説明

抗炎症および免疫抑制特性を有するオキサジアゾール誘導体

下記式(I)
【化1】


の多環式化合物および抗炎症剤および免疫抑制剤としてのそれらの使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環式化合物、それらの製造方法、医薬としてのそれらの使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0002】
より具体的には、第1の局面において本発明は、式I
【化1】

〔式中、
i. Rは式(a)
【化2】

{式中、ZはCHまたはNであり;
各RおよびRは独立して、H;ハロゲン;所望によりOH、C1−4アルコキシ、=N−OHもしくは=N−OC1−4アルキルで置換されたC1−8アルキル;ハロ−C1−8アルキル;CN;C1−8アルコキシ;ハロ−C1−8アルコキシ;C1−8アルキルチオ;R−CO(ここで、RはC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである);またはフェニルであるか;または
およびRはそれらが結合した2個の炭素原子と一体となって他の環、例えば式(b)
【化3】

(式中、ZはCHまたはN、好ましくはCHであり;
はC1−4アルキル;C3−6シクロアルキル;フェニル;またはフェニル−C1−4アルキルであり;そして
各RおよびR’は独立して、C1−4アルキルである)
の基を形成する;
ただし、多くともRおよびRの一方がHである}
の基であり;
は−R−NR{ここで、Rは所望により置換されたC1−4アルキレン;C1−4アルキレン(ここで、アルキレン鎖の炭素原子の2個の結合が
【化4】

を形成し、pは1、2または3である)であり;そして各RおよびRは独立してH、所望により置換されたC1−8アルキル、R−COまたはヘテロ環式基であるか、またはRおよびRはそれらが結合している窒素原子と一体となって所望により置換されたヘテロ環式基を形成し;そして
はC1−4アルキル;C3−6シクロアルキル;フェニル;またはフェニル−C1−4アルキルである}
であるか;または
は所望により置換されたヘテロ環式基であり;そして
各RおよびRはHである;
ただし、
1. Rが−CH−NHであるとき、Rは2−CF−4−ビフェニリル、3−CF−4−トリフルオロエトキシ−フェニルまたは3−CF−4−イソプロポキシ−フェニル以外であり;そして
2. Rが−C(CH−NHであるとき、Rは2−CF−4−ビフェニリル以外であるか;あるいは
【0003】
ii. Rは置換ビフェニリル、4−フェノキシ−フェニルまたは4−(フェニル−C1−4アルコキシ)−フェニル(ここで、少なくとも1個のフェニル基はモノ置換されている);またはハロゲン、ニトリル、C1−8アルキル、ハロC1−8アルキル、C1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−C1−8アルコキシ、C1−8アルキル−C1−8アルコキシ、C1−8アルキル−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルキル−C1−8アルコキシ、ハロC1−8アルキル−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ−C1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ−ハロC1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−C1−8アルキル、ハロC1−8アルコキシ−C1−8アルキル、C1−8アルコキシ−ハロC1−8アルキル、ハロC1−8アルコキシ−ハロC1−8アルキル、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキル−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル−C1−4アルコキシ、C3−6シクロアルキル−オキシ、フェニル−C1−4アルコキシおよびヘテロ環式−C1−4アルコキシから成る群から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニルであり;
はSONH;またはSONH−R10−COOH(ここで、R10はO、SまたはC=CHで所望により中断されたC1−6アルキレンである)であり;
およびRの一方はHまたはC1−4アルキルであり;他方はC1−4アルキルまたはハロC1−4アルコキシである;
ただし、RがSONHでありRがエチルであるとき、R
a) CFおよび所望によりフルオロで置換されたビフェニリル;または
b) CFおよびシクロヘキシルで置換されたフェニル;
以外である〕
の化合物またはその塩を提供する。
【0004】
式Iの化合物において、式(a)の基における典型的な結合点は、置換基RまたはRに占有されていない何れかの位置である。好ましくは置換基RおよびRはオキサジアゾール環に対してメタおよびパラ位である。
同様に、式(b)の基における典型的な結合点は、基Zを担持する環の何れか自由な位置である。
【0005】
ハロまたはハロゲンは、フッ素、塩素または臭素、好ましくはフッ素または塩素であり得る。基としてのまたは基の中に存在するアルキルまたはアルコキシは、直鎖または分枝鎖であり得る。C1−4アルキレンは直鎖または分枝鎖であり得る。
基または基の中の部分としてのハロ−アルキルまたはハロ−アルコキシは、1〜5個のハロゲンで置換された対応するアルキルまたはアルコキシ、例えばCFまたはCF−CH−O−であり得る。
【0006】
ヘテロ環式基はN、SおよびOから選択される1または2個のヘテロ原子を有し、かつ所望により置換されている5または6員飽和ヘテロ環式環であり得る。好適な例には例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニルまたはモルホリノが含まれる。ヘテロ環式環が置換されているとき、環状炭素または窒素原子上に置換基が存在し得る。環状炭素上の置換基の例は、例えばOH、C1−4アルキル、C1−4アルコキシまたはヒドロキシ−C1−4アルキレンであり得る。窒素原子上の置換基の例は、C1−4アルキルであり得る。
【0007】
が所望により置換されたC1−6アルキレンであるとき、アルキレンはOH、C1−4アルコキシ、ヒドロキシ−C1−4アルキレンおよび/またはC1−4アルコキシ−C1−4アルキレンで置換されていてもよい。
またはRが所望により置換されたC1−6アルキルであるとき、置換基はOHまたはC1−4アルコキシであってよく;好ましくは置換基はアルキル鎖の末端炭素原子上に存在する。
およびRがそれらが結合している窒素原子と一体となってヘテロ環式基を形成するとき、RとRによって形成されるヘテロ環式基が窒素原子によって結合していない限り、これは上記定義のヘテロ環式環であり得る。
【0008】
が置換ビフェニリル、4−フェノキシ−フェニルまたは4−(フェニル−C1−4アルコキシ)−フェニルであるとき、一方および/または両方のフェニル基が、例えばハロゲン、C1−8アルキル、Cアルコキシ、ハロC1−8アルキル、ハロC1−8アルコキシまたはニトリルで置換、例えばモノまたはジ置換されていてもよい。好ましくはビフェニリル、4−フェノキシ−フェニルまたは4−(フェニル−C1−4アルコキシ)−フェニルの少なくとも1個のフェニル基が例えば上記のとおりに、モノ置換されている。あるいはビフェニリル、4−フェノキシ−フェニルまたは4−(フェニル−C1−4アルコキシ)−フェニルの各フェニル基が、例えば上記のとおりに、例えばハロC1−8アルキルで、および所望により第2のフェニル基の置換基としてハロゲン、C1−8アルキルまたはCアルコキシ、ハロC1−8アルキルまたはハロC1−8アルコキシでモノ置換されている。
【0009】
が置換フェニルであるとき、これはモノまたはジ置換されていてもよい。Rがジ置換フェニルであるとき、一方の置換基は好ましくはハロC1−8アルキルまたはハロC1−8アルコキシであってよく、そして第2の置換基は上記のとおりであり得る。
【0010】
式Iの化合物について、下記意味が独立して、集合的に、またはいずれかの組合せもしくはサブコンビネーションにおいて好ましい:
(i) Rが式(a)の基である;
(ii) ZがCHである;
(iii) Rが炭素原子で結合した−R−NRまたはヘテロ環式環、ここで可変部は上記の意味を有する;
(iv) RがHである;
(v) RおよびRが他の環を形成せず、そして独立してH;ハロゲン;OHまたはC1−4アルコキシで所望により置換されたC1−8アルキル;ハロ−C1−8アルキル;CN;C1−8アルコキシ;ハロ−C1−8アルコキシ;およびフェニルから選択される;ただし、少なくともRまたはRの一方がHでない;
(vi) RおよびRがH以外である;
(vii) RおよびRが同時にいずれもCアルコキシではない;
(viii) Rが式(a)の基であり、そしてRが炭素原子で結合したヘテロ環式環である。
【0011】
式Iの化合物は遊離形または塩形、例えば有機酸もしくは無機酸、例えば塩酸もしくは酢酸との酸付加塩形で存在していてもよい。
式Iの化合物が光学異性体、ラセミ体またはジアステレオマーの形態で存在していてもよいことが理解される。例えば、Rが分枝鎖アルキレンまたは置換アルキレンであるとき、Rは不斉炭素原子を含み得る。本発明は全てのエナンチオマーおよび配座異性体およびそれらの混合物を包含することが理解される。同様の考えが上記不斉炭素原子を示す出発物質との関係に適用される。
【0012】
本発明はまた、式Iの化合物の製造方法であって、
a) 式II(Rは上記定義のとおりである)の化合物またはその官能性誘導体を、式IIIの化合物と縮合すること(経路A);または
b) 式IVまたはVの化合物を式Iの化合物に変換すること(経路BまたはC):
そして
遊離形または塩形で得られた式Iの化合物を回収すること、そして所望により、遊離形で得られた式Iの化合物を所望の塩形に、あるいはその逆に変換することを含んで成る、方法を含む。
スキーム1
【化5】

【0013】
全ての反応を、溶媒、例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、キシレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、tert−ブチルメチルエーテル中で行うことができる。全ての化合物を、当業者に既知の方法(例えば結晶化、シリカゲルクロマトグラフィー、HPLC)を用いて単離することができる。
【0014】
経路Aに従って、式IIの化合物を式IIIのN−ヒドロキシアミジンと、カップリング剤、例えばEDCまたはHOBtの存在下、そして好適な塩基(例えば、3級アミン、例えばEtNまたはHuenig塩基)の存在下または非存在下、好適な溶媒(例えばジオキサン、THF、トルエン、DMF、アセトニトリル)中で縮合することができる。式IIの酸の官能性誘導体は例えば、酸クロライドまたは活性化エステルであり得る。式IIの酸は縮合の前に対応する酸クロライドとして、または活性化エステル(例えばスクシンイミドエステル)として活性化されてもよい(スキーム2参照)。
スキーム2:
【化6】

【0015】
経路Bに従って、カルボキシル官能基またはアミン官能基の脱保護によって、式IV−a,bの化合物をそれぞれ式I−a,bの化合物に変換する。カルボン酸(例えばエステル)およびアミンの標準的な保護基を用いる(例えばカルバメート)。経路Bを用いて、当業者に既知の方法を用いて式IV−cの化合物の窒素原子をアルキル化またはアシル化して、式IVaからI−cの化合物を得る(スキーム3参照)。
スキーム3:
【化7】

【0016】
経路Cに従って、YがOHである式Vの化合物を標準的な条件を用いて(例えば、KCO、CsCOまたはNaOHのような塩基、および溶媒、例えばTHF、エタノール、アセトニトリル、アセトン、および適当な求電子アルキル化剤を用いて)アルキル化して、あるいはYがFである式Vの化合物を標準的な条件を用いて(例えばKCO、CsCOまたはNaHの様な塩基、および溶媒、例えばTHF、アセトニトリル、DMFおよび適当なアルコールを用いて)フッ素を置換して、式Vの化合物をRがC1−4アルコキシである式Iの化合物に変換することができる(スキーム4参照)。
スキーム4:
【化8】

【0017】
出発物質として用いる式IIの化合物を、下記のとおりに製造することができる:
式VI−a,bの化合物が商業的に入手可能ではないか、または文献に記載されていないとき、これは2種の経路に従って合成することができる。式VI−aのビアリールカルボン酸は、Pd触媒鈴木条件を用いて、4−クロロ安息香酸および対応するアリールボロン酸から得ることができる(スキーム5参照)。式VI−bの4−アルコキシ安息香酸は、(Y=Fのとき)標準的な条件を用いて(例えば、KCO、CsCOまたはNaHのような塩基、およびTHF、アセトニトリル、DMFおよび適当なアルコールのような溶媒を用いて)Fを置換することにより、あるいは(Yがヒドロキシ基であるとき)標準的な条件を用いて(例えば、KCO、CsCOまたはNaOHのような塩基、およびTHF、エタノール、アセトニトリル、アセトンのような溶媒、および適当な求電子試薬を用いて)アルキル化することにより、得ることができる(スキーム5参照)。
スキーム5:
【化9】

【0018】
出発物質を用いて式IIIの化合物を下記のとおりに製造することができる:
式IIIの化合物が商業的に入手可能ではないか、または文献に記載されていないとき、これは対応するニトリルから、好適な溶媒、例えば水、エタノール、THF、ジクロロメタン中でのヒドロキシルアミンとの縮合によって製造することができる(スキーム6参照)。
スキーム6:
【化10】

【0019】
出発物質の製造が具体的に記載されていないとき、当該化合物は既知であるか、または当業者に既知であるかもしくは後記方法と同様に製造することができる。
【0020】
下記実施例は本発明の説明であり、如何なる限定でもない。
溶液の濃縮を減圧下ロータリーエバポレーターで行う。常套のフラッシュクロマトグラフィーをシリカゲルで行う。フラッシュクロマトグラフィーはまた、Biotage Flash Chromatography装置またはFlashmaster 装置を用いて行う。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、請求項および/または実施例に個別に、集合的にまたはいずれかの選択および/またはそれらの組合せにおいて開示および説明しているあらゆる局面に関する。
【0022】
本明細書において使用されている典型的な略語は以下のとおりである:
TBME = tert.−ブチルメチルエーテル
BOC = tert.−ブチルオキシカルボニル
BocO = tert.−ブチルオキシカルボニル無水物
DMF = ジメチルホルムアミド
LiOH = 水酸化リチウム
HCl = 塩酸
THF = テトラヒドロフラン
CHCl = ジクロロメタン
RT = 室温
NaOH = 水酸化ナトリウム
HPLC = 高速液体クロマトグラフィー
HOBt = ヒドロキシベンゾトリアゾール
EDC.HCl =1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロライド
MS = 質量スペクトル
ES = 電子スプレー
m/z = 電荷数に対する質量
【実施例】
【0023】
実施例1:2−トリフルオロメトキシ−4−[5−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド
a)2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−カルボン酸
4−クロロ−3−トリフルオロメチル安息香酸(15g、67mmol)のTHF(600ml)溶液に、不活性雰囲気下でフェニルボロン酸(14.7g、120mmol)、ジシクロヘキシルホスフィノ−2,4,6−トリイソプロピルビフェニル(3.18g、3.35mmol)、KF(11.65g、0.2mol)および最後にPd(OAc)(0.75g、6.7mmol)を加える。反応混合物を還流下で1時間撹拌する。反応混合物を冷却し、濃縮乾固させる。フラッシュクロマトグラフィーを用いて濾過して、表題化合物を得る。
m/z = 265 (M-H)-
【0024】
b)4−ブロモ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミド
NHOH(水中25%)(3ml、44mmol)のジオキサン(10ml)溶液に、不活性雰囲気下で4−ブロモ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホニルクロライド(3g、8.8mmol)を加える。反応混合物を室温で3時間撹拌する。反応混合物を濃縮乾固して、残渣を乾燥させ、ジエチルエーテル/シクロヘキサンから再結晶化する。
m/z = 320 (M-H)-
【0025】
c)4−シアノ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミド
密封チューブ中の4−ブロモ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミド(2g、6.25mmol)のN−メチルピロリドン(8ml)溶液およびCuCN(2g、22mmol)を撹拌し、マイクロウェーブ条件下、170℃で90分間加熱する。冷却後、反応混合物を水に注ぎ、塩化メチレンで抽出する。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮し、乾燥させて、シクロヘキサン/酢酸エチル 2/1→1/1を移動相として用いてシリカゲルで精製する。
m/z = 267(M+H)+
【0026】
d)N−ヒドロキシ−4−スルファモイル−3−トリフルオロメトキシ−ベンズアミジン
4−シアノ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミド(1g、3.7mmol)のTHF(25ml)溶液に、50%ヒドロキシルアミン水溶液(2.5ml、37.5mmol)を5℃で加える。反応混合物を室温で16時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、THFを真空下で除去する。得られたスラリーを酢酸エチルで抽出し、有機相をNaSOで乾燥させ、濃縮する。残渣をジエチルエーテルで処理して表題化合物を白色沈殿として得る。
m/z = 300 (M+H)+
【0027】
e)2−トリフルオロメトキシ−4−[5−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンゼン−スルホンアミド(実施例1)
2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−カルボン酸(106mg、0.4mmol)のDMF(2.5ml)溶液にEDC.HCl(157mg、0.8mmol)およびHOBt(82mg、0.6mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌する。次にN−ヒドロキシ−4−スルファモイル−3−トリフルオロメトキシ−ベンズアミジン(120mg、0.4mmol)を反応混合物に加え、30分間室温で撹拌した後、一晩95℃で撹拌する。反応混合物を濃縮乾固して、塩化メチレンに溶解させ、1N HCl、次に飽和NaHCO溶液で抽出し、そしてフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して、純粋な表題化合物を得る。
m/z = 528 (M-H)-
【0028】
実施例6:4−{4−[5−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンジル}−モルホリン
これは実施例1の方法に従って、4−シアノ−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミドを4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゾニトリルで置き換えて合成する。
m/z = 465.8 (M+H)+.
【0029】
実施例1または6に記載の方法に従って、そして経路AまたはBに記載の方法を用いて、そして適当な出発物質を用いて、式X
【化11】

〔式中、R、R、R、RおよびRは下記表1に定義のとおりである〕
の化合物を得る。
【表1】

【0030】
実施例7:3−(2−エチル−4−{5−[4−(2,2,2−トリフルオロ−エトキシ)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−1,2,4]オキサジアゾール−3−イル}−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸
a)3−(4−ブロモ−2−エチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸メチルエステル
4−ブロモ−2−エチル−ベンゼンスルホニルクロライド(4.2g、14.8mmol)のピリジン(20ml)溶液にβアラニンメチルエステルヒドロクロライド(4g、29.6mmol)を加える。反応混合物を室温で16時間撹拌する。反応混合物を濃縮して乾燥させ、残渣を塩化メチレンに溶解させ、1N HClで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、減少させ、シクロヘキサン/酢酸エチル 2/1→1/1を移動相として用いてシリカゲルで精製する。
m/z = 351.5/353.5 (M+H)+.
【0031】
b)3−(4−シアノ−2−エチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸メチルエステル
3−(4−ブロモ−2−エチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸メチルエステル(1.2g、3.4mmol)のN−メチルピロリドン(3ml)溶液およびCuCN(1.2g、13.4mmol)を密封チューブ中に170℃(マイクロウェーブ)で90分間維持する。冷却後、反応混合物を水に注ぎ、塩化メチレンで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、減少させ、そしてシクロヘキサン/酢酸エチル 2/1→1/1を移動相として用いてシリカゲルで精製する。
m/z = 294.9 (M-H)-.
【0032】
c)3−[2−エチル−4−(N−ヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−プロピオン酸メチルエステル
3−(4−シアノ−2−エチル−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸メチルエステル(0.4g、1.4mmol)のTHF(10ml)溶液に50%ヒドロキシルアミン水溶液(1ml、14mmol)を加える。反応混合物を室温で48時間撹拌する。反応混合物を濃縮乾固して、次に水で希釈し、そして塩化メチレンで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、減少させ、そしてシクロヘキサン/酢酸エチル 1/1→100%酢酸エチルを移動相として用いてシリカゲルで精製する。
m/z = 329.8 (M+H)+.
【0033】
d)3−{2−エチル−4−[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンゼンスルホニル−アミノ}−プロピオン酸メチルエステル
4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−安息香酸(210mg、1mmol)のDMF(15ml)溶液にEDC.HCl(390mg、2mmol)およびHOBt(200mg、1.3mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌する。次に3−[2−エチル−4−(N−ヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−プロピオン酸メチルエステル(225mg、0.7mmol)を反応混合物に加え、さらに30分間室温で撹拌し、次に一晩95℃で撹拌する。反応混合物を濃縮して乾燥させ、そしてフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して、3−(2−エチル−4−{5−[4−(2,2,2−トリフルオロ−エトキシ)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル}−ベンゼンスルホニル−アミノ)−プロピオン酸メチルエステルを得る。
m/z = 501.7 (M+H)+.
【0034】
e)3−(2−エチル−4−{5−[4−(2,2,2−トリフルオロ−エトキシ)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル}−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロピオン酸
2,2,2−トリフルオロエタノール(110mg、1.1mmol)のDMF(3ml)溶液にNaH(鉱油中60%)(21mg、0.53mmol)を加える。10分後(透明溶液)、3−{2−エチル−4−[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンゼンスルホニル−アミノ}−プロピオン酸メチルエステル(90mg、0.18mmol)を加え、そして反応混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を除去した後、残渣をメタノール/水 1/1(5ml)に溶解させ、LiOH(20mg、0.83mmol)を加える。反応混合物を50℃で1時間撹拌し、次に水で希釈し、pHを〜3に調節し、そして反応物を塩化メチレンで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、そして残渣をシクロヘキサンから結晶化させるかまたは、フラッシュクロマトグラフィーで精製する。
ES - MS: m/z = 566 (M-H)-.
【0035】
実施例14:4−[5−(2−メチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンジルアミン
a)2−メチル−ビフェニル−4−カルボン酸
4−ブロモ−3−メチル−安息香酸(2.5g、11.6mmol)のTHF(150ml)溶液に不活性雰囲気下でフェニルボロン酸(2.94g、23.4mmol)、ジシクロヘキシルホスフィノ−2,4,6−トリイソプロピルビフェニル(570mg、1.16mmol)、KF(2.7g、60mmol)および最後にPd(OAc)(133mg、0.6mmol)を加える。反応混合物を還流下で1時間撹拌する。反応混合物を冷却し、濃縮して乾燥させる。フラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して、表題化合物を得る。
m/z = 211 (M-H)-
【0036】
b)N−Boc−4−アミノメチルベンゾニトリル
4−アミノエチルベンゾニトリルヒドロクロライド(15g、94mmol)のジオキサン/1N NaOH 1/1(450ml)溶液に、BocO(28.8g、132mmol)を加える。反応混合物を室温、不活性雰囲気下で16時間撹拌する。沈殿を回収し、乾燥させて、さらに精製することなくN−boc−4−アミノメチルベンゾニトリルを得る。
m/z = 233.3 (M+H)+
【0037】
c)N−Boc−4−アミノメチル−N−ヒドロキシ−ベンズアミジン
N−Boc−4−アミノエチルベンゾニトリル(14g;60mmol)のTHF(500ml)溶液にヒドロキシルアミン水溶液(1/1;80ml;1.8mol)を5℃で加える。反応混合物を室温で16時間撹拌する。反応混合物を水で希釈し、真空下でTHFを除去する。得られた沈殿を濾過によって回収し、乾燥させる。ジエチルエーテルから再結晶化して、純粋な表題化合物を得る。
m/z = 266.3 (M+H)+
【0038】
d){4−[5−(2−メチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
2−メチル−ビフェニル−4−カルボン酸(234mg;1.1mmol)のDMF(10ml)溶液にEDC.HCl(394mg;2mmol)およびHOBt(205mg;1.5mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌する。次にN−Boc−4−アミノメチル−N−ヒドロキシ−ベンズアミジン(266mg;1mmol)を反応混合物に加え、30分間室温で撹拌し、次に一晩95℃で撹拌する。反応混合物を濃縮して乾燥させ、そしてフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して表題化合物を得る。
m/z = 442 (M+H)+
【0039】
e)4−[5−(2−メチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンジルアミン
{4−[5−(2−メチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンジル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(180mg;0.4mmol)のTFA/HO 95/5(1.8ml;19.5mmol)溶液を室温で5分間撹拌する。ジエチルエーテル(25ml)およびジエチルエーテル中HCl(3M;3ml)を加えた後、得られた沈殿を濾取し、乾燥させる。
m/z = 341.9 (M+H)+
【0040】
上記実施例に記載の方法に従って、そして経路AまたはBに記載の方法を用いて、そして適当な出発物質を用いて、式X
【化12】

〔式中、R、R、RおよびRは下記表2に定義のとおりである〕
の化合物を得る。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0041】
実施例85:4−{5−[4−(2,2,2−トリフルオロ−エトキシ)−3−トリフルオロメチル−フェニル]−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル}−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼンスルホンアミド
a)4−[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼン−スルホンアミド
4−[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼン−スルホンアミドを2−トリフルオロメトキシ−4−[5−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−ベンゼンスルホンアミド(実施例1)の方法に従って、2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−カルボン酸を4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−安息香酸で置き換えて合成する。
m/z = 470 (M-H)-
【0042】
b)2,2,2−トリフルオロエタノール(63mg、0.63mmol)のDMF(3ml)溶液にNaH(鉱油中60%)(20mg、0.5mmol)を加える。反応混合物を10分間撹拌し(透明溶液)、次に4−[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−2−トリフルオロメトキシ−ベンゼン−スルホンアミド(118mg、0.25mmol)を加え、そして反応混合物を温度で16時間撹拌する。溶媒を除去した後、シクロヘキサン/酢酸エチル 4/1→2/1を移動相として用いたシリカゲルクロマトグラフィーの後、生成物を得る。
m/z = 550 (M-H)-
【0043】
上記実施例に記載の方法に従って、そして経路AまたはBに記載の方法を用いて、そして適当な出発物質を用いて、式X
【化13】

〔式中、R、R、R、RおよびRは下記表3に定義のとおりである〕
の化合物を得る。
【表8】

【表9】

【0044】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えばS1P1受容体アゴニストとして、例えばインビトロおよびインビボで示されるように、有用な薬理学的特性を示し、したがって治療に適用される。
【0045】
A.インビトロ
式Iの化合物は下記アッセイで測定されるとおり、各ヒトS1P受容体に対する結合親和性を有する:
A.インビトロ:ヒトS1P受容体を発現するCHO細胞から製造した膜へのGTP[γ−35S]結合を測定するGPCR活性アッセイ
S1P(EDG−1)GTP[γ−35S]結合アッセイ:ホモジナイズした膜を、ヒトEDG−1 N−末端c−mycタグを安定的に発現するCHO細胞クローンから製造する。細胞を懸濁液中で、2個の850cmローラーボトル中で3または4日間増殖させた後、収穫する。細胞を遠心沈降し、冷PBSで1回洗浄し、≦20mlのバッファーA(20mM HEPES、pH7.4、10mM EDTA、無EDTA完全プロテアーゼ阻害剤カクテル[1錠剤/25ml])に再懸濁する。細胞懸濁液を氷上で、Polytronホモジナイザーを用いて30000rpmで、各15秒の間隔で3回ホモジナイズする。ホモジネートを第1に、2000rpmで卓上低速遠心分離機で10分間遠心分離する。細胞濾過器を通過させた後、上清を50,000rpm×gで25分間、4℃で再度遠心分離する。ペレットをバッファーB(15% グリセロール、20mM HEPES、pH7.4、0.1mM EDTA、無EDTA完全プロテアーゼ阻害剤カクテル[1錠剤/10ml])に再懸濁する。調製物のタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて、スタンダードとしてBSAを用いて測定する。膜を等分し、−80℃で凍結する。
【0046】
10mM〜0.01nMの範囲の試験化合物溶液をDMSOで製造する。S1Pを、陽性対照として、4%BSA溶液で希釈する。所望の量の膜調製物を氷冷アッセイバッファー(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl、0.1%無脂肪酸BSA、5μM GDP)で希釈し、十分撹拌する。2μl以下の化合物を丸底96ウェルポリスチレンアッセイプレートの各ウェルに分注し、希釈膜(3〜10μg/ウェル)100μlを加え、熱GTPγSの添加まで氷上に保つ。[35S]−GTPγSを1:1000(v/v)に冷アッセイバッファーで希釈し、100μlを各ウェルに加える。反応を室温で90分間行った後、膜をPackard Filtermate Harvesterを用いてPerkin-Elmer Unifilter(登録商標)GF/B-96フィルタープレート上に回収する。洗浄バッファー(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl)で数回洗浄し、95% エタノールでリンスした後、フィルターを37℃オーブンで30分間乾燥する。MicroScint−20を加え、プレートをTopCountでのシンチレーションカウンティングのために密封する。EC50値を、GTP[γ−35S]結合曲線(生データ)をGraphPad Prismの用量依存曲線フィッティングツールでフィッティングして得る。6または12個の異なる濃度を用いて、濃度応答曲線を製造する(濃度あたり3個のデータポイントを用いる)。
【0047】
S1P2、3、4および5GTP[γ−35S]結合アッセイを、S1P1 GTP[γ−35S]結合アッセイと同様の方法で、c−末端c−mycタグ化または非タグ化受容体を安定的に発現するCHO細胞に由来する膜を用いて行う。各膜製造のために、アッセイウェル毎に加えるべき最適な膜の量を決定するための滴定実験を、S1P対照で最初に行う。
【0048】
式Iの化合物を、上記アッセイに従って試験して、S1P、例えばS1P1受容体に対してEC50<1μMで結合親和性を示す。より具体的には、式Iの化合物はS1P1受容体に選択性を示す。例えば、実施例21、44および105の化合物は、上記S1P1受容体結合アッセイにおいてEC50<100nMを有しており、例えばS1P3と比較してS1P1に対して少なくとも20倍、そして例えば、S1P5と比較してS1P1に対して少なくとも20倍選択的である。
【0049】
B.インビトロ:FLIPRカルシウム流出アッセイ
式Iの化合物を、S1P1、S1P3、S1P5およびS1P6のアゴニスト活性について、FLIPRカルシウム流出アッセイで試験する。簡潔に説明すると、S1P受容体を発現するCHO細胞を、5%FBSと500μg/ml G418を含むF−12K培地(ATCC)中で維持する。アッセイの前に、細胞を384黒色透明底プレートに、10,000細胞/ウェル/25μlの密度で、1%FBSを含むF−12Kの培地に播種する。2日目に、細胞を洗浄バッファーで3回(各25μl)で洗浄する。染料約25μlを各ウェルに加え、1時間37℃、5% COでインキュベートする。細胞を洗浄バッファーで4回(各25μl)洗浄する。SEW2871(Rosenらによって公開、レファレンスとして使用する)溶液25μlを各ウェルの細胞に加えた後、カルシウム流出をアッセイする。同じアッセイを、異なるS1P受容体を発現する各細胞について行う。FLIPRカルシウム流出における滴定を、3分間隔で記録し、S1P−1活性に対する最強ピーク高割合応答として定量する。本発明の化合物は、このアッセイにおいて10−12〜3.10−5nMの濃度で活性である。
【0050】
C.インビボ:血中リンパ球減少の測定についてのスクリーニングアッセイ
循環リンパ球の測定:試験化合物をDMSO/PEG200に溶解し、脱イオン水でさらに希釈する。ラット(Lewis系、メス、6−12週齢)に、4ml/kgビークル(最大2%DMSO/最大2%PEG200/水)中試験化合物1mg/kgを経口適用で投与する。DMSO/PEG200/水およびFTY720(0.3mg/kg)をそれぞれ陰性対照および陽性対照として含む。
【0051】
血液を舌下静脈から、投与の2、6、24および48時間後に、短時間イソフルラン麻酔下で回収する。全血サンプルを血液学的分析に供する。末梢リンパ球数を自動分析機を用いて測定する。末梢血リンパ球亜集団をフルオロクローム結合特異的抗体で染色し、蛍光活性化細胞分類機(Facscalibur)を用いて分類する。2匹のラットを用いて、選択した各化合物のリンパ球減少活性について評価する。結果は、50%の血中リンパ球減少を示すのに必要な有効用量として定義されるED50である。式Iの化合物を上記アッセイに従って試験し、少なくとも10mg/kg未満のED50を有する。
【0052】
したがって、式Iの化合物は、リンパ球相互作用によって介在される疾患または障害、例えば移植における、例えば急性もしくは慢性細胞、組織もしくは臓器の同種もしくは異種移植、または移植片機能の減少、移植片対宿主病、自己免疫性疾患、例えばリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、1型または2型糖尿病、およびそれに関連する障害、脈管炎、悪性貧血、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、乾癬、グレーブス眼症、円形脱毛症および他のもの、アレルギー性疾患、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、所望により異常反応を伴う炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内因性喘息、炎症性肺傷害、炎症性肝傷害、炎症性糸球体傷害、アテローム性動脈硬化症、骨関節炎、刺激性接触性皮膚炎およびさらに、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫学的に介在される傷害の皮膚症状、炎症性眼疾患、角結膜炎、心筋炎または肝炎、虚血/再灌流障害、例えば心筋梗塞、卒中、腸虚血、腎不全または出血ショック、外傷性ショック、がん、例えば乳がん、T細胞リンパ腫またはT細胞白血病、ネフローゼ症候群、感染症、例えば毒ショック(例えば超抗原誘導性)、感染性ショック、成人呼吸窮迫症候群またはウイルス感染、例えばAIDS、ウイルス性肝炎、例えばB型肝炎、慢性細菌感染または神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、または老年性認知症の処置および/または予防に有用である。細胞、組織または固体臓器移植の例には、例えば膵島、幹細胞、骨髄、角膜組織、神経組織、心臓、肺、心肺複合、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道が含まれる。上記使用のために必要な用量は、当然、投与形態、処置する具体的な状態および所望の効果に依存して変化する。
【0053】
一般的に、満足のいく結果が、約0.03〜約5.0mg/kg体重の全身的な1日投与量で達成され得る。大型哺乳類、例えばヒトで適用される1日用量は、約0.5mg〜500mgの範囲で、簡便には、例えば1日4回までの分割用量で、または徐放形態で投与される。経口投与のための適当な単位投与形態には、約0.1〜50mgの有効成分が含まれる。
【0054】
式Iの化合物をあらゆる常套の経路、とりわけ経腸、例えば経口的に、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で;または非経腸的に、例えば注射溶液または懸濁液の形態で;局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で;または経鼻もしくは座薬形態で投与することができる。遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物を、常套の方法で、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合することによって製造することができる。
【0055】
式Iの化合物を、例えば上記の通り、遊離形または薬学的に許容される塩形で投与することができる。かかる塩を常套の方法で製造することができ、そしてこれは遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0056】
上記に従って、本発明はさらに下記のものを提供する:
1.1 処置を必要とする対象におけるリンパ球介在性障害または疾患の予防または処置法であって、当該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる方法;
1.2 処置を必要とする対象における急性もしくは慢性移植片拒絶またはT細胞介在性炎症性もしくは自己免疫性疾患の予防または処置法であって、当該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる方法;
2. 例えば上記1.1または1.2のいずれかに記載の方法において、医薬として使用するための遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物。
3. 例えば上記1.1または1.2のいずれかに記載の方法において使用するための、遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物。
4. 上記1.1または1.2のいずれかに記載の方法に使用する医薬の製造に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0057】
式Iの化合物を、単独の有効成分として、あるいはアジュバントとして他の薬剤、例えば免疫抑制剤または免疫調節剤、例えば同種もしくは異種移植片急性もしくは慢性拒絶、または炎症性もしくは自己免疫性障害の処置または予防用の他の抗炎症剤、または化学療法剤、例えば悪性細胞抗増殖剤と共に投与することができる。例えば、式Iの化合物は、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、ビオリムス−7またはビオリムス−9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981等;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキセート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸または塩;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制ホモログ、アナログもしくは誘導体;PKC阻害剤、例えばWO 02/38561またはWO 03/82859に記載のもの、例えば実施例56または70の化合物;JAK3キナーゼ阻害剤、例えばN−ベンジル−3,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン−シアノアセトアミド、α−シアノ−(3,4−ジヒドロキシ)−]N−ベンジルシンナモアミド(チルホスチンAG490)、プロジギオシン25−C(PNU156804)、[4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P131)、[4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P154)、[4−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン]WHI−P97、KRX−211、遊離形または薬学的に許容される塩形の3−{(3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル}−3−オキソ−プロピオニトリル、例えばモノサイトレート(CP-690,550とも呼ばれる)またはWO 04/052359またはWO 05/066156に記載の化合物;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンド;他の免疫調節化合物、例えばCTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4タンパク質配列へと結合した少なくともCTLA4の細胞外部位またはその変異体を有する組み換え結合分子またはその変異体、例えばCTLA4Ig(例えば命名ATCC 68629)またはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1もしくは−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシンまたは5−フルオロウラシル;または抗感染剤との組合せで使用することができる。
【0058】
式Iの化合物を他の免疫抑制/免疫調節剤、抗炎症剤、化学療法剤または抗感染治療との組合せで投与するとき、共投与する免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、化学療法剤または抗感染化合物の用量は、当然、使用する共薬剤のタイプ、例えばステロイドであるかカルシニューリン阻害剤であるか、使用する具体的な薬剤、処置する疾患等に依存して変化する。上記に従って、本発明は下記さらなる局面を提供する:
5. 治療上有効かつ非毒性量の式Iの化合物と、少なくとも1種の第2の薬剤物質、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤または化学療法剤、例えば上記のものを、例えば同時または連続的に、共投与することを含む、上記定義の方法。
6. a)遊離形または薬学的に許容される塩形の、本明細書に記載の式Iの化合物である第1薬剤、およびb)少なくとも1種の共薬剤、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤、化学療法剤または抗感染剤を含む医薬組合せ剤、例えばキット。当該キットは投与のための指示書を含んでいてもよい。
【0059】
「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬剤を1人の患者に投与することを意味しており、薬剤を必ずしも同じ投与経路で、または同時に投与することのない処置レジメンを含むことを意図する。
【0060】
「医薬組合せ剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、1種以上の有効成分の混合または組合せによって得られる製品を意味しており、有効成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤のいずれもを含む。「固定された組合せ剤」なる用語は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤が共に、同時に、1個の物または投与形で患者に投与されることを意味する。「固定されていない組合せ剤」なる用語は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤を、いずれも1人の患者に、別々の物として、同時に、一度にまたは逐次的に、特に時間の限定なく、かかる投与によって患者の体内で2種の化合物の治療上有効レベルが得られるように投与することを意味する。後者はまた、カクテルセラピー、例えば3種以上の有効成分の投与に適用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、
i. Rは式(a)
【化2】

{式中、ZはCHまたはNであり;
各RおよびRは独立して、H;ハロゲン;所望によりOH、C1−4アルコキシ、=N−OHもしくは=N−OC1−4アルキルで置換されたC1−8アルキル;ハロ−C1−8アルキル;CN;C1−8アルコキシ;ハロ−C1−8アルコキシ;C1−8アルキルチオ;R−CO(ここで、RはC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである);またはフェニルであるか;または
およびRはそれらが結合した2個の炭素原子と一体となって他の環、例えば式(b)
【化3】

(式中、ZはCHまたはN、好ましくはCHであり;
はC1−4アルキル;C3−6シクロアルキル;フェニル;またはフェニル−C1−4アルキルであり;そして
各RおよびR’は独立して、C1−4アルキルである)
の基を形成する;
ただし、多くともRおよびRの一方がHである}
の基であり;
は−R−NR{ここで、Rは所望により置換されたC1−4アルキレン;C1−4アルキレン(ここで、アルキレン鎖の炭素原子の2個の結合が
【化4】

を形成し、pは1、2または3である)であり;そして各RおよびRは独立してH、所望により置換されたC1−8アルキル、R−COまたはヘテロ環式基であるか、またはRおよびRはそれらが結合している窒素原子と一体となって所望により置換されたヘテロ環式基を形成し;そして
はC1−4アルキル;C3−6シクロアルキル;フェニル;またはフェニル−C1−4アルキルである}
であるか;または
は所望により置換されたヘテロ環式基であり;そして
各RおよびRはHである;
ただし、
1. Rが−CH−NHであるとき、Rは2−CF−4−ビフェニリル、3−CF−4−トリフルオロエトキシ−フェニルまたは3−CF−4−イソプロポキシ−フェニル以外であり;そして
2. Rが−C(CH−NHであるとき、Rは2−CF−4−ビフェニリル以外であるか;あるいは
ii. Rは置換ビフェニリル、4−フェノキシ−フェニルまたは4−(フェニル−C1−4アルコキシ)−フェニル(ここで、少なくとも1個のフェニル基はモノ置換されている);またはハロゲン、ニトリル、C1−8アルキル、ハロC1−8アルキル、C1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−C1−8アルコキシ、C1−8アルキル−C1−8アルコキシ、C1−8アルキル−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルキル−C1−8アルコキシ、ハロC1−8アルキル−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ−C1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−ハロC1−8アルコキシ、ハロC1−8アルコキシ−ハロC1−8アルコキシ、C1−8アルコキシ−C1−8アルキル、ハロC1−8アルコキシ−C1−8アルキル、C1−8アルコキシ−ハロC1−8アルキル、ハロC1−8アルコキシ−ハロC1−8アルキル、C2−6アルケニルオキシ、C2−6アルキニルオキシ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルキル−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル−C1−4アルコキシ、C3−6シクロアルキル−オキシ、フェニル−C1−4アルコキシおよびヘテロ環式−C1−4アルコキシから成る群から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニルであり;
はSONH;またはSONH−R10−COOH(ここで、R10はO、SまたはC=CHで所望により中断されたC1−6アルキレンである)であり;
およびRの一方はHまたはC1−4アルキルであり;他方はC1−4アルキルまたはハロC1−4アルコキシである;
ただし、RがSONHでありRがエチルであるとき、R
a) CFおよび所望によりフルオロで置換されたビフェニリル;または
b) CFおよびシクロヘキシルで置換されたフェニル;
以外である〕
の化合物またはその塩。
【請求項2】
R1が式(a)
〔式中、ZはCHまたはNであり;
各RおよびRは独立して、H;ハロゲン;所望によりOH、C1−4アルコキシ、=N−OHもしくは=N−OC1−4アルキルで置換されたC1−8アルキル;ハロ−C1−8アルキル;CN;C1−8アルコキシ;ハロ−C1−8アルコキシ;C1−8アルキルチオ;R−CO(ここで、RはC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである);またはフェニルである;
ただし、多くともRおよびRの一方はHである〕
の基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ZがCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が−R−NRまたは炭素原子で結合したヘテロ環式環(ここで、可変部は請求項1に記載の意味を有する)である、請求項1−3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
下記スキーム
【化5】

に従って、
a) 式II(Rは請求項1に定義のとおりである)の化合物またはその官能性誘導体を、式IIIの化合物と縮合すること(経路A);または
b) 式IVまたはVの化合物を式Iの化合物に変換すること(経路BまたはC):
そして
遊離形または塩形で得られた式Iの化合物を回収すること、そして所望により、遊離形で得られた式Iの化合物を所望の塩形に、あるいはその逆に変換することを含んで成る、方法。
【請求項7】
医薬として使用するための、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的塩。
【請求項8】
遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1に記載の式Iの化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物。
【請求項9】
リンパ球介在性障害または疾患の予防または処置用医薬組成物の製造において使用するための、遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
a)遊離形または薬学的に許容される塩形の請求項1に記載の式Iの化合物である、第1薬剤、およびb)少なくとも1種の共薬剤を含む、医薬組合せ剤、例えばキット。
【請求項11】
実質的に上記定義および記載の、請求項1に記載の式Iの化合物、医薬としてのその使用、当該化合物を含む医薬組成物、および当該化合物と共薬剤の組合せ剤。

【公表番号】特表2010−504932(P2010−504932A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529611(P2009−529611)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008431
【国際公開番号】WO2008/037476
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】