説明

抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤及び担体への固定化方法

【課題】白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウムナノコロイド溶液との混合液を主成分とする抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤及び担体に有機ゲルマニウムナノコロイド溶液を吸着固定後、白金ナノコロイド溶液で処理する抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤の担体への吸着固定方法の提供。担体は不織布、ガラス、ステンレス又は種々ポリマーである。
【解決手段】白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液の固定化及びこれらの不活活性を強める。この抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤を固定化した担体は、感染前の空気中や水中に浮遊するウイルス粒子、毒性タンパク質、アレルゲン、ガスなどからヒトやその他の生物を守ることができる。この場合、白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液とを同時に混合して用いることもできるが、担体に有機ゲルマニウム溶液を吸着固定後、白金ナノコロイド溶液で処理すれば、さらに相乗効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス(「ガス不活性化、消臭」以下同じ)剤及び担体への固定化方法に関し、例えば、マスク用不職布を担体として固定化し、この不職布と接触するウイルス、アレルゲン、ガスを破壊させる際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、病原菌を殺すためには、抗生物質等の化学薬剤や、紫外線等の物理的処理法が利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008―168212公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、宿主生物細胞内の基本的生命活動に依存するウイルスの場合、一旦感染したウイルスを特異的に抑える薬剤や物理的方法の開発は、殆ど不可能に近いと言える。そこで、感染前の空気中や水中に浮遊するウイルスを捕捉して破壊する予防策が重要となる。 発明者は、かかる目的を達成できる物質を探索するために、特定の細菌グループに感染して、これを殺して細胞を溶かしてしまう細菌ウイルスをモデル系として、鋭意研究の結果、白金ナノ超微粒子がウイルスと直接接触することによってこの作用を持つこと、さらに、これを不職布等の担体に固定化することによって、人への毒性を完全に回避できることを発見し、さらに、これらの白金ナノ超微粒子を担体に固定化する際、有機ゲルマニウムと混合することによって固定化率を飛躍的に高めることができること、及び、この混合によって抗ウイルス、抗アレルゲン、ガス不活性化作用をさらに高めることができることを発見し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤は白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液との混合液を主成分とするものである。
また、この発明に係る抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤の担体への吸着固定方法は、担体に有機ゲルマニウム溶液を吸着固定後、白金ナノコロイド溶液で処理するものである。この場合、前記担体としては、不職布、ガラス、ステンレス又は種々ポリマー等が適している。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係る抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤は上記のように構成されているため、即ち、白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液との混合液を主成分とするものであるため、両者の固定化及びこれらの不活活性を強めるものである。
【0007】
よって、この抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤を固定化した担体を使用すれば、感染前の空気中や水中に浮遊するウイルス粒子、毒性タンパク質、アレルゲン、ガスなどからヒトやその他の生物を守ることができるものである。
【0008】
この場合、白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液とを同時に混合して用いることもできるが、担体に有機ゲルマニウム溶液を吸着固定後、白金ナノコロイド溶液で処理すれば、さらに相乗効果を高めることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明における「抗ウイルス」は、ウイルスを構成しているDNA及びRNAのどちらか一方の核酸とこれを保護するタンパク質の両方を分解して、ウイルスの増殖を抑制することを意味する他に、ウイルスを完全に消滅させることを含むものである。
【0010】
この発明における「担体」は、不職布、ガラス、ステンレス、種々ポリマー(ポリプロピレン等)が該当する。
【0011】
この発明に使用される白金ナノコロイド溶液は、平均20nm以下のナノ粒子を含む液であり、白金イオンを還元することによって調製する。具体的には、この場合、例えば、塩化白金酸)と還元剤(アスコルビン酸など)を水中で反応させて調製する。この場合、白金イオンの濃度は5mM/Lとすることが望ましく、還元剤の濃度は白金イオンの濃度の2〜20倍とすることが望ましい。また、水中で、白金イオンを安定に存在させるために、クエン酸などのヒドロキシルカルボン酸を安定化剤として添加することが望ましい。これらの処理液に、最終的には、トリスーHCl緩衝液を加えて、pHを弱酸性に調整する。

【0012】
この白金ナノコロイド溶液は、白金の触媒作用によって、接触したウイルス粒子の構成成分であるタンパク質及び核酸を切断・分解する。

【0013】
この発明に使用される有機ゲルマニウム溶液は、市販の有機ゲルマニウム粒子を純水に加えて撹拌することにより調整される。

【0014】
この有機ゲルマニウムは、アメ状のゲル状物質として担体に結合するが、白金ナノ粒子は、このゲル状物質に埋没した形で固定化される。この時、電子顕微鏡での観察では、白金単独で処理した場合に比べ、数百倍以上の効率で白金ナノ粒子が結合することが確認されている。
【実施例】
【0015】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。

【0016】
図1は評価(1)における細菌ウイルスの溶菌活性状態を示した写真、 図2は評価(2)における同写真を示したものである。
【0017】
白金ナノコロイド溶液の調製
蒸留水中5mMのHPtClのコロイド粒子溶液を50ml、これに5mMクエン酸溶液50mlを混合後、8時間静置する。その後、100mMクエン酸溶液を2.5ml混合して、1週間静置後、白金ナノコロイド液として用いた。
【0018】
有機ゲルマニウム溶液の調整
通常、5gの有機ゲルマニウムナノ粒子を約1リッターの蒸留水に加え、撹拌し溶解させて、0.5%ゲルマニウム原液を調整し、適宜、希釈して用いた。
【0019】
白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液との混合液(以下、「白金ナノコロイド混合液」と記す)の調整
白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウム溶液とを1:1で混合した後、25mMトリスーHCl(pH8.0)等の緩衝液をこの混合液の1/2量程加え、pH4.0付近の弱酸性に調整した。
【0020】
抗ウイルス活性の評価
評価(1)
特定の細菌(ワサビ軟腐病菌(Pectobacterium carotovorumグループ)を宿主として、これに特異的に感染し、溶菌させるファージEr2,大腸菌に特異的に感染するλファージの2種類を用いた。ここでは、後者を用いた結果のみ載せているが、前者のファージを用いた場合も、全く同様な結果を得ている。
不織布を、白金ナノコロイド混合液の5倍希釈液に1時間浸漬し、乾燥後、1mlあたり10億個の細菌ウイルス(λファージ)を含む液を100μlをスポットし、SMバッファー100μl加えて、再懸濁し、この10μlを大腸菌を上層に含む重層培地(軟寒天上層培地)に置床した。37℃で培養すると、白金ナノコロイド混合液で処理しなかったコントロール(図1、左側)では溶菌反応が見られたが、処理した区(図1、右側)では、溶菌反応が全く見られなかった。即ち、白金ナノコロイド混合液によって細菌ウイルスが不活性化されたことが分かった。
【0021】
評価(2)
不織布を、0.1パーセント有機ゲルマニウム液に1時間浸漬し、乾燥後、何も加えない(Geのみ)、Agナノ液10倍希釈液で浸漬した(Ge+Ag)、Pt液10倍希釈液で浸漬した(Ge+Pt)後、再度、乾燥後、1mlあたり10億個の細菌ウイルス(λファージ)を含む液を50μlをスポットし、SMバッファー100μlを加えて、再懸濁し、この10μlを大腸菌を上層に含む重層プレート上(軟寒天上層プレート)に滴下した。無処理(図1、左端)、Geのみの区(図1、左から2番目)では溶菌反応が見られたが、Agで処理した区(図2、右側から2番目)、Ptで処理した区(図1、右端)では、溶菌反応が全く見られなかった。Ag,Pt液追加処理によって細菌ウイルスが不活性化されたことが分かった。
【0022】
このように、白金ナノ粒子は、有機ゲルマニウムとの混合処理によって、様々な担体により多く吸着する性質があった(図3のシリカへの結合の電子顕微鏡写真を参照)。例えば、マスク用布職布を担体として固定化すると、固定化された白金との接触によってウイルスや、毒性タンパク質、アレルゲン、ガス等が破壊されること、しかも、担体を洗浄後も、この破壊能力は保持されていることが明確になった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明に係る抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤は、有機ゲルマニウムの作用によって白金の担体への固定化が飛躍的に高められ、これらのウイルスや分子の有効な不活性化が可能になった。ウイルスばかりでなく、ヒトに毒性をもつ物質も強力に分解できること、また、これらの作用は、ヒトを始めとした生物の体内に入ると、毒性を示すことが考えられるが、種々担体への安定した固定化によって、この強力な不活性化作用を安全に利用することが出来る。よって、医療産業上、その利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】

【図1】図1は評価(1)における溶菌活性状態を示した写真を示したものである。
【図2】図2は評価(2)における同写真を示したものである。
【図3】図3は白金ナノ粒子がアメ状になった有機ゲルマニウムとともに、シリカファイバーに絡み付くように付着している状態の電子顕微鏡写真を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金ナノコロイド溶液と有機ゲルマニウムナノコロイド溶液との混合液を主成分とすることを特徴とする抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤。
【請求項2】
担体に有機ゲルマニウムナノコロイド溶液を吸着固定後、白金ナノコロイド溶液で処理することを特徴とする抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤の担体への吸着固定方法。
【請求項3】
請求項2の抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤の担体への吸着固定方法において、前記担体が不職布、ガラス、ステンレス又は種々ポリマーであることを特徴とする抗ウイルス、抗アレルゲン、抗ガス剤の担体への吸着固定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−219421(P2011−219421A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91000(P2010−91000)
【出願日】平成22年4月10日(2010.4.10)
【出願人】(507333878)株式会社コバテクノロジー (8)
【出願人】(510101527)株式会社 Eu−BS (1)
【Fターム(参考)】