投写型ディスプレイ装置
【課題】人がレーザ光を直接観察しても安全である投写型ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】照明光学系の像側の開口数Bが設定された場合、少なくとも1個の空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、レーザ駆動制御部が、少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定する。
【解決手段】照明光学系の像側の開口数Bが設定された場合、少なくとも1個の空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、レーザ駆動制御部が、少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像情報、文字情報などの入力情報に応じて変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大画面ディスプレイ装置として、投写型ディスプレイ装置及び背面投写型ディスプレイ装置が知られている。従来、光源としては高圧水銀ランプが用いられていたが、近年、色再現性の良さや消費電力の少なさから3原色のレーザ光を用いた投写型ディスプレイ装置の開発が進んでいる。高圧水銀ランプの光に対して、レーザ光は単色光であり、波面の揃った光であることから、人の目に入った時に網膜上の一点に集光し、網膜に障害を及ぼす可能性がある。従ってレーザを用いた製品については、国際規格IEC60825や、日本国内に於いてはJIS C6802:2005によってレーザ製品のクラス分けを行い、クラス毎に製造者や使用者が守るべき指針を設けて、レーザ製品取り扱いの安全性を高めようとしている。
【0003】
JIS C6802:2005では、最大許容露光量(Maximum Permissible Exposure:以下、MPEと呼ぶ)という用語を規定して、通常の環境下で、人体に照射しても有害な影響を与えることがないレーザ放射のレベルを、レーザ波長や光源の大きさ、露光時間、危険にさらされる組織、レーザパルス幅などをパラメータとして示している。MPEは、国際電気標準会議(IEC)のワーキンググループによりレーザによる事故例や動物を用いた実験的研究から得られた情報に基づいて決められている。従来の投写型ディスプレイ装置では、レーザ光の直接観察による網膜の損傷を避けるため画像投影領域内への人の侵入を検知し、レーザ光出力を遮断、またはMPE以下の安全なレベルまで下げる対策が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2994469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成に於いては、以下の問題点がある。
【0005】
第1に、画像投影領域内に人の侵入があったことを検知してレーザ光出力を低下させるので、人の侵入の検知手段の故障や、検知手段が正常に動作していたとしても、レーザ光を遮断するための回路の故障などがあれば、レーザ光が高出力で出射したままの状態となる可能性があり、人は投写型ディスプレイ装置に近接してレーザ光を観察できてしまい、その結果、網膜を損傷する恐れがある。
【0006】
第2に、投写型ディスプレイ装置に限らず、レーザを用いた機器では、筐体を開けてレーザ光源にアクセスしようとした場合にはインターロック装置が働いてレーザが発光しなくなるようにして安全性を確保しているが、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用する可能性もある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するものであり、その一つの目的は、人がレーザ光を直接観察しても安全である投写型ディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、少なくとも1個のレーザ光源と、照明光学系と、少なくとも1個の空間光変調素子と、投影光学系と、レーザ駆動制御部とを含む。前記照明光学系は、前記レーザ光源から出射したレーザ光を前記少なくとも1個の空間光変調素子に照射する。前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する。前記投影光学系は、前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する。前記レーザ駆動制御部は、前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人がレーザ光を直接観察しても安全である投写型ディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、本実施の形態1では、単一波長帯域のレーザ光または波長帯域の異なる複数のレーザ光を出射する1個のレーザ光源と、照明光学系から出射された少なくとも1個のレーザ光が照射される1個の透過型の空間光変調素子とを用いる。
【0012】
図1において、11はレーザ光源を示し、単一波長帯域もしくは複数波長帯域の半導体レーザまたは半導体レーザ励起固体レーザからなっている。12は照明光学系を示し、フライアイレンズやロッドインテグレータなどのビームホモジナイザーと、ビームホモジナイザーによって矩形またはライン状の均一な光量分布を有するレーザ光に整形された光を投射するリレー光学系とからなる。照明光学系12内には、レーザ光を均一化するために拡散板を設けることが望ましい。13は空間光変調素子を示す。空間光変調素子13は、照明光学系2によって投射されたレーザ光の強度を、映像情報や文字情報といった入力情報に応じて変調する。14は投影光学系を示し、空間光変調素子13によって変調されたレーザ光をスクリーン15に投影する。16はレーザ光を示す。17はレーザ駆動制御部を示し、レーザ光源11への駆動電流を制御することにより、レーザ光源11の出力パワーを制御する。
【0013】
次に、図1に示す投写型ディスプレイ装置の動作について、以下に簡単に説明する。レーザ駆動制御部17により駆動電流がレーザ光源11に供給されると、レーザ光源11はレーザ光を出射し、レーザ光源11から出射したレーザ光16は照明光学系12によって所定の光量分布と収束角を有する光束として空間光変調素子13に照射される。所定の光量分布とは、空間光変調素子13の空間変調領域をほぼ均一に照射することを意味し、所定の収束角とは、照明光学系12の像側の開口数に等しく、また投影光学系14の物体側の開口数にもほぼ等しい。空間光変調素子3によって例えば映像情報に応じて変調されたレーザ光16は、投影光学系14を通じてスクリーン15に拡大投影される。スクリーン15によってレーザ光16を反射もしくは散乱することによって、例えば映像を観察者が見ることができるようになる。
【0014】
図2は、投写型ディスプレイ装置の光量計算用モデルおよび光路を示す図であり、図2において、図1と同一の要素については、同一の符号を附して説明を省略する。図2において、21は開口を示し、直径7mmの穴を有する板である。開口21の穴の直径は人の瞳の直径に合わせている。22はレンズを示し、開口21に密着している。23は視野絞りを示し、穴のあいた板である。視野絞り23はレンズ22の焦平面に設けられている。視野絞り23の穴の直径は、レンズ22の焦点距離をfとすると、0.1×fに等しくなるように設定されている。視野絞り23の穴の直径を0.1×fとすることにより、レンズ22を通過した光のうち、視野角0.1ラジアン(θmax)以内の光だけが視野絞り23を通過することができる。24は光検出器を示し、視野絞り23を通過した光の光量を検出する。25は光量測定光学系を示し、開口21と、レンズ22と、視野絞り23と、光検出器24とからなる。光量測定光学系25を用いて、投影光学系14から出射するレーザ光16の光量を測定することにより、人の目に対する露光量を知ることができる。この露光量に関して、図2を用いながら説明する。
【0015】
人がレーザ光を見た時、生体の嫌悪反応により、反射的にまばたきをしたり、レーザ光から目を背けて目を保護しようとする。この反応時間は0.25秒とされている。0.25秒の間レーザ光を見ても安全なMPEは、レーザ照射の事故例や動物実験から得られた知見に基づき、JIS C6802:2005の中で、
6.4×(C6)(J/m2)
=25.6×103×(C6)(mW/m2) …(式1)
と規定されている(JIS C6802:2005 p41 表6参照)。ここで、上記C6は、人がレーザ光を見た時の光源の大きさに基づく補正係数である。光源の大きさは、人がレーザ光を見た時に光源が目に対して張る視角(ラジアン)で与えられる。光源の大きさが一定値を超えると、光源の大きさはMPEに無関係になる。その一定値が最大視角(θmax)として0.1ラジアンと決められている。上記C6は、光源の視角を0.0015ラジアンで除した値であり、C6の最大値は光源の視角が最大視角の時に66.7となる。
【0016】
空間光変調素子13の一点から光検出器24に入射するレーザ光のパワーは、空間光変調素子13の一点から出射し、投影光学系14によりスクリーン15上に投影される光束と開口21の重なりとの割合と、上記一点から出射するレーザ光のパワーとの積である。レーザの安全を検討する上で考慮すべき最大限の視角は0.1ラジアンであるので、空間光変調素子13上の最大視角0.1ラジアンに相当する領域内の点から出射するレーザ光について、上述の計算を行えば露光量が判る。
【0017】
瞳の直径は7mmであるので瞳の面積は、π×(3.5×10−3)2m2となり、最大視角0.1ラジアンの光源からレーザ光が0.25秒間に瞳に入射しても損傷を及ぼさないMPEに相当するレーザ光パワーは、上記(式1)に、C6=66.7を代入して瞳の上記面積を乗算すると、66mWとなる。
【0018】
ここで、空間光変調素子13と投影光学系14との間の距離をS(mm)とすると、上記最大視角0.1ラジアンに相当する空間光変調素子13上の領域は直径が0.1×Sの円内の領域となる。よって、最大視角0.1ラジアンに相当する空間光変調素子13上の領域から出射されるレーザ光のパワーは、空間光変調素子13上のレーザ光の強度をA(mW/mm2)とすると、
π×(0.05×S)2×A …(式2)
となる。
【0019】
空間光変調素子13の一点から出射される円錐状の発散ビームの広がり角は、照明光学系12の像側の開口数Bに等しいので、投影光学系14から出射される収束ビームの瞳面での半径はほぼS×Bとなり、収束ビームの光束断面積に対する瞳の前記面積の割合は、
π×(3.5)2/π×(S×B)2
=(3.5/(S×B))2 …(式3)
となる。
【0020】
瞳に入射する最大のレーザ光パワーは、上記(式2)と上記(式3)を乗算したものとなり、以下の(式4)で与えられる。
【0021】
π×(0.05×S)2×A×(3.5/(S×B))2 …(式4)
最大視角0.1ラジアンの光源からレーザ光が0.25秒間に瞳に入射しても損傷を及ぼさないMPEに相当するレーザ光パワーは、上記したように、66mWであるので、
π×(0.05×S)2×A×(3.5/(S×B))2<66
すなわち、
A<686×B2 …(式5)
を満たすように、レーザ駆動制御部17は、レーザ光源11の出力パワーを設定する。
【0022】
以上のように、本実施の形態1によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0023】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。本実施の形態2では、波長帯域の異なる3個のレーザ光を出射する3個のレーザ光源と、照明光学系から出射された3個のレーザ光がそれぞれ照射される3個の反射型空間光変調素子とを用いる。
【0024】
図3において、401R、401G、401Bはそれぞれ赤色、緑色、青色のレーザ光を出射するレーザ光源を示す。402aは赤色レーザ光を透過し、緑色レーザ光を反射するダイクロックミラー、402bは赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過し、青色レーザ光を反射するダイクロックミラーを示す。404は、レーザ駆動制御部を示し、3原色のレーザ光源401R、401G、401Bへの駆動電流を制御することにより、各レーザ光源の出力パワーを制御する。403は照明光学系を示し、ダイクロックミラー402bから光軸を揃えて出射された3原色のレーザ光を照射する。3原色のレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404とは、レーザユニット40A内に収納されている。
【0025】
32a、32bはダイクロイックミラーを示し、特定波長のレーザ光を反射し、他の波長のレーザ光は透過する。32Rはミラーを示す。33G、33B、33Rはそれぞれ緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光に対応して設けた偏光ビームスプリッタを示す。34G、34B、34Rはそれぞれ緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光が照射される反射型空間光変調素子を示し、好ましくは反射型液晶パネルやマイクロミラーアレイである。35は偏光ダイクロイックプリズム、36は投影レンズを示す。37は3原色のレーザ光である。
【0026】
43Aはメイン制御部を示し、投射型ディスプレイ装置の全体の動作を制御するとともに、外部からの入力に応じて、レーザ駆動制御部404におけるパワー制御モードを切り換える。メイン制御部43Aには、入力情報判定部431が含まれ、外部から入力された入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのか判定する。ここで、映像情報とは単色または多色で3値以上の静止画情報および動画情報を含む画像情報を意味し、文字情報とはキャラクタコードを画像変換した単色で2値の画像情報を意味する。
【0027】
44は外光センサを示し、外光に含まれる3原色の光の照度を検出する。45は操作部を示し、操作部45にてユーザによる各種の設定、操作が行われる。
【0028】
図3において、レーザ駆動制御部404により駆動電流が3原色のレーザ光源401R、401G、401Bに供給されると、赤色レーザ光源401Rは赤色レーザ光を出射し、緑色レーザ光源401Gは緑色レーザ光を出射し、青色レーザ光源401Bは青色レーザ光を出射する。3原色のレーザ光源401R、401G、401Bからそれぞれ出射してダイクロックミラー402bを透過したレーザ光37は、照明光学系403によりダイクロックミラー32aに照射される。ダイクロイックミラー32aは、3原色のレーザ光37のうち、赤色レーザ光だけを反射し、反射された赤色レーザ光は、ミラー32Rで反射された後、偏光ビームスプリッタ33Rで反射されて反射型空間光変調素子34Rに入射する。反射型空間光変調素子34Rで変調および反射された赤色レーザ光のうち、偏光面が90°回転したレーザ光だけが、偏光ビームスプリッタ33Rを透過する。偏光ビームスプリッタ33Rを透過した赤色レーザ光は、偏光ダイクロイックプリズム35によって反射されて投影光学系36によって図示しないスクリーンに投影される。
【0029】
また、3原色のレーザ光37のうち、青色レーザ光は、ダイクロイックミラー32aおよび32bを透過した後、偏光ビームスプリッタ33Bで反射されて、反射型空間光変調素子34Bで変調および反射された後、偏光ビームスプリッタ33Bを透過し、偏光ダイクロイックプリズム35によって反射され、投影光学系36に入射する。
【0030】
また、3原色のレーザ光37のうち、緑色レーザ光は、ダイクロイックミラー32aを透過した後、ダイクロイックミラー32bで反射され、偏光ビームスプリッタ33Gで反射されて反射型空間光変調素子34Gに入射する。反射型空間光変調素子34Gで変調および反射された緑色レーザ光は、偏光ビームスプリッタ33Gと偏光ダイクロイックプリズム35を透過し、投影光学系35に入射する。
【0031】
ここで、反射型空間光変調素子34G、34B、34Rには、メイン制御部43Aから、入力情報に応じて色信号処理して得られた緑色信号、青色信号、赤色信号がそれぞれ供給され、反射型空間光変調素子34G、34B、34Rはそれぞれ、緑色信号、青色信号、赤色信号に応じて、緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光を変調する。
【0032】
本実施の形態2の投写型ディスプレイ装置では、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源、青色レーザ光源の出力パワーは人の目の比視感度に対応して決められ、3原色が同時に出射された時に人の目に対して白色として認知されるような出力比になる。本実施の形態2においては、反射型空間光変調素子34G上でのレーザ光の強度をAg、反射型空間光変調素子34B上でのレーザ光の強度をAb、反射型空間光変調素子34R上でのレーザ光の強度をArとした場合、Ag、Ab、Arと照明光学系31の開口数Bとの関係が、前記(式5)を用いて、(Ag+Ab+Ar)<686×B2を満たすように、レーザ駆動制御部404が3原色のレーザ光源401G、401B、401Rの出力パワーを設定する(第1のパワー制御モード)。これにより、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、波長帯域の異なる光の色バランス調整が容易である投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0033】
また、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光のうち、緑色レーザ光が最も比視感度が高いので、レーザ駆動制御部404は、反射型空間光変調素子34G上での緑色レーザ光の強度Agのみが、Ag<686×B2を満たすように、緑色レーザ光源401Gの出力パワーを設定し、他の赤色レーザ光源401R、青色レーザ光源401Bのレーザ発光を停止させることもできる(第2のパワー制御モード)。これにより、単色(緑色)であるが、コントラストを向上させた、より明るい投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0034】
また、メイン制御部43Aは、入力情報判定部431により入力情報が映像情報であると判定された場合、前記第1のパワー制御モードを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送り、入力情報判定部431により入力情報が文字情報であると判定された場合、前記第2のパワー制御モードを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示かを自動的に選択することができる。
【0035】
また、メイン制御部43Aは、3原色の光のうち、外光センサ44により検出された照度が最も高い光の色に対応する色のレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを外光センサ44により検出された照度に応じて下げる(第3のパワー制御モード)指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させることができる。
【0036】
さらに、メイン制御部43Aは、ユーザにより操作部45から入力された指示に応じて、前記第1のパワー制御モード、前記第2のパワー制御モード、および前記第3のパワー制御モードのいずれかを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、ユーザが操作部45から指示を入力することで、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示か、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた映像および/または文字表示かを自由に選択することができる。
【0037】
なお、反射型空間光変調素子34R、34G、34Bとしては、反射型液晶パネルやマイクロミラーアレイなどを用いることができる。空間光変調素子として透過型液晶パネルを用いると開口率が低いので、光源の光出力が大きくなるために大型化しやすく、小型の投写型ディスプレイ装置を得られない。しかし、本実施の形態2では、空間光変調素子として開口率の高い反射型空間光変調素子を用いることで、小型で安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0038】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全性だけでなく、レーザ光源を装置から取り外して他の用途に転用することを防止するための構成を有する。また、本実施の形態3では、波長帯域の異なる3個のレーザ光を出射する3個のレーザ光源と、照明光学系から出射された3個のレーザ光が照射される1個の透過型の空間光変調素子とを用いる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態3に係る投射型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、図4において、実施の形態2で参照した図3と同じ構成及び機能を有する要素については、同じ符号を付して説明を省略する。以下では、主に、実施の形態2との相違点について説明する。
【0040】
図4において、本実施の形態3の投射型ディスプレイ装置は、レーザユニット40Bと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42と、メイン制御部43Aと、外光センサ44と、操作部45とから構成される。レーザユニット40Bと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42とは、図4では示さないが図5Aおよび図5Bを参照して後述する筐体内に収納されている。
【0041】
レーザユニット40Bは、3原色の半導体レーザから成るレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロイックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404と、逆電圧発生部405と、切替部406R、406G、406Bとを収納する。以下、本実施の形態3の特徴的構成である逆電圧発生部405と切替部406R、406G、406Bについて説明する。
【0042】
逆電圧発生部405は、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源401R、401G、401Bの破壊電圧に等しいまたは破壊電圧よりも大きい逆電圧(例えば、2〜5ボルト)を発生して3原色のレーザ光源401R、401G、401Bに印加する。この破壊電圧は、半導体レーザの最大定格逆電圧よりも大きい逆電圧である。
【0043】
切替部406R、406G、406Bは、レーザ駆動制御部404からのレーザON/OFF信号に応じて、レーザ光源の駆動時には、レーザ駆動制御404と3原色のレーザ光源401R、401G、401Bとを接続し、レーザ光源の非駆動時には、逆電圧発生部405と3原色のレーザ光源401R、401G、401Bとを接続する。
【0044】
図5Aは、図4に示す逆電圧発生回路405の一例を示す構成図である。図5Aにおいて、51は、図4の40Bに相当するレーザユニットを示し、52は筐体を示す。逆電圧発生部405Aは、蓄電池53と、電池ホルダ54と、負極用導体板55と、正極用導体56と、ストッパ57とから構成される。
【0045】
蓄電池53は、ボタン型の蓄電池であり、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池などのアルカリ蓄電池やリチウムイオン蓄電池を用いることができる。なお、図5Aでは、ボタン型の蓄電池を例示しているが、円筒型の蓄電池を用いてもよい。
【0046】
電池ホルダ54は、レーザユニット51の内部底面に固定され、蓄電池53を収容するとともに、蓄電池53の負電極に対して一側に設けられた負極用導体板55に接続された端子T1と、蓄電池53の正電極に対して他側に設けられた正極用導体板56に接続された端子T2との間の電池電圧を逆電圧として、図4の切替部406R、406G、406Bに供給する。負極用導体板55は、板バネ状に形成され蓄電池53の負電極にバネ力で常に当接している。
【0047】
ストッパ57は、硬質の樹脂などの電気絶縁材料で形成され、直立部571と底部572から成るT次の縦断面形状を有する。ストッパ57の直立部571は、筐体52の底部に設けられた開口、レーザユニット51の底部に設けられた開口を通して、正極用導体板56と蓄電池53の正電極との間に挿入され、蓄電池53を介して付勢される、電池ホルダ54の負極用導体板55のバネ力により保持されている。ストッパ57の底部572は、筐体52の外部底面に当接している。
【0048】
上記の状態で、筐体52からレーザユニット51が離されると、ストッパ57は底部572が筐体52の外部底面に当接したままの状態を維持するので、蓄電池53の正電極は電池ホルダ54の正極用導体板56に当接して、端子T1と端子T2との間に逆電圧が発生する。この逆電圧が、切替部406R、406G、406Bを介してレーザ光源401R、401G、401Bに印加されることで、レーザ光源401R、401G、401Bが破壊される。
【0049】
なお、図5Aでは、蓄電池53を用いたが、代わりに電気二重層キャパシタを用いてもよい。
【0050】
図5Bは、図4に示す逆電圧発生部405の他の例を示す構成図である。図5Bにおいて、逆電圧発生部405Bは、コイル61と、永久磁石62と、バネホルダ63と、バネ64と、磁石ホルダ65と、ストッパ66と、ローラ67と、金属ワイヤ68と、ワイヤ固定具69とから構成される。
【0051】
コイル61は、端子T1と端子T2を有し、レーザユニット51の内部底面に固定されている。永久磁石62は、バネホルダ63内に収容されたバネ64により付勢された磁石ホルダ65により、図面左右方向での移動が制限され、下方に押圧されている。
【0052】
ストッパ66は、コイル61の上部と永久磁石62のN極側との間に挿入および保持され、ストッパ66の一端が金属ワイヤ68の一端に接続され、金属ワイヤ68は、ローラ67を介して左方向から下方向へと延伸し、金属ワイヤ68の他端は、レーザユニット51に対しては接触が疎で筐体52に対しては接触が密に嵌合されたワイヤ固定具69の中空部を介して外面に半田付け等で接着されている。
【0053】
上記の状態で、筐体52からレーザユニット51が離されると、ストッパ66は、金属ワイヤ68を介してワイヤ固定具69により固定されているので、左方向へと移動しローラ67により下方向へと移動して、永久磁石62のN極側とコイル61の上部との間から抜ける。これにより、永久磁石62は、バネ64の付勢力により下方向に押し出され、コイル61中を通って、レーザユニット51の底部に設けられた開口51aから筐体52の内部底面上に落ちる。
【0054】
永久磁石62がコイル61中を通る際に、コイル61の端子1と端子2の間に誘導起電力が発生し、これが逆電圧として、切替部406R、406G、406Bを介してレーザ光源401R、401G、401Bに印加されることで、レーザ光源401R、401G、401Bが破壊される。
【0055】
以上のように、本実施の形態3によれば、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源を破壊することで、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止することができる。
【0056】
(実施の形態4)
図6Aは、本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、図6Aにおいて、実施の形態3で参照した図4と同じ構成および機能を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施の形態4が実施の形態3と異なるのは、逆電圧発生部と切替部を削除して、緑色レーザ光源を含むレーザユニットが装置から取り外された場合に、単に電源供給をしただけでは緑色レーザ光源がレーザ発光できないようにする構成を有する点にある。以下、主に、実施の形態3との相違点について説明する。
【0058】
図6Aにおいて、本実施の形態4の投射型ディスプレイ装置は、レーザユニット40Cと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42と、メイン制御部43Bと、外光センサ44と、操作部45とから構成される。
【0059】
レーザユニット40Cは、3原色の半導体レーザから成るレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロイックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404とを収納する。以下、本実施の形態4の特徴的構成である緑色レーザ光源401Gについて説明する。
【0060】
図6Bは、図6Aの緑色レーザ光源401Gの構成図である。図6Bにおいて、緑色レーザ光源401Gは、赤外半導体レーザ(IR)4011と、希土類添加光ファイバ4012と、第2高調波発生素子(SHG)4013と、ペルチェ素子4014と、温度センサ4015とから構成される。
【0061】
赤外半導体レーザ4011は、励起用の例えば波長915nmの赤外レーザ光を出射する赤外の半導体レーザから成る。希土類添加光ファイバ4012は、希土類元素として例えばイッテルビウムがドーピングされ、赤外半導体レーザ4011から出射された赤外レーザ光により希土類元素が励起されて、例えば波長1064nmのレーザ光を出射する。第2高調波発生素子4013は、希土類添加光ファイバ4012から増幅されて出射された赤外レーザ光を入射して第2高調波である緑色レーザ光に波長変換して出射する。また、第2高調波発生素子4013は、常温よりも低い所定温度で位相整合する、すなわち効率よく波長変換するよう構成されている。ペルチェ素子4014は、メイン制御部43Bからのペルチェ制御信号に応じて、第2高調波発生素子4013を所定温度に冷却する。温度センサ4015は、第2高調波発生素子4013の温度を検出して、検出した温度を示す温度信号をメイン制御部43Bに送る。メイン制御部43Bは、温度センサ4015から送られた温度信号に応じて、第2高調波発生素子4013の温度が常温より低い所定温度になるよう、ペルチェ素子4015にペルチェ制御信号を送り温度制御を行う。
【0062】
このように構成された緑色レーザ光源401Gを含むレーザユニット40Cが装置から取り出されると、メイン制御部43Bによる第2高調波発生素子4013の温度制御が行われず、第2の高調波発生素子4013は位相整合しなくなるので、緑色レーザ光源401Gのレーザ発光が停止したままの状態となる。
【0063】
以上のように、本実施の形態4によれば、投写型ディスプレイ装置から緑色レーザ光源401Gを取り外した場合、第2の高調波発生素子4013の温度は位相整合温度である低温に調整されず、緑色レーザ光源401Gは発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止することができる。
【0064】
(実施の形態5)
図7Aは、本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体に固定されている場合の部分構成図である。本実施の形態5が実施の形態4と異なるのは、緑色レーザ光源のペルチェ素子と温度センサを削除して、緑色レーザ光源を含むレーザユニットが装置から取り外された場合に、希土類添加光ファイバを切断することで、緑色レーザ光源がレーザ発光できないようにする構成を有する点にある。以下、主に、実施の形態4との相違点について説明する。
【0065】
図7Aにおいて、レーザユニット71は、赤外の半導体レーザ73、希土類添加光ファイバ74、および第2高調波発生素子75からなる緑色レーザ光源と、金属ワイヤ76と、ワイヤ固定具77とから構成され、筐体72の内部底面に固定されている。金属ワイヤ76は、一端に希土類添加光ファイバ74を通す輪を有し、その他端はワイヤ固定具77の中空部を介して外面で半田等により接着されている。金属ワイヤ76は、希土類添加光ファイバ74の強度に比べて十分大きな強度を有する。ワイヤ固定具77は、実施の形態3で参照した図5Bのワイヤ固定具69と同様の構成および機能を有する。
【0066】
図7Bは、図7Aに示すレーザユニット71が筐体72から離された場合の部分構成図である。なお、図7Bにおいて、図7Aと同じ構成および機能を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図7Bに示すように、レーザユニット71が筐体72から離された場合、金属ワイヤ76はワイヤ固定具77に固定されているので、金属ワイヤ76の一端に設けられた輪が希土類添加光ファイバ74を切断する。
【0068】
以上のように、本実施の形態5によれば、筐体72からレーザユニット71が取り外された場合、筐体72に間接的に、すなわち金属ワイヤ76とワイヤ固定具77を介して固定されていた希土類添加光ファイバ74の一部分が切断されて、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0069】
(実施の形態6)
図8Aは、本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。本実施の形態6の半導体レーザは、実施の形態1〜3の3原色のレーザ光源、および実施の形態4、5の赤色レーザ光源および青色レーザ光源に適用される。
【0070】
図8Aにおいて、レーザ光源は、ステム81に接続された共通端子82上にレーザダイオードチップ83のPN接合のN側を固着し、レーザダイオードチップ83のP側とステム81を貫通する電源端子84とを金属ワイヤ85で内部接続し、窓86付きキャップ87をステム81上に取り付けてレーザダイオードチップ83を封止したキャンタイプの半導体レーザから成る。半導体レーザは、共通端子82と電源端子84を含む3本の端子が配線基板88の対応する穴に挿入され、配線基板88の裏面の配線ランドに半田付けされて、実装されている。
【0071】
電源端子84は、半導体レーザ本体内で一部に、電源端子84の強度を低下させる切欠け841を有する。
【0072】
図8Bは、本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【0073】
図8Bに示すように、半導体レーザの3本の端子を配線基板88の裏面の配線ランドに接着していた半田が加熱により溶融し、半田が除去されて、配線基板88から取り外される際に、電源端子84の切欠け841に外力が加わることで、電源端子84が切断される。
【0074】
なお、半導体レーザの3本の端子のうち電源端子84を形成する金属材料のみを、他の端子を形成する金属材料に比べて、強度の弱い材料とすることで、本実施の形態6による効果はさらに大きくなる。
【0075】
以上のように、本実施の形態6によれば、半導体レーザを配線基板88から取り外す際に加わる外力により、半導体レーザの電源端子84がレーザ本体内部で切断されて、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0076】
(実施の形態7)
図9Aは、本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。なお、図9Aにおいて、実施の形態6で参照した図8Aと同じ構成を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、実施の形態6と同様に、本実施の形態7の半導体レーザは、実施の形態1〜3の3原色のレーザ光源、および実施の形態4、5の赤色レーザ光源および青色レーザ光源に適用される。
【0077】
本実施の形態7が実施の形態6と異なるのは、電源端子の構造および配線基板への接着の仕方である。
【0078】
図9Aにおいて、基板実装時に、半導体レーザの電源端子91に対してのみ、配線基板88の対応する挿入穴の中および挿入穴の基板表面での周囲に、熱硬化性または紫外線硬化性の樹脂材料92が塗布されて、半導体レーザの3本の端子が配線基板88の対応する穴に挿入され、樹脂材料92への加熱または紫外線の照射により、電源端子84が配線基板88に固定される。これにより、ステム81が電源端子91を保持する力よりも大きな力で配線基板88の樹脂材料92が電源端子91を保持することになる。
【0079】
図9Bは、本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。図9Bに示すように、半導体レーザを配線基板88から取り外すと、ステム81が電源端子91を保持する力よりも、配線基板88が電源端子91を保持する力のほうが大きいので、電源端子91はレーザ本体から抜けて配線基板88に留まることになり、半導体レーザへの電源供給は不能となり、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0080】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8は、実施の形態1から7の照明光学系の像側の開口数Bの設定方法に関する。一般に、光学系の開口数が0.25を超えるとレンズ構成が複雑になりかつ、レンズも大型化してくる。低コストで小型の投写型ディスプレイ装置を実現するために、本実施の形態8では、照明光学系の像側の開口数Bを0.25または0.25未満に設定する。照明光学系の像側の開口数Bが0.25または0.25未満に設定することは、実施の形態1で導いた(式5)から、空間光変調素子上のレーザ光の強度が43mW/mm2または43mW/mm2未満に設定されることになる。これにより、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0081】
なお、本発明の実施の形態1〜8においては、空間光変調素子に伝送された画像色信号に応じて変調されたレーザ光を投影レンズによって結像させることで画像表示を行ったが、本発明の投写型ディスプレイ装置は、空間光変調素子の有無によらず、レーザ光源と照明光学系だけでカラー照明を行う投写型ディスプレイ装置や、液晶パネルなどをカラー照明する投写型ディスプレイ装置も含む。
【0082】
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
【0083】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、少なくとも1個のレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部とを備えたことを特徴とする。
【0084】
この構成によれば、空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たせば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を提供することができる。
【0085】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、波長帯域の異なるN個のレーザ光をそれぞれ出射するN個のレーザ光源であり、前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射された前記波長帯域の異なるN個のレーザ光の強度を前記入力情報に応じて変調する1個の空間光変調素子であることが好ましい。
【0086】
この構成によれば、N個のレーザ光源からそれぞれ出射された波長帯域の異なるN個のレーザ光を、1個の空間光変調素子により入力情報に応じて変調してスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置を構成することができる。
【0087】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、波長帯域の異なるN個のレーザ光をそれぞれ出射するN個のレーザ光源であり、前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射された前記波長帯域の異なるN個のレーザ光の強度をそれぞれ前記入力情報に応じて変調するN個の空間光変調素子であることが好ましい。
【0088】
この構成によれば、N個のレーザ光源からそれぞれ出射された波長帯域の異なるN個のレーザ光を、N個の空間光変調素子により入力情報に応じてそれぞれ変調してスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置を構成することができる。
【0089】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ駆動制御部は、前記波長帯域の異なるN個のレーザ光のそれぞれの、前記空間光変調素子上での強度を加算した強度Aが前記A<686×B2を満たすように、前記N個のレーザ光源の出力パワーを設定する第1のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0090】
この構成によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、波長帯域の異なる光の色バランス調整が容易である投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0091】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ駆動制御部は、前記波長帯域の異なるN個のレーザ光のうち、比視感度が最も高い波長帯域を有するレーザ光の、前記空間光変調素子上での強度Aが前記A<686×B2を満たすように、前記比視感度が最も高い波長帯域を有するレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを設定し、他のレーザ光源のレーザ発光を停止させる第2のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0092】
この構成によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、単色(緑色)であるが、コントラストを向上させた、より明るい投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0093】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、前記入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのかを判定する入力情報判定部を備え、前記レーザ駆動制御部は、前記入力情報判定部により前記入力情報が映像情報であると判定された場合、前記第1のパワー制御モードを設定し、前記入力情報判定部により前記入力情報が文字情報であると判定された場合、前記第2のパワー制御モードを設定することが好ましい。
【0094】
この構成によれば、入力情報判定部で入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのかを判定し、その判定結果に応じて、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示かを自動的に選択することができる。
【0095】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、外光に含まれる前記波長帯域の異なる光の照度を検出する外光センサを備え、前記レーザ駆動制御部は、前記N個のレーザ光の異なる波長帯域のうち、前記外光センサにより検出された照度が最も高い光の波長帯域に対応する波長帯域を有するレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを前記外光センサにより検出された照度に応じて下げる第3のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0096】
この構成によれば、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0097】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、ユーザによる指示が入力される操作部を備え、前記レーザ駆動制御部は、ユーザにより前記操作部から入力された指示に応じて、前記第1のパワー制御モード、前記第2のパワー制御モード、および前記第3のパワー制御モードのいずれかを設定することが好ましい。
【0098】
この構成によれば、ユーザが操作部から指示を入力することで、ユーザは、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示か、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた映像および/または文字表示かを自由に選択することができる。
【0099】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記照明光学系の開口数Bは0.25または0.25未満であり、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度Aは43mW/mm2または43mW/mm2未満であることが好ましい。
【0100】
この構成によれば、一般に光学系の開口数が0.25を超えるとレンズ構成が複雑になり、かつレンズも大型化してくるが、照明光学系の像側の開口数Bを0.25または0.25未満とし、従って空間光変調素子上でのレーザ光の強度Aを43mW/mm2または43mW/mm2未満とすることで、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる、低コストかつ小型の投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0101】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記照明光学系は、レーザ光の光量分布を均一化するビームホモジナイザーと、該ホモジナイザーにより均一化された光量分布を前記空間光変調素子上に投影するリレー光学系とを含むことが好ましい。この場合、前記照明光学系は、拡散板を含むことが好ましい。
【0102】
この構成によれば、レーザ光源から出射されたレーザ光を、矩形またはライン状の均一な光量分布を有するレーザ光に整形して、明るさ均一性の高い照明光を空間光変調素子上に照射することができる。
【0103】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体と、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に前記レーザ光源の破壊電圧に等しいまたは該破壊電圧より大きい逆電圧を発生して前記レーザ光源に印加する逆電圧発生部と、前記レーザ光源の駆動時には前記レーザ光源と前記レーザ駆動制御部とを接続し、前記レーザ光源の非駆動時には前記レーザ光源と前記逆電圧発生部とを接続する切替部とを備えることが好ましい。この場合、前記レーザ光源は、半導体レーザまたは半導体レーザ励起固体レーザから成り、前記破壊電圧は、前記半導体レーザの最大定格逆電圧より大きい逆電圧であることが好ましい。
【0104】
この構成によれば、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源を破壊することで、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0105】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記逆電圧発生部は、蓄電池または電気二重層キャパシタを含み、前記蓄電池または前記電気二重層キャパシタの充電電圧を前記逆電圧として前記レーザ光源に印加することが好ましい。
【0106】
この構成によれば、レーザ光源を破壊する逆電圧を容易に生成することができる。
【0107】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記逆電圧発生部は、コイルと、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に前記コイル中を移動して前記コイルに電圧を発生させる永久磁石とを含み、前記コイルに発生した電圧を前記逆電圧として前記レーザ光源に印加することが好ましい。
【0108】
この構成によれば、レーザ光源を破壊する逆電圧を容易に生成することができる。
【0109】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、前記希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子と、前記第2高調波発生素子を常温よりも低い所定温度に冷却するペルチェ素子と、前記第2高調波発生素子の温度を検出する温度センサとから成る緑色レーザ光源を含み、前記第2高調波発生素子は、前記所定温度で位相整合するよう構成されることが好ましい。
【0110】
この構成によれば、投写型ディスプレイ装置から緑色レーザ光源を取り外した場合、第2の高調波発生素子の温度は位相整合温度である低温に調整されず、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0111】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、該半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、該希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子とから成る緑色レーザ光源を含み、前記投写型ディスプレイ装置はさらに、少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体とを備え、前記希土類添加光ファイバの一部分は、前記レーザユニットに設けられた開口を介して前記筐体に間接的に固定され、前記筐体から前記レーザユニットが取り外された場合に切断されるよう構成されることが好ましい。
【0112】
この構成によれば、筐体からレーザユニットが取り外された場合、筐体に間接的に固定されていた希土類添加光ファイバの一部分が切断されて、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0113】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、ステムに接続された共通端子上にレーザダイオードチップのPN接合のN側を固着し、前記レーザダイオードチップのP側と前記ステムを貫通する電源端子とを金属ワイヤで内部接続し、窓付きキャップを前記ステム上に取り付けて前記レーザダイオードチップを封止したキャンタイプの半導体レーザから成り、該半導体レーザを配線基板から取り外した際に前記レーザダイオードチップへの電源供給が不能となるよう、前記電源端子のレーザ本体内部での強度を低下させることが好ましい。この場合、前記電源端子は、外力の付加により前記電源端子を前記レーザ本体内部で切断するための切欠けを有することが好ましい。
【0114】
この構成によれば、半導体レーザを配線基板から取り外す際に加わる外力により、半導体レーザの電源端子がレーザ本体内部で切断されて、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0115】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、ステムに接続された共通端子上にレーザダイオードチップのPN接合のN側を固着し、前記レーザダイオードチップのP側と前記ステムを貫通する電源端子とを金属ワイヤで内部接続し、窓付きキャップを前記ステム上に取り付けて前記レーザダイオードチップを封止したキャンタイプの半導体レーザから成り、該半導体レーザを配線基板から取り外した際に前記レーザダイオードチップへの電源供給が不能となるよう、前記電源端子の前記配線基板への挿入部分に熱を加えるまたは紫外線を照射することにより、前記ステムが前記電源端子を保持する力よりも大きな力で前記配線基板が前記電源端子を保持するように構成されることが好ましい。
【0116】
この構成によれば、ステムが電源端子を保持する力よりも、配線基板が電源端子を保持する力のほうが大きくなり、半導体レーザを配線基板から取り外すと、電源端子はレーザ本体から抜けて配線基板に留まることになり、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明にかかる投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源の駆動時には、人がレーザ光を見た時の目の反射的な回避動作と合わせて目に対する高い安全性を確保でき、またレーザ光源の非駆動時には、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる投写型ディスプレイ装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の光量計算用モデルおよび光路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図5A】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の逆電圧発生回路の一例を示す構成図である。
【図5B】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の逆電圧発生回路の他の例を示す構成図である。
【図6A】本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の緑色レーザ光源の構成図である。
【図7A】本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体に固定されている場合の部分構成図である。
【図7B】本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体から離された場合の部分構成図である。
【図8A】本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図8B】本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図9A】本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図9B】本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像情報、文字情報などの入力情報に応じて変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大画面ディスプレイ装置として、投写型ディスプレイ装置及び背面投写型ディスプレイ装置が知られている。従来、光源としては高圧水銀ランプが用いられていたが、近年、色再現性の良さや消費電力の少なさから3原色のレーザ光を用いた投写型ディスプレイ装置の開発が進んでいる。高圧水銀ランプの光に対して、レーザ光は単色光であり、波面の揃った光であることから、人の目に入った時に網膜上の一点に集光し、網膜に障害を及ぼす可能性がある。従ってレーザを用いた製品については、国際規格IEC60825や、日本国内に於いてはJIS C6802:2005によってレーザ製品のクラス分けを行い、クラス毎に製造者や使用者が守るべき指針を設けて、レーザ製品取り扱いの安全性を高めようとしている。
【0003】
JIS C6802:2005では、最大許容露光量(Maximum Permissible Exposure:以下、MPEと呼ぶ)という用語を規定して、通常の環境下で、人体に照射しても有害な影響を与えることがないレーザ放射のレベルを、レーザ波長や光源の大きさ、露光時間、危険にさらされる組織、レーザパルス幅などをパラメータとして示している。MPEは、国際電気標準会議(IEC)のワーキンググループによりレーザによる事故例や動物を用いた実験的研究から得られた情報に基づいて決められている。従来の投写型ディスプレイ装置では、レーザ光の直接観察による網膜の損傷を避けるため画像投影領域内への人の侵入を検知し、レーザ光出力を遮断、またはMPE以下の安全なレベルまで下げる対策が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2994469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成に於いては、以下の問題点がある。
【0005】
第1に、画像投影領域内に人の侵入があったことを検知してレーザ光出力を低下させるので、人の侵入の検知手段の故障や、検知手段が正常に動作していたとしても、レーザ光を遮断するための回路の故障などがあれば、レーザ光が高出力で出射したままの状態となる可能性があり、人は投写型ディスプレイ装置に近接してレーザ光を観察できてしまい、その結果、網膜を損傷する恐れがある。
【0006】
第2に、投写型ディスプレイ装置に限らず、レーザを用いた機器では、筐体を開けてレーザ光源にアクセスしようとした場合にはインターロック装置が働いてレーザが発光しなくなるようにして安全性を確保しているが、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用する可能性もある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するものであり、その一つの目的は、人がレーザ光を直接観察しても安全である投写型ディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、少なくとも1個のレーザ光源と、照明光学系と、少なくとも1個の空間光変調素子と、投影光学系と、レーザ駆動制御部とを含む。前記照明光学系は、前記レーザ光源から出射したレーザ光を前記少なくとも1個の空間光変調素子に照射する。前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する。前記投影光学系は、前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する。前記レーザ駆動制御部は、前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人がレーザ光を直接観察しても安全である投写型ディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、本実施の形態1では、単一波長帯域のレーザ光または波長帯域の異なる複数のレーザ光を出射する1個のレーザ光源と、照明光学系から出射された少なくとも1個のレーザ光が照射される1個の透過型の空間光変調素子とを用いる。
【0012】
図1において、11はレーザ光源を示し、単一波長帯域もしくは複数波長帯域の半導体レーザまたは半導体レーザ励起固体レーザからなっている。12は照明光学系を示し、フライアイレンズやロッドインテグレータなどのビームホモジナイザーと、ビームホモジナイザーによって矩形またはライン状の均一な光量分布を有するレーザ光に整形された光を投射するリレー光学系とからなる。照明光学系12内には、レーザ光を均一化するために拡散板を設けることが望ましい。13は空間光変調素子を示す。空間光変調素子13は、照明光学系2によって投射されたレーザ光の強度を、映像情報や文字情報といった入力情報に応じて変調する。14は投影光学系を示し、空間光変調素子13によって変調されたレーザ光をスクリーン15に投影する。16はレーザ光を示す。17はレーザ駆動制御部を示し、レーザ光源11への駆動電流を制御することにより、レーザ光源11の出力パワーを制御する。
【0013】
次に、図1に示す投写型ディスプレイ装置の動作について、以下に簡単に説明する。レーザ駆動制御部17により駆動電流がレーザ光源11に供給されると、レーザ光源11はレーザ光を出射し、レーザ光源11から出射したレーザ光16は照明光学系12によって所定の光量分布と収束角を有する光束として空間光変調素子13に照射される。所定の光量分布とは、空間光変調素子13の空間変調領域をほぼ均一に照射することを意味し、所定の収束角とは、照明光学系12の像側の開口数に等しく、また投影光学系14の物体側の開口数にもほぼ等しい。空間光変調素子3によって例えば映像情報に応じて変調されたレーザ光16は、投影光学系14を通じてスクリーン15に拡大投影される。スクリーン15によってレーザ光16を反射もしくは散乱することによって、例えば映像を観察者が見ることができるようになる。
【0014】
図2は、投写型ディスプレイ装置の光量計算用モデルおよび光路を示す図であり、図2において、図1と同一の要素については、同一の符号を附して説明を省略する。図2において、21は開口を示し、直径7mmの穴を有する板である。開口21の穴の直径は人の瞳の直径に合わせている。22はレンズを示し、開口21に密着している。23は視野絞りを示し、穴のあいた板である。視野絞り23はレンズ22の焦平面に設けられている。視野絞り23の穴の直径は、レンズ22の焦点距離をfとすると、0.1×fに等しくなるように設定されている。視野絞り23の穴の直径を0.1×fとすることにより、レンズ22を通過した光のうち、視野角0.1ラジアン(θmax)以内の光だけが視野絞り23を通過することができる。24は光検出器を示し、視野絞り23を通過した光の光量を検出する。25は光量測定光学系を示し、開口21と、レンズ22と、視野絞り23と、光検出器24とからなる。光量測定光学系25を用いて、投影光学系14から出射するレーザ光16の光量を測定することにより、人の目に対する露光量を知ることができる。この露光量に関して、図2を用いながら説明する。
【0015】
人がレーザ光を見た時、生体の嫌悪反応により、反射的にまばたきをしたり、レーザ光から目を背けて目を保護しようとする。この反応時間は0.25秒とされている。0.25秒の間レーザ光を見ても安全なMPEは、レーザ照射の事故例や動物実験から得られた知見に基づき、JIS C6802:2005の中で、
6.4×(C6)(J/m2)
=25.6×103×(C6)(mW/m2) …(式1)
と規定されている(JIS C6802:2005 p41 表6参照)。ここで、上記C6は、人がレーザ光を見た時の光源の大きさに基づく補正係数である。光源の大きさは、人がレーザ光を見た時に光源が目に対して張る視角(ラジアン)で与えられる。光源の大きさが一定値を超えると、光源の大きさはMPEに無関係になる。その一定値が最大視角(θmax)として0.1ラジアンと決められている。上記C6は、光源の視角を0.0015ラジアンで除した値であり、C6の最大値は光源の視角が最大視角の時に66.7となる。
【0016】
空間光変調素子13の一点から光検出器24に入射するレーザ光のパワーは、空間光変調素子13の一点から出射し、投影光学系14によりスクリーン15上に投影される光束と開口21の重なりとの割合と、上記一点から出射するレーザ光のパワーとの積である。レーザの安全を検討する上で考慮すべき最大限の視角は0.1ラジアンであるので、空間光変調素子13上の最大視角0.1ラジアンに相当する領域内の点から出射するレーザ光について、上述の計算を行えば露光量が判る。
【0017】
瞳の直径は7mmであるので瞳の面積は、π×(3.5×10−3)2m2となり、最大視角0.1ラジアンの光源からレーザ光が0.25秒間に瞳に入射しても損傷を及ぼさないMPEに相当するレーザ光パワーは、上記(式1)に、C6=66.7を代入して瞳の上記面積を乗算すると、66mWとなる。
【0018】
ここで、空間光変調素子13と投影光学系14との間の距離をS(mm)とすると、上記最大視角0.1ラジアンに相当する空間光変調素子13上の領域は直径が0.1×Sの円内の領域となる。よって、最大視角0.1ラジアンに相当する空間光変調素子13上の領域から出射されるレーザ光のパワーは、空間光変調素子13上のレーザ光の強度をA(mW/mm2)とすると、
π×(0.05×S)2×A …(式2)
となる。
【0019】
空間光変調素子13の一点から出射される円錐状の発散ビームの広がり角は、照明光学系12の像側の開口数Bに等しいので、投影光学系14から出射される収束ビームの瞳面での半径はほぼS×Bとなり、収束ビームの光束断面積に対する瞳の前記面積の割合は、
π×(3.5)2/π×(S×B)2
=(3.5/(S×B))2 …(式3)
となる。
【0020】
瞳に入射する最大のレーザ光パワーは、上記(式2)と上記(式3)を乗算したものとなり、以下の(式4)で与えられる。
【0021】
π×(0.05×S)2×A×(3.5/(S×B))2 …(式4)
最大視角0.1ラジアンの光源からレーザ光が0.25秒間に瞳に入射しても損傷を及ぼさないMPEに相当するレーザ光パワーは、上記したように、66mWであるので、
π×(0.05×S)2×A×(3.5/(S×B))2<66
すなわち、
A<686×B2 …(式5)
を満たすように、レーザ駆動制御部17は、レーザ光源11の出力パワーを設定する。
【0022】
以上のように、本実施の形態1によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0023】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。本実施の形態2では、波長帯域の異なる3個のレーザ光を出射する3個のレーザ光源と、照明光学系から出射された3個のレーザ光がそれぞれ照射される3個の反射型空間光変調素子とを用いる。
【0024】
図3において、401R、401G、401Bはそれぞれ赤色、緑色、青色のレーザ光を出射するレーザ光源を示す。402aは赤色レーザ光を透過し、緑色レーザ光を反射するダイクロックミラー、402bは赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過し、青色レーザ光を反射するダイクロックミラーを示す。404は、レーザ駆動制御部を示し、3原色のレーザ光源401R、401G、401Bへの駆動電流を制御することにより、各レーザ光源の出力パワーを制御する。403は照明光学系を示し、ダイクロックミラー402bから光軸を揃えて出射された3原色のレーザ光を照射する。3原色のレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404とは、レーザユニット40A内に収納されている。
【0025】
32a、32bはダイクロイックミラーを示し、特定波長のレーザ光を反射し、他の波長のレーザ光は透過する。32Rはミラーを示す。33G、33B、33Rはそれぞれ緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光に対応して設けた偏光ビームスプリッタを示す。34G、34B、34Rはそれぞれ緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光が照射される反射型空間光変調素子を示し、好ましくは反射型液晶パネルやマイクロミラーアレイである。35は偏光ダイクロイックプリズム、36は投影レンズを示す。37は3原色のレーザ光である。
【0026】
43Aはメイン制御部を示し、投射型ディスプレイ装置の全体の動作を制御するとともに、外部からの入力に応じて、レーザ駆動制御部404におけるパワー制御モードを切り換える。メイン制御部43Aには、入力情報判定部431が含まれ、外部から入力された入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのか判定する。ここで、映像情報とは単色または多色で3値以上の静止画情報および動画情報を含む画像情報を意味し、文字情報とはキャラクタコードを画像変換した単色で2値の画像情報を意味する。
【0027】
44は外光センサを示し、外光に含まれる3原色の光の照度を検出する。45は操作部を示し、操作部45にてユーザによる各種の設定、操作が行われる。
【0028】
図3において、レーザ駆動制御部404により駆動電流が3原色のレーザ光源401R、401G、401Bに供給されると、赤色レーザ光源401Rは赤色レーザ光を出射し、緑色レーザ光源401Gは緑色レーザ光を出射し、青色レーザ光源401Bは青色レーザ光を出射する。3原色のレーザ光源401R、401G、401Bからそれぞれ出射してダイクロックミラー402bを透過したレーザ光37は、照明光学系403によりダイクロックミラー32aに照射される。ダイクロイックミラー32aは、3原色のレーザ光37のうち、赤色レーザ光だけを反射し、反射された赤色レーザ光は、ミラー32Rで反射された後、偏光ビームスプリッタ33Rで反射されて反射型空間光変調素子34Rに入射する。反射型空間光変調素子34Rで変調および反射された赤色レーザ光のうち、偏光面が90°回転したレーザ光だけが、偏光ビームスプリッタ33Rを透過する。偏光ビームスプリッタ33Rを透過した赤色レーザ光は、偏光ダイクロイックプリズム35によって反射されて投影光学系36によって図示しないスクリーンに投影される。
【0029】
また、3原色のレーザ光37のうち、青色レーザ光は、ダイクロイックミラー32aおよび32bを透過した後、偏光ビームスプリッタ33Bで反射されて、反射型空間光変調素子34Bで変調および反射された後、偏光ビームスプリッタ33Bを透過し、偏光ダイクロイックプリズム35によって反射され、投影光学系36に入射する。
【0030】
また、3原色のレーザ光37のうち、緑色レーザ光は、ダイクロイックミラー32aを透過した後、ダイクロイックミラー32bで反射され、偏光ビームスプリッタ33Gで反射されて反射型空間光変調素子34Gに入射する。反射型空間光変調素子34Gで変調および反射された緑色レーザ光は、偏光ビームスプリッタ33Gと偏光ダイクロイックプリズム35を透過し、投影光学系35に入射する。
【0031】
ここで、反射型空間光変調素子34G、34B、34Rには、メイン制御部43Aから、入力情報に応じて色信号処理して得られた緑色信号、青色信号、赤色信号がそれぞれ供給され、反射型空間光変調素子34G、34B、34Rはそれぞれ、緑色信号、青色信号、赤色信号に応じて、緑色レーザ光、青色レーザ光、赤色レーザ光を変調する。
【0032】
本実施の形態2の投写型ディスプレイ装置では、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源、青色レーザ光源の出力パワーは人の目の比視感度に対応して決められ、3原色が同時に出射された時に人の目に対して白色として認知されるような出力比になる。本実施の形態2においては、反射型空間光変調素子34G上でのレーザ光の強度をAg、反射型空間光変調素子34B上でのレーザ光の強度をAb、反射型空間光変調素子34R上でのレーザ光の強度をArとした場合、Ag、Ab、Arと照明光学系31の開口数Bとの関係が、前記(式5)を用いて、(Ag+Ab+Ar)<686×B2を満たすように、レーザ駆動制御部404が3原色のレーザ光源401G、401B、401Rの出力パワーを設定する(第1のパワー制御モード)。これにより、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、波長帯域の異なる光の色バランス調整が容易である投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0033】
また、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光のうち、緑色レーザ光が最も比視感度が高いので、レーザ駆動制御部404は、反射型空間光変調素子34G上での緑色レーザ光の強度Agのみが、Ag<686×B2を満たすように、緑色レーザ光源401Gの出力パワーを設定し、他の赤色レーザ光源401R、青色レーザ光源401Bのレーザ発光を停止させることもできる(第2のパワー制御モード)。これにより、単色(緑色)であるが、コントラストを向上させた、より明るい投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0034】
また、メイン制御部43Aは、入力情報判定部431により入力情報が映像情報であると判定された場合、前記第1のパワー制御モードを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送り、入力情報判定部431により入力情報が文字情報であると判定された場合、前記第2のパワー制御モードを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示かを自動的に選択することができる。
【0035】
また、メイン制御部43Aは、3原色の光のうち、外光センサ44により検出された照度が最も高い光の色に対応する色のレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを外光センサ44により検出された照度に応じて下げる(第3のパワー制御モード)指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させることができる。
【0036】
さらに、メイン制御部43Aは、ユーザにより操作部45から入力された指示に応じて、前記第1のパワー制御モード、前記第2のパワー制御モード、および前記第3のパワー制御モードのいずれかを設定する指示をレーザ駆動制御部404に送る。これにより、ユーザが操作部45から指示を入力することで、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示か、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた映像および/または文字表示かを自由に選択することができる。
【0037】
なお、反射型空間光変調素子34R、34G、34Bとしては、反射型液晶パネルやマイクロミラーアレイなどを用いることができる。空間光変調素子として透過型液晶パネルを用いると開口率が低いので、光源の光出力が大きくなるために大型化しやすく、小型の投写型ディスプレイ装置を得られない。しかし、本実施の形態2では、空間光変調素子として開口率の高い反射型空間光変調素子を用いることで、小型で安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0038】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全性だけでなく、レーザ光源を装置から取り外して他の用途に転用することを防止するための構成を有する。また、本実施の形態3では、波長帯域の異なる3個のレーザ光を出射する3個のレーザ光源と、照明光学系から出射された3個のレーザ光が照射される1個の透過型の空間光変調素子とを用いる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態3に係る投射型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、図4において、実施の形態2で参照した図3と同じ構成及び機能を有する要素については、同じ符号を付して説明を省略する。以下では、主に、実施の形態2との相違点について説明する。
【0040】
図4において、本実施の形態3の投射型ディスプレイ装置は、レーザユニット40Bと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42と、メイン制御部43Aと、外光センサ44と、操作部45とから構成される。レーザユニット40Bと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42とは、図4では示さないが図5Aおよび図5Bを参照して後述する筐体内に収納されている。
【0041】
レーザユニット40Bは、3原色の半導体レーザから成るレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロイックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404と、逆電圧発生部405と、切替部406R、406G、406Bとを収納する。以下、本実施の形態3の特徴的構成である逆電圧発生部405と切替部406R、406G、406Bについて説明する。
【0042】
逆電圧発生部405は、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源401R、401G、401Bの破壊電圧に等しいまたは破壊電圧よりも大きい逆電圧(例えば、2〜5ボルト)を発生して3原色のレーザ光源401R、401G、401Bに印加する。この破壊電圧は、半導体レーザの最大定格逆電圧よりも大きい逆電圧である。
【0043】
切替部406R、406G、406Bは、レーザ駆動制御部404からのレーザON/OFF信号に応じて、レーザ光源の駆動時には、レーザ駆動制御404と3原色のレーザ光源401R、401G、401Bとを接続し、レーザ光源の非駆動時には、逆電圧発生部405と3原色のレーザ光源401R、401G、401Bとを接続する。
【0044】
図5Aは、図4に示す逆電圧発生回路405の一例を示す構成図である。図5Aにおいて、51は、図4の40Bに相当するレーザユニットを示し、52は筐体を示す。逆電圧発生部405Aは、蓄電池53と、電池ホルダ54と、負極用導体板55と、正極用導体56と、ストッパ57とから構成される。
【0045】
蓄電池53は、ボタン型の蓄電池であり、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・水素蓄電池などのアルカリ蓄電池やリチウムイオン蓄電池を用いることができる。なお、図5Aでは、ボタン型の蓄電池を例示しているが、円筒型の蓄電池を用いてもよい。
【0046】
電池ホルダ54は、レーザユニット51の内部底面に固定され、蓄電池53を収容するとともに、蓄電池53の負電極に対して一側に設けられた負極用導体板55に接続された端子T1と、蓄電池53の正電極に対して他側に設けられた正極用導体板56に接続された端子T2との間の電池電圧を逆電圧として、図4の切替部406R、406G、406Bに供給する。負極用導体板55は、板バネ状に形成され蓄電池53の負電極にバネ力で常に当接している。
【0047】
ストッパ57は、硬質の樹脂などの電気絶縁材料で形成され、直立部571と底部572から成るT次の縦断面形状を有する。ストッパ57の直立部571は、筐体52の底部に設けられた開口、レーザユニット51の底部に設けられた開口を通して、正極用導体板56と蓄電池53の正電極との間に挿入され、蓄電池53を介して付勢される、電池ホルダ54の負極用導体板55のバネ力により保持されている。ストッパ57の底部572は、筐体52の外部底面に当接している。
【0048】
上記の状態で、筐体52からレーザユニット51が離されると、ストッパ57は底部572が筐体52の外部底面に当接したままの状態を維持するので、蓄電池53の正電極は電池ホルダ54の正極用導体板56に当接して、端子T1と端子T2との間に逆電圧が発生する。この逆電圧が、切替部406R、406G、406Bを介してレーザ光源401R、401G、401Bに印加されることで、レーザ光源401R、401G、401Bが破壊される。
【0049】
なお、図5Aでは、蓄電池53を用いたが、代わりに電気二重層キャパシタを用いてもよい。
【0050】
図5Bは、図4に示す逆電圧発生部405の他の例を示す構成図である。図5Bにおいて、逆電圧発生部405Bは、コイル61と、永久磁石62と、バネホルダ63と、バネ64と、磁石ホルダ65と、ストッパ66と、ローラ67と、金属ワイヤ68と、ワイヤ固定具69とから構成される。
【0051】
コイル61は、端子T1と端子T2を有し、レーザユニット51の内部底面に固定されている。永久磁石62は、バネホルダ63内に収容されたバネ64により付勢された磁石ホルダ65により、図面左右方向での移動が制限され、下方に押圧されている。
【0052】
ストッパ66は、コイル61の上部と永久磁石62のN極側との間に挿入および保持され、ストッパ66の一端が金属ワイヤ68の一端に接続され、金属ワイヤ68は、ローラ67を介して左方向から下方向へと延伸し、金属ワイヤ68の他端は、レーザユニット51に対しては接触が疎で筐体52に対しては接触が密に嵌合されたワイヤ固定具69の中空部を介して外面に半田付け等で接着されている。
【0053】
上記の状態で、筐体52からレーザユニット51が離されると、ストッパ66は、金属ワイヤ68を介してワイヤ固定具69により固定されているので、左方向へと移動しローラ67により下方向へと移動して、永久磁石62のN極側とコイル61の上部との間から抜ける。これにより、永久磁石62は、バネ64の付勢力により下方向に押し出され、コイル61中を通って、レーザユニット51の底部に設けられた開口51aから筐体52の内部底面上に落ちる。
【0054】
永久磁石62がコイル61中を通る際に、コイル61の端子1と端子2の間に誘導起電力が発生し、これが逆電圧として、切替部406R、406G、406Bを介してレーザ光源401R、401G、401Bに印加されることで、レーザ光源401R、401G、401Bが破壊される。
【0055】
以上のように、本実施の形態3によれば、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源を破壊することで、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止することができる。
【0056】
(実施の形態4)
図6Aは、本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。なお、図6Aにおいて、実施の形態3で参照した図4と同じ構成および機能を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施の形態4が実施の形態3と異なるのは、逆電圧発生部と切替部を削除して、緑色レーザ光源を含むレーザユニットが装置から取り外された場合に、単に電源供給をしただけでは緑色レーザ光源がレーザ発光できないようにする構成を有する点にある。以下、主に、実施の形態3との相違点について説明する。
【0058】
図6Aにおいて、本実施の形態4の投射型ディスプレイ装置は、レーザユニット40Cと、透過型の空間光変調素子41と、投影光学系42と、メイン制御部43Bと、外光センサ44と、操作部45とから構成される。
【0059】
レーザユニット40Cは、3原色の半導体レーザから成るレーザ光源401R、401G、401Bと、ダイクロイックミラー402a、402bと、照明光学系403と、レーザ駆動制御部404とを収納する。以下、本実施の形態4の特徴的構成である緑色レーザ光源401Gについて説明する。
【0060】
図6Bは、図6Aの緑色レーザ光源401Gの構成図である。図6Bにおいて、緑色レーザ光源401Gは、赤外半導体レーザ(IR)4011と、希土類添加光ファイバ4012と、第2高調波発生素子(SHG)4013と、ペルチェ素子4014と、温度センサ4015とから構成される。
【0061】
赤外半導体レーザ4011は、励起用の例えば波長915nmの赤外レーザ光を出射する赤外の半導体レーザから成る。希土類添加光ファイバ4012は、希土類元素として例えばイッテルビウムがドーピングされ、赤外半導体レーザ4011から出射された赤外レーザ光により希土類元素が励起されて、例えば波長1064nmのレーザ光を出射する。第2高調波発生素子4013は、希土類添加光ファイバ4012から増幅されて出射された赤外レーザ光を入射して第2高調波である緑色レーザ光に波長変換して出射する。また、第2高調波発生素子4013は、常温よりも低い所定温度で位相整合する、すなわち効率よく波長変換するよう構成されている。ペルチェ素子4014は、メイン制御部43Bからのペルチェ制御信号に応じて、第2高調波発生素子4013を所定温度に冷却する。温度センサ4015は、第2高調波発生素子4013の温度を検出して、検出した温度を示す温度信号をメイン制御部43Bに送る。メイン制御部43Bは、温度センサ4015から送られた温度信号に応じて、第2高調波発生素子4013の温度が常温より低い所定温度になるよう、ペルチェ素子4015にペルチェ制御信号を送り温度制御を行う。
【0062】
このように構成された緑色レーザ光源401Gを含むレーザユニット40Cが装置から取り出されると、メイン制御部43Bによる第2高調波発生素子4013の温度制御が行われず、第2の高調波発生素子4013は位相整合しなくなるので、緑色レーザ光源401Gのレーザ発光が停止したままの状態となる。
【0063】
以上のように、本実施の形態4によれば、投写型ディスプレイ装置から緑色レーザ光源401Gを取り外した場合、第2の高調波発生素子4013の温度は位相整合温度である低温に調整されず、緑色レーザ光源401Gは発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止することができる。
【0064】
(実施の形態5)
図7Aは、本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体に固定されている場合の部分構成図である。本実施の形態5が実施の形態4と異なるのは、緑色レーザ光源のペルチェ素子と温度センサを削除して、緑色レーザ光源を含むレーザユニットが装置から取り外された場合に、希土類添加光ファイバを切断することで、緑色レーザ光源がレーザ発光できないようにする構成を有する点にある。以下、主に、実施の形態4との相違点について説明する。
【0065】
図7Aにおいて、レーザユニット71は、赤外の半導体レーザ73、希土類添加光ファイバ74、および第2高調波発生素子75からなる緑色レーザ光源と、金属ワイヤ76と、ワイヤ固定具77とから構成され、筐体72の内部底面に固定されている。金属ワイヤ76は、一端に希土類添加光ファイバ74を通す輪を有し、その他端はワイヤ固定具77の中空部を介して外面で半田等により接着されている。金属ワイヤ76は、希土類添加光ファイバ74の強度に比べて十分大きな強度を有する。ワイヤ固定具77は、実施の形態3で参照した図5Bのワイヤ固定具69と同様の構成および機能を有する。
【0066】
図7Bは、図7Aに示すレーザユニット71が筐体72から離された場合の部分構成図である。なお、図7Bにおいて、図7Aと同じ構成および機能を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図7Bに示すように、レーザユニット71が筐体72から離された場合、金属ワイヤ76はワイヤ固定具77に固定されているので、金属ワイヤ76の一端に設けられた輪が希土類添加光ファイバ74を切断する。
【0068】
以上のように、本実施の形態5によれば、筐体72からレーザユニット71が取り外された場合、筐体72に間接的に、すなわち金属ワイヤ76とワイヤ固定具77を介して固定されていた希土類添加光ファイバ74の一部分が切断されて、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0069】
(実施の形態6)
図8Aは、本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。本実施の形態6の半導体レーザは、実施の形態1〜3の3原色のレーザ光源、および実施の形態4、5の赤色レーザ光源および青色レーザ光源に適用される。
【0070】
図8Aにおいて、レーザ光源は、ステム81に接続された共通端子82上にレーザダイオードチップ83のPN接合のN側を固着し、レーザダイオードチップ83のP側とステム81を貫通する電源端子84とを金属ワイヤ85で内部接続し、窓86付きキャップ87をステム81上に取り付けてレーザダイオードチップ83を封止したキャンタイプの半導体レーザから成る。半導体レーザは、共通端子82と電源端子84を含む3本の端子が配線基板88の対応する穴に挿入され、配線基板88の裏面の配線ランドに半田付けされて、実装されている。
【0071】
電源端子84は、半導体レーザ本体内で一部に、電源端子84の強度を低下させる切欠け841を有する。
【0072】
図8Bは、本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【0073】
図8Bに示すように、半導体レーザの3本の端子を配線基板88の裏面の配線ランドに接着していた半田が加熱により溶融し、半田が除去されて、配線基板88から取り外される際に、電源端子84の切欠け841に外力が加わることで、電源端子84が切断される。
【0074】
なお、半導体レーザの3本の端子のうち電源端子84を形成する金属材料のみを、他の端子を形成する金属材料に比べて、強度の弱い材料とすることで、本実施の形態6による効果はさらに大きくなる。
【0075】
以上のように、本実施の形態6によれば、半導体レーザを配線基板88から取り外す際に加わる外力により、半導体レーザの電源端子84がレーザ本体内部で切断されて、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0076】
(実施の形態7)
図9Aは、本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。なお、図9Aにおいて、実施の形態6で参照した図8Aと同じ構成を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。また、実施の形態6と同様に、本実施の形態7の半導体レーザは、実施の形態1〜3の3原色のレーザ光源、および実施の形態4、5の赤色レーザ光源および青色レーザ光源に適用される。
【0077】
本実施の形態7が実施の形態6と異なるのは、電源端子の構造および配線基板への接着の仕方である。
【0078】
図9Aにおいて、基板実装時に、半導体レーザの電源端子91に対してのみ、配線基板88の対応する挿入穴の中および挿入穴の基板表面での周囲に、熱硬化性または紫外線硬化性の樹脂材料92が塗布されて、半導体レーザの3本の端子が配線基板88の対応する穴に挿入され、樹脂材料92への加熱または紫外線の照射により、電源端子84が配線基板88に固定される。これにより、ステム81が電源端子91を保持する力よりも大きな力で配線基板88の樹脂材料92が電源端子91を保持することになる。
【0079】
図9Bは、本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。図9Bに示すように、半導体レーザを配線基板88から取り外すと、ステム81が電源端子91を保持する力よりも、配線基板88が電源端子91を保持する力のほうが大きいので、電源端子91はレーザ本体から抜けて配線基板88に留まることになり、半導体レーザへの電源供給は不能となり、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0080】
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8は、実施の形態1から7の照明光学系の像側の開口数Bの設定方法に関する。一般に、光学系の開口数が0.25を超えるとレンズ構成が複雑になりかつ、レンズも大型化してくる。低コストで小型の投写型ディスプレイ装置を実現するために、本実施の形態8では、照明光学系の像側の開口数Bを0.25または0.25未満に設定する。照明光学系の像側の開口数Bが0.25または0.25未満に設定することは、実施の形態1で導いた(式5)から、空間光変調素子上のレーザ光の強度が43mW/mm2または43mW/mm2未満に設定されることになる。これにより、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を実現することができる。
【0081】
なお、本発明の実施の形態1〜8においては、空間光変調素子に伝送された画像色信号に応じて変調されたレーザ光を投影レンズによって結像させることで画像表示を行ったが、本発明の投写型ディスプレイ装置は、空間光変調素子の有無によらず、レーザ光源と照明光学系だけでカラー照明を行う投写型ディスプレイ装置や、液晶パネルなどをカラー照明する投写型ディスプレイ装置も含む。
【0082】
本発明の特徴的構成をまとめると、以下のようになる。
【0083】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、少なくとも1個のレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部とを備えたことを特徴とする。
【0084】
この構成によれば、空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、A<686×B2を満たせば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる安全な投写型ディスプレイ装置を提供することができる。
【0085】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、波長帯域の異なるN個のレーザ光をそれぞれ出射するN個のレーザ光源であり、前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射された前記波長帯域の異なるN個のレーザ光の強度を前記入力情報に応じて変調する1個の空間光変調素子であることが好ましい。
【0086】
この構成によれば、N個のレーザ光源からそれぞれ出射された波長帯域の異なるN個のレーザ光を、1個の空間光変調素子により入力情報に応じて変調してスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置を構成することができる。
【0087】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、波長帯域の異なるN個のレーザ光をそれぞれ出射するN個のレーザ光源であり、前記少なくとも1個の空間光変調素子は、前記照明光学系から照射された前記波長帯域の異なるN個のレーザ光の強度をそれぞれ前記入力情報に応じて変調するN個の空間光変調素子であることが好ましい。
【0088】
この構成によれば、N個のレーザ光源からそれぞれ出射された波長帯域の異なるN個のレーザ光を、N個の空間光変調素子により入力情報に応じてそれぞれ変調してスクリーンに投影する投写型ディスプレイ装置を構成することができる。
【0089】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ駆動制御部は、前記波長帯域の異なるN個のレーザ光のそれぞれの、前記空間光変調素子上での強度を加算した強度Aが前記A<686×B2を満たすように、前記N個のレーザ光源の出力パワーを設定する第1のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0090】
この構成によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、波長帯域の異なる光の色バランス調整が容易である投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0091】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ駆動制御部は、前記波長帯域の異なるN個のレーザ光のうち、比視感度が最も高い波長帯域を有するレーザ光の、前記空間光変調素子上での強度Aが前記A<686×B2を満たすように、前記比視感度が最も高い波長帯域を有するレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを設定し、他のレーザ光源のレーザ発光を停止させる第2のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0092】
この構成によれば、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できるとともに、単色(緑色)であるが、コントラストを向上させた、より明るい投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0093】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、前記入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのかを判定する入力情報判定部を備え、前記レーザ駆動制御部は、前記入力情報判定部により前記入力情報が映像情報であると判定された場合、前記第1のパワー制御モードを設定し、前記入力情報判定部により前記入力情報が文字情報であると判定された場合、前記第2のパワー制御モードを設定することが好ましい。
【0094】
この構成によれば、入力情報判定部で入力情報が映像情報であるのか、または文字情報であるのかを判定し、その判定結果に応じて、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示かを自動的に選択することができる。
【0095】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、外光に含まれる前記波長帯域の異なる光の照度を検出する外光センサを備え、前記レーザ駆動制御部は、前記N個のレーザ光の異なる波長帯域のうち、前記外光センサにより検出された照度が最も高い光の波長帯域に対応する波長帯域を有するレーザ光を出射するレーザ光源の出力パワーを前記外光センサにより検出された照度に応じて下げる第3のパワー制御モードを有することが好ましい。
【0096】
この構成によれば、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0097】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、ユーザによる指示が入力される操作部を備え、前記レーザ駆動制御部は、ユーザにより前記操作部から入力された指示に応じて、前記第1のパワー制御モード、前記第2のパワー制御モード、および前記第3のパワー制御モードのいずれかを設定することが好ましい。
【0098】
この構成によれば、ユーザが操作部から指示を入力することで、ユーザは、色バランスを重視した映像表示か、コントラストを重視した文字表示か、外光の色バランスに応じてコントラストを向上させた映像および/または文字表示かを自由に選択することができる。
【0099】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記照明光学系の開口数Bは0.25または0.25未満であり、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度Aは43mW/mm2または43mW/mm2未満であることが好ましい。
【0100】
この構成によれば、一般に光学系の開口数が0.25を超えるとレンズ構成が複雑になり、かつレンズも大型化してくるが、照明光学系の像側の開口数Bを0.25または0.25未満とし、従って空間光変調素子上でのレーザ光の強度Aを43mW/mm2または43mW/mm2未満とすることで、人の反射作用と合わせて網膜の損傷を回避できる、低コストかつ小型の投写型ディスプレイ装置を実現できる。
【0101】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記照明光学系は、レーザ光の光量分布を均一化するビームホモジナイザーと、該ホモジナイザーにより均一化された光量分布を前記空間光変調素子上に投影するリレー光学系とを含むことが好ましい。この場合、前記照明光学系は、拡散板を含むことが好ましい。
【0102】
この構成によれば、レーザ光源から出射されたレーザ光を、矩形またはライン状の均一な光量分布を有するレーザ光に整形して、明るさ均一性の高い照明光を空間光変調素子上に照射することができる。
【0103】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置はさらに、少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体と、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に前記レーザ光源の破壊電圧に等しいまたは該破壊電圧より大きい逆電圧を発生して前記レーザ光源に印加する逆電圧発生部と、前記レーザ光源の駆動時には前記レーザ光源と前記レーザ駆動制御部とを接続し、前記レーザ光源の非駆動時には前記レーザ光源と前記逆電圧発生部とを接続する切替部とを備えることが好ましい。この場合、前記レーザ光源は、半導体レーザまたは半導体レーザ励起固体レーザから成り、前記破壊電圧は、前記半導体レーザの最大定格逆電圧より大きい逆電圧であることが好ましい。
【0104】
この構成によれば、筐体からレーザユニットが離れた場合にレーザ光源を破壊することで、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0105】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記逆電圧発生部は、蓄電池または電気二重層キャパシタを含み、前記蓄電池または前記電気二重層キャパシタの充電電圧を前記逆電圧として前記レーザ光源に印加することが好ましい。
【0106】
この構成によれば、レーザ光源を破壊する逆電圧を容易に生成することができる。
【0107】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記逆電圧発生部は、コイルと、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に前記コイル中を移動して前記コイルに電圧を発生させる永久磁石とを含み、前記コイルに発生した電圧を前記逆電圧として前記レーザ光源に印加することが好ましい。
【0108】
この構成によれば、レーザ光源を破壊する逆電圧を容易に生成することができる。
【0109】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、前記希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子と、前記第2高調波発生素子を常温よりも低い所定温度に冷却するペルチェ素子と、前記第2高調波発生素子の温度を検出する温度センサとから成る緑色レーザ光源を含み、前記第2高調波発生素子は、前記所定温度で位相整合するよう構成されることが好ましい。
【0110】
この構成によれば、投写型ディスプレイ装置から緑色レーザ光源を取り外した場合、第2の高調波発生素子の温度は位相整合温度である低温に調整されず、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0111】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、該半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、該希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子とから成る緑色レーザ光源を含み、前記投写型ディスプレイ装置はさらに、少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体とを備え、前記希土類添加光ファイバの一部分は、前記レーザユニットに設けられた開口を介して前記筐体に間接的に固定され、前記筐体から前記レーザユニットが取り外された場合に切断されるよう構成されることが好ましい。
【0112】
この構成によれば、筐体からレーザユニットが取り外された場合、筐体に間接的に固定されていた希土類添加光ファイバの一部分が切断されて、緑色レーザ光源は発光できなくなるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0113】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、ステムに接続された共通端子上にレーザダイオードチップのPN接合のN側を固着し、前記レーザダイオードチップのP側と前記ステムを貫通する電源端子とを金属ワイヤで内部接続し、窓付きキャップを前記ステム上に取り付けて前記レーザダイオードチップを封止したキャンタイプの半導体レーザから成り、該半導体レーザを配線基板から取り外した際に前記レーザダイオードチップへの電源供給が不能となるよう、前記電源端子のレーザ本体内部での強度を低下させることが好ましい。この場合、前記電源端子は、外力の付加により前記電源端子を前記レーザ本体内部で切断するための切欠けを有することが好ましい。
【0114】
この構成によれば、半導体レーザを配線基板から取り外す際に加わる外力により、半導体レーザの電源端子がレーザ本体内部で切断されて、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【0115】
本発明に係る投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、ステムに接続された共通端子上にレーザダイオードチップのPN接合のN側を固着し、前記レーザダイオードチップのP側と前記ステムを貫通する電源端子とを金属ワイヤで内部接続し、窓付きキャップを前記ステム上に取り付けて前記レーザダイオードチップを封止したキャンタイプの半導体レーザから成り、該半導体レーザを配線基板から取り外した際に前記レーザダイオードチップへの電源供給が不能となるよう、前記電源端子の前記配線基板への挿入部分に熱を加えるまたは紫外線を照射することにより、前記ステムが前記電源端子を保持する力よりも大きな力で前記配線基板が前記電源端子を保持するように構成されることが好ましい。
【0116】
この構成によれば、ステムが電源端子を保持する力よりも、配線基板が電源端子を保持する力のほうが大きくなり、半導体レーザを配線基板から取り外すと、電源端子はレーザ本体から抜けて配線基板に留まることになり、半導体レーザへの電源供給は不能となるので、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明にかかる投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源の駆動時には、人がレーザ光を見た時の目の反射的な回避動作と合わせて目に対する高い安全性を確保でき、またレーザ光源の非駆動時には、悪意を持った人が高出力のレーザ光源を取り外して他の用途に転用することを防止できる投写型ディスプレイ装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る投写型ディスプレイ装置の光量計算用モデルおよび光路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図5A】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の逆電圧発生回路の一例を示す構成図である。
【図5B】本発明の実施の形態3に係る投写型ディスプレイ装置の逆電圧発生回路の他の例を示す構成図である。
【図6A】本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の概略構成および光路を示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態4に係る投写型ディスプレイ装置の緑色レーザ光源の構成図である。
【図7A】本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体に固定されている場合の部分構成図である。
【図7B】本発明の実施の形態5に係る投写型ディスプレイ装置におけるレーザユニットが筐体から離された場合の部分構成図である。
【図8A】本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図8B】本発明の実施の形態6に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図9A】本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板に半田付けされたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【図9B】本発明の実施の形態7に係る投写型ディスプレイ装置において配線基板から取り外されたキャンタイプの半導体レーザおよび配線基板を示す断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、
前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、
前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、
A<686×B2
を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部とを備え、
前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、前記希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子と、前記第2高調波発生素子を常温よりも低い所定温度に冷却するペルチェ素子と、前記第2高調波発生素子の温度を検出する温度センサとから成る緑色レーザ光源を含み、
前記第2高調波発生素子は、前記所定温度で位相整合するよう構成されたことを特徴とする投写型ディスプレイ装置。
【請求項2】
少なくとも1個のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、
前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、
前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、
A<686×B2
を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部と、
少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、
少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体とを備え、
前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、該半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、該希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子とから成る緑色レーザ光源を含み、
前記希土類添加光ファイバの一部分は、前記レーザユニットに設けられた開口を介して前記筐体に間接的に固定され、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に切断されるよう構成されたことを特徴とする投写型ディスプレイ装置。
【請求項1】
少なくとも1個のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、
前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、
前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、
A<686×B2
を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部とを備え、
前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、前記希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子と、前記第2高調波発生素子を常温よりも低い所定温度に冷却するペルチェ素子と、前記第2高調波発生素子の温度を検出する温度センサとから成る緑色レーザ光源を含み、
前記第2高調波発生素子は、前記所定温度で位相整合するよう構成されたことを特徴とする投写型ディスプレイ装置。
【請求項2】
少なくとも1個のレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射したレーザ光を照射する照明光学系と、
前記照明光学系から照射されたレーザ光の強度を入力情報に応じて変調する少なくとも1個の空間光変調素子と、
前記空間光変調素子によって変調されたレーザ光をスクリーンに投影する投影光学系と、
前記照明光学系の開口数Bが設定された場合、前記空間光変調素子上でのレーザ光の強度A(mW/mm2)が、
A<686×B2
を満たすように、前記少なくとも1個のレーザ光源の出力パワーを設定するレーザ駆動制御部と、
少なくとも前記レーザ光源および前記照明光学系を収納するレーザユニットと、
少なくとも前記レーザユニット、前記空間光変調素子、および前記投影光学系を収納する筐体とを備え、
前記少なくとも1個のレーザ光源は、励起用の赤外光を出射する半導体レーザと、該半導体レーザにより希土類元素が光学的に励起される希土類添加光ファイバと、該希土類添加光ファイバから出射された赤外光を緑色光に波長変換する第2高調波発生素子とから成る緑色レーザ光源を含み、
前記希土類添加光ファイバの一部分は、前記レーザユニットに設けられた開口を介して前記筐体に間接的に固定され、前記筐体から前記レーザユニットが離れた場合に切断されるよう構成されたことを特徴とする投写型ディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2011−141562(P2011−141562A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64207(P2011−64207)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【分割の表示】特願2007−532182(P2007−532182)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【分割の表示】特願2007−532182(P2007−532182)の分割
【原出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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