説明

抗増殖性質を有する化合物

下記の状態:単球/マクロファージの増殖;平滑筋細胞の増殖;CD36受容体の発現;又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与するステップを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制する改変された電子伝達剤の能力に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
本明細書中では、知識についての文献、文書、又は記事が参照されるか又は論じられる場合、この参照又は議論は、知識についての該文献、文書、又は記事、或いはその組合せが、優先日において一般知識の一部であるということを認めるものではなく;或いは本明細書が関わるいずれかの問題を解決する試みに関連することが知られている。
【0003】
以下の記載はトコフェリル・ホスフェート(TP)に関する一方、該記載は単に具体例であり、かつ本発明はTPに限られるものでなく、本発明はまた電子伝達剤、例えば非限定的に別のトコール、レチノール、及びK1の他のホスフェート誘導体に同様に関するということが理解されるべきである。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は、繊維状の(アテローム性の)プラーク形成及び血管内腔(lumen)の狭窄又は閉塞へと導く動脈管内膜の疾患である。アテローム性動脈硬化症に罹った動脈は、弾力性を失い、そしてアテロームが成長するにつれて、動脈は狭くなり、そしてやがて破裂することもある。次に血液は、アテロームに入り込み、アテロームを大きくし、その結果動脈をさらに狭くする。破裂したアテロームは、脂肪の内容物を溢流し、そして血液凝固(血栓)の形成を引き起こし、血液凝固は内腔をさらに狭くし、又は剥離してときに閉塞(塞栓症)を引き起こす。アテローム性動脈硬化症は、脳、心臓、腎臓、他の重要臓器、並びに腕及び足の動脈に影響しうる。脳に血液を送る動脈(頚動脈)において塞栓症が発達する場合、脳卒中が生じることもあり;そして心臓に血液を送る動脈(冠動脈)において塞栓症が発達する場合、心臓発作が生じることもある。
【0005】
危険因子は、非限定的に加齢、高血圧、喫煙、肥満、糖尿病、循環している高密度リポタンパク質(HDL)レベルの低下、リポタンパク質粒子[Lp(a)]レベルの増加、酸化型低密度リポタンパク質(LDL)レベルの増加、医原的に誘導された酸化型LDLのレベルの増加、及び運動不足を含み、これら全てが脈管内膜の肉体的傷害及びアテローム発生の可能性を増加させる。
【0006】
多くの科学者は現在、動脈の最内層、つまり内皮が傷つくことから、アテローム性動脈硬化症が始まると信じている。体のほかの場所が傷を受けると、次に動脈は炎症を起し始める。炎症は、以下の自然過程:
・マクロファージへと成熟する単球の増殖;
・単球/マクロファージ上のCD36などのスカベンジャー受容体の発現;及び
・傷を修復するため、平滑筋細胞(SMCs)の増殖
を引き起こす。
【0007】
同時に、損傷を受けた内皮を介して、これらの分子及び別の分子(リンパ球、酸化型低密度リポタンパク質(LDL)、フィブリン、血小板、細胞片、及びカルシウム)の動脈壁の脈管内膜への蓄積が生じる。この蓄積は、さらにシグナルタンパク質(タンパク質キナーゼC-α(PKC-α)、VCAMなど)のmRNA発現を調節する炎症性メディエーターをさらに刺激する。この炎症は、脈管内膜への上記分子の蓄積及びプラークの成長をさらに導く。
【0008】
単球は、白血球細胞の一種である。単球は、組織内へと入り込むときにマクロファージへと成熟し、そしてこのマクロファージが操作における白血球細胞である。マクロファージは、疾患を引き起こす微生物を取り込みそして殺傷し、そして損傷をうけた細胞を取り除く。蓄積されたマクロファージは、さらなる単球の支援をリクルートし、そして蓄積している酸化型LDLを取り除こうとする。マクロファージ細胞表面上のCD36受容体は、酸化型LDL分子に付着することにより使われる。この除去過程が制御されていないとき、泡沫細胞が形成される。これらの泡沫細胞はプラーク中にも蓄積する。
【0009】
CD36受容体は、細胞表面糖タンパク質の変種であり、そしてSR-A、MARCO、CD68、LOX-1、及びSR-BIを含むスカベンジャー受容体の大きい群の一部として知られている。CD36受容体を含むスカベンジャー受容体は、マクロファージの酸化型LDLの取り込み及び泡沫細胞形成のあいだ、重要であると考えられている。CD36受容体は、改変リポタンパク質の取り込みに寄与し、そしてトロンボスポンジン、I型及びIV型コラーゲン、脂肪酸、及びポリアニオン性リン脂質の受容体として作用することが知られている。
【0010】
成長中のプラークに対する継続した炎症反応のため、平滑筋細胞の増殖が過剰になったならば、これらの平滑筋細胞もまた、進行中のプラーク形成に寄与する。
【0011】
酸化型LDLのレベルの増大はまた、動脈壁の炎症を引き起こし、上記反応及びアテローム性のプラークの形成を導くということが考えられる。
【0012】
結果として、平滑筋細胞増殖を抑制し、単球増殖を抑制し、酸化型LDLの取り込みを低減し、又はスカベンジャー受容体の活性を抑制する物質は、アテローム性動脈硬化症の治療に有用でありうる。
【0013】
症状及び治療
アテローム性動脈硬化症に関連する症状の直接的な治療は現在存在しない。それゆえ、医療従事者は、血中コレステロールの高レベルなどの制御可能な危険因子を取り除くことを狙いにする。ここ数年、栄養士は高い危険性を有する個人に、種々の植物化学物質及び抗酸化栄養素、例えばビタミンEなどを含む広範囲の栄養食品を考慮することを促してきた。
【0014】
多くのアテロームを生成する血清コレステロールは、LDL分画内に運ばれるので、増大されたLDLレベルを低減することは、アテローム性動脈硬化症の第一の臨床手段である。しかしながら、これはアテローム性疾患過程を治療する間接的な方法である。なぜなら、これは直接的に開始を止めないからである。現在、アテローム性のプラークの形成を直接的に治療しそして低減するために利用できる有効な薬剤は存在しない。
【0015】
高脂血症化合物は、間接的に大動脈(心臓へと至る動脈)壁の細胞増殖を限定された程度にまで抑制するが、いくらかの効果を得るために長期間の治療を必要とする。長期間に渡り大量のコレステロールを取り除くことが、高脂血症化合物自体の危険性である。コレステロールは、多くの重要な化合物、例えばステロイド・ホルモン、ビタミンD、ユビキノン、胆汁酸、ドリコール、ファルネシル化タンパク質、ヘムA、及びtRNAの合成のための基質である。それゆえ、積極的なコレステロールの除去は、ある個人においては問題を伴うこともある。この場合もやはり、高脂血症化合物は、アテローム性動脈硬化症の基本的な原因、例えば酸化改変型LDL及び過度の平滑筋細胞増殖などを直接的に治療せず、そうして理想的な選択ではない。抗癌剤などの幾つかの化合物は、平滑筋細胞の過度の増殖を抑制するが、これらは重篤な副作用を引き起こし、それゆえ価値ある選択ではない。
【0016】
1の実験的薬剤が臨床的に研究されており、そしてそれは炎症部位での白血球細胞(単球/マクロファージ)の取り込みを低減するVCAM-1の量を低減することにより作用すると考えられている。
【0017】
CD36受容体又は他のスカベンジャー受容体の発現を直接的に変えて、アテローム性動脈硬化症を治療すると知られている薬剤は存在しない。
【0018】
現在、過度の平滑筋細胞増殖を直接的に治療するために利用できる選択は存在しない。
【0019】
トコフェロール
α-トコフェロール(ビタミンE)の低レベルは、冠動脈疾患の発生率の増加と関連した。逆に、α-トコフェロールの摂取の増加は、心臓疾患に対する保護的な効果を示した。ビタミンEは抗酸化剤であるので、LDLの酸化を妨げることによりアテローム性動脈硬化症の原因を標的にすると考えられる。アテローム性のプラークの形成を妨げることができるビタミンEの潜在的な非抗酸化メカニズムを試験する研究が行われた。そうした応答は、平滑筋細胞増殖の抑制、内皮細胞機能の維持、単球-内皮細胞付着の抑制、単球反応性の酸素種及びサイトカイン放出の抑制、並びに血小板付着及び凝集の抑制を含む。
【0020】
ビタミンEの臨床試験は、しかしながら、アテローム性動脈硬化症の治療を示す点では疑わしかった。それゆえ現在では、ビタミンEサプリメントは、アテローム性動脈硬化症に打ち勝つための臨床的選択として有用ではない。
【0021】
他の疾患及び病気
単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みが問題となる他の疾患及び病気が存在する。他の疾患の例は、アルツハイマー疾患及び糖尿病を含む。関連の病気の例は、ある薬剤、例えばリトノビール(ritonovir)により引き起こされる酸化型LDLのレベルの増加(医原的疾患)である。
【0022】
単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体発現、又は酸化型LDLの取り込みのうちの1以上を低減する手助けとなる治療であって、最小限の副作用であり、かつ用量が少ない治療への必要性が存在する。
【発明の開示】
【0023】
発明の要約
電子伝達剤のホスフェート誘導体が、下記の状態:
・ 平滑筋細胞の増殖
・ 単球/マクロファージの増殖
・ スカベンジャー受容体の発現;又は
・ 酸化型LDLの取り込み
の内の1以上の発生を抑制する点で非リン酸化型電子伝達剤よりも効果的であることを発見した。
【0024】
平滑筋細胞又は単球/マクロファージの増殖は、ゆっくりになるか又は共に抑制されることもあり、そしてスカベンジャー細胞発現又は酸化型LDL取り込みは、用量反応性の様式で、電子伝達剤のホスフェート誘導体により、低減され又は制限されることもある。
【0025】
本発明に従って、下記の状態:
・ 単球/マクロファージの増殖;又は
・ 平滑筋細胞の増殖;又は
・ スカベンジャー受容体の発現;又は
・ 酸化型LDLの取り込み、
の内の1以上の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0026】
当業者によって、単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体発現、又は酸化型LDLの取り込みに関連する疾患の治療に関して有用であるということが理解されるであろう。そうした疾患の例は、非限定的に糖尿病、アルツハイマー病、及びアテローム性動脈硬化症を含む。
【0027】
本発明は、症状を軽減し、アテローム性動脈硬化症を治療若しくは予防する方法であって、アテローム性動脈硬化症を有するか又は発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む方法をさらに含む。
【0028】
本発明はさらに、症状を軽減し、糖尿病を治療若しくは予防する方法であって、糖尿病を有するか又は糖尿病を発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む方法をさらに含む。
【0029】
本発明は、症状を軽減し、アルツハイマー病を治療若しくは予防する方法であって、アルツハイマー病を有するか又は発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む方法をさらに含む。
【0030】
本発明は脈管系において、プラークの形成を抑制する方法にも向けられる。
さらなる態様では、本発明は、下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みのうちの1以上の発生を抑制するために使用されるとき、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制する医薬の製造における、適切な担体又は希釈剤と併せた1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の使用を提供する。
【0032】
本発明の別の態様では、下記の状態:単球/マクロファージの増殖;平滑筋細胞の増殖;CD36受容体の発現;酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量をデリバリーするステップを含む方法が提供される。この態様の1の実施態様では、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量は、プロドラッグとしてデリバリーされる。
【0033】
好ましくは、対象は動物、より好ましくは該動物はヒトである。
本明細書中で「有効量」という用語は、下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するために十分である量のことをさすために使用される。
【0034】
典型的には、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量は、αトコフェロールの血漿又は組織の平均レベルの0.1〜10倍の量である(平均αトコフェロール血漿濃度は、30〜50μMである)。より好ましくは、有効量は、αトコフェロール血漿又は組織の平均レベルの2〜3倍である。
【0035】
症状を軽減し、アテローム性動脈硬化症などの疾患を治療し又は予防するための典型的な方法は、電子伝達剤の平均血漿/組織濃度がα-トコフェロールの平均血漿濃度の2〜10倍になるまで、対象に1日あたり50〜1000mgの1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体を投与することを含む。次に、電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の摂取量は、所望の血漿/組織濃度を維持するように調節されるであろう。
【0036】
「電子伝達剤」という用語は、本明細書中で、リン酸化されうる化学物質、並びに電子を受容して比較的安定な分子ラジカルを生成することができるか、又は2個の電子を受容して該化合物が可逆的な酸化還元システムに関与することを可能にする化学物質のクラスのことをさすために使用される。リン酸化されうる電子伝達剤化合物のクラスの例は、エナンチオマー形態の及びラセミ形態のα、β、γ、及びδトコールを含むヒドロキシ・クロマン;電子伝達剤K1及びユビキノンの還元形態であるキノール;レチノールを含む水酸化カロテノイド;カルシフェロール及びアスコルビン酸を含む。好ましくは、電子伝達剤は、トコフェロール及び他のトコール、レチノール、電子伝達剤K1、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる。
【0037】
より好ましくは、電子伝達剤はトコール及びそれらの混合体からなる群から選ばれる。トコールは、6:ヒドロキシ2:メチルクロマン(下記構造を参照のこと)、ここでR1、R2、及びR3は水素又はメチル基であってよく、つまりα-5:7:8トリ-メチル;β-5:8ジ-メチル;γ-7:8ジ-メチル;及びσ8メチル誘導体であってもよい。トコフェロールでは、R4は4:8:12トリ-メチル・トリデカンにより置換され、そして2、4、及び8位(*の位置を参照のこと)は、R又はS配置の立体異性体又はラセミ体であってもよい。トコトリエノールでは、R4は、4:8:12トリ-メチルトリデカ-3:7:11トリエンにより置換され、そして2位は、R又はSの立体異性体であるか又はラセミ体であってよい。最も好ましくは、電子伝達剤は、α-トコフェロールである。
【化1】

【0038】
「ホスフェート誘導体」という用語は、本明細書中で、リン酸化電子伝達剤の酸形態、金属塩、例えばナトリウム、マグネシウム、カリウム、及びカルシウムを含む該ホスフェートの塩、並びに他の誘導体のいずれかであって、ホスフェート・プロトンが他の置換基、例えばエチル若しくはメチル基又はホスファチジル基などの他の置換基により置換される他の誘導体を指すために使用される。該用語は、ホスフェート誘導体、特にリン酸化反応からもたらされる誘導体の混合体、並びに単独の各ホスフェート誘導体を含む。例えば、該用語は、モノ-トコロフェリル・ホスフェート(TP)及びジ-トコフェリル・ホスフェート(T2P)、並びに各TP及びT2Pのみを含む。適切な混合体は、国際特許出願第PCT/AU01/01475号に記載される。
【0039】
好ましくは、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体は、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる。最も好ましくは、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体は、モノ-トコフェリル・ホスフェート及びジ-トコフェリル・ホスフェートの混合体である。
【0040】
幾つかの状況では、水溶性の増加などのさらなる性質が好ましい場合、ホスフェート誘導体、例えばリン脂質などを使用することは必要であるかもしれない。ホスファチジル誘導体は、有機ホスフェートのアミノ・アルキル誘導体である。これらの誘導体は、R12N(CH2)nOH [式中、nは1〜6の整数であり、そしてR1及びR2は、H又は3以下の炭素を有する短いアルキル鎖でありうる]の構造を有するアミンから調製されうる。ホスファチジル誘導体は、電子伝達剤のヒドロキシル・プロトンを、ホスフェート実体で置き換えることにより調製される。次に該ホスフェート実体は、アミン、例えばエタノールアミン又はN,N’ジメチルエタノールアミンと反応されて、電子伝達剤のホスファチジル誘導体を作り出す。ホスファチジル誘導体の1の製造方法は、塩基性溶媒、例えばピリジン又はトリエチルアミンなどの塩基性溶媒を、オキシ塩化リンと併せて使用して、中間体を製造し、次に該中間体をアミンのヒドロキシ基と反応させて、対応するホスファチジル誘導体、例えばPコリルPトコフェリル・ジヒドロゲン・ホスフェート(P cholyl P tocopheryl dihydrogen phosphate)を製造する。
【0041】
幾つかの状況では、改良された安定性又はデリバリー容易性などの付加的な性質が有用である場合、電子伝達剤のホスフェート誘導体の複合体が使用されてもよい。「ホスフェート誘導体の複合体」という用語は、電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体と、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び国際特許出願第PCT/AU01/01476号において開示されるこれらのアミノ酸を多く含むタンパク質からなる群から選ばれる1以上の複合体試薬との反応性生物をさす。
【0042】
好ましい複合体試薬は、アルギニン、リジン、及び三級置換アミン、例えば以下の式:NR123
[式中、
1は、C6〜C22の直鎖又は分枝鎖が混合されたアルキル・ラジカルを含む基、並びにそれらのカルボニル誘導体から選ばれ;
2及びR3は、以下の:H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3Xを含む群から独立して選ばれ、ここでXはH、Na、K、又はアルカノール・アミンであり、但しR2及びR3は両方ともがHであってはならない;そして
1がRCOであるとき、R2はCH3であってよく、かつR3は(CH2CH2)N(C24OH)-H2CHOPO3であってよく、或いはR2及びR3は一緒になってN(CH2)2N(C24OH)CH2COO-であってよい]
で表される化合物からなる群から選ばれる。
【0043】
好ましくは、複合体形成試薬は、アルギニン、リジン、又はラウリルイミノジプロピオン酸を含み、ここで複合体形成は、アルカリ窒素中心とリン酸エステルとの間で生じて、安定な複合体を形成する。
【0044】
電子伝達剤のホスフェート誘導体は、種々の投与形態、例えばサプリメント、経腸栄養剤、非経口形態、坐剤、経鼻デリバリー形態、パッチ及びクリームを含む経皮デリバリー形態を介してヒト又は動物に投与されてもよい。
【0045】
例えば、電子伝達剤のホスフェート誘導体は、経口又は非経口投与形態により投与されてもよい。これらは、錠剤、粉末、咀嚼錠、カプセル、経口懸濁液、懸濁液、乳濁液、又は液体、小児用製剤、経腸栄養剤、栄養補給食品、及び機能性食品を含む。
【0046】
投与形態は、例えばスターチ又はポリマー性結合剤、甘味剤、着色剤、乳濁剤、被膜などの投与形態の製造において日常的に使用される任意の添加剤をさらに含んでもよい。他の適切な添加剤は、当業者にとって明らかであろう。
1の実施態様では、投与形態は、国際特許出願PCT/AU01/01206号において開示される腸溶コーティングを有する。該文献は本明細書中に援用される。
【0047】
別の実施態様では、投与形態は、国際特許出願PCT/AU02/01003号において開示される局所製剤である。該文献は本明細書中に援用される。
【0048】
投与形態は、電子伝達剤のホスフェート誘導体の活性を拮抗作用しない他の医薬化合物を含んでもよい。他の医薬化合物は、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の前に、と共に、又はの後に投与されてもよい。好ましくは、該他の医薬化合物は、高コレステロール血症化合物である。より好ましくは、他の医薬化合物は、スタチン、スタチンのホスフェート誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。適切なスタチンの例は、プラバスタチン、ロバスタチン、及びアトルバスタチン、及びそれらのホスフェートを含む。
【実施例】
【0049】
本発明は、さらに以下の非限定的な例において例示されそして説明されるだろう。
実施例1
この実施例は、ラット大動脈の平滑筋細胞増殖に関するトコフェロール及びトコフェリル・ホスフェートの効果を調べる。
【0050】
増殖研究において使用されるラットの大動脈平滑筋細胞(RASMC)は、健常の線維状のプラークがない成熟ラットの大動脈の内膜及び中膜から由来する。この細胞系列は、アテローム性動脈硬化症の研究における一般に認められたモデルである。なぜなら、動脈の平滑筋の集団の増加は、アテローム性動脈硬化症の脈管内膜の損傷部において見られるからである。RASMCは、2回目の継代時に凍結保存され、そして少なくとも16回集団倍加増殖できる。RASMCは、細胞増殖及び肥大により種々の因子に応答し、これらは欠陥疾患におけるアテローム性動脈硬化症の顕著な指標となる。RAMSCは、巨大血管平滑筋細胞の成長及び分化の研究によく適しており、そして生きたラット・モデルに相関するin vitroモデルとして役立つ。
【0051】
材料
・6ウェル・プレート(細胞計数)
・96ウェル・プレート(MTTアッセイ)
・DMEM/F12培地―GIBCO/Life Technologies
・ウシ胎児血清(血清)
・ラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)p:4 Cell Applications, Inc.
・ゲンタマイシン-GIBCO/Life Technologies
・セル・タイター96アクエオス・ワン・ソリューション(Cell Titer 96 Aqueous One Solution)(MTT)-Promega
・エタノール(EtOH)、1/1000
・トコフェロール(0.25、0.5、1、5、10、20、50、100μM)
・トコフェロール・ホスフェート(TPとT2Pとの混合体)(0.25、0.5、1、5、10、20、50、100μM)
【0052】
平滑筋細胞増殖― 細胞計数
ラットの大動脈平滑筋細胞(RAMSC)を6ウェル・プレート内の成長培地(基本培地+10%FBS)中にまいた(50000細胞/ウェル)。24時間後、細胞をハンクス緩衝塩溶液で2回洗浄し、そして血清欠失培地(基本培地+0.2%FBS)を各ウェルへと加えた。細胞を48時間血清飢餓状態にした。次に処置を成長培地中で調製し、そして各ウェルに加えた(3ml/ウェル)。各処置を三回行った。平滑筋細胞の増殖に関するトコフェロール及びトコフェロール・ホスフェートの効果は、8つの濃度で試験した:0.25、0.5、1、5、10、20、50、及び100μM。コントロール処置は、成長培地及び成長培地+溶媒(EtOH、1/1000)を含んだ。37℃、5%CO2にて72時間のインキュベーションの後に、細胞を計数した。
【0053】
結果
細胞を計数することにより、細胞増殖を評価し、そして定量した。試験化合物を加える前に、細胞を0.2%血清を加えた基本培地中で48時間血清飢餓状態にして、その後に細胞を計数した。3個のウェルの平均の細胞数は〜60000であった。この数は、飢餓状態前にまかれた細胞数(50000)を超えていた。それゆえ、細胞を生存可能であると決定し、そして前述のように各ウェルに処理を加えた。
【0054】
細胞を化合物で72時間処理し、そして計数した。図1及び図2は、それぞれトコフェロール及びトコフェロール・ホスフェートについて得られた結果を示す。試験された条件下では、試験化合物が希釈されている溶媒、EtOH(1/1000)は、細胞増殖に影響を及ぼさなかった。トコフェロールは、1、5、10、20、50、及び100μMである程度だけ細胞増殖を抑制した。しかしながら、トコフェロール・ホスフェートは、1、5、10、20、50、及び100μMにて用量依存的な様式で、細胞増殖を抑制した。細胞増殖の100%抑制を、100μMトコフェロール・ホスフェートで観測した(図3)。
【0055】
考察
トコフェリル・ホスフェート混合体は、5μM、20μM、50μM、及び100μMにて用量依存的な様式で過剰の細胞増殖を抑制できるということを結果が示す。重要なことは、新たな細胞形成の完全な抑制は、50μMで達成されたということである。
【0056】
α-トコフェロール処理は、1μM、5μM、及び10μMで細胞増殖を部分的に抑制したが、それより高い投与量は完全には増殖を低減しなかった。増殖の最適抑制は、約60%あたりでプラトーに達し、これは既刊文献と一致した。このことは、αトコフェロールを当てにならないものとし、そうしてアテローム性動脈硬化症における使用に適さないものにする。これに基き、そして最近の既刊文献に従うと、アテローム性動脈硬化症に対するαトコフェロールの使用には論理的根拠がない。
【0057】
α-トコフェロールが低投与量で働いて部分的な抑制をもたらすにもかかわらず、トコフェリル・ホスフェートは、明らかにより強力な抗増殖薬である。なぜならトコフェリル・ホスフェートは100%の細胞増殖抑制を達成できるからである。さらに、過度の細胞増殖の抑制が投与量依存的な様式で生じ、それにより、トコフェリル・ホスフェートの混合体が、アテローム性動脈硬化症の治療における使用に適したものとする信頼できかつ予測できる治療となることが示される。
【0058】
要約すると、トコフェリル・ホスフェート混合体は、用量依存的な様式で作用し、そしてそれゆえα-トコフェロールよりも信頼でき、そして過度の細胞増殖を効果的に抑制することを提供する。より重要なことに、トコフェリル・ホスフェート混合体が、50及び100μMで100%の細胞増殖抑制を達成した。これは、トコフェリル・ホスフェート混合体は、アテローム性動脈硬化症の直接的な治療として使用されうるということを示した。なぜならトコフェリル・ホスフェートは、驚くべきことに、予想できる様式で平滑筋細胞増殖の初期の開始ステップを予防することができるからである。
【0059】
実施例2
この実施例は、α-トコフェリル・ホスフェート(TP)、ジ-トコフェリル・ホスフェート(T2P)、TP/T2P混合体、及びαトコフェロールの抗増殖活性を、細胞計数アッセイの2つのタイプ:接着細胞計数及びMTSアッセイを使用して評価する。
【0060】
MTS増殖アッセイは、接着細胞計数アッセイをさらに支持しそして補完するために行われた。MTSアッセイは、細胞増殖を評価するための確立された方法であり、MTSアッセイは、プレートに接着する生細胞(接着細胞計数において同じである)と、接着されておらず実験過程で培地中に漂っている生細胞(該細胞は接着細胞計数では見逃される)を計数する。
【0061】
材料
6ウェル・プレート(細胞計数)
96ウェル・プレート(MTSアッセイ)
DMEM/F12培地 - GIBCO/Life Technologies
ウシ胎児血清(血清)
ラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)p:4Cell Applications, Inc.
ゲンタマイシン -GIBCO/Life Technologies
セル・タイター96アクエアス・ワン・ソリューション(MTT)-Promega
エタノール(EtOH)、1/1000
トコフェロール・SIGMA(0、20、50、100μM)
TP/T2P混合体(80%:20%)(0、20、50、100μM)
純トコフェリル・ホスフェート(0、20、50、100μM)
純ジ-トコフェリル・ホスフェート(0、20、50、100μM)
【0062】
結果
培地のみ及び培地+溶媒との間に統計的差異はなかった。データーの全ては、溶媒コントロールからの差の割合(%)から得た(つまり、グラフ上で溶媒コントロールを0%とした)。
試験1.接着細胞の計数
本試験では、該プレートの底に残る細胞を計数し、そして抗増殖活性を、プレートに接着して残る生細胞の数に基いて評価した。T2P及びTP/T2P混合体は、両方とも強力な抗増殖剤であり、平滑筋細胞増殖の最大抑制(85%〜90%)を引き起こし、一方TPは、このアッセイでは平滑筋細胞増殖を抑制しなかった(図4)ということを該結果は示唆する。
【0063】
試験2.MTSアッセイ
本試験からの結果により、T2P及びTP/T2P混合体が、100μM濃度で、85〜90%まで、平滑筋細胞増殖を抑制することができるということがもう一度示された(図5)。興味深いことに、純粋なTPは、100μMで平滑筋細胞増殖を(85%まで)抑制することができる。これにより、TP抗増殖効果に対するメカニズムが、T2Pのみ及びTP/T2P混合体についてのメカニズムとは異なるということが示唆される。
【0064】
結論
これらの発見により、TP、T2P、及びTP/T2P混合体は、α-トコフェロールと比較したとき、全て強力な抗増殖薬であるということを示唆される。TPは、平滑筋細胞増殖を抑制する点で、T2Pと同程度に活性である。しかしながら、TPは、T2P、TP/T2P混合体及びα-トコフェロールに対して異なる様式で抗増殖活性を発揮するようである。
【0065】
実施例3
本試験の狙いは、CD36の発現、酸化型LDL(oxLDL)の取り込み、及びin vitroでのヒトTHP-1単球の成長について、TP/T2P混合体の効果を、トコフェロールの効果と比較することであった。
【0066】
方法
細胞培養:トコフェロール及びTP/T2P混合体を各々エタノール中に溶解し、そしてストック溶液の濃度を分光光度法により確認した。単球(THP-1)をRPMI/10%FCS中で成長させた。
【0067】
oxLDLの標識:OxLDL(90%〜100%酸化)をIntracel Corp.から購入した。少量のLDLを、CuSO4(20mmol/L)で18〜22時間37℃にて酸化した。LDL酸化を、アガロースゲル上の特徴的なスメア・バンドの形成により確認した。oxLDLの標識を、基本的に以前に記載されるように行った。oxLDLを、リポタンパク質欠損血清(Sigma)中のDiO(Molecular Probes)で、15時間37℃にてインキュベーションした。標識されたoxLDL(oxLDL-DiO)をKBr勾配上の超遠心により精製し、そして生理食塩水-EDTA(1.5mol/L・NaCl-0.01%EDTA)を数回取り替えて6時間透析した。
【0068】
oxLDLの取り込み:oxLDLの取り込みを蛍光活性化細胞選別(FACS)で試験した。FACSでは、細胞を16時間50μMのトコフェロール、トコフェリル・ホスフェート、又はエタノール溶媒(コントロール)で前処理し、そして次にoxLDL-DiO(5μg/ml培地)で6時間インキュベーションした。競合実験では、細胞をモノクローナル抗CD36抗体(60μg/5mlDMEM)(Ancell)、非特異アイソタイプ適合抗体(マウスIgM、Ancell)、又は未標識oxLDL(100μg/5mlDMEM)(Intracell Corp)とインキュベーションした。その後、細胞をPBSで三回洗浄し、そしてPBS-3mg/mlBSAで2回洗浄し、そしてトリプシンで接着を剥がした(0.25%トリプシン、0.03%EDTA)。細胞をDMEM/10%FCSで回収し、遠心し、PBSで2回洗浄し、そして次にPBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定した。FACSをFACScan(Becton-Dickinson)で行なった。細胞の自己蛍光を、処理されたサンプルの蛍光から引くことによって、データーを計算した。
【0069】
薄層クロマトグラフィー:使用された溶出剤は、クロロホルム/ヘキサン(1:1v/v)であり、進行時間は20分であった。検出を254nmのUVによって行った。
【0070】
結果及び考察
CD36スカベンジャー受容体の表面発現(図6):
図6は、蛍光抗体を取り込んだ細胞の数により示される、時間に対する細胞数の変化を表す。TP/T2P混合体に対するピークは、コントロール(トコフェロール)のピークから左へとシフトし、該抗体を取り込んだ細胞が少なく、それゆえCD36受容体の発現がより少ないということが示される。
【0071】
THP-1単球(ヒト由来)の処理を、最低5μg/mlのTP/T2P混合体で処理し、CD36発現の実質的な低下をもたらした。コントロール細胞(トコフェロールで処理される)は、抗-CD36蛍光抗体で強力に蛍光標識することによって示されるように、大量のCD36受容体を発現した。5μgのTP/T2P混合体は、その左方向へ大きくシフトすることにより示されるように、CD36受容体発現を抑制することができる。
【0072】
oxLDL-DiOの結合及び取り込み(図7):
図7は、標識されたoxLDLを取り込んだ細胞数によって示される、時間に対する細胞数の変化を表す。曲線は、全て同じ様であり、そのことにより、丁度5及び25μg/mlの濃度でのTP/T2P混合体は、22μg/ml(50μM)でのトコフェロール(コントロール)と同様の効果をもたらした。矢印は、25μg/mlでのTP/T2Pの混合体が、oxLDL取り込みの有意に大きい減少を達成したということを強調する。
【0073】
TP/T2PをヒトTHP-1単球で試験した。oxLDL-DiOの結合は、5μg/mlで弱く抑制され、そして25μgではそれよりは強く抑制された。oxLDL-DiOの取り込みは、既に5μg/mlで抑制され、そして25μg/mlではずっと強力に抑制された。
【0074】
oxLDL-DiOの取り込みシグナル(ピークの中央値)は、50μM濃度のトコフェロールで処理された細胞において33%減少した。TP/T2P混合体で処理された細胞において同じ効果が、10μM未満の濃度で得られた。トコフェロールによるCD36発現の抑制が、CD36媒介性のoxLDL取り込みの減少をもたらし、そして同じ効果が、より低濃度のTP/T2P混合体で得られるといういことが推論されうる。oxLDL-DiOの高い取り込み限度容量を有する細胞数(矢印で表される)は、TP/T2P混合体により高度に抑制された。
【0075】
TP/T2P混合体によるTHP-1単球の成長抑制:単球増殖は、アテローム性動脈硬化症の開始及び進行において重要な出来事である。図8は、トコフェロール(T)は、エタノール・コントロール(E)に対してこの増殖を抑制することができない。一方、TP/T2P混合体は、特に48時間の処理後に30μM(TP1)及び60μM(TP2)での増殖を抑制した。
【0076】
結論
実施例により、CD36スカベンジャー受容体が、TP/T2Pにより有意に抑制されるということが示される。そうしたCD36発現の抑制は、酸化型LDLの取り込みの減少を導く。さらに、TP/T2P混合体は、単球の増殖を抑制する。この出来事は、TP/T2P混合体に独特であるようであり、そしてトコフェロールの使用によっては達成されなかった。トコロフェロールに関して得られた結果は、以前にトコフェロールについて公表された結果と一致する。
・ TP/T2P混合体は、ヒト単球においてCD36受容体の発現を有意に減少させることが示された。一般的に、TP/T2P混合体の有効性は、トコフェロールより5〜10倍高いということを結果が示した。
・ 単球による酸化型LDLの結合及び取り込みは、トコフェロールと比べたとき、TP/T2Pにより有意により抑制された。10μM・TP/T2Pで見られた抑制程度は、50μMトコフェロールを必要とした(つまり、5倍未満のTP/T2P混合体を必要とした)。
・ TP/T2Pは、有意にヒト単球細胞の増殖を抑制した(TP/T2Pで90%超の抑制、しかしトコフェロールで増殖の抑制なし)。
【0077】
酸化型コレステロールの取り込みを減少させ、oxLDL取り込みを次に減少させるCD36受容体発現を抑制し、並びに単球の増殖及び単球の移動を抑制する点で、TP/T2Pがα-トコフェロールより有効であるということが当該実験により示された。
【0078】
より重要なことに、TP/T2Pは、用量依存的な様式で働き、そしてトコフェロールよりも極めて低減された効果を提供した。
【0079】
本明細書及び特許請求の範囲中で使用される「含む」という単語及び「含む」という用語の形態は、特許請求される発明を任意の変種又は付加を排除するように制限しない。
【0080】
本発明に対する改変及び改良は、当業者にとって明らかであるだろう。そうした改変及び改良は、本発明の範囲内となるように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、細胞増殖に関するトコフェロールの効果を示す。
【図2】図2は、細胞増殖に関するトコフェリル・ホスフェート混合体の効果を示す。
【図3】図3は、細胞増殖に関するトコフェリル・ホスフェートの効果を示す。
【図4】図4は、種々の組成物による細胞増殖の抑制(接着細胞数)を示す。
【図5】図5は、種々の組成物による細胞増殖の抑制(MTS)を示す。
【図6】図6は、THP-1単球及び抗CD36-FITCのFACSを示す。
【図7】図7は、THP-1単球におけるocLDL-DiOの結合及び取り込みを示す。
【図8】図8は、THP-1単球の成長抑制を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の状態:
-単球/マクロファージの増殖;
-平滑筋細胞の増殖;
-CD36受容体の発現;又は
-酸化型LDLの取り込み
の内の1以上の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
前記電子伝達剤が、トコール及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σトコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電子伝達剤が、α-トコフェロールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体が、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体が、モノ-トコフェリル・ホスフェートとジ-トコフェリル・ホスフェートの混合体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1以上の他の医薬化合物を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上の他の医薬化合物が、スタチン、スタチンのホスフェート誘導体、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有効量が、αトコフェロールの平均血漿濃度の0.1〜10倍の量である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量が、α-トコフェロールの平均血漿濃度の2〜3倍の量である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体が、電子伝達剤のホスフェート誘導体の1以上の複合体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
下記の状態:
-単球/マクロファージの増殖;
-平滑筋細胞の増殖;
-CD36受容体の発現;又は
-酸化型LDLの取り込み
の内の1以上の発生を抑制する方法であって、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項13】
下記の状態:
-単球/マクロファージの増殖;
-平滑筋細胞の増殖;
-CD36受容体の発現;又は
-酸化型LDLの取り込み
の内の1以上の発生を抑制する方法であって、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項14】
下記の状態:
-単球/マクロファージの増殖;
-平滑筋細胞の増殖;
-CD36受容体の発現;又は
-酸化型LDLの取り込み
の内の1以上の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量をデリバリーするステップを含む、前記方法。
【請求項15】
前記有効量の1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体が、プロドラッグとしてデリバリーされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
平滑筋細胞の増殖の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
平滑筋細胞の増殖の発生を抑制する方法であって、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
平滑筋細胞の増殖の発生を抑制する方法であって、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
単球/マクロファージの増殖の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
単球/マクロファージの増殖の発生を抑制する方法であって、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
単球/マクロファージの増殖の発生を抑制する方法であって、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
スカベンジャー受容体の発現の発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエロール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
スカベンジャー受容体の発現の発生を抑制する方法であって、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
スカベンジャー受容体の発現の発生を抑制する方法であって、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
酸化型低密度リポタンパク質の取り込みの発生を抑制する方法であって、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
酸化型低密度リポタンパク質の取り込みの発生を抑制する方法であって、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
酸化型低密度リポタンパク質の取り込みの発生を抑制する方法であって、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
症状を軽減し、アテローム性動脈硬化症を治療若しくは予防する方法であって、アテローム性動脈硬化症を有するか又は発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
症状を軽減し、アテローム性動脈硬化症を治療若しくは予防する方法であって、アテローム性動脈硬化症を有するか又は発達させる危険性がある対象に、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項35】
症状を軽減し、糖尿病を治療若しくは予防する方法であって、糖尿病を有するか又は発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項36】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
症状を軽減し、糖尿病を治療若しくは予防する方法であって、糖尿病を有するか又は発達させる危険性がある対象に、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
症状を軽減し、アルツハイマー病を治療若しくは予防する方法であって、アルツハイマー病を有するか又は発達させる危険性のある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
症状を軽減し、アルツハイマー病を治療若しくは予防する方法であって、アルツハイマー病を有するか又は発達させる危険性がある対象に、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
脈管系において、プラーク形成の発生を抑制する方法であって、脈管系においてプラーク形成を有するか又はプラーク形成の危険性がある対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
脈管系においてプラーク形成の発生を抑制する方法であって、脈管系におけるプラーク形成を有するか又はプラーク形成の危険性がある対象に、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
下記の状態:単球の増殖、平滑筋細胞の増殖、酸化型低密度リポタンパク質又はスカベンジャー受容体の発現の内の1以上の発生に関連する炎症を軽減する方法であって、対象に、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
下記の状態:単球の増殖、平滑筋細胞の増殖、酸化型低密度リポタンパク質又はスカベンジャー受容体の発現の内の1以上の発生に関連する炎症を軽減する方法であって、対象に、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するために使用されるとき、1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む、医薬組成物。
【請求項48】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するために使用されるとき、α-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む、医薬組成物。
【請求項50】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するために使用されるとき、モノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量を含む、医薬組成物。
【請求項51】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するための医薬の製造における、適切な担体又は希釈剤をともなう1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量の使用。
【請求項52】
前記電子伝達剤が、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、σ-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、α-トコフェロール、β-トコフェロール、σ-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するための医薬の製造における、適切な担体又は希釈剤をともなうα-トコフェロールの1以上のホスフェート誘導体の有効量の使用。
【請求項54】
下記の状態:単球/マクロファージの増殖、平滑筋細胞の増殖、スカベンジャー受容体の発現、又は酸化型LDLの取り込みの内の1以上の発生を抑制するための医薬の製造における、適切な担体又は希釈剤をともなうモノ-トコフェリル・ホスフェート、ジ-トコフェリル・ホスフェート、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる1以上の電子伝達剤の1以上のホスフェート誘導体の有効量の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−515872(P2006−515872A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500409(P2006−500409)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000056
【国際公開番号】WO2004/064831
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】