説明

抗ウィッキング用途のためのコアシェル粒子でコーティングされた糸または布の使用

本発明は、10〜300nmの平均粒径、および平均値の少なくとも10%の標準偏差σを有するコアシェル粒子の使用に関し、このコアシェル粒子のシェルは、糸または布をコーティングして前記糸または布におけるウィッキングを抑制または防止するための、120℃から220℃のガラス転移温度Tgを有する、ビニル芳香族モノマーとマレイミドモノマーとの共重合体を含む。本発明はさらに、船の帆などのアラミド布に関し、その糸には、炭素数6〜20の飽和または不飽和脂肪酸でエステル化されたグリセロールから得られるジグリセリドまたはトリグリセリドを含む仕上剤が付与され、次いでコアシェル粒子が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸または布をコーティングして当該糸または布における水のウィッキング(吸い上げ)を抑制または防止するためのコアシェル粒子の使用に関する。本発明はさらに、仕上剤およびこのようなコアシェル粒子コーティングが付与された糸または布に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性の糸および布は公知である。例えば、米国特許第7,132,131号明細書、米国特許第5,116,682号明細書、および米国特許第4,868,042号明細書においては、撥水性のアラミドおよびポリエステルの糸および布が開示されている。これらの特許出願には、アラミド糸に撥水剤を塗布することにより、疎水仕上加工されたアラミドの糸または布を製造する方法が記載されている。ここで、使用される撥水剤はフッ素ポリマーを含むものであり、とりわけ、米国特許第7,132,131号明細書に詳細に記載されているような、Ciba社製のOleophobol SM(登録商標)またはSL(登録商標)などのフルオロアクリレートポリマーの混合物である。
【0003】
しかしながら、数年来、フッ素ポリマーは、その製造方法が環境上の理由から望ましくないと考えられている。特に、フッ素ポリマーの一部は、今後その製造が禁止される可能性があるため、フッ素ポリマーの代替物を見出すことが重要となっている。
【0004】
このようなフッ素ポリマーの代替物は、例えば、米国特許出願公開第2009/253828号明細書に記載されており、また、D.Stanssensによる「水分散体の有機ナノ粒子を適用することによる表面修飾」と題された概説中にても紹介されており、これは、Topchimのウェブサイト(www.topchim.be/_img/nanomaterials09.pdf)上でしばらくの間見ることができたが、現在は検索することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、このようなナノ粒子を用いて処理された糸および布は、一般的な撥水性または疎水性とは別に、水に対して強力な抗ウィッキング特性を示すことを見出した。したがって、ナノ粒子を用いて処理された糸または布は、ウィッキングが問題になり得る製品に非常に適したものとなり、例えば、対弾道布、船の帆、サンスクリーンまたは雨覆い、カブリオレの屋根、および防水シートを作るために使用される糸または布などに好適に用いることができる。そして、これらの抗ウィッキング特性は、既知の撥水性または疎水性とは無関係である。したがって、撥水性のフッ素ポリマーでコーティングされた糸または布は、強力な抗ウィッキング特性を示さない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、10〜300nmの平均粒径、および平均値の少なくとも10%の標準偏差σを有するコアシェル粒子の使用に関し、糸または布をコーティングして前記糸または布におけるウィッキングを抑制または防止するために、このコアシェル粒子のシェルを、120℃と220℃との間のガラス転移温度Tgを有する、ビニル芳香族モノマーとマレイミドモノマーとの共重合体を含むものとする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
基本的なアラミド糸(例えば、Twaron(登録商標)1000)は極めて高い親水性の挙動を示し、水は数秒以内に吸収される。また、ポリ(スチレン−コ−マレイミド)(SMI)をベースとした仕上剤は、紙の疎水性能を向上することが知られている。本発明においては、SMIはそれ自体として適用されないが、コア中に疎水性成分を有するコアシェルナノ粒子の形態で適用される。不規則な表面を形成するために極めて小さな粒子で覆われた材料は、液体と表面との間の接触面を減少させる。このとき、疎水性化合物(例えば、コアワックスナノ粒子)が存在していれば、ほんのわずかな傾斜角(10〜20°)ですら水が転がり落ちる超疎水性表面が得られることが見出された。
【0008】
本発明に用いる疎水性コアシェル粒子は、水などの液体と極めて大きな接触角(>90°)を有する。接触角とは、液体(例えば、水)の界面が、粒子の固体表面となす角度である。加えて、本発明に用いる疎水性コアシェル粒子は、繊維上に仕上剤として存在する場合、顕著な非ウィッキング性を示す。実際、水の鉛直方向の変位(ウィッキング)は、糸束を介して、6時間の間に観察することができなかった。これは、強力な毛細管作用を有するアラミド繊維においては極めて喜ばしいことであり、最大1/2”(13mm)のウィッキングが2時間以内に観察された、米国特許第7,132,131号明細書におけるアラミド繊維および米国特許第5,116,682号明細書におけるポリエステル繊維にフッ素ポリマー処理を施した場合に観察された非ウィッキング性能を、明らかに凌駕するものである。
【0009】
本発明においては、SMIナノ粒子は、糸または布におけるウィッキングを抑制または防止するために使用することができる。さらに、本発明においては、SMIとは、具体的にポリ(スチレン−コ−マレイミド)を意味するだけでなく、より一般的に、ビニル芳香族モノマーとマレイミドモノマーとの共重合体を意味する。
【0010】
ここで、ポリ(スチレン−コ−マレイミド)は公知のポリマーである。米国特許第6,407,197号明細書および欧州特許第1405865号明細書においては、ビニル芳香族モノマー単位および無水マレイン酸モノマー単位を含有する出発ポリマーのイミド化によって得られる、ビニル芳香族モノマー単位およびマレイミドモノマー単位を有するポリマーの水分散体が記載されている。
【0011】
一般に、ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(SMA)は、イミド化によりポリ(スチレン−コ−マレイミド)(SMI)を得るために好適な出発ポリマーである。SMAは、例えばアンモニアを用いてSMIに変換することができる。SMA、より一般にはビニル芳香族モノマーと無水マレイン酸モノマーとの共重合体のイミド化は、公知のプロセスであり、また、紙および板紙に対する適用が、米国特許第6,407,197号明細書、米国特許第6,830,657号明細書、国際公開第2004/031249号パンフレットおよび米国特許出願公開第2009/0253828号明細書など様々な特許出願に記載されている。国際公開第2007/014635号パンフレットにおいては、表面にSMIを有する顔料粒子が、紙用のコーティング組成物として記載されている。好適なSMIポリマーは、120℃から220℃の間、より好ましくは150℃から210℃の間のガラス転移温度Tgを有する。
【0012】
SMIシェルを有するコアシェル粒子は公知であり、NanoTope(登録商標)26P030として市販されている。これは、コアとして70部のパーム油、シェルとして30部のSMIを有するSMIコアシェル粒子である。別の市販製品としては、NanoTope(登録商標)26WA30があり、これはSMIコアシェル粒子からなり、70部のパラフィンワックスがコアを作り、30部のSMIがシェルを作る。SMI層は非常に薄く(ナノメートル範囲)、パーム油の脂肪酸基部分がSMI外層を透過することができるため、結果として、それらの基が粒子の疎水性に寄与する。コアは疎水性であり、原理的には任意の油、パラフィンもしくはワックス、またはその混合物である。パラフィンとしては、アルカン、ポリオレフィンおよびテルペンが挙げられる。油としては、植物油、ワセリン油、シリコーン油およびパラフィンワックスが挙げられる。
【0013】
本発明による好適なコアシェル粒子は疎水性であり、さらにナノ的側面(すなわち、様々な粒径)が加わることにより、これらSMIをベースとして仕上加工した糸および布は、超疎水性を発現する。コアがパーム油またはヒマシ油などの物質からなる場合には、これらの油が再生可能でかつ生分解性であることにより、得られる粒子は、環境上の理由でさらに有利となる。
【0014】
本発明に用いられるコアシェル粒子の平均粒径は、10〜300nm、好ましくは20〜200nm、より好ましくは25〜100nmである。本発明においては、狭い粒径分布は有利とはならない。様々な粒径を有する粒子の混合物であることが、疎水性に顕著に寄与する。粒子が様々な粒径を有する場合には、水分子が粒子に付着するのがより困難となり、その結果、疎水性の増加がもたらされる。この理由により、本発明においては、平均値の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の標準偏差σの変動幅を持つ粒子を使うことが有利である。したがって、最良の疎水性を得るためには、混合物中に、全粒子の平均直径よりも大きな直径を有する粒子と同様に、小さな直径を有する粒子もまた存在していることが好ましい。
【0015】
これによってもたらされる効果は顕著であり、疎水性について、従来最良の化合物と考えられているOleophobol SM(登録商標)またはSL(登録商標)などのCiba社製フッ素ポリマーよりも、良好な疎水性をもたらす。90°よりも大きな接触角として測定できるこの効果は、超疎水性と呼ばれる。接触角は可能な限り高い方が好ましく、本発明によれば、100°より良好な、115°より良好な、さらには135°より良好な接触角を得ることができる。粒径分布の分散が大きいことは、大きな接触角を得る助けとなる。
【0016】
本発明に用いられるコアシェル粒子の形状としては、原理的には任意の形状をとり得るが、球状、楕円状、または棒状の形態であることが、水分子との接触面が最小となるため好ましい。
【0017】
上記の効果は、これらのナノ粒子で処理された糸または布の撥水性に影響を及ぼす。前述したように、これらのナノ粒子で処理された糸または布が撥水性を有することは、公知である。本発明においては、これらの撥水性とは別に、これらの糸または布がさらに、興味ある抗ウィッキング特性を示すことが見出された。
【0018】
ウィッキングとは、細いチューブなどの狭い空間において、または多孔性物質において、液体が自発的に上昇する現象である。この現象により、液体は重力に抗して流れることができるようになる。この効果は、液体と周囲の固体表面との間における分子間引力によって生じる。すなわち、チューブの直径が十分に小さい場合には、表面張力と、液体と容器との間の接着力との組み合わせが、液体を上昇させるように作用する。そしてこの効果は、雨に接するなど、水に接する糸または布においては防止されるべきである。水のウィッキングは、とりわけ、船の帆において防止されるべきであるが、サンスクリーンまたは雨覆い、カブリオレの屋根、防水シート、耐弾丸ベストを含めたソフトおよびハードな弾道材料などにおいても、防止されるべきである。
【0019】
本発明に用いられるコアシェル粒子は、いったん乾燥すると、相互によく凝集する。また、糸または布への付着も良好である。凝集をさらに向上するために、SBRラテックスおよびポリアクリレート、または結合剤の組み合わせなど、結合剤または塗膜形成剤を添加することができる。帯電防止剤、染料および着色剤などの他の添加物も、最終的なコアシェル粒子分散体に添加することができる。帯電防止剤は、巻き取りおよび製織の糸加工において特に重要なものであり、典型的には、糸を基準として0.1〜0.5重量%添加することで効果を発現する。疎水性を増強するために、ワックスなどの非被包性の(「遊離の」)疎水性添加物を、コアシェル粒子分散体に小量添加することができる。
【0020】
水不溶性成分をイミド化の前に添加することができ、その後のイミド化の間に、コアシェル粒子に組み込ませることができる。活性成分は、コア物質と親和性があることが好ましい。活性成分の例としては、染料、着色剤、および紫外線吸収剤が挙げられる。
【0021】
コアシェルナノ粒子による処理に使用できる布としては、織布であっても不織布であってもよい。不織布としては、2枚の薄葉(例えばポリエステル薄葉)の間に位置する粘着層に含有される糸を含み、これらは、高性能な船の帆に一般に使用される。他の構造物としては、たて糸とよこ糸との織りを有する帆布などの織布を挙げることができる。例えば、糸をお互いに交錯させ、たて糸はよこ糸よりも応力に耐えることができる糸とする。あるいは、長さ方向に交互に糸の収束と開繊を繰り返し、一方の糸のグループをもう一方の糸のグループとは反対方向に、収束と開繊を交互に行うようにする。
【0022】
疎水性コアシェル粒子コーティングが付与された連続的な糸または布は、耐弾丸ベスト、ハード弾道パネル、UDおよびヘルメットのような、ソフトおよびハードな弾道材料など、抗ウィッキング特性を必要とする用途に使用することができる。また、コアシェル粒子によって処理された連続的な糸または布は、船の帆、防水シート、サンスクリーン、雨覆い、およびカブリオレの屋根のように、帆様材料において好ましく使用することができる。別の用途としてはリップコードを挙げることができ、特に光ファイバーまたは電源ケーブル用のリップコードを挙げることができる。
【0023】
コアシェル粒子によって処理された糸または布は、水ウィッキング特性を示さず、したがって、ある期間にわたって水輸送(ウィッキング)をなんとしても防止しなければならない接地ケーブルなど、繊維製品に可能な限り速乾性が必要とされる、湿潤環境における使用に極めて適している。したがって、コアシェル粒子によって処理された糸または布はさらに、海洋用途のオイルパイプ、ゴムホース、および光通信ケーブルなど、パイプ、ホース、およびケーブルの強化材として使用することができる。
【0024】
これらの糸は、製織技術を使用して糸から布を作る一般的な方法によって、布にすることができる。あるいは、連続的な糸にコアシェル粒子を用いて処理するのではなく、未処理の通常の糸を布に織り、次いでその布を粒子で処理してもよい。処理できる糸および布としては、好ましくはアラミドの糸および布、最も好ましくはTwaron(登録商標)などのパラアラミドであるが、ナイロン、ポリエステル、ガラス、炭素、またはポリオレフィンで作られた他の糸および布も使用することができる。
【0025】
糸または布は、標準的装置で処理することができる。糸は、公知の方法により、浴の中に誘導され、またはキスロールもしくはスリット塗布装置により、コアシェル粒子の分散液と接触させる。典型的な糸速は、10〜700m/分であり、より好ましくは25〜500m/分である。糸または布は、コアシェル粒子の分散液を含む浴(または他の一般に用いられている任意の処理技術)によって処理することができる。
【0026】
糸または布に対するコアシェル粒子の典型的な量は、糸または布の重量を基準として、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。コアシェル粒子の塗布の後に、糸または布を、典型的には120℃から200℃の温度で、典型的には糸に対しては9秒から15秒間、布に対しては0.5分から10分の滞留時間で、好ましくはオーブンの中で加熱することにより乾燥させる。
【0027】
特に好ましい実施形態としては、布を作るために使用する糸は、まず、炭素数6〜20の飽和または不飽和脂肪酸でエステル化されたグリセロールから得られるジグリセリドまたはトリグリセリドを含む仕上剤、より好ましくは、C6〜C18の飽和および不飽和脂肪酸の混合物であるやし油のジグリセリドまたはトリグリセリドを含む仕上剤によって処理される。次いで、得られた仕上剤加工品は、コアシェルナノ粒子を用いてコーティングされる。このようにして得られる糸または布は新規であり、一層改善された抗ウィッキング特性を有する。
【実施例】
【0028】
本発明を、以下の限定されない実施例によってさらに説明する。
【0029】
一般的手法
糸に対する動的接触角アナライザー(疎水性)
接触角は、静置液滴法によって、糸または布に対して直接測定する。糸を測定する場合には、外径52mmの小さなボビンに、少なくとも100mを巻き付ける。糸または布の上に置かれた水滴の輪郭を捕捉するための光学サブシステムを備えた、FTA188動的接触角アナライザー(First Ten Ångstrom)によって接触角を測定する。液体/固体界面と液体/蒸気界面とがなす角度が接触角であり、ピクセル当たり11075ナノメートル(水平視野は約8mm)の工場較正がなされた、GW−902H(GenWac)ビデオ装置およびテレセントリックレンズを使用して測定する。接触角を捕捉し分析するために、FTA32ソフトウェアを使用した。このとき、無機微量成分分析用の水(分析用純度)(Fluka)を、着滴として使用する。接触角は、20秒以内に少なくとも50回測定する。ヤングの式は次の平衡状態を表す。YSV―YLS=YLVcosθ、ここで、V=蒸気、L=液体、S=固体、Y=表面張力、およびθ=平衡接触角。
【0030】
水ウィッキング試験方法
コーティングされたストランドの水ウィッキングは、情報通信ケーブル産業で広く知られている、BellCore水ウィッキング試験TR−NWT−00492番(AT&Tの試験方法)によって測定することができる(米国特許第6,051,315号明細書を参照)。この方法をわずかに修正し、糸束(情報通信ケーブルの代わりに)に対して適用可能にした。仕上加工された糸束の水ウィッキングは、下記の方法によって測定することができる。本明細書では、この方法を「水ウィッキング試験方法」と呼ぶことにする。
染料指示薬を含む水溶液約1リットルを、Fisher Scientificが市販する通常の2000mLビーカーなどの適当なガラス製容器に入れる。ビーカーの内径は、約120〜130mmであるべきであり、ビーカー中の染料溶液の最終的な高さは76mm(3インチ)とする。染料は、Solophenyl(登録商標)Red3BC(Huntsmanより入手)の0.1重量%水溶液とすることが好ましい。
【0031】
移動可能な横棒に結び付けた、仕上加工された糸束の3つの試料を、十分な張力を加えるために1束当たり約25g重量の鉛おもりを付けて溶液の中に沈め、糸束約25mm(1インチ)を溶液表面の下に、約435mm(17インチ)を溶液表面の上に位置させる。糸束間の最小距離は少なくとも13mm(0.5インチ)とする。標準実験室用濾紙(Schleicher & Schuell GmbH社製の589ホワイトリボン、無灰)を、はさみで正方形にカットし、溶液の25mm(1インチ)上に置き、クリップを用いて糸束の上に注意深く載せる。ウィッキング試験は、室温(約25℃)で6時間行うべきである。このような試験条件下で、染料溶液がウィッキングせず、6時間以内に濾紙の下端を濡らさない場合には、糸束は「非ウィッキング」と見なされる。非ウィッキング糸の場合には、サンプル試料との違い識別するために、上方への輸送距離についてもmm単位で測定する。
【0032】
<実施例1>
パラフィンワックスフィリングを有する、ポリ(スチレン−コ−マレイミド)のコアシェル粒子の50重量%水分散体であるNanoTope(登録商標)26WA30を、ベルギーのTopchim N.V.より入手した。この分散体を純水で8重量%に希釈し、Rauschert社製のセラミック製スリット塗布装置により塗布した。スピン仕上剤AT81(の処理)を施してしていないTwaron(登録商標)2200糸1610f1000(1610dtex/1000フィラメント)に、2.4重量%(糸を基準として)となるNanoTope(登録商標)26WA30を用いて、糸速75m/分で、複数の温度(Toven)およびオーブン滞留時間にて仕上加工を実施した(表1を参照)。
【0033】
糸温度(Tyarn)はすべて、熱風オーブンの糸出口から約8cm後ろの位置で、IR/レーザー温度銃を用いて手動で測定した(表1を参照)。水の最終的な接触角は、FTA188動的接触角アナライザーを用いて、20秒間測定した。結果を表1に示す。
広範囲の乾燥温度に対して125〜130°という安定した接触角が測定され、これは、安定しかつ極めて高い疎水性が示されたこととなる。この結果はまた、最終的な接触角が試験範囲内の乾燥温度および滞留時間の変動に影響されないことを証明しており、このことは大規模製造にとって有利となる。
【0034】
【表1】

【0035】
水ウィッキング試験は、サンプル4で用いた仕上加工された糸の3サンプルについて実施した。その結果、6時間後の染料溶液の鉛直上方への変位は零であり、100%の非ウィッキング性が証明された。このことは、米国特許第7,132,131号明細書に記載された、フッ素ポリマー(Oleophobol(登録商標))処理のTwaron2000(930dtexf1000)糸については観察されなかった(これらの糸は、比較標準となるTwaron(登録商標)1000 1680f1000に匹敵する、1分以内に25mmの輸送を示すため、非ウィッキングとは見なされない)。
【0036】
<実施例2>
パーム油フィリングを有する、ポリ(スチレン−コ−マレイミド)のコアシェル粒子の66重量%水分散体であるNanoTope(登録商標)26P030を、ベルギーのTopchim N.V.より入手した。この分散体を純水で5重量%に希釈し、Rauschert社製のセラミック製スリット塗布装置により塗布した。スピン仕上剤AT81(の処理)を施していないTwaron(登録商標)2200 1610f1000糸(1610dtex/1000フィラメント)に、2重量%(糸を基準として)となるNanoTope(登録商標)26PO30を用いて、糸速75m/分で、180℃およびオーブン滞留時間10秒にて仕上加工を実施した。
水の最終的な接触角は、FTA188動的接触角アナライザーを用いて20秒間測定した。その結果、120°の安定した接触角が測定され、安定しかつ極めて高い疎水性が示された。
【0037】
水ウィッキング試験は、仕上加工された糸の3つのサンプルについて実施した。その結果、6時間後の染料溶液の鉛直上方への変位は5mmとなり、非ウィッキング性が証明された。このことは、米国特許第7,132,131号明細書に記載された、フッ素ポリマー(Oleophobol(登録商標))処理のTwaron2000(930dtexf1000)糸については観察されなかった(これらの糸は、比較標準となるTwaron(登録商標)1000に匹敵する、1分以内に25mmの輸送を示すため、非ウィッキングとは見なされない)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜300nmの平均粒径、および平均値の少なくとも10%の標準偏差σを有するコアシェル粒子の使用であって、
前記コアシェル粒子のシェルは、糸または布をコーティングして前記糸または布におけるウィッキングを抑制または防止するための、120℃から220℃のガラス転移温度Tgを有する、ビニル芳香族モノマーとマレイミドモノマーとの共重合体を含む、コアシェル粒子の使用。
【請求項2】
前記コアシェル粒子の平均粒径は、20〜200nm、好ましくは25〜100nmである、請求項1に記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項3】
前記標準偏差σは、平均値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である、請求項1または2に記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項4】
前記コアシェル粒子は、球状、楕円状、または棒状の形態である、請求項1〜3いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項5】
前記コアシェル粒子のコアは、ワックス、パラフィン、または油を含む疎水性物質である、請求項1〜4いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項6】
前記コアシェル粒子のシェルは、ポリ(スチレン−コ−マレイミド)である請求項1〜5いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項7】
前記糸または布は、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ガラス、炭素、またはポリオレフィンである、請求項1〜6いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項8】
前記布は、織布または不織布である、請求項1〜7いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項9】
前記糸または布は、仕上剤が付与されており、前記コアシェル粒子がその上にコーティングされる、請求項1〜8いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項10】
前記仕上剤は、炭素数6〜20の飽和または不飽和脂肪酸でエステル化されたグリセロールから得られるジグリセリドまたはトリグリセリドを含む請求項9に記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項11】
前記糸または布は、船の帆、サンスクリーンもしくは雨覆い、カブリオレの屋根、弾道材料、特に光ファイバーもしくは電源ケーブルのためのリップコード、または防水シートに含まれる材料である、請求項1〜10いずれか記載のコアシェル粒子の使用。
【請求項12】
炭素数6〜20の飽和または不飽和脂肪酸でエステル化されたグリセロールから得られるジグリセリドまたはトリグリセリドを含む仕上剤が付与されたアラミド糸を含む糸または布であって、
前記仕上加工された糸および布は、10〜300nmの平均粒径、および平均値の少なくとも10%の標準偏差σを有するコアシェル粒子が付与され、
前記コアシェル粒子のシェルは、120℃から220℃のガラス転移温度Tgを有する、ビニル芳香族モノマーとマレイミドモノマーとの共重合体を含む、糸または布。

【公表番号】特表2013−513734(P2013−513734A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542485(P2012−542485)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068928
【国際公開番号】WO2011/069941
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】