投射型表示装置及びマルチビジョン投射型表示装置
【課題】光源及びスクリーンの特性ばらつきに起因する輝度・色度のばらつきを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】投射型表示装置30は、背面からスクリーン9上に映像を投射する投射型表示装置30であって、スクリーン9の透過特性データを保持する特性記憶手段31と、特性記憶手段31に保持されている透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段32とを備える。そして、算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段15と、補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイス7とを備える。
【解決手段】投射型表示装置30は、背面からスクリーン9上に映像を投射する投射型表示装置30であって、スクリーン9の透過特性データを保持する特性記憶手段31と、特性記憶手段31に保持されている透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段32とを備える。そして、算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段15と、補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイス7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置及びマルチビジョン投射型表示装置に関するものであり、特に半導体発光素子からなる光源からの光を強度変調してスクリーンに投射するものに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置では、光源からの光を分光部材(例えば回転色フィルタ)によりR、G、Bの3原色に分離し、映像表示デバイスを用いて当該3原色の光を強度変調(強調変換)した後、投射レンズを経てスクリーンの背面に投射することにより、スクリーン上に映像を表示している。従来の投射型表示装置においては、主光源として放電ランプユニットが使用されている。
【0003】
このような投射型表示装置を複数備え、それらのスクリーンからなる大画面に大きな映像を表示する装置として、マルチビジョン投射型表示装置が知られている。このようなマルチビジョン投射型表示装置においては、各投射型表示装置における放電ランプユニット及び分光部材の特性が型式や個々の製品毎にばらつくことから、映像の輝度・色度が投射型表示装置毎にばらつくことがある。そこで、特許文献1に開示の技術では、放電ランプユニット等の特性に基づいて、輝度・色度のばらつきを自動的に適切に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−341282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年、投射型表示装置の開発は、高輝度及び高効率の観点から、従来の放電ランプユニットを光源として使用するものから、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」と呼ぶ)やレーザーなどの半導体発光素子を光源として使用するものに移行してきている。
【0006】
図12に示されるように、単色LEDなどの半導体発光素子の発光スペクトルは、波長領域において、LED素子のバンド構造により決まる単波長を有している。このような各色の波長ピークが独立し、サブピークが発生しない半導体発光素子を用いた投射型表示装置においては、色域の広い表示性能を得ることが可能となっている。
【0007】
また、投射型表示装置に対応して組み合わされ、投射型表示装置からの光が投射されるスクリーンユニットにおいても、投射型映像表示装置と同様に様々な種類のものが開発されており、それぞれの波長に対する輝度透過特性は、スクリーン自体の設計や仕様により異なったものとなっている。
【0008】
ここで、従来の投射型表示装置では、分光部材でのRGB各色の透過波長選択領域の幅が広いことから、光源の個々の特性ばらつきをある程度吸収することができるものとなっていた。しかしながら、上述の半導体発光素子を有する投射型表示装置では、色選択機能を有する分光部材が従来と異なっており、従来と比較して光源の透過波長選択領域の幅が狭いことから、当該半導体発光素子の個々の波長ばらつきが直接影響する。特に、組み合わされているスクリーンの透過特性によっては、それに投射される映像の輝度・色度が、所望の輝度・色度とならないことがある。そのため、このような各投射型表示装置間、または、マルチビジョン投射型表示装置においては、光源やスクリーンの交換後などに輝度・色度がばらつくことから、表示映像品質を均一化する調整に、時間がかかるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、光源及びスクリーンの特性ばらつきに起因する輝度・色度のばらつきを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る投射型表示装置は、背面からスクリーン上に映像を投射する投射型表示装置であって、前記スクリーンの透過特性データを保持する特性記憶手段と、前記特性記憶手段に保持されている前記透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段とを備える。そして、前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、前記補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイスとを備える。
【0011】
また、上記と別構成として、本発明に係る投射型表示装置は、半導体発光素子からなる光源と、前記光源の発光特性データを保持する特性記憶手段と、前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段とを備える。そして、前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、前記補正された映像信号に基づいて、前記光源からの光を強度変調する映像表示デバイスとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクリーンの透過特性データに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号を補正する。したがって、スクリーンの種類による透過特性のばらつきに起因する輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の別構成によれば、半導体発光素子からなる光源の発光特性データに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号を補正する。したがって、光源の種類による発光特性のばらつきに起因する輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る投射型表示装置の構成を示す図である。
【図2】スクリーンの分光透過特性の例を示す図である。
【図3】目標輝度・色度とすべき色再現範囲の例を示す図である。
【図4】実施の形態2に係るマルチビジョン投射型表示装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る色再現可能範囲の例を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る色再現可能範囲の例を示す図である。
【図7】実施の形態2において目標色再現範囲を求める動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2において目標色再現範囲を求める動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2に係る内包判定方法を説明するための図である。
【図10】実施の形態2に係る内包判定方法を説明するための図である。
【図11】実施の形態2に係る交差判定方法を説明するための図である。
【図12】半導体発光素子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明における実施の形態1に係る投射型表示装置30の構成を示す図である。光源1〜3は、例えばLEDなどの半導体素子からなり、赤色の光を発するR光源1と、緑色の光を発するG光源2と、青色の光を発するB光源3とを備えている。光源1〜3のそれぞれにおける発光は、光源ドライバ5により時分割で制御されている。
【0016】
RGB合成装置4は、特定の波長の光のみを反射または透過する波長選択フィルタたるダイクロイックミラーを内部に有している。RGB合成装置4は、このダイクロイックミラーを用いて、光源1〜3の出力光のうち所望の波長を有する光を反射または透過し、集光レンズ6に出射する。集光レンズ6は、RGB合成装置4からの光の輝度分布を空間的に均一化して、映像表示デバイス7に出力する。
【0017】
一方、輝度・色度補正手段15には、外部から映像信号Dが入力される。輝度・色度補正手段15は、後述するように当該映像信号Dにおける輝度・色度を補正し、当該補正後の映像信号Dに対応する信号をドライバ16に出力する。ドライバ16は、輝度・色度補正手段15からの信号を、映像表示デバイス7が必要とする信号フォーマットへと信号変換し、それによって得られた信号を映像表示デバイス7に出力する。
【0018】
映像表示デバイス7は、例えば、DMD(Digital Mirror Device)で構成されており、ドライバ16からの信号に基づいて集光レンズ6からの光を強度変調し、当該強度変調した光を、投射レンズ8を介してスクリーン9背面に投射する。その結果、スクリーン9背面側に投射された光がスクリーン9表面側に透過して、スクリーン表面上に映像が投射される。このように、本実施の形態に係る投射型表示装置30は、背面からスクリーン9上に映像を投射する。
【0019】
特性記憶手段31は、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12を備え、光源1〜3の発光特性データ、及び、スクリーン9の透過特性データ等を保持している。この特性記憶手段31は、例えば、電源が切れた場合であってもその記憶内容を保持することが可能な不揮発性メモリであるEEPROMで構成されている。なお、特性記憶手段31は、1つのEEPROMで構成されてもよいし、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12のそれぞれに対応する3つのEEPROMで構成されてもよい。次に、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12のそれぞれについて説明する。
【0020】
光源特性記憶手段10には、可視光の波長領域における、光源1〜3の放射強度を示す放射強度特性が、分光放射特性データ(発光特性データ)Sr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)として予め記憶されている。なお、光源特性記憶手段10に保持される分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)は、取り付けられる光源1〜3の種類に応じたデータに書き換えられることが可能となっている。
【0021】
スクリーン特性記憶手段11には、可視光の波長領域における、スクリーン9の分光透過特性が、透過ゲインデータ(透過特性データ)T(λ)として予め記憶されている。図2に、種類が異なる2つのスクリーン9の分光透過特性を示す。なお、スクリーン特性記憶手段11に保持される透過ゲインデータT(λ)は、組み合わされるスクリーン9の種類に応じたデータに書き換えられることが可能となっている。
【0022】
光学系特性記憶手段12には、投射型表示装置30内での光源1〜3及びスクリーン9以外の光学特性が、特性データO(λ)として記憶されている。当該特性データとしては、例えばRGB合成装置4の波長選択フィルタ(ダイクロイックミラー)の波長帯データが該当する。この光学系特性記憶手段12に保持される特性データは、光源特性記憶手段10等と同様に書き換えられることが可能となっている。
【0023】
光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12に保持されている分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)、透過ゲインデータT(λ)及び特性データO(λ)は、特性係数演算手段13に与えられる。つまり、特性記憶手段31に保持されている発光特性データ、透過特性データ及びその他の特性データは、特性係数演算手段13に与えられる。
【0024】
演算手段32は、特性係数演算手段13及び補正係数演算手段14を備え、特性記憶手段31に保持されている発光特性データ及び透過特性データ等と、目標とすべき目標輝度(目標値)Ctを表すデータとに基づいて補正係数を算出する。次に、特性係数演算手段13及び補正係数演算手段14のそれぞれについて説明する。
【0025】
特性係数演算手段13は、光源特性記憶手段10からの分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)と、スクリーン特性記憶手段11からの透過ゲインデータT(λ)と、光学系特性記憶手段12からの特性データO(λ)とに基づいて、次式(1)により、特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを求める。
【0026】
【数1】
【0027】
なお、式(1)において、Kx,Ky,Kzは定数であり、x(λ)、y(λ)、z(λ)は等色関数である。これらを示すデータは、特性係数演算手段13内のメモリ13aに記憶されている。なお、等色関数とは、等エネルギースペクトルに対する人間の目の分光感度曲線を表す関数である。
【0028】
特性係数演算手段13で求められた特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbは、補正係数演算手段14及び輝度・色度補正手段15に与えられる。
【0029】
補正係数演算手段14は、シリアル通信手段、赤外線リモコン、無線装置等を有しており、目標輝度・色度(目標値)Ctを表すデータを外部から受け取る。図3は、補正係数演算手段14が受け取る目標輝度・色度Ctの一例を示す図である。図3に示されるように、目標輝度・色度Ctは、Rt、Gt、Btを頂点とする三角形状の色再現範囲で表されており、Rtはその三刺激値Xrt、Yrt、Zrtで、Gtはその三刺激値Xgt、Ygt、Zgtで、Btはその三刺激値Xbt、Ybt、Zbtでそれぞれ表されるものとする。なお、この目標輝度・色度Ct(Rt、Gt、Bt)は、外部からの設定などにより変更可能となっている。
【0030】
同図3には、Rt、Gt、Bt以外に、R、G、Bが示されている。このR、G、Bを頂点とする三角形は、本投射型表示装置30が色再現可能な範囲(以下「色再現可能範囲」と呼ぶ)を表す。後述の動作により、本実施の形態に係る投射型表示装置30においては、どのような種類の光源1〜3及びスクリーン9が投射型表示装置30に交換部品として取り付けられても、投射型表示装置30が表示する映像の輝度・色度が、色再現可能範囲R、G、B内に含まれるRt、Gt、Bt(目標輝度・色度Ct)に近づけられるものとなっている。
【0031】
補正係数演算手段14は、目標輝度・色度Ctを表すデータと、特性係数演算手段13からの特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbとに基づいて、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを算出する。補正係数演算手段14は、算出した補正係数を輝度・色度補正手段15に与える。この補正係数の算出については後で詳しく説明する。
【0032】
輝度・色度補正手段15は、特性係数演算手段13からの特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbと、補正係数演算手段14からの補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbとに基づいて、外部からの映像信号Dにおける輝度・色度を補正する。この補正についても、補正係数演算手段14での補正係数の算出とあわせて後で詳しく説明する。
【0033】
また、この輝度・色度補正手段15は、当該補正後の映像信号(この三刺激値をXc、Yc、Zcとする)を、R、G、Bの各色成分を表す信号Er、Eg、Ebに変換してドライバ16に出力する。ドライバ16は、信号Er、Eg、Ebを受けて、これに対応したドライブ信号Fr、Fg、Fbを生成し、これにより映像表示デバイス7を駆動する。つまり、映像表示デバイス7は、実質的に、輝度・色度補正手段15で補正された映像信号Dに基づいて、光源1〜3からの光を強度変調する。強度変調された光は背面からスクリーン9に投射され、スクリーン9上に映像が表示される。
【0034】
次に、輝度・色度補正手段15における映像信号Dの補正について詳しく説明する。本実施の形態では、前提として、次式(2)が成立する加法混色モデルの投射型表示装置を想定している。
【0035】
【数2】
【0036】
この式(2)において、Xa、Ya、Zaは、表示色における三原色(赤(R)、緑(G)、青(B))の混合割合に対応した色の三刺激値を表す。また、α、β、γは、ある信号において、R、G、Bの各成分の強度が取り得る最大値に対する当該強度の比を表す。例えば、当該信号において、R、G、Bの各成分の強度が0から255までの範囲の値を取り得る場合には、α、β、γは、255に対する各成分の強度の比で表される。この場合、α、β、γのそれぞれは、0から1までの範囲の値を取ることになる。
【0037】
α、β、γがこのように表される場合には、XLr、YLr、ZLrは、原色Rを表示する(α=1、β=γ=0)際の補正前のスクリーン9に表示される三刺激値に等しく、XLg、YLg、ZLgは、原色Gを表示する(β=1、α=γ=0)際の同三刺激値に等しく、XLb、YLb、ZLbは、原色Bを表示する(γ=1、α=β=0)際の同三刺激値に等しくなる。
【0038】
式(2)は、ある特性を持った表示装置に対し、ある色信号(α、β、γ)が入力されると、表示装置の表示色の三刺激値がXa、Ya、Zaとなることを示す。この式(2)に示されるように、加法混色モデルが成り立つ表示装置の色空間は、三原色「R、G、B」それぞれの三刺激値XYZの線形和により各表示色が得られる線形空間となる。
【0039】
さて、光源1〜3及びスクリーン9等の特性の影響を受ける結果、上述したように、例えば、原色Rを表示する映像信号(α=1、β=γ=0)を受けた場合には、三刺激値XLr、YLr、ZLrにより映像がスクリーン9に表示されることになる。しかし、この場合に映像表示に要求されている三刺激値は、三刺激値XLr、YLr、ZLrではなく、三刺激値Xrt、Yrt、Zrtである。そこで、本実施の形態においては、輝度・色度補正手段15は、次式(3)に基づいて映像信号D(α、β、γ)を補正する。
【0040】
【数3】
【0041】
この式(3)の右辺の1番目の行列の構成要素は、特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbであり、特性係数演算手段13において、上式(1)の演算が行われることにより算出される。2番目の行列の構成要素は、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbであり、上述において簡単に説明したように、補正係数演算手段14において算出される。
【0042】
次に、補正係数演算手段14における、その補正係数の算出について詳しく説明する。本実施の形態では、輝度・色度補正手段15が、赤色を示す映像信号D(1、0、0)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの赤色の三刺激値Rt(Xrt、Yrt、Zrt)の映像がスクリーン9に表示されるように補正する。この場合、式(3)から、次式(4)が得られる。
【0043】
【数4】
【0044】
式(4)の右辺の2番目の行列と、3番目の行列を整理すると、次式(5)となる。
【0045】
【数5】
【0046】
式(5)を変形すると、次式(6)が得られる。
【0047】
【数6】
【0048】
同様に、輝度・色度補正手段15が、緑色を示す映像信号D(0、1、0)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの緑色の三刺激値Gt(Xgt、Ygt、Zgt)の映像が表示されるように補正する。また、同様に、輝度・色度補正手段15が、青色を示す映像信号D(0、0、1)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの青色の三刺激値Bt(Xbt、Ybt、Zbt)の映像が表示されるように補正する。その結果、式(6)と同様に、次式(7)及び(8)が得られる。
【0049】
【数7】
【0050】
【数8】
【0051】
以上の式(6)〜(8)により、式(3)の右辺の2番目の行列の構成要素たる補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbが求まる。
【0052】
図1に戻って、補正係数演算手段14は、外部からCt(Xrt、Yrt、Zrt、Xgt、Ygt、Zgt、Xbt、Ybt、Zbt)を受け、特性係数演算手段13から特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを受け、これらに上式(6)〜(8)の演算を行って、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを算出する。
【0053】
輝度・色度補正手段15は、補正係数演算手段14から補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを受け、外部から映像信号D(α、β、γ)を受け、特性係数演算手段13から特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを受け、これらに上式(3)の演算を行って、Xc、Yc、Zcを求める。そして、この輝度・色度補正手段15は、Xc、Yc、ZcをR、G、Bの各成分の信号Er、Eg、Ebに変換して、これをドライバ16に供給する。
【0054】
ドライバ16は、この信号Er、Eg、Ebに応じたドライブ信号Fr、Fg、Fbを生成し、これに基づいて映像表示デバイス7の変調を制御することにより、スクリーン9上には輝度・色度がほぼ目標値Ctに補正された映像が得られることになる。
【0055】
以上のような本実施の形態に係る投射型表示装置によれば、半導体発光素子からなる光源1〜3の発光特性データと、スクリーン9の透過特性データとに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号Dを補正する。したがって、光源1〜3の種類による発光特性のばらつき、及び、スクリーン9の種類による透過特性のばらつきに起因して投射型表示装置30毎に生じる輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【0056】
なお、投射型表示装置として、特性記憶手段31が、複数種類のスクリーン9の透過特性データを予め保持しているような構成も想定される。このような場合には、演算手段32は、スクリーン9が交換される際に、特性記憶手段31に保持されている当該スクリーン9(つまり交換後のスクリーン9)の透過特性データに基づいて補正係数を算出することが好ましい。このようにすれば、投射型表示装置30に取り付けられたスクリーン9に適した映像表示を行うことができる。
【0057】
また、投射型表示装置として、特性記憶手段31が、複数種類の光源1〜3の発光特性データを予め保持しているような構成も想定される。このような場合には、演算手段32は、光源1〜3が交換される際に、特性記憶手段31に保持されている当該光源1〜3(つまり交換後の光源1〜3)の発光特性データに基づいて補正係数を算出することが好ましい。このようにすれば、投射型表示装置30に取り付けられた光源1〜3に適した映像表示を行うことができる。
【0058】
なお、光源1〜3及びスクリーン9の交換が行われる場合には、交換部品となる光源1〜3及びスクリーン9に、当該部品毎に固有の識別符号を記憶させた記憶手段(図示せず)を付属させ、投射型表示装置30にその識別符号を読み取る読取手段(図示せず)を設けることが好ましい。このようにすれば、交換部品が交換された場合にはその交換が直ちに、かつ自動的に検出されることから、交換が検出された場合に、自動的に補正係数を算出することが可能となる。
【0059】
また、以上の実施の形態では目標輝度・色度Ctを外部において設定される場合について説明したが、それが固定でよい場合には、内部メモリ(図示せず)に予め格納してもよいし、また、一旦外部で設定された目標輝度・色度Ctを当該内部メモリに格納してもよい。
【0060】
また、光源特性記憶手段10及びスクリーン特性記憶手段11にはそれぞれ各波長における放射波長特性(発光特性データ)及び透過特性(透過特性データ)を記憶するようにしたが、XYZ表色系などに代表される表色系の三刺激値が計算できるものであればよく、これに限定されるものではない。
【0061】
また、本実施の形態では、特性記憶手段31が発光特性データと透過特性データとを保持し、演算手段32が発光特性データ、透過特性データ及び目標輝度・色度を表すデータに基づいて補正係数を算出した。しかし、これに限ったものではなく、特性のばらつきによっては、発光特性データ及び透過特性データのうちいずれか一方のみを保持等するものであってもよい。
【0062】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2に係るマルチビジョン投射型表示装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置において、実施の形態1に係る投射型表示装置30と同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、実施の形態1に係る投射型表示装置30と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置は、実施の形態1で説明した投射型表示装置30を複数備えており、それらのスクリーン9からなる大画面に大きな映像を表示することが可能となっている。本実施の形態では、複数(ここでは2つ)の投射型表示装置30に共通する色再現可能な輝度及び色度を求め、当該輝度・色度を上述の目標輝度・色度Ctとして各投射型表示装置30に与えることが可能となっている。
【0064】
図4に示されるように、2つの投射型表示装置30である第1及び第2投射型表示装置30a,30bはコンピュータ40に接続されている。このコンピュータ40は、第1及び第2投射型表示装置30a,30bから、それぞれの色再現可能範囲(図3に示すRGB)を取得し、これらに共通する色再現範囲を算出する。
【0065】
ここで、第1投射型表示装置30aの色再現可能範囲を示すデータは、三角形R1G1B1の頂点のx、y座標を示すデータとして、第1投射型表示装置のメモリ30aaに記憶されているものとする。同様に、第2投射型表示装置30bの色再現可能範囲を示すデータは、三角形R2G2B2の頂点のx、y座標を示すデータとして、第2投射型表示装置30bのメモリ30baに記憶されているものとする。
【0066】
図5及び図6のそれぞれには、第1及び第2投射型表示装置30a,30bのそれぞれの色再現可能範囲が互いに異なる例が示されている。図5及び図6において三角形R1G1B1は第1投射型表示装置30aの色再現可能範囲を示し、三角形R2G2B2は第2投射型表示装置30bの色再現可能範囲を示す。コンピュータ40は、三角形R1G1B1及び三角形R2G2B2の座標値より、それらの共通領域からなる三角形RtGtBtの座標値を計算する。このように計算された共通領域三角形RtGtBtは、第1投射型表示装置30aと第2投射型表示装置30bのどちらの表示装置においても再現(表示)可能な範囲を表す。
【0067】
以下、共通領域三角形RtBtGtを求める方法について詳しく説明する。まず、コンピュータ40は、第1及び第2投射型表示装置30a,30bのメモリ30aa,30baから、三角形R1G1B1,R2G2B2の頂点のxy座標値を読み出し、これを用いてRt、Gt、Btのそれぞれのxy座標値を算出する。
【0068】
図7及び図8は、コンピュータ40がRtのxy座標値を算出する際の手順を示すフローチャートである。図7においてまず、コンピュータ40は、R1とR2(の座標値)が互いに等しいかどうかの判定を行う(ステップS1)。等しい場合には、R1=R2(の座標値)が、求めるべきRt(の座標値)であるとして(ステップS2)、手順を終了する。
【0069】
等しくない場合には、コンピュータ40は、後述の内包判定方法を行うことにより、各三角形の各頂点が他方の三角形に内包されているかどうかを判定し(ステップS3及びS4)、内包されていると判定すれば、その各頂点(R1またはR2)を共通領域の頂点(Rt)とする(ステップS5及びS6)。
【0070】
例えば、コンピュータ40は、最初に頂点R1が三角形R2G2B2に内包されているかどうかの判定を行い(ステップS3)、内包されていると判定すれば、頂点R1をRtとする(ステップS5)。ステップS3において内包されていないと判定すれば、次に頂点R2が三角形R1G1B1に内包されているかどうかの判定を行い(ステップS4)、内包されていると判定すれば、頂点R2をRtとする(ステップS6)。
【0071】
図9及び図10は、ステップS3及びS4で行われる内包判定方法を説明するための図である。以下、図9及び図10を用いて、頂点R1が三角形R2G2B2に内包されているかどうかを判定する内包判定方法の例を説明する。コンピュータ40は、頂点R1から各頂点R2、G2、B2へのベクトルをそれぞれR2v、G2v、B2vとし、R2v×G2v、G2v×B2v、B2v×R2v(×はベクトルの外積を表す)がすべて正であるか否かを判定する。この3つの積がすべて正である場合には、頂点R1は例えば図9に示されるように、三角形R2G2B2に内包されていると判定される。一方、上述の3つの積のいずれかが負であれば、頂点R1は例えば図10に示されるように、三角形R2G2B2に内包されていないと判定される。
【0072】
図7に示されるステップS3及びS4のいずれにおいても内包されていないと判定された場合には、図8に示されるステップS11に進む。このステップS11において、コンピュータ40は、後述の交差判定方法を行うことにより、線分R1G1と線分R2B2とが交わるかどうかを判定する。同ステップS11において交わっていると判定すれば、その交点をRtとする(ステップS12)。同ステップS11において交わっていないと判定すれば、線分R2G2と線分R1B1との交点をRtとする(ステップS13)。なお、このような交点計算は、R1はG2、B2よりもR2に近い位置にあることを前提としているが、通常であれば、この前提は成立する。
【0073】
図11は、ステップS11で行われる交差判定方法を説明するための図である。以下、この図11を用いて、線分R1G1と線分R2G2とが交わるかどうかを判定する交差判定方法の例を説明する。図11に示されるように、線分R1G1と線分R2B2とが交点Kで交わる(つまり、交点Kが線分R1G1上に存在し、かつ線分R2B2上に存在する)場合、次式(9)〜(11)が成り立つ。
【0074】
【数9】
【0075】
【数10】
【0076】
【数11】
【0077】
ここで、R1x、R1yは点R1のx、y座標値であり、G1x、G1yは点G1のx、y座標値であり、R2x、R2yは点R2のx、y座標値であり、B2x、B2yは点B2のx、y座標値である。
【0078】
コンピュータ40は、上式(9)及び(10)に、これらのxy座標値を代入して、s、tを求め、求めたs、tが上式(11)の条件を満たすならば、線分R1G1と線分R2B2とが交わると判定する。以上の交差判定を行うことにより、ステップS11においてコンピュータ40はRtを求める。
【0079】
以上、図7及び図8を用いて、Rtを求める動作について説明したが、コンピュータ40は、同様にしてGt,Btを求める。コンピュータ40は、このようにしてRt、Gt、Btのxy座標値を求めた後、これらをXYZ三刺激値に変換する。
【0080】
コンピュータ40は、求めた共通の色再現可能範囲の情報(RtGtBtのXYZ三刺激値の組合せ)を、第1及び第2投射型表示装置30a,30bに目標輝度・色度Ctとして与える。第1及び第2投射型表示装置30a,30bのそれぞれは、実施の形態1で説明した補正を行うことにより、自身の輝度・色度を、目標輝度・色度Ctに近づける。
【0081】
以上のような本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置によれば、複数の投射型表示装置30が表示する映像の輝度・色度は互いにほぼ等しくなり、複数画面でマッチングを取ることができる。したがって、複数の投射型表示装置30の間における輝度・色度のばらつきを抑制することができる。
【0082】
なお、以上の説明では、複数の投射型表示装置30の数は2つであったが、それより大きい数であっても同様に共通領域を計算することが可能であるため、その数は2つに限ったものではない。
【0083】
上記の実施の形態2のように、複数の投射型表示装置30を用いてマルチビジョン投射型表示装置を構成し、各投射型表示装置30の共通領域を目標値として各投射型表示装置30に与えることで、部品交換前後においても全画面の画面特性を均一に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1〜3 光源、7 映像表示デバイス、スクリーン9、15 輝度・色度補正手段、30 投射型表示装置、31 特性記憶手段、32 演算手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置及びマルチビジョン投射型表示装置に関するものであり、特に半導体発光素子からなる光源からの光を強度変調してスクリーンに投射するものに関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置では、光源からの光を分光部材(例えば回転色フィルタ)によりR、G、Bの3原色に分離し、映像表示デバイスを用いて当該3原色の光を強度変調(強調変換)した後、投射レンズを経てスクリーンの背面に投射することにより、スクリーン上に映像を表示している。従来の投射型表示装置においては、主光源として放電ランプユニットが使用されている。
【0003】
このような投射型表示装置を複数備え、それらのスクリーンからなる大画面に大きな映像を表示する装置として、マルチビジョン投射型表示装置が知られている。このようなマルチビジョン投射型表示装置においては、各投射型表示装置における放電ランプユニット及び分光部材の特性が型式や個々の製品毎にばらつくことから、映像の輝度・色度が投射型表示装置毎にばらつくことがある。そこで、特許文献1に開示の技術では、放電ランプユニット等の特性に基づいて、輝度・色度のばらつきを自動的に適切に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−341282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年、投射型表示装置の開発は、高輝度及び高効率の観点から、従来の放電ランプユニットを光源として使用するものから、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」と呼ぶ)やレーザーなどの半導体発光素子を光源として使用するものに移行してきている。
【0006】
図12に示されるように、単色LEDなどの半導体発光素子の発光スペクトルは、波長領域において、LED素子のバンド構造により決まる単波長を有している。このような各色の波長ピークが独立し、サブピークが発生しない半導体発光素子を用いた投射型表示装置においては、色域の広い表示性能を得ることが可能となっている。
【0007】
また、投射型表示装置に対応して組み合わされ、投射型表示装置からの光が投射されるスクリーンユニットにおいても、投射型映像表示装置と同様に様々な種類のものが開発されており、それぞれの波長に対する輝度透過特性は、スクリーン自体の設計や仕様により異なったものとなっている。
【0008】
ここで、従来の投射型表示装置では、分光部材でのRGB各色の透過波長選択領域の幅が広いことから、光源の個々の特性ばらつきをある程度吸収することができるものとなっていた。しかしながら、上述の半導体発光素子を有する投射型表示装置では、色選択機能を有する分光部材が従来と異なっており、従来と比較して光源の透過波長選択領域の幅が狭いことから、当該半導体発光素子の個々の波長ばらつきが直接影響する。特に、組み合わされているスクリーンの透過特性によっては、それに投射される映像の輝度・色度が、所望の輝度・色度とならないことがある。そのため、このような各投射型表示装置間、または、マルチビジョン投射型表示装置においては、光源やスクリーンの交換後などに輝度・色度がばらつくことから、表示映像品質を均一化する調整に、時間がかかるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、光源及びスクリーンの特性ばらつきに起因する輝度・色度のばらつきを抑制可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る投射型表示装置は、背面からスクリーン上に映像を投射する投射型表示装置であって、前記スクリーンの透過特性データを保持する特性記憶手段と、前記特性記憶手段に保持されている前記透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段とを備える。そして、前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、前記補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイスとを備える。
【0011】
また、上記と別構成として、本発明に係る投射型表示装置は、半導体発光素子からなる光源と、前記光源の発光特性データを保持する特性記憶手段と、前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段とを備える。そして、前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、前記補正された映像信号に基づいて、前記光源からの光を強度変調する映像表示デバイスとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクリーンの透過特性データに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号を補正する。したがって、スクリーンの種類による透過特性のばらつきに起因する輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の別構成によれば、半導体発光素子からなる光源の発光特性データに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号を補正する。したがって、光源の種類による発光特性のばらつきに起因する輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る投射型表示装置の構成を示す図である。
【図2】スクリーンの分光透過特性の例を示す図である。
【図3】目標輝度・色度とすべき色再現範囲の例を示す図である。
【図4】実施の形態2に係るマルチビジョン投射型表示装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る色再現可能範囲の例を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る色再現可能範囲の例を示す図である。
【図7】実施の形態2において目標色再現範囲を求める動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2において目標色再現範囲を求める動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2に係る内包判定方法を説明するための図である。
【図10】実施の形態2に係る内包判定方法を説明するための図である。
【図11】実施の形態2に係る交差判定方法を説明するための図である。
【図12】半導体発光素子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明における実施の形態1に係る投射型表示装置30の構成を示す図である。光源1〜3は、例えばLEDなどの半導体素子からなり、赤色の光を発するR光源1と、緑色の光を発するG光源2と、青色の光を発するB光源3とを備えている。光源1〜3のそれぞれにおける発光は、光源ドライバ5により時分割で制御されている。
【0016】
RGB合成装置4は、特定の波長の光のみを反射または透過する波長選択フィルタたるダイクロイックミラーを内部に有している。RGB合成装置4は、このダイクロイックミラーを用いて、光源1〜3の出力光のうち所望の波長を有する光を反射または透過し、集光レンズ6に出射する。集光レンズ6は、RGB合成装置4からの光の輝度分布を空間的に均一化して、映像表示デバイス7に出力する。
【0017】
一方、輝度・色度補正手段15には、外部から映像信号Dが入力される。輝度・色度補正手段15は、後述するように当該映像信号Dにおける輝度・色度を補正し、当該補正後の映像信号Dに対応する信号をドライバ16に出力する。ドライバ16は、輝度・色度補正手段15からの信号を、映像表示デバイス7が必要とする信号フォーマットへと信号変換し、それによって得られた信号を映像表示デバイス7に出力する。
【0018】
映像表示デバイス7は、例えば、DMD(Digital Mirror Device)で構成されており、ドライバ16からの信号に基づいて集光レンズ6からの光を強度変調し、当該強度変調した光を、投射レンズ8を介してスクリーン9背面に投射する。その結果、スクリーン9背面側に投射された光がスクリーン9表面側に透過して、スクリーン表面上に映像が投射される。このように、本実施の形態に係る投射型表示装置30は、背面からスクリーン9上に映像を投射する。
【0019】
特性記憶手段31は、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12を備え、光源1〜3の発光特性データ、及び、スクリーン9の透過特性データ等を保持している。この特性記憶手段31は、例えば、電源が切れた場合であってもその記憶内容を保持することが可能な不揮発性メモリであるEEPROMで構成されている。なお、特性記憶手段31は、1つのEEPROMで構成されてもよいし、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12のそれぞれに対応する3つのEEPROMで構成されてもよい。次に、光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12のそれぞれについて説明する。
【0020】
光源特性記憶手段10には、可視光の波長領域における、光源1〜3の放射強度を示す放射強度特性が、分光放射特性データ(発光特性データ)Sr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)として予め記憶されている。なお、光源特性記憶手段10に保持される分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)は、取り付けられる光源1〜3の種類に応じたデータに書き換えられることが可能となっている。
【0021】
スクリーン特性記憶手段11には、可視光の波長領域における、スクリーン9の分光透過特性が、透過ゲインデータ(透過特性データ)T(λ)として予め記憶されている。図2に、種類が異なる2つのスクリーン9の分光透過特性を示す。なお、スクリーン特性記憶手段11に保持される透過ゲインデータT(λ)は、組み合わされるスクリーン9の種類に応じたデータに書き換えられることが可能となっている。
【0022】
光学系特性記憶手段12には、投射型表示装置30内での光源1〜3及びスクリーン9以外の光学特性が、特性データO(λ)として記憶されている。当該特性データとしては、例えばRGB合成装置4の波長選択フィルタ(ダイクロイックミラー)の波長帯データが該当する。この光学系特性記憶手段12に保持される特性データは、光源特性記憶手段10等と同様に書き換えられることが可能となっている。
【0023】
光源特性記憶手段10、スクリーン特性記憶手段11及び光学系特性記憶手段12に保持されている分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)、透過ゲインデータT(λ)及び特性データO(λ)は、特性係数演算手段13に与えられる。つまり、特性記憶手段31に保持されている発光特性データ、透過特性データ及びその他の特性データは、特性係数演算手段13に与えられる。
【0024】
演算手段32は、特性係数演算手段13及び補正係数演算手段14を備え、特性記憶手段31に保持されている発光特性データ及び透過特性データ等と、目標とすべき目標輝度(目標値)Ctを表すデータとに基づいて補正係数を算出する。次に、特性係数演算手段13及び補正係数演算手段14のそれぞれについて説明する。
【0025】
特性係数演算手段13は、光源特性記憶手段10からの分光放射特性データSr(λ)、Sg(λ)、Sb(λ)と、スクリーン特性記憶手段11からの透過ゲインデータT(λ)と、光学系特性記憶手段12からの特性データO(λ)とに基づいて、次式(1)により、特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを求める。
【0026】
【数1】
【0027】
なお、式(1)において、Kx,Ky,Kzは定数であり、x(λ)、y(λ)、z(λ)は等色関数である。これらを示すデータは、特性係数演算手段13内のメモリ13aに記憶されている。なお、等色関数とは、等エネルギースペクトルに対する人間の目の分光感度曲線を表す関数である。
【0028】
特性係数演算手段13で求められた特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbは、補正係数演算手段14及び輝度・色度補正手段15に与えられる。
【0029】
補正係数演算手段14は、シリアル通信手段、赤外線リモコン、無線装置等を有しており、目標輝度・色度(目標値)Ctを表すデータを外部から受け取る。図3は、補正係数演算手段14が受け取る目標輝度・色度Ctの一例を示す図である。図3に示されるように、目標輝度・色度Ctは、Rt、Gt、Btを頂点とする三角形状の色再現範囲で表されており、Rtはその三刺激値Xrt、Yrt、Zrtで、Gtはその三刺激値Xgt、Ygt、Zgtで、Btはその三刺激値Xbt、Ybt、Zbtでそれぞれ表されるものとする。なお、この目標輝度・色度Ct(Rt、Gt、Bt)は、外部からの設定などにより変更可能となっている。
【0030】
同図3には、Rt、Gt、Bt以外に、R、G、Bが示されている。このR、G、Bを頂点とする三角形は、本投射型表示装置30が色再現可能な範囲(以下「色再現可能範囲」と呼ぶ)を表す。後述の動作により、本実施の形態に係る投射型表示装置30においては、どのような種類の光源1〜3及びスクリーン9が投射型表示装置30に交換部品として取り付けられても、投射型表示装置30が表示する映像の輝度・色度が、色再現可能範囲R、G、B内に含まれるRt、Gt、Bt(目標輝度・色度Ct)に近づけられるものとなっている。
【0031】
補正係数演算手段14は、目標輝度・色度Ctを表すデータと、特性係数演算手段13からの特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbとに基づいて、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを算出する。補正係数演算手段14は、算出した補正係数を輝度・色度補正手段15に与える。この補正係数の算出については後で詳しく説明する。
【0032】
輝度・色度補正手段15は、特性係数演算手段13からの特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbと、補正係数演算手段14からの補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbとに基づいて、外部からの映像信号Dにおける輝度・色度を補正する。この補正についても、補正係数演算手段14での補正係数の算出とあわせて後で詳しく説明する。
【0033】
また、この輝度・色度補正手段15は、当該補正後の映像信号(この三刺激値をXc、Yc、Zcとする)を、R、G、Bの各色成分を表す信号Er、Eg、Ebに変換してドライバ16に出力する。ドライバ16は、信号Er、Eg、Ebを受けて、これに対応したドライブ信号Fr、Fg、Fbを生成し、これにより映像表示デバイス7を駆動する。つまり、映像表示デバイス7は、実質的に、輝度・色度補正手段15で補正された映像信号Dに基づいて、光源1〜3からの光を強度変調する。強度変調された光は背面からスクリーン9に投射され、スクリーン9上に映像が表示される。
【0034】
次に、輝度・色度補正手段15における映像信号Dの補正について詳しく説明する。本実施の形態では、前提として、次式(2)が成立する加法混色モデルの投射型表示装置を想定している。
【0035】
【数2】
【0036】
この式(2)において、Xa、Ya、Zaは、表示色における三原色(赤(R)、緑(G)、青(B))の混合割合に対応した色の三刺激値を表す。また、α、β、γは、ある信号において、R、G、Bの各成分の強度が取り得る最大値に対する当該強度の比を表す。例えば、当該信号において、R、G、Bの各成分の強度が0から255までの範囲の値を取り得る場合には、α、β、γは、255に対する各成分の強度の比で表される。この場合、α、β、γのそれぞれは、0から1までの範囲の値を取ることになる。
【0037】
α、β、γがこのように表される場合には、XLr、YLr、ZLrは、原色Rを表示する(α=1、β=γ=0)際の補正前のスクリーン9に表示される三刺激値に等しく、XLg、YLg、ZLgは、原色Gを表示する(β=1、α=γ=0)際の同三刺激値に等しく、XLb、YLb、ZLbは、原色Bを表示する(γ=1、α=β=0)際の同三刺激値に等しくなる。
【0038】
式(2)は、ある特性を持った表示装置に対し、ある色信号(α、β、γ)が入力されると、表示装置の表示色の三刺激値がXa、Ya、Zaとなることを示す。この式(2)に示されるように、加法混色モデルが成り立つ表示装置の色空間は、三原色「R、G、B」それぞれの三刺激値XYZの線形和により各表示色が得られる線形空間となる。
【0039】
さて、光源1〜3及びスクリーン9等の特性の影響を受ける結果、上述したように、例えば、原色Rを表示する映像信号(α=1、β=γ=0)を受けた場合には、三刺激値XLr、YLr、ZLrにより映像がスクリーン9に表示されることになる。しかし、この場合に映像表示に要求されている三刺激値は、三刺激値XLr、YLr、ZLrではなく、三刺激値Xrt、Yrt、Zrtである。そこで、本実施の形態においては、輝度・色度補正手段15は、次式(3)に基づいて映像信号D(α、β、γ)を補正する。
【0040】
【数3】
【0041】
この式(3)の右辺の1番目の行列の構成要素は、特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbであり、特性係数演算手段13において、上式(1)の演算が行われることにより算出される。2番目の行列の構成要素は、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbであり、上述において簡単に説明したように、補正係数演算手段14において算出される。
【0042】
次に、補正係数演算手段14における、その補正係数の算出について詳しく説明する。本実施の形態では、輝度・色度補正手段15が、赤色を示す映像信号D(1、0、0)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの赤色の三刺激値Rt(Xrt、Yrt、Zrt)の映像がスクリーン9に表示されるように補正する。この場合、式(3)から、次式(4)が得られる。
【0043】
【数4】
【0044】
式(4)の右辺の2番目の行列と、3番目の行列を整理すると、次式(5)となる。
【0045】
【数5】
【0046】
式(5)を変形すると、次式(6)が得られる。
【0047】
【数6】
【0048】
同様に、輝度・色度補正手段15が、緑色を示す映像信号D(0、1、0)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの緑色の三刺激値Gt(Xgt、Ygt、Zgt)の映像が表示されるように補正する。また、同様に、輝度・色度補正手段15が、青色を示す映像信号D(0、0、1)を受け取ると、目標輝度・色度Ctの青色の三刺激値Bt(Xbt、Ybt、Zbt)の映像が表示されるように補正する。その結果、式(6)と同様に、次式(7)及び(8)が得られる。
【0049】
【数7】
【0050】
【数8】
【0051】
以上の式(6)〜(8)により、式(3)の右辺の2番目の行列の構成要素たる補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbが求まる。
【0052】
図1に戻って、補正係数演算手段14は、外部からCt(Xrt、Yrt、Zrt、Xgt、Ygt、Zgt、Xbt、Ybt、Zbt)を受け、特性係数演算手段13から特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを受け、これらに上式(6)〜(8)の演算を行って、補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを算出する。
【0053】
輝度・色度補正手段15は、補正係数演算手段14から補正係数Xtr、Ytr、Ztr、Xtg、Ytg、Ztg、Xtb、Ytb、Ztbを受け、外部から映像信号D(α、β、γ)を受け、特性係数演算手段13から特性係数XLr、YLr、ZLr、XLg、YLg、ZLg、XLb、YLb、ZLbを受け、これらに上式(3)の演算を行って、Xc、Yc、Zcを求める。そして、この輝度・色度補正手段15は、Xc、Yc、ZcをR、G、Bの各成分の信号Er、Eg、Ebに変換して、これをドライバ16に供給する。
【0054】
ドライバ16は、この信号Er、Eg、Ebに応じたドライブ信号Fr、Fg、Fbを生成し、これに基づいて映像表示デバイス7の変調を制御することにより、スクリーン9上には輝度・色度がほぼ目標値Ctに補正された映像が得られることになる。
【0055】
以上のような本実施の形態に係る投射型表示装置によれば、半導体発光素子からなる光源1〜3の発光特性データと、スクリーン9の透過特性データとに基づいて、目標輝度・色度を生じさせるための補正係数を自動的に算出し、当該算出した補正係数に基づいて映像信号Dを補正する。したがって、光源1〜3の種類による発光特性のばらつき、及び、スクリーン9の種類による透過特性のばらつきに起因して投射型表示装置30毎に生じる輝度・色度のばらつき(ずれ)を抑制することができる。
【0056】
なお、投射型表示装置として、特性記憶手段31が、複数種類のスクリーン9の透過特性データを予め保持しているような構成も想定される。このような場合には、演算手段32は、スクリーン9が交換される際に、特性記憶手段31に保持されている当該スクリーン9(つまり交換後のスクリーン9)の透過特性データに基づいて補正係数を算出することが好ましい。このようにすれば、投射型表示装置30に取り付けられたスクリーン9に適した映像表示を行うことができる。
【0057】
また、投射型表示装置として、特性記憶手段31が、複数種類の光源1〜3の発光特性データを予め保持しているような構成も想定される。このような場合には、演算手段32は、光源1〜3が交換される際に、特性記憶手段31に保持されている当該光源1〜3(つまり交換後の光源1〜3)の発光特性データに基づいて補正係数を算出することが好ましい。このようにすれば、投射型表示装置30に取り付けられた光源1〜3に適した映像表示を行うことができる。
【0058】
なお、光源1〜3及びスクリーン9の交換が行われる場合には、交換部品となる光源1〜3及びスクリーン9に、当該部品毎に固有の識別符号を記憶させた記憶手段(図示せず)を付属させ、投射型表示装置30にその識別符号を読み取る読取手段(図示せず)を設けることが好ましい。このようにすれば、交換部品が交換された場合にはその交換が直ちに、かつ自動的に検出されることから、交換が検出された場合に、自動的に補正係数を算出することが可能となる。
【0059】
また、以上の実施の形態では目標輝度・色度Ctを外部において設定される場合について説明したが、それが固定でよい場合には、内部メモリ(図示せず)に予め格納してもよいし、また、一旦外部で設定された目標輝度・色度Ctを当該内部メモリに格納してもよい。
【0060】
また、光源特性記憶手段10及びスクリーン特性記憶手段11にはそれぞれ各波長における放射波長特性(発光特性データ)及び透過特性(透過特性データ)を記憶するようにしたが、XYZ表色系などに代表される表色系の三刺激値が計算できるものであればよく、これに限定されるものではない。
【0061】
また、本実施の形態では、特性記憶手段31が発光特性データと透過特性データとを保持し、演算手段32が発光特性データ、透過特性データ及び目標輝度・色度を表すデータに基づいて補正係数を算出した。しかし、これに限ったものではなく、特性のばらつきによっては、発光特性データ及び透過特性データのうちいずれか一方のみを保持等するものであってもよい。
【0062】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2に係るマルチビジョン投射型表示装置の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置において、実施の形態1に係る投射型表示装置30と同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、実施の形態1に係る投射型表示装置30と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置は、実施の形態1で説明した投射型表示装置30を複数備えており、それらのスクリーン9からなる大画面に大きな映像を表示することが可能となっている。本実施の形態では、複数(ここでは2つ)の投射型表示装置30に共通する色再現可能な輝度及び色度を求め、当該輝度・色度を上述の目標輝度・色度Ctとして各投射型表示装置30に与えることが可能となっている。
【0064】
図4に示されるように、2つの投射型表示装置30である第1及び第2投射型表示装置30a,30bはコンピュータ40に接続されている。このコンピュータ40は、第1及び第2投射型表示装置30a,30bから、それぞれの色再現可能範囲(図3に示すRGB)を取得し、これらに共通する色再現範囲を算出する。
【0065】
ここで、第1投射型表示装置30aの色再現可能範囲を示すデータは、三角形R1G1B1の頂点のx、y座標を示すデータとして、第1投射型表示装置のメモリ30aaに記憶されているものとする。同様に、第2投射型表示装置30bの色再現可能範囲を示すデータは、三角形R2G2B2の頂点のx、y座標を示すデータとして、第2投射型表示装置30bのメモリ30baに記憶されているものとする。
【0066】
図5及び図6のそれぞれには、第1及び第2投射型表示装置30a,30bのそれぞれの色再現可能範囲が互いに異なる例が示されている。図5及び図6において三角形R1G1B1は第1投射型表示装置30aの色再現可能範囲を示し、三角形R2G2B2は第2投射型表示装置30bの色再現可能範囲を示す。コンピュータ40は、三角形R1G1B1及び三角形R2G2B2の座標値より、それらの共通領域からなる三角形RtGtBtの座標値を計算する。このように計算された共通領域三角形RtGtBtは、第1投射型表示装置30aと第2投射型表示装置30bのどちらの表示装置においても再現(表示)可能な範囲を表す。
【0067】
以下、共通領域三角形RtBtGtを求める方法について詳しく説明する。まず、コンピュータ40は、第1及び第2投射型表示装置30a,30bのメモリ30aa,30baから、三角形R1G1B1,R2G2B2の頂点のxy座標値を読み出し、これを用いてRt、Gt、Btのそれぞれのxy座標値を算出する。
【0068】
図7及び図8は、コンピュータ40がRtのxy座標値を算出する際の手順を示すフローチャートである。図7においてまず、コンピュータ40は、R1とR2(の座標値)が互いに等しいかどうかの判定を行う(ステップS1)。等しい場合には、R1=R2(の座標値)が、求めるべきRt(の座標値)であるとして(ステップS2)、手順を終了する。
【0069】
等しくない場合には、コンピュータ40は、後述の内包判定方法を行うことにより、各三角形の各頂点が他方の三角形に内包されているかどうかを判定し(ステップS3及びS4)、内包されていると判定すれば、その各頂点(R1またはR2)を共通領域の頂点(Rt)とする(ステップS5及びS6)。
【0070】
例えば、コンピュータ40は、最初に頂点R1が三角形R2G2B2に内包されているかどうかの判定を行い(ステップS3)、内包されていると判定すれば、頂点R1をRtとする(ステップS5)。ステップS3において内包されていないと判定すれば、次に頂点R2が三角形R1G1B1に内包されているかどうかの判定を行い(ステップS4)、内包されていると判定すれば、頂点R2をRtとする(ステップS6)。
【0071】
図9及び図10は、ステップS3及びS4で行われる内包判定方法を説明するための図である。以下、図9及び図10を用いて、頂点R1が三角形R2G2B2に内包されているかどうかを判定する内包判定方法の例を説明する。コンピュータ40は、頂点R1から各頂点R2、G2、B2へのベクトルをそれぞれR2v、G2v、B2vとし、R2v×G2v、G2v×B2v、B2v×R2v(×はベクトルの外積を表す)がすべて正であるか否かを判定する。この3つの積がすべて正である場合には、頂点R1は例えば図9に示されるように、三角形R2G2B2に内包されていると判定される。一方、上述の3つの積のいずれかが負であれば、頂点R1は例えば図10に示されるように、三角形R2G2B2に内包されていないと判定される。
【0072】
図7に示されるステップS3及びS4のいずれにおいても内包されていないと判定された場合には、図8に示されるステップS11に進む。このステップS11において、コンピュータ40は、後述の交差判定方法を行うことにより、線分R1G1と線分R2B2とが交わるかどうかを判定する。同ステップS11において交わっていると判定すれば、その交点をRtとする(ステップS12)。同ステップS11において交わっていないと判定すれば、線分R2G2と線分R1B1との交点をRtとする(ステップS13)。なお、このような交点計算は、R1はG2、B2よりもR2に近い位置にあることを前提としているが、通常であれば、この前提は成立する。
【0073】
図11は、ステップS11で行われる交差判定方法を説明するための図である。以下、この図11を用いて、線分R1G1と線分R2G2とが交わるかどうかを判定する交差判定方法の例を説明する。図11に示されるように、線分R1G1と線分R2B2とが交点Kで交わる(つまり、交点Kが線分R1G1上に存在し、かつ線分R2B2上に存在する)場合、次式(9)〜(11)が成り立つ。
【0074】
【数9】
【0075】
【数10】
【0076】
【数11】
【0077】
ここで、R1x、R1yは点R1のx、y座標値であり、G1x、G1yは点G1のx、y座標値であり、R2x、R2yは点R2のx、y座標値であり、B2x、B2yは点B2のx、y座標値である。
【0078】
コンピュータ40は、上式(9)及び(10)に、これらのxy座標値を代入して、s、tを求め、求めたs、tが上式(11)の条件を満たすならば、線分R1G1と線分R2B2とが交わると判定する。以上の交差判定を行うことにより、ステップS11においてコンピュータ40はRtを求める。
【0079】
以上、図7及び図8を用いて、Rtを求める動作について説明したが、コンピュータ40は、同様にしてGt,Btを求める。コンピュータ40は、このようにしてRt、Gt、Btのxy座標値を求めた後、これらをXYZ三刺激値に変換する。
【0080】
コンピュータ40は、求めた共通の色再現可能範囲の情報(RtGtBtのXYZ三刺激値の組合せ)を、第1及び第2投射型表示装置30a,30bに目標輝度・色度Ctとして与える。第1及び第2投射型表示装置30a,30bのそれぞれは、実施の形態1で説明した補正を行うことにより、自身の輝度・色度を、目標輝度・色度Ctに近づける。
【0081】
以上のような本実施の形態に係るマルチビジョン投射型表示装置によれば、複数の投射型表示装置30が表示する映像の輝度・色度は互いにほぼ等しくなり、複数画面でマッチングを取ることができる。したがって、複数の投射型表示装置30の間における輝度・色度のばらつきを抑制することができる。
【0082】
なお、以上の説明では、複数の投射型表示装置30の数は2つであったが、それより大きい数であっても同様に共通領域を計算することが可能であるため、その数は2つに限ったものではない。
【0083】
上記の実施の形態2のように、複数の投射型表示装置30を用いてマルチビジョン投射型表示装置を構成し、各投射型表示装置30の共通領域を目標値として各投射型表示装置30に与えることで、部品交換前後においても全画面の画面特性を均一に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1〜3 光源、7 映像表示デバイス、スクリーン9、15 輝度・色度補正手段、30 投射型表示装置、31 特性記憶手段、32 演算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面からスクリーン上に映像を投射する投射型表示装置であって、
前記スクリーンの透過特性データを保持する特性記憶手段と、
前記特性記憶手段に保持されている前記透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段と、
前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、
前記補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイスと
を備える、投射型表示装置。
【請求項2】
半導体発光素子からなる光源と、
前記光源の発光特性データを保持する特性記憶手段と、
前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段と、
前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、
前記補正された映像信号に基づいて、前記光源からの光を強度変調する映像表示デバイスと
を備える、投射型表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の投射型表示装置であって、
前記投射型表示装置は背面からスクリーン上に映像を投射し、
前記特性記憶手段は、前記スクリーンの透過特性データをも保持し、
前記演算手段は、前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データ及び前記透過特性データと、前記目標輝度・色度を表すデータとに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の投射型表示装置であって、
前記特性記憶手段は、
複数種類の前記スクリーンの前記透過特性データを保持し、
前記演算手段は、
前記スクリーンが交換される際に、前記特性記憶手段に保持されている当該スクリーンの前記透過特性データに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の投射型表示装置であって、
前記特性記憶手段は、
複数種類の前記光源の前記発光特性データを保持し、
前記演算手段は、
前記光源が交換される際に、前記特性記憶手段に保持されている当該光源の前記発光特性データに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の投射型表示装置を複数備え、
複数の前記投射型表示装置に共通する再現可能な輝度・色度を求め、当該輝度・色度を前記目標輝度・色度として各前記投射型表示装置に与える、マルチビジョン投射型表示装置。
【請求項1】
背面からスクリーン上に映像を投射する投射型表示装置であって、
前記スクリーンの透過特性データを保持する特性記憶手段と、
前記特性記憶手段に保持されている前記透過特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段と、
前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、
前記補正された映像信号に基づいて、光源からの光を強度変調する映像表示デバイスと
を備える、投射型表示装置。
【請求項2】
半導体発光素子からなる光源と、
前記光源の発光特性データを保持する特性記憶手段と、
前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データと、目標とすべき目標輝度・色度を表すデータとに基づいて補正係数を算出する演算手段と、
前記算出された補正係数に基づいて、映像信号における輝度・色度を補正する輝度・色度補正手段と、
前記補正された映像信号に基づいて、前記光源からの光を強度変調する映像表示デバイスと
を備える、投射型表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の投射型表示装置であって、
前記投射型表示装置は背面からスクリーン上に映像を投射し、
前記特性記憶手段は、前記スクリーンの透過特性データをも保持し、
前記演算手段は、前記特性記憶手段に保持されている前記発光特性データ及び前記透過特性データと、前記目標輝度・色度を表すデータとに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の投射型表示装置であって、
前記特性記憶手段は、
複数種類の前記スクリーンの前記透過特性データを保持し、
前記演算手段は、
前記スクリーンが交換される際に、前記特性記憶手段に保持されている当該スクリーンの前記透過特性データに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の投射型表示装置であって、
前記特性記憶手段は、
複数種類の前記光源の前記発光特性データを保持し、
前記演算手段は、
前記光源が交換される際に、前記特性記憶手段に保持されている当該光源の前記発光特性データに基づいて前記補正係数を算出する、投射型表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の投射型表示装置を複数備え、
複数の前記投射型表示装置に共通する再現可能な輝度・色度を求め、当該輝度・色度を前記目標輝度・色度として各前記投射型表示装置に与える、マルチビジョン投射型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−133089(P2012−133089A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284398(P2010−284398)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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