説明

抗ヒスタミン組成物

安定な医薬組成物は、デスロラタジン又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、及び少なくとも1種のポリオールを含む担体を含有する。好ましい組成物は、デスロラタジンに加え、組成物の50〜80重量%ポリオール、5〜15重量%の崩壊剤、及び0.01〜0.5重量%の酸化防止剤及び/又はキレート剤を含有する。また、デスロラタジンを含有する医薬組成物を安定化するためのポリオールの使用を提供する。デスロラタジン及び1種以上のポリオール、任意に他の医薬として許容される賦形剤を含有する安定な医薬組成物の製造方法であって、これらの成分を混合し、前記組成物を形成するように、それらを製剤化することを含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロラタジン、又はその医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体を含む医薬組成物、このような組成物の製造方法、及びそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジンは、DCL、又はデスカルボニルエトキシロラタジン、又は8−クロロ−6,11−ジヒドロ−11−(4−ピペリジリデン)−5−H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジンであり、実質的に鎮痛特性なしで抗ヒスタミン特性を有する。
【0003】
デスロラタジンは、ロラタジンの活性代謝物である。それは、ロラタジンと化学的に同じ、経口で、長時間作用の抗ヒスタミン薬である。インビトロでロラタジンの50倍、インビボで10倍の効きめがある。それは、ヒスタミンによって引き起こされる症状を治療するために用いられる。ヒスタミンは、例えば、鼻の内面の腫れ、くしゃみ及び目の痒み等のアレルギー反応の多くの兆候及び症状の原因となる化学物質である。ヒスタミンは、ヒスタミン貯蔵細胞(肥満細胞)から放出され、ヒスタミンレセプターを有する他の細胞に付着する。ヒスタミンのレセプターへの付着は、細胞を「活性化」し、アレルギーに関連する効果を生じる他の化学物質を放出させる。
【0004】
デスロラタジンは、選択的H1−レセプターヒスタミンアンタゴニスト活性を有する、長時間作用性の三環系ヒスタミンアゴニストである。それは、ヒスタミンを受けるH1レセプターを遮断し、従って、ヒスタミンによるH1レセプター含有細胞の活性化を阻止する。デスロラタジンは、インビトロにおいて、ヒト肥満細胞からのヒスタミンの遊離を阻害する。デスロラタジンは、血液から容易に脳に入らず、従って、眠気(鎮静)をあまり引き起こさない。それは、ロラタジン、セトリジン及びアゼラスチンを含む、非鎮静抗ヒスタミンの小さなファミリーである。くしゃみ、鼻水、充血した痒い涙目、じんましんを含む、アレルギー性鼻炎及びアレルギー症状を軽減するためのデスロラタジンの使用が、文献に報告されている。
【0005】
非鎮静抗ヒスタミン薬、デスロラタジンは、米国特許第4,659,716号明細書に開示されている。この米国特許明細書は、また、ロラタジンの製造方法、医薬組成物、及びほ乳類におけるアレルギー反応を治療するためのこの組成物の使用方法を開示している。
米国特許第5,595,997号明細書は、ロラタジンの代謝誘導体であるデスロラタジンが、アレルギー性鼻炎、及び他の疾患の治療のために用いられ、他の非鎮静抗ヒスタミン薬に関連した有害な副作用を伴う障害を回避することを開示している。
【0006】
WO0310143号公報は、鼻粘膜への鼻腔内部送達のためのロイコトリエン阻害剤の有無にかかわらず、抗ヒスタミン薬を含む医薬組成物を開示している。
デスロラタジン又はその医薬として許容される塩の治療的に効果的な量を投与することを含む、尿失禁を治療するための方法が、米国特許第5,939,426号明細書に開示されている。
【0007】
米国特許第6,100,426号明細書は、デスロラタジン(DCL)、及びDCL保護量の第二リン酸カルシウム等の医薬として許容される塩基性塩、及び約45分間に医薬組成物の少なくとも約80重量%が分解するのに十分な量の少なくとも1種の崩壊剤、好ましくは微結晶性セルロース及びデンプンなど2種の崩壊剤を含み、ヒト等のほ乳類においてアレルギー反応を治療するための経口投与に適している医薬組成物を開示している。塩基性塩の使用は、組成物の安定化に必須であるとして開示されている。該組成物は、25℃/60%相対湿度で少なくとも24カ月貯蔵した後に、実質的に変色がなく、1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含むと考えられている。対照的に、塩基性塩を含まず、マンニトール、乳糖及びステアリン酸マグネシウム等の賦形剤を含む製剤は、全て不安定であった。
【0008】
デスロラタジンは、厳しい温度及び湿気条件によって変色及び分解することが見出されている、感受性の分子であることが知られている。米国特許第6,100,274号明細書に教示されているように、それはまた、不適合な賦形剤により、変色及び分解することがわかっている。高温度及び高湿度における変色及び分解は、不適合な(又は)高度に反応性の賦形剤と併用した時に促進される。
本発明者らは、加速安定性試験の下でも、変色せず、デスロラタジン(DCL)分解生成物が実質的にない、デスロラタジンの製剤の必要性が残っていると認識している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、変色せず、DCLの分解生成物、特にN−ホルミルデスロラタジンを実質的に含まず、加速条件の下でも安定である、デスロラタジンの製剤を提供することである。本明細書で用いられる「分解生成物を実質的に含まない」なる用語は、最小の不純物、特にN−ホルミルデスロラタジンを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今、本発明者らは、意外にも、デスロラタジンが特に、塩基性塩の使用に頼る必要なく、十分安定であり得ることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
従って、第一の態様において、本発明は、デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体と、少なくとも1種のポリオールを含む担体を含有する安定な組成物を提供する。
他の態様においては、本発明は、デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体と、少なくとも1種のポリオールを含む担体を含有する医薬組成物を提供し、デスロラタジン(2.5mg/錠剤)、微結晶性セルロース(10mg/錠剤)、マンニトール(71.5mg/錠剤)、α化デンプン(15mg/錠剤)及びステアリン酸マグネシウム(1mg/錠剤)を含む錠剤を除く。
【0012】
また、本発明は、デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体と、少なくとも1種のポリオールを含む担体とを含み、以下の1以上の成分を含まない医薬組成物を提供する:乳糖等の糖;ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムを含む、ステアリン酸及びその誘導体;アスパルテーム;アスコルビン酸亜鉛;アスコルビン酸パルミテート。
【0013】
他の態様においては、基本的に、デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体と、1以上のポリオールを含む医薬組成物が提供される。好ましくは、該組成物は、更に、1以上の崩壊剤、酸化防止剤、キレート剤及び滑沢剤を含む。
本発明の組成物を、任意にコーティングすることができる。任意の適当なコーティングを用いることができ、コーティングは、ある場合には安定性を向上させる。フィルムコーティングが好ましいが、ワックス、糖衣(乳糖を除く)を含む他の好ましいコーティングを使用することができる。
【0014】
他の態様においては、本発明は、特に、抗ヒスタミン薬の投与に反応する状態を治療するための医薬として用いるための本発明の組成物を提供する。
本発明によれば、また、デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体と、及び総不純物量が活性成分の1.5重量%未満となるような1以上の医薬として許容される賦形剤を有する安定化量の1以上のポリオールとを含む、安定な医薬組成物が提供される。適切には、これは、組成物が、25℃及び約60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月貯蔵された場合を意味する。不純物は、基本的に、活性物質の劣化/分解生成物からなる。
【0015】
デスロラタジンは高度に反応性の化合物であり、高温及び湿度の高い保存条件に曝した時に分解し、ピンク色に変化する。従って、デスロラタジンを種々の賦形剤と製剤化する場合、極度の注意が必要である。本発明者らはデスロラタジンが、乳糖及びステアリン酸マグネシウム、微結晶性ステアリン等の一般の賦形剤とは適合せず、分解し、ピンク色に変化することを見出した。この分解は、高温及び湿度の高い条件下で更に促進されれる。
米国特許第6100274号明細書によれば、デスロラタジンの主な分解分産物は、N−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジン、又はN−ホルミルデスロラタジンである。分解産物の生成は、高温及び湿度の高い条件で増加する。
【0016】
「デスロラタジン」なる用語は、本明細書において広い意味で用いられ、デスロラタジン自体のみでなく、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体をも含む。多形体型I及びIIは、好ましい形態である。これらは、単独で用いることができ、又はI型及びII型の混合物が用いられる。
【0017】
「安定した」組成物とは、例えば、有意な変色を示さず、デスロラタジン(DCL)分解物を実質的に含まないという物理化学的パラメータへの適合性を示し、並びに好適にも薬物含有量が活性成分の95重量%未満に低下せず、溶解が特定の貯蔵安定期の間中、組成物の80重量%以上である組成物であることを本発明者らは意味する。好ましくは、これは周囲条件で長期間(例えば、12又は24ヶ月)貯蔵した後であっても適用される。適切には、本発明の組成物は、活性成分の1.5重量%未満の総分解生成物(N−ホルミルデスロラタジンを含む)を含む。好ましくは、40℃及び75%相対湿度で少なくとも1ヶ月間、好ましくは4ヶ月、更に好ましくは少なくとも6ヶ月貯蔵した後に、N−ホルミル不純物の量は活性成分の0.75重量%未満、好ましくは0.6重量%未満である。好ましくは、25℃及び60%相対湿度で保存した後、本発明の組成物は、活性成分の0.75重量%未満、理想的には0.6重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のN−ホルミルデスロラタジンを含む。好ましくは、貯蔵の期間は、25℃及び60%相対湿度で、少なくとも12ヶ月であり、更に好ましくは少なくとも18ヶ月であり、最も好ましくは少なくとも24ヶ月である。本発明者らは、塩基塩等の追加の安定手段を用いることなく、活性成分と組み合わせてポリオールを用いることによって、このように安定な組成物を提供することが可能であることを見出した。
【0018】
従って、また本発明は、デスロラタジンを含む医薬組成物を安定化させるためのポリオールの使用を提供する。
活性成分に悪影響を与えないように、本発明の組成物中の活性成分のための担体が1以上のポリポールのみからなってもよいが、好ましくは他の賦形剤も含む。水中で酸性のpHを示す化合物は好ましくは除外される。
意外にも、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の(一般に充填剤として使用される)ポリオール又は糖アルコールは、担体として用いられた時、デスロラタジンの分解及び変色が実質的に減少する。
【0019】
ポリオール(糖アルコール、多価アルコールとしても知られている)は、そのカルボニル基(アルデヒド又はケトン)、還元糖)が一級又は二級ヒドロキシル基に還元される、炭水化物の水素化形態である。それらは、通常、人工甘味料として用いられる。いくつかの好ましいポリオールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトールである。
【0020】
マンニトールは、好ましくはD−マンニトールである。それは、マンノースに関連する六価アルコールであり、ソルビトールの異性体である。マンニトールは、白色、無臭の結晶性粉末、又は自由流動性顆粒として生じる。
ソルビトールは、好ましくはD−ソルビトールである。それは、白色又はほぼ白色の結晶性粉末として生じる。
【0021】
キシリトールは、好ましくはメソ−キシリトールである。キシリトールは、白色結晶性粉末又は結晶として生じる。
マンニトールは、好ましくはD−マンニトールである。それは、白色の結晶性粉末として生じる。
ラクチトールは、好ましくはD−グルシトールである。ラクチトールは、白色の結晶性粉末である。
エリスリトールは、好ましくはメソ−エリスリトールである。それは、白色又はほぼ白色の結晶性粉末又は自由流動性顆粒として生じる。
【0022】
前記付加ポリオールの濃度は、適切には、組成物の1〜95重量%である。更に好ましくは、組成物の15〜85重量%が用いられる。特に好ましい範囲は、50〜80重量%であり、この範囲内で、非常に良好な安定化が達成される。
本発明は、長期貯蔵の初期と終了後の両方で、不純物を実質的に含まない最終的な製剤を提供する。本発明は、全不純物を、活性成分の1.5重量%未満まで制限する。
好ましくは、本発明の組成物は、1以上の崩壊剤を含有する。適当な崩壊剤を併用した場合、製剤はより速く崩壊し、それによってより速く溶解する。
【0023】
それが活性成分の安定性の悪影響を及ぼさないのであれば、いかなる適当な崩壊剤を用いることができる。適当な崩壊剤には、1以上のデンプン、部分的にゼラチン化したデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)又はクロスカルメロースナトリウム等の修飾デンプンが含まれる。好ましい崩壊剤は、低置換ヒドロキシプロピルセルロースである。崩壊剤は、好ましくは、組成物の0.5〜30重量%の量で用いられる。5〜15重量%の範囲が特に好ましい。
【0024】
また、本発明の組成物は、好ましくは酸化防止剤及び/又はキレート剤を含有する。1以上のこれらの化合物の存在は、活性成分の分解及び/又は変色を減少することを援助する役目を果たすことができる。酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤及び/又はキレート剤は、製剤の0.01〜1重量%の量で存在することができる。
特に好ましい範囲は、組成物の0.01〜0.5重量%である。
【0025】
いずれの適当な酸化防止剤も用いることができるが、好ましい酸化防止剤には、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、及び酢酸ビタミンEの1以上が含まれる。例えば、錠剤の約0.01〜1重量%の濃度、更に好ましくは錠剤の0.01〜0.5重量%の濃度の酸化防止剤を用いることができる。最も好ましい酸化防止剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムである。例えば、キレート剤はエデト酸二ナトリウムであり得る。
【0026】
本発明の好ましい組成物は、デスロラタジン、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、組成物の50〜80重量%のポリオール、5〜15重量%の崩壊剤、及び0.01〜0.5重量%の酸化防止剤及び/又はキレート剤を含む安定な医薬組成物である。好ましくは、酸化防止剤が用いられ、活性成分は好ましくは2.5〜5mgの量で存在する(いかなる適切な剤形が用いられるが、例えば、錠剤において)。好ましくは、滑沢剤も含まれる。
製剤の特性により、及び活性成分の安定性に悪影響を与えないならば、本発明の組成物には、必要に応じて他の通常の医薬品賦形剤が含まれていてもよい
【0027】
用いてもよい他の標準的な医薬品賦形剤には、以下の1以上が含まれるが、これらに限定されない:1)デンプン等の充填材、2)バインダー:ゼラチン、α化澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等、3)タルク、硬化ヒマシ油、硬化植物油、シリコン処理したタルク、ショ糖エステル類、シリコーン、又はシメチコン油、無水コロイドシリカ、等の抗付着剤、滑沢剤及び流動促進剤又はそれらの2以上の混合物。抗付着剤、滑沢剤及び流動促進剤は、好ましくは、組成物の0.5〜35重量%の量で用いられる。溶液又は懸濁剤のための医薬品賦形剤には、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ラクチトール、マンニトール等が含まれる。
【0028】
完成した本発明の製品は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸薬、粉末、溶液又は懸濁剤等のいかなる好適な剤形であり得る。好ましくは、組成物は、固形組成物、特に、錠剤、カプセル剤又は丸薬等である。
【0029】
他の好ましい実施態様においては、本発明の組成物はコーティングされている。コーティングは、例えば、フィルムコーティング、糖衣(乳糖以外)又はワックスコーティングであってもよいが、他の適当なコーティングも用いることができる。フィルムコーティングした錠剤が好ましい。好ましくは、フィルムコーティングは乳糖を含まない。フィルムコーティング組成物は、例えば、任意の適当なフィルムコーティングであってもよく、例えば、フィルムコーティングレディミックス(redimix)であってもよく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース等の1以上の通常のフィルム形成材料を含んでいてもよい。可塑剤、乳白剤、着色剤及び乾燥剤等が含まれていてもよい。乳白剤は、例えば、二酸化チタン、種々の色素のレーキ及びべんがら等の酸化鉄から選択され得る。着色剤は、可溶性レーキの他、例えば、適当な可溶性着色剤であってもよい。
【0030】
また、可塑剤には、適当な化合物が含まれ、適当な化合物には、1以上の、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、及びミリスチン酸イソプロピルが含まれる。適当な溶媒には、例えば、1以上の、水、水性アルコール又は非水性溶媒が含まれ得る。
ワックスコーティングには、例えば、適当な溶媒、例えば、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、クロロホルム又はそれらの混合物を用いた、みつろう、アラビアゴム、カルナウバろう、オパグロスといった商標のある銘柄、又はそれらの混合物が含まれ得る。
【0031】
一実施態様においては、本発明の製剤は錠剤の形態であってもよい。他の通常の賦形剤と一緒に賦形剤としてポリオールを含む、本発明の錠剤製剤は、シャーレ中で40℃/75%相対湿度に1ヶ月間曝される。たとえ1ヶ月後でも、錠剤は、変色がなく色が白色のままであった。分析により、製剤は分解レベルが更に上昇しなかった。これらについての安定性のデータを表1に示す。
【0032】
錠剤化は通常の方法を用いて実施することができる。本発明者らは、直接圧縮を用いることを好む。圧縮又はスラッギングによる乾式造粒を用いることができる。また、バインダーとして、エチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースポリマーを、溶媒として、イソプロピルアルコール及び塩化メチレンを用いた非水性造粒を用いることができる。EDTA二ナトリウムを含んでもよい。
本発明の組成物は、コーティングされているか又はコーティングされず、例えば、コーティング又は非コーティング錠剤であってもよい。コーティング組成物については、酸化防止剤が含まれていてもよく、しかし、所望であれば省略することができる。
【0033】
従って、本発明は、デスロラタジン及び1以上のポリオールを含有する、安定なコーティングされた医薬組成物を提供する。好ましくは、組成物はコーティングされた錠剤である。酸化防止剤が任意に存在してもよい。コーティングは適切にはフィルムコーティングであり、好ましくは乳糖を含まない。それは、例えば、糖衣(乳糖を除く)、糖(医薬グレード)、又はワックスコーティングであってもよいが、他の適切なコーティングを用いてもよい。
また、本発明は、デスロラタジン、1以上のポリオール及び1以上の酸化防止剤を含有する、安定なコーティングされていない医薬組成物を提供する。
【0034】
他の態様においては、本発明は、デスロラタジン及び1以上のポリオール、任意に他の医薬として許容される賦形剤を一緒に含有する安定な医薬錠剤組成物の製造方法であって、前記成分を混合し、圧縮して錠剤を形成することを含む製造方法を提供する。
経口投与のためのデスロラタジンの治療的に有効な量は例えば、約2.5〜20mg/日、更に好ましくは約5〜10mg/日で変化する可能性がある。最も好ましい量は、1日5mgである。
【0035】
各種の置換及び修飾を、本発明の範囲及び精神を逸脱しないで、本明細書に開示された発明に実施することは、当業者に容易に明らかであろう。従って、本発明が特に好ましい実施態様及び任意の特徴によって具体的に開示されたにもかかわらず、本明細書において開示される概念の修正及び変形が当業者によって実施することができ、このような修正及び変形が本発明の範囲内にあると考えられると理解されなければならない。
以下の実施例は、本発明の説明の目的のためのみであり、本発明の範囲を限定するものとして何ら意図されるものではない。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
マンニトール(DCグレード)を用いた直接圧縮による錠剤

【0037】
製造工程:
デスロラタジン及びマンニトールを、共にふるいにかけ、ドラッグミックスを形成した。このドラッグミックスとLHPCとDCグレードのマンニトールとの混合物を製造し、潤滑化し、圧縮し錠剤を形成した。
【0038】
(実施例2)
マンニトールを用いた湿式造粒による錠剤

【0039】
製造工程:
デスロラタジン、マンニトール及びL HPCをヒドロキシプロピルセルロースを用いて共にふるいにかけ、造粒した。このようにして得られた湿った塊を乾燥し、編み目を通過させた。更にタルクで潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。
【0040】
(実施例3)
マンニトール(DCグレード)及び酸化防止剤を用いた直接圧縮による錠剤

【0041】
製造工程:
デスロラタジン、重亜硫酸ナトリウム及びマンニトールを共にふるいにかけドラッグミックスを形成した。このドラッグミックスとL HPCとDCグレードのマンニトールとの混合物を潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。
【0042】
(実施例4)
マンニトール(DCグレード)を用いた直接圧縮、及び乳糖を含むコーティング組成物を用いた追加コーティングによる錠剤

【0043】
製造工程:
デスロラタジン及びマンニトールを共にふるいにかけドラッグミックスを形成した。このドラッグミックスとL HPCとDCグレードのマンニトールとの混合物を潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。錠剤を上記コーティング組成物を用いてコーティングした。
【0044】
(実施例5)
マンニトール(DCグレード)を用いた直接圧縮、及び乳糖を含まないコーティング組成物を用いたコーティングによる錠剤

【0045】
製造工程:
デスロラタジン及びマンニトールを共にふるいにかけドラッグミックスを形成した。このドラッグミックスとL HPCとDCグレードのマンニトールとの混合物を潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。この錠剤を上記コーティング組成物を用いてコーティングした。
【0046】
(実施例6)
通常の賦形剤を用い、ポリオールを用いない、湿式造粒による錠剤

【0047】
製造工程:
デスロラタジン、デンプン、クロスポビドン及び微結晶性セルロースを共にふるいにかけ、デンプンのりで造粒された混合物を形成した。得られた、湿った塊を乾燥し、編み目を通過させ、タルクで潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。
【0048】
実施例1〜6で得られた錠剤を、25℃/60%相対湿度及び40℃/75%相対湿度で、開いたシャーレ中で1ヶ月さらし、変色、デスロラタジンの含有量及び不純物のレベルを調べた。結果を表1に示す。
注:コーティングされた錠剤の色と記述については、1ヶ月間さらされた錠剤は壊れ、観察された。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例7)
カプセル形態:

【0051】
デスロラタジン、マンニトール及びメタ重亜硫酸ナトリウムを共にふるいにかけ、ドラッグミックスを形成した。このドラッグミックスとL−HPCとDCグレードのマンニトールを混合し、タルクで潤滑化し、次いでカプセルに包んだ。
【0052】
(実施例8)
直接圧縮による錠剤

【0053】
フィルムコーティング用:

【0054】
デスロラタジン及びマンニトールを共にふるいにかけ、ドラッグプレミックスを形成した。このドラッグプレミックスを、L−HPC、無水コロイドシリカ及びDCグレードのマンニトールと混合し、これを、更にシリコン処理したタルク及び硬化ヒマシ油を用いて潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。この錠剤を、上記フィルムコーティング組成物を用いてコーティングした。
【0055】
(実施例9)

前記実施例における手順に従った直接圧縮により錠剤を製造した。
【0056】
(実施例10)

a)上記全ての成分をふるいにかけ、適当なブレンダー中で混合した。
b)適当な道具を用いて圧縮した。
【0057】
(実施例11)

【0058】
デスロラタジン、DCグレードのソルビトールを混合してドライミックスを形成した。イソプロピルアルコール及び塩化メチレン中L−HPCのバインダー溶液を調製した。このバインダー溶液を用いて、ドライミックスを造粒した。他の賦形剤及び滑沢剤を加え、得られた配合物を、適当な道具を用いて圧縮した。
【0059】
(実施例12)
直接圧縮による錠剤

【0060】
コーティング

【0061】
デスロラタジン及びマンニトールを共にふるいにかけ、ドラッグプレミックスを形成した。このドラッグプレミックスを、更にL−HPC、無水コロイドシリカ及びDCグレードのマンニトールと混合し、これをシリコン処理したタルク及び硬化ヒマシ油を用いて潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。錠剤を、上記コーティング組成物を用いてコーティングした。
【0062】
(実施例13)
直接圧縮による錠剤

【0063】
コーティング

【0064】
デスロラタジン及びマンニトールを共にふるいにかけ、ドラッグプレミックスを形成した。このドラッグプレミックスを、更にL−HPC、無水コロイドシリカ及びDCグレードのマンニトールと混合し、これを、更にシリコン処理したタルク及び硬化ヒマシ油を用いて潤滑化し、圧縮して錠剤を形成した。この錠剤を、上記コーティング組成物を用いてコーティングした。
【0065】
(実施例8の製剤化された錠剤の安定性)
高密度ポリエチレンボトル及びブリスター包装中に置かれた試料について、実施例8の製剤化された錠剤の化学的アッセイ、物理的特性及び分解を試験した。実施例8の錠剤を、25℃60%相対湿度(“RH”)、又は30℃/65%相対湿度で最長12ヶ月まで、又は40℃/75%相対湿度で6ヶ月まで、高密度ポリエチレンボトル(HDPE)又はブリスター包装中に貯蔵した時、物理的外観、デスロラタジンの化学的アッセイ及び溶解速度に有意な変化は観察されなかった。40℃/75%相対湿度で6ヶ月間、HDPEボトル及びブリスター包装中に貯蔵した錠剤に、少量の分解、例えばN−ホルミルDCLが観察され、25℃/60%又は30℃/65%相対湿度に12ヶ月間、ブリスター包装又はHDPEボトル中に貯蔵した錠剤の試料中、約0.2〜0.3%のみが観察された。
本明細書で用いられるように、DCグレードは、直接圧縮可能なグレードを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジン、又は、その医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、及び少なくとも1種のポリオールを含む担体を含有する、安定な医薬組成物。
【請求項2】
総不純物量が活性成分の1.5重量%未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.75重量%未満含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.6重量%未満含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.5重量%未満含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
約25℃及び約60%相対湿度で貯蔵された、請求項2〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリオールが、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、又はそれらの2以上の混合物である、請求項1、2、3、4、5又は6記載の組成物。
【請求項8】
ポリオールの量が、組成物の1〜95重量%である、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
ポリオールの量が、組成物の15〜85重量%である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
ポリオールの量が、50〜80重量%である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
更に、少なくとも1種の崩壊剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
崩壊剤の量が、組成物の0.5〜30重量%である、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記崩壊剤がデンプン、部分的にゼラチン化されたデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、又はクロスカルメロースナトリウム等の修飾デンプン、又はそれらの混合物である、請求項11又は12記載の組成物。
【請求項14】
前記崩壊剤が低置換ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
更に、酸化防止剤及び/又はキレート剤、又はそれらの混合物を含む、前記請求項のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
酸化防止剤又はキレート剤の量が、組成物の0.01〜1重量%である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
酸化防止剤又はキレート剤の量が、組成物の0.01〜0.5重量%である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
酸化防止剤が、メタ重亜硫酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、又は酢酸ビタミンE、又はそれらの2以上の混合物である、請求項15、16又は17記載の組成物。
【請求項19】
酸化防止剤がメタ重亜硫酸塩である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
デスロラタジンに加え、組成物の50〜80重量%のポリオール、5〜15重量%の崩壊剤、及び0.01〜0.5重量%の酸化防止剤及び/又はキレート剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
更に滑沢剤を含む、請求項1〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
滑沢剤が、組成物の0.5〜35重量%の量で存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
滑沢剤が、タルク、硬化ヒマシ油、シリコン処理したタルク、無水コロイドシリカ、ショ糖エステル類、硬化植物性油脂、シリコーン、又はシメチコン油、又はそれらの2種以上の混合物である、請求項21又は22記載の組成物。
【請求項24】
組成物がコーティングされている、請求項1〜23のいずれか1項記載の組成物。
【請求項25】
前記コーティングが、フィルムコーティング、糖衣(乳糖以外)又はワックスコーティングである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
組成物がフィルムコーティングされている、請求項24又は25記載の組成物。
【請求項27】
前記フィルムコーティングが乳糖を含まない、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
組成物が、医薬として許容される塩基性塩を含まない、請求項1〜27のいずれか1項記載の組成物。
【請求項29】
デスロラタジン、又はその医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、及び少なくとも1種のポリオール及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースを含む担体を含む、安定な医薬組成物。
【請求項30】
デスロラタジン、又はその医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、及び少なくとも1種のポリオール及び酸化防止剤並びに/又はキレート剤を含む担体を含む、安定な医薬組成物。
【請求項31】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.75重量%未満含有する、請求項29又は30記載の組成物。
【請求項32】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.6重量%未満含有する、請求項29又は30記載の組成物。
【請求項33】
N−ホルミルデスロラタジンを、活性成分の0.5重量%未満含有する、請求項29又は30記載の組成物。
【請求項34】
約25℃及び約60%相対湿度で貯蔵された、請求項29〜33のいずれか1項記載の組成物。
【請求項35】
固体の医薬組成物である、請求項1〜34のいずれか1項記載の安定な医薬組成物。
【請求項36】
デスロラタジン、又はその医薬として許容される塩、溶媒和化合物、誘導体、多形体、水和物又は光学異性体、及び少なくとも1種のポリオールを含む担体とを含み、活性成分の0.75重量%未満のN−ホルミルデスロラタジンを含む、安定な医薬組成物。
【請求項37】
デスロラタジンを含む医薬組成物を安定化させるための、ポリオールの使用。
【請求項38】
前記ポリオールがマンニトールである、請求項37記載の使用。
【請求項39】
医薬として使用するための、請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物。
【請求項40】
抗ヒスタミン薬の投与に反応する状態を治療するための医薬製造用途の、請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項41】
デスロラタジン及び1以上のポリオール、任意に他の医薬として許容される賦形剤を含む、安定な医薬組成物の製造方法であって、前記組成物を形成するように、前記成分を混合する工程と、それらを製剤化する工程を含む、前記方法。
【請求項42】
デスロラタジン及び1以上のポリオール、任意に他の医薬として許容される賦形剤を含む、安定な医薬錠剤組成物の製造方法であって、錠剤を形成するように、前記成分を混合し、それらを圧縮する工程を含む、前記方法。
【請求項43】
抗ヒスタミン薬の投与に反応する状態を治療する方法であって、請求項1〜36のいずれか1項記載の組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2008−506679(P2008−506679A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520903(P2007−520903)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002828
【国際公開番号】WO2006/008512
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】