説明

抗トリオースフォスフェートイソメラーゼ抗体、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された試薬およびそれを用いた酵素抗体免疫測定方法、並びに酵素抗体免疫測定用キット

【課題】酵素免疫測定法の標識酵素としてトリオースフォスフートイソメラーゼ(TIM)を用い、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度を、酵素サイクリング法を用いて高めた方法において、ブランク反応におけるTIMの影響を低減して、より高感度にジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量が行える手段を提供する。
【解決手段】抗TIM抗体、TIMの含有量が低減された試薬およびそれを用いた酵素抗体免疫測定方法、並びに酵素抗体免疫測定用キット。酵素免疫測定方法においてTIMを標識酵素に用いた酵素サイクリング法を行う場合、酵素サイクリング反応に使用する基質、酵素、補酵素、緩衝液に混在しているTIMを除去することで、従来にも増して高感度化が可能な酵素免疫測定方法およびこの酵素免疫測定方法を利用する標的タンパク質の超高感度測定法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗トリオースフォスフェートイソメラーゼ抗体、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された試薬およびそれを用いた酵素抗体免疫測定方法、並びに酵素抗体免疫測定用キットに関する。特に本発明は、酵素免疫測定方法においてトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素に用いた酵素サイクリング法を行う場合、酵素サイクリング反応に使用する基質、酵素、補酵素、緩衝液に混在しているトリオースフォスフェートイソメラーゼを除去することで、従来にも増して高感度化が可能な酵素免疫測定方法およびこの酵素免疫測定方法を利用する標的タンパク質の超高感度測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の高感度測定法としてラジオイムノアッセイ法が技術的に確立されているが、検出装置の感度を上げる以外の方法では、現状(10-16moles程度)以上の高感度化は技術的に不可能である。また、特別な施設が必要であり短寿命の核種を使用すれば試薬の使用期限が極端に短くなる上、測定感度も急激に下がってしまう、長寿命の核種を使用すれば、放射性廃棄物という大きな問題を抱えることになるという放射性物質特有のジレンマをかかえており、測定法に関する研究開発も改良もほとんど行われていないのが現状である。
【0003】
その他の高感度測定法として酵素免疫測定法(ELISA法)がある。酵素免疫測定法は開発当初の比色法(10-13moles)から蛍光法、発光法へと高感度化(10-15moles)が進められ、専用測定装置も開発されている。しかし、測定操作が簡便になっただけで感度的には限界がきている。(非特許文献1)
【非特許文献1】「超高感度酵素免疫測定法」(学会出版センター・1993年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、感度をより高めた酵素サイクリング法を組み合わせた酵素免疫測定法(ELISA法)が開発された。標的タンパク質を、酵素免疫測定法を用いてより高感度に測定するには、酵素免疫測定法の標識酵素によって生成する生成物を増幅することが考えられる。また、ある種の化合物を増幅する方法として、種々の酵素サイクリング法が知られていた。本発明者らも、酵素免疫測定法の標識酵素による生成物を、酵素サイクリング法により増幅して、標的タンパク質を、酵素免疫測定法を用いてより高感度に測定することができる方法を開発し、特許出願した(特願2006-010051号)。
【0005】
特許出願した方法は、酵素免疫測定法の標識酵素として、トリオースフォスフートイソメラーゼ(TIM)を選択し、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度を、酵素サイクリング法を用いて高めた方法である。酵素サイクリング法として、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法を用いた。TIMは、ターンオバー数が極めて高く標識酵素として最適であり、その基質であるグリセルアルデヒド 3-リン酸から生成するジヒドロキシアセトン 3-リン酸(DAP)を上記酵素サイクリング法で増幅定量することができる。
【0006】
ところが、上記酵素サイクリング法を組み合わせても、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度は、予想するほど上がらなかった。その原因をさらに追求したところ、酵素サイクリング法に用いる酵素、基質、試薬、緩衝液等の反応用の資材に混在するTIMがブランク反応を起こし、その結果、酵素サイクリングとの組合せにより検出シグナルが増幅されても同時にブランク反応も増幅されるためS/N比が改善されることは無く、結果的にタンパク質を超高感度に測定することはできないことが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、酵素免疫測定法の標識酵素としてトリオースフォスフートイソメラーゼ(TIM)を用い、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度を、酵素サイクリング法を用いて高めた方法において、ブランク反応におけるTIMの影響を低減して、より高感度にジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量が行える手段を提供することにある。
【0008】
具体的には、ブランク反応におけるTIMの影響は、反応用の資材に含まれるTIMが原因であることから、反応用の資材に含まれるTIMを除去することができる手段を提供することが本発明の目的の1つである。そこで、反応用の資材に含まれるTIMを除去してタンパク質の超高感度測定を行うことをさらに検討した。その結果、酵素以外の反応用の資材である基質、試薬、緩衝液中に存在するTIMは加熱処理、ゲルろ過等により容易に取り除くことが出来た。しかし、酵素の安定性を損なわずに酵素中のTIM活性を除去することは、加熱処理、ゲルろ過等の処理では非常に困難であった。そこで、本発明のもう一つの目的は、酵素の安定性を損なわずに酵素中のTIM活性を除去することができる手段を提供することにある。
【0009】
そこで、本発明者らが種々検討した結果、TIMに特異的なモノクローナル抗体を用いることで、酵素の安定性を損なわずに酵素中のTIM活性を除去することができ、このモノクローナル抗体を用いることで得られた酵素を用いること、さらには、TIMを除去した酵素以外の反応用の資材を適宜用いることで、ブランク反応におけるTIMの影響を低減して、酵素免疫測定法の標識酵素としてトリオースフォスフートイソメラーゼ(TIM)を用い、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量を、より高感度に行えることを見いだして、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための発明は以下のとおりである。
[1]トリオースフォスフェートイソメラーゼまたはトリオースフォスフェートイソメラーゼの断片に特異的に結合する抗体。
[2]トリオースフォスフェートイソメラーゼが、哺乳類、両生類、細菌および酵母から成る群から選ばれる少なくとも1種の生物に由来する酵素である[1]に記載の抗体。
[3]トリオースフォスフェートイソメラーゼが大腸菌由来の酵素である[1]に記載の抗体。
[4]IgGである[1]〜[3]のいずれかに記載の抗体。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体と担体とからなり、前記抗体が前記担体に固定化されている、抗体固定化担体。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体、および/または請求項5に記載の抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼ含有原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、
抗体と結合しなかった前記原料に含まれる成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程、並びに
前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程
とを含む、原料より純度の高いトリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分の調製方法。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体、および/または[5]に記載の抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、並びに
抗体と結合しなかった前記目的物質を含む成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程、
とを含む、原料よりトリオースフォスフェートイソメラーゼ濃度を低減した、目的物質を含む画分の製造方法。
[8]トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料に含まれる目的物質が、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ラクテート、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、NAD及び/又はNADH、並びにトリエタノールアミンから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である[7]に記載の製造方法。
[9]トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料が、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬である[7]に記載の製造方法。
[10]前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程をさらに含む、[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が1単位に対して5×10-11単位以下に低減されたグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、及びペルオキシダーゼ含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬。
[12]グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法であって、前記グリセルアルデヒド-3-リン酸は、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減されたグリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬として供給される前記方法。
[13]前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む、[12]に記載の方法。
[14]前記酵素サイクリング法が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法である[12]または[13]に記載の方法。
[15]トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いる、[14]に記載の方法。
[16]グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法であって、
前記酵素サイクリング法が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法であり、かつ
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いる、前記方法。
[17]グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬を含む、前記キット。
[18]グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を含む、前記キット。
[19]前記グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、及びペルオキシダーゼ含有試薬は、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が1単位に対して5×10-11単位以下に低減されたものである[18]に記載のキット。
[20][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を被験試料に接触せしめ、免疫反応によりトリオースフォスフェートイソメラーゼを検出および/または測定する方法。
[21]抗体が放射性物質、酵素及び/又は蛍光物質により標識されている[20]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
(1)TIMに特異的なモノクローナル抗体が提供される。
そして、この抗体を用いることで、
(2)酵素試薬等の試薬に含まれるTIMを除去して、TIMの含有量を低減した試薬を提供することができ、併せて、
(3)上記抗体を用いることで、TIMを精製することもできる。
【0012】
さらに、本発明によれば、TIMの含有量を低減した試薬を用いることで、
(4)より高感度化した酵素免疫測定法(ELISA法)を提供することができる。
酵素免疫測定法(ELISA法)の感度は、10-15moles以上に高めることもでき、標的タンパク質の超高感度測定が可能である。
【0013】
加えて、前記モノクローナル抗体を用いることで、
(5)TIMの検出方法も提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[TIMに特異的なモノクローナル抗体]
本発明は、トリオースフォスフェートイソメラーゼ(TIM)またはトリオースフォスフェートイソメラーゼ(TIM)の断片に特異的に結合する抗体に関する。トリオースフォスフェートイソメラーゼは、種々の生物に広く分布する酵素であり、例えば、哺乳類、両生類、細菌および酵母等に含まれる。本発明におけるトリオースフォスフェートイソメラーゼ(TIM)は、哺乳類、両生類、細菌および酵母から成る群から選ばれる少なくとも1種の生物に由来する酵素であることができる。但し、これらの限定される糸ではない。より具体的にはトリオースフォスフェートイソメラーゼが大腸菌由来の酵素であることができる。また、全長のトリオースフォスフェートイソメラーゼ(TIM)でなくても、トリオースフォスフェートイソメラーゼ(TIM)の断片であって抗原性を有する抗体であれば、本発明に含まれる。
【0015】
TIMに対する特異的抗体は、ポロクローナル抗体でもモノクローナル抗体でも良く、免疫動物もマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、羊等公知の動物を利用できる。
【0016】
この発明のモノクローナル抗体は、TIM又はその抗原性フラグメントを抗原として用いることにより得ることができる。具体的には、例えば、斯かる抗原で免疫感作しておいた哺乳動物より採取した抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞とのハイブリドーマを作製し、これよりこの発明のモノクローナル抗体を産生し得るハイブリドーマのクローンを選択し、これを生体内外で培養することにより得ることができる。
【0017】
免疫感作は慣用の方法によればよく、例えば、上記のごとき抗原を単独又は適宜アジュバントとともに哺乳動物の静脈、皮内、皮下又は腹腔内に注射接種し、一定期間飼育する。哺乳動物に特に限定はなく、所期の抗体産生細胞が得られるかぎり、種類、大きさ、雌雄は問わない。通常はラット、マウス、ハムスターなどのげっ歯類が用いられ、後記無限増殖可能な哺乳類由来の細胞との適合性も勘案しながら、最適のものが選択される。哺乳動物の種類や大きさにも依るが、抗原の接種量は、通常、総接種量を約5乃至500μg/匹とし、これを約1乃至2週間の間隔を置いて2乃至5回に分けて接種する。そして、最終接種から3乃至5日後に脾臓を摘出し、分散して抗体産生細胞としての脾細胞を得る。
【0018】
つぎに、斯くして得られた抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞とを融合させて、目的のハイブリドーマを含む細胞融合産物を得る。無限増殖可能な哺乳類由来の細胞には、通常、P3−NS1−Ag4−1細胞(ATCC TIB18)、P3−X63−Ag8細胞(ATCC TIB9)及びSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)などのマウス骨髄種由来の細胞株又はその変異株が用いられる。細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを始めとする融合促進剤や電気パルスによる慣用の方法が用いられ、一例を挙げると、融合促進剤を含む融合培地に抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞を約1:1乃至1:10の割合で浮遊させ、この状態のまま、約30乃至40℃で約1乃至5分間インキュベートする。融合培地には、例えば、MEM培地、RPMI1640培地及びイスコフ改変ダルベコ培地を始めとする通常一般のものを用い得るが、ウシ血清などの血清類は除いておくのが望ましい。
【0019】
目的のハイブリドーマを選択するには、まず、上記のようにして得た細胞融合産物をHAT培地などの選択用培地に移し、約30乃至40℃で約3日乃至3週間培養してハイブリドーマ以外の細胞を死滅させる。つぎに、ハイブリドーマを常法により培養し、培養物中に分泌された抗体につき、当該蛋白質との反応性を試験する。試験には、エンザイムイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ及びバイオアッセイなどの抗体を検出するための慣用の方法が用いられ、例えば、富山朔二・安東民衛編『単クローン抗体実験マニュアル』、1991年、講談社サイエンティフィク発行、第105乃至152頁にはそのための方法が種々詳述されている。当該蛋白質に特異的な抗体を産生するハイブリドーマは、限界希釈法などにより、直ちにクローニングされ、単一クローン化されたこの発明によるハイブリドーマを得る。
【0020】
この発明のモノクローナル抗体は、斯かるハイブリドーマを生体内外で培養することにより得ることができる。培養には、哺乳類由来の細胞を培養するための慣用の方法が用いられ、例えば、生体外の培養培地で培養するときには、その培養物から、一方、ヒト以外の温血動物に移植し、生体内で培養するときには、その腹水及び/又は血液からモノクローナル抗体を採取する。後述のハイブリドーマM−1はモノクローナル抗体の産生能高く、しかも、生体内外における培養が容易であるという特徴がある。培養物又は腹水若しくは血液からモノクローナル抗体を採取するには、抗体一般を精製するための斯界における慣用の方法が用いられる。個々の方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、遠心分離、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動及び等電点電気泳動が挙げられ、これらは必要に応じて組合せて適用される。精製したモノクローナル抗体は、その後、濃縮・乾燥し、用途に応じて液状又は固状とすることができる。
【0021】
本発明のモノクローナル抗体は、TIMと特異的に反応する。本発明のハイブリドーマは、生体内外で培養すると、斯かるモノクローナル抗体を産生する。本発明による製造方法によるときには、斯かるモノクローナル抗体の所望量が容易に得られる。本発明によるTIM精製方法によるときには、TIMと夾雑物質を含む混合物から、TIMが高純度且つ効率的に採取される。本発明によるTIM除去方法によるときには、TIMを含む混合物から、TIMを選択的かつ高効率に除去される。
【0022】
本発明によるTIMを除去して調製された基質、酵素、補酵素、緩衝液の少なくても1つを含む資材を用いるときには、TIMを標識酵素に用いた酵素抗体免疫反応において、酵素サイクリング法で被検試料中の標的物質を高感度で定性的または定量的に検出することができる。
【0023】
本発明によるTIM抗体を用いるときには、適宜手法によりその免疫反応を測定することにより、被検試料中のTIMを定性的又は定量的に検出することができる。
【0024】
この発明でいうモノクローナル抗体とは、TIMに特異的なモノクローナル抗体全般を包含するものとし、その出所・由来、クラスは問わない。また抗体作製用の抗原のTIMとしては、例えば、生物種から抽出した基質、酵素、補酵素を用いる場合は、その生物種由来のTIMを免疫源にすることが望ましいが、特に限定するものではない。
【0025】
[抗体固定化担体]
本発明は、上記本発明の抗体と担体とからなり、前記抗体が前記担体に固定化されている、抗体固定化担体を包含する。担体としては、例えば、ゲル状の水不溶性担体を用いることができる。水不溶性担体としては、例えば、デキストラン、アガロース、ラテックスビーズ、磁気ビーズ等(商品名としては例えば、Sepharose CL-4Bやホルミル-セルロファイン等)を挙げることができる。
【0026】
[TIM精製方法]
本発明は、上記本発明の抗体、および/または抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼ含有原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、抗体と結合しなかった前記原料に含まれる成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程、並びに前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程とを含む、原料より純度の高いトリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分の調製方法(TIM精製方法)を包含する。
【0027】
本発明のモノクローナル抗体は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによるTIMの精製にきわめて有用である。斯かる精製方法は、この発明のモノクローナル抗体をTIMとTIM以外の夾雑蛋白質を始めとする夾雑物質との混合物に接触させてモノクローナル抗体にTIMのみを吸着させる工程と、吸着した蛋白質をモノクローナル抗体から脱着させる工程を含んでなり、両工程は、通常、水性媒体中で行なわれる。この発明のモノクローナル抗体は、通常、ゲル状の水不溶性担体に結合した状態で用いられ、その水不溶性担体を円筒管などにカラム状に充填し、これに、例えば、ウサギ筋肉ホモジェネート抽出液若しくは形質転換体の培養液又はそれらの部分精製品を通液すると、実質的にTIMのみが水不溶性担体上のモノクローナル抗体に吸着する。吸着したTIMは、モノクローナル抗体周囲の水素イオン濃度を変えることにより、容易に脱着させることができ、例えば、IgGのクラスに属するモノクローナル抗体を用いる場合は酸性側のpH、通常、pH2乃至3で、一方、IgMのクラスに属するモノクローナル抗体を用いる場合はアルカリ側のpH、通常、pH10乃至11で溶出させる。
【0028】
[TIM除去方法]
さらに、本発明は、上記本発明の抗体、および/または抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、並びに抗体と結合しなかった前記目的物質を含む成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程とを含む、原料よりトリオースフォスフェートイソメラーゼ濃度を低減した、目的物質を含む画分の製造方法(TIM除去方法)に関する。
【0029】
上記TIM除去方法においては、トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料に含まれる目的物質が、例えば、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ラクテート、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、NAD及び/又はNADH、並びにトリエタノールアミンから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質であることができる。
【0030】
上記TIM除去方法においては、トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料が、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬であることができる。
【0031】
上記TIM除去方法においては、前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程をさらに含むこともできる。
【0032】
この発明のモノクローナル抗体は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによるTIMの除去にきわめて有用である。斯かる除去方法は、この発明のモノクローナル抗体をTIMとTIM以外の蛋白質を始めとする物質との混合物に接触させてモノクローナル抗体にTIMのみを吸着させる工程と、吸着しない画分を回収する工程を含んでなり、両工程は、通常、水性媒体中で行なわれる。この発明のモノクローナル抗体は、通常、ゲル状の水不溶性担体に結合した状態で用いられ、その水不溶性担体を円筒管などにカラム状に充填し、これに、例えば、TIMを標識酵素に用いる酵素サイクリング法で使用する基質、酵素、補酵素、緩衝液を通液すると、実質的にTIMのみが水不溶性担体上のモノクローナル抗体に吸着する。TIM以外の物質や緩衝液は水不溶性担体上のモノクローナル抗体に吸着せず、そのまま素通り画分として回収できる。素通り画分は必要により透析、濃縮をして使用する。
【0033】
[TIM除去酵素製品]
本発明は、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減されたグリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を包含する。
【0034】
本発明は、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ラクテート、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、NAD及び/又はNADHの一つ以上を含む製品であって、この製品に混在するTIMが、TIMに対する特異的抗体により除去された製品を包含する。TIMに対する特異的抗体により除去は、上記で説明した方法により実施できる。TIMの除去の程度は、例えば最もTIMの混在が多いグリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼやラクテートデヒドロゲナーゼの1単位に対して5×10-11単位以下、好ましくは5×10-13単位以下、より好ましくは5×10-15単位以下のTIM活性となることが好ましい。ペルオキシダーゼも同様に1単位に対して5×10-11単位以下、好ましくは5×10-13単位以下、より好ましくは5×10-15単位以下のTIM活性となることが好ましい。
【0035】
上記TIM除去した製品は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、およびラクテートヒドロゲナーゼを用いて、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェートから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる。TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェートは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物であることができる。尚、酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NAD及び/又はNADHを用いる。
【0036】
[酵素免疫測定方法]
本発明は、グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法であって、前記グリセルアルデヒド-3-リン酸は、上記本発明のトリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬として供給される前記方法に関する。この方法は、前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含むこともできる。前記酵素サイクリング法は、例えば、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法であることができる。
【0037】
上記方法においては、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いることができる。
【0038】
本発明は、グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法であって、
前記酵素サイクリング法が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法であり、かつ
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いる、前記方法も包含する。
【0039】
本発明は、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法において、基質、酵素、補酵素、緩衝液に微量混在しているTIMを特異的に除去した試薬を用いることを特徴とする。この方法では、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いて行われる。さらに、少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品は、この酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する特異的抗体により除去されたものである。
【0040】
本発明の酵素免疫測定方法は、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いること以外は、通常の酵素免疫測定と同様に実施することができる。例えば、被検体に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板、例えば、プレートウエルを用いることができる。
【0041】
標識酵素がTIMである抗体酵素複合体は、常法(石川栄治ら:酵素免疫測定法、第3版、医学書院)により調製できる。例えば、実施例に記載のように、マレイミド化したTIMと標識される抗体を混合し、所定時間反応させることで、調製することができる。
【0042】
抗体酵素複合体を構成する抗体は、本発明の酵素免疫測定方法により測定されるべき被検体に特異的に結合する抗体から適宜選択することができる。例えば、本発明の酵素免疫測定方法は、タンパク質の分析に用いられるが、その場合、抗体酵素複合体の抗体は、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体である。また、この場合、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板を用いる。また、抗体酵素複合体を構成する抗体および基板に固着させる抗体は、抗体の断片であっても良い。本発明の酵素免疫測定方法における、被検体は、タンパク質に限定されず、通常の酵素免疫測定方法が測定対象とするタンパク質以外のすべての物質であることができる。
【0043】
本発明の酵素免疫測定方法では、上記酵素サイクリング法を用いる。この酵素サイクリング法の詳細を以下に示す。
【0044】
【化1】

【0045】
GAPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
GPO:グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ
LDH:ラクテートデヒドロゲナーゼ
TIM:トリオースフォスフェートイソメラーゼ
【0046】
抗体酵素複合体の標識酵素であるTIMによって、グリセルアルデヒド-3-リン酸からジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトが生成する。ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)によりグリセロール-3-リン酸に変換され、グリセロール-3-リン酸は、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)によりジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトに戻され、それと同時に過酸化水素を生成する。このサイクルにより、過酸化水素が蓄積し、この蓄積した過酸化水素を定量する。この時点での過酸化水素の蓄積反応は直線的でしかないが、標識酵素にトリオースホスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いることにより、GAPDHの基質であるDihydroxyacetone-3-phosphateをサイクリング反応系に継続的に追加することができ、その結果過酸化水素の蓄積反応は幾何級数的に増大する。尚、GAPDHの反応により消費(酸化)されたNADは、ラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてNADHに戻される(還元される)。このように、酵素サイクリング法には、基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる。
【0047】
過酸化水素を定量は、比色・発光等の検出系で測定することで実施できる。生成した過酸化水素の定量は、例えば、パーオキシダーゼ(POD)を用いる発色法により行われる。但し、この方法に限定する意図はない。
【0048】
本発明では、少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品として、酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する抗体による吸収操作による除去またはTIM抗体溶液を添加することにより不活性化されたものを用いる。
【0049】
[酵素サイクリング法用キット]
本発明は、グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬を含む、前記キットに関する。
【0050】
さらに本発明は、グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を含む、前記キットにも関する。トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された試薬は、上述のとおりである。
【0051】
本発明は、上記TIMを除去したグリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼやラクテートデヒドロゲナーゼを含む酵素製品を含む酵素サイクリング法用キットを包含する。このキットは、酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NAD及び/又はNADHをさらに含むことができる。このキットは、酵素サイクリング法を用いる酵素免疫測定方法に利用できる。ここでの酵素サイクリング法および酵素免疫測定方法とは、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法と同様である。
【0052】
本発明は、上記本発明の抗体を被験試料に接触せしめ、免疫反応によりトリオースフォスフェートイソメラーゼを検出および/または測定する方法を包含する。ここで、抗体は、放射性物質、酵素及び/又は蛍光物質により標識されていることができる。
【0053】
本発明のモノクローナル抗体は、TIMの検出を必要とする諸分野にも広範な用途を有する。すなわち、この発明のモノクローナル抗体にラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイなどの標識イムノアッセイを適用するときには、被検試料中のTIMを迅速且つ正確に定性又は定量分析することができる。斯かる分析において、この発明のモノクローナル抗体は、例えば、放射性物質、酵素及び/又は蛍光物質により標識して用いられる。この発明のモノクローナル抗体はTIMに特異的に反応し、免疫反応を呈するので、その免疫反応をこれら標識物質を指標に測定すれば、被検試料中のごく微量のTIMを精度良く検出することができる。標識イムノアッセイは、バイオアッセイと比較して、一度に数多くの被検試料を分析できるうえに、分析に要する時間と労力が少なくてすみ、しかも、分析が高精度であるという特徴がある。したがって、この発明による検出方法は、TIMを製造する際の工程管理や製品の品質管理にきわめて有用である。なお、この発明はモノクローナル抗体の標識や標識アッセイそのものに係わるものではないので詳細な説明は省くが、例えば、ピー・ティッセン著、石川栄治訳『エンザイムイムノアッセイ』、1989年、東京化学同人発行にはそのための方法が種々詳述されている。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づきこの発明を説明するが、斯界の技術水準においては、斯かる実施例は多種多様に改変可能である。斯かる技術水準に鑑み、この発明がこれら実施例のみに限定されるべきでないことは云うまでもない。
【0055】
実施例1 ハイブリドーマの調製
【0056】
実施例1-1 抗原の調製方法
大腸菌トリオースイソメラーゼ (TIM) のコード領域を含むDNA断片を得るため、大腸菌ゲノムを鋳型にして2種のオリゴヌクレオチドプライマー、
TIM-F (5'プライマー) 5'-CCCTGCGGCGGCCAATCTTCCTTTATTCGC-3'(配列番号1)と
TIM-R (3'プライマー) 5'-TAAGTGCCGGATATCGAAATCCGGCACCTG-3'(配列番号2)を用いてPCRを行った。PCR反応はPfu Turbo DNA ポリメラーゼ (Stratagene) を用いて、熱変性94℃30秒、アニーリング55℃1分、伸長反応72℃2分のサイクルを30回行った(以降のPCR反応も全て同じ条件で行った)。
【0057】
得られたDNA断片をTAクローニングによりpGEM-T Easy Vector (Promega)に挿入した。クローニングしたDNAの塩基配列を解読し、これが大腸菌TIMをコードすることを確認した後、このDNAを鋳型にして2種のプライマー、TIMF57B (5'プライマー) 5'-CTGGATCCAGCCACATCATGCTGGGTGC-3' (下線部はBamHI切断認識部位) (配列番号3)と TIMRX (3'プライマー) 5'-TCACTCGAGAGCCTGTTTAGCCGCTTCTGC-3' (下線部はXhoI切断認識部位)(配列番号4)を用いてPCRを行い、N末端56個のアミノ酸を欠いた大腸菌トリオースイソメラーゼ (TIM F57) をコードするDNAを増幅した。得られたPCR断片をBamHIとXhoIで消化後、pGEX-KG (Guan & Dixon, Analytical Biochemistry 192: 262-267, 1991) のBamHI/XhoI部位に挿入した。発現ベクターを感染させた大腸菌XL-1 Blue MRF' (Stratagene) を0.5 mM isopropyl s-D-1-thiogalactopyranoside (IPTG) で処理することで、TIM F57のN末にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を付加した融合タンパク質 (GST-TIM F57) を発現させた。GST-TIM F57は大腸菌の封入体に濃縮されたため、凍結融解後、超音波破砕して得られた大腸菌粗抽出液から遠心分離で不溶画分を単離し、これをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) で分離した。GST-TIM F57を含むゲル部位を切り出し、2.5 mMトリスと19.2 mMグリシンを含む緩衝液(pH 8.2)中で電気溶出によりGST-TIM F57を精製した。精製した融合タンパク質は超純水で透析後、ブラッドフォード法によりタンパク質濃度を測定し、0.05 mg/mlの濃度に調整した後にマウスへの免疫に使用した。
【0058】
抗TIMモノクローナル抗体のスクリーニングに使用する目的で、N末にT7タグ、C末にヒスチジンタグを付加した大腸菌トリオースイソメラーゼ(T7-TIM F1-His)を以下のように作製した。上記のTAクローニングで得られたTIM DNAを鋳型として2種のプライマー、TIMF1B (5'プライマー) 5'-GAGGATCCATGCGACATCCTTTAGTGAT-3'(下線部はBamHI部位) (配列番号5)と TIMRX (上述)を用いてPCRを行い、全長大腸菌TIM (TIM F1) を増幅した。得られたPCR断片はBamHIとXhoIで消化し、pET21a (Novagen) のBamHI/XhoI部位に挿入した。得られた発現ベクターを大腸菌BL21 (DE3) plysSに感染させ、0.5 mM IPTGにより融合タンパク質T7-TIM F1-Hisを発現させた。融合タンパク質は亜鉛キレート樹脂(TALON metal affinity resin, BD Bioscience) で部分精製した後、GST-TIM F57と同様にSDS-PAGEで分離後、電気溶出により精製した。精製した融合タンパク質は超純水に溶解し、ELISA法および免疫ブロット法によるハイブリドーマのスクリーニングに用いた。
【0059】
大腸菌TIMと他の生物種TIMのアミノ酸配列の比較を図1に、TIM F57のアミノ酸配列を図2に、抗原として使用したGST-TIM F57のSDS-PAGE像を図3に示す。
【0060】
実施例1-2 抗原の免疫方法
GST-TIM F57 (0.05 mg/ml) 0.4 mlと完全フロインドアジュバント (Complete Freund's Adjuvant) 0.4 mlを、連結した2本の注射筒を用いてwater in oil の状態になるまで良く混合し、6週齢のBalb/cメスマウス2匹の腹腔に0.4 mlずつ投与した。10日後、GST-TIM F57 (0.05 mg/ml) 0.4 mlと不完全フロインドアジュバント (Incomplete Freund's Adjuvant) 0.4 ml を混合した液を上記のマウス腹腔に0.4 mlずつ投与した。その後、同様の抗原注射を10日間隔で2回行った。最初の抗原注射から40日後、GST-TIM F57溶液 (0.05 mg/ml) のみを上記2匹のマウスの腹腔に0.2 mlずつ投与し、その3日後にマウスから脾臓を摘出し、モノクローナル抗体を作製した。
【0061】
実施例1-3 融合方法
摘出したマウスの脾臓細胞とミエローマ細胞 (PAI) を混合し、50%ポリエチレングリコール4000を融合促進剤として細胞融合を行なった。融合後の細胞は10%牛血清を含む60 ml のHAT培地に懸濁し、1穴あたり100μlずつ、96穴プレート6枚に分注した。
【0062】
実施例1-4 スクリーニング方法
2匹のマウスから得た96穴プレート12枚は、5% CO2インキュベーター中、37℃で培養した。培養上清をT7-TIM F1-Hisを吸着させたマイクロタイタープレートを用いてELISA法によりスクリーニングし、抗体産生陽性ウエルを1つ得た。このウエル中の細胞を限界希釈法によりクローニングし、T7-TIM F1-Hisを用いたELISA法により22個の抗体産生陽性ウエルを得た。最終的にT7-TIM F1-Hisを発現する大腸菌粗抽出液を用いた免疫ブロット法によりスクリーニングを行い、抗体産生能が最も高いクローン1個を選別した。他の21クローンから得た培養上清を同様に調査したところ、選んだクローンと全く同じ染色パターンを示したため、これらの細胞はすべて同じクローンであると判断した。
【0063】
実施例2 得られた培養上清の特徴
得られたモノクローナル抗体のクラスは軽鎖に(鎖を持つIgG1であった。このモノクローナル抗体はT7-TIM F1-Hisを発現する大腸菌の粗抽出液に対する免疫ブロット法で、特異的に大腸菌TIM(リコンビナントタンパク質と内在性タンパク質の両方)を認識した。また、この抗体はアフリカツメガエル卵母細胞からの粗抽出液に対する免疫ブロット法で内在性ツメガエルTIMも認識し、種を超えて広くTIMを検出できることが明らかとなった(図4)。
【0064】
実施例3 腹水の作成方法及び精製方法
週齢のBalb/cメスマウスの腹腔に0.5 mlのプリスタンを注射し、10日後にも同量のプリスタンを注射した。二回目のプリスタン注射から3日後、75 mm2フラスコで70%コンフルエントに達したハイブリドーマを遠心で回収し、その全量をマウスの腹腔に注射した。腹水作製に使用したマウスは6匹で、ハイブリドーマの注射10日後に腹水を採取した。マウス腹水1.6 mlを透析膜に移し、PBS緩衝液(pH7.0)100 mlで3回透析を繰り返して、十分に低分子物質を取り除き、PBS緩衝液(pH7.0)に置換した。この溶液を0.45μmフィルターでろ過した後、HiTrap protein-G(1 ml)にアプライし、素通り分画のフラクション(1) を得た。次にPBS緩衝液(pH7.0) 10mlで溶出して、洗浄分画のフラクション(2) を得た。更に100 mMグリシン緩衝液(pH 2.7) 5mlで溶出して、吸着分画のフラクション(3) を得た。このフラクション(1) (2) (3) のタンパク量を測定したのち、SDS-PAGEで確認を行ったところ、フラクション(1) (2) では多数のバンドが認められたが、フラクション(3) は分子量15万付近に1本のバンドのみが認められた。このフラクション(3) について、TIMに対する結合活性を確認したところ、良好な結合活性が認められた。以上の操作により、抗TIMマウスモノクローナル抗体(IgGフラクション)を得た。
【0065】
実施例4 抗体カラムの作製方法
BIO-RAD社製アフィゲルHzイムノアフィニティーキット(153-6060)を使用し、キットに付属の説明書に従って抗TIMマウスIgGをゲルに結合させた。具体的には以下の通りの操作を行った。
【0066】
IgG(抗体)の酸化
【化2】



【0067】
IgGカップリング
【化3】

【0068】
実施例5 抗体カラムによるTIM除去GPOの調製
抗体カラムによるGPO中TIM除去方法
【化4】

【0069】
実施例6 抗体カラムによりTIMを除去したGPOを使用した酵素サイクリング反応
反応試液
50 mM TEA 緩衝液 (pH 9.5)
GAPDH 15単位/ml
POD 2単位/ml
LDH 40単位/ml
Glyceraldehyde-3-phosphate(GAP) 1 mM
Lactate 8 mM
Amplex Red 20μM
NAD 0.16 mM
試料
フラクション1(134単位/ml GPO)
【0070】
測定方法
反応試液250μlに試料を2μl加えて、蛍光マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP−2000FP)で励起波長550 nm、蛍光波長590 nmを使用して37℃での蛍光強度を測定した。図5に示すようなブランク反応のタイムコースが得られ、比較例1に比べて20%以上ブランクを抑えることが出来た。
GPO:グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ
GAPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
POD:パーオキシダーゼ
LDH:ラクテートデヒドロゲナーゼ
【0071】
比較例1 未処理のGPOを使用した酵素サイクリング反応
抗体カラムによりTIMを除去しない未処理のGPOを使用して、実施例1と同様の測定操作を行った。図5に示すようなブランク反応のタイムコースが得られた。
【0072】
実施例7 抗体カラムによるTIM除去GAPDHの調製
抗体カラムによるGPO中TIM除去方法
【化5】

【0073】
実施例8 抗体カラムによりTIMを除去したGAPDHを使用した酵素サイクリング反応
反応試液
100 mMグリシン 緩衝液 (pH 9.5)
カラム処理GAPDH 250単位/ml
NADH 0.4 mM
チオNAD 10 mM
基質液
Glyceraldehyde-3-phosphate(GAP) 1 mM
測定方法
反応試液190 μlをマイクロプレートに分注し、次に基質液を5μlとDWを5μl加えて、マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP−500Lab)で405 nmのフィルターを使用して37℃での吸光度変化を測定した。
【0074】
図6に示すようなブランク反応のタイムコースが得られ、比較例2に比べて半分以下にブランクを抑えることが出来た。
【0075】
比較例2 未処理のGAPDHを使用した酵素サイクリング反応
抗体カラムによりTIMを除去しない未処理のGAPDHを使用して、実施例2と同様の測定操作を行った。図6に示すようなブランク反応のタイムコースが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明を応用した検査法を確立することにより、BSE検査や血液製剤のウイルス検査における検出感度不足による汚染食品や輸血製剤による感染防御に極めて有効な方法になりうる。また、末梢血からの超早期がん診断が可能になる。
その他、今後急速に市場が拡大する分野では、遺伝子組換え医薬品・抗体医薬・再生医療・組織工学から由来する製品の厳密で高感度な品質保証のための超高感度残留タンパク質(異種由来タンパク質)の検出系にも汎用的に利用することが可能と思われる。
また研究用試薬、環境計測、バイオセンサー等への直接的な利用も見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】大腸菌TIMと他の生物におけるTIMのアミノ酸配列の比較
【図2】抗原に使用した大腸菌TIM F57のアミノ酸配列
【図3】抗原に使用したGST-TIM F57のSDS-PAGE
【図4】抗大腸菌TIMモノクローナル抗体による免疫ブロット
【図5】抗体カラムによりTIMを除去したGPOを使用した酵素サイクリング反応
【図6】抗体カラムによりTIMを除去したGAPDHを使用した酵素サイクリング反応

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオースフォスフェートイソメラーゼまたはトリオースフォスフェートイソメラーゼの断片に特異的に結合する抗体。
【請求項2】
トリオースフォスフェートイソメラーゼが、哺乳類、両生類、細菌および酵母から成る群から選ばれる少なくとも1種の生物に由来する酵素である請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
トリオースフォスフェートイソメラーゼが大腸菌由来の酵素である請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
IgGである請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗体と担体とからなり、前記抗体が前記担体に固定化されている、抗体固定化担体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗体、および/または請求項5に記載の抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼ含有原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、
抗体と結合しなかった前記原料に含まれる成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程、並びに
前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程
とを含む、原料より純度の高いトリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分の調製方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗体、および/または請求項5に記載の抗体固定化担体とトリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料とを接触させ、前記原料に含まれるトリオースフォスフェートイソメラーゼと前記抗体とを結合させる工程、並びに
抗体と結合しなかった前記目的物質を含む成分を前記抗体および/または抗体固定化担体と分離する工程、
とを含む、原料よりトリオースフォスフェートイソメラーゼ濃度を低減した、目的物質を含む画分の製造方法。
【請求項8】
トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料に含まれる目的物質が、グリセルアルデヒド-3-リン酸、ラクテート、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、NAD及び/又はNADH、並びにトリエタノールアミンから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
トリオースフォスフェートイソメラーゼと目的物質とを含有する原料が、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記抗体と結合した成分を抗体から脱離して、トリオースフォスフェートイソメラーゼを含む画分を回収する工程をさらに含む、請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が1単位に対して5×10-11単位以下に低減されたグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、及びペルオキシダーゼ含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬。
【請求項12】
グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法であって、前記グリセルアルデヒド-3-リン酸は、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減されたグリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬として供給される前記方法。
【請求項13】
前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酵素サイクリング法が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法である請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法であって、
前記酵素サイクリング法が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む方法であり、かつ
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を用いる、前記方法。
【請求項17】
グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬を含む、前記キット。
【請求項18】
グリセルアルデヒド-3-リン酸を基質として用い、かつトリオースフォスフェートイソメラーゼを標識酵素として用いた酵素抗体免疫反応を利用し、かつ前記酵素抗体免疫反応の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトを酵素サイクリング法により増感して定量する系をさらに含む酵素抗体免疫測定方法に用いるキットであって、
トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が低減された、グリセルアルデヒド-3-リン酸含有試薬、ラクテート含有試薬、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、ペルオキシダーゼ含有試薬、NAD及び/又はNADH含有試薬、並びにトリエタノールアミン含有試薬から成る群から選ばれる少なくとも1種の試薬を含む、前記キット。
【請求項19】
前記グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ含有試薬、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ含有試薬、ラクテートデヒドロゲナーゼ含有試薬、及びペルオキシダーゼ含有試薬は、トリオースフォスフェートイソメラーゼの含有量が1単位に対して5×10-11単位以下に低減されたものである請求項18に記載のキット。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれかに記載の抗体を被験試料に接触せしめ、免疫反応によりトリオースフォスフェートイソメラーゼを検出および/または測定する方法。
【請求項21】
抗体が放射性物質、酵素及び/又は蛍光物質により標識されている請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−231045(P2008−231045A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74420(P2007−74420)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(399053416)学校法人村崎学園 徳島文理大学 (4)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(300050367)株式会社日立ハイテクフィールディング (11)
【出願人】(507090661)株式会社札幌バイオ工房 (3)
【Fターム(参考)】