説明

投射型表示装置および光学ユニット

【課題】各波長域に対応する複数の液晶パネルにおける液晶層の層厚の面内ばらつきに起因する色相ムラを効果的に解消することのできる投射型表示装置および光学ユニットを提供すること。
【解決手段】投射型表示装置において、各色光が入射する3つの反射型の液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、青色用液晶パネル100B)では、青色用液晶パネル100Bにおいて共通電極21を構成するITO膜の膜厚は、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gにおいて共通電極21を構成するITO膜の膜厚に比して薄い。また、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gで共通電極21の構成するITO膜の膜厚は等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液晶パネルを備えた投射型表示装置および光学ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の液晶パネルをライトバルブとして備えた投射型表示装置では、光源部から出射された各色の光を複数の液晶パネル毎で変調した後、合成し、かかる合成光を投射光学系によりスクリーン等の被投射部材に投射する。ここで、複数の液晶パネルとしては、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルが多用されている。
【0003】
このような投射型表示装置において、ライトバルブとして反射型の液晶パネルを用いる場合、一方面側に反射性の画素電極が設けられた第1基板、第1基板の一方面側に対向する基板面に透光性の共通電極が設けられた透光性の第2基板、および第2基板と第1基板との間に設けられた液晶層とを備えた液晶パネルが用いられ、通常は、複数の液晶パネルとして、第1基板、第2基板、液晶層等の構成が互いに同一な液晶パネルが用いられる。
【0004】
但し、複数の液晶パネルのうち、青色用液晶パネルは、他の液晶パネルに比して供給される光の波長が短いため、劣化しやすい。そこで、青色用液晶パネルについては、他の液晶パネルと配向膜や液晶材料を相違させることもある(特許文献1参照)。
【0005】
また、投射型表示装置に用いる複数の液晶パネルの各々において、液晶パネルが変調する光の波長域の中心波長の約1/2倍に共通電極の光学的膜厚を設定することにより、散乱型液晶を用いて散乱モードで表示した際の光利用効率を高めることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−31545号公報
【特許文献2】特開平11−133447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
投射型表示装置に用いた液晶パネルでは、共通電極等の光学的膜厚に対応して、周波数によって反射率が周期的に上昇と下降とを繰り返す反射分光特性を有している。このため、赤色用液晶パネル、緑色用液晶パネル、および青色用液晶パネルを用いて画像を表示した際、第1基板と第2基板との間隔(液晶層の層厚)に面内ばらつきが発生すると、液晶層のリタデーションの面内ばらつきによって変調状態が画素毎に変動し、最も短波長の青色において色相ムラが発生しやすいという問題点がある。しかしながら、かかる問題、および対策については特許文献1、2等に一切、記載されていない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、各波長域の光に対応する複数の液晶パネルにおける液晶層の層厚の面内ばらつきに起因する色相ムラを効果的に解消することのできる投射型表示装置および光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る投射型表示装置は、光源部と、一方面側に反射性の画素電極が設けられた第1基板、該第1基板の前記一方面側に対向する基板面に透光性の共通電極が設けられた透光性の第2基板、および該第2基板と前記第1基板との間に設けられた液晶層を備え、前記光源部から互いに異なる波長域の光が供給される3つ以上の複数の液晶パネルと、前記複数の液晶パネルによって変調された各光を合成した光を投射する投射光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄く、当該他の液晶パネルでは、前記共通電極の膜厚が等しいことを特徴とする。
【0010】
本発明では、複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して共通電極の膜厚が薄く、光学的膜厚が適正化されている。このため、短波長域用液晶パネルの反射分光特性では、周波数によって反射率が周期的に上昇と下降とを繰り返したとしてもその振れ幅が小さい。このため、短波長域用液晶パネルの第1基板と第2基板との間隔(液晶層の層厚)に面内ばらつきがあって、光の変調状態が画素毎に変動した場合でも、短波長域用液晶パネルでは、同一諧調となるべき画素間における出射光量のばらつきが小さい。従って、投射画像において、短波長域用液晶パネルにおける第1基板と第2基板との間隔の面内ばらつきに起因する色相ムラの発生を防止することができる。また、本発明では、短波長域用液晶パネルについては、変調する光の波長が短いため、上記の色相ムラが発生しやすいので、光学的膜厚を適正化するのに対して、波長が比較的長い光を変調する他の液晶パネルについては、色相ムラが発生しにくいとして、共通電極の膜厚を等しくしてある。このため、他の液晶パネルについては同一仕様の液晶パネルを用いることができるので、複数の液晶パネルの各々に対して光学的膜厚を適正化した場合に比して、コストの増大を抑えながら、色相ムラの発生を防止することができる。また、共通電極はITO(Indium Tin Oxide)膜等、他の層に比して屈折率が大きいため、共通電極の膜厚を調整すれば、液晶パネルの反射分光特性を最適化するのに効果的である。
【0011】
本発明において、前記液晶パネルに供給される光の波長と反射率との関係を示す反射分光特性において、前記短波長域用液晶パネルは、当該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域における最高反射率と最低反射率との差が、当該波長域より長波長域における最高反射率と最低反射率との差よりも小であることが好ましい。反射分光特性において、全ての波長域で反射率の振れ幅を小さくするのは困難であるが、短波長域用液晶パネルが変調する波長域内において振れ幅を小さくすれば、上記の色相ムラの発生を防止できる。また、一定の波長域内において反射率の振れ幅を小さくするのであれば、共通電極の膜厚を適正化することによって比較的容易に実現することができる。
【0012】
本発明において、前記複数の液晶パネルのうち、前記短波長域用液晶パネルの前記共通電極の膜厚は、他の液晶パネルの前記共通電極の膜厚の0.70倍から0.85倍であることが好ましい。共通電極の屈折率の波長依存性等を考慮すると、共通電極の膜厚を上記の範囲に設定すれば、短波長域用液晶パネルおよび他の液晶パネルの双方において、共通電極の光学的膜厚を概ね適正化することができる。
【0013】
本発明において、前記短波長域用液晶パネルでは、該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域の中心波長における前記共通電極の屈折率と、当該短波長域用液晶パネルの前記共通電極の膜厚とを乗じた光学的膜厚が前記中心波長の約1/2倍であることが好ましい。かかる構成によれば、共通電極の光学的膜厚を最適化することができる。従って、投射画像において、短波長域用液晶パネルが変調する光の色ムラの発生を確実に防止することができる。
【0014】
本発明において、前記他の液晶パネルのうち、変調する光の波長が短い方の液晶パネルでは、該液晶パネルが変調する光の波長域の中心波長における前記共通電極の屈折率と、当該液晶パネルの前記共通電極の膜厚とを乗じた光学的膜厚が当該中心波長の約1/2倍であることが好ましい。かかる構成によれば、他の液晶パネルにおいて共通電極の膜厚を等しくした場合でも、変調する光の波長が短い方の液晶パネルでは、共通電極の光学的膜厚を最適化することができるので、投射画像において、当該液晶パネルが変調する光の色ムラの発生を確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、前記短波長域用液晶パネルの前記共通電極は、該共通電極に供給される光の波長と当該共通電極における透過率との関係を示す透過分光特性において、透過率のピークが、当該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域内に位置することが好ましい。
【0016】
本発明において、前記複数の液晶パネルはいずれも、前記共通電極がITO膜であることが好ましい。共通電極がITO膜であれば、他の層に比して屈折率が大きいため、共通電極の膜厚を調整するだけで、液晶パネルの反射分光特性を最適化することができる。
【0017】
本発明において、前記複数の液晶パネルは、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルであり、前記青色用液晶パネルは、前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄い前記短波長域用液晶パネルであり、前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルは、互いの前記共通電極の膜厚が等しい前記他の液晶パネルである構成を採用することができる。
【0018】
また、本発明は、液晶パネルおよび光合成光学系を有する光学ユニットに適用することができる。すなわち、本発明に係る光学ユニットは、一方面側に反射性の画素電極が設けられた第1基板、該第1基板の前記一方面側に対向する基板面に透光性の共通電極が設けられた透光性の第2基板、および該第2基板と前記第1基板との間に設けられた液晶層を備え、互いに異なる波長域の光が供給される3つ以上の複数の液晶パネルと、前記複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄く、当該他の液晶パネルでは、前記共通電極の膜厚が等しいことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した投射型表示装置の説明図である。
【図2】本発明を適用した投射型表示装置で用いられる液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明を適用した投射型表示装置で用いられる液晶パネルの画素の平面構成を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した投射型表示装置で用いられる液晶パネルの画素の断面構成を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した投射型表示装置において、液晶パネルの共通電極に用いたITO膜の屈折率と波長との関係を示すグラフである。
【図6】本発明を適用した投射型表示装置において、短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル)の共通電極の透過分光特性と、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル、緑色用液晶パネル)の共通電極の透過分光特性とを比較して示す説明図である。
【図7】本発明を適用した投射型表示装置において、短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル)の反射分光特性と、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル、緑色用液晶パネル)の反射分光特性とを比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。なお、以下の説明において、ライトバルブとして用いた複数の液晶パネルにおいて、共通の構成等を説明する際には液晶パネル100とし、複数の液晶パネル100の個々の構成を説明する際には、以下に示すように、
赤色用液晶パネル100R
緑色用液晶パネル100G
青色用液晶パネル100B
とし、変調する光の波長域に応じて、R(赤色用)、G(緑色用)、B(青色用)を付して説明する。また、赤色光、緑色光、青色光については各々が対応する波長域を620〜740nm、500〜570nm、430〜500nmとして説明する。
【0021】
[投射型表示装置の構成例]
図1は、本発明を適用した投射型表示装置の説明図である。図1に示す投射型表示装置1000において、光源部890は、システム光軸Lに沿って光源810、インテグレーターレンズ820および偏光変換素子830が配置された偏光照明装置800を有している。また、光源部890は、システム光軸Lに沿って、偏光照明装置800から出射されたs偏光光束をs偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッター840を有している。また、光源部890は、偏光ビームスプリッター840のs偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。かかる投射型表示装置1000において、3つの液晶パネル100、ダイクロイックミラー842、843、および偏光ビームスプリッター840は、光学ユニット1100を構成している。また、ダイクロイックミラー842、843は光合成光学系80を構成している。
【0022】
また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3つの反射型の液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、青色用液晶パネル100B)を備えており、光源部890は、3つの液晶パネル100に所定の色光を供給する。
【0023】
より具体的には、赤色用液晶パネル100Rには、波長域が620〜740nmの赤色光(中心波長:680nm)が供給され、緑色用液晶パネル100Gには、波長域が500〜570nmの緑色光(中心波長:535nm)が供給され、青色用液晶パネル100Bには、波長域が430〜500nmの青色光(中心波長:465nm)が供給される。従って、本形態では、青色用液晶パネル100Bが、最も短波長域の光を変調する「短波長域用液晶パネル」に相当し、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gが「他の液晶パネル」に相当する。
【0024】
かかる構成の投射型表示装置1000においては、3つの液晶パネル100にて変調された光をダイクロイックミラー842、843からなる光合成光学系80にて合成した後、この合成光を投射光学系850によってスクリーン860等の被投射部材に投射する。
【0025】
[液晶パネル100の構成]
(液晶パネル100の全体構成)
図2は、本発明を適用した投射型表示装置1000で用いられる液晶パネル100の説明図であり、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100を各構成要素と共に第2基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0026】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、および青色用液晶パネル100B)では、第1基板10と第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。かかる構成の液晶パネル100において、第1基板10と第2基板20との間では、シール材107によって囲まれた領域内に液晶層50が保持されている。本形態において、第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100の略中央には、画素領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画素領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。第1基板10において、画素領域10aの外側では、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0027】
詳しくは後述するが、第1基板10の一方側の基板面において、画素領域10aには、画素トランジスター30、および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。なお、第1基板10の一方面側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、第1基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画素領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画素領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0028】
第2基板20において第1基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。共通電極21は、第2基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている。また、第2基板20において第1基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画素領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、第2基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と重なる領域等にも形成されることがある。
【0029】
このように構成した液晶パネル100において、第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位が印加されている。
【0030】
シール材107は、略同一の幅寸法をもって第2基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、第2基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0031】
かかる構成の液晶パネル100において、本形態では、共通電極21が透光性導電膜により形成され、画素電極9aが反射性導電膜により形成されている。かかる反射型の液晶パネル100では、第2基板20の側から入射した光が第1基板10の側の基板で反射して出射される間に変調される。本形態において、液晶パネル100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモードの液晶パネル100として構成されている。
【0032】
(画素の具体的構成)
図3は、本発明を適用した投射型表示装置1000で用いられる液晶パネル100の画素の平面構成を示す説明図である。図3では、半導体層1aは細くて短い点線で示し、走査線3aは太い実線で示し、データ線6aおよびそれと同時形成された薄膜は一点鎖線で示し、容量線5bは二点鎖線で示し、画素電極9aは太くて長い破線で示し、下電極層4aは細い実線で示してある。図4は、本発明を適用した投射型表示装置1000で用いられる液晶パネル100の画素の断面構成を示す説明図であり、図3のF−F′線に相当する位置で液晶パネル100を切断したときの断面図である。ここで、図4(a)には、複数の液晶パネル100のうち、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gの断面構成を示してあり、図4(b)には、青色用液晶パネル100Bの断面構成を示してある。
【0033】
図3および図4に示すように、液晶パネル100では、第1基板10上に、複数の画素100aの各々に矩形状の画素電極9aが形成されており、各画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。データ線6aおよび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領域に画素トランジスター30が形成されている。第1基板10上には、走査線3aと重なるように容量線5bが形成されている。本形態において、容量線5bは、走査線3aと重なるように直線的に延びた主線部分と、データ線6aと走査線3aとの交差部分でデータ線6aに重なるように延びた副線部分とを備えている。
【0034】
図4に示すように、第1基板10は、石英基板やガラス基板等の基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面側)に形成された画素電極9a、画素スイッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されており、第2基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50側の表面(第1基板10と対向する一方面側)に形成された共通電極21、および配向膜26を主体として構成されている。
【0035】
第1基板10において、複数の画素100aの各々には、半導体層1aを備えた画素トランジスター30が形成されている。半導体層1aは、走査線3aの一部からなるゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を介して対向するチャネル領域1gと、ソース領域1bと、ドレイン領域1cとを備えており、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各々、低濃度領域および高濃度領域を備えている。半導体層1aは、例えば、基板本体10w上に、シリコン酸化膜等からなる透光性の下地絶縁膜12上に形成された多結晶シリコン膜等によって構成され、ゲート絶縁層2は、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる。また、ゲート絶縁層2は、半導体層1aを熱酸化してなるシリコン酸化膜と、CVD法等により形成されたシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との2層構造を有する場合もある。走査線3aには、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜が用いられる。
【0036】
走査線3aの上層側にはシリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁膜41が形成されており、第1層間絶縁膜41の上層には下電極層4aが形成されている。下電極層4aは、走査線3aとデータ線6aとの交差する位置を基点として走査線3aおよびデータ線6aに沿って延出する略L字型に形成されている。下電極層4aは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなり、コンタクトホール7cを介してドレイン領域1cに電気的に接続されている。
【0037】
下電極層4aの上層側には、シリコン窒化膜等からなる誘電体層42が形成されている。誘電体層42の上層側には、誘電体層42を介して下電極層4aと対向するように容量線5b(上電極層)が形成され、かかる容量線5b、誘電体層42および下電極層4aによって、保持容量55が形成されている。容量線5bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなる。
【0038】
容量線5bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる第2層間絶縁膜43が形成され、第2層間絶縁膜43の上層にはデータ線6aおよびドレイン電極6bが形成されている。データ線6aはコンタクトホール7aを介してソース領域1bに電気的に接続している。ドレイン電極6bはコンタクトホール7bを介して下電極層4aに電気的に接続し、下電極層4aを介してドレイン領域1cに電気的に接続している。データ線6aおよびドレイン電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、あるいは金属膜等からなる。
【0039】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側には、シリコン酸化膜等からなる第3層間絶縁膜44が形成されている。第3層間絶縁膜44には、ドレイン電極6bへ通じるコンタクトホール7dが形成されている。第3層間絶縁膜44の上層には、アルミニウム等の反射性金属からなる反射性の画素電極9aが形成されており、画素電極9aは、コンタクトホール7dを介してドレイン電極6bに電気的に接続されている。本形態において、第3層間絶縁膜44の表面は平坦面になっている。なお、本形態において、画素電極9aの下層側には、チタン窒化膜等からなる反射防止膜9sが形成されている。かかる反射防止膜9sは、画素電極9aの裏面側での反射を防止して迷光の発生を防止する。
【0040】
ここで、第3層間絶縁膜44の表面には、図2(b)を参照して説明したダミー画素電極9b(図4には図示せず)が形成されており、かかるダミー画素電極9bは、画素電極9aと同時形成された透光性導電膜からなる。
【0041】
画素電極9aの表面には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)であり、配向膜16と画素電極9aとの層間にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の透光性の保護膜17が形成されている。保護膜17は、表面が平坦面になっており、画素電極9aの間に形成された凹部を埋めている。従って、配向膜16は、保護膜17の平坦な表面に形成されている。本形態において、配向膜16は、2層に積層されたシリコン酸化膜からなる。
【0042】
第2基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの液晶層50側の表面(第1基板10に対向する側の面)に、透光性導電膜からなる共通電極21が形成されており、本形態において、共通電極21は、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透光性導電膜からなる。また、第2基板20では、共通電極21を覆うように配向膜26が形成されている。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)であり、配向膜26と共通電極21との層間にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の保護膜27が形成されている。保護膜27は、表面が平坦面になっており、かかる平坦面上に配向膜26が形成されている。本形態において、配向膜26は、2層に積層されたシリコン酸化膜からなる。かかる配向膜16、26は、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100は、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。なお、基板本体20wと共通電極21との層間にはシリコン酸化膜からなる下地膜25が形成されている。
【0043】
(液晶パネル100の膜厚等および分光特性の説明)
図5は、本発明を適用した投射型表示装置1000において、液晶パネル100の共通電極21に用いたITO膜の屈折率と波長との関係を示すグラフである。図6は、本発明を適用した投射型表示装置1000において、短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル100B)の共通電極21の透過分光特性と、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)の共通電極21の透過分光特性とを比較して示す説明図である。図7は、本発明を適用した投射型表示装置1000において、短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル100B)の反射分光特性と、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)の反射分光特性とを比較して示す説明図である。
【0044】
図1に示す投射型表示装置1000において、3つの液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、青色用液晶パネル100B)のうち、青色用液晶パネル100Bは、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルである。
【0045】
本形態では、図4(a)と図4(b)とを比較すれば分かるように、青色用液晶パネル100B(短波長域用液晶パネル)については、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)に比して共通電極21を構成するITO膜の膜厚が薄くなっている。また、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)では、共通電極21を構成するITO膜の膜厚が等しくなっている。
【0046】
これに対して、以下に示すように、共通電極21を除く他の膜厚は、3つの液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、青色用液晶パネル100B)において等しい。
【0047】
第1基板10側
反射防止膜9s(チタン窒化膜)
膜厚=50±5nm
画素電極9a(アルミニウム膜)
膜厚=150±15nm
保護膜17(シリコン酸化膜)
膜厚=325±75nm
屈折率=1.45(450nm)、1.44(500nm)、1.44(550nm)
配向膜16の下層(シリコン酸化膜)
膜厚=32.5±2.5nm
屈折率=1.60(450nm)、1.60(500nm)、1.60(550nm)
配向膜16の上層(シリコン酸化膜)
膜厚=32.5±2.5nm
屈折率=1.60(450nm)、1.60(500nm)、1.60(550nm)
液晶層50
層厚=2.1±0.3μm
第2基板20側
基板本体20w(石英)
板厚=1.1mm
下地膜25(ボロン・リンドープのシリコン酸化膜)
膜厚=300±30nm
屈折率=1.50(450nm)、1.50(500nm)、1.49(550nm)
保護膜27(シリコン酸化膜)
膜厚=100±15nm
屈折率=1.42(450nm)、1.42(500nm)、1.41(550nm)
配向膜26の下層(シリコン酸化膜)
膜厚=32.5±2.5nm
屈折率=1.60(450nm)、1.60(500nm)、1.60(550nm)
配向膜26の上層(シリコン酸化膜)
膜厚=32.5±2.5nm
屈折率=1.60(450nm)、1.60(500nm)、1.60(550nm)
これに対して、共通電極21の膜厚は、以下に示すように、3つの液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、青色用液晶パネル100B)において相違している。
【0048】
短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル100B)
共通電極21(ITO膜)
膜厚=120±18nm
屈折率=1.84(450nm)、1.80(500nm)、1.75(550nm)
他の液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)
共通電極21(ITO膜)
膜厚=146±22nm
屈折率=1.84(450nm)、1.80(500nm)、1.75(550nm)
すなわち、短波長域用液晶パネル(青色用液晶パネル100B)の共通電極21の膜厚は、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G)の共通電極21の膜厚の0.70倍から0.90倍に設定されており、本形態では、0.82倍になっている。
【0049】
このように構成した液晶パネル100において共通電極21として用いたITO膜の屈折率は、図5に示す波長依存性を有している。従って、各液晶パネル100で変調する光の波長域の中心波長と、各液晶パネル100の共通電極21の光学的膜厚との関係は以下のようになっている。
【0050】
まず、青色用液晶パネル100Bが変調する光の波長域の中心(465nm)における青色用液晶パネル100Bの共通電極21の光学的膜厚(屈折率(1.82)×膜厚(120nm))は、218.4nmであり、中心波長(465nm)の約1/2倍(0.470倍)である。従って、図6に実線L11で示すように、青色用液晶パネル100Bの共通電極21は、共通電極21に供給される光の波長と共通電極21における透過率との関係を示す透過分光特性において、透過率のピークは、440nmであって、青色用液晶パネル100Bが変調する光の波長域(430〜500nm)内に位置している。
【0051】
緑色用液晶パネル100Gが変調する光の波長域の中心(535nm)における緑色用液晶パネル100Gの共通電極21の光学的膜厚(屈折率(1.76)×膜厚(146nm))は、257.0nmであり、中心波長(535nm)の約1/2倍(0.480倍)である。従って、図6に実線L12で示すように、緑色用液晶パネル100Gの共通電極21は、共通電極21に供給される光の波長と共通電極21における透過率との関係を示す透過分光特性において、透過率のピークは、560nmであって、緑色用液晶パネル100Gが変調する光の波長域(500〜570nm)内に位置している。
【0052】
赤色用液晶パネル100Rが変調する光の波長域の中心(680nm)における赤色用液晶パネル100Rの共通電極21の光学的膜厚(屈折率(1.64)×膜厚(146nm))は、239.4nmであり、中心波長(535nm)の約1/2倍(0.447倍)からずれている。但し、図6に実線L12で示すように、緑色用液晶パネル100Gおよび赤色用液晶パネル100Rの共通電極21は、共通電極21に供給される光の波長と共通電極21における透過率との関係を示す透過分光特性において、透過率のピークが560nmに位置し、赤色用液晶パネル100Rが変調する光の波長域(620〜740nm)に比較的近い位置にある。
【0053】
このように構成した液晶パネル100において、液晶パネル100に供給される光の波長と反射率との関係を示す反射分光特性は、図7に示すように表される。図7において、太い実線L21は、青色用液晶パネル100B(短波長域用液晶パネル)の反射分光特性であり、細い実線L22は、緑色用液晶パネル100Gおよび赤色用液晶パネル100R(他の液晶パネル)の反射分光特性である。
【0054】
図7に太い実線L21で示す結果から分かるように、青色用液晶パネル100Bの反射分光特性では、青色用液晶パネル100Bが変調する光の波長域(430〜500nm)における最高反射率と最低反射率との差Δ1は、430〜500nmの波長域より長波長域における最高反射率と最低反射率との差よりも小である。
【0055】
また、図7に細い実線L22で示す結果から分かるように、緑色用液晶パネル100Gおよび赤色用液晶パネル100R(他の液晶パネル)の反射分光特性では、緑色用液晶パネル100Gが変調する光の波長域(500〜570nm)における最高反射率と最低反射率との差Δ2は、500〜570nmの波長域より長波長域あるいは短波長域における最高反射率と最低反射率との差よりも小である。なお、緑色用液晶パネル100Gおよび赤色用液晶パネル100R(他の液晶パネル)の反射分光特性では、赤色用液晶パネル100Rが変調する光の波長域(620〜740nm)における最高反射率と最低反射率との差Δ3は、620〜740nmの波長域より短波長域における最高反射率と最低反射率との差よりも大である。
【0056】
このように、本形態では、青色用液晶パネル100Bでは、変調する光の波長域(430〜500nm)に対応する共通電極21の構成になっている。このため、青色用液晶パネル100Bは、図7に太い実線L21で示す反射分光特性を有している。従って、青色用液晶パネル100Bにおいて、第1基板10と第2基板20との間隔(液晶層50の層厚)に面内ばらつきが発生し、青色用液晶パネル100B内での光の変調状態がシフトしても、最高反射率と最低反射率との差Δ1が小さいので、投射画像では青色の色相ムラが発生しにくい。
【0057】
また、緑色用液晶パネル100Gでは、変調する光の波長域(500〜570nm)に対応する共通電極21の構成になっている。このため、緑色用液晶パネル100Gは、図7に細い実線L22で示す反射分光特性を有している。従って、緑色用液晶パネル100Gにおいて、第1基板10と第2基板20との間隔(液晶層50の層厚)に面内ばらつきが発生し、緑色用液晶パネル100G内での光の変調状態がシフトしても、最高反射率と最低反射率との差Δ2が小さいので、投射画像では緑色の色相ムラが発生しにくい。
【0058】
これに対して、赤色用液晶パネル100Rと緑色用液晶パネル100Gとは、同一の構造になっているため、赤色用液晶パネル100Rでは、赤色用液晶パネル100Rが変調する光の波長域(620〜740nm)に対応する共通電極21の構成になっていない。このため、赤色用液晶パネル100Rは、図7に細い実線L22で示す反射分光特性を有しており、最高反射率と最低反射率との差Δ3が比較的大きい。それでも、赤色用液晶パネル100Rについては長波長の光を変調するため、赤色用液晶パネル100R内での光の変調状態がシフトしても、投射画像では赤色の色相ムラが目立たない。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の投射型表示装置1000では、複数の液晶パネル100のうち、最も短波長域の光を変調する青色用液晶パネル100B(短波長域用液晶パネル)では、赤色用液晶パネル100Rや緑色用液晶パネル100G等の他の液晶パネルに比して共通電極21の膜厚が薄く、光学的膜厚が適正化されている。このため、青色用液晶パネル100Bでは、周波数によって反射率が周期的に上昇と下降とを繰り返したとしてもその振れ幅が小さい。従って、青色用液晶パネル100Bの第1基板10と第2基板20との間隔(液晶層50の層厚)に面内ばらつきがあって、光の変調状態が画素毎に変動した場合でも、青色用液晶パネル100Bでは、同一諧調となるべき画素間における出光量のばらつきが小さい。従って、青色用液晶パネル100Bの第1基板10と第2基板20との間隔の面内ばらつきに起因する色相ムラの発生を防止することができる。
【0060】
また、本形態では、青色用液晶パネル100Bについては、変調する光の波長が短いため、上記の色相ムラが発生しやすいので、光学的膜厚を適正化するのに対して、波長が比較的長い光を変調する他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)については、色相ムラが発生しにくいとして、共通電極21の膜厚を等しくしてある。このため、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gについては同一仕様の液晶パネル100を用いることができるので、複数の液晶パネル100の各々に対して光学的膜厚を適正化した場合に比して、コストの増大を抑えながら、色相ムラの発生を防止することができる。
【0061】
また、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)において共通電極21の膜厚を等しくするにあたって、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gのうち、変調する光の波長が短い緑色用液晶パネル100Gに最適な膜厚に共通電極21の膜厚を設定してある。このため、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)において共通電極21の膜厚を等しくした場合でも、投射画像では緑色の色相ムラおよび赤色の色相ムラが目立たない。
【0062】
また、共通電極21を構成するITO膜は、他の層に比して屈折率が大きいため、共通電極21の膜厚を調整すれば、液晶パネル100の反射分光特性を最適化するのに効果的である。
【0063】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、複数の液晶パネル100として、赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100Gおよび青色用液晶パネル100Bからなる3つの液晶パネル100を用いたため、青色用液晶パネル100Bを短波長域用液晶パネルとして共通電極21の光学的膜厚を最適化したが、他の色の組み合わせや、4つ以上の液晶パネル100を用いた投射型表示装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
9a・・画素電極、10・・第1基板、20・・第2基板、21・・共通電極、50・・液晶層、80・・光合成光学系、100・・液晶パネル、100R・・赤色用液晶パネル(他の液晶パネル)、100G・・緑色用の液晶パネル(他の液晶パネル)、100R・・青色用液晶パネル(短波長域用液晶パネル)、1000・・投射型表示装置、1100・・光学ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
一方面側に反射性の画素電極が設けられた第1基板、該第1基板の前記一方面側に対向する基板面に透光性の共通電極が設けられた透光性の第2基板、および該第2基板と前記第1基板との間に設けられた液晶層を備え、前記光源部から互いに異なる波長域の光が供給される3つ以上の複数の液晶パネルと、
前記複数の液晶パネルによって変調された各光を合成した光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄く、
当該他の液晶パネルでは、前記共通電極の膜厚が等しいことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記液晶パネルに供給される光の波長と反射率との関係を示す反射分光特性において、前記短波長域用液晶パネルは、当該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域における最高反射率と最低反射率との差が、当該波長域より長波長域における最高反射率と最低反射率との差よりも小であることを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記複数の液晶パネルのうち、前記短波長域用液晶パネルの前記共通電極の膜厚は、他の液晶パネルの前記共通電極の膜厚の0.70倍から0.90倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記短波長域用液晶パネルでは、該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域の中心波長における前記共通電極の屈折率と、当該短波長域用液晶パネルの前記共通電極の膜厚とを乗じた光学的膜厚が当該中心波長の約1/2倍であることを特徴とする請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記他の液晶パネルのうち、変調する光の波長が短い方の液晶パネルでは、該液晶パネルが変調する光の波長域の中心波長における前記共通電極の屈折率と、当該液晶パネルの前記共通電極の膜厚とを乗じた光学的膜厚が当該中心波長の約1/2倍であることを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記短波長域用液晶パネルの前記共通電極は、該共通電極に供給される光の波長と当該共通電極における透過率との関係を示す透過分光特性において、透過率のピークが当該短波長域用液晶パネルが変調する光の波長域内に位置することを特徴とする請求項4または5に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記複数の液晶パネルはいずれも、前記共通電極がITO膜であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記複数の液晶パネルは、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルであり、
前記青色用液晶パネルは、前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄い前記短波長域用液晶パネルであり、
前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルは、互いの前記共通電極の膜厚が等しい前記他の液晶パネルであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
一方面側に反射性の画素電極が設けられた第1基板、該第1基板の前記一方面側に対向する基板面に透光性の共通電極が設けられた透光性の第2基板、および該第2基板と前記第1基板との間に設けられた液晶層を備え、互いに異なる波長域の光が供給される3つ以上の複数の液晶パネルと、
前記複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光を変調する短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して前記共通電極の膜厚が薄く、
当該他の液晶パネルでは、前記共通電極の膜厚が等しいことを特徴とする光学ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−108458(P2012−108458A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94776(P2011−94776)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】