説明

投擲玩具

【課題】的に当たる強さを遊戯者が視覚的に認識できるようにして、床面上の的に対する投げつけ精度と強さを複合的に競わせることのできる投擲玩具を提供する。
【解決手段】的上に吸着させる吸着盤10と先端側の重量を重くするウェイト11を有する先端部材12と、投擲時に遊戯者が把持する玩具ボディ13と、を備えた構成とする。玩具ボディ13には、先端部材12が的に吸着される際の衝撃の大きさに応じて展開する展開アーム30A,30Bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、的上に投擲して遊ぶ投擲玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投擲玩具として、壁面に設置した的に向かって投げるダーツが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のダーツは、把持部であるバレルに外観を変化させる形態変化機構が設けられ、そのバレルの先端部に的に刺すためのポイントが取り付けられるとともに、バレルの後端部にシャフトを介して姿勢保持用のフライトが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−242937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投擲玩具である上述のようなダーツで遊ぶ(競技する)場合には、的を設置するための壁が必要となるため、屋外ではもとより屋内で遊ぶ場合にも、的の設置場所がネックとなり、遊戯者が気軽に遊ぶことができない。
【0005】
このため、現在、的を床面上に設置して遊ぶ投擲玩具の開発を検討している。的を床面上に設置して遊ぶ投擲玩具の場合、的の真上からゆっくりと落とせば比較的容易に狙った位置に当てる(刺す)ことができるため、遊戯としては面白みが少なくなる。そこで、投擲玩具を床面上の的に力を入れて投げつけ、投擲玩具の当たる的上の位置と、当たるときの強さを競う遊戯を検討している。
上述したダーツは、主に、的上の当たる位置の精度を競うものであることから、的に当たる強さを遊戯者に競わせる部品要素を持っていない。
なお、引用文献1には、的に当たったときにバレルの形態が変化すダーツが記載されているが、このダーツは、ポイントが的に押されることを契機として、羽根状の可動部が弾性部材の力によって所定角度まで回動するものであり、的に当たるときの強さには関係なく一様に可動部が回動変位するようになっている。
【0006】
そこでこの発明は、的に当たる強さを遊戯者が視覚的に認識できるようにして、床面上の的に対する投げつけ精度と強さを複合的に競わせることのできる投擲玩具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る投擲玩具は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、床面上に設置した的に向かって投擲する投擲玩具であって、前記的上に当てる的当て部と先端側の重量を重くするウェイトとを有する先端部材と、前記先端部材に連結され、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃の大きさに応じて形態が変化する玩具ボディと、を備えていることを特徴とするものである。
これにより、遊戯者が投擲玩具を的に向かって投げ、先端部材の的当て部が的上に当たると、的に当たったときの衝撃の大きさに応じて玩具ボディの形態が変化することになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る投擲玩具において、前記玩具ボディは、前記先端部材に一体に連結される固定ブロックと、前記固定ブロックよりも前記先端部材の的当て部側に、前記固定ブロックに対して相対変位可能に設けられた可動ブロックと、を備えていることを特徴とするものである。
これにより、投擲玩具が的に対して所定強さで投げつれられ、先端部材が的上に当たると、そのときの衝撃の大きさに応じて可動ブロックが固定ブロックに対して変位することになる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る投擲玩具において、前記玩具ボディは、変位可能な複数の可動部材と、前記各可動部材を初期状態に係止する係止部と、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃によって前記係止部による前記各可動部材に対する係止を解除する係止解除機構と、を備え、前記係止部による前記各可動部材の係止が解除される際の前記衝撃の閾値荷重が前記各可動部材毎に異なって設定されていることを特徴とするものである。
これにより、投擲玩具が的に対して所定強さで投げつけられ、先端部材が的上に当たると、そのときの衝撃の大きさに応じて各可動部材の係止が適宜係止解除機構によって解除され、係止を解除された可動部材が初期状態から変位するようになる。このとき、各可動部材が係止を解除される閾値荷重がそれぞれ異なって設定されているため、変位する可動部材の数は、先端部材が的に当たったときの衝撃の大きさによって異なってくる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る投擲玩具において、前記係止解除機構は、前記先端部材に一体に連結され、前記係止部を有する固定ブロックと、前記固定ブロックよりも前記先端部材の的当て部側に配置され、前記固定ブロックに対して相対変位可能に設けられるとともに前記複数の可動部材を変位可能に支持する可動ブロックと、前記可動ブロックを前記固定ブロック側に向けて付勢する付勢手段と、を備え、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃に応じて、前記可動ブロックが前記付勢手段の力に抗して前記固定ブロックに対して変位することにより、前記係止部による前記可動部材の係止が解除されるとともに、前記各可動部材の係止が解除される前記可動ブロックのストロークが前記各可動部材毎に異なって設定されていることを特徴とするものである。
これにより、投擲玩具が的に対して所定強さで投げつけられ、先端部材が的上に当たると、可動ブロックが慣性力で付勢手段の力に抗してストロークする。このとき、係止が解除される可動部材の数は可動ブロックのストロークに応じたものとなる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3または4に係る投擲玩具において、前記可動部材は、先端部を径方向外側に展開回動可能な展開アームによって構成されていることを特徴とするものである。
これにより、先端部材が的に当たって係止部による展開アームの係止が解除されると、展開アームが径方向外側に展開回動して的上の広範囲に張り出すようになる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1または2に係る投擲玩具において、前記玩具ボディは、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃の大きさに応じて指示位置が変位し、最大変位位置で停止する表示指示部を備えていることを特徴とするものである。
これにより、投擲玩具が的に対して所定強さで投げつれられ、先端部材が的上の所定位置に当たると、先端部材が的に当たるときの衝撃の大きさに応じて表示指示部の指示位置が変位し、表示指示部が最大変位位置を指して停止するようになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、先端部材に連結される玩具ボディが、先端部材が的に当たるときの衝撃の大きさに応じて形態を変化させる構成とされていることから、的に当たる強さを遊戯者に確実に視覚的に認識させることができる。したがって、この発明においては、床面上の的に対する投げつけ精度と強さを複合させて遊戯者に競わせることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、先端部材が的に当たると、そのときの衝撃の大きさに応じて可動ブロックが固定ブロックに対して変位することから、先端部材が的に当たったときの衝撃に応じた挙動を極めて簡単な構成によって得ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、先端部材が的に当たると、そのときの衝撃の大きさに応じて異なる数の可動部材が変位することから、変位した可動部材の数により、遊戯者に投げつけ強さを認識させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、吸着部材が的に当たると、そのときの衝撃の大きさに応じて固定ブロックに対する可動ブロックの移動ストロークが変化して、可動ブロックの移動ストロークに応じた数の可動部材が変位するため、極めて簡単な構成でありながら、先端部材が的に当たるときの衝撃の大きさに応じた数の可動部材を確実に変位させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、先端部材が的に当たって係止部による展開アームの係止が解除されると、展開アームが径方向外側に展開回動して的上の広範囲に張り出すようになることから、展開アームによって的上のポイントの獲得や、対戦者の投擲の邪魔をし、ゲーム性を拡張することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、先端部材が的に当たると、先端部材が的に当たったときの衝撃の大きさに応じて表示指示部の指示位置が変位し、表示指示部が最大変位位置を指して停止するようになることから、投擲後に表示指示部が指している位置により、遊戯者に投げつけ強さを認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1の実施形態の投擲玩具を的とともに示した斜視図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の正面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の側面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の平面図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の図3のA−A断面に対応する断面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の遊戯時のイメージを示す斜視図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の分解正面図である。
【図8】この発明の第1の実施形態の投擲玩具の的吸着時の動作を説明するための正面図である。
【図9】この発明の第2の実施形態の投擲玩具の一部を示す正面図である。
【図10】この発明の第3の実施形態の投擲玩具の一部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図8に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態の投擲玩具1を、その投擲玩具1を当てる的2とともに示した図であり、図2〜図5は、投擲玩具1の単体を示した図である。また、図6は、実際に遊戯者mが投擲玩具1で遊ぶ状況を示す図であり、図7は、投擲玩具1を分解して示す図、図8は、投擲玩具1の動作を示す図である。
この投擲玩具1は、床面上に設置した的2に向かって投擲して、先端部(下端)を的2上に吸着させるものであり、この実施形態の場合、外面に古代恐竜を模したデザインが立体形状と色彩によって施されている。また、的2の上面のデザインは、遊びのルールによって種々のものが採用可能であるが、図1に示す的2は、上面が複数の点数領域pに区画され、各点数領域pに獲得点となる数字が記されたデザインとされている。
なお、以下の説明においては、特別に断らない限り、床面上の的2に投擲玩具1が正規姿勢で投擲されたときに、鉛直下方に向く側を「下」と呼び、鉛直上方に向く側を「上」と呼ぶものとする。
【0021】
投擲玩具1は、的2上に吸着される軟質樹脂製の吸着盤10(的当て部)と先端側の重量を重くするためのウェイト11を有する先端部材12と、投擲時に遊戯者mが把持する硬質樹脂製(ビス等の固定具類を除く。)の玩具ボディ13と、を備えている。玩具ボディ13は、下方側に配置される(吸着盤10に近接する側に配置される)ロアボディ14と、上方側に配置される(吸着盤10と離間する側に配置される)アッパボディ15と、を備えた構造とされ、ロアボディ14とアッパボディ15がそれぞれ先端部材12に対して脱着可能に結合されている。
【0022】
先端部材12の吸着盤10は、図5に示すように、カップ状の凹部16を有し、その凹部16の開口側が吸着面17とされるとともに、凹部16の背面側の中心にボス部18が突設されている。なお、吸着盤10は、周知の構造のものであり、吸着面17を的2等の平坦面に押し付けることで凹部16内を負圧にし、それによって吸着面17をその平坦面に吸着させるようになっている。
吸着盤10の背面側のボス部18には、短軸円柱状の金属製のウェイト11が同軸に一体に取り付けられている。なお、この実施形態では、金属製の別体のウェイト11を取り付けるようにしているが、ウェイトは他の構成部品とともに樹脂材料によって形成することも可能である。
【0023】
また、先端部材12には、図5,図7に示すように、吸着盤10の吸着面17の背面側から吸着盤10と同軸に延出する軸部19が設けられている。この軸部19は硬質樹脂製の棒状部材から成り、その基端部がウェイト11の軸心部に埋設されるかたちで固定されている。ウェイト11の上半部の外面とウェイト11から突出した軸部19の基端側の外面には樹脂カバー9が被着され、軸部19の樹脂カバー9から上方に突出する領域の外周には、略円筒状の樹脂製のスプリングリテーナ20が取り付けられている。スプリングリテーナ20は、下端側の外周に支持突起20aが突設されている。軸部19とスプリングリテーナ20の外周には、上方側から付勢手段であるコイルスプリング21が装着され、そのコイルスプリング21の下端がスプリングリテーナ20の支持突起20aに係止されるようになっている。また、軸部19の上端側には段差状の縮径部19aが設けられ、その縮径部19aの付根部側に雄ねじ22が一体に形成されている。
【0024】
ロアボディ14は、先端部材12の軸部19の外周に配置され、軸部19と一体に連結される固定ブロック23と、固定ブロック23よりも下方側(吸着盤10側)の軸部19の外周に配置され、固定ブロック23に対して軸方向に摺動自在に組み付けられた可動ブロック24と、を備えている。
【0025】
固定ブロック23は、先端部材12の軸部19の外周に嵌装される円筒壁25と、この円筒壁25の上端部の外周側から外側斜め下方に庇状に突設された一対の係止爪26,26(係止部)と、を備えている。円筒壁25は、前述したスプリングリテーナ20と同外径に形成され、その下端面がスプリングリテーナ20の上端面に突き合わされるようになっている。固定ブロック23は、この状態でスプリングリテーナ20によって下方変位を規制される。また、円筒壁25の軸長は、スプリングリテーナ20に下方変位を規制された状態において、その上端面が軸部19の雄ねじ22の位置よりも低くなるように設定されている。なお、円筒壁25の下端領域の外周面は、コイルスプリング21の内側に配置され、スプリングリテーナ20とともにコイルスプリング20の内周側をガイドするように機能する。
また、一対の係止爪26,26は、円筒壁25の外周上の軸心対称位置に突設され、各係止爪26の両側部は、補強壁を兼ねる略三角形状のガイド壁27によって円筒壁25の外周面に連結されている。
【0026】
可動ブロック24は、固定ブロック23の円筒壁25とスプリングリテーナ20の外周側を囲繞する円筒壁28と、この円筒壁28の下端部の外周側から径方向外側に突設された一対の支持壁29,29と、各支持壁29の先端部に連結された展開アーム30A,30B(可動部材)と、を備えている。なお、円筒壁28と支持壁29は、円筒壁28の円周を二分した半割構造の二つの樹脂部品によって形成され、固定ブロック23の円筒壁25とスプリングリテーナ20の外周を囲繞した状態において、樹脂部品同士がビス止め固定されて組み付けられている。
【0027】
円筒壁28の内周面の上部領域には、図5に示すように、支持突起28aが内向きに突設され、この支持突起28aがコイルスプリング20の上端部に当接するようになっている。したがって、可動ブロック24は、コイルスプリング21によって上方(固定ブロック23に近接する方向)に付勢されることになる。ただし、図2,図7に示すように、固定ブロック23の円筒壁25の外周面には係止突起31が突設され、可動ブロック24側の円筒壁28の対応する位置には、係止突起31が嵌合される長孔状の変位規制溝32が形成されており、固定ブロック23に対する可動ブロック24の軸方向の相対変位は、係止突起31が変位規制溝32の上下の端部に当接することによって制限される。
【0028】
また、展開アーム30A,30Bは、基端部が大径の軸33を介して支持壁29に回動可能に連結されるとともに、先端部には径方向外側に向かって湾曲する湾曲爪34と、湾曲爪34の円弧の外側から径方向内側に突出する略三角形状の係止片35と、を備えている。
【0029】
係止片35は、図5,図7に示すように、展開アーム30A,30Bがほぼ鉛直に起立したときに、先端部から上方に山形状に隆起するストッパ突起36を備えている。このストッパ突起36は、展開アーム30A,30Bが起立状態のときに、固定ブロック23の係止爪26の内側スペース(係止爪26とガイド壁27に囲まれたスペース)に収容され、係止爪26によって抜けを規制されるようになっている。
ただし、ストッパ突起36が係止爪26によって抜けを規制されるのは、可動ブロック24全体がコイルスプリング21の付勢力よって固定ブロック23側に押し付けられているときであり、可動ブロック24がコイルスプリング21の力に抗して下方に規定量以上変位すると、係止爪26によるストッパ突起36の規制が解除され、展開アーム30A,30Bが軸33を中心として回動可能(変位可能)となる。また、可動ブロック24は、後に詳述するように、外部からの入力衝撃を受け、その衝撃の大きさに応じた量だけ下方に変位する。
【0030】
また、図7に示すように、各展開アーム30A,30Bのストッパ突起36の隆起高さh1,h2は同じではなく、一方の展開アーム30Aのストッパ突起36の隆起高さh1が他方の展開アーム30Bのストッパ突起36の隆起高さh2よりも低く設定されている。これにより、可動ブロック24が固定ブロック23に対して初期状態から下方に変位するときには、一方の展開アーム30Aのストッパ突起36の係止が最初に解除され、その後にさらに可動ブロック24が下方に変位したところで、他方の展開アーム30Bのストッパ突起36の係止が解除されることになる。したがって、この投擲玩具1においては、外部からの入力衝撃の大きさに応じて展開アーム30A,30Bの展開形態が、両展開アーム30A,30Bとも非展開、一方の展開アーム30Aのみ展開、両展開アーム30A,30Bとも展開の三つ形態のうちの一つに選択される。
また、各展開アーム30A,30Bのストッパ突起36の隆起高さh1,h2が異なっていることから、各展開アーム30A,30Bの係止が解除される閾値荷重は各展開アーム30A,30B毎に異なっている。
なお、この実施形態の場合、先端部材12が的2に吸着される際の衝撃によって係止部(係止爪26)による可動部材(展開アーム30A,30B)に対する係止を解除する係止解除機構は、係止爪26を有する固定ブロック23と、展開アーム30A,30Bを回動可能に支持する可動ブロック24と、可動ブロック24を固定ブロック23方向に付勢するコイルスプリング21とによって構成されている。
【0031】
一方、アッパボディ15は、下面が平坦な截頭円錐形状に形成され、図5に示すように、その下面の軸心部にねじ穴37が設けられている。このねじ穴37には、ロアボディ14の円筒壁28を貫通した先端部材12の軸部19の先端部が挿入され、軸部19の縮径部19aに設けられた雄ねじ22が螺合されるようになっている。アッパボディ15は軸部19の先端部に螺合されることにより、先端部材12に一体に結合されるとともに、ロアボディ14の固定ブロック23を、先端部材12の樹脂カバー9との間で軸方向に挟持固定する。
【0032】
以上では、投擲玩具1の先端部材12と玩具ボディ13の一例について詳述したが、先端部材12や玩具ボディ13は、デザインや機能の異なるものを複数用意しておき、遊戯者mの好みや戦略に応じて適宜交換する。この場合、例えば、先端部材12であれば、吸着盤10のサイズや吸着力の異なるものや、ウェイト11の重さの異なるもの、樹脂カバー9のサイズやデザインの異なるもの等を予め用意しておく。また、玩具ボディ13であれば、ロアボディ14の展開アームの本数が三つ以上のものや、展開アームのサイズやデザインの異なるもの、展開アーム以外の可動部を備えたもの、アッパボディ15のサイズやデザインの異なるもの等を予め用意しておく。ただし、用意される先端部材12には少なくとも吸着盤10の背面側に吸着盤10と同軸に軸部19が設けられ、ロアボディ14には軸部19が貫通状態で挿入される円筒部が設けられ、各アッパボディ15には軸部12の雄ねじ22が螺合されるねじ穴37が設けられている。
【0033】
以上の構成において、上述した投擲玩具1を床面上に設置した的2に投げて遊ぶ場合には、二つの展開アーム30A,30Bを上方に押し上げ、各展開アーム30A,30Bのストッパ突起36を固定ブロック23側の係止爪26に係止させておく。
遊戯者mは、この状態で玩具ボディ13を手で把持し、図6に示すように、的2上の狙った位置に投擲玩具1を投げつける。このときの投擲玩具1の持ち方や投げ方は自由であるが、例えば、吸着盤10を下に向けて、玩具ボディ13を鉛筆を持つように握って、的2に向かって押し出すように投げたり(「投擲精度を重視の投げ方」)、吸着盤10を上に向けて玩具ボディ13を握り、手首を使って180°回転させて的2に投げつけたり(「投げつける力重視の投げ方」)しても良い。
【0034】
こうして、図8に示すように、投擲玩具1の吸着盤10が吸着面17を下にして的2上に当たると、吸着盤10が的2上に吸着され、先端部材12とアッパボディ15の移動が急激に止められ、その衝撃がコイルスプリング21を介してロアボディ14の可動ブロック24に伝達されるようになる。このとき、可動ブロック24には、遊戯者mの投げつける力に応じた慣性力が作用することになり、可動ブロック24は、そのときの慣性力(吸着の際の衝撃)に応じた量だけ瞬時下方に変位するようになる。そして、このときの可動ブロック24の下方変位に応じて、展開アーム30A,30Bの展開形態が前述の三つのうちの一つとなる。
図1〜図5は、吸着盤10が吸着される際の衝撃が中程度で、一方の展開アーム30Aのみが展開したときの状態を示している。
【0035】
この投擲玩具1は、以上のように作動するため、例えば、吸着盤10が吸着した的2上の獲得点と、展開アーム30A,30Bの湾曲爪34の指した獲得点の和を遊戯者mの得点とするルールとすれば、投擲精度と、投擲玩具1が的2に当たるときの強さを複合的に競う遊戯(競技)とすることができる。
また、次に投擲する遊戯者mは上述と同様に投擲玩具1を的2上に投げつけるが、前の遊戯者mの投げた投擲玩具1が的2上にあれば、前の遊戯者mの投擲玩具1が邪魔になって所望の獲得点位置に投擲玩具1を吸着させにくくなる。このため、前の遊戯者mの投げた投擲玩具1の展開アーム30A,30Bが展開していれば、それだけ次の遊戯者mは得点が難しくなる。この場合、遊戯者mは先端部材12や玩具ボディ13をサイズや形状、機能の異なるものと適宜交換するようにしても良い。
【0036】
ところで、この投擲玩具1を的2上に力を入れて投げつけた場合には、吸着盤10を通して玩具ボディ13のロアボディ14とアッパボディ15に大きな衝撃荷重が作用するが、この投擲玩具1においては、吸着盤10の背部側から吸着盤10と同軸に軸部19が延設され、その軸部19がロアボディ14を貫通した状態でアッパボディ15に締結固定される構造とされているため、先端部材12と玩具ボディ13が脱着可能で適宜パーツ交換が可能な構造でありながら、先端部材12の軸部19がロアボディ14とアッパボディ15の軸芯を通る心材として機能し、投げつけに対する充分な強度を得ることが可能となっている。したがって、この投擲玩具1において、製品の耐久性を充分に確保しつつ、パーツ交換による高いカスタマイズ性を得ることができる。
【0037】
また、この投擲玩具1においては、ロアボディ14に、吸着盤10が的2に吸着される際の衝撃に応じて展開する可動部材である展開アーム30A,30Bが設けられているため、吸着時の衝撃の強さを遊戯者に視覚的に明確に認識させることができる。
特に、この実施形態においては、ロアボディ14の可動ブロック24に二つの展開アーム30A,30Bが設けられ、係止爪26による展開アーム30A,30Bの係止が解除される際の衝撃の閾値荷重が各展開アーム30A,30B毎に異なって設定されていることから、展開した展開アーム30A,30Bの数によって遊戯者mに投げつけ強さを明確に認識させることができる。
【0038】
この実施形態の展開アーム30A,30Bのように、可動部材をロアボディ14やアッパボディ15に設けるようにした場合には、吸着時の衝撃の強さを視覚的に認識できるだけでなく、ロアボディ14やアッパボディ15の交換によって挙動に大きな変化を持たせることができる。ただし、大型の可動部材である展開アーム30A,30Bを設ける場合には、この実施形態のように先端部に近いロアボディ14側に設置する方が、投擲時のバランスを維持するうえで有利となる。
【0039】
また、この投擲玩具1の場合、先端部材12の軸部19に固定される固定ブロック23と、固定ブロック23の下方側に変位可能に配置される可動ブロック24と、可動ブロック24を固定ブロック23方向に付勢するコイルスプリング21と、を備え、各展開アーム30A,30Bが固定ブロック23側の係止爪26に係止されるとともに、吸着盤10が的2に吸着された際の衝撃によって可動ブロック24がコイルスプリング21の力に抗して移動し、係止爪26による各展開アーム30A,30Bの係止が解除される構造とされているため、簡単な構造でありながら、吸着盤10の吸着時の衝撃に応じた展開アーム30A,30Bの形態変化を確実に得ることができる。
【0040】
また、この実施形態の投擲玩具1の場合、吸着盤10が的2に吸着される際の衝撃によって変位する可動部材が、先端部を径方向外側に展開可能な展開アーム30A,30Bによって構成されているため、的2上の広範囲に張り出した展開アーム30A,30Bによって的2上の獲得点を得たり、対戦者の投擲の邪魔をする等してゲーム性を拡張することができる。
【0041】
図9は、この発明の第2の実施形態を示すものである。
この実施形態の投擲玩具101は、第1の実施形態と同様に、先端部材の軸部(図示せず)にロアボディ114とアッパボディ(図示せず)が同様に脱着可能に取り付けられ、ロアボディ114が先端部材の軸部に固定される固定ブロック123と、固定ブロック123に軸方向に沿って変位可能に組み付けられる可動ブロック124とを備えている。ただし、この実施形態の場合、可動ブロック124には可動部材(第1の実施形態における展開アーム30A,30B)が設けられておらず、可動ブロック124を固定ブロック方向に付勢する付勢手段(第1の実施形態におけるコイルスプリング21)も設けられていない。この実施形態の場合、先端部材とアッパボディについては、第1の実施形態と同様の構成とされているため、以下では詳細な説明を省略するものとする。
【0042】
この実施形態の場合、可動ブロック124は、固定ブロック123の外周面に所定の抵抗(外力が加わらなければ、現在の位置を保持することができる程度の抵抗)をもって組み付けられている。また、ロアボディ114は、可動ブロック124が固定ブロック123に対して変位したときに、その変位に応じた位置を指示する目盛板40と指針41(表示指示部)とを備えている。
【0043】
さらに詳細に説明すると、可動ブロック124の円筒壁28には軸方向に長い略長方形状の開口42が形成され、目盛板40は、この開口42に取り付けられている。目盛板40は、透明樹脂によって形成された板の上に、可動ブロック124の軸方向に沿って複数の目盛が間欠的に付されている。
一方、指針41は、固定ブロックの円筒壁25の外周面のうちの、可動ブロック124の開口42に対応する位置に付されている。
したがって、吸着盤が的に吸着される際の衝撃によって可動ブロック124が固定ブロック123に対して下方に相対変位すると、固定ブロック123側の指針41がその変位に応じた量だけ目盛板40内を移動し、その移動位置が固定ブロック123と可動ブロック124の間の摩擦抵抗によって保持される。
【0044】
この実施形態の投擲玩具101では、吸着盤が的に吸着される際の衝撃に応じて変位する指針41が設けられ、衝撃に応じた目盛が指針41によって指示される。このため、遊戯の際に投擲玩具101を投げつけた強さを、目盛り表示として遊戯者に認識させることができる。
この実施形態の投擲玩具101を用いる場合、例えば、目盛板に×2,×3…のように倍率を記載しておき、吸着盤が吸着した獲得点に指針41の指す倍率をかけて得点とすることにより、投擲精度と投げつける強さを加味した遊戯(競技)とすることができる。
【0045】
図10は、この発明の第3の実施形態を示すものである。
この実施形態の投擲玩具201は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であり、可動ブロック224には支持壁29を介して展開アーム(図示せず)が回動可能に取り付けられ、可動ブロック224を固定ブロック223方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)も設けられている。ただし、可動ブロック224が固定ブロック223に対して変位したときに、その変位に応じた位置を指示する目盛板40と指針41(表示指示部)がさらにロアボディ214に設けられている点が異なっている。
【0046】
可動ブロック224の円筒壁28には第2の実施形態と同様に軸方向に長い略長方形状の開口42が形成され、この開口42に目盛板40が取り付けられている。
指針41は、第2の実施形態と異なり、図示しない円筒状の保持ベースに取り付けられ、その保持ベースが可動ブロック224の内周側に軸方向変位可能に取り付けられている。指針41を支持する保持ベースは可動ブロック224の内周面に摩擦抵抗によって位置保持可能とされている。また、保持ベースは、固定ブロック223に設けられた操作突起43が下方側から当接可能にされている。
したがって、吸着盤が的に吸着される際の衝撃によって可動ブロック224が固定ブロック223に対して下方に相対変位すると、その変位に応じた量だけ指針41が上方に押し上げられ、可動ブロック224の変位が元に戻った後にも保持ベースに作用する摩擦抵抗によって指針41の位置が保持される。なお、指針41は手動操作等によって初期位置に戻すようになっている。
【0047】
この実施形態の投擲玩具201は、第2の実施形態と同様に、衝撃に応じた目盛が指針41によって指示されるため、遊戯の際に投擲玩具201を投げつけた強さを、目盛表示として遊戯者に認識させることができる。ただし、この実施形態の場合、投げつけ強さに応じた形態変化が、展開アームの動きと目盛表示の両方で遊戯者に認識させることができるため、より遊戯性を高めることができる。
【0048】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、以上で説明した各実施形態では、先端部材に設けられる的当て部として吸着盤を用いているが、的当て部は、必ずしも吸着盤である必要はなく、永久磁石や面ファスナ等を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1,101,201…投擲玩具
2…的
10…吸着盤(吸着部)
11…ウェイト
12…先端部材
13…玩具ボディ
14,114,214…ロアボディ
15…アッパボディ
17…吸着面
19…軸部
21…コイルスプリング(付勢手段,係止解除機構)
23,123,223…固定ブロック(係止解除機構)
24,124,224…可動ブロック(係止解除機構)
26…係止爪(係止部)
30A,30B…展開アーム(可動部材)
41…指針(表示指示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設置した的に向かって投擲する投擲玩具であって、
前記的上に当てる的当て部と先端側の重量を重くするウェイトとを有する先端部材と、
前記先端部材に連結され、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃の大きさに応じて形態が変化する玩具ボディと、を備えていることを特徴とする投擲玩具。
【請求項2】
前記玩具ボディは、
前記先端部材に一体に連結される固定ブロックと、
前記固定ブロックよりも前記先端部材の的当て部側に、前記固定ブロックに対して相対変位可能に設けられた可動ブロックと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の投擲玩具。
【請求項3】
前記玩具ボディは、
変位可能な複数の可動部材と、
前記各可動部材を初期状態に係止する係止部と、
前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃によって前記係止部による前記各可動部材に対する係止を解除する係止解除機構と、を備え、
前記係止部による前記各可動部材の係止が解除される際の前記衝撃の閾値荷重が前記各可動部材毎に異なって設定されていることを特徴とする請求項1に記載の投擲玩具。
【請求項4】
前記係止解除機構は、
前記先端部材に一体に連結され、前記係止部を有する固定ブロックと、
前記固定ブロックよりも前記先端部材の的当て部側に配置され、前記固定ブロックに対して相対変位可能に設けられるとともに前記複数の可動部材を変位可能に支持する可動ブロックと、
前記可動ブロックを前記固定ブロック側に向けて付勢する付勢手段と、を備え、
前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃に応じて、前記可動ブロックが前記付勢手段の力に抗して前記固定ブロックに対して変位することにより、前記係止部による前記可動部材の係止が解除されるとともに、
前記各可動部材の係止が解除される前記可動ブロックのストロークが前記各可動部材毎に異なって設定されていることを特徴とする請求項3に記載の投擲玩具。
【請求項5】
前記可動部材は、先端部を径方向外側に展開回動可能な展開アームによって構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の投擲玩具。
【請求項6】
前記玩具ボディは、前記先端部材が前記的に当たったときの衝撃の大きさに応じて指示位置が変位し、最大変位位置で停止する表示指示部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の投擲玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−80965(P2012−80965A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227904(P2010−227904)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】