説明

投入材料の投入方法、投入システム及び水底構造物の構築方法

【課題】土運船による投入材料の投入が安定しかつ投入材料が目標位置からずれて着底するロス率を低減できる投入材料の投入方法及び投入材料の投入システムを提供する。
【解決手段】この投入材料の投入方法は、水底に水底構造物を形成するための投入材料を土運船で運搬し水中に投入して自由落下させる際に、水底構造物を形成する現場水域の流向・流速を測定し、投入材料を水底の目標位置に着底させるための土運船の投入材料の最適投入位置を目標位置と流向・流速と土運船の進行速度・流向とに基づいて解析し算出し、最適投入位置を算出したときの進行方向・速度で土運船を最適投入位置に向けて進行させ、進行中の土運船の測定した位置が最適投入位置にほぼ一致したとき進行中の土運船から投入材料を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底構造物を水底に構築するために底開式の土運船等を利用して運搬したブロックや岩石等の投入材料を水中に投入し自由落下させる投入材料の投入方法、投入システム及び水底構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に湧昇流を発生させるために多数のブロック等の塊を海中に投入し自由落下させて海底にマウンドを造成することが公知である(例えば、下記特許文献1参照)。このようなマウンド形成のために、従来、底開式の土運船等を使用し、GPS(Global Positioning System)等を利用して位置を決めた後に、海中にブロック等を直投し、自然落下させることにより、海底にマウンドを築造する工事を行っている。また、必要に応じて、下記特許文献2のように、投入材料の投入位置で流れを計測し、流れによる投入材料の移動量を算定し、この算定した投入材料の移動量だけ土運船を移動させて投入する投入方法が公知である。
【特許文献1】特開2004−339764号公報
【特許文献2】特開平11−81316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の投入方法は、上記特許文献2のような数隻の曳船により土運船を直接に制御する方法や、土運船を海底にアンカーを用いて固定し、土運船と一体を成す押船方式により投入する方法等を前提としている。かかる従来の投入方法は、次のような問題点を有している。
(1)曳船により、土運船を直接制御する方法は、潮流や周期の長い波に対し、同一地点に土運船を保持することが困難である。
(2)水深の深い水域では、アンカーにより土運船を固定して、マウンド材料を投入することが困難である。
(3)海上で周期の長い波が来襲すると、アンカー固定の効果は発揮されず、土運船は動揺するため、安定した投入を行うことが困難である。
(4)海流のある海域では、土運船と一体を成す押船方式の場合は、投入位置での定点保持を維持する押船の操船が困難である。
【0004】
本発明者等の調査・検討によれば、特に、水深の深い海域、または、周期の長い波の来襲する海域において土運船から岩石やブロック等の投入材料を投入してマウンドを形成する方法としては、同一地点に土運船を保持することが困難であり、上述の従来のようなアンカー固定方法でなく、土運船の投入姿勢が安定する進行しながらの投入が望ましいことが判明した。しかし、土運船が進行しながらブロック等を投入する場合、投入したブロック等の材料は土運船の進行と海中の流れの影響を同時に受けるため、目標となるマウンド形状からずれて着底するロス率が多くなり易い。このようなロス率を極力少なくすることを目的とした投入方法を確立することが課題となっている。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、土運船による投入材料の投入が安定しかつ投入材料が目標位置からずれて着底するロス率を低減できる投入材料の投入方法、投入材料の投入システム及び水底構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による投入材料の投入方法は、水底に水底構造物を形成するための投入材料を土運船で運搬し水中に投入して自由落下させる投入方法であって、前記水底構造物を形成する現場水域の流向・流速を測定するステップと、前記投入材料を前記水底の目標位置に着底させるための前記土運船の前記投入材料の最適投入位置を前記目標位置と前記流向・流速と前記土運船の進行速度・流向とに基づいて解析し算出するステップと、前記最適投入位置を算出したときの前記進行方向・速度で前記土運船を前記最適投入位置に向けて進行させるステップと、前記進行中の土運船の測定した位置が前記最適投入位置にほぼ一致したとき前記進行中の土運船から前記投入材料を投入するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
この投入材料の投入方法によれば、土運船が停止せずに進行しながら投入材料を投入するので、土運船の投入姿勢が安定し投入材料の投入を安定して行うことができるとともに、目標位置や潮流等の流向・流速のみならず土運船の進行方向・速度をも考慮して投入材料の最適投入位置を解析し算出するので、算出された最適投入位置の精度がよくなり、土運船が上述のように進行しながら投入材料を投入する場合でも、投入材料を水底の目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0008】
上記投入材料の投入方法において前記土運船の進行方向を前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定して前記最適投入位置を算出することが好ましい。これにより、測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向から土運船を進入させることで、土運船の進行方向を潮流等の流向と相対させ、投入した投入材料の水中における移動に対する水の流れの影響と土運船の進行の影響とを相殺でき、このため、投入材料が水中で自由落下し着底するまでの水平方向の移動量が小さくなり、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0009】
また、前記水底構造物を形成する現場水域の風向・風速を測定し、前記測定した風向・風速を考慮して前記最適投入位置を算出することが好ましい。これにより、算出の際に風向・風速を考慮するので算出された最適投入位置の精度がよくなり、投入材料を搭載した土運船が風向・風速の影響を受けて土運船の進行方向・速度が変化する場合でも、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0010】
この場合、前記土運船の進行方向を前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定して前記最適投入位置を算出することが好ましい。これにより、測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向から土運船を進入させて土運船の進行方向を風向と相対させることで、土運船の進行速度を抑えることができ、その結果、土運船の進行速度が増加しないので、投入材料が水中で自由落下し着底するまでの水平方向の移動量が大きくならない。このため、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0011】
また、前記水底構造物を形成する現場水域の風向・風速を測定し、前記土運船の進行方向を設定するにあたり、前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向、及び、前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向のいずれを優先させるかの判断を前記測定した風速に基づいて行うことが好ましい。これにより、例えば、測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向と、測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向と、が重なり合わない場合に、強風で風速の影響が大きいときには風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定し、強風ではなく風速の影響が比較的小さいときには流向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定することで、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0012】
また、前記算出した最適投入位置が前記目標位置を中心とする所定半径の円内か円外かを判断し、前記最適投入位置が前記円外にあるとき前記最適投入位置が前記円内となるように前記土運船の進行方向・速度を変更して前記最適投入位置を再算出することが好ましい。
【0013】
投入材料の投入位置は目標位置に対しできるだけ近くの位置が望ましく、投入材料が水中で自由落下し着底するまでの水平方向の移動量が小さい程よいが、算出した最適投入位置では水平方向の移動量が大きくなって、その最適投入位置が目標位置(水面座標位置)を中心とする所定半径の円外になる場合には、土運船の進行方向・速度を変更して最適投入位置の再算出を行うことにより、投入材料の着底までの水平方向の移動距離を小さくでき、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。
【0014】
なお、上述のように土運船の進行方向・速度を変更しても算出した最適投入位置が円外の場合、土運船の進行方向・速度を再変更し、円内になるまで繰り返すことが好ましい。また、目標位置を中心とする所定半径は、投入された投入材料が水中で自由落下し着底するまで水平方向に移動した場合における基準位置からの許容最大距離であり、現場水域の潮流や風等の気象条件等に応じて適宜設定できる。
【0015】
また、前記土運船とは別の航行性能の高い測量船に流向流速計を設置し、前記流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定することが好ましい。流向流速計を土運船ではなく別の測量船に設置するので、土運船の施工効率を向上することができ、また、航行性能の高い測量船により、流向流速計の設置・計測・回収作業を迅速に行うことができる。潮流等の流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定最適投入位置の解析精度が向上し、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。
【0016】
また、前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定し、前記測定結果に基づいて次に投入するときの最適投入位置を補正することが好ましい。上述のようにして算出した最適投入位置から投入材料を投入した場合、実際には、潮流等の気象条件等の変化、潮流等の流向・流速や風速・風向の測定誤差等のために、投入材料が水中で自由落下して着底した位置が目標位置から比較的大きくずれてしまうことがあるが、投入材料の投入後に水底における投入材料の位置や形状を測定し、その測定結果により次回投入の最適投入位置を補正することで、投入材料の投入精度を向上させることができ、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。
【0017】
本発明による投入材料の投入システムは、水底に水底構造物を形成するための投入材料を運搬し水中に投入し自由落下させる投入システムであって、前記投入材料を運搬する土運船と、前記水底構造物を形成する現場水域の海水の流向・流速を測定する流向流速計と、前記流向流速計を設置する測量船と、前記土運船の位置を測定する位置測定装置と、前記投入材料を前記水底の目標位置に着底させるための最適投入位置を前記目標位置と前記測定した流向・流速と前記土運船の進行方向・速度とに基づいて解析し算出する演算処理装置と、前記土運船を所定の方向に進行させるように誘導する誘導装置と、を備え、前記誘導装置は前記最適投入位置を算出したときの前記進行方向・速度で前記土運船を前記最適投入位置に向けて進行させるように誘導し、前記進行中の土運船の測定した位置が前記最適投入位置にほぼ一致したときに前記進行中の土運船から前記投入材料を投入することを特徴とする。
【0018】
この投入材料の投入システムによれば、上記投入材料の投入方法を実行でき、土運船が停止せずに進行しながら投入材料を投入できるので、土運船の投入姿勢が安定し投入材料の投入を安定して行うことができるとともに、目標位置や潮流等の流向・流速のみならず土運船の進行方向・速度をも考慮して投入材料の最適投入位置を解析し算出するので、算出された最適投入位置の精度がよくなり、土運船が上述のように進行しながら投入材料を投入する場合でも、投入材料を水底の目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0019】
上記投入材料の投入システムにおいて前記誘導装置は、前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向に前記土運船を進行させるように誘導することが好ましい。上述のような進行方向に土運船を誘導することで、土運船の進行方向を潮流等の流向と相対させ、投入した投入材料の水中における移動に対する水の流れの影響と土運船の進行の影響とを相殺でき、このため、投入材料が水中で自由落下し着底するまでの水平方向の移動量が小さくなり、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0020】
また、前記現場水域の風向・風速を測定する風向風速計を更に備え、前記演算処理装置は前記投入位置を解析する際に前記測定した風向・風速を考慮することが好ましい。これにより、算出の際に風向・風速を考慮するので算出された最適投入位置の精度がよくなり、投入材料を搭載した土運船が風向・風速の影響を受けて土運船の進行方向・速度が変化する場合でも、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0021】
この場合、前記誘導装置は前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に前記土運船を進行させるように誘導することが好ましい。これにより、測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向から土運船を進入させて土運船の進行方向を風向と相対させることで、土運船の進行速度を抑えることができ、その結果、土運船の進行速度が増加しないので、投入材料が水中で自由落下し着底するまでの水平方向の移動量が大きくならない。このため、投入材料を目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0022】
また、前記演算処理装置は、前記算出した最適投入位置が前記目標位置を中心とする所定半径の円内か円外かを判断し、前記最適投入位置が前記円外にあるとき前記最適投入位置が前記円内となるように前記土運船の進行方向・速度を変更して前記最適投入位置を再算出することが好ましい。これにより、算出した最適投入位置では水平方向の移動量が大きくなって、その最適投入位置が目標位置(水面座標位置)を中心とする所定半径の円外になる場合には、土運船の進行方向・速度を変更して最適投入位置の再算出を行うことにより、投入材料の着底までの水平方向の移動距離を小さくでき、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。なお、上述のように土運船の進行方向・速度を変更しても算出した最適投入位置が円外の場合、土運船の進行方向・速度を再変更し、円内になるまで繰り返すことが好ましい。
【0023】
また、前記測量船は前記土運船よりも航行性能が高く、前記測量船に設置された流向流速計は前記流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定することが好ましい。流向流速計を土運船ではなく別の測量船に設置するので、土運船の施工効率を向上することができ、また、航行性能の高い測量船により、流向流速計の設置・計測・回収作業を迅速に行うことができる。潮流等の流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定最適投入位置の解析精度が向上し、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。
【0024】
また、前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定する深浅測量船を更に備え、前記演算処理装置は前記測定結果に基づいて次に投入するときの最適投入位置を補正することが好ましい。上述のようにして算出した最適投入位置から投入材料を投入した場合、実際には、潮流等の気象条件等の変化、潮流等の流向・流速や風速・風向の測定誤差等のために、投入材料が水中で自由落下して着底した位置が目標位置から比較的大きくずれてしまうことがあるが、投入材料の投入後に水底における投入材料の位置や形状を測定し、その測定結果により次回投入の最適投入位置を補正することで、投入材料の投入精度を向上させることができ、投入材料を目標位置に着底させ易くなる。
【0025】
本発明による水底構造物の構築方法は、上述の投入材料の投入方法、または、上述の投入材料の投入システムを用い、前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定するステップと、前記測定結果に基づいて前記目標位置を変更して最適投入位置を算出し次の投入材料の投入を行うステップと、を前記水底構造物が目的の水底位置で目的の形状に構築されるまで繰り返すことを特徴とする。
【0026】
この水底構造物の構築方法によれば、投入材料の投入後に水底における投入材料の位置や形状を測定し、その測定結果で次の目標位置を変えて上述のようにして最適投入位置を算出し次の投入材料の投入を行うことを繰り返すことで、投入した多数の投入材料が目標位置からずれて着底するロス率が低減するので、投入した多数の投入材料により水底構造物を目的の水底位置で目的の形状に効率よく構築できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の投入材料の投入方法及び投入材料の投入システムによれば、土運船による投入材料の投入が安定しかつ投入材料が目標位置からずれて着底するロス率を低減できる。
【0028】
また、本発明の水底構造物の構築方法によれば、投入した多数の投入材料により水底構造物を目的の水底位置で目的の形状に効率よく構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による投入材料の投入システム全体を概略的に示す図である。図2は図1の測量船の概略的構成を示す図である。図3は図1の土運船の位置測定及び誘導システム(a)及び基地局の位置測定システム(b)を概略的に示す図である。
【0030】
なお、図1では、測量船15の流向流速計の表示部を含む流向流速解析部A及び深浅測量船13の水底測定装置により測定した投入したブロックの出来型堆積形状の例を示す表示画面Bを部分的に示している。図2では測量船15の流向流速計及び演算処理装置を部分的に拡大して示している。
【0031】
図1、図2に示すように、本実施の形態による投入材料の投入システムは、投入材料である岩石やブロック等を搭載した底開式の土運船が海上を進行しながらブロック等を水中に直投し、自由落下によりマウンド等の水底構造物を水底に築造する工事を行うものである。
【0032】
この投入材料の投入システムは、投入材料としての多数のブロック10を搭載し押し船12で移動する底開式の土運船11と、現場水域の潮流等による流向・流速を測定するための流向流速計14と、現場水域の風向・風速を測定する風向風速計18と、流向流速計14による流向・流速や風向風速計18による風向・風速等の測定結果に基づいて解析プログラムによりブロック10の投入位置を解析し算出するパーソナルコンピュータ等からなる演算処理装置17と、演算処理装置17、流向流速計14及び風向風速計18を搭載する測量船15と、水底Gの深浅測量を行いマウンド形成領域1の位置及び形状を測定するナローマルチビームソナー等の水底測定装置を搭載し、その測定結果を測量船15に無線で伝送する深浅測量船13と、陸上に設置されGPS基準局等を構成する基地局16と、を備える。
【0033】
なお、マウンドとは、図1のように、コンクリート等からなる所定形状を有する多数のブロック10等を水底Gの所定領域1に投入することで形成され、例えば水域に人工の山脈を築き湧昇流を発生させることでマウンド漁場を造成するものである。
【0034】
図1の陸上に設置された基地局16は、図3(b)のように、GPSアンテナ35と、GPS受信装置36と、無線伝送装置(テレメータ)37とからGPS基準局を構成し、測量船15や土運船11に対しGPS信号を送信する。
【0035】
図1,図2のように、測量船15は方位検出計21,GPS受信装置22及び無線伝送装置(テレメータ)23を更に搭載し、基地局16のGPS基準局からのGPS信号に基づいて方位検出計21及びGPS装置22により測量船15の位置出しを精度良く行うことができる。
【0036】
また、測量船15は、設置した流向流速計14で現場水域の潮流の流向・流速をリアルタイムに測定した流向流速データを演算処理装置17の投入位置予測解析プログラムへ入力し、解析プログラムによりブロック10を目標水底位置へ精度良く落下させるための土運船11の最適投入位置を算出し、無線伝送装置23により無線で土運船11へデータ伝送を行う。
【0037】
測量船15に設置された流向流速計14は、例えば、音波式から構成でき、水中に音波パルスを送り、水中の各層から反射したエコーのドップラーシフトを測定し、この測定した流向流速データに基づいて図1の流向流速計14の流向流速解析部Aの表示部に水中の流向及び流速を深度別に計測し表示する。このような流向流速計は、例えばワークホースADCPシステムとしてRD Instruments社から提供されている。
【0038】
また、測量船15に設置した風向風速計18は、現場水域の風向・風速をリアルタイムに測定し、測定した風向風速データを無線伝送装置23により無線で土運船11へデータ伝送を行うようになっている。風向風速計18は公知のものを使用可能である。
【0039】
また、深浅測量船13に搭載される水底測定装置であるナローマルチビームソナーは、400〜500kHz程度の多数本の超音波ビームを発信する装置から構成され、例えばナローマルチビーム測深ソナーSEA BAT8.125型として株式会社東陽テクニカから提供されている。
【0040】
図3(a)のように、底開式の土運船11は、無線伝送装置(テレメータ)25,GPS受信装置26,26、GPSアンテナ27,27、パーソナルコンピュータ等からなる演算処理装置28及び位置誘導用無線伝送装置(テレメータ)29を搭載し、2つのGPS受信装置26,26と2つのGPSアンテナ27,27とから方位検出計を構成し(例えば、特開2001-264406公報参照)、基地局16のGPS基準局からのGPS信号に基づいて方位検出計及びGPS装置26により進行中の土運船11の位置を測定することができる。
【0041】
土運船11では、測量船15において流向流速計14や風向風速計18による計測データを基に解析プログラムにより算出された土運船11のブロック投入の最適投入位置情報を位置誘導用無線伝送装置29で受信し、そのブロック投入の最適投入位置情報及び土運船11の現在位置・進行方向・速度に基づいて土運船11を誘導する誘導システムが構成されている。土運船11は押し船12による進行時の進行方向・速度を設定し、必要に応じて、再設定することができる。
【0042】
上記誘導システムは、例えば、演算処理装置28がブロック投入の最適投入位置情報及び土運船11の現在位置・進行方向・速度に基づいて目標位置の方向及び目標位置までの距離等の誘導情報を算出し表示部28aに表示するように構成され、この誘導情報により押し船12が土運船11をブロック投入の最適投入位置に移動させることができる。
【0043】
この場合、上記誘導システムによれば、測量船15の流向流速計14及び風向風速計18で現場水域の流向・流速および風向・風速を測定し、流向または風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に土運船11を進行させるように誘導することができる。
【0044】
図4に測量船15の演算処理装置17の解析プログラムによるブロックの投入位置予測のための解析フローチャートを示す。
【0045】
図4に示すように、測量船15の演算処理装置17の解析プログラムで次のようにして土運船11の位置であるブロックの最適投入位置を解析により得ることができる。
【0046】
まず、基本条件の設定として、ブロックの重量及び体積、マウンド形成のためにブロックを設置する目標位置を表す座標位置(水深及び水平位置)、水の抵抗を表す抗力係数等の水理パラメータをそれぞれ演算処理装置17に入力し設定する(S01)。
【0047】
次に、ブロックを投入する現場水域で計測した、潮流の流向・流速の深度別の測定データ及び風向・風速の測定データを測量船15の演算処理装置17に入力する(S02)。また、上述の各測定データに基づいて土運船11の進行速度・方向を設定する。この場合、設定する土運船11の進行方向は、測定した流向または風向に対して±30°の範囲内で相対する方向とすることが好ましい。
【0048】
次に、ブロックを水中に投入したときの落下挙動の解析を行う(S03)。即ち、上述の潮流の流向・流速及び風向・風速の各測定データ、土運船11の設定した進行方向・速度及び入力した各水理パラメータに基づいてブロックの3次元運動方程式の数値解析を行う。この数値解析により各時間ステップにおけるブロックの3次元移動速度ベクトルを評価することで、ブロックの着底位置及びブロックの最適投入位置を算出し評価する。
【0049】
なお、上記解析プログラムは、演算処理装置17のハードディスク記憶装置等に記憶され、解析を行うときに読み出されて解析が実行される。また、流れ場におけるブロックの堆積位置の移動を解析する数値モデルに必要なパラメータ等については、模型実験や現地水域における投入結果に基づいて最適化したものを用いる。
【0050】
次に、図1乃至図4の投入システムを用いてブロック投入により水底の所定領域にマウンドを形成し築造する施行手順について図5のフローチャート、図6、図8を参照して説明する。
【0051】
図5は図1乃至図4の投入システムを用いてブロック投入により水底の所定領域にマウンドを形成し築造する施行手順を説明するためのフローチャートである。図6は本実施の形態において土運船を現場水域の流向に対して所定の操船角度θで相対する方向から進入させる様子を模式的に示す要部平面図(a)、土運船から水中に投入したブロックが着底するまでの間に流向により移動する移動距離を説明するための模式図(b)、及び流向に対する操船角度と投入したブロックの移動距離との関係を示す解析により得たグラフ(c)である。図8は図6(a)の現場水域における土運船の位置と目標位置(2次元座標)と算出された最適投入位置を模式的に示す平面図である。
【0052】
まず、図1の底開式の土運船11に多数のブロック10を積み込み(S11)、土運船11を押し船12で移動させマウンドを形成する現場水域まで運搬する(S12)。
【0053】
次に、図3(a)のように底開式の土運船11の位置を測定し、測量船15をブロック投入の現場水域に移動させ、流向流速計14により潮流の流向及び流速を所定の範囲内で水平方向にかつ深度別に測定し、図1のような測量船15内の表示画面Aに表示し、その流向流速データ、土運船11の進行方向・速度及び目標位置に基づいて図4の解析ステップによりブロックの最適投入位置を求める(S13)。
【0054】
すなわち、具体的には、図5のように、ブロックを投入する目標位置を入力し(S21)、現場水域の潮流の流向・流速及び風向・風速を流向流速計14,風向風速計18で計測し(S22)、測定した流向に対する図6(a)の操船角度θが±30°の範囲内で相対する方向から土運船11が進入するように土運船11の進行方向・進行速度を設定する(S23)。
【0055】
そして、図4のようにしてブロックを投入する最適投入位置を算出する(S24)。
【0056】
次に、上記算定されたブロックの最適投入位置が図8のように、2次元座標値で表すことのできる目標位置Cを中心とする半径rの円Fの内にあるか円Fの外にあるかを判断する(S25)。
【0057】
例えば、図8のように、算定された最適投入位置が円Fの外の位置Eであるときは、上記ステップS23に戻り、土運船11の進行方向・進行速度を再設定し、ブロックの最適投入位置を再算出する。図8のように、算定された最適投入位置が円Fの内の位置Dであるときは、その位置Dを最適投入位置と判断する(S25)。
【0058】
上述のように、算出した最適投入位置が目標位置Cを中心とする半径rの円Fの内にあれば、その位置Dを最適投入位置とし、円Fの外にあれば、円Fの内になるまで、各ステップS23〜S25の各ステップを繰り返す。
【0059】
最適投入位置Dは、図6(b)、図8のように、その位置Dからブロックが水中に投入されて自由落下し水平方向に移動距離Lだけ移動して目標位置Cに着底すると図4で解析され算出された計算値である。
【0060】
なお、上記半径rは、投入されたブロックが水中で自由落下し着底するまで水平方向に移動するときの許容最大距離である。ブロックの投入位置が目標位置から一定の距離以上離れてしまうと、ブロックが水中で自由落下し実際に着底するまでの水平方向の移動距離が長くなり、実際の投入精度(ブロックを投入しても目標位置からずれる度合い)が低下してくるので、投入位置に関して所定の許容最大距離を設定して投入管理する必要がある。このように、許容最大距離は、ずれの誤差ができるだけ小さくなるような最大長さに設定することが好ましい。
【0061】
また、許容最大距離は、模型実験や現地水域における投入結果等に基づいて適宜設定でき、本発明者等の検討によれば、現場水域の潮流や風等の気象条件等により変わるが、例えば、100m程度の水深に対し約7mであれば、ブロックの着底位置が目標位置からさほどずれないことが判明した。
【0062】
上述のように、土運船のブロック投入の最適投入位置Dが解析により決定すると、その最適投入位置Dに関する位置情報を測量船15から土運船11に無線により伝送するとともに、土運船11の位置を測定し、土運船11の位置出しを行い、土運船11を最適投入位置Dに向けて誘導する(S14)。このときの土運船11の進行方向・速度は、最適投入位置Dを算出したときの進行方向・速度である。
【0063】
次に、測定した土運船11の位置が上述の最適投入位置Dと一致したとき、土運船11の底を開くことにより多数のブロック10を水中に投入する(S15)。
【0064】
次に、深浅測量船13のナローマルチビームソナーにより水底Gの深浅測量を行い、水底Gのマウンド形成領域1におけるブロックの位置及び堆積形状を測定し(S16)、その測定結果を測量船15に無線で伝送する。
【0065】
そして、上述の深浅測量によるブロックの位置及び堆積形状の測定結果から、ブロックの着底位置が目標位置からずれており同一の目標位置に対する最適投入位置の補正が必要か否かを判断し(S17)、補正が必要な場合、最適投入位置を補正する(S18)。この補正は、例えば、先に求めた最適投入位置(2次元座標位置)を測定結果に基づいて増減することで行うことができる。これによりブロックの目標位置の着底確率を向上でき、投入したブロックのロス率の低減に寄与できる。
【0066】
また、上記ステップS17で補正が不要と判断されると、上述の深浅測量による測定結果を考慮して次の目標位置(水深及び水平位置)を算出する(S19)。
【0067】
次に、空になった土運船11が帰港し(S20)、次のブロック投入が必要な場合は上記ステップS11に戻る。そして、上記ステップS18で最適投入位置を補正した場合、前回と同一の目標位置に向け、補正された最適投入位置でブロックの再投入を行う。
【0068】
また、次の目標位置(S19)がある場合は、その次の目標位置をステップS01で入力しデータを書き換え、上記と同様の各ステップによりブロックの投入を行う。
【0069】
上述のように、ブロック投入が完了した後は、適宜、深浅測量を実施し、深浅測量船13のナローマルチビームソナーの図1の表示画面Bのように水底Gのブロックの出来型堆積形状を表示し、投入後の水底でのブロックの位置及び堆積形状を把握し、次回のブロック投入の予測解析へフィードバックさせることにより最適な投入パターン等を確立でき、ブロックの目標位置の着底確率を向上でき、投入したブロックのロス率の低減に寄与できる。また、投入後の水底でのブロックの位置及び堆積形状の測定結果から必要な場合、同じ目標位置に対し補正した最適投入位置で再投入を行うので、目的のマウンド形状を精度よく構築できる。
【0070】
また、ブロックの投入に当たり、現場水域の流向・流速及び風向・風速を測定するが、このとき、潮流は時間とともに変化するため、土運船11とは別の航行能力の高い測量船15に流向流速計14を設置し、流向・流速を水深方向、及び/又は、水平方向の複数位置で測定することが好ましい。これにより、これまでに投入し、水底に堆積しているブロック等のマウント形成物の周辺等で、空間的に大きく変化している流れの分布を迅速に捉えることができ、ブロックの最適投入位置を精度よく算出できる。このため、水深の深い水域や周期の長い波の来襲する水域においてブロックを高精度に投入することができる。
【0071】
また、土運船11は、図6(a)のように、原則として水中の平均的な流向に対して操船角度θが±30°の範囲内で相対する方向から進入させるように誘導するが、この目的は、投入したブロック等の水中の移動は潮流の流向・流速と投入時の土運船11の進行方向・速度の影響を同時に受けるので、土運船11の航行方向を流向と相対させ、流れの影響と船の航行の影響を相殺するためである。
【0072】
上述のように土運船11を誘導することで、図6(c)の操船角度θに応じたブロックの移動距離Lの解析例のように、土運船11の進行角度を流向に対して±30°の範囲内で相対させることにより、投入したブロックの移動距離を有効に抑えることができることが分かる。なお、図6(c)の解析例では、潮流を0.3m/s、水深を50m、投入するブロックを500kg/個、船速を2ノットとした。
【0073】
ここで、水域において風速が強い場合に風の影響を回避するための土運船の誘導方法について図7を参照して説明する。図7は、土運船を風向に対して所定の操船角度θ’で相対する方向から進入させる様子を模式的に示す要部平面図(a)及び風向に対する操船角度と船速度との関係を示す解析により得たグラフ(b)である。
【0074】
水域において風速が強い場合、風の影響を受けて船の進行速度が増加し、これが原因で投入したブロックの移動距離が大きくなることを回避するために、図7(a)のように土運船11の進行方向を風向と相対させる。図7(b)の風に対する船の操船角度θ’に応じた船速の変化の解析例のように、船の進行角度(操船角度θ’)を風向に対して±30°の範囲内で相対させることにより、船速の変化を有効に抑えることができることが分かる。なお、図7(b)の解析例では、風速を5m/s、対象船舶を500m3積級、無風時の船速を2ノットとした。
【0075】
なお、投入を行う土運船11の進行速度は、1〜4ノット程度の速度となるように制御することが好ましい。
【0076】
上述のように、本実施の形態では、潮流等による水の流れと風の影響を考慮し、土運船11が流向または風向と相対する方向から進行しブロック投入が可能な進行方向・速度を仮設定し、目標位置に着底させるための最適投入位置を解析し算出する。このとき、船の進行方向・速度の設定が適切でなく、図6(b)、図8のように算出された最適投入位置が円Fの外であり、ブロックの移動距離Lが大きくなると評価された場合は、土運船11の進行方向・速度の再設定を行い、最適投入位置が円Fの内になる(移動距離が小さくなる)ように土運船11の進行方向・速度を決定する。そして、GPS等を用いて土運船11の位置を把握し、土運船11をその進行方向・速度で進行させ、算出された最適投入位置に土運船11の位置が一致した時に土運船11からブロックの投入を行う。
【0077】
以上のように、本実施の形態による進行中の土運船11がブロックを投入する投入方法によれば、土運船11が停止せずに進行しながらブロックを投入するので、土運船11の投入姿勢が安定しブロックの投入を安定して行うことができ、従来、直投により投入材料を適切な位置に着底させることが困難であった水深の深い水域、または、周期の長い波の来襲する水域において、高精度のブロック投入が実現できる。
【0078】
また、目標位置や潮流等の流向・流速のみならず土運船11の進行方向・速度をも考慮してブロックの最適投入位置を解析し算出するので、算出された最適投入位置の精度がよくなり、土運船11が上述のように進行しながらブロックを投入する場合でも、ブロックを水底の目標位置に着底させ易くなり、投入した投入材料のロス率を低減できる。
【0079】
また、従来の方法では、投入前のアンカー等で土運船を固定する工程に時間を要していたが、本実施の形態による投入方法では、その工程を省略できるため、施工効率を大幅に向上することができる。
【0080】
また、流向・流速計の設置・計測・回収作業を土運船とは別の測量船で行うため、土運船の施工効率を向上することができる。
【0081】
また、図4のような解析で土運船のブロックの最適投入位置を求めても、実際の投入では誤差が生じるために、投入後において深浅測量を実施し、同一の目標位置に関し最適投入位置の補正を行うことで、投入精度を向上できる。
【0082】
また、ブロックの投入後の深浅測量により目標位置を変えながら、逐次土運船のブロックの最適投入位置を算出してブロックの投入を繰り返すことで、投入した多数のブロックが目標位置からずれて着底するロス率を低減できるので、投入した多数のブロックにより目的のマウンドを目的の水底位置で目的の形状に効率よく構築できる。
【0083】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1において測量船15に音響測深機やシーバット等の水底測定装置を搭載し、深浅測量船13を省略してもよい。また、土運船11は自航式に構成してもよく、また、投入材料は、コンクリート等からなるブロックに限定されず、岩石等の塊状物等であってもよい。
【0084】
また、ブロック10の投入位置を解析し算出する演算処理装置17は、本実施の形態では、測量船15に搭載したが、本発明はこれに限定されず、土運船や陸上に設置してもよいことは勿論であり、演算処理装置17との間の必要な情報の伝送は無線により行うことができる。
【0085】
また、土運船11をブロックの最適投入位置に誘導するシステムとして、演算処理装置28で算出した目標位置の方向及び距離等の誘導情報に基づいて押し船12を自動的に操縦するように構成してもよい。
【0086】
また、土運船11を現場水域で誘導するとき、測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向から土運船11を進入させることと、測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向から土運船11を進入させることと、を同時に満足できない場合、2m/s以下の風速で風の影響により船の進行速度がさほど増加しないようなときは、前者を優先し、7m/s以上の風速で風の影響により船の進行速度がかなり増加するようなときは、後者を優先することが好ましい。
【0087】
また、水底構造物として湧昇流を発生させるマウンドを例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、他の水底構造物の構築に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施の形態による投入材料の投入システム全体を概略的に示す図である。
【図2】図1の測量船の概略的構成を示す図である。
【図3】図1の土運船の位置測定及び誘導システム(a)及び基地局の位置測定システム(b)を概略的に示す図である。
【図4】図1、図2の測量船15の演算処理装置17の解析プログラムによるブロックの投入位置予測のための解析フローチャートである。
【図5】図1乃至図4の投入システムを用いてブロック投入により水底の所定領域にマウンドを形成し築造する施行手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】本実施の形態において土運船を現場海域の流向に対して所定の操船角度θで相対する方向から進入させる様子を模式的に示す要部平面図(a)、土運船から水中に投入したブロックが着底するまでの間に現場海域の流向により移動する移動距離を説明するための模式図(b)、及び流向に対する操船角度と投入したブロックの移動距離との関係を示す解析により得たグラフ(c)である。
【図7】本実施の形態において土運船を風向に対して所定の操船角度θ’で相対する方向から進入させる様子を模式的に示す要部平面図(a)及び風向に対する操船角度と船速度との関係を示す解析により得たグラフ(b)である。
【図8】図6(a)の現場水域における土運船の位置と目標位置(2次元座標)と算出された最適投入位置を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 マウンド形成領域
10 ブロック(投入材料)
11 土運船
12 押し船
13 深浅測量船
14 流向流速計
15 測量船
16 基地局、GPS基準局
17 演算処理装置
18 風向風速計
25 無線伝送装置(位置測定装置)
26 GPS受信装置(位置測定装置)
27 GPSアンテナ(位置測定装置)
29 位置誘導用無線伝送装置
θ、θ’ 操船角度(土運船の進行角度)
G 水底
L 移動距離
D 最適投入位置
C 目標位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に水底構造物を形成するための投入材料を土運船で運搬し水中に投入して自由落下させる投入方法であって、
前記水底構造物を形成する現場水域の流向・流速を測定するステップと、
前記投入材料を前記水底の目標位置に着底させるための前記土運船の前記投入材料の最適投入位置を前記目標位置と前記流向・流速と前記土運船の進行速度・流向とに基づいて解析し算出するステップと、
前記最適投入位置を算出したときの前記進行方向・速度で前記土運船を前記最適投入位置に向けて進行させるステップと、
前記進行中の土運船の測定した位置が前記最適投入位置にほぼ一致したとき前記進行中の土運船から前記投入材料を投入するステップと、を含むことを特徴とする投入材料の投入方法。
【請求項2】
前記土運船の進行方向を前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定して前記最適投入位置を算出する請求項1に記載の投入材料の投入方法。
【請求項3】
前記水底構造物を形成する現場水域の風向・風速を測定し、前記測定した風向・風速を考慮して前記最適投入位置を算出する請求項1または2に記載の投入材料の投入方法。
【請求項4】
前記土運船の進行方向を前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に設定して前記最適投入位置を算出する請求項3に記載の投入材料の投入方法。
【請求項5】
前記水底構造物を形成する現場水域の風向・風速を測定し、
前記土運船の進行方向を設定するにあたり、前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向、及び、前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向のいずれを優先させるかの判断を前記測定した風速に基づいて行う請求項1または2に記載の投入材料の投入方法。
【請求項6】
前記算出した最適投入位置が前記目標位置を中心とする所定半径の円内か円外かを判断し、前記最適投入位置が前記円外にあるとき前記最適投入位置が前記円内となるように前記土運船の進行方向・速度を変更して前記最適投入位置を再算出する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の投入材料の投入方法。
【請求項7】
前記土運船とは別の航行性能の高い測量船に流向流速計を設置し、前記流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の投入材料の投入方法。
【請求項8】
前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定し、前記測定結果に基づいて次に投入するときの最適投入位置を補正する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の投入材料の投入方法。
【請求項9】
水底に水底構造物を形成するための投入材料を運搬し水中に投入し自由落下させる投入システムであって、
前記投入材料を運搬する土運船と、
前記水底構造物を形成する現場水域の海水の流向・流速を測定する流向流速計と、
前記流向流速計を設置する測量船と、
前記土運船の位置を測定する位置測定装置と、
前記投入材料を前記水底の目標位置に着底させるための最適投入位置を前記目標位置と前記測定した流向・流速と前記土運船の進行方向・速度とに基づいて解析し算出する演算処理装置と、
前記土運船を所定の方向に進行させるように誘導する誘導装置と、を備え、
前記誘導装置は前記最適投入位置を算出したときの前記進行方向・速度で前記土運船を前記最適投入位置に向けて進行させるように誘導し、
前記進行中の土運船の測定した位置が前記最適投入位置にほぼ一致したときに前記進行中の土運船から前記投入材料を投入することを特徴とする投入材料の投入システム。
【請求項10】
前記誘導装置は、前記測定した流向に対して±30°の範囲内で相対する方向に前記土運船を進行させるように誘導する請求項9に記載の投入材料の投入システム。
【請求項11】
前記現場水域の風向・風速を測定する風向風速計を更に備え、
前記演算処理装置は前記投入位置を解析する際に前記測定した風向・風速を考慮する請求項9または10に記載の投入材料の投入システム。
【請求項12】
前記誘導装置は前記測定した風向に対して±30°の範囲内で相対する方向に前記土運船を進行させるように誘導する請求項11に記載の投入材料の投入システム。
【請求項13】
前記演算処理装置は、前記算出した最適投入位置が前記目標位置を中心とする所定半径の円内か円外かを判断し、前記最適投入位置が前記円外にあるとき前記最適投入位置が前記円内となるように前記土運船の進行方向・速度を変更して前記最適投入位置を再算出する請求項9乃至12のいずれか1項に記載の投入材料の投入システム。
【請求項14】
前記測量船は前記土運船よりも航行性能が高く、前記測量船に設置された流向流速計は前記流向・流速を水面方向の複数位置及び水深方向の複数位置で測定する請求項9乃至13のいずれか1項に記載の投入材料の投入システム。
【請求項15】
前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定する深浅測量船を更に備え、
前記演算処理装置は前記測定結果に基づいて次に投入するときの最適投入位置を補正する請求項9乃至14のいずれか1項に記載の投入材料の投入システム。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の投入材料の投入方法、または、請求項9乃至15のいずれか1項に記載の投入材料の投入システムを用い、
前記投入材料の投入後に前記水底における前記投入材料の位置及び/又は形状を測定するステップと、前記測定結果に基づいて前記目標位置を変更して最適投入位置を算出し次の投入材料の投入を行うステップと、を前記水底構造物が目的の水底位置で目的の形状に構築されるまで繰り返すことを特徴とする水底構造物の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−255032(P2007−255032A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79887(P2006−79887)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】