直線状に延出する。
【0052】
図12に示すようにアームベース13aの前側に板状の中間部材13bが並設される。アームベース13aの後側に板状の取付部材13fが並設される。中間部材13bの左右領域の一領域に複数のガイドピン13b1が取付けられる。ガイドピン13b1は、中間部材13bから後方に延出してアームベース13aのガイド孔13a1を貫通する。ガイドピン13b1の先端部は、取付部材13fの取付孔13f1に螺合される。これにより中間部材13bは、アームベース13aに対して上下方向および左右方向に移動可能に取付けられる。
【0053】
図12に示すように中間部材13bの他領域には、複数のガイド孔13b2が形成される。ガイド孔13b2は、上下方向に延出し、かつ上部より下部が他のアーム13の近くに位置するように曲線状または直線状に延出する。中間部材13bのガイド孔13b2の前側に接触部材13cが設けられる。中間部材13bのガイド孔13b2の後側に板状の取付部材13gが設けられる。
【0054】
図12に示すように接触部材13cは、中間部材13bに並設される基部13c1と、基部13c1の前面から前方に延出する前部13c2を有する。前部13c2は、板状であってワーク9に対面する。基部13c1には、複数のガイドピン13c3が取付けられる。ガイドピン13c3は、基部13c1から後方に延出し、中間部材13bのガイド孔13b2を貫通する。ガイドピン13c3の先端部は、取付部材13gの取付孔13g1に螺合される。これにより接触部材13cは、中間部材13bに対して上下方向および左右方向に移動可能に取付けられる。
【0055】
図12に示すようにアーム13は、さらに中間付勢部材13dと先端付勢部材13eを有する。中間付勢部材13dは、アームベース13aと中間部材13bに取付けられて、中間部材13bを他のアーム13に向けて付勢する。先端付勢部材13eは、中間部材13bと接触部材13cに取付けられて、先端付勢部材13eを他のアーム13に向けて付勢する。中間付勢部材13dと先端付勢部材13eは、引っ張りばねであって、中間付勢部材13dのばね定数が先端付勢部材13eのばね定数より大きい。
【0056】
図12に示すように把持装置1は、ワーク9を把持する場合に、開閉機構3によって一対のアーム13を近接させる。接触部材13cがワーク9に接触し、接触部材13cが先端付勢部材13eの付勢力に抗して中間部材13bに近接しかつ上昇する。接触部材13cと中間部材13bの距離が設定値以下になったことが接触部材用センサによって検知されて、接触部材用センサが制御装置に検知信号を発信する。制御装置は、操作盤からの情報信号によってワーク9が柔らかいと判断している場合、接触部材用センサからの検知信号に基づいて開閉機構3によってアーム13の距離を保持する。これによりアーム13は、ワーク9を小さい把持力によって把持する。
【0057】
図12に示すように制御装置は、操作盤からの情報信号に基づいてワーク9が重いまたは硬いと判断している場合、開閉機構3によって一対のアーム13をさらに近接させる。中間部材13bが中間付勢部材13dの付勢力に抗してアームベース13aに近接しかつ上昇する。中間部材13bとアームベース13aの距離が設定値以下になったことが中間部材用センサによって検知されて、中間部材用センサが制御装置に検知信号を発信する。制御装置は、検知信号に基づいて開閉機構3によってアーム13の距離を保持する。これによりアーム13は、ワーク9を大きい把持力によって把持する。
【0058】
把持装置1は、一対のアーム5,12,13を有し、各アーム5,12,13がアームベース5a,12a,13aと中間部材5b,12b,13bと接触部材5c,12c,13cを有していても良いし、1つのアーム5,12,13のみが該構成であって、他の1つのアームが他の構成でも良い。例えば他のアームがアームベースのみを有する構成、あるいはアームベースと中間部材を有し接触部材を有さない構成であっても良い。
【0059】
開閉機構3は、一対のアーム5,12,13を移動させても良いし、1つのアーム5,12,13のみを移動させても良い。
【0060】
アームベース5aと中間部材5bは、板状でも良いし、複数の棒部材から形成されるなどの他の構成でも良い。
【0061】
中間付勢部材5f,12f,13dの付勢力は、先端付勢部材5g,12g,13eの付勢力より大きくても良いし、小さくても良い。例えば中間付勢部材5f,12f,13dのばね定数が先端付勢部材5g,12g,13eのばね定数よりも小さくても良い。中間付勢部材5f,12f,13dの付勢力が先端付勢部材5g,12g,13eの付勢力より小さい場合、接触部材5c,12c,13cがワークに当ると、中間部材5b,12b,13bのアームベース5a,12a,13aに対する移動が接触部材5c,12c,13cの中間部材5b,12b,13bに対する移動よりも先に大きく移動する。中間部材5b,12b,13bとアームベース5a,12a,13aの距離が設置値以下になり、該状態が保持されることで一対のアーム5,12,13が小さい把持力でワークを保持し得る。さらに一対のアーム5,12,13を近接させ、接触部材5c,12c,13cと中間部材5b,12b,13bの距離が設置値以下になり、該状態が保持されることで一対のアーム5が大きい把持力でワーク9を保持し得る。
【0062】
中間付勢部材5f,12f,13dと先端付勢部材5g,12g,13eは、ばねでも良いし、油圧シリンダ、ゴムなどでも良い。中間付勢部材5f,12f,13dと先端付勢部材5g,12g,13eは、水平線に対して略同じ角度に設置されても良いし、水平線に対する傾きが異なり、これにより中間付勢部材5fによる水平方向の付勢力と先端付勢部材5gによる水平方向の付勢力が異なる構成でも良い。
【0063】
中間部材5bは、アームベース5aに対して中間リンク機構5dによって接続されても良いし、レールによって水平方向のみあるいは水平方向と上下方向に移動可能に接続されても良い。接触部材5cは、中間部材5bに対して先端リンク機構5eによって接続されても良いし、レールによって水平方向のみあるいは水平方向と上下方向に移動可能に接続されても良い。
【0064】
第二接触部材12hは、第一接触部材12cよりも前側に位置しても良いし、第一接触部材12cよりも後側または上側または下側に位置しても良い。
【0065】
中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bは、スイッチセンサでも良いし、中間リンク5d1,5d2または先端リンク5e1,5e2の角度を測定するポテンショメータなどでも良い。
【0066】
把持装置1は、中間部材用センサ4aと接触部材用センサ4bに代えて、アームベース5aと中間部材5bの距離またはアームベース5aと接触部材5cの距離を測定する距離測定センサを有し、距離測定センサからの検知信号に基づいて制御装置が小把持力状態と、大把持力状態とを判断しても良い。
【0067】
アーム5,12,13は、アームベース5a,12a,13aと接触部材5c,12c,13cの間に1つの中間部材5b,12b,13bを有していても良いし、2つ以上の中間部材を有していても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 把持装置
2 ベース
2i 制御装置
2j 操作盤
3 開閉機構
3d,6d モータ
4a 中間部材用センサ
4b 接触部材用センサ
5,12,13 アーム
5a,12a,13a アームベース
5b,12b,13b 中間部材
5c,12c,13c 接触部材
5d,12e 中間リンク機構
5d1,5d2 中間リンク
5e,12e 先端リンク機構
5e1,5e2 先端リンク
5f,12f,13d 中間付勢部材
5g,12g,13e 先端付勢部材
6 リフタ
9,9a〜9d ワーク
12h 第二接触部材
12i 並設リンク機構
12j 並設付勢部材
12k 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームによりワークを把持する把持装置であって、
前記一対のアームは、それぞれアームベースを有し、一対の前記アームベースが近接及び離隔可能で、前記一対のアームベースの間隔が開閉機構によって変えられ、
少なくとも一方の前記アームは、前記一対のアームベースの間にて前記アームベースに近接及び離隔可能に設けられる中間部材と、前記中間部材を他方の前記アームに向けて付勢する中間付勢部材と、前記中間部材に対して近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な接触部材と、前記中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって前記接触部材を前記他方のアームに向けて付勢する先端付勢部材とを有する把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置であって、
前記アームベースと前記中間部材との間にて上下に並設される中間リンクと、前記中間部材と前記接触部材との間にて上下に並設される先端リンクとを有し、
前記各中間リンクは、前記アームベースと前記中間部材に、前記アームベースにおける連結部分より前記中間部材における連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結され、
前記各先端リンクは、前記中間部材と前記接触部材に、前記中間部材における連結部分より前記接触部材における連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される把持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持装置であって、
前記中間付勢部材と前記先端付勢部材は、夫々ばねであり、かつ、前記中間付勢部材としてのばねと、前記先端付勢部材としてのばねのばね定数が異なる把持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の把持装置であって、
前記接触部材である第一接触部材と、前記第一接触部材と別個に前記一方のアームの前記アームベースに対して前記一対のアームの間にて近接及び離隔可能に設けられかつ前記ワークに接触可能な第二接触部材と、前記第二接触部材を前記他方のアームに向けて付勢する並設付勢部材とを有する把持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の把持装置であって、
前記アームベースが前記開閉機構から前方に延出し、前記第一接触部材と前記第二接触部材が前後方向に並設される把持装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の把持装置であって、
ワークが前記一対のアームによって把持されていない状態において前記第二接触部材が前記第一接触部材よりも前記アームベースに近い位置にある把持装置。
【請求項7】
請求項6に記載の把持装置であって、
前記一対のアームを近接させて前記ワークが前記第一接触部材に当り、前記第一接触部材の前記中間部材に対する移動または前記中間部材の前記アームベースに対する移動のいずれかの移動が規制された際の、前記第一接触部材におけるワーク接触面から前記アームベースまでの距離が、前記第二接触部材におけるワーク接触可能面までの距離より長い把持装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の把持装置であって、
前記接触部材と前記中間部材の距離を検知する接触部材用センサと、前記中間部材と前記アームベースの距離を検知する中間部材用センサとを有し、
前記接触部材と前記中間部材との距離、もしくは前記中間部材と前記アームベースとの距離がそれぞれ所定値以下であると判断した時に、前記開閉機構を停止させ、前記一対のアームの間隔を保持する制御装置を有する把持装置。
【請求項1】
一対のアームによりワークを把持する把持装置であって、
前記一対のアームは、それぞれアームベースを有し、一対の前記アームベースが近接及び離隔可能で、前記一対のアームベースの間隔が開閉機構によって変えられ、
少なくとも一方の前記アームは、前記一対のアームベースの間にて前記アームベースに近接及び離隔可能に設けられる中間部材と、前記中間部材を他方の前記アームに向けて付勢する中間付勢部材と、前記中間部材に対して近接及び離隔可能に設けられかつワークに接触可能な接触部材と、前記中間付勢部材の付勢力と異なる大きさの付勢力によって前記接触部材を前記他方のアームに向けて付勢する先端付勢部材とを有する把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置であって、
前記アームベースと前記中間部材との間にて上下に並設される中間リンクと、前記中間部材と前記接触部材との間にて上下に並設される先端リンクとを有し、
前記各中間リンクは、前記アームベースと前記中間部材に、前記アームベースにおける連結部分より前記中間部材における連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結され、
前記各先端リンクは、前記中間部材と前記接触部材に、前記中間部材における連結部分より前記接触部材における連結部分が上側となるように、かつ上下方向に回転可能に連結される把持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持装置であって、
前記中間付勢部材と前記先端付勢部材は、夫々ばねであり、かつ、前記中間付勢部材としてのばねと、前記先端付勢部材としてのばねのばね定数が異なる把持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の把持装置であって、
前記接触部材である第一接触部材と、前記第一接触部材と別個に前記一方のアームの前記アームベースに対して前記一対のアームの間にて近接及び離隔可能に設けられかつ前記ワークに接触可能な第二接触部材と、前記第二接触部材を前記他方のアームに向けて付勢する並設付勢部材とを有する把持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の把持装置であって、
前記アームベースが前記開閉機構から前方に延出し、前記第一接触部材と前記第二接触部材が前後方向に並設される把持装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の把持装置であって、
ワークが前記一対のアームによって把持されていない状態において前記第二接触部材が前記第一接触部材よりも前記アームベースに近い位置にある把持装置。
【請求項7】
請求項6に記載の把持装置であって、
前記一対のアームを近接させて前記ワークが前記第一接触部材に当り、前記第一接触部材の前記中間部材に対する移動または前記中間部材の前記アームベースに対する移動のいずれかの移動が規制された際の、前記第一接触部材におけるワーク接触面から前記アームベースまでの距離が、前記第二接触部材におけるワーク接触可能面までの距離より長い把持装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の把持装置であって、
前記接触部材と前記中間部材の距離を検知する接触部材用センサと、前記中間部材と前記アームベースの距離を検知する中間部材用センサとを有し、
前記接触部材と前記中間部材との距離、もしくは前記中間部材と前記アームベースとの距離がそれぞれ所定値以下であると判断した時に、前記開閉機構を停止させ、前記一対のアームの間隔を保持する制御装置を有する把持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−240817(P2012−240817A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114687(P2011−114687)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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