説明

投写レンズ装置、投写レンズ装置を有する光学機器

【課題】部品点数を増やさず、測距手段及び測光手段の測定位置の製品毎のバラツキを抑制でき、高精度で安価にオートフォーカス、あるいは元画像の色情報等を基準に画像補正が可能な投写レンズを提供する。
【解決手段】画像表示素子からの光を投写し、被投写面に画像を形成する投写レンズ100を、つぎのように構する。
前記投写レンズ100に、オートフォーカスを行う際に用いられる測距手段201、および/または元画像の色情報等を基準として投写画像の補正を可能とする測光手段202を保持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写レンズ装置を有する光学機器に関する。
特に、測距手段によりオートフォーカスを行うと共に、測光手段により色味等の色情報や輝度を測定するようにした投写型画像表示装置に用いられる光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示素子からの画像を投写する投写型画像表示装置において、投写型画像表示装置に設けられた測距手段によってオートフォーカス(以下、AFと記す)を行い、また測光手段によって色味等の色情報や輝度を測定するようにしたものが知られている。
この投写型画像表示装置の測光手段によって色味等の色情報や輝度を測定するものにおいては、例えば、特許文献1のように、入力された元画像の色情報等を基準として、投写する画像に補正をかけるようにした投写型液晶表示装置が提案されている。
この装置には、該投写型液晶表示装置からスクリーン等の被投写面に画像が投写された際に、画像の色味等の色情報や輝度を検出する測光手段が設けられている。この測光手段により測定された投写画像の色情報や輝度が、光源や画像表示素子の消耗または投写されるスクリーン等の色味などにより、投写型画像表示装置に入力された元画像の色味等の色情報や輝度と異なる場合が生じる。その際、この装置においては、投写型画像表示装置に入力された元画像の色情報等を基準として、投写する画像に補正をかけるように構成されている。
【特許文献1】特開2000−66166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例において、投写型画像表示装置の測距手段によりAFを行うもの、あるいは特許文献1のような測光手段を構成して投写する画像に補正をかけるようにしたものでは、つぎのような問題を有していた。
すなわち、画像表示素子からの画像を投写する投写型画像表示装置では、投写レンズの光軸に対して投写した画像をシフトした位置に形成するものが一般的である。このため、WIDEからTELEへ画角を変動させた際には、撮影レンズを用いた光学機器とは異なり画面の中心は画角によって変動してしまうこととなる。
したがって、投写型画像表示装置では、投写した画像内の画角に依存しない位置、例えば光軸位置で測距を行うよう測距手段が設置されている。
また、元画像の色情報等を基準として、投写する画像に補正を確実にかけるためには、投写した画像のなるべく広い範囲の測光を行う必要がある。その際、画角が変動すると投写した画像の大きさが変わることから、ある投影距離での一番画像が小さい状態、つまりTELE状態で投写画像のなるべく広い範囲を測光するように測光手段が設置されている。
【0004】
しかしながら、実際の投写型画像表示装置では、投写レンズと測距手段及び測光手段との間には部品点数が多いことから、投写された画像に対しての部品公差の積み上げにより測距手段及び測光手段の測定位置に製品毎のバラツキが生じる。
このようなことから、前記AFを確実に行うためには、投写型画像表示装置に取り付けられた測距手段が、予め定めた光軸等の投写した画像内の画角に依存しない位置を常に測距するように、広い範囲を測距することが可能な測距手段を用いることが必要となる。
あるいは、投写レンズ及び測距手段組み立て後に測距手段の測距する位置を投写した画像に合わせ調整することが可能な機構を持たせることで投写型画像表示装置の投写された画像に対して測距手段が測定する位置の製品毎のバラツキに対応しなくてはならない。
しかし、このように広い範囲を測距すると、予め定めた測距したい位置以外の位置を誤って測定する危険性が高くなる。
また、調整機構を持たせた場合にも調整機構自体のコストだけでなく、調整作業の工数及びコストがかかってしまうという問題が生じる。
【0005】
このような問題は、投写型画像表示装置に入力された元画像の色情報等を基準として、投写する画像に補正をかけるようにした上記従来例においても、上記した理由と同様の理由により生じる。
すなわち、元画像の色情報等を基準に投写する画像に補正を確実にかけるためには、測光手段が測光する範囲を狭くすることが必要となる。
あるいは投写レンズ及び測光手段の組み立て後に、測光手段の測光する位置を投写した画像に合わせ調整することが可能な機構を持たせることで、投写型画像表示装置の投写された画像に対して測光手段が測定する位置の製品毎のバラツキに対応しなくてはならない。しかしながら、狭い範囲を測光すると画像の色情報等を基準に投写する画像に補正かける際の精度は低下してしまうこととなる。
また、調整機構を持たせた場合にも調整機構自体のコストだけでなく、調整作業の工数及びコストがかかってしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、部品点数を増やさず、測距手段及び測光手段の測定位置のバラツキを抑制でき、高精度で安価にAF、あるいは元画像の色情報等を基準に画像補正が可能な投写レンズの保持部材を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記投写レンズを有する光学機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、つぎように構成した投写レンズ装置および投写レンズ装置を有する光学機器を提供するものである。
本発明の投写レンズ装置は、画像表示素子からの光を投写し、被投写面に画像を形成する投写レンズ装置であって、前記投写レンズ装置の本体部材に、測距手段および/または測光手段が保持されていることを特徴としている。
また、本発明においては、前記測距手段を、オートフォーカスを行うための測距手段で構成することができる。
また、本発明においては、前記測光手段を、投写した画像の色情報および/または輝度の測定が可能に構成され、元画像の色情報等を基準として投写画像の補正を可能とする測光手段で構成することができる。
また、本発明においては、前記投写レンズをズームレンズで構成することができる。
また、本発明においては、前記測距手段と前記測光手段は、それぞれ光学系を有し、これらの光学系の光軸が異なる方向に設定する構成を採ることができる。
また、本発明においては、前記測距手段と前記測光手段との配置に際し、つぎのような配置構成を採ることができる。
すなわち、前記測距手段と前記測光手段のそれぞれが有する測定光学系の光軸を、前記投写レンズの光軸に対して所定の間隔を持つよう配置し、前記所定の間隔の一方の間隔をdH、他方の間隔をdLとしたとき、dH≦dLとなる配置構成を採ることができる。
また、本発明の光学機器においては、上記したいずれかに記載の投写レンズ装置を有する構成としたことを特徴としている。
具体的には、本発明の投写レンズ装置を備えた投写型画像表示装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を増やさず、測距手段及び測光手段の測定位置のバラツキを抑制でき、高精度で安価にオートフォーカス、あるいは元画像の色情報等を基準に画像補正が可能な投写レンズ装置実現することができる。
また、このような投写レンズ装置を有する光学機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1において、本発明を適用して構成した投写型画像表示装置の投写レンズ鏡筒について説明する。
本実施例の投写レンズ鏡筒は一般的なズームレンズを用いて構成されるので、まず、一般的なズームレンズについて説明する。
図1に、一般的なズームレンズの分解斜視図を示す。
101は第1レンズ群を保持した1群鏡筒、102は第2レンズ群を保持した2群鏡筒、103は第3レンズ群を保持した3群鏡筒、104は第4レンズ群を保持した4群鏡筒である。
また、105は第5レンズ群を保持した5群鏡筒、106は第6レンズ群を保持した6群鏡筒、107は固定筒、108はカム環、109はカムフォロアである。
【0011】
第1レンズ群はフォーカス系レンズ群であり、1群鏡筒101の外周にヘリコイドネジが設けてあり、固定筒107の内径に設けたヘリコイドネジと螺合されている。手動または電動により1群鏡筒101が光軸周りに回動されると光軸方向へ移動しフォーカシングを行う。
6群鏡筒106はリレー系レンズ群を保持しており、固定筒107にスラスト方向からビス(図示せず)により固定されている。
2群鏡筒102、3群鏡筒103、4群鏡筒104、5群鏡筒105はそれぞれズーム系のレンズ群を保持する鏡筒であり、それらは光軸方向へそれぞれ所定の量だけ移動しズーミングを行う。
【0012】
つぎに、移動機構について説明をする。
2群鏡筒102、3群鏡筒103、4群鏡筒104、5群鏡筒105は、それぞれラジアル方向120°毎の3方向からカムフォロア109が取り付けられている。
各鏡筒に取り付けられたカムフォロア109は、固定筒107に設けたレンズ鏡筒用案内溝107A及びカム環108の外周に設けられたつぎのそれぞれのカムによってガイドされている。すなわち、2群鏡筒用カム108A、3群鏡筒用カム108B、4群鏡筒用カム108C、5群鏡筒用カム108Dによりそれぞれガイドされている。ここで、固定筒107に対して、バヨネット構造等により光軸方向への移動を規制されているカム環108が、光軸周りに手動または電動により定位置回転することによって、各群は各々のカム軌跡に従い所定の距離を移動する。
【0013】
つぎに、本実施例における投写レンズ鏡筒について説明する。
図2に、本実施例における投写レンズ鏡筒自体に測距手段及び測光手段を保持部材を介し保持して構成した投写レンズ鏡筒の斜視図を示す。
図2において、100はズームレンズにより構成した投写レンズ鏡筒、201は測距手段、202は測光手段、203はモーターユニット、204は測距手段および測光手段保持部材である。
本実施例においては、ズームレンズにより構成した投写レンズ鏡筒100に、測距手段201及び測光手段202が、測距手段および測光手段保持部材204を介して保持されている。そして、この測距手段201により測定されたスクリーン等の被投写面までの距離情報により、モーターユニット203を介し、フォーカス系レンズ群を所定の位置まで回動させることでAFを行う。
【0014】
また、測光手段202により測定された投写画像の色情報や輝度が、投写型画像表示装置に入力された元画像と色味等の色情報や輝度と異なった際には、投写型画像表示装置に入力された元画像の色情報を基準として、投写する画像に補正をかける。
この際に、測距手段201は光軸位置で測距が行えるように設置されている。さらに、測光手段202はTELE状態で投写画像のなるべく広い範囲を測光することができるように設置されている。
【0015】
つぎに、上記測距手段及び測光手段による測定位置について説明する。
図3に、本実施例における投写レンズ鏡筒に保持部材を介し保持された測距手段及び測光手段の測定位置を説明する図を示す。
測距手段の測定位置201Aは、WIDEからTELEへのズーミングから影響を受けない位置である光軸位置を示している。
また、測光手段の測定位置202Aは、ある投影距離での一番画像が小さい状態の位置を示している。つまり、この位置はTELE状態で投写画像のなるべく広い範囲(斜線部)を測定する位置である。
【0016】
このように前記測距手段と前記測光手段とは、被投写面に投写した画像の異なる位置および異なる範囲の測定が可能となるように、測定位置および測定範囲を定めることで、投写レンズに特有の問題である前述した画角を変動させた際に生じる問題を回避できる。つまり、測距手段と測光手段が被投写面に対して異なる方向を向くようにすることで、WIDEからTELEへ画角を変動させた際に、画面の中心が変動してしまうことからの影響を受けずに、AFを行うことが可能となる。さらに、元画像の色情報を基準に投写する画像に補正をかけることが可能となる。
【0017】
以上の本実施例の構成によれば、投写レンズ鏡筒に測距手段及び測光手段を保持部材を介し保持されるように構成したことにより、測距手段においては、広い範囲を測距する必要も、また調整機構の必要もなくなる。これにより高精度で安価にAFを行うことが可能となる。また、測光手段においても、狭い範囲を測光する必要も、また調整機構の必要もなくなる。したがって、高精度で安価に画像の色情報を基準に投写する画像に補正をかけることが可能となる。
【0018】
[実施例2]
実施例2において、実施例1の投写レンズ鏡筒を備えた投射型画像表示装置について説明する。
図4に、本実施例における投写レンズ鏡筒を備えた投射型画像表示装置の斜視図を示す。
図4において、100は投写レンズ鏡筒、201は測距手段、202は測光手段、300は投射型画像表示装置(プロジェクタ)である。
プロジェクタ300の筐体内には、光源ランプ、照明系、色分解系、画像形成素子および色合成系等を内蔵した光学ボックスが収納されている。
光学ボックスの光射出部には、投写レンズ鏡筒100が取り付けられる。
投写レンズ鏡筒100によって、筐体の前面に形成された開口を通して不図示のスクリーンに画像を投写する。
【0019】
本実施例においては、図2に示したように、測距手段201及び測光手段202は、それぞれの測定光学系の光軸を前記投写レンズ100の光軸に対して所定の間隔を持つように配置されている。
前記所定の間隔を、測定位置および/または測定範囲に対する取り付け敏感度の高い測定手段である測距手段201の間隔をdH、測光手段202をdLと定め、dH≦dLとなるように配置する。
このことにより、測距手段201は前記取り付け敏感度が測光手段202よりも高く、測距手段および測光手段保持部材204の部品公差等により測定基準位置から外れてしまい易いという問題を抑制することが可能となる。
以上の本実施例の構成によって、より安価で高性能なAF及び元画像の色情報を基準に投写する画像に補正をかけることが可能となる投射型画像表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1におけるズームレンズにより構成した投写レンズ鏡筒の分解斜視図。
【図2】本発明の実施例1における投写レンズ鏡筒に測距手段及び測光手段を保持部材を介し保持して構成した投写レンズ鏡筒の斜視図。
【図3】本発明の実施例1における投写レンズ鏡筒に保持部材により保持された測距手段及び測光手段の測定位置を説明する図。
【図4】本発明の実施例2における投写レンズ鏡筒を備えた投射型画像表示装置の斜視図。
【符号の説明】
【0021】
100:投写レンズ鏡筒
101:1群鏡筒
102:2群鏡筒
103:3群鏡筒
104:4群鏡筒
105:5群鏡筒
106:6群鏡筒
107:固定筒
107A:案内溝
108:カム環
108A:2群鏡筒用カム
108B:3群鏡筒用カム
108C:4群鏡筒用カム
108D:5群鏡筒用カム
109:カムフォロア
208:カム環
201:測距手段
202:測光手段
203:モーターユニット
204:測距手段および測光手段保持部材
201A:測距手段の測定位置
202A:測光手段の測定位置
300:投射型画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子からの光を投写し、被投写面に画像を形成する投写レンズ装置であって、
前記投写レンズ装置の本体部材に、測距手段および/または測光手段が保持されていることを特徴とする投写レンズ装置。
【請求項2】
前記測距手段が、オートフォーカスを行うための測距手段であることを特徴とする請求項1に記載の投写レンズ装置。
【請求項3】
前記測光手段が、投写した画像の色情報および/または輝度の測定が可能に構成され、元画像の色情報等を基準として投写画像の補正を可能とする測光手段であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投写レンズ装置。
【請求項4】
前記投写レンズ装置が、ズームレンズで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投写レンズ装置。
【請求項5】
前記測距手段と前記測光手段は、それぞれ光学系を有し、これらの光学系の光軸が異なる方向に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の投写レンズ装置。
【請求項6】
前記測距手段と前記測光手段は、それぞれ光学系を有し、前記光学系の光軸は前記投写レンズの光軸に対して所定の間隔を持って配置され、前記所定の間隔の一方の間隔をdH、他方の間隔をdLとしたとき、dH≦dLとなる配置構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の投写レンズ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の投写レンズ装置を有することを特徴とする光学機器。
【請求項8】
前記光学機器が、投写型画像表示装置であることを特徴とする請求項7に記載の光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−72378(P2007−72378A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262089(P2005−262089)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】