抗凝固剤の経皮送達のためのシステム及び方法
電気輸送により抗凝固剤を経皮的に送達するための装置。抗凝固剤は好ましくはベンズアミジン又はナフトアミジン誘導体を含んでなる。特に好ましいベンズアミジン誘導体は2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体である。装置は20〜80ng/mlの血漿濃度を維持する又は約20〜40mg/日の範囲内の束密度を提供するように設定されている。適切な電流密度は0.050及び0.10mA/cm2を包含する。本発明の方法は所望の血漿濃度を正確に維持するように抗凝固剤を送達する方法を包含する。本発明はまた、血栓塞栓性疾患を処置し、そして因子Xaを阻害する方法を含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概括的に電気輸送の物質送達に関し、そしてより具体的には抗凝固剤の経皮的電気輸送の物質送達に関する。特に、本発明は経皮送達によりベンズアミジン誘導体のような抗凝固剤の適切な血漿濃度を獲得し、維持する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的活性剤又は薬剤の経皮送達は皮下注射及び経口送達のような比較的伝統的送達方法に対して改良点を提供する。経皮的物質送達は狭い治療指数、短い半減期及び強力な活性をもつ活性剤に対して特に魅力的な投与経路である。
【0003】
経皮的物質送達は経口の活性剤の送達に伴って遭遇される肝臓の第1次通過効果及び胃腸の分解を回避する。経皮的物質送達はまた、皮下注射に伴う患者の不快感、感染の危険及び侵襲性を排除する。更に、経皮的物質送達は特定のタイプの経皮送達装置の持続的に制御された送達プロファイルのために、長期間、患者の血流中に、より均一な濃度の活性剤を提供することができる。本明細書で使用される用語「経皮送達」は動物の皮膚、粘膜又は爪のような体表を通る活性剤又は薬剤の送達を広く包含する。
【0004】
治療剤の経皮送達は重要な医薬の投与経路である。前記のように、経皮送達は胃腸の分解及び肝臓の代謝を迂回する。大部分の市販の経皮的薬剤送達システム(例えば、ニトログリセリン、スコポラミン、エストラジオール、テストステロンの皮膚パッチ剤)は受動的拡散により活性剤を送達する。前記のシステムにおいては、物質は典型的に、存在する濃度勾配によりパッチ中のレザボアから患者の皮膚中に拡散する、すなわち物質はパッチのレザボア中の高濃度から患者の身体中に低濃度に拡散する。「パッチ剤」の送達システムは患者の血流への緩徐な、しかし制御された物質の送達を提供する。
【0005】
患者の皮膚を通る活性剤の束密度(flux)は多数の因子により決定される。該因子は物質の分配係数及び溶解度特性を包含する。
【0006】
不幸なことには、多数の活性剤は経皮的拡散束密度が低すぎるため治療的に有効でない。これは特に、ポリペプチド及びタンパク質のような高分子物質に当てはまる。経皮的物質の束密度を高めるために、患者の体表(例えば、皮膚)と接した、物質のレザボアを通って適用される低レベルの電流の適用を伴う技術が使用されてきた。この技術はイオン電気導(iontophoresis)、そしてより最近では電気輸送(electrotransport)と呼ばれてきた。
【0007】
当該技術分野で周知のように、電気輸送は治療剤又は種(species)の経皮的輸送が、駆動力として電流を使用することにより、すなわち物質含有レザボアを通り患者に対する電流の適用により、達成される方法である。従って、電気輸送は適用される電流の振幅、タイミング及び極性が標準の電装品を使用して容易に調整されるために、受動的経皮的物質送達より更に調整可能な方法である。概括的に、電気輸送の物質束密度は同一物質の受動的経皮的束密度より数次元大きい数字である可能性がある。
【0008】
現在知られている電気輸送装置においては少なくとも2個の電極が使用される。これらの電極は双方とも患者の体表のある部分と密接に電気接触して配置される。能動的又は供与電極と呼ばれる一方の電極はそれから治療剤、物質の前駆体又は物質が電気輸送により身体中に送達される電極である。対電極又は復帰電極と呼ばれる他方の電極は身体を通る電気回路を閉鎖する役割を果たす。電極により接触される患者の体表と一緒に、回路は電気エネルギー源、例えば、電池への電極の接続により完成される。
【0009】
経皮的に送達される種の電荷に応じて、陽極又は陰極のいずれかが「能動的」又は供与電極であることができる。例えば、身体中に送達されるイオン性物質が正に荷電されている(すなわちカチオン)場合は、陽極が能動的電極であり、そして陰極が回路を完成する役割を果たすであろう。反対に、送達されるイオン性物質が相対的に陰性に荷電している(すなわちアニオン)場合は、陰極電極が能動的電極であり、陽極電極が対電極であろう。
【0010】
あるいはまた、陽極及び陰極双方を身体中に適当な電荷の活性剤を送達するために使用することができる。このような場合には、両電極が能動的又は供与電極であると考えられる。すなわち、陽極電極は身体中に正に荷電した物質を送達し、他方陰極電極は身体中に負に荷電した作用剤を送達することができる。
【0011】
既存の電気輸送装置は概括的に電気輸送により身体中に送達されるべき治療剤のレザボア又は供給源を必要とし、該治療剤は典型的にはイオン化された又はイオン化可能な種、あるいはこのような種の前駆体の液体溶液の形態にある。場合によっては、活性剤はヒドロゲルとして調製される。このようなレザボア又は供給源の例は特許文献1に記載されたようなポーチ、特許文献2に開示されたような前以て形成されたゲル体及び特許文献3の図に開示されたような活性剤の液体溶液を保持するガラス又はプラスチック容器、を包含する(特許文献1、2及び3参照)。このような活性剤のレザボアは1種又は複数の所望の種又は活性剤の固定された又は更新可能な供給源を提供するために、電気輸送装置の陽極又は陰極に電気的接続されている。
【0012】
本明細書で使用される用語「電気輸送」は概括的に、送達される活性剤が完全に荷電されていても(すなわち100%イオン化されている)、完全に非荷電でも又は一部荷電されており、一部非荷電でも、治療剤の電気的に補助される送達を意味する。電気移動(electromigration)、電気浸透(electroosmosis)、電気穿孔(electroporation)又はそれらの任意の組み合わせが治療剤又はそれらの種を送達することができる。電気浸透は概して、治療剤のレザボアに対する起電力の適用の結果として、治療剤がその中に含有される液体溶媒の移動からもたらされる。電気穿孔は皮膚に電流を適用する時に起る一過性に存在する孔の形成を伴う。
【0013】
経口送達のような、より一般的な物質の投与経路により遭遇される問題のために、抗凝固剤のような物質の経皮的電気輸送送達は特に興味深い。イオン的に荷電した抗凝固剤は皮膚を通って低い透過性を示すことが期待される。しかし、このような化合物はイオン導入電気輸送により有効に送達することができる。
【0014】
1種の重要な抗凝固剤の群は因子Xaインヒビターとして特徴付けることができる。血栓塞栓疾患は血液凝固過程の不適切な機能により惹起される。血栓はセリン・プロテアーゼのチモーゲン活性化カスケードにより形成され、カスケードの最後のプロテアーゼ、トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに転化させ、それが架橋して血栓を形成する。トロンビンのその前駆体からの形成はプロトロンビナーゼ錯体の形成により増幅される。プロテアーゼ因子Xaは、それがプロトロンビンの限定された蛋白分解によりトロンビンの生成を活性化するので、凝固カスケードにおいて重要な機能を有する。従って、因子Xaは血液の最後の共通の(common)経路における内因性及び外因性活性化機序を結合する中心的位置を保持し、因子Xaの1分子がトロンビンの有意な数の分子を生成する。その結果、因子Xaは抗血栓物質又は抗凝固剤の開発の魅力的な標的として出現し、トロンビン阻害よりずっと効果的な可能性のある調節手段を提供した。
【0015】
ベンズアミジン誘導体の因子Xaインヒビターの適切なクラスは特許文献4に開示されている(特許文献4参照)。関連文献の、特許文献5はこれらのタイプの抗凝固剤に関連し、イオン導入法を使用してインビトロ送達を実証している(特許文献5参照)。開示された抗凝固剤の適切性にも拘わらず、文献はインビボの治療的に有効な血漿濃度を維持するためのこのような治療剤の経皮送達に関連しない。該文献は物質の適量を送達することができる電気輸送条件を示唆しておらずまた、代わりの適切な電気輸送条件をも開示していない。
【0016】
抗凝固剤と関連する重大な危険性は異常出血の危険性である。抗凝固剤の過剰投与は血液の希薄化のために出血をもたらす可能性があり、抗凝固剤の投与不足は状態に対処せず、血栓症をもたらす可能性があるので、用量の正確な調節を維持することが重要である。これらの困難は因子Xaインヒビターを包含する抗凝固剤の特徴的に低い生物学的利用能及び変動する経口吸収により増幅される。
【0017】
従って、抗凝固剤を経皮的に送達するシステム及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
正確な用量調節を提供する抗凝固剤を経皮的に送達するシステム及び方法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0019】
経口送達に伴う欠点を回避しながら、抗凝固剤の特定の血漿濃度を提供することが本発明の更にもう1つの目的である。
【0020】
抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持するための経皮的物質送達装置及び方法を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0021】
治療的に適切なレベルを表わす血漿濃度を生成するように抗凝固剤の束密度を改変するように容易に調整することができる経皮的物質送達装置及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0022】
使用者の最少の介入により抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を送達するように設定された経皮的物質送達装置及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0023】
代わり電気輸送条件を提供する経皮的抗凝固剤送達装置を提供することが本発明の更なる目的である。
【特許文献1】Jacobsen,米国特許第4,250,878号明細書
【特許文献2】Drdlic,米国特許第4,382,529号明細書
【特許文献3】Sanderson et al.、米国特許第4,722,726号明細書
【特許文献4】特願2003−002832号明細書
【特許文献5】国際公開第2002089803号パンフレット
【発明の開示】
【0024】
前記の目的及び以下に述べられ、そして明白になるであろう事項に従うと、本発明は電気輸送により抗凝固剤を経皮的に送達するための装置を含んでなり、ここで該装置は供与電極、電気輸送により送達される形態の抗凝固剤の供給源を有する供与レザボア、カウンター電極、電源及び電気輸送電流を制御するための制御回路を含んでなり、ここで調整回
路は抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定された電気輸送条件を実施することができる。
【0025】
本発明の実施に有用な抗凝固剤は好ましくは、ベンズアミジン誘導体を含んでなる。特に好ましいベンズアミジン誘導体は図3に示される本明細書で「化合物1」と呼ばれる2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体を含んでなる。他の適切なベンズアミジン誘導体は:N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−「4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸並びに薬理学的に許容できるそれらの塩、を含んでなる。あるいはまた、抗凝固剤はナフトアミジン誘導体であることができる。
【0026】
本発明の好ましい態様は約20〜80ng/mLの範囲内の抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定された制御回路を利用する。
【0027】
更なる態様において、制御は約0.5〜70mg/日の範囲内、より好ましくは約10〜50mg/日の範囲内、更により好ましくは約20〜40mg/日の範囲内の抗凝固剤の目標用量を送達するように設定されている。
【0028】
本発明のもう1つの態様において、制御は約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている。好ましい電流密度は約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内にある。
【0029】
本発明の他の態様において、供与電極は約5〜20cm2の範囲内の面積を有する。
【0030】
本発明の方法及びシステムは静脈内注入により維持される血漿濃度に実質的に等しい抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持することができる。
【0031】
本発明の装置は直流、交流、又は時間変動オン・オフ電気輸送条件を送達するように設定することができる。
【0032】
本発明のもう1つのアスペクトにおいて、電気輸送装置は更に、制御装置が血液凝固時間モニターからの信号に反応して電気輸送条件を実施するように構成されている血液凝固時間モニターを含んでなる。
【0033】
本発明は更に、有効量の該抗凝固剤を電気輸送により経皮的に送達する段階を含んでなる、抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持するための方法を含んでなる。抗凝固剤はベンズアミジン又はナフトアミジン誘導体を含んでなることができる。抗凝固剤は好ましくは、化合物1を含んでなる。
【0034】
該方法はより好ましくは、有効量の化合物1を経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の化合物1の血漿濃度を維持する。
【0035】
電気輸送条件はまた好ましくは、約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を適用する方法を含んでなる。電流密度はより好ましくは、約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内にある。
【0036】
本発明の前記の態様において、化合物1を経皮的に送達する段階は約0.5〜70mg/日、より好ましくは約10〜50mg/日、更により好ましくは20〜40mg/日の範囲内の化合物1を送達する段階を含んでなる。前記の化合物1の送達は好ましくは、約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の、そしてより好ましくは、約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内の電流密度を適用することにより達成される。
【0037】
本発明の方法は直流、パルス電流、交互逆極性電流及び時間変動オン・オフ電流を適用することを含んでなる電気輸送条件の使用を含んでなることができる。
【0038】
本発明の方法は更に、血液凝固時間モニターを提供し、血液凝固時間モニターからの信号を使用して、有効量の抗凝固剤を電気輸送することにより経皮的に送達する段階のための電気輸送条件を調整する方法を含んでなることができる。
【0039】
本発明の方法はまた、前以て決定された用量の抗凝固剤を電気輸送により経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の血漿濃度を維持することにより患者の因子Xaを阻害する方法を含んでなる。抗凝固剤は好ましくは、化合物1を含んでなる。
【0040】
本発明の方法は更に、前以て決定された用量の化合物1を電気輸送により経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の血漿濃度を維持することにより、患者の血栓塞栓疾患の危険性を減少させる方法を含んでなる。
【0041】
更なる特徴物及び利点は、付記の図面に示されるように、そして類似の参考文字が概括的に図面全体の同一部品又は要素を表わす、本発明の好ましい態様の以下の、そしてより特定の説明から明白になるであろう。
【0042】
発明の詳細な記述
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特に例示された物質、方法又は構造物に限定されず、従ってもちろん変動することができることを理解しなければならない。従って、本明細書に記載されたものと類似の又は同等な多数の物質及び方法を本発明の実施に使用することができるが、好ましい物質及び方法が本明細書に記載される。
【0043】
本明細書で使用される用語は本発明の特定の態様を説明する目的のみのためであり、限定することは意図されないことも理解しなければならない。
【0044】
本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、特記されない限り、本発明が関与する当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0045】
更に、本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願物は上記又は下記にかかわらず、それらをそのまま引用により本明細書の内容になる。
【0046】
最後に、本明細書及び添付の請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」及び「the」は内容が明白にその反対を表わさない限り、複数の対象を包含する。従って、例えば「an active agent(活性剤)」の言及は2種以上のこのような物質を包含し、「a microprojection(ミクロプロジェクション)」の言及は2種以上のこのようなミクロプロジェクションを包含する、等である。
【0047】
定義
本明細書で使用される用語「経皮送達」は局所又は全身治療のための皮膚中へのそして/又は皮膚を通る物質の送達を意味する。
【0048】
本明細書で使用される用語「経皮的束密度」は経皮送達の速度を意味する。
【0049】
本明細書で使用される用語「抗凝固剤」は用語「抗血栓剤」と互換可能にそして同義に使用することができる。これらの用語は凝固過程を阻害するか又はそれと競合する任意の組成物に適用される。好ましい抗凝固剤の群は因子Xaを阻害するベンズアミジン誘導体を含んでなる。「化合物1」と呼ばれる好ましい2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体は本発明の実施に特に適する(図3参照)。当該技術分野で周知のように、前記ベンズアミジン誘導体は約500〜600ダルトンのような比較的低い分子量を有する合成カチオン物質を含んでなる。適した抗凝固剤のもう1つの群はナフトアミジン誘導体を含んでなる。
【0050】
前記の抗凝固剤はまた、遊離塩基、酸、荷電又は非荷電分子、分子錯体の成分あるいは非刺激性の薬理学的に許容できる塩、のような種々の形態にあることができる。更に、身体のpH、酵素、等において容易に加水分解される活性剤の単純な誘導体(エーテル、エステル、アミド、等のような)を使用することができる。
【0051】
1種より多くの抗凝固剤を本発明の抗凝固剤源又はレザボア中に取り入れることができ、そして用語「剤」の使用は2種以上のこのような活性剤の使用を全く排除しないことを理解しなければならない。
【0052】
用語「生物学的有効量」又は「生物学的有効速度」は生物学的活性物質が製薬学的に活性剤であり、そして所望の治療的、しばしば有益な結果を実施するために必要な薬理学的活性剤の量又は速度を表わす時に使用されることとする。好ましい態様において、これは血栓症又は他の血栓塞栓疾患又は状態の危険の治療的に有意な軽減を含んでなる。本発明の剤の調製物中に使用される活性剤の量は所望の治療的結果を達成するための治療的有効量の抗凝固剤を送達するために必要な量であろう。実際的に、これは、送達されている特定の薬理学的活性剤、送達部位、処置されている状態の重篤度、所望の治療効果及びコーテイングから皮膚組織中への物質の送達のための分解及び放出動力学に応じて広範に変動するであろう。
【0053】
本明細書で使用される用語「電気輸送」は概括的に、送達又は抽出が少なくとも一部は電位の印加により誘導又は補助される場合の、体表(皮膚、粘膜又は爪のような)を通る治療剤(荷電した、非荷電の、又はそれらの混合物)の送達又は抽出を意味する。当該技術分野で周知のように、広範に使用される電気輸送法の電気移動(イオン電気導入とも呼ばれる)は体表を通る荷電イオン(例えば、活性剤のイオン)の電気的に誘導される輸送を伴う。電気浸透法と呼ばれるもう1つのタイプの電気輸送は適用電界の影響下での液体の経体表的(例えば、経皮的)束密度を伴う。
【0054】
1種の広範に使用される電気輸送法のイオン電気導入は荷電イオンの電気誘導輸送を伴う。非荷電又は中性に荷電した分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的試料採取)に関与されるもう1つのタイプの電気輸送法の電気浸透法は電界の影響下の膜を通る、物質を含む溶媒の移動を伴う。本明細書で使用される用語「電界穿孔法」は概括的に、細胞を強電界に短時間、暴露すると、生物学的膜を一過性に不安定化することができることを認識する。この効果はまた、「電気透過可能化」とも呼ばれる。
【0055】
多数の場合に、2種以上の前記の過程が異なる程度に同時に起っているかも知れない。従って、本明細書においては、用語「電気輸送」は活性剤が実際に輸送されている特定の1種又は複数の機序にかかわらず、少なくとも1種の荷電又は非荷電剤又はそれらの混合物の電気的に誘導又は促進された輸送を包含するためのそのもっとも広範な可能な解釈を与えられる。
【0056】
前記のように、本発明は患者に抗凝固剤を経皮的に送達するための装置及びシステムを含んでなる。システムは概括的に、能動電極及び供与電極及び電極に電気信号を供給するための電気回路を包含する。更に、少なくとも一方の電極に近接して抗凝固剤源が提供される。
【0057】
今度は本発明に従って使用することができる代表的電気輸送装置を表わす図1を参照する。図1は押しボタンスイッチ12の形態の起動スイッチ及び発光ダイオード(LED)の形態の表示装置14を有する電気輸送装置10の斜視分解図を示す。装置10は上部ハウジング16、回路基板アセンブリー18、下部ハウジング20、陽極電極22、陰極電極24、陽極レザボア26、陰極レザボア28及び皮膚適合性接着体30を含んでなる。上部ハウジング16は患者の皮膚上に装置10を保持するように補助をする側部ウイング15を有する。上部ハウジング16は好ましくは、射出成形エラストマー(例えば、エチレンビニルアセテート)からなる。印刷回路基板アセンブリー18は別々の電気部品40及び電池32に接続された集積回路19を含んでなる。回路基板アセンブリー18は開口部13a及び13bを通過する柱(図1には示されていない)によりハウジング16に結合されており、ここで柱の末端はハウジング16に回路基板アセンブリー18を固定するために加熱/融解されている。下部ハウジング20は接着体30により上部ハウジング16に取り付けられ、ここで接着体30の上面34は下部ハウジング20及び、ウイング15の底面を包含する上部ハウジング16双方に接着されている。
【0058】
回路基板アセンブリー18の下側には電池32、好ましくはボタンセル電池そしてもっとも好ましくはリチウムセルが示されている(一部)。他のタイプの電池も装置10に動力を与えるために使用することができる。
【0059】
回路基板アセンブリー18の回路出力装置(図1には示されていない)は電気伝導性接着性ストリップ42、42’により下部ハウジング中に形成された凹み25、25’中の開口部23、23’を通る電極24及び22と電気的に接触する。電極22及び24は順次、レザボア26、28の上面44’、44と直接の機械的及び電気的接触をする。レザボア26、28の底面46’、46は接着体30の開口部29’、29を通して患者の皮膚を接する。押しボタンスイッチ12を押すと、回路基板アセンブリー18上の電気回路が、前以て決定された期間、例えば、約10分間の送達期間中、電極/レザボア22、26及び24、28に前以て決定されたDC電流を送達する。好ましくは、装置は使用者に物質送達又はボーラスの開始の視覚的及び/又は聴覚的確認、点灯するLED14による間隔及び/又は例えば「ビーパー」からの聞こえる音信号を伝達する。
【0060】
陽極電極22及び/又は陰極電極24は好ましくは、銀及び/又は塩化銀又は任意の適切な電気伝導性物質からなることができ、そしてレザボア26及び28は双方とも好ましくは、下記のポリマー物質からなる。電極22、24及びレザボア26、28は下部ハウジング20により保持される。アニオンの生物学的活性剤に対しては、陰極レザボア28が、活性剤を含有する「供与」レザボアであり、そして陽極レザボア26が、生物学的適合性調製物を含有する。当業者は陰極の生物学的活性剤によりレザボア26、28が逆転される(reverse)ことを容易に認めるであろう。
【0061】
イオン電気導入送達装置10の活性剤レザボア26及び復帰レザボア28は活性剤をイオン電気導入により送達するために患者と物質輸送関係に配置されなければならない。通常これは、装置が患者の皮膚と密接に接して配置されることを意味する。ヒトの身体上の種々の部位を、医師又は患者の好み、物質の送達計画又は美容のような他の因子に応じて選択することができる。
【0062】
供与及びカウンター電極22及び24はそれぞれ、供与レザボア26及びカウンター活性剤レザボア28に接して配置される。供与レザボア26は送達される活性剤を含有し、他方カウンターレザボア28は典型的に生物学的適合の電気分解塩を含有する。供与レザボア26及び場合によるカウンター活性剤レザボア28は、電気輸送によりそこを通る活性剤の輸送を許すために、その中に十分量の液体を吸収し保持するようになっている任意の活性剤であることができる。例えば、天然及び合成双方の木綿又は他の吸収性布地からなる、ガーゼ、パッド又はスポンジを使用することができる。
【0063】
より好ましくは、レザボア26及び28のマトリックスは少なくとも一部は親水性ポリマー物質からなる。水は好ましいイオン輸送媒質であり、親水性ポリマーは比較的高い平衡水分含量を有するので、親水性ポリマーが好ましい。もっとも好ましくは、レザボア26及び28のマトリックスは少なくとも一部は不溶性親水性ポリマーからなる固形ポリマーマトリックスである。不溶性親水性ポリマーマトリックスは構造的理由のために可溶性親水性ポリマーよりも好ましい。
【0064】
マトリックスはシラスチック(silastic)マトリックスのような物質の定位置の成分と架橋させるか又はセルロース、織物の繊維パッド及びスポンジの場合のようにポリマーを前以て加工して、溶液から成分を吸収させることができる。物質のレザボア26及び28は交互に、ゲルが水中で膨潤性又は可溶性である親水性ポリマーで形成されている、ポリマーマトリックス構造に類似して形成されたゲルマトリックス構造物であることができる。このようなポリマーは任意の比率で成分と混合することができるが好ましくは、数%から約50重量%までのレザボアを表わすことができる。ポリマーは線状でも架橋していてもよい。適切な親水性ポリマーは、HYTREL(DuPont De Nemours & Co.,Wilmingtn,Del)のようなコポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、POLYOX(Union Caribide Corp.)、CARBOPOL(BF Goodrich of Akron,Ohio)のようなポリエチレンオキシド、CARBOPOLとブレンドされたPOLYOXのようなポリオキシエチレン又はポリエチレングリコールのポリアクリル酸とのブレンド、ポリアクリルアミド、KLUCEL、SEPHADES(Pharmacia Fine Chemicals,AB,Uppsala,Sweden)のような架橋デキストラン、デンプン−グラフト−ポリ(ナトリウムアクリレート−コ−アクリルアミド)ポリマーであるWATER LOCK(Grain Processing Corp.,Muscatine,Iowa)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び架橋Na−カルボキシメチルセルロース(例えば、Ac−Di−Sol(FMC Corp.,Philadelphia,Pa))のようなセルロース誘導体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(National Patent Development Corp.)のようなヒドロゲル、天然ゴム、キトサン、ペクチン、デンプン、グアガム、イナゴマメガム、等並びにそれらのブレンドを包含する。前記のリストは単に本発明における使用に適した物質の代表である。他の適した親水性ポリマーはその関連部分が引用により本明細書に取り込まれているScott,J.R.,& Roff,W.J.,Handbook of Common Polymers,CRC Press(1971)に認めることができる。
【0065】
レザボア26及び28のマトリックスは場合により高められた構造的硬度のために疎水性ポリマーを含有することができる。疎水性ポリマーは好ましくは、隣接成分に対するレザボアの張り合わせを改善するために、熱融解性である。レザボアマトリックス中への使用に適した疎水性ポリマーはそれらに限定はされないが、単独であるいは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、イタコン酸、N−分枝アルキルマレイン酸(ここでアルキル基は10〜24個の炭素原子を有する)、グリコールジアクリレートのような、エチレンによる不飽和モノマーと共重合されたポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン及びポリアルケン、ゴム、KRATONのようなコポリマー、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート・コポリマー、ナイロンのようなポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、アクリル又はメタクリル酸の、n−ブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノールのようなアルコールとのエステルのポリマーのようなアクリル又はメタクリル樹脂、並びにそれらのブレンド、を包含する。前記の疎水性ポリマーは大部分熱融解性である。
【0066】
レザボアのマトリックスは溶融混合、溶液流延法又は押しだし法のような方法により、所望の物質、電解質あるいは1種又は複数の他の成分を不活性ポリマーとブレンドすることにより形成されるポリマーマトリックス構造物であることができる。
【0067】
本発明に従うカウンターレザボア28は1種又は複数の以下の電解質:NaClのようなアルカリ金属塩;塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩及びリン酸塩のようなアルカリ土類金属塩;アスコルビン酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩のような有機塩;銅イオン、鉄イオン、キノン、ヒドロキノン、銀イオン、及びIOイオンのような酸化還元物質を含有する電解質;並びに他の生物学的適合の塩及びバッファーを含有することができる。塩化ナトリウムはカウンターレザボア28に対する好ましい電解質塩である。
【0068】
送達される物質及び電解質に加えて、レザボア26及び28は更に、染料、顔料、不活性充填剤、等のような他の通常の物質を含有することができる。
【0069】
電極に適した金属の例はそれらに限定はされないが、銀、亜鉛、塩化銀、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金及びチタンを包含する。もっとも好ましくは、陽極電極は銀からなり、他方陰極電極は塩化銀からなる。銀はヒトに対するその比較的低い毒性のために陽極として他の金属より好ましい。塩化銀は塩化銀の還元が人体に内在する塩化物イオンを生成するために、陰極物質として好ましい。
【0070】
概括的に、電極アセンブリーの皮膚接触総面積は約1〜200cm2の範囲内にあるが、典型的には約5〜50cm2の範囲内にあるであろう。
【0071】
好ましい態様において、押しボタンスイッチ12、回路基板アセンブリー上の電気回路
18及び電池32は上部ハウジング16と下部ハウジング20の間に接着剤で「シール」される。上部ハウジング16は好ましくは、ゴム又は他の弾性物質からなる。下部ハウジング20は好ましくは、凹み25、25’を形成するために容易に成形され、開口部23、23’を形成するために切り抜くことができるプラスチック又はエラストマーシート物質(例えば、ポリエチレン)からなる。集成された装置10は好ましくは、耐水性(すなわち撥水防止性)で、もっとも好ましくは、防水性である。
【0072】
システムは身体に容易に適合し、それにより装着部位における、又はその周辺の運動の自由を許す、低いプロファイルを有する。
【0073】
陽極/物質レザボア26及び陰極/塩レザボア28は装置10の皮膚接触側上に配置され、通常の取り扱い及び使用期間中の突発的な電気短絡を防止するように十分に隔離されている。
【0074】
好ましい態様において、装置10は上面34及び身体接触面(図示されていない)を有する末端接着体30により患者の体表に付着する。接着体面36は装置10が通常の使用者の活動中には身体上に固定されて止まり、しかし、前以て決められた装着期間(例えば、24時間)後には容易に外させることを確保する接着性を有する。上部接着体面34は下部ハウジング20に接着して、電極及び、ハウジングの凹み25、25’内の物質レザボアを保持し、並びに上部ハウジング16に結合された下部ハウジング20を保持する。
【0075】
押しボタンスイッチ12は好ましくは、装置10の上面上に配置され、衣類を通して容易に起動される。スイッチの起動時に、本明細書に記載のような経皮的輸送を容易にするように設定された第1の電気信号又はこれも本明細書に記載されたような細胞内輸送を促進するように設定された第2の電気信号を起動することができる。あるいはまた、操作を自動化することができる。
【0076】
電気輸送の1つの態様において、聞こえる警報が、その時点で、回路が前以て決めた送達間隔に電極/レザボアに対し前以て決めたレベルのDC電流を供給する、物質送達の開始を知らせる。LED14は装置10が活性剤の送達モードにあることを示す、送達間隔期間中「オン」に止まる。電池は好ましくは、全装着期間中(例えば、24時間)、前以て決めたレベルのDC電流で、装置10に連続的に動力を送るために十分な容量を有する。
【0077】
前記のように、本発明のシステム及び方法を使用する経皮送達のための好ましい物質は凝固過程を阻害するか又はそれと競合する抗凝固剤又は抗血栓剤を含んでなる。物質の好ましい群は因子Xaを阻害するベンズアミジン誘導体である。適した化合物は、対称的に配置され、適当な長さの他の部分を含有するスペーサーにより分離された図6に示される2種の基礎的(basic)ベンズアミジン部分を示す。
【0078】
次に図3において、本明細書で「化合物1」と呼ばれる代表的な合成誘導体、2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体が示される。化合物1は500〜600ダルトンの範囲内の分子量を有する合成カチオン物質である。
【0079】
本発明の他の態様において、概括的に図4に示される式
[式中、R1はH、ハロゲン原子、アルキル基又はOHであり、R2はH、ハロゲン原子又はアルキル基であり、R3はH、置換基をもってもよいアルキル基、アラルキル基、置換基をもってもよいアルカノイル基又は置換基をもってもよいアルキルスルホニル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に、H、ハロゲン原子、置換基をもってもよいアルキル
基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基又は置換基をもってもよいカルバモイル基であり、そしてR6は置換ピロリジン又は置換ピペリジンである]
により表される同様なベンズアミジン誘導体又は薬理学的に許容できるそれらの塩を使用することができる。
【0080】
好ましい態様において、R1はH、ハロゲン原子、C1−6アルキル基又はOHであり、R2はH、ハロゲン原子又はC1−6アルキル基であり、R3はH、OH、CO2Hで置換されていてもよいC1−6アルキル基、C1−6アルコキシカルボニル、(CH2)nCO(CH2)mCO2R7(ここでR7はC1−6アルキルであり、そしてm及びnはそれぞれ独立に1〜6である)、C7−15アラルキル、C1−6アルカノイル、C2−6ヒドロキシアルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシ−カルボニル、カルボキシル−C1−6アルキルスルホニルであり、R4及びR5はそれぞれ独立に、H、ハロゲン原子、C1−6(ハロゲン)アルキル、C1−6アルコキシ、CO2H、C1−6アルコキシ−カルボニル,CONH2、C1−6アルキル−カルバモイル及びジ(C1−6アルキル)カルバモイルであり、そしてR6は1−アセトイミドイルピロリジン−3−イル又は1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルである。特に好ましい化合物はN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸2塩酸(図5参照)を含んでなる。
【0081】
本発明に従うと、化合物1に類似した、図5に示した一般式
[式中、R1は水素、ハロゲン、アルキル又はヒドロキシを表わし、R2は水素、ハロゲン、又はアルキルを表わし、R3は水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、又は場合により置換されていてもよいアルキルスルホニルを表わし、R4及びR5は同一でも異なってもよく、そしてそれぞれ、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、又は場合により置換されていてもよいカルバモイルを表わし、R6は水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルバモイル、アルキルスルホニル、アリール、等を表わし、R7及びR8は同一でも異なってもよく、そしてそれぞれ水素、アルキル等を表わし、そしてnは0、1又は2である]
を有する他の適切なベンズアミジン誘導体(及び薬理学的に許容できるそれらの塩)又は誘導体の薬理学的に許容できる塩を使用することができる。好ましい態様において、R1は水素、ハロゲン、アルキル又はヒドロキシを表わし、R2は水素、ハロゲン又はC1−6アルキルを表わし、R3は水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−7カルボキシアルキル、C3−13アルコキシカルボニルアルキル、C7−16アラルキル、C2−7脂肪族アシル、C2−7ヒドロキシ−脂肪族アシル、C1−6アルキルスルホニル、C30−13アルコキシカルボニルアルキルスルホニル、C2−7カルボキシアルキルスルホニル又はC3−8カルボキシアルキルカルボニルを表わし、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アルコキシ、CO2H、C2−7アルコキシカルボニル、CONH2、C2−7モノアルキル又はC3−13ジアルキルカルバモイルを表わし、R6は水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C7−16アラルキル、ヘテロシクリル−C1−6アルキル、C2−7カルボキシアルキル、C3−13アルコキシカルボニルアルキル、C2−7脂肪族アシル、C7−11芳香族アシル、CONH2、C1−6アルキルスルホニル、C6−10アリール、ヘテロシクリル、フォルムイミドイル、C2−7 1−イミノアルキル、C2−7N−アルキルホルムイミドイル又はC7−11イミノアリールメチルを表わし、そしてR7及びR8はそれぞれ独立に、水素、C1−6アルキルを表わすかあるいは、R6、R7及びR8が一緒になってC2−5アルキレンを表わし、そしてnは0、1又は2である。
【0082】
好ましい態様において、前記の組成物はN−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸2塩酸を含んでなる。それは、[N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]−N−[3−カルバモイル−4(ピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]スルファモイル]酢酸Etエステルの溶液(20mLのエタノール中)に0.39gのEtアセトイミデート塩酸及び0.87mLのEt3Nを添加し、室温で6時間撹拌することにより調製すると、75%のN−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]フェニルスルファモイル]酢酸Etエステル2塩酸を与え(0.64g)、それを20mLの3NのHCL水溶液に溶解し、80℃で2時間加熱することができる。
【0083】
他の適切なベンズアミジン誘導体又は薬理学的に許容できるそれらの塩は、N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−「4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸を包含する。
【0084】
本発明を実施するために有用な多数の他の因子Xaインヒビターが存在する。例えば、図6に示した化合物はスイスのBaselのPentapharm Ltd.により開発された。前記の化合物、ベンズアミジン誘導体の因子Xaインヒビターは因子Xaに高い親和性を有することが示された第1の非ペプチド化合物である。
【0085】
もう1つの例は図7に示した化合物で、Daiichi Pharmaceuticalsにより開発された因子Xaインヒビターである。図7に示されるように、前記の化合物はベンズアミジン基ではなく、ナフトアミジン基を含有する。化合物はまた、因子Xaの選択性に必須であることが確定された遊離カルボン酸基を有する。カルボン酸は対応するメチルエステルに比較して約100倍も、因子Xaの選択性を増加することが見いだされた。
【0086】
DX−9065a化合物と化合物1間には幾つかの重要な類似性が存在する。特にそれらは双方とも、化合物の活性を増加するように見えるカルボン酸基を有する。双方の化合物はまた、官能基とアセトアミドール基を連結するオキシ橋を有する。
【0087】
更に適切な因子Xaインヒビターは図8に示される「化合物2」及び図9に示される「化合物3」を包含する。もう1つの適切な因子XaインヒビターはYM−60828を含んでなり、それは[N−[4−(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)−オキシ)フェニル)−N−(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]−酢酸を含んでなり、DX−9065aに構造的に類似しており、Sato,et al.,Antithrombotic Effects of YM−60828,A Newly Synthesized Factor Xa Inhibitor,in Rat Thrombosis Models and its Effects on Bleeding Time,Br.J.Pharmacol,vol.123:92−6(1998)に詳細に示され、考察されており、その関連部分は本明細書に引用により取り入れられている。
【0088】
ベンズアミジン誘導体の更に他の例は図10〜16に示され、それらはカルボン酸基を有するビスベンズアミジン誘導体のDupont−Merck合成シリーズである。
【0089】
前記のように、本発明の電気輸送態様は身体の皮膚、爪、粘膜又は他の表面のどこかの部分と電気的に接触している少なくとも2個の電極を使用する。一般に「供与」電極と呼ばれる一方の電極はそこから治療剤が身体中に送達される電極である。典型的に「カウンター」電極と呼ばれる他方の電極は身体中の電気回路を閉鎖する役割をもつ。
【0090】
更に、電気輸送送達システムは概括的に身体に送達されるべき治療剤の少なくとも1種のレザボア又は供給源を要する。このような供与レザボアの例はポーチ又は空洞、多孔質のスポンジ又はパッド及び親水性ポリマー又はゲルマトリックスを包含する。このような供与レザボアは1種又は複数の治療剤の固定された又は更新可能な供給源を提供するために、陽極又は陰極と体表に電気的に接続又はそれらの間に配置される。
【0091】
前記のように、電気輸送装置は1個又は複数の電池のような電源により動力を供給される。典型的には任意の1時点において、電源の1本のポールが供与電極に電気的に接続され、他方、反対のポールは対電極に電気的に接続される。電気輸送の物質送達の速度は装置により適用される電流にほぼ比例することが示されているので、多数の電気輸送装置は典型的に電極により適用される電圧及び/又は電流を制御し、それにより物質の送達速度を調節する電気制御装置を有する。これらの制御回路は電源により供給される電流及び/又は電圧の電気信号、すなわち振幅、極性、タイミング、波形、等を制御するための種々の電装品を使用する。引用によりそっくり本明細書に取り込まれている、McNichols等に対する米国特許第5,047,007号明細書は幾つかの適切なパラメーター及び特徴を開示している。
【0092】
とりわけ、2個の電極間に適用された直流の使用は本発明のもっとも直接的な適用を表わす。一定の直流信号の使用は典型的には、適用電流密度と抗凝固剤の束密度間の極めて直線状の相関を与える。
【0093】
前記のように、抗凝固剤の正確な用量を維持することは重要である。用量不足は凝固経路の必要な抑制を与えず、血栓症又は他の血栓閉塞状態の危険性を増大する。それに対し、過剰投与は凝固過程の妨害により、望ましくない又は制御不可能な出血の危険性を増大する。
【0094】
適切な抗凝固剤の束密度は適切な電気輸送条件を選択することにより達成することができる。図17に示すように、本発明の電気輸送システム及び本発明の方法は適用電流とインビトロの定常状態の物質の束密度間の正確な相関をもたらす。このデ−タは陽極における銀の供与電極及び陰極における塩化銀の対電極による化合物1の経皮送達を使用して得られた。図示されるように、約1.1mg/mA時間のインビトロの輸送効率をもつ定常状態の束密度に対する適用電流の数字間に直線状の相関が存在する。試験は熱分離されたヒトの表皮上で実施した。
【0095】
化合物1に関して、血漿濃度の有用な治療的範囲は約20〜80ng/mLの範囲内にある。適用電流と物質の束密度間の直線状の相関を与えられるので、当業者は治療的用量を達成するための適切な電気輸送条件を選択することができる。表1は0.05mA/cm2の操作電流密度における化合物1の治療的用量を提供するために適した電気輸送条件の範囲を提供する。本発明の経皮的電気輸送は低い経口生物学的利用能、変動する経口吸収、胃腸の分解又は肝臓の第1次通過効果のような、経口送達に伴う欠点を回避する。
【0096】
【表1】
【0097】
図17に認められるインビトロの相関は更に、無毛モルモットにおける一次皮膚刺激(PSI)及びブタにおける薬理学的−動力学(PK)を含んでなるインビボの研究における残留化合物1の抽出により支持される。デ−タは表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
次に図18において、インビトロ及びインビボの相関の更なる証拠が示される。特にインビボの実験からのデ−タはインビトロの電気輸送実験に匹敵する。図から見られるように、より低い0.050mA/cm2電流密度において、バッファー化合物1調製物のインビボのPSI及びインビトロの皮膚束密度の比較は同様な定常状態の束密度プロファイルをもたらす。同様な結果がより高い0.10mA/cm2電流密度のインビボのPK/PD及びインビトロの皮膚束密度−非バッファー調製物のデ−タで得られることが示される。
【0100】
化合物1の治療的血漿濃度を維持するための本発明のシステム及び方法の能力の更にもう1つの証明は図19に示される。示されるデ−タは通常の一定の静脈注入に対するインビボの電気輸送の比較を表わす。特にYorkshireブタは化合物1のヒドロゲル調製物と連絡した10cm2の電極又は1mg/時間の化合物1の静脈注入のいずれかで処置した。図から見られるように、電気輸送法は通常の静脈注入と本質的に同レベルの血漿濃度を維持することができる。これは、前記のように、有効な抗凝固剤投与に重要な、詳細で正確な用量を送達するための本発明の方法及びシステムの適切性を示す。
【0101】
これらの研究期間中、一次刺激インデックス(PII)デ−タを得た。このデ−タは表
3に示され、無毛モルモットにおける化合物1の適用24時間後の陽極部位におけるPIIの標準値を表わす。図から見られるように、0.050mA/cm2及び0.10mA/cm2双方における刺激は軽度と評価された。これは化合物1の治療的血漿濃度を維持するのに適する電気輸送条件が著しい不快感を誘起せず、患者が許容できることを期待することができることを示す。
【0102】
【表3】
【0103】
前記のデ−タは0.050mA/cm2及び0.10mA/cm2電気輸送条件における直流送達は有意な皮膚刺激を誘発しないことを示すが、所望される場合は、代わりの電気輸送条件を使用することができる。例えば、単一部位における長期の直流送達が望ましくない場合は、皮膚刺激を防止又は最少にするために、パルス電流、交互逆極性又は時間変動オン・オフ電流パターンが適切であるかも知れない。本発明の電気輸送送達装置は多数の機能を実施するために任意の適した電気回路を使用することができる。これらの複雑な回路はパルス電流を送達するためのパルス回路、前以て決められたタイミング及び投与計画に対して物質を送達するための時限回路、感知された物理的パラメーターに応答して物質を送達するためのフィードバック調節回路並びに電極の極性を周期的に逆転するための極性調節回路を包含する。例えば、Tapper等の米国特許第4,340,047号、Lattinの米国特許第4,456,012号,Jacobsenの米国特許第4,141,359号及びLattin等の米国特許第4,406,658号明細書を参照されたい。
【0104】
従って、本発明の幾つかの態様はパルス(方形波)電流を適切に使用することができる。負荷サイクルは1サイクルの時間に対する「オン」時間の比率(すなわち、パルス期間に対するパルス幅時間の比率)であり、通常、パーセントとして表わす。例えば、装置が1secサイクルの500ms間「オン」である場合は、装置は50%負荷サイクルで操作している。このような態様において、生成される負荷電流パターンはパルスの規模を変更するか又は負荷サイクルを変更することにより負荷電流に調整を実施する。例えば、0〜0.05mA/cm2の平均電流、10%の負荷サイクルパルスは0.005mA/cm2である。本態様の目的のためには、振動数は100Hz未満であると規定される。前記の平均電流を2倍にすることは10%に負荷サイクルを一定に維持しながら0〜0.1mA/cm2に負荷電流を増加するか又は0〜0.05mA/cm2に負荷電流を維持しながら、20%に負荷サイクルを2倍にすることにより達成される。(これらの相関は概算であることに注意されたい)。当該技術分野で周知のように、別の場合に、調整された電流が使用される場合は、負荷電流は波形の形態を変更することにより変更することができる。特に必要時の送達適用時に、所望の活性剤送達速度を提供するためには、電流適用の総合時間もまた調整されることができると考えられる。
【0105】
従って、パルスの負荷サイクルを改変すると、送達される活性剤の量を増加又は減少させる。本発明のこの実施において、電流パルスの数字は活性剤がそこから送達される表面の既知の面積を考慮して選択され、それにより固定された既知の電流密度(すなわちそこ
から電流が流れる面積に対する電流の比率)を規定する。図20に示すように、75%(上部の波形)、50%(中間の波形)及び25%(下の波形)の負荷サイクルをもつ、同一振動数の3種の異なるパルスの電気輸送電流の波形が示される。従って25%負荷サイクルの波形は50%の負荷サイクルの波形の投与レベルの約1/2の、そして75%負荷サイクルの波形の投与レベルの約1/3の電気輸送により経皮的に活性剤を送達する。
【0106】
本明細書に引用によりそのまま取り込まれている米国特許第5,983,130号明細書に考察されたように、増加した活性剤の送達は身体の部位に臨界レベルを超えた電流密度を適用することにより達成することができる。与えられた陽極の表面積に対する特定の最大電流が前記の増加された効率の活性剤送達を提供するであろうことが決定された後に、負荷サイクルを増加又は減少することにより、最大の適用電流密度を変化させることなく、高い効率状態で送達される活性剤の量を増加又は減少させることができる。この方法を使用して電気輸送のパラメーターを選択する時に、生成される電流密度が皮膚を高効率輸送状態に転化させて、電流パルスの負荷サイクルを変更して、活性剤送達速度を調整するように電流パルスの振幅が選択される。あるいはまた、パルス電流の波形のパルス振動数を調整して、皮膚を高効率状態に転化させるレベルにおける又はそれより上の電流密度を維持しながら、送達される活性剤の全体量を制御する。
【0107】
電気輸送送達のもう1つの適切なタイプは交互の逆極性として特徴付けることができる。このようなシステムの1例は引用によりそのまま本明細書に取り入れられている、米国特許第4,406,658号明細書に開示されている。概括的に、より効率的な物質の輸送を許すであろう、より透過性状態に皮膚中の転換の引き金を引くためにイオン物質が使用される。当該技術分野で周知のように、このようなシステムは皮膚を高効率状態に転化させるのに要する時間に対して最初に供与レザボアからアニオン物質の対イオンを、そしてカウンターレザボアからカチオン性活性剤を駆動し、次に極性を逆転し、それにより物質のカチオンを皮膚中に移動すると考えられる。
【0108】
本発明の電気輸送経皮送達装置を所望の適用に適合するように設定することは望ましいかも知れない。例えば、病院又はクリニックにおける使用に設定された装置は豊富な用量レベルを送達することができる制御装置又は電流源からなることができる。従って、病院使用システムは抗凝固剤の所望の血漿濃度を獲得し、維持するための用量を滴定するために使用することができる。あるいはまた、患者による個人的な独立した使用に設定された装置は治療的に有効であると決定された1回量を送達しなければならない。理想的には、このようなシステムは最少の使用者の介入を要求するべきである。
【0109】
本発明のシステム及び方法はまた、閉鎖ループを形成するためにフィードバック法で使用することができる。特に、通常の血液凝固時間モニターと本発明の電気輸送装置を適合させることは、抗凝固剤の束密度を最適な抗凝固効果を維持するように制御させる。従って、本発明に従うと、血液凝固モニターからの情報を、抗凝固剤の束密度を変更するように電気輸送条件を自動的に調整し、そして従って治療的に所望されるレベルに抗凝固剤の血漿濃度を維持するために使用することができる。
【0110】
本発明の範囲から逸脱せずに、当業者は種々の用途及び条件にそれを適応させるように本発明に種々の変更及び修飾を実施することができる。従ってこれらの変更及び修飾は適切に、公平に、以下の請求の範囲の同等物の全範囲内にあり、そしてそれが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の装置の1つの態様の分解斜視図である。
【図2】ベンズアミジン部分の分子構造の図である。
【図3】本発明の実施に有用な、以後「化合物1」と呼ばれる2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体の分子構造の図である。
【図4−5】発明の実施に有用な更なるベンズアミジン誘導体の分子構造の図である。
【図6−16】本発明の実施に有用な他の抗凝固剤の分子構造の図である。
【図17】電流密度に対してインビトロの抗凝固剤の束密度を相関するグラフである。
【図18】種々の電流密度におけるインビボ及びインビトロの抗凝固剤の束密度を比較するグラフである。
【図19】静脈内注入に対して電気輸送インビボ送達(ET2)により維持される血漿濃度を比較するグラフである。
【図20】本発明のパルス電流の電気輸送条件を実施する時の有用な波形を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は概括的に電気輸送の物質送達に関し、そしてより具体的には抗凝固剤の経皮的電気輸送の物質送達に関する。特に、本発明は経皮送達によりベンズアミジン誘導体のような抗凝固剤の適切な血漿濃度を獲得し、維持する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的活性剤又は薬剤の経皮送達は皮下注射及び経口送達のような比較的伝統的送達方法に対して改良点を提供する。経皮的物質送達は狭い治療指数、短い半減期及び強力な活性をもつ活性剤に対して特に魅力的な投与経路である。
【0003】
経皮的物質送達は経口の活性剤の送達に伴って遭遇される肝臓の第1次通過効果及び胃腸の分解を回避する。経皮的物質送達はまた、皮下注射に伴う患者の不快感、感染の危険及び侵襲性を排除する。更に、経皮的物質送達は特定のタイプの経皮送達装置の持続的に制御された送達プロファイルのために、長期間、患者の血流中に、より均一な濃度の活性剤を提供することができる。本明細書で使用される用語「経皮送達」は動物の皮膚、粘膜又は爪のような体表を通る活性剤又は薬剤の送達を広く包含する。
【0004】
治療剤の経皮送達は重要な医薬の投与経路である。前記のように、経皮送達は胃腸の分解及び肝臓の代謝を迂回する。大部分の市販の経皮的薬剤送達システム(例えば、ニトログリセリン、スコポラミン、エストラジオール、テストステロンの皮膚パッチ剤)は受動的拡散により活性剤を送達する。前記のシステムにおいては、物質は典型的に、存在する濃度勾配によりパッチ中のレザボアから患者の皮膚中に拡散する、すなわち物質はパッチのレザボア中の高濃度から患者の身体中に低濃度に拡散する。「パッチ剤」の送達システムは患者の血流への緩徐な、しかし制御された物質の送達を提供する。
【0005】
患者の皮膚を通る活性剤の束密度(flux)は多数の因子により決定される。該因子は物質の分配係数及び溶解度特性を包含する。
【0006】
不幸なことには、多数の活性剤は経皮的拡散束密度が低すぎるため治療的に有効でない。これは特に、ポリペプチド及びタンパク質のような高分子物質に当てはまる。経皮的物質の束密度を高めるために、患者の体表(例えば、皮膚)と接した、物質のレザボアを通って適用される低レベルの電流の適用を伴う技術が使用されてきた。この技術はイオン電気導(iontophoresis)、そしてより最近では電気輸送(electrotransport)と呼ばれてきた。
【0007】
当該技術分野で周知のように、電気輸送は治療剤又は種(species)の経皮的輸送が、駆動力として電流を使用することにより、すなわち物質含有レザボアを通り患者に対する電流の適用により、達成される方法である。従って、電気輸送は適用される電流の振幅、タイミング及び極性が標準の電装品を使用して容易に調整されるために、受動的経皮的物質送達より更に調整可能な方法である。概括的に、電気輸送の物質束密度は同一物質の受動的経皮的束密度より数次元大きい数字である可能性がある。
【0008】
現在知られている電気輸送装置においては少なくとも2個の電極が使用される。これらの電極は双方とも患者の体表のある部分と密接に電気接触して配置される。能動的又は供与電極と呼ばれる一方の電極はそれから治療剤、物質の前駆体又は物質が電気輸送により身体中に送達される電極である。対電極又は復帰電極と呼ばれる他方の電極は身体を通る電気回路を閉鎖する役割を果たす。電極により接触される患者の体表と一緒に、回路は電気エネルギー源、例えば、電池への電極の接続により完成される。
【0009】
経皮的に送達される種の電荷に応じて、陽極又は陰極のいずれかが「能動的」又は供与電極であることができる。例えば、身体中に送達されるイオン性物質が正に荷電されている(すなわちカチオン)場合は、陽極が能動的電極であり、そして陰極が回路を完成する役割を果たすであろう。反対に、送達されるイオン性物質が相対的に陰性に荷電している(すなわちアニオン)場合は、陰極電極が能動的電極であり、陽極電極が対電極であろう。
【0010】
あるいはまた、陽極及び陰極双方を身体中に適当な電荷の活性剤を送達するために使用することができる。このような場合には、両電極が能動的又は供与電極であると考えられる。すなわち、陽極電極は身体中に正に荷電した物質を送達し、他方陰極電極は身体中に負に荷電した作用剤を送達することができる。
【0011】
既存の電気輸送装置は概括的に電気輸送により身体中に送達されるべき治療剤のレザボア又は供給源を必要とし、該治療剤は典型的にはイオン化された又はイオン化可能な種、あるいはこのような種の前駆体の液体溶液の形態にある。場合によっては、活性剤はヒドロゲルとして調製される。このようなレザボア又は供給源の例は特許文献1に記載されたようなポーチ、特許文献2に開示されたような前以て形成されたゲル体及び特許文献3の図に開示されたような活性剤の液体溶液を保持するガラス又はプラスチック容器、を包含する(特許文献1、2及び3参照)。このような活性剤のレザボアは1種又は複数の所望の種又は活性剤の固定された又は更新可能な供給源を提供するために、電気輸送装置の陽極又は陰極に電気的接続されている。
【0012】
本明細書で使用される用語「電気輸送」は概括的に、送達される活性剤が完全に荷電されていても(すなわち100%イオン化されている)、完全に非荷電でも又は一部荷電されており、一部非荷電でも、治療剤の電気的に補助される送達を意味する。電気移動(electromigration)、電気浸透(electroosmosis)、電気穿孔(electroporation)又はそれらの任意の組み合わせが治療剤又はそれらの種を送達することができる。電気浸透は概して、治療剤のレザボアに対する起電力の適用の結果として、治療剤がその中に含有される液体溶媒の移動からもたらされる。電気穿孔は皮膚に電流を適用する時に起る一過性に存在する孔の形成を伴う。
【0013】
経口送達のような、より一般的な物質の投与経路により遭遇される問題のために、抗凝固剤のような物質の経皮的電気輸送送達は特に興味深い。イオン的に荷電した抗凝固剤は皮膚を通って低い透過性を示すことが期待される。しかし、このような化合物はイオン導入電気輸送により有効に送達することができる。
【0014】
1種の重要な抗凝固剤の群は因子Xaインヒビターとして特徴付けることができる。血栓塞栓疾患は血液凝固過程の不適切な機能により惹起される。血栓はセリン・プロテアーゼのチモーゲン活性化カスケードにより形成され、カスケードの最後のプロテアーゼ、トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに転化させ、それが架橋して血栓を形成する。トロンビンのその前駆体からの形成はプロトロンビナーゼ錯体の形成により増幅される。プロテアーゼ因子Xaは、それがプロトロンビンの限定された蛋白分解によりトロンビンの生成を活性化するので、凝固カスケードにおいて重要な機能を有する。従って、因子Xaは血液の最後の共通の(common)経路における内因性及び外因性活性化機序を結合する中心的位置を保持し、因子Xaの1分子がトロンビンの有意な数の分子を生成する。その結果、因子Xaは抗血栓物質又は抗凝固剤の開発の魅力的な標的として出現し、トロンビン阻害よりずっと効果的な可能性のある調節手段を提供した。
【0015】
ベンズアミジン誘導体の因子Xaインヒビターの適切なクラスは特許文献4に開示されている(特許文献4参照)。関連文献の、特許文献5はこれらのタイプの抗凝固剤に関連し、イオン導入法を使用してインビトロ送達を実証している(特許文献5参照)。開示された抗凝固剤の適切性にも拘わらず、文献はインビボの治療的に有効な血漿濃度を維持するためのこのような治療剤の経皮送達に関連しない。該文献は物質の適量を送達することができる電気輸送条件を示唆しておらずまた、代わりの適切な電気輸送条件をも開示していない。
【0016】
抗凝固剤と関連する重大な危険性は異常出血の危険性である。抗凝固剤の過剰投与は血液の希薄化のために出血をもたらす可能性があり、抗凝固剤の投与不足は状態に対処せず、血栓症をもたらす可能性があるので、用量の正確な調節を維持することが重要である。これらの困難は因子Xaインヒビターを包含する抗凝固剤の特徴的に低い生物学的利用能及び変動する経口吸収により増幅される。
【0017】
従って、抗凝固剤を経皮的に送達するシステム及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0018】
正確な用量調節を提供する抗凝固剤を経皮的に送達するシステム及び方法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0019】
経口送達に伴う欠点を回避しながら、抗凝固剤の特定の血漿濃度を提供することが本発明の更にもう1つの目的である。
【0020】
抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持するための経皮的物質送達装置及び方法を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0021】
治療的に適切なレベルを表わす血漿濃度を生成するように抗凝固剤の束密度を改変するように容易に調整することができる経皮的物質送達装置及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0022】
使用者の最少の介入により抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を送達するように設定された経皮的物質送達装置及び方法を提供することが本発明のもう1つの目的である。
【0023】
代わり電気輸送条件を提供する経皮的抗凝固剤送達装置を提供することが本発明の更なる目的である。
【特許文献1】Jacobsen,米国特許第4,250,878号明細書
【特許文献2】Drdlic,米国特許第4,382,529号明細書
【特許文献3】Sanderson et al.、米国特許第4,722,726号明細書
【特許文献4】特願2003−002832号明細書
【特許文献5】国際公開第2002089803号パンフレット
【発明の開示】
【0024】
前記の目的及び以下に述べられ、そして明白になるであろう事項に従うと、本発明は電気輸送により抗凝固剤を経皮的に送達するための装置を含んでなり、ここで該装置は供与電極、電気輸送により送達される形態の抗凝固剤の供給源を有する供与レザボア、カウンター電極、電源及び電気輸送電流を制御するための制御回路を含んでなり、ここで調整回
路は抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定された電気輸送条件を実施することができる。
【0025】
本発明の実施に有用な抗凝固剤は好ましくは、ベンズアミジン誘導体を含んでなる。特に好ましいベンズアミジン誘導体は図3に示される本明細書で「化合物1」と呼ばれる2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体を含んでなる。他の適切なベンズアミジン誘導体は:N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−「4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸並びに薬理学的に許容できるそれらの塩、を含んでなる。あるいはまた、抗凝固剤はナフトアミジン誘導体であることができる。
【0026】
本発明の好ましい態様は約20〜80ng/mLの範囲内の抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定された制御回路を利用する。
【0027】
更なる態様において、制御は約0.5〜70mg/日の範囲内、より好ましくは約10〜50mg/日の範囲内、更により好ましくは約20〜40mg/日の範囲内の抗凝固剤の目標用量を送達するように設定されている。
【0028】
本発明のもう1つの態様において、制御は約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている。好ましい電流密度は約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内にある。
【0029】
本発明の他の態様において、供与電極は約5〜20cm2の範囲内の面積を有する。
【0030】
本発明の方法及びシステムは静脈内注入により維持される血漿濃度に実質的に等しい抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持することができる。
【0031】
本発明の装置は直流、交流、又は時間変動オン・オフ電気輸送条件を送達するように設定することができる。
【0032】
本発明のもう1つのアスペクトにおいて、電気輸送装置は更に、制御装置が血液凝固時間モニターからの信号に反応して電気輸送条件を実施するように構成されている血液凝固時間モニターを含んでなる。
【0033】
本発明は更に、有効量の該抗凝固剤を電気輸送により経皮的に送達する段階を含んでなる、抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度を維持するための方法を含んでなる。抗凝固剤はベンズアミジン又はナフトアミジン誘導体を含んでなることができる。抗凝固剤は好ましくは、化合物1を含んでなる。
【0034】
該方法はより好ましくは、有効量の化合物1を経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の化合物1の血漿濃度を維持する。
【0035】
電気輸送条件はまた好ましくは、約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を適用する方法を含んでなる。電流密度はより好ましくは、約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内にある。
【0036】
本発明の前記の態様において、化合物1を経皮的に送達する段階は約0.5〜70mg/日、より好ましくは約10〜50mg/日、更により好ましくは20〜40mg/日の範囲内の化合物1を送達する段階を含んでなる。前記の化合物1の送達は好ましくは、約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の、そしてより好ましくは、約0.050〜0.10mA/cm2の範囲内の電流密度を適用することにより達成される。
【0037】
本発明の方法は直流、パルス電流、交互逆極性電流及び時間変動オン・オフ電流を適用することを含んでなる電気輸送条件の使用を含んでなることができる。
【0038】
本発明の方法は更に、血液凝固時間モニターを提供し、血液凝固時間モニターからの信号を使用して、有効量の抗凝固剤を電気輸送することにより経皮的に送達する段階のための電気輸送条件を調整する方法を含んでなることができる。
【0039】
本発明の方法はまた、前以て決定された用量の抗凝固剤を電気輸送により経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の血漿濃度を維持することにより患者の因子Xaを阻害する方法を含んでなる。抗凝固剤は好ましくは、化合物1を含んでなる。
【0040】
本発明の方法は更に、前以て決定された用量の化合物1を電気輸送により経皮的に送達して、約20〜80ng/mLの範囲内の血漿濃度を維持することにより、患者の血栓塞栓疾患の危険性を減少させる方法を含んでなる。
【0041】
更なる特徴物及び利点は、付記の図面に示されるように、そして類似の参考文字が概括的に図面全体の同一部品又は要素を表わす、本発明の好ましい態様の以下の、そしてより特定の説明から明白になるであろう。
【0042】
発明の詳細な記述
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特に例示された物質、方法又は構造物に限定されず、従ってもちろん変動することができることを理解しなければならない。従って、本明細書に記載されたものと類似の又は同等な多数の物質及び方法を本発明の実施に使用することができるが、好ましい物質及び方法が本明細書に記載される。
【0043】
本明細書で使用される用語は本発明の特定の態様を説明する目的のみのためであり、限定することは意図されないことも理解しなければならない。
【0044】
本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、特記されない限り、本発明が関与する当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0045】
更に、本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願物は上記又は下記にかかわらず、それらをそのまま引用により本明細書の内容になる。
【0046】
最後に、本明細書及び添付の請求の範囲に使用される単数形「a」、「an」及び「the」は内容が明白にその反対を表わさない限り、複数の対象を包含する。従って、例えば「an active agent(活性剤)」の言及は2種以上のこのような物質を包含し、「a microprojection(ミクロプロジェクション)」の言及は2種以上のこのようなミクロプロジェクションを包含する、等である。
【0047】
定義
本明細書で使用される用語「経皮送達」は局所又は全身治療のための皮膚中へのそして/又は皮膚を通る物質の送達を意味する。
【0048】
本明細書で使用される用語「経皮的束密度」は経皮送達の速度を意味する。
【0049】
本明細書で使用される用語「抗凝固剤」は用語「抗血栓剤」と互換可能にそして同義に使用することができる。これらの用語は凝固過程を阻害するか又はそれと競合する任意の組成物に適用される。好ましい抗凝固剤の群は因子Xaを阻害するベンズアミジン誘導体を含んでなる。「化合物1」と呼ばれる好ましい2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体は本発明の実施に特に適する(図3参照)。当該技術分野で周知のように、前記ベンズアミジン誘導体は約500〜600ダルトンのような比較的低い分子量を有する合成カチオン物質を含んでなる。適した抗凝固剤のもう1つの群はナフトアミジン誘導体を含んでなる。
【0050】
前記の抗凝固剤はまた、遊離塩基、酸、荷電又は非荷電分子、分子錯体の成分あるいは非刺激性の薬理学的に許容できる塩、のような種々の形態にあることができる。更に、身体のpH、酵素、等において容易に加水分解される活性剤の単純な誘導体(エーテル、エステル、アミド、等のような)を使用することができる。
【0051】
1種より多くの抗凝固剤を本発明の抗凝固剤源又はレザボア中に取り入れることができ、そして用語「剤」の使用は2種以上のこのような活性剤の使用を全く排除しないことを理解しなければならない。
【0052】
用語「生物学的有効量」又は「生物学的有効速度」は生物学的活性物質が製薬学的に活性剤であり、そして所望の治療的、しばしば有益な結果を実施するために必要な薬理学的活性剤の量又は速度を表わす時に使用されることとする。好ましい態様において、これは血栓症又は他の血栓塞栓疾患又は状態の危険の治療的に有意な軽減を含んでなる。本発明の剤の調製物中に使用される活性剤の量は所望の治療的結果を達成するための治療的有効量の抗凝固剤を送達するために必要な量であろう。実際的に、これは、送達されている特定の薬理学的活性剤、送達部位、処置されている状態の重篤度、所望の治療効果及びコーテイングから皮膚組織中への物質の送達のための分解及び放出動力学に応じて広範に変動するであろう。
【0053】
本明細書で使用される用語「電気輸送」は概括的に、送達又は抽出が少なくとも一部は電位の印加により誘導又は補助される場合の、体表(皮膚、粘膜又は爪のような)を通る治療剤(荷電した、非荷電の、又はそれらの混合物)の送達又は抽出を意味する。当該技術分野で周知のように、広範に使用される電気輸送法の電気移動(イオン電気導入とも呼ばれる)は体表を通る荷電イオン(例えば、活性剤のイオン)の電気的に誘導される輸送を伴う。電気浸透法と呼ばれるもう1つのタイプの電気輸送は適用電界の影響下での液体の経体表的(例えば、経皮的)束密度を伴う。
【0054】
1種の広範に使用される電気輸送法のイオン電気導入は荷電イオンの電気誘導輸送を伴う。非荷電又は中性に荷電した分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的試料採取)に関与されるもう1つのタイプの電気輸送法の電気浸透法は電界の影響下の膜を通る、物質を含む溶媒の移動を伴う。本明細書で使用される用語「電界穿孔法」は概括的に、細胞を強電界に短時間、暴露すると、生物学的膜を一過性に不安定化することができることを認識する。この効果はまた、「電気透過可能化」とも呼ばれる。
【0055】
多数の場合に、2種以上の前記の過程が異なる程度に同時に起っているかも知れない。従って、本明細書においては、用語「電気輸送」は活性剤が実際に輸送されている特定の1種又は複数の機序にかかわらず、少なくとも1種の荷電又は非荷電剤又はそれらの混合物の電気的に誘導又は促進された輸送を包含するためのそのもっとも広範な可能な解釈を与えられる。
【0056】
前記のように、本発明は患者に抗凝固剤を経皮的に送達するための装置及びシステムを含んでなる。システムは概括的に、能動電極及び供与電極及び電極に電気信号を供給するための電気回路を包含する。更に、少なくとも一方の電極に近接して抗凝固剤源が提供される。
【0057】
今度は本発明に従って使用することができる代表的電気輸送装置を表わす図1を参照する。図1は押しボタンスイッチ12の形態の起動スイッチ及び発光ダイオード(LED)の形態の表示装置14を有する電気輸送装置10の斜視分解図を示す。装置10は上部ハウジング16、回路基板アセンブリー18、下部ハウジング20、陽極電極22、陰極電極24、陽極レザボア26、陰極レザボア28及び皮膚適合性接着体30を含んでなる。上部ハウジング16は患者の皮膚上に装置10を保持するように補助をする側部ウイング15を有する。上部ハウジング16は好ましくは、射出成形エラストマー(例えば、エチレンビニルアセテート)からなる。印刷回路基板アセンブリー18は別々の電気部品40及び電池32に接続された集積回路19を含んでなる。回路基板アセンブリー18は開口部13a及び13bを通過する柱(図1には示されていない)によりハウジング16に結合されており、ここで柱の末端はハウジング16に回路基板アセンブリー18を固定するために加熱/融解されている。下部ハウジング20は接着体30により上部ハウジング16に取り付けられ、ここで接着体30の上面34は下部ハウジング20及び、ウイング15の底面を包含する上部ハウジング16双方に接着されている。
【0058】
回路基板アセンブリー18の下側には電池32、好ましくはボタンセル電池そしてもっとも好ましくはリチウムセルが示されている(一部)。他のタイプの電池も装置10に動力を与えるために使用することができる。
【0059】
回路基板アセンブリー18の回路出力装置(図1には示されていない)は電気伝導性接着性ストリップ42、42’により下部ハウジング中に形成された凹み25、25’中の開口部23、23’を通る電極24及び22と電気的に接触する。電極22及び24は順次、レザボア26、28の上面44’、44と直接の機械的及び電気的接触をする。レザボア26、28の底面46’、46は接着体30の開口部29’、29を通して患者の皮膚を接する。押しボタンスイッチ12を押すと、回路基板アセンブリー18上の電気回路が、前以て決定された期間、例えば、約10分間の送達期間中、電極/レザボア22、26及び24、28に前以て決定されたDC電流を送達する。好ましくは、装置は使用者に物質送達又はボーラスの開始の視覚的及び/又は聴覚的確認、点灯するLED14による間隔及び/又は例えば「ビーパー」からの聞こえる音信号を伝達する。
【0060】
陽極電極22及び/又は陰極電極24は好ましくは、銀及び/又は塩化銀又は任意の適切な電気伝導性物質からなることができ、そしてレザボア26及び28は双方とも好ましくは、下記のポリマー物質からなる。電極22、24及びレザボア26、28は下部ハウジング20により保持される。アニオンの生物学的活性剤に対しては、陰極レザボア28が、活性剤を含有する「供与」レザボアであり、そして陽極レザボア26が、生物学的適合性調製物を含有する。当業者は陰極の生物学的活性剤によりレザボア26、28が逆転される(reverse)ことを容易に認めるであろう。
【0061】
イオン電気導入送達装置10の活性剤レザボア26及び復帰レザボア28は活性剤をイオン電気導入により送達するために患者と物質輸送関係に配置されなければならない。通常これは、装置が患者の皮膚と密接に接して配置されることを意味する。ヒトの身体上の種々の部位を、医師又は患者の好み、物質の送達計画又は美容のような他の因子に応じて選択することができる。
【0062】
供与及びカウンター電極22及び24はそれぞれ、供与レザボア26及びカウンター活性剤レザボア28に接して配置される。供与レザボア26は送達される活性剤を含有し、他方カウンターレザボア28は典型的に生物学的適合の電気分解塩を含有する。供与レザボア26及び場合によるカウンター活性剤レザボア28は、電気輸送によりそこを通る活性剤の輸送を許すために、その中に十分量の液体を吸収し保持するようになっている任意の活性剤であることができる。例えば、天然及び合成双方の木綿又は他の吸収性布地からなる、ガーゼ、パッド又はスポンジを使用することができる。
【0063】
より好ましくは、レザボア26及び28のマトリックスは少なくとも一部は親水性ポリマー物質からなる。水は好ましいイオン輸送媒質であり、親水性ポリマーは比較的高い平衡水分含量を有するので、親水性ポリマーが好ましい。もっとも好ましくは、レザボア26及び28のマトリックスは少なくとも一部は不溶性親水性ポリマーからなる固形ポリマーマトリックスである。不溶性親水性ポリマーマトリックスは構造的理由のために可溶性親水性ポリマーよりも好ましい。
【0064】
マトリックスはシラスチック(silastic)マトリックスのような物質の定位置の成分と架橋させるか又はセルロース、織物の繊維パッド及びスポンジの場合のようにポリマーを前以て加工して、溶液から成分を吸収させることができる。物質のレザボア26及び28は交互に、ゲルが水中で膨潤性又は可溶性である親水性ポリマーで形成されている、ポリマーマトリックス構造に類似して形成されたゲルマトリックス構造物であることができる。このようなポリマーは任意の比率で成分と混合することができるが好ましくは、数%から約50重量%までのレザボアを表わすことができる。ポリマーは線状でも架橋していてもよい。適切な親水性ポリマーは、HYTREL(DuPont De Nemours & Co.,Wilmingtn,Del)のようなコポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、POLYOX(Union Caribide Corp.)、CARBOPOL(BF Goodrich of Akron,Ohio)のようなポリエチレンオキシド、CARBOPOLとブレンドされたPOLYOXのようなポリオキシエチレン又はポリエチレングリコールのポリアクリル酸とのブレンド、ポリアクリルアミド、KLUCEL、SEPHADES(Pharmacia Fine Chemicals,AB,Uppsala,Sweden)のような架橋デキストラン、デンプン−グラフト−ポリ(ナトリウムアクリレート−コ−アクリルアミド)ポリマーであるWATER LOCK(Grain Processing Corp.,Muscatine,Iowa)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び架橋Na−カルボキシメチルセルロース(例えば、Ac−Di−Sol(FMC Corp.,Philadelphia,Pa))のようなセルロース誘導体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(National Patent Development Corp.)のようなヒドロゲル、天然ゴム、キトサン、ペクチン、デンプン、グアガム、イナゴマメガム、等並びにそれらのブレンドを包含する。前記のリストは単に本発明における使用に適した物質の代表である。他の適した親水性ポリマーはその関連部分が引用により本明細書に取り込まれているScott,J.R.,& Roff,W.J.,Handbook of Common Polymers,CRC Press(1971)に認めることができる。
【0065】
レザボア26及び28のマトリックスは場合により高められた構造的硬度のために疎水性ポリマーを含有することができる。疎水性ポリマーは好ましくは、隣接成分に対するレザボアの張り合わせを改善するために、熱融解性である。レザボアマトリックス中への使用に適した疎水性ポリマーはそれらに限定はされないが、単独であるいは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、イタコン酸、N−分枝アルキルマレイン酸(ここでアルキル基は10〜24個の炭素原子を有する)、グリコールジアクリレートのような、エチレンによる不飽和モノマーと共重合されたポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン及びポリアルケン、ゴム、KRATONのようなコポリマー、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート・コポリマー、ナイロンのようなポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、アクリル又はメタクリル酸の、n−ブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノールのようなアルコールとのエステルのポリマーのようなアクリル又はメタクリル樹脂、並びにそれらのブレンド、を包含する。前記の疎水性ポリマーは大部分熱融解性である。
【0066】
レザボアのマトリックスは溶融混合、溶液流延法又は押しだし法のような方法により、所望の物質、電解質あるいは1種又は複数の他の成分を不活性ポリマーとブレンドすることにより形成されるポリマーマトリックス構造物であることができる。
【0067】
本発明に従うカウンターレザボア28は1種又は複数の以下の電解質:NaClのようなアルカリ金属塩;塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩及びリン酸塩のようなアルカリ土類金属塩;アスコルビン酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩のような有機塩;銅イオン、鉄イオン、キノン、ヒドロキノン、銀イオン、及びIOイオンのような酸化還元物質を含有する電解質;並びに他の生物学的適合の塩及びバッファーを含有することができる。塩化ナトリウムはカウンターレザボア28に対する好ましい電解質塩である。
【0068】
送達される物質及び電解質に加えて、レザボア26及び28は更に、染料、顔料、不活性充填剤、等のような他の通常の物質を含有することができる。
【0069】
電極に適した金属の例はそれらに限定はされないが、銀、亜鉛、塩化銀、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金及びチタンを包含する。もっとも好ましくは、陽極電極は銀からなり、他方陰極電極は塩化銀からなる。銀はヒトに対するその比較的低い毒性のために陽極として他の金属より好ましい。塩化銀は塩化銀の還元が人体に内在する塩化物イオンを生成するために、陰極物質として好ましい。
【0070】
概括的に、電極アセンブリーの皮膚接触総面積は約1〜200cm2の範囲内にあるが、典型的には約5〜50cm2の範囲内にあるであろう。
【0071】
好ましい態様において、押しボタンスイッチ12、回路基板アセンブリー上の電気回路
18及び電池32は上部ハウジング16と下部ハウジング20の間に接着剤で「シール」される。上部ハウジング16は好ましくは、ゴム又は他の弾性物質からなる。下部ハウジング20は好ましくは、凹み25、25’を形成するために容易に成形され、開口部23、23’を形成するために切り抜くことができるプラスチック又はエラストマーシート物質(例えば、ポリエチレン)からなる。集成された装置10は好ましくは、耐水性(すなわち撥水防止性)で、もっとも好ましくは、防水性である。
【0072】
システムは身体に容易に適合し、それにより装着部位における、又はその周辺の運動の自由を許す、低いプロファイルを有する。
【0073】
陽極/物質レザボア26及び陰極/塩レザボア28は装置10の皮膚接触側上に配置され、通常の取り扱い及び使用期間中の突発的な電気短絡を防止するように十分に隔離されている。
【0074】
好ましい態様において、装置10は上面34及び身体接触面(図示されていない)を有する末端接着体30により患者の体表に付着する。接着体面36は装置10が通常の使用者の活動中には身体上に固定されて止まり、しかし、前以て決められた装着期間(例えば、24時間)後には容易に外させることを確保する接着性を有する。上部接着体面34は下部ハウジング20に接着して、電極及び、ハウジングの凹み25、25’内の物質レザボアを保持し、並びに上部ハウジング16に結合された下部ハウジング20を保持する。
【0075】
押しボタンスイッチ12は好ましくは、装置10の上面上に配置され、衣類を通して容易に起動される。スイッチの起動時に、本明細書に記載のような経皮的輸送を容易にするように設定された第1の電気信号又はこれも本明細書に記載されたような細胞内輸送を促進するように設定された第2の電気信号を起動することができる。あるいはまた、操作を自動化することができる。
【0076】
電気輸送の1つの態様において、聞こえる警報が、その時点で、回路が前以て決めた送達間隔に電極/レザボアに対し前以て決めたレベルのDC電流を供給する、物質送達の開始を知らせる。LED14は装置10が活性剤の送達モードにあることを示す、送達間隔期間中「オン」に止まる。電池は好ましくは、全装着期間中(例えば、24時間)、前以て決めたレベルのDC電流で、装置10に連続的に動力を送るために十分な容量を有する。
【0077】
前記のように、本発明のシステム及び方法を使用する経皮送達のための好ましい物質は凝固過程を阻害するか又はそれと競合する抗凝固剤又は抗血栓剤を含んでなる。物質の好ましい群は因子Xaを阻害するベンズアミジン誘導体である。適した化合物は、対称的に配置され、適当な長さの他の部分を含有するスペーサーにより分離された図6に示される2種の基礎的(basic)ベンズアミジン部分を示す。
【0078】
次に図3において、本明細書で「化合物1」と呼ばれる代表的な合成誘導体、2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体が示される。化合物1は500〜600ダルトンの範囲内の分子量を有する合成カチオン物質である。
【0079】
本発明の他の態様において、概括的に図4に示される式
[式中、R1はH、ハロゲン原子、アルキル基又はOHであり、R2はH、ハロゲン原子又はアルキル基であり、R3はH、置換基をもってもよいアルキル基、アラルキル基、置換基をもってもよいアルカノイル基又は置換基をもってもよいアルキルスルホニル基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に、H、ハロゲン原子、置換基をもってもよいアルキル
基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基又は置換基をもってもよいカルバモイル基であり、そしてR6は置換ピロリジン又は置換ピペリジンである]
により表される同様なベンズアミジン誘導体又は薬理学的に許容できるそれらの塩を使用することができる。
【0080】
好ましい態様において、R1はH、ハロゲン原子、C1−6アルキル基又はOHであり、R2はH、ハロゲン原子又はC1−6アルキル基であり、R3はH、OH、CO2Hで置換されていてもよいC1−6アルキル基、C1−6アルコキシカルボニル、(CH2)nCO(CH2)mCO2R7(ここでR7はC1−6アルキルであり、そしてm及びnはそれぞれ独立に1〜6である)、C7−15アラルキル、C1−6アルカノイル、C2−6ヒドロキシアルカノイル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6アルコキシ−カルボニル、カルボキシル−C1−6アルキルスルホニルであり、R4及びR5はそれぞれ独立に、H、ハロゲン原子、C1−6(ハロゲン)アルキル、C1−6アルコキシ、CO2H、C1−6アルコキシ−カルボニル,CONH2、C1−6アルキル−カルバモイル及びジ(C1−6アルキル)カルバモイルであり、そしてR6は1−アセトイミドイルピロリジン−3−イル又は1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルである。特に好ましい化合物はN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸2塩酸(図5参照)を含んでなる。
【0081】
本発明に従うと、化合物1に類似した、図5に示した一般式
[式中、R1は水素、ハロゲン、アルキル又はヒドロキシを表わし、R2は水素、ハロゲン、又はアルキルを表わし、R3は水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、又は場合により置換されていてもよいアルキルスルホニルを表わし、R4及びR5は同一でも異なってもよく、そしてそれぞれ、水素、ハロゲン、場合により置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、又は場合により置換されていてもよいカルバモイルを表わし、R6は水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルバモイル、アルキルスルホニル、アリール、等を表わし、R7及びR8は同一でも異なってもよく、そしてそれぞれ水素、アルキル等を表わし、そしてnは0、1又は2である]
を有する他の適切なベンズアミジン誘導体(及び薬理学的に許容できるそれらの塩)又は誘導体の薬理学的に許容できる塩を使用することができる。好ましい態様において、R1は水素、ハロゲン、アルキル又はヒドロキシを表わし、R2は水素、ハロゲン又はC1−6アルキルを表わし、R3は水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−7カルボキシアルキル、C3−13アルコキシカルボニルアルキル、C7−16アラルキル、C2−7脂肪族アシル、C2−7ヒドロキシ−脂肪族アシル、C1−6アルキルスルホニル、C30−13アルコキシカルボニルアルキルスルホニル、C2−7カルボキシアルキルスルホニル又はC3−8カルボキシアルキルカルボニルを表わし、R4及びR5はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アルコキシ、CO2H、C2−7アルコキシカルボニル、CONH2、C2−7モノアルキル又はC3−13ジアルキルカルバモイルを表わし、R6は水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C7−16アラルキル、ヘテロシクリル−C1−6アルキル、C2−7カルボキシアルキル、C3−13アルコキシカルボニルアルキル、C2−7脂肪族アシル、C7−11芳香族アシル、CONH2、C1−6アルキルスルホニル、C6−10アリール、ヘテロシクリル、フォルムイミドイル、C2−7 1−イミノアルキル、C2−7N−アルキルホルムイミドイル又はC7−11イミノアリールメチルを表わし、そしてR7及びR8はそれぞれ独立に、水素、C1−6アルキルを表わすかあるいは、R6、R7及びR8が一緒になってC2−5アルキレンを表わし、そしてnは0、1又は2である。
【0082】
好ましい態様において、前記の組成物はN−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸2塩酸を含んでなる。それは、[N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]−N−[3−カルバモイル−4(ピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]スルファモイル]酢酸Etエステルの溶液(20mLのエタノール中)に0.39gのEtアセトイミデート塩酸及び0.87mLのEt3Nを添加し、室温で6時間撹拌することにより調製すると、75%のN−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]フェニルスルファモイル]酢酸Etエステル2塩酸を与え(0.64g)、それを20mLの3NのHCL水溶液に溶解し、80℃で2時間加熱することができる。
【0083】
他の適切なベンズアミジン誘導体又は薬理学的に許容できるそれらの塩は、N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−「4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸を包含する。
【0084】
本発明を実施するために有用な多数の他の因子Xaインヒビターが存在する。例えば、図6に示した化合物はスイスのBaselのPentapharm Ltd.により開発された。前記の化合物、ベンズアミジン誘導体の因子Xaインヒビターは因子Xaに高い親和性を有することが示された第1の非ペプチド化合物である。
【0085】
もう1つの例は図7に示した化合物で、Daiichi Pharmaceuticalsにより開発された因子Xaインヒビターである。図7に示されるように、前記の化合物はベンズアミジン基ではなく、ナフトアミジン基を含有する。化合物はまた、因子Xaの選択性に必須であることが確定された遊離カルボン酸基を有する。カルボン酸は対応するメチルエステルに比較して約100倍も、因子Xaの選択性を増加することが見いだされた。
【0086】
DX−9065a化合物と化合物1間には幾つかの重要な類似性が存在する。特にそれらは双方とも、化合物の活性を増加するように見えるカルボン酸基を有する。双方の化合物はまた、官能基とアセトアミドール基を連結するオキシ橋を有する。
【0087】
更に適切な因子Xaインヒビターは図8に示される「化合物2」及び図9に示される「化合物3」を包含する。もう1つの適切な因子XaインヒビターはYM−60828を含んでなり、それは[N−[4−(1−アセトイミドイル−4−ピペリジル)−オキシ)フェニル)−N−(7−アミジノ−2−ナフチル)メチル]スルファモイル]−酢酸を含んでなり、DX−9065aに構造的に類似しており、Sato,et al.,Antithrombotic Effects of YM−60828,A Newly Synthesized Factor Xa Inhibitor,in Rat Thrombosis Models and its Effects on Bleeding Time,Br.J.Pharmacol,vol.123:92−6(1998)に詳細に示され、考察されており、その関連部分は本明細書に引用により取り入れられている。
【0088】
ベンズアミジン誘導体の更に他の例は図10〜16に示され、それらはカルボン酸基を有するビスベンズアミジン誘導体のDupont−Merck合成シリーズである。
【0089】
前記のように、本発明の電気輸送態様は身体の皮膚、爪、粘膜又は他の表面のどこかの部分と電気的に接触している少なくとも2個の電極を使用する。一般に「供与」電極と呼ばれる一方の電極はそこから治療剤が身体中に送達される電極である。典型的に「カウンター」電極と呼ばれる他方の電極は身体中の電気回路を閉鎖する役割をもつ。
【0090】
更に、電気輸送送達システムは概括的に身体に送達されるべき治療剤の少なくとも1種のレザボア又は供給源を要する。このような供与レザボアの例はポーチ又は空洞、多孔質のスポンジ又はパッド及び親水性ポリマー又はゲルマトリックスを包含する。このような供与レザボアは1種又は複数の治療剤の固定された又は更新可能な供給源を提供するために、陽極又は陰極と体表に電気的に接続又はそれらの間に配置される。
【0091】
前記のように、電気輸送装置は1個又は複数の電池のような電源により動力を供給される。典型的には任意の1時点において、電源の1本のポールが供与電極に電気的に接続され、他方、反対のポールは対電極に電気的に接続される。電気輸送の物質送達の速度は装置により適用される電流にほぼ比例することが示されているので、多数の電気輸送装置は典型的に電極により適用される電圧及び/又は電流を制御し、それにより物質の送達速度を調節する電気制御装置を有する。これらの制御回路は電源により供給される電流及び/又は電圧の電気信号、すなわち振幅、極性、タイミング、波形、等を制御するための種々の電装品を使用する。引用によりそっくり本明細書に取り込まれている、McNichols等に対する米国特許第5,047,007号明細書は幾つかの適切なパラメーター及び特徴を開示している。
【0092】
とりわけ、2個の電極間に適用された直流の使用は本発明のもっとも直接的な適用を表わす。一定の直流信号の使用は典型的には、適用電流密度と抗凝固剤の束密度間の極めて直線状の相関を与える。
【0093】
前記のように、抗凝固剤の正確な用量を維持することは重要である。用量不足は凝固経路の必要な抑制を与えず、血栓症又は他の血栓閉塞状態の危険性を増大する。それに対し、過剰投与は凝固過程の妨害により、望ましくない又は制御不可能な出血の危険性を増大する。
【0094】
適切な抗凝固剤の束密度は適切な電気輸送条件を選択することにより達成することができる。図17に示すように、本発明の電気輸送システム及び本発明の方法は適用電流とインビトロの定常状態の物質の束密度間の正確な相関をもたらす。このデ−タは陽極における銀の供与電極及び陰極における塩化銀の対電極による化合物1の経皮送達を使用して得られた。図示されるように、約1.1mg/mA時間のインビトロの輸送効率をもつ定常状態の束密度に対する適用電流の数字間に直線状の相関が存在する。試験は熱分離されたヒトの表皮上で実施した。
【0095】
化合物1に関して、血漿濃度の有用な治療的範囲は約20〜80ng/mLの範囲内にある。適用電流と物質の束密度間の直線状の相関を与えられるので、当業者は治療的用量を達成するための適切な電気輸送条件を選択することができる。表1は0.05mA/cm2の操作電流密度における化合物1の治療的用量を提供するために適した電気輸送条件の範囲を提供する。本発明の経皮的電気輸送は低い経口生物学的利用能、変動する経口吸収、胃腸の分解又は肝臓の第1次通過効果のような、経口送達に伴う欠点を回避する。
【0096】
【表1】
【0097】
図17に認められるインビトロの相関は更に、無毛モルモットにおける一次皮膚刺激(PSI)及びブタにおける薬理学的−動力学(PK)を含んでなるインビボの研究における残留化合物1の抽出により支持される。デ−タは表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
次に図18において、インビトロ及びインビボの相関の更なる証拠が示される。特にインビボの実験からのデ−タはインビトロの電気輸送実験に匹敵する。図から見られるように、より低い0.050mA/cm2電流密度において、バッファー化合物1調製物のインビボのPSI及びインビトロの皮膚束密度の比較は同様な定常状態の束密度プロファイルをもたらす。同様な結果がより高い0.10mA/cm2電流密度のインビボのPK/PD及びインビトロの皮膚束密度−非バッファー調製物のデ−タで得られることが示される。
【0100】
化合物1の治療的血漿濃度を維持するための本発明のシステム及び方法の能力の更にもう1つの証明は図19に示される。示されるデ−タは通常の一定の静脈注入に対するインビボの電気輸送の比較を表わす。特にYorkshireブタは化合物1のヒドロゲル調製物と連絡した10cm2の電極又は1mg/時間の化合物1の静脈注入のいずれかで処置した。図から見られるように、電気輸送法は通常の静脈注入と本質的に同レベルの血漿濃度を維持することができる。これは、前記のように、有効な抗凝固剤投与に重要な、詳細で正確な用量を送達するための本発明の方法及びシステムの適切性を示す。
【0101】
これらの研究期間中、一次刺激インデックス(PII)デ−タを得た。このデ−タは表
3に示され、無毛モルモットにおける化合物1の適用24時間後の陽極部位におけるPIIの標準値を表わす。図から見られるように、0.050mA/cm2及び0.10mA/cm2双方における刺激は軽度と評価された。これは化合物1の治療的血漿濃度を維持するのに適する電気輸送条件が著しい不快感を誘起せず、患者が許容できることを期待することができることを示す。
【0102】
【表3】
【0103】
前記のデ−タは0.050mA/cm2及び0.10mA/cm2電気輸送条件における直流送達は有意な皮膚刺激を誘発しないことを示すが、所望される場合は、代わりの電気輸送条件を使用することができる。例えば、単一部位における長期の直流送達が望ましくない場合は、皮膚刺激を防止又は最少にするために、パルス電流、交互逆極性又は時間変動オン・オフ電流パターンが適切であるかも知れない。本発明の電気輸送送達装置は多数の機能を実施するために任意の適した電気回路を使用することができる。これらの複雑な回路はパルス電流を送達するためのパルス回路、前以て決められたタイミング及び投与計画に対して物質を送達するための時限回路、感知された物理的パラメーターに応答して物質を送達するためのフィードバック調節回路並びに電極の極性を周期的に逆転するための極性調節回路を包含する。例えば、Tapper等の米国特許第4,340,047号、Lattinの米国特許第4,456,012号,Jacobsenの米国特許第4,141,359号及びLattin等の米国特許第4,406,658号明細書を参照されたい。
【0104】
従って、本発明の幾つかの態様はパルス(方形波)電流を適切に使用することができる。負荷サイクルは1サイクルの時間に対する「オン」時間の比率(すなわち、パルス期間に対するパルス幅時間の比率)であり、通常、パーセントとして表わす。例えば、装置が1secサイクルの500ms間「オン」である場合は、装置は50%負荷サイクルで操作している。このような態様において、生成される負荷電流パターンはパルスの規模を変更するか又は負荷サイクルを変更することにより負荷電流に調整を実施する。例えば、0〜0.05mA/cm2の平均電流、10%の負荷サイクルパルスは0.005mA/cm2である。本態様の目的のためには、振動数は100Hz未満であると規定される。前記の平均電流を2倍にすることは10%に負荷サイクルを一定に維持しながら0〜0.1mA/cm2に負荷電流を増加するか又は0〜0.05mA/cm2に負荷電流を維持しながら、20%に負荷サイクルを2倍にすることにより達成される。(これらの相関は概算であることに注意されたい)。当該技術分野で周知のように、別の場合に、調整された電流が使用される場合は、負荷電流は波形の形態を変更することにより変更することができる。特に必要時の送達適用時に、所望の活性剤送達速度を提供するためには、電流適用の総合時間もまた調整されることができると考えられる。
【0105】
従って、パルスの負荷サイクルを改変すると、送達される活性剤の量を増加又は減少させる。本発明のこの実施において、電流パルスの数字は活性剤がそこから送達される表面の既知の面積を考慮して選択され、それにより固定された既知の電流密度(すなわちそこ
から電流が流れる面積に対する電流の比率)を規定する。図20に示すように、75%(上部の波形)、50%(中間の波形)及び25%(下の波形)の負荷サイクルをもつ、同一振動数の3種の異なるパルスの電気輸送電流の波形が示される。従って25%負荷サイクルの波形は50%の負荷サイクルの波形の投与レベルの約1/2の、そして75%負荷サイクルの波形の投与レベルの約1/3の電気輸送により経皮的に活性剤を送達する。
【0106】
本明細書に引用によりそのまま取り込まれている米国特許第5,983,130号明細書に考察されたように、増加した活性剤の送達は身体の部位に臨界レベルを超えた電流密度を適用することにより達成することができる。与えられた陽極の表面積に対する特定の最大電流が前記の増加された効率の活性剤送達を提供するであろうことが決定された後に、負荷サイクルを増加又は減少することにより、最大の適用電流密度を変化させることなく、高い効率状態で送達される活性剤の量を増加又は減少させることができる。この方法を使用して電気輸送のパラメーターを選択する時に、生成される電流密度が皮膚を高効率輸送状態に転化させて、電流パルスの負荷サイクルを変更して、活性剤送達速度を調整するように電流パルスの振幅が選択される。あるいはまた、パルス電流の波形のパルス振動数を調整して、皮膚を高効率状態に転化させるレベルにおける又はそれより上の電流密度を維持しながら、送達される活性剤の全体量を制御する。
【0107】
電気輸送送達のもう1つの適切なタイプは交互の逆極性として特徴付けることができる。このようなシステムの1例は引用によりそのまま本明細書に取り入れられている、米国特許第4,406,658号明細書に開示されている。概括的に、より効率的な物質の輸送を許すであろう、より透過性状態に皮膚中の転換の引き金を引くためにイオン物質が使用される。当該技術分野で周知のように、このようなシステムは皮膚を高効率状態に転化させるのに要する時間に対して最初に供与レザボアからアニオン物質の対イオンを、そしてカウンターレザボアからカチオン性活性剤を駆動し、次に極性を逆転し、それにより物質のカチオンを皮膚中に移動すると考えられる。
【0108】
本発明の電気輸送経皮送達装置を所望の適用に適合するように設定することは望ましいかも知れない。例えば、病院又はクリニックにおける使用に設定された装置は豊富な用量レベルを送達することができる制御装置又は電流源からなることができる。従って、病院使用システムは抗凝固剤の所望の血漿濃度を獲得し、維持するための用量を滴定するために使用することができる。あるいはまた、患者による個人的な独立した使用に設定された装置は治療的に有効であると決定された1回量を送達しなければならない。理想的には、このようなシステムは最少の使用者の介入を要求するべきである。
【0109】
本発明のシステム及び方法はまた、閉鎖ループを形成するためにフィードバック法で使用することができる。特に、通常の血液凝固時間モニターと本発明の電気輸送装置を適合させることは、抗凝固剤の束密度を最適な抗凝固効果を維持するように制御させる。従って、本発明に従うと、血液凝固モニターからの情報を、抗凝固剤の束密度を変更するように電気輸送条件を自動的に調整し、そして従って治療的に所望されるレベルに抗凝固剤の血漿濃度を維持するために使用することができる。
【0110】
本発明の範囲から逸脱せずに、当業者は種々の用途及び条件にそれを適応させるように本発明に種々の変更及び修飾を実施することができる。従ってこれらの変更及び修飾は適切に、公平に、以下の請求の範囲の同等物の全範囲内にあり、そしてそれが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の装置の1つの態様の分解斜視図である。
【図2】ベンズアミジン部分の分子構造の図である。
【図3】本発明の実施に有用な、以後「化合物1」と呼ばれる2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体の分子構造の図である。
【図4−5】発明の実施に有用な更なるベンズアミジン誘導体の分子構造の図である。
【図6−16】本発明の実施に有用な他の抗凝固剤の分子構造の図である。
【図17】電流密度に対してインビトロの抗凝固剤の束密度を相関するグラフである。
【図18】種々の電流密度におけるインビボ及びインビトロの抗凝固剤の束密度を比較するグラフである。
【図19】静脈内注入に対して電気輸送インビボ送達(ET2)により維持される血漿濃度を比較するグラフである。
【図20】本発明のパルス電流の電気輸送条件を実施する時の有用な波形を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気輸送による抗凝固剤の経皮送達用装置であって、電気輸送により送達すべき形態の抗凝固剤の供給源を有する供与レザボア、
カウンターレザボア、
該レザボアに電気的に接続された電力源、及び
電気輸送電流を制御するための制御回路であって、該抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように構成された電気輸送条件を実施することができる制御回路
を含んでなる、上記装置。
【請求項2】
抗凝固剤の供給源がヒドロゲル調製物を含んでなる、請求項1の装置。
【請求項3】
抗凝固剤がベンズアミジン誘導体を含んでなる、請求項2の装置。
【請求項4】
ベンズアミジン誘導体が図3に示される2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体を含んでなる、請求項3の装置。
【請求項5】
ベンズアミジン誘導体がN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸並びに薬理学的に許容できるそれらの塩、からなる群から選択される、請求項3及び4のいずれかの装置。
【請求項6】
抗凝固剤がナフトアミジン誘導体を含んでなる、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項7】
制御回路が約20〜80ng/mLの範囲内の抗凝固剤の前記の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項8】
制御が約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項9】
制御が約0.050mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている
、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項10】
制御が約0.10mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項11】
制御が約5〜20cm2の範囲内の面積を有する供与電極を含んでなる、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項12】
制御回路が約0.5〜10mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項13】
制御回路が約10〜50mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項14】
制御回路が約20〜40mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項15】
抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度が静脈注入により維持される血漿濃度に実質的に等しい、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項16】
制御回路が直流の電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項17】
制御回路が交互の逆極性の電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項18】
制御回路が時間変動するオン・オフの電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項19】
血液凝固時間のモニターを更に含んでなり、そして制御装置が該血液凝固時間モニターからの信号に反応して時間変動電気輸送条件を調整するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項1】
電気輸送による抗凝固剤の経皮送達用装置であって、電気輸送により送達すべき形態の抗凝固剤の供給源を有する供与レザボア、
カウンターレザボア、
該レザボアに電気的に接続された電力源、及び
電気輸送電流を制御するための制御回路であって、該抗凝固剤の治療的に所望される血漿濃度を維持するように構成された電気輸送条件を実施することができる制御回路
を含んでなる、上記装置。
【請求項2】
抗凝固剤の供給源がヒドロゲル調製物を含んでなる、請求項1の装置。
【請求項3】
抗凝固剤がベンズアミジン誘導体を含んでなる、請求項2の装置。
【請求項4】
ベンズアミジン誘導体が図3に示される2−[3−[4−(4−ピペリジニルオキシ)アニリノ]−1−プロペニル]ベンズアミジン誘導体を含んでなる、請求項3の装置。
【請求項5】
ベンズアミジン誘導体がN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−((1−アセトイミドイルピペリジン−4−イル)オキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[(E)−3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−プロペニル]スルファモイル]酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−クロロフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸;N−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)フェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−メチル−2−(E)−プロペニル]スルファモイル酢酸及びN−[4−(1−アセトイミドイルピペリジン−4−イルオキシ)−3−カルバモイルフェニル]−N−[3−(3−アミジノフェニル)−2−フルオロ−2−(Z)−プロペニル]スルファモイル酢酸並びに薬理学的に許容できるそれらの塩、からなる群から選択される、請求項3及び4のいずれかの装置。
【請求項6】
抗凝固剤がナフトアミジン誘導体を含んでなる、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項7】
制御回路が約20〜80ng/mLの範囲内の抗凝固剤の前記の治療的に所望される血漿濃度を維持するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項8】
制御が約0.010〜0.20mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項9】
制御が約0.050mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている
、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項10】
制御が約0.10mA/cm2の範囲内の電流密度を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項11】
制御が約5〜20cm2の範囲内の面積を有する供与電極を含んでなる、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項12】
制御回路が約0.5〜10mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項13】
制御回路が約10〜50mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項14】
制御回路が約20〜40mg/日の範囲内の抗凝固剤の用量を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項15】
抗凝固剤の治療的に有効な血漿濃度が静脈注入により維持される血漿濃度に実質的に等しい、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項16】
制御回路が直流の電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項17】
制御回路が交互の逆極性の電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項18】
制御回路が時間変動するオン・オフの電気輸送条件を送達するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【請求項19】
血液凝固時間のモニターを更に含んでなり、そして制御装置が該血液凝固時間モニターからの信号に反応して時間変動電気輸送条件を調整するように設定されている、前記請求項のいずれかの装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−501434(P2008−501434A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515621(P2007−515621)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019576
【国際公開番号】WO2005/120482
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019576
【国際公開番号】WO2005/120482
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
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