説明

抗うつ剤としての薬剤の新規な組合せ

コリンエステラーゼ阻害剤と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンとを組合せてなる新規抗うつ剤組成物は、従来の抗うつ剤と比べ格段に優れた高い治療効果を有する。コリンエステラーゼ阻害剤と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンとを組み合わせて用いる治療方法は、うつ病、特に、難治性のうつ病の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系に作用し、そして抗うつ剤として使用することができる化合物の新規な組合せに関する。また本発明は、前記抗うつ剤の組み合わせ又は組成物を用いてうつ病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気分障害は、多数の疾患群を含む。「うつ病(又はうつ状態)」は気分障害に分類され、最も一般的な精神疾患である。社会環境の変化により年々増加傾向にあり、日本だけでなく諸外国においても重大な社会問題の一つとなっている。うつ病のメカニズムや発症原因には未だ不明な点が多く、画一的且つ確実な治療方法は未だ確立されていない。
【0003】
現存する様々な治療法のなかでも、最も効果的であると考えられているのが薬物療法であり、画一的な有効性や短期間での改善性などの可能性から、抗うつ剤開発の為これまで数多くの研究がなされてきた。うつ病のメカニズムに関しては、脳のニューロンとニューロンとの神経伝達の場であるシナプス間隙で、セロトニン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)といったモノアミン系の神経伝達物質の濃度が減少することが明らかにされている(Coppen, A., British J. Psychiatry 113, 1237-64, 1967)。モノアミン系の神経伝達物質は、ニューロンのシナプス前軸索終末からシナプス間隙に放出され、別のニューロンのシナプス後樹状突起に存在する受容体と特異的に結合することによって、ニューロン間の信号伝達に寄与する。放出されたモノアミン系の神経伝達物質は、シナプス前軸索終末に存在するトランスポーターによってシナプス間隙から再取り込みされ、一部はモノアミン酸化酵素によって分解され、一部はシナプス小胞に取り込まれて再びシナプス間隙へと放出される。
【0004】
うつ病では、シナプス間隙におけるセロトニン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)といったモノアミン系の神経伝達物質の濃度が減少するという知見に基づいて、最初に登場したのが三環系及び四環系の抗うつ剤である。三環系及び四環系の抗うつ剤は、シナプス前軸索終末に存在する神経伝達物質のトランスポーターに結合し、トランスポーターの神経伝達物質再取り込み作用を妨げることによって、シナプス間隙に放出された神経伝達物質の濃度を増加させる作用を有する。しかし、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のトランスポーターだけでなく、シナプス後樹状突起に存在しているムスカリン様アセチルコリン受容体、ヒスタミンH受容体及びα・αアドレナリン受容体などに対しても結合することから、これらの受容体への拮抗作用によって様々な副作用が引き起こされる。
【0005】
そのような三環系及び四環系の副作用を回避するために、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOIs)が開発された。モノアミン酸化酵素阻害剤は、シナプス前軸索終末へ再取り込みされた情報伝達物質を分解し代謝するのに働いているモノアミン酸化酵素を不可逆的に阻害し、情報伝達物質を代謝させずにシナプス前軸索終末にプールすることによって、シナプス間隙のモノアミン濃度を増加させる。モノアミン酸化酵素阻害剤は、三環系及び四環系の抗うつ剤とは異なり、ムスカリン様アセチルコリン受容体、ヒスタミンH受容体及びα・αアドレナリン受容体などには結合しない。しかし、新たなモノアミン酸化酵素が生合成されるまでの間、モノアミンは代謝されずにシナプス前軸索終末にプールされる。患者が、モノアミン、特にノルアドレナリンの遊離を過剰に引き起こすチラミンを多く含む食物を摂取すると、急激な血圧上昇といった別の重篤な副作用が生じる場合がある。
【0006】
三環系及び四環系の抗うつ剤やモノアミン酸化酵素阻害剤による副作用を軽減するために開発されてきたのが、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害する、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)及び選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)である。これらは、名前の通り、シナプス間隙のセロトニンやノルアドレナリンがシナプス前軸索終末に再取り込みされるのをセロトニン及び/又はノルアドレナリン選択的に阻害することから、他の受容体への拮抗作用やモノアミンの過剰遊離などの副作用を引き起こさない。
【0007】
SSRIは、最も有効且つ副作用の少ない抗うつ剤であると世界的に認識されている。しかしながら、SSRIに分類される化合物は、各化合物の間に化学構造上の類似性及び/又は共通性に乏しく、またSSRIに分類される化合物の1つに対して有効性が認められたとしても、別のSSRIでは全く有効性が認められないというケースが数多く存在する。また、既存のSSRIのいずれによっても治療効果がみられない、あるいは一旦寛解しても何度も反復して罹患するといった、難治性のうつ病の割合も増加傾向にある。従って、うつ病を効果的に治療できる医薬に対する必要性は、現在も継続的に存在しており、その必要性は今後さらに高まることが予測される。
【0008】
SNRIであるミルナシプランやデュロキセチンでは全く有効性が認められないというケースも数多く存在する。また、ミルナシプランやデュロキセチンのいずれによっても治療効果がみられない、あるいは一旦寛解しても何度も反復して罹患するといった、難治性のうつ病の割合も増加傾向にある。従って、うつ病を効果的に治療できる医薬に対する必要性は、現在も継続的に存在しており、その必要性は今後さらに高まることが予測される。
【0009】
「うつ病」は、喜びの喪失及び意欲の喪失を最大の特徴とする“感情面における障害”であると信じられており、うつ病に伴ってみられる活動性の低下、処理能力の低下、身体上の不調などの症状も、感情面における障害の結果として引き起こされているものと考えられている。実際、今現在のうつ病の薬物療法では、感情面に深く関わっているとされるシナプス間隙のセロトニン及び/又はノルアドレナリンなどの濃度を選択的に増減させることに重点がおかれ、セロトニン及び/又はノルアドレナリンに作用する抗うつ剤を複数組合せることによって、従来よりも優れた抗うつ作用を有する医薬を提供することが試みられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、うつ病、特に、難治性のうつ病を治療するための、医薬化合物の新規な組成物又は組合せを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような新規な組合せの医薬によって、うつ病、特に難治性のうつ病を治療する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、アルツハイマー病治療薬として用いられているコリンエステラーゼ阻害剤が、うつ病に対しても有効な対抗作用を発揮するのではないかということに着目した。その結果、コリンエステラーゼ阻害剤と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンと、を組合せることにより、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンのそれぞれ単独治療では効果が認められにくいうつ病、特に難治性のうつ病を治療できることを思いがけなく見出した。
【0012】
第一の視点において、本発明は、コリンエステラーゼ阻害剤と選択的セロトニン再取り込み阻害剤(これらの化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、薬剤的に許容される塩、活性代謝物、プロドラッグ又は溶媒和物であってもよい)とを組合せてなる、うつ病(例えば、難治性のうつ病)治療用の医薬組成物を提供する。他の視点において、本発明はうつ病(例えば、難治性うつ病)の治療方法であって、難治性うつ病の治療が必要な患者に、上記医薬組成物の有効量を投与することを特徴とする。さらに異なる視点において、本発明は上記医薬組成物の使用であって、難治性うつ病を治療するための医薬の製造のために当該医薬組成物を使用することを特徴とする。
【0013】
第二の視点において、本発明はうつ病(例えば、難治性うつ病)治療用医薬組成物を提供するものであって、当該組成物は、コリンエステラーゼ阻害剤と、ミルナシプラン又はデュロキセチン(これらの化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、互変異性体、薬剤的に許容される塩、活性代謝物、プロドラッグ又は溶媒和物であってもよい)とを含むことを特徴とする。他の視点において、本発明はうつ病(例えば、難治性うつ病)の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に、上記医薬組成物の有効量を投与することを特徴とする。さらに異なる視点において、本発明は上記医薬組成物の使用であって、うつ病(例えば、難治性うつ病)を治療するための医薬の製造のために当該医薬組成物を使用することを特徴とする。
【0014】
第三の視点において、本発明は、以下の(A)及び(B)を含む(a)医薬組成物、(b)医薬の組み合わせ、(c)キット、及び(d)これらを投与することによる患者のうつ病を治療する方法を提供する:(A)コリンエステラーゼ阻害剤、及び(B)(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、(ii)ミルナシプラン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、若しくはその薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、又は(iii)デュロキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、若しくはその薬剤的に許容される塩のエナンチオマー。当該選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、(a)フルオキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、若しくはその薬剤的に許容される塩のエナンチオマーであるか、(b)フルボキサミン、若しくはその薬剤的に許容される塩であるか、(c)パロキセチン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、若しくはその薬剤的に許容される塩のジアステレオマーであるか、(d)セルトラリン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、若しくはその薬剤的に許容される塩のジアステレオマーであるか、又は(e)シタロプラム、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、若しくはその薬剤的に許容される塩のエナンチオマーである。
【0015】
第四の視点において、本発明は、以下を含む(a)医薬組成物、(b)医薬の組み合わせ、(c)キット、及び(d)これらを投与することによる患者のうつ病を治療する方法を提供する:(A)ドネペジル若しくはその薬剤的に許容される塩と、(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、(ii)ミルナシプラン若しくはその薬剤的に許容される塩、又は(iii)デュロキセチン若しくはその薬剤的に許容される塩。当該選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、(a)フルオキセチン、若しくはその薬剤的に許容される塩;(b)フルボキサミン、若しくはその薬剤的に許容される塩;(c)パロキセチン若しくはその薬剤的に許容される塩;(d)セルトラリン若しくはその薬剤的に許容される塩;又は(e)シタロプラム、その薬剤的に許容される塩、そのエナンチオマー、若しくはその薬剤的に許容される塩のエナンチオマーである。
【発明の効果】
【0016】
抗うつ薬は、一般的に、服用を始めてから2週間〜2ヵ月で初めて効果が認められるという事実が存在する。ところが驚くべきことに、本発明の医薬の組み合わせは、例えばその服用を始めてから約1週間で効果が認められた。さらに、例えばコリンエステラーゼ阻害剤を服用中止又は減量に伴って悪化した症状に対しても、コリンエステラーゼ阻害剤の投与を再開することによって効果を発揮することも認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に述べる実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本明細書中で使用される全ての技術的用語、科学的用語及び専門用語は、本発明が属する技術分野の通常の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有し、単に特定の態様を説明することを目的として用いられ、限定することを意図したものではない。本明細書中に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用されうるが、好ましい方法及び材料について以降の記載を参照できる。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
【0018】
本明細書において引用された全ての先行技術文献及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられ、本発明の実施のために用いることができる。
【0019】
「うつ病」は、「米国精神医学会による精神疾患の診断統計マニュアル:DSM−IV(American Psychiatric Association Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第4版)」の改訂版であるDSM−IV−TR(2000年発行)の診断基準に基づくと、「気分障害(Mode Disorders)」に属する「296.xx:大うつ病性障害(major depressive disorder)」及び「小うつ病性障害(minor depressive disorders)」に分類されるものである。大うつ病性障害は、更に、初回(単一)の大うつ病エピソードであると判断される「単一エピソード(Single Episode)」と、過去2回以上の大うつ病エピソードを経験していると判断される「反復性エピソード(Recurrent Episode)」とに分類されている。
【0020】
世界保健機構(WHO)の「疾病と関連保健問題の国際統計分類:ICD−10(International Statistical Classification of Disease and Related Health Problems 第10版)」の診断基準に基づくと、「うつ病」は、第V章(F)「精神及び行動障害(mental and behavioral disorders)」のうちの[F32:うつ病エピソード(Depressive episode)]及び「F33:反復性うつ病性障害(recurrent depressive disorder)」に分類されるものである。
【0021】
これらの診断基準における「混合性」ないしは「双極性」という用語は、その疾患又は障害が本発明の対象である「うつ病(又はうつ状態)」のエピソード(病相)だけでなく、「躁病(又は操状態)」のエピソードまで含むものを意味している。
【0022】
本発明の対象である「うつ病(又はうつ状態)」は、種々の診断基準に基づいてさらに説明されるであろう。
【0023】
DSM−IV−TRによると、以下のA〜Eの基準を全て満たす場合に、[大うつ病エピソード(Major Depressive Episode)]と診断される:
A.以下の症状のうち5つ(又はそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起している。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味又は喜びの喪失である。(注:明らかに、一般身体疾患、又は気分に一致しない妄想又は幻覚による症状は含まない。);
(1)その人自身の明言(例えば、悲しみ又は空虚感を感じる)か、他者の観察(例えば、涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分(小児や青年ではいらいらした気分もありうる);
(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、又はほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退(その人の言明、又は他者の観察によって示される);
(3)食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加(例えば、1ヵ月で体重の5%以上の変化)、又はほとんど毎日の、食欲の減退又は増加(小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。;
(4)ほとんど毎日の不眠又は睡眠過多;
(5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥又は制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの);
(6)ほとんど毎日の易疲労性、又は気力の減退;
(7)ほとんど毎日の無価値観、又は過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない);
(8)思考力や集中力の減退、又は、決断困難がほとんど毎日認められる(その人自信の言明による。又は、他者によって観察される);
(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図又は自殺するためのはっきりとした計画。
B.症状は、混合性エピソードの基準を満たさない。
C.症状は、臨床的に著しい苦痛、又は社会的、職業的もしくは他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
D.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、又は一般身体疾患 (例:甲状腺機能低下症)によるものではない。
E.症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛する者を失った後、症状が2ヵ月を超えて続くか、又は、著明な機能不全、無価値観への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動抑止があることで特徴づけられる。
【0024】
上記診断基準を満たす場合は、続いて、「296.2x:大うつ病性障害、単一エピソード」又は「296.3x:大うつ病性障害、反復性」のいずれであるか診断され得る。
【0025】
以下のA〜Cの3つの基準を満たす場合は、「296.2x:大うつ病性障害、単一エピソード」と診断することができる:
A.単一の大うつ病エピソードの存在;
B.大うつ病エピソードは失調感情障害ではうまく説明されず、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、又は特定不能の精神病性障害とは重なっていない;
C.躁病エピソード、混合性エピソード又は軽躁病エピソードが存在したことがない
(注:躁病様、混合性様、軽躁病様のエピソードの全てが、物質や治療に誘発されたもの、又は一般的身体疾患の直接的な生理学的作用によるものである場合は、この除外は適用されない)。
【0026】
また、[296.2x:大うつ病性障害、単一エピソード]の診断基準を満たさず、以下のA〜Cの基準を全て満たす場合には、[296.3x:大うつ病性障害、反復性]と診断することができる:
A.2回又はそれ以上の大うつ病エピソードの存在;
(注:別々のエピソードとみなすには、大うつ病エピソードの基準を満たさない期間が少なくとも2ヵ月連続して存在しなければならない);
B.大うつ病エピソードは失調感情障害ではうまく説明されず、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、又は特定不能の精神病性障害とは重なっていない;
C.躁病エピソード、混合性エピソード又は軽躁病エピソードが存在したことがない。
【0027】
2.ICD−10
ICD−10によると、本発明が対象とする「うつ病」は、以下のように分類され診断される。
[F32:うつ病エピソード]
3種類の典型的なうつ病エピソード(軽症(F32.0)、中等症(F32.1)又は重症(F32.2とF32.3))では、患者は通常、抑うつ気分、興味と喜びの喪失及び活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少に悩まされる。わずかに努力したあとでも、通常ひどく疲労感を感じる。他の一般的な症状には以下のものがある:
(a)集中力と注意力の減退
(b)自己評価と自信の低下
(c)罪責感と無価値観(軽症エピソードであっても認められる)
(d)将来に対する希望のない悲観的な見方
(e)自傷あるいは自殺の観念や行為
(f)睡眠障害
(g)食欲不振
【0028】
気分の落込みは日による変化が少なく、しばしば環境に対しても無反応であるが、しかし、日がたつにつれて特有な日内変動を示すことがある。躁病エピソードと同様に、臨床像には明確な個人差があり、特に思春期には非定型的な症状を示すことがふつうである。症例によっては、時に不安、苦悩及び精神運動性の激越が抑うつ症状よりも優勢なこともあり、また易刺激性、過度の飲酒、演技的行動、既存の恐怖症や強迫症状の増悪、あるいは心気症的とらわれなどの症状が加わることによって、気分の変化が潜在化することもある。うつ病エピソードの診断には、重症度の如何に関係なく、ふつう少なくとも2週間の持続が必要とされるが、もし極めて重症で急激な発症が認められる場合は、より短い期間で診断してもかまわない。
【0029】
上記の症状の内いくつかが際立つことや、特別に臨床的な意義があると広く認められている特徴的な症状を現すようになることがある。このような「身体性」症状の最も典型的な例は、次のものである:ふつうは楽しいと感じる活動に喜びや興味を失うこと;ふつうは楽しむことができる状況や出来事に対して情動的な反応性を欠くこと;朝の目覚めが普段より2時間以上早いこと;午前中に抑うつが強いこと;明らかな精神運動制止あるいは焦燥が客観的に認められること(他人から気付かれたり報告されたりすること);明らかな食欲の減退;体重減少(過去1か月間に5%以上と定義されていることが多い);明らかな性欲の減退。通常、これらの症状のうちおよそ4項目が明確に認められた場合に「身体性症候群が存在する」と認められる。しかし、身体性症候群が2又は3項目のみ認められる場合であっても、その程度が非常に重いものである場合は、このカテゴリーに含んでもよい)。
【0030】
以下で詳細に説明される軽症うつ病エピソード(F32.0)、中等症うつ病エピソード(F32.1)及び重症うつ病エピソード(F32.2とF32.3)のカテゴリーは、単一(初回)のうつ病エピソードにのみ用いるべきである。その他のうつ病エピソードは、反復性うつ病性障害(F33)の亜型の1つとして分類すべきである。
【0031】
[F32.0:軽症うつ病エピソード(Mild depressive episode)]
診断ガイドライン:抑うつ気分、興味と喜びの喪失及び易疲労性が通常うつ病にとって最も典型的な症状とみなされており、これらのうちの少なくとも2つ、さらに以下のF32に示す他の症状のうち2以上の症状が認められて、診断が確定する。そのように認められたいかなる症状も著しい程度のものであってはならず、エピソード全体の最短継続時間は約2週間である。軽症うつ病エピソードの患者は、通常、症状に悩まされて日常の仕事や社会的活動を継続するのに多少の困難を感じるが、完全に機能できなくなることはない。
【0032】
[F32.1:中等症うつ病エピソード(Moderate depressive episode)]
診断ガイドライン:軽症うつ病エピソード(F32.0)に挙げた最も典型的な3症状のうち2以上が認められ、さらに他の症状のうち3つ以上(4つが好ましい)が認められる場合に、診断が確定する。幾つかの症状は著しい程度にまでなる傾向をもつが、全体的に広汎な症状が存在するならば、このことは必要事項ではない。エピソード全体の最短継続時間は、約2週間である。中等症うつ病エピソードの患者は、通常、社会的、職場的又は家庭的な活動を継続するのがかなり困難になり得る。
【0033】
[F32.2:精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード(Severe depressive episode without psychotic symptoms)]
重症うつ病エピソードでは、制止が顕著でなければ、患者は通常かなりの苦悩と激越を示す。自尊心の喪失や無価値感や罪責感を抱きやすく、特に重症な症例では自殺の危険性が非常に高い。重症うつ病エピソードでは、身体性症状はほとんど常に存在すると推定される。
【0034】
診断ガイドライン:軽症及び中等症うつ病エピソード(F32.0、F32.1)について述べた典型的な3症状すべてに加え、他の4つ以上の症状が認められ、そのうちの幾つかが重症でなければならない。しかしながら、もし激越や精神運動制止などの重要な症状が顕著であれば、患者は多くの症状を詳細に説明しようとしない場合か、できない場合がある。このような場合でも全体的に、重症エピソードとするのが妥当であろう。うつ病エピソードは、通常2週間以上持続しなければならないが、もし症状が極めて重く急激な発症であれば、2週間未満でもこの診断をしてもよい。
【0035】
重症うつ病エピソードの期間中、患者はごく限られた範囲のものを除いて、社会的、職業的又は家庭的な活動を継続することがほぼ不可能となる。このカテゴリーは、精神病症状のない単一の重症うつ病エピソードだけに用いられるべきである。それ以降のエピソードには、反復性うつ病性障害(F33)の下位分類を用いるべきである。
【0036】
[F32.3:精神病症状を伴う大うつ病エピソード(Severe depressive episode with psychotic symptoms)]
診断ガイドライン:精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード(F32.2)の診断基準を満たす重症うつ病エピソードであり、妄想、幻覚あるいはうつ病性昏迷を伴う。妄想には通常、罪業、貧困、切迫した災難、自責の念などに関するものである。幻聴や幻嗅は通常、中傷や非難の声、腐った汚物や肉の腐敗臭などのようなものである。重い精神運動制止は、昏迷にいたることがある。
【0037】
鑑別診断:うつ病性昏迷は、緊張型分裂症(F20.2)、解離性昏迷(F44.2)及び脳器質性昏迷と鑑別しなければならない。このカテゴリーは、精神病症状を伴う重症うつ病の単一エピソードだけに用いるべきである。それ以降のエピソードには、反復性うつ病性障害(F33)の下位分類を用いるべきである。
【0038】
[F33:反復性うつ病性障害(Recurrent Depressive Disorder)]
この障害は、軽症(F32.0)、中等症(F32.1)又は重症(F32.2とF32.3)エピソードのいずれかとして特定される“うつ病”エピソードが反復し、躁病(F30.1とF30.2)の診断基準を満たす気分高揚と過活動性の独立したエピソードの病歴を欠くことによって特徴付けられる。このカテゴリーは、軽躁病(F30.0)の診断基準を満たす程度の短期間の気分高揚と過活動性が、うつ病エピソードの直後に(時には明らかにうつ病の治療によって誘発されて)起こったという証拠がある場合であっても、なお使用すべきである。うつ病のエピソードの発症年齢や重症度、持続期間や頻度は、いずれも様々である。一般に、初回エピソードは双極性障害の場合よりも遅く、平均発症年齢は40歳代である。各エピソードは、3ヵ月から12ヵ月間持続する(持続期間の中央値は約6ヵ月)。各エピソードの間は通常完全に回復するが、一部の患者では、うつ病が長引くこともある。このような場合でも、このカテゴリーを用いるべきである。重症度の如何に関わらず、個々のエピソードはしばしばストレスフルな生活上の出来事によって誘発される。多くの文化圏において個々のエピソードも持続性うつ病も、男性より女性に2倍多くみられる。
【0039】
反復性うつ病性障害の患者に躁病エピソードをみる危険は、うつ病エピソードが何回経験されても完全に消えることはない。躁病エピソードが生じれば、双極性障害に診断を変更すべきである。
【0040】
反復性うつ病性障害は、まず現在のエピソードの型を特定し、次いで(充分な情報が得られるのであるなら)全てのエピソードにおいて優勢な型を特定することによって、以下のように下位分類することができる。
【0041】
[F33.0:反復性うつ病性障害、現在軽症エピソード(Recurrent depressive disorder, current episode mild)]
診断ガイドライン
確定診断のためには:
(a)反復性うつ病性障害(F33)の診断基準を満たし、現在のエピソードが軽症うつ病エピソード(F32.0)の診断基準を満たさなければならない。
(b)少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヵ月間で隔てられていなければならない。
F33.00:身体性症候群をともなわないもの(F32.00を参照)
F33.01:身体性症候群をともなうもの(F32.01を参照)
【0042】
[F33.1:反復性うつ病性障害、現在中等症エピソード(Recurrent depressive disorder, current episode moderate)]
診断ガイドライン
確定診断のためには:
(a)反復性うつ病性障害(F33)の診断基準を満たし、現在のエピソードが中等症うつ病エピソード(F32.1)の診断基準を満たさなければならない。
(b)少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヵ月間で隔てられていなければならない。
F33.10:身体性症候群をともなわないもの(F32.10を参照)
F33.11:身体性症候群をともなうもの(F32.11を参照)
【0043】
[F33.2:反復性うつ病性障害、現在精神病症状をともなわない重症エピソード(Recurrent depressive disorder, current episode severe without psychotic symptoms)]
診断ガイドライン
確定診断のためには:
(a)反復性うつ病性障害(F33)の診断基準を満たし、現在のエピソードが精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード(F33.2)の診断基準を満たさなければならない。
(b)少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヵ月間で隔てられていなければならない。
そうでなければ、診断としては他の反復性気分障害(F38.1)を用いるべきである。もし必要ならば、以前のエピソードで優勢であった型(軽症あるいは中等症、重症、不詳)を特定してもよい。
【0044】
[F33.3:反復性うつ病性障害、現在精神病症状をともなう重症エピソード(Recurrent depressive disorder, current episode severe with psychotic symptoms)]
このカテゴリーについて確定診断するためには、以下の基準を全て満たす必要がある:
(a)反復性うつ病性障害(F33)の診断基準を満たし、現在のエピソードが精神病症状をともなう重症うつ病エピソード(F33.3)の診断基準を満たさなければならない。
(b)少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヵ月間で隔てられていなければならない。
【0045】
[F33.4:反復性うつ病性障害、現在寛解状態にあるもの(Recurrent depressive disorder, currently in remission)]
このカテゴリーについて確定診断するためには、以下の基準を全て満たす必要がある
(a)過去において反復性うつ病性障害(F33)の診断基準を満たし、現在はいかなる重症度のうつ病エピソードあるいはF30〜F39にある他のどの障害の診断基準も満たしてはならない。
(b)少なくとも2回のエピソードが、短くとも2週間続き、はっきりした気分障害のない数ヵ月間で隔てられていなければならない。
尚、このカテゴリー(F33.4)は、患者が再発を予防するために治療を受けている場合でも用いてよい。
【0046】
[F33.8:他の反復性うつ病性障害(Other recurrent depressive disorders)]
[F33.9:反復性うつ病性障害、特定不能のもの(Recurrent depressive disorder, unspecified)]
【0047】
本明細書中において用いる「難治性のうつ病」という用語は、既存の薬物(好ましくは選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチン)療法では全く又はほとんど治療効果が認められなかった病態や、一旦薬物(好ましくは選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチン)療法で部分的ないし全体的に寛解しても服薬の終了により再度発症してしまうなどの反復性の病態を意味する。
【0048】
また、本発明において用いる「治療できる」という表現は、既存の薬物(好ましくは選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチン)療法では全く又はほとんど治療効果が認められなかった病態に関しては、部分的又は全体的な寛解を意味し、一旦薬物(好ましくは選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチン)療法で部分的ないし全体的に寛解しても服薬の終了により再度発症してしまうなどの反復性の病態に関しては、一旦部分的又は全体的に寛解した後に服薬を終了しても再発しないか、再発したとしても以前の反復周期よりは気分障害の基準を満たさない期間が有意に延長されることを意味する。
【0049】
うつ病の状態を評価するためには、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)(Hamilton M.,Journal of Neurology,Neurosurgery&Psychiatry,23:56〜62(1960年)及びHamilton M.,"Development of a rating scale for primary depressive illness.,Britisch Journal of Social and Clinical Psychology,6:278〜296(1967年))、Montgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)(Montgomery SA,Asberg M.,"A new depression scale designed to be sensitive to change.", Britisch Journal of Psychiatry,134:382〜389(1979年))、Clinical Global Impression(CGI)うつ病評価尺度(Guy W.,『ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacology』改訂版,US Dept.of Health,Education and Welfare,Bethesda,MD.(1976年))などの評価尺度が広く用いられている。
【0050】
一例として、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いて本発明を説明すると、20点以上であるとき重症と診断され、点数の減少により改善したと診断される。
【0051】
「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物である。「哺乳動物」とは、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ウマ、ウシ、サルなど)を含む、哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは、本明細書における哺乳動物はヒトである。この場合、「患者」という用語は、成人及び小児を含み、かつ男性及び女性を含む。小児は新生児、幼児、及び青年を含む。
【0052】
「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病及び/又は症状を完全に又は部分的に防止する点では予防的であり、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響の部分的又は完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、患者、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば以下の(a)〜(c)の治療の少なくとも一つを含む:
(a)疾病又は症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病又は症状が起こることを予防すること;
(b)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止又は遅延すること;
(c)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病又は症状の後退、消失、又は症状の進行の逆転を引き起こすこと。
【0053】
「プロドラッグ」とは、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的として、「薬剤の活性本体」(プロドラッグに対応する「薬剤」を意味する)を不活性な物質に化学修飾したものを意味し、吸収後、体内では活性本体へ代謝され、作用を発現する薬剤を意味する。従って、「プロドラッグ」という用語は、対応する「薬剤」よりも固有活性(intrinsic activity)は低いが、生物学的な系に投与されると、自発的な化学反応又は酵素触媒反応又は代謝反応の結果、その「薬剤」物質を生成する任意の化合物を指す。プロドラッグとしては、その薬剤のアミノ基、水酸基、カルボキシル基などがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化又はウレタン化された化合物が挙げられ、化学的又は代謝的に分解し得る基を有し、加水分解や加溶媒分解によって、又は生理的条件下で分解することによって医薬的に活性を示す誘導体を意味する。但し、例示した群は包括的なものではなく、典型的なものに過ぎず、当業者であれば他の既知の各種プロドラッグを公知の方法によってコリンエステラーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンから調製することができる。
【0054】
「活性代謝物」とは、作用が薬物代謝酵素により増強あるいは認められる様になる現象を示す物質をいう。
【0055】
本発明で有効成分として使用できるコリンエステラーゼ阻害剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤又はブチリルコリンエステラーゼ阻害剤があるが、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が好ましい。コリンエステラーゼ阻害剤の具体例としては、
ドネペジル:1−ベンジル−4−〔(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル〕メチルピペリジン;
リバスチグミン:N‐エチル‐N‐メチルカルバミン酸3‐[1‐(ジメチルアミノ)エチル]フェニルエステル;
タクリン:1,2,3,4‐テトラヒドロ‐9‐アクリジンアミン;
ガランタミン:4a,5,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−3−メトキシ−11−メチル−6H−ベンゾフロ(3a,3,2−ef)−(2)ベンゾアゼピン−6−オール;
メトリフォネート:(2,2,2‐トリクロロ‐1‐ヒドロキシエチル)リン酸ジメチル;
ネオスチグミン:3‐(ジメチルカルバモイルオキシ)フェニルトリメチルアミニウム;
フィゾスチグミン:(3aS−シス)−1,2,3,3a,8,8a−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ[2,3−b]インドール−5−オールメチルカルバミン酸(エステル)
などが挙げられるが、これらだけに限られない。この中でも特に好ましいのはドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンであり、ドネペジルが最も好ましい。また、本発明で有効成分として使用できるコリンエステラーゼ阻害剤には、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その互変異性体、その薬理学的に許容される塩、その活性代謝物、そのプロドラッグ及びその溶媒和物が含まれ、これらも使用することができる。本発明のコリンエステラーゼ阻害剤には、化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体などの異性体及び異性体混合物を含み、便宜上の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明のコリンエステラーゼ阻害剤には、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体及びラセミ体が存在することがあり得るが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であっても又は結晶形混合物であってもよい。
【0056】
本発明で有効成分として使用できるコリンエステラーゼ阻害剤は、公知の方法で製造することができる。
ドネペジルは、例えば、特開平1−79151号公報、日本国特許第2578475号公報、日本国特許第2733203号公報、日本国特許3078244号公報又は米国特許第4895841号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。また、塩酸ドネペジルは、医薬製剤としても入手できる。
ガランタミンは、例えば、米国特許第4663318号明細書、国際公開第88/08708号パンフレット、国際公開第97/03987号パンフレット、米国特許第6316439号明細書、米国特許第6323195号明細書、米国特許第6323196号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。
タクリンは、例えば、米国特許第4631286号明細書、米国特許第4695573号明細書、米国特許第4754050号明細書、国際公開第88/02256号パンフレット、米国特許第4835275号明細書、米国特許第4839364号明細書、米国特許第4999430号明細書、国際公開第97/21681号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。
リバスチグミンは、例えば、欧州特許第193926号明細書、国際公開第98/26775号パンフレット、国際公開第98/27055号パンフレットなどに開示されている方法により容易に製造することができる。
メトリフォネート、ネオスチグミン、フィゾスチグミンなどについても、先行技術文献において、公知の方法で製造することができる。
【0057】
本発明で有効成分として使用できる選択的セロトニン再取り込み阻害剤としては、例えば特許公表第2002−542287号明細書に記載される化合物を用いることができる。その中でも好ましくは、
フルボキサミン:5−メトキシ−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−ペンタノン−O−(2−アミノエチル)オキシム;
フルオキセチン:N−メチル−3−(p−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルプロピルアミン;
パロキセチン:トランス−(−)−3−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルオキシ)メチル]−4−(4−フルオロフェニル)ピペリジン;
セルトラリン:(1S-シス)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-N-メチ−1−ナフチルアミン;
シタロプラム:1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロ−5−イソベンゾフランカルボニトリル;
エスシタロプラム:S−(+)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−1,3−ジヒドロ−5−イソベンゾフランカルボニトリル オキサレート;
などを挙げることができるが、これらだけに限られない。この中でも特に好ましいのはフルボキサミン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンである。また、本発明で有効成分として使用できる選択的セロトニン再取り込み阻害剤には、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その互変異性体、その薬理学的に許容される塩、その活性代謝物、そのプロドラッグ及びその溶媒和物が含まれ、これらも使用することができる。本発明の選択的セロトニン再取り込み阻害剤には、化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体などの異性体及び異性体混合物を含み、便宜上の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明の選択的セロトニン再取り込み阻害剤には、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体及びラセミ体が存在することがあり得るが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であっても又は結晶形混合物であってもよい。
【0058】
本発明で有効成分として使用できる選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、公知の方法で製造することができる。
フルボキサミンは、例えば、特公昭60−26776号公報、米国特許第4085225号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。
フルオキセチンは、例えば、米国特許第4314081号明細書、国際公開第98/33496号公報、特公昭59−39418号公報などに開示されている方法により容易に製造することができる。
パロキセチンは、例えば、米国特許第4007196号明細書、米国特許第3912743号明細書、特公昭59−46216号公報、特公昭59−48826号公報などに開示されている方法により容易に製造することができる。
セルトラリンは、例えば、米国特許第4536518号明細書、特公昭60−5584号公報などに開示されている方法により容易に製造することができる。
【0059】
ミルナシプラン((1R,2S)−N,N−ジエチル−2−アミノメチル−1−フェニルシクロプロパンカルボキサミド)、及びデュロキセチン((+)−(S)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン)は、公知の方法で製造することができる。ミルナシプランは、例えば、欧州特許第200638号明細書、特公平5−67136号公報、仏蘭西国第2581060号明細書、米国特許第4478836号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。
デュロキセチンは、例えば、米国特許第5023269号明細書、日本国特許第2549681号公報、米国特許第4956388号明細書、米国特許第5508276号明細書などに開示されている方法により容易に製造することができる。
本発明のミルナシプラン又はデュロキセチンには、化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体などの異性体及び異性体混合物を含み、便宜上の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明のミルナシプラン又はデュロキセチンには、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体及びラセミ体が存在することがあり得るが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であっても又は結晶形混合物であってもよい。
【0060】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン又はデュロキセチンは、その薬理学的に許容される塩の形態であってもよい。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸又はパラ−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸などの有機酸が挙げられる。薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピンオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩などが挙げられるが、これらだけに限られない。本発明のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤について、ドネペジルは塩酸塩、リバスチグミンは酒石酸塩、ガランタミンは臭化水素酸塩が特に好ましい。本発明の選択的セロトニン再取り込み阻害剤について、フルオキセチンは塩酸塩、フルボキサミンはマレイン塩、パロキセチンは塩酸塩、セルトラリンは塩酸塩であるのが特に好ましい。本発明のミルナシプランは塩酸塩、デュロキセチンは塩酸塩であるのが特に好ましい。
【0061】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン、デュロキセチン又はそれらの薬理学的に許容される塩などは、無水物であってもよいし、溶媒和物が存在する場合には、その溶媒和物であってもよい。溶媒和物としては、水和物、非水和物のいずれであってもよいが、なかでも水和物が好ましい。非水和物としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、及びジメチルホルムアミドなどが使用され得る。
【0062】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン、デュロキセチン、又はそれらの薬理学的に許容される塩など、商業上入手可能なものは、化学メーカーなどから容易に入手することができる。
【0063】
本発明のコリンエステラーゼ阻害剤と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はミルナシプラン及びデュロキセチン並びにそれらの薬理学的に許容される塩、それらの活性代謝物、それらのプロドラッグ及びそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1つとは、どの様な組合せで処方されてもよい。コリンエステラーゼ阻害剤が1又は複数と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はミルナシプラン及びデュロキセチン並びにそれらの薬理学的に許容される塩、それらの活性代謝物、それらのプロドラッグ及びそれらの溶媒和物からなる群から選択される1又は複数といった組合せであってもよい。
【0064】
また、本発明の併用療法用の医薬組成物は、コリンエステラーゼ阻害剤を含有する薬剤と、選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はミルナシプラン及びデュロキセチン並びにそれらの薬理学的に許容される塩、それらの活性代謝物、それらのプロドラッグ及びそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する医薬組成物として提供される。本発明の併用療法において、併用の成分それぞれを、そのまま同時にその有効量服用するか、又は時間差をつけてその有効量服用すればよい。又は慣用される方法により製剤化した医薬組成物として、併用の成分それぞれを、同時にその有効量服用するか、又は時間差をつけてその有効量服用すればよい。あるいは、本発明の併用療法において、併用の成分それぞれを、そのまま配合して製剤化したものを有効量服用してもよいし、ある程度製剤化してから配合して製剤化したものを有効量服用してもよい。何種類かの同じような薬効又は異なる薬効を持った成分を1つの薬剤の中に配合した医薬品を、配合剤又は合剤と称する。さらに、コリンエステラーゼ阻害剤と選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はミルナシプラン及びデュロキセチン並びにそれらの薬理学的に許容される塩、それらの活性代謝物、それらのプロドラッグ及びそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも1つとを別々の医薬製剤として製剤化し、これらをキットとして提供してもよい。製剤化は、当業者であれば慣用される技術に基づいて行うことができる。
【0065】
1つの実施形態において、本発明のうつ病(例えば、難治性うつ病)治療用の医薬組成物は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤が投与され、そしてコリンエステラーゼ阻害剤が追加投与される治療(プロトコル)に使用される。コリンエステラーゼ阻害剤が患者に投与される前で、選択的セロトニン再取り込み阻害剤が患者に投与される一次治療では、それ以外の抗うつ剤やその他の薬剤が患者に投与されていてもよい。選択的セロトニン再取り込み阻害剤が患者に投与される一次治療では治療効果が不十分で、全く改善が認められない又は改善が認められにくいうつ病が難治性のうつ病と診断又は判断された場合に、コリンエステラーゼ阻害剤が追加投与される二次治療を開始することができる。本実施形態における薬剤の逐次的な投与についての具体的な手順は特に制限されるものではないが、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、初診後の最初の治療薬の投与から(A)1〜4週間、(B)4〜6週間、又は(C)6〜90週間の範囲の時期に少なくとも1回投与され、そしてコリンエステラーゼ阻害剤が選択的セロトニン再取り込み阻害剤の初診後の最初の投与時期から数週間(好ましくは、(a)1〜4週間、(b)4〜6週間、又は(c)6〜90週間)の間隔を置いて少なくとも1回投与されることが好ましい。また、別の実施形態において、本発明の難治性うつ病治療用の医薬組成物が投与され、コリンエステラーゼ阻害剤を一時的に投与中止又は投与量を減量した数日(3、4、又は5日)〜数週間(例えば、1、2、3、4、5、7、10、15又は20週間)経過後にコリンエステラーゼ阻害剤を再投与又は投与量を増量させることもできる。初診とは、患者が初めて医療機関又は診療科で受診する場合、患者が以前に医療機関又は診療科で受診し、病気が治るか若しくは治療を終了し、その後新たに病気になって受診する場合、継続治療を必要とする患者が自分の判断で治療を打ち切り数ヶ月以上受診暦がない場合、又は第二、第三又はそれ以上の医療機関又は診療科で受診する場合を意味する。
【0066】
別の実施形態において、本発明のうつ病又は難治性うつ病治療用の医薬組成物は、ミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤が投与され、そしてコリンエステラーゼ阻害剤が追加投与される治療(プロトコル)に使用される。コリンエステラーゼ阻害剤が患者に投与される前で、ミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤が患者に投与される一次治療では、それ以外の抗うつ剤やその他の薬剤が患者に投与されていてもよい。ミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤がうつ病患者に投与される一次治療では、コリンエステラーゼ阻害剤が追加投与される二次治療を開始することができる。ミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤が投与される一次治療では治療効果が不十分で、全く改善が認められない又は改善が認められにくいうつ病が難治性のうつ病と診断又は判断された場合に、コリンエステラーゼ阻害剤が追加投与される二次治療を開始することができる。本実施形態における薬剤の逐次的な投与についての具体的な手順は特に制限されるものではないが、例えば、ミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤が、初診後の最初の治療薬の投与から(A)1〜4週間、(B)4〜6週間、又は(C)6〜90週間の範囲の時期に少なくとも1回投与され、そしてコリンエステラーゼ阻害剤がミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤の初診後の最初の投与時期から数週間(好ましくは、(a)1〜4週間、(b)4〜6週間、又は(c)6〜90週間)の間隔を置いて少なくとも1回投与されることが好ましい。また、別の実施形態において、本発明のうつ病又は難治性うつ病治療用の医薬組成物が投与され、コリンエステラーゼ阻害剤を一時的に投与中止又は投与量を減量した数日(3、4、又は5日)〜数週間(例えば、1、2、3、4、5、7、10、15又は20週間)経過後にコリンエステラーゼ阻害剤を再投与又は投与量を増量させることもできる。初診とは、患者が初めて医療機関又は診療科で受診する場合、患者が以前に医療機関又は診療科で受診し、病気が治るか若しくは治療を終了し、その後新たに病気になって受診する場合、継続治療を必要とする患者が自分の判断で治療を打ち切り数ヶ月以上受診暦がない場合、又は第二、第三又はそれ以上の医療機関又は診療科で受診する場合を意味する。
【0067】
本発明の併用療法に用いる医薬組成物の投与形態は特に限定されず、経口又は非経口的に投与することができる。併用時又は配合時には、併用又は配合の成分それぞれの投与形態又は投与量が異なっていても良い。また、治療上有効な量については、疾患の程度又は経過、患者の年齢、体重又は性別その他の条件により決定することができ、このような能力は当業者の一般的な技術範囲内に当然含まれるものである。
【0068】
医薬製剤としては、錠剤、コーティング剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤、坐剤、スプレー剤などの一般的に知られている剤型から、必要に応じて、適切な剤型を選択して調剤することができる。中でも好ましくは、経口投与が可能な剤形である。
【0069】
これらの製剤の製剤化に用いる担体には、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば、大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば、流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えば、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えば、グルコース、ショ糖等の糖;例えば、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。
【0070】
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、それぞれ用いられる。上記の成分は、その塩又はその水和物であってもよい。
【0071】
経口製剤は、本発明において使用する有効成分に、賦形剤、さらに必要に応じて、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。錠剤・顆粒剤の場合には、例えば、糖衣、その他必要により適宜コーティングしてもよい。シロップ剤や注射用製剤等の場合は、例えば、pH調整剤、溶解剤、等張化剤等と、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤等とを添加し、常法により製剤化する。
【0072】
ドネペジル(アリセプト(登録商標))に関しては、その範囲は0.01〜0.75mg/kg/日である。
タクリン(コグネックス(登録商標))に関しては、その範囲は0.1〜2.3 mg/kg/日である。
リバスチグミン(エキセロン(商標))に関しては、その範囲は0.1〜0.5mg/kg/日である。
ガランタミン(レミニール(登録商標))に関しては、その範囲は0.05〜1.0mg/kg/日である。
メトリフォネート(プロメム(商標))に関しては、その範囲は0.1〜2.0mg/kg/日である。
ネオスチグミンに関しては、その範囲は0.1〜2.0mg/kg/日である。
フィゾスチグミン(シナプトン(商標))に関しては、その範囲は0.01〜0.4 mg/kg/日である。
【0073】
フルオキセチン(プロザック(登録商標))に関しては、その範囲は0.01〜1.4mg/kg/日、好ましくは、0.15〜0.7mg/kg/日である。
シタロプラム(セレクサ(登録商標))に関しては、その範囲は0.08〜0.8mg/kg/日、好ましくは、0.15〜0.5mg/kg/日である。
フルボキサミン(ルボックス(登録商標))に関しては、その範囲は0.3〜8.5mg/kg/日、好ましくは、0.8〜5.0mg/kg/日である。
パロキセチン(パキシル(登録商標))に関しては、その範囲は0.3〜0.85mg/kg/日、好ましくは、0.3〜0.5mg/kg/日である。
セルトラリン(ゾロフト(登録商標))に関しては、その範囲は0.3〜8.5mg/kg/日、好ましくは0.8〜3.3mg/kg/日である。
ミルナシプラン(トレドミン(商標))に関しては、その範囲は0.15〜3.0mg/kg/日、好ましくは、0.8〜1.7mg/kg/日である。
デュロキセチン(シンバルタ(登録商標))に関しては、その範囲は0.015〜2.7mg/kg/日、好ましくは、0.08〜0.3mg/kg/日である。
【0074】
本発明によればまた、コリンエステラーゼ阻害剤を含有する薬剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、又はミルナシプラン及びデュロキセチンから選択される少なくとも1つを含有する薬剤、並びに併用される両薬剤のうつ病又は難治性うつ病治療への使用に関する指示事項が記載されたラベル、説明書及び/又は添付文書とを含んでなる、医薬品が提供される。
【0075】
この場合、コリンエステラーゼ阻害剤を含有する薬剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ミルナシプラン、又はデュロキセチンは、それぞれ別個の製剤として、好ましくは、それぞれ別個の単位投与剤形として、本発明による医薬品に包含されていてもよい。
【0076】
併用される両薬剤の組み合わせに関する指示事項としては、それぞれの薬剤の1日当たりの投与量、投与回数、投与経路など、用法、用量に関する情報が挙げられる。本発明による医薬品が一方の薬剤のみを含む場合には、併用すべきもう一方の薬剤に関する情報を添付文書に記載することができる。
【実施例】
【0077】
以下に示す実施例は、単なる例示であって、上述する好適な態様と共に本発明を詳細に説明することのみを意図しており、本発明を限定するものではない。また、当業者であれば、本発明の意義から逸脱することなく本発明を改変することが可能であり、そのような改変は、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0078】
[実施例1]
1番目のケースの患者(34歳、女性、主婦、結婚後1年、子供なし)は、不眠と抑うつ、胃疲労感、家事ができなくなった。内科医で眠剤(ハルシオン0.125mg)をもらうも改善せず、抑うつが2ヶ月続いたときに受診して、診断は大うつ病。
1週目 フルボキサミン50mg+マイスリー(登録商標)10mg HAM-D21点
2週目 フルボキサミン100mg+マイスリー(登録商標)10mg
3週目〜6週目 フルボキサミン200mg+マイスリー(登録商標)10mg HAM-D18点
やや改善するも、思考制止が残り、うつは十分に改善しなかった。
7週目からフルボキサミン200mg+アリセプト(登録商標)5mg+マイスリー(登録商標)10mg
10日後から自覚的に改善し、9週目でHAM-D8点に改善した。
9週目からアリセプト(登録商標)10mgにして、11週目でHAM-D4点に改善した。
【0079】
[実施例2]
2番目のケースの患者(44歳、男性、会社員、既婚、子供2人)は、会社が統合再編され、職種が変わってから、3ヵ月後に頭の回転が悪くなり、集中力が低下、不眠、焦燥感、意欲低下が出現した。産業医を受診して休職をすすめられ、当院を紹介になって、抑うつの出現後1ヶ月で受診した。診断は大うつ病。
【0080】
1週目 パキシル10mg+ベンザリン5mg HAM-D22点
2週目〜 パキシル20mg+ベンザリン10mg
4週目が終わったところで、焦燥感・不安感は改善して、HAM-D14点になっていた。
6週目から上記にアリセプト5mgを追加した。
アリセプト投与7日目から自覚的な改善がみられ、8週目にはHAM-D4点に改善して、12週が終わったところで復職。1ヶ月間上記投与。
その後アリセプトを中止すると、2週間後に抑うつが悪化し、再開して5日目から改善しはじめ、2週間後には以前の水準まで改善した。
【0081】
[実施例3]
3番目のケースの患者(36歳、男性、肥満、独身、証券アナリスト)は、海外出張中に抑うつを発症したが、診療は受けていなかった。3ヵ月後、本人の希望で日本に戻ったが、帰国後も抑うつ・不眠・不安・焦燥感が続いていたため、帰国1ヵ月後に受診した。HAM-D19点だった。
【0082】
1週目 プロザック20mg+リボトリール1mg
2週目 同上
不眠は改善され、抑うつ感もやや改善されてHAM-D12点
4週後 2週目の終わりと変化は無かった。
4週後よりアリセプト5mgを追加し、12日目から自覚的にうつが改善し、6週後、HAM-D3点にまで回復した。
8週後 変化なし
10週後にアリセプト5mgから3mgにしたところ自覚的に抑うつが悪化し、5mgに戻したところ改善した。
12週目 アリセプト10mgに増加した。
14週目 変化が無いため5mgに戻した。
【0083】
[実施例4]
4番目のケースの患者(24歳 女性 大学院生 未婚)は、修士論文に行き詰まったことから、不眠・意欲低下・体重減少・集中力低下・思考制止・抑うつ気分が出現した。症状出現後、2ヵ月半で受診した。
【0084】
初診時、大うつ病の診断基準に適合した。HAM-D24点。
1週目〜4週目 ゾロフト100mg+リボトリール1mg
ある程度抑うつは改善した。HAM-D14点。
しかし研究を再開することはできなかった。
5週目から、上記にアリセプト3mgを2週間投与したところ、やや自覚的な抑うつの改善はしたが、なお研究(実験)を再開することはできなかった。
そこで、7週目からアリセプト5mgにしたところ、1週間で自覚的な抑うつの改善がみられ、9週目に研究に復帰できた。HAM−D6点。
更に、13週目にアリセプトを中止したところ、5日目に抑うつの悪化を認め、14週目からアリセプト5mgを再開したところ、1週間で、もとの水準に戻った。
【0085】
[実施例5]
5番目のケースの患者(25歳 男性(未婚・独身)会社員(プログラマー) 既往歴、特記すべきものなし)は、大学卒業後、会社員になり、職種はプログラミングであった。入社1年半後、仕事の能率が悪くなり、判断力低下、集中力低下、意欲低下、不眠、億劫さ、思考制止が存在した。喜びの喪失、希死念慮が起こってきた。身体的な異常所見はなかった。
初診時、ハミルトンうつ病評価尺度が23点であり、大うつ病(Major Depression)と診断した。当初、ミルナシプラン50mg、エチゾラム1.5mgで治療を開始した。1週間後、不眠はやや改善され、ハミルトンうつ病評価尺度は20点であった。8日目以降、ミルナシプラン100mg、エチゾラム1.5mgに増量し、更に2週間経過した時点(治療開始から3週間経過時点)で、ハミルトンうつ病評価尺度は19点であった。
その後、ミルナシプラン150mgに増量したが、副作用(尿閉の傾向)のため、4週間目にはミルナシプラン100mgに減量した。ハミルトンうつ病評価尺度では思考の遅延が全く改善していなかった。治療開始から4週間経過後、ミルナシプラン100mg、エチゾラム1.5mgにアリセプト5mgを投与した。アリセプト投与開始から1週間後(治療開始から5週間後)には主観的な改善がみられ、アリセプト5mg投与開始から2週間後(治療開始から6週間後)にはハミルトンうつ病評価尺度は7点に減少した。アリセプト投与開始後4週間(治療開始から8週間後)でアリセプト3mgに減量したところ、その1週間後には抑うつが悪化したため、アリセプト5mgに戻し、その後は回復し、就労可能となっている。
【0086】
[実施例6]
6番目のケースの患者(34歳、女性(未婚・独身)、会社員(広告会社、企画)既往歴、特記すべきものなし)は、初診時2ヶ月前から意欲低下、不眠、体重減少が続き受診に至った。ハミルトンうつ病評価尺度は、19点であった。
1週目、ミルナシプラン30mg、エチゾラム0.5mg投与
2週目、ミルナシプラン50mg、エチゾラム0.5mg投与
3〜6週目、ミルナシプラン150mg、エチゾラム0.5mg投与
治療開始後6週目以降、ハミルトンうつ病評価尺度は17点であった。7週目から、アリセプト5mgを追加したところアリセプト投与開始後7日目から精神運動制止が著明に改善し、アリセプト投与開始から2週目でハミルトンうつ病評価尺度は7点に減少した。その1ヶ月後(アリセプト投与開始から6週後)アリセプトを中止したところ1週間後抑うつが悪化したが、アリセプトを再投与する事によって以前の水準(アリセプト投与開始後2週目の水準)まで回復した。
【0087】
[実施例7]
7番目のケースの患者(45歳、男性(既婚)公務員、既往歴、特記すべきものなし)は、初診時3ヶ月前に、職場の異動があり人間関係の悪化があり、仕事の能率が低下し、判断力低下、思考力低下、集中力低下、今まで楽しめていた事が楽しめなくなり、意欲の低下、不眠が出現し、希死念慮も存在した。初診時、ハミルトンうつ病評価尺度は22点でうつ病(大うつ病)と診断した。
1週目、ミルナシプラン50mg、トリオゾラム0.125mg投与
2週目、ミルナシプラン150mg、トリオゾラム0.125mg投与、これを5週間続けた後のハミルトンうつ病評価尺度は、18点であった。6週目よりアリセプト5mgを追加したところ、10日目には自覚的な改善がみられ、14日目(治療開始7週間後)で精神運動制止が著明に改善し(正常に回復)、ハミルトンうつ病評価尺度は6点になった。アリセプト5mg投与開始から2ヵ月後、アリセプトを中止した。その後、1週間で自覚的な抑うつが悪化し、2週間後には他覚的にも抑うつが悪化し、アリセプトを再投与したところ12日目でアリセプト中止前の状態までに回復した。
【0088】
本発明の他の目的、特徴及び視点は、全体の開示において明らかであり、ここに開示され、そして添付にて請求される本発明の要旨及び範囲から逸脱しない種々の変更が可能であることに注意を要する。
また、開示され、請求された要素、事項、及び/又は項目の組み合わせも上記変更の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリンエステラーゼ阻害剤と、
(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、
(ii)ミルナシプラン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、又は
(iii)デュロキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、
と、を投与することを含む、うつ病の治療を必要とする患者におけるうつ病の治療方法。
【請求項2】
前記うつ病が、難治性うつ病である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記難治性うつ病が、(i)、(ii)、又は(iii)による治療に対して抵抗性である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記(i)、(ii)、又は(iii)が、うつ病の初診後におけるそれらの最初の投与から(A)1〜4週間、(B)4〜6週間、又は(C)6〜90週間の範囲の時期に投与され、続いてコリンエステラーゼ阻害剤がうつ病初診後の前記(i)、(ii)、又は(iii)の最初の投与から(a)1〜4週間、(b)4〜6週間、又は(c)6〜90週間に投与されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(i)コリンエステラーゼ阻害剤の投与を数日〜4週間一時的に中止、又は投与量を減量すること、及び(ii)引き続いてコリンエステラーゼ阻害剤を再投与及び/又は投与量を増量させることを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記コリンエステラーゼ阻害剤及び前記(i)、(ii)、又は(iii)が、(1)別々の医薬組成物か、又は(2)前記コリンエステラーゼ阻害剤及び前記(i)、(ii)、又は(iii)の両方を含む単一の医薬組成物、として患者に投与されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記コリンエステラーゼ阻害剤と(i)とを投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コリンエステラーゼ阻害剤と(ii)とを投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記コリンエステラーゼ阻害剤と(iii)とを投与することを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記コリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル又はそのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記コリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル又はその薬剤的に許容される塩である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記コリンエステラーゼ阻害剤が、塩酸ドネペジルである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、(a)フルオキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグであるか;(b)フルボキサミン、その薬剤的に許容される塩、そのZ−型、そのZ−型の薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、又はそのプロドラッグであるか;(c)パロキセチン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(d)セルトラリン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;又は(e)シタロプラム、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグである請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記コリンエステラーゼ阻害剤が、(a)ドネペジル、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(b)リバスチグミン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(c)ガランタミン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(d)タクリン、その薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(e)メトリフォネート、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;(f)ネオスチグミン、その薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、又はそのプロドラッグ;又は(g)フィゾスチグミン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、又はそのプロドラッグである請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、フルオキセチン又はその薬剤的に許容可能な塩である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、塩酸フルオキセチンである請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、フルボキサミン又はその薬剤的に許容可能な塩である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、マレイン酸フルボキサミンである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、パロキセチン又はその薬剤的に許容可能な塩である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、塩酸パロキセチンである請求項1に記載の方法。
【請求項21】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、セルトラリン又はその薬剤的に許容される塩である請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、塩酸セルトラリンである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記(ii)が、ミルナシプラン又はその薬剤的に許容される塩である請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ミルナシプラン又はその薬剤的に許容される塩が、塩酸ミルナシプランである請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記(iii)が、デュロキセチン又はその薬剤的に許容される塩である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記デュロキセチン又はその薬剤的に許容される塩が、塩酸デュロキセチンである請求項23記載の方法。
【請求項27】
コリンエステラーゼ阻害剤と、
(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、
(ii)ミルナシプラン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、又は
(iii)デュロキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、
と、を含むことを特徴とするうつ病の治療用医薬組成物。
【請求項28】
コリンエステラーゼ阻害剤と、
(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、
(ii)ミルナシプラン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、又は
(iii)デュロキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ、
と、を含むことを特徴とするうつ病の治療用医薬の組み合わせ。
【請求項29】
コリンエステラーゼ阻害剤を含む第一の組成物と、(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、(ii)ミルナシプラン、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩のジアステレオマー、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグ;又は(iii)デュロキセチン、そのエナンチオマー、その薬剤的に許容される塩、その薬剤的に許容される塩のエナンチオマー、その活性代謝物、若しくはそのプロドラッグを含む第二の組成物と、を含むことを特徴とするうつ病の治療用キット。
【請求項30】
コリンエステラーゼ阻害剤とうつ病治療用の第二の組成物の使用に関する指示事項が記載されたラベル、説明書、添付文書又はそれらの2以上を含む請求項29記載のキット。
【請求項31】
ドネペジル又はその薬剤的に許容される塩と、(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、(ii)ミルナシプラン又はその薬剤的に許容される塩、又は(iii)デュロキセチン又はその薬剤的に許容される塩と、
を、投与することを含む、うつ病の治療を必要とする患者におけるうつ病の治療方法。
【請求項32】
前記うつ病が、難治性うつ病である請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ドネペジル又はその薬剤的に許容される塩及び前記(i)、(ii)、又は(iii)が、患者に別々に投与されるか、又は単一の医薬組成物の形態で患者に投与されることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害剤が、(a)フルオキセチン、又はその薬剤的に許容される塩;(b)フルボキサミン、又はその薬剤的に許容される塩;(c)パロキセチン又はその薬剤的に許容される塩;(d)セルトラリン又はその薬剤的に許容される塩;(e)シタロプラム、又はその薬剤的に許容される塩、そのエナンチオマー、又はその薬剤的に許容される塩のエナンチオマーである請求項31記載の方法。
【請求項35】
ドネペジル又はその薬剤的に許容される塩と、(i)選択的セロトニン再取り込み阻害剤、(ii)ミルナシプラン又はその薬剤的に許容される塩、又は(iii)デュロキセチン又はその薬剤的に許容される塩と、
を含むうつ病の治療用医薬組成物。

【公表番号】特表2009−508849(P2009−508849A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530798(P2008−530798)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/JP2006/319393
【国際公開番号】WO2007/034990
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】