説明

抗炎症活性デクラジノシル−マクロライド

本発明は、抗炎症活性を有する新規な半合成マクロライドに関する。より具体的には、本発明は、C3位に置換されたクラジノース糖を欠く14および15員マクロライドに、それらの医薬上許容される誘導体に、それらを調製するためのプロセスおよび中間体に、それらを含む医薬組成物に、ならびにヒトおよび動物の炎症性疾患および状態、特に、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2もしくはIL−5の過剰分泌に伴うこれらの疾患の治療、および/または過剰なリンパ球増殖の抑制剤、および/または過剰な顆粒球脱顆粒におけるそれらの活性および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体を参照により本明細書に組み込む、2005年1月13日出願の米国特許仮出願第60/643,840号による優先権を主張する。
【0002】
本発明は抗炎症活性を有する置換マクロライドおよびそれらの使用方法の分野に存する。より具体的には、本発明は、C3位で置換されたクラジノース糖を欠く14および15員マクロライドに、それらの医薬上許容される誘導体に、それらを調製するプロセスおよび中間体に、それらを含む医薬組成物に、ならびにヒトおよび動物の炎症性疾患および状態、特にTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2もしくはIL−5の1つもしくは2つ以上の過剰分泌に伴うこれらの疾患の治療および/または過剰なリンパ球増殖および/もしくは過剰な顆粒球脱顆粒の抑制剤におけるそれらの活性および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症は、感染、外傷およびアレルギーなどの人体に対する種々の傷害の最終的な共通経路である。炎症の特徴は、炎症性細胞の動員を伴う免疫系の活性化、炎症誘発性細胞の産生および炎症誘発性サイトカインの産生である。
【0004】
大部分の炎症性疾患は、単球/マクロファージ、顆粒球、形質細胞、リンパ球および血小板を含む炎症性細胞の異常な集積によって特徴づけられる。組織の内皮細胞および線維芽細胞と共に、これらの炎症性細胞は、複雑な一連の脂質、増殖因子、サイトカインおよび局所的組織損傷を惹起する破壊性酵素を遊離する。
【0005】
炎症性応答の1つの形態は、宿主防御の主要成分である好中球多形核白血球(PMN)による炎症組織の浸潤により特徴づけられる好中球性炎症である。細胞外細菌による組織感染は、この炎症性応答の原型を代表する。他方、種々の非感染性疾患は、好中球の血管外動員により特徴づけられる。この群の炎症性疾患には、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、免疫複合体肺胞炎のいくつかのタイプ、嚢胞性線維症、気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、糸球体腎炎、リウマチ様関節炎、痛風関節炎、潰瘍性大腸炎、乾癬などのある種の皮膚疾患、および血管炎が含まれる。これらの状態において、好中球は組織損傷の発生に重大な役割を演ずると考えられており、組織損傷が持続する場合には、器官不全という結果を伴う正常組織構造の非可逆的破壊に至り得る。組織損傷は、主として、好中球の活性化とそれに続くそれらのタンパク質分解酵素の放出および活性酸素種の増大した産生により惹起される。
【0006】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の徴候は、気流制限の十分に可逆的ではない進行性発達である(ATC、1995年)。COPDの患者の大部分は、気管支炎、肺気腫および粘液塞栓という3つの病態を有する。この疾患は、比較的保持される努力肺活量(FVC)と、最初の1秒間の呼気における努力呼気容量(FEV)の徐々に進行する非可逆的減少とに特徴づけられる(Barnes、N.Engl.J Med.(2000年)、343巻(4):269〜280頁)。喘息およびCOPDの両者において、顕著であるが異なる気道の再造形がある。気流閉塞の大部分は肺胞の破壊(肺気腫)および小気道閉塞(慢性閉塞性気管支炎)という2つの主要な構成要素に起因する。COPDは主として深刻な粘膜細胞過形成により特徴づけられる。
【0007】
喫煙、大気汚染および他の環境因子が、この疾患の主要な原因である。原因機序は現在のところ不明確であるが、オキシダント−抗酸化物質の撹乱が疾患の発生に強く係わっている。COPDは、喘息で見られるものと著しく相違する慢性の炎症性過程であり、相違する炎症性細胞、メディエーター、炎症の影響および治療に対する応答を伴う(Keatingsら、Am.J.Respir.Grit.Care Med.(1996年)、153巻、530〜534頁)。患者肺の好中球浸潤がCOPDの主要な特徴である。
【0008】
TNF−αのような炎症誘発性サイトカイン、および特にIL−8およびGRO−αのようなケモカインのレベル上昇は、この疾患の病因において非常に重要な役割を演じている。血小板トロンボキサン合成もCOPDの患者において増大する(Keatingsら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.(1996年)、153巻、530〜534頁;StockleyおよびHill、Thorax(2000年)、55巻(7)、629〜630頁)。組織損傷の大部分は好中球の活性化とそれに続くそれらによる(金属性の)タンパク質分解酵素の放出および活性酸素種の産生増大により惹起される(Repineら、Am.J.Respir.Grit.Care Med.(1997年)、156巻、341〜357頁;Barnes、Chest(2000年)、117巻(増補2)、10S〜14S)。
【0009】
大部分の治療上の努力は、症状の制御に向けられている(Barnes、Trends Pharm.Sci.(1998年)、19巻(10)、415〜423頁;Barnes、Am.J.Respir.Crit.Care Med.(1999年)160巻、S72〜S79;Hanselら、Expert Opin.Investig.Drugs(2000年)9巻(1)、3〜23頁)。通常、症状は気流量の制限と一致し、気管支拡張剤が従来の選択治療である。合併症の予防および治療、悪化の予防および生活の質と寿命の改善も、COPDの管理のための3つのキーとなる国際的ガイドラインで提示されている主要目標である(CulpittおよびRogers、Exp.Opin.Pharmacother.(2000年)1巻(5)、1007〜1020頁;Hay、Curr.Opin.Chem.Biol.(2000年)、4巻、412〜419頁)。基本的に、最近の治療研究の大部分は、好中球の動員および活性化に関与するメディエーターに、またはそれらの望ましくない活性化の結果の減弱に集中されてきた(Stockleyら、Chest(2000年)、117巻(増補2)、58S〜62S)。
【0010】
1975年に、TNF−αは、in vitroおよびin vivoで腫瘍壊死を起こすエンドトキシン誘発血清因子と定義された(Carswell E.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1975年、72巻、3666〜3670頁)。抗腫瘍活性に加えて、TNF−αは、ホメオスタシスならびに病理生理学的状態に重要ないくつかの他の生物活性を有する。TNF−αの主要な発生源は、単球−マクロファージ、Tリンパ球および肥満細胞である。
【0011】
抗TNF−α抗体(cA2)がリウマチ様関節炎(RA)に罹患している患者の治療に有効であるという発見(Elliot M.ら、Lancet 1994年、344巻、1105〜1110頁)は、RAのための可能性ある強力な医薬として新規なTNF−α抑制剤を発見することへの関心を強めた。リウマチ様関節炎は、関節の非可逆的な病的変化を特徴とする自己免疫慢性炎症性疾患である。TNF−αアンタゴニストは、RAに加えて、脊椎炎、骨関節炎、痛風および他の関節状態、敗血症、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、糸球体腎炎、エリテマトーデス、強皮症、喘息、悪液質、慢性閉塞性肺疾患、鬱血性心不全、インスリン抵抗性、肺線維症、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ウィルス感染、およびAIDSなどいくつかの他の病態および疾患にも適用可能である。
【0012】
最近、科学界の関心はマクロライド抗体の免疫調節および抗炎症活性に向けられている(Journal of Antimicrobial Chemotherapy、1988年、41巻、増補B、37〜46頁)。
【0013】
理想的な免疫調節剤は、一方で防御免疫応答を残しながら、炎症性応答の有害な影響を抑制することができるべきである。
【0014】
マクロライド抗生物質は、被験者の異なる細胞内に、特に末梢血単核細胞ならびに腹腔および肺胞マクロファージなどの食細胞内に優先的に集積する(Gladue,R.P.ら、Antimicrob.Agents Chemother.1989年、33巻、277〜282頁;Olsen,K.M.ら、Antimicrob.Agents Chemother.1996年、40巻、2582〜2585頁)。いくつかのマクロライドの抗炎症性効果は文献に記載されている。例えば、エリスロマイシン誘導体の抗炎症性効果は、J.Antimicrob.Chemother.1998年、41巻、37〜46頁および国際特許出願公開第00/42055号に記載されている。大正製薬は、3、9、11および12位に修飾された抗炎症性エリスロマイシン誘導体をさらに請求している(欧州特許第0775489号および欧州特許第0771564号)。国際特許出願公開第02/087596号に、知られた抗菌剤アジスロマイシンの抗炎症活性の良い記載がある。糖部分であるクラジノースおよびデソサミンを欠き、しかも抗炎症活性を有するアジスロマイシン誘導体が記載されている(Pliva、米国特許第4,886,792号)。国際特許出願公開第04/039821号および国際特許出願公開第04/013153号(Zambonグループ)に、抗炎症活性を示すが抗菌活性は示さない、クラジノース糖を欠くマクロライドおよびアザライド誘導体が開示されている。
【0015】
いくつかのマクロライドの抗炎症性の効果は、マウスにおけるザイモサン誘発腹腔炎(J.Antimicrob.Chemother.1992年、30巻、339〜348頁)およびラット気管中のエンドトキシン誘発好中球集積(J.Immunol.1997年、159巻、3395〜4005頁)などの実験動物モデルにおけるin vitroおよびin vivoの研究からも知られている。マクロライドの、インターロイキン8(IL−8)(Am.J.Respir.Crit.Care.Med.1997年、156巻、266〜271頁)およびインターロイキン5(IL−5)(欧州特許第0775489号および欧州特許第771564号)などのサイトカインに対する調節効果も同様に知られている。
【0016】
マクロライドは、汎細気管支炎(Thorax、1997年、52巻、915〜918頁)、気管支喘息(Chest、1991年、99巻、670〜673頁)などの炎症性病態の治療に有用であることが証明されており、特にアジスロマイシンは嚢胞性線維症患者の肺機能を改善することに有効と証明されている(The Lancet、1998年、351巻、420頁)。
【0017】
喘息患者へのマクロライドの投与は、食細胞、特に好中球とのマクロライドの抗酸化および抗炎症相互作用の結果として過分泌および気管支過敏の減少を伴う(Inflammation、20巻、6号、1996年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、目標とする新規な抗炎症剤を提供する技法上の問題を解決することを目的とする。より特別には、本発明は、有効な物質がステロイドでもNSAIDでもない抗炎症剤を提供する。本発明の化合物は、それらの抗炎症活性および炎症部位に動員された種々の免疫細胞に集積するそれらの能力により、この問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の主題を表す式(I)により表される、クラジノース糖を欠きC3位で置換された、新規な14および15員マクロライド化合物、それらの薬学的に許容し得る誘導体およびそれらを含む医薬組成物は、これまでに記載されたことがない。さらに、本発明の主題を表す化合物は、抗炎症性物質としても、あるいはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2もしくはIL−5の1つもしくは2つ以上の抑制剤、および/または過剰のリンパ球増殖および/もしくは顆粒球の脱顆粒の抑制剤としてもいずれも記載されたことがない。したがって、炎症状態と闘うためにそのような化合物を使用することは記載されたことがなく、示唆されたこともない。ヒトを含む哺乳類被験者の炎症性状態を治療するために、クラジノース糖を欠きC3位で置換された、14および15員マクロライド化合物の有効量を含む医薬投与形態の記載または示唆もこれまでない。
【0020】
式(I)により表される化合物の特徴は、上記の炎症性疾患および状態における標的器官および細胞内への選択的集積である。これらの薬物動態学的性質は、式(I)の化合物が、炎症メディエーターの産生を抑制することにより、炎症細胞内の炎症部位に作用することを可能にする。そのようにして、コルチコステロイドまたは非ステロイド抗炎症性分子の特徴である不利な全身性副作用が回避され、式(I)により表される化合物の治療作用の標的が、最も必要とされる領域になる。局所的または全身的適用に続いて、分子は炎症性細胞に急速に集積して、そこでサイトカインおよびケモカインおよび/または他の炎症性メディエーターの産生を抑制することにより作用し、その結果炎症を抑制する。
【0021】
したがって、本発明は、
(a)
式(I):
【化1】

(I)
【0022】
[式中、
Aは−C(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−N(R)CH−、−CHN(R)−、−CH(OH)−または−C(=NOR)−から選択される2価の基であり、
は−OC(O)(CHNR、−O−(CHNR、または−OC(O)CH=CHであり、
は水素またはヒドロキシル保護基であり、
は水素、非置換C1〜4アルキル、末端炭素原子がCNもしくはNH基で置換されているC1〜4アルキル、またはC1〜5アルカノイルであり、
は水素、C1〜4アルキルまたはC2〜6アルケニルであり、
はヒドロキシ、メトキシ、−OC(O)(CHNRまたは−O−(CHNRであり、
はヒドロキシであるか、または
とRとが介在原子と一緒になって次の構造式:
【0023】
【化2】

(式中、Yは、−CH−、−CH(CN)−、−O−、−N(R)−または−CH(SR)−から選択される2価の基である)
で示される環状基を形成し、
は水素またはC1〜6アルキルであり、
【0024】
およびRは、各々独立して、水素、C3〜7シクロアルキル、C1〜18アルキルであり、ここでC1〜18アルキルは
iii)割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または
iv)置換されていないか、あるいはハロゲン、OH、NH、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜C−アルキル)アミノ、CN、NO、OCH、飽和もしくは不飽和のC3〜8員非芳香族環、2ないし6個の炭素原子を含み、飽和もしくは不飽和であり、酸素、硫黄または窒素から選択される1または2個のヘテロ原子を含む複素環式非芳香族環、アルキルカルボニルアルコキシまたはアルコキシカルボニルアミノから選択される1ないし3個の基により置換されており、または
【0025】
とRとは、それらが結合している窒素と一緒になって、
iii)飽和もしくは不飽和の、酸素、硫黄または窒素から選択される0もしくは1個の追加のヘテロ原子を含み、および/または
iv)置換されていないか、あるいはC1〜5アルカノイル;割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または置換されていないか、あるいはOH、NH、2ないし6個の炭素原子を含み、置換されていないか、あるいはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されている非芳香族複素環、あるいは置換されていないか、またはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されているC3〜7シクロアルキルから選択される1ないし2個の基により置換されているC1〜6アルキル;またはC1〜4ジアルキルアミノから選択される1ないし2個の基により置換されている
2ないし6個の炭素原子を含む非芳香族複素環を形成しており、
nは、1から8の整数である]
で示される化合物および式(I)の化合物の医薬上許容される誘導体、
【0026】
(b)前記の化合物の1つまたは2つ以上を、炎症に効果があり、それによりヒトを含む哺乳動物の炎症を含む障害および状態を治療するのに有効な量で含む組成物、および
(c)上記の障害および状態を治療するためにこれらの化合物を使用する方法
を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の組成物に関連して使用される「医薬上許容される」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)に投与されたときに生理学的に許容可能で有害反応を通常は起こさないような組成物の分子実体および他の成分を指す。本明細書において使用される「医薬上許容される」という用語は、好ましくは、哺乳動物およびより特別にはヒトにおける使用について、(米国)連邦政府もしくは州政府の監督官庁により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。
【0028】
本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、有効化合物と共に投与される希釈剤、賦形剤、または媒体を指す。そのような薬剤担体は、水、食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む油などの無菌の液体でよい。しかし、マクロライドは高度に可溶性であるから、水溶液が好ましい。適当な薬剤担体はE.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版に記載されている。本発明にとって特に好ましいのは、即時放出、すなわち短時間に、例えば60分以内などで有効成分の全部または大部分を放出し、薬剤の迅速な吸収を可能にするのに適した担体である。
【0029】
本明細書において使用する「医薬上許容される誘導体」という用語は、任意の医薬上許容される塩、溶媒和物、または受容者に投与されると本発明の化合物もしくはその有効な代謝物もしくは残基を(直接または間接的に)提供することができる本発明の化合物のプロドラッグ、例えば、エステルなどを意味する。そのような誘導体は、当業者には、必要以上の実験はせずに認識可能である。しかしながら、「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery」第5版、第1巻「Principles and Practice」の教示を引用し、そのような誘導体を教えるところまで参照により本明細書に組み込む。好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物、エステル、カルバミン酸エステルおよびリン酸エステルである。特に好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物およびエステルである。最も好ましい医薬上許容される誘導体は、塩およびエステルである。
【0030】
本発明の化合物は医薬上許容される塩の形態であってよく、および/または医薬上許容される塩として投与することができる。適当な塩に関する総説としては、BergeらのJ.Pharma.Sci.、1977年、66巻、1〜19頁を参照されたい。
【0031】
通常、医薬上許容される塩は、所望の酸または塩基を適宜使用することにより、容易に調製することができる。塩は溶液から沈澱させて濾過により収集するか、または溶媒の蒸発により回収することができる。例えば、塩酸などの酸の水溶液を式(I)の化合物の水性懸濁液に加え、その結果生ずる混合物を蒸発乾固(凍結乾燥)して、酸付加塩を固体として得ることができる。あるいは、式(I)の化合物を適当な溶媒、例えばイソプロパノールなどのアルコールに溶解させ、酸を同じ溶媒または他の適当な溶媒中で添加することができる。次に、その結果生じた酸付加塩はそのまま、またはジイソプロピルエーテルまたはヘキサンなどの極性のより小さい溶媒の添加により沈澱させて、濾過により単離することができる。
【0032】
適当な付加塩は、無毒性塩を形成する無機または有機酸から形成させ、例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、水素リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、オキザロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、サッカリン酸塩、安息香酸塩、アルキルまたはアリールスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩)およびイセチオン酸塩である。代表的な例には、トリフルオロ酢酸塩およびギ酸塩、例えば、ビスまたはトリストリフルオロ酢酸塩およびモノまたはジギ酸塩、特にビスまたはトリストリフルオロ酢酸塩およびモノギ酸塩が挙げられる。
【0033】
医薬上許容される塩基塩には、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムの塩などのアルカリ土類金属塩、ならびに第1級、第2級および第3級アミン、例えば、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの塩を含む有機塩基の塩が含まれる。
【0034】
本発明の化合物は、塩基性および酸性両方の中心を有することができ、それゆえ両性イオンの形態で存在することができる。
【0035】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、それらがその中で反応した溶媒、またはそれから沈澱または結晶化した溶媒と複合体を形成し得ることを理解するであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。本発明の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内である。式(I)の化合物の塩は、溶媒和物(例えば水和物)を形成することができ、本発明はすべてのそのような溶媒和物も含む。
【0036】
本明細書において使用する「プロドラッグ」という用語は、体内において、例えば、血中での加水分解により、医療効果を有するその有効な形態に変換される化合物を意味する。医薬上許容されるプロドラッグは、T.HiguchiおよびV.Stella著、「Prodrugs as Novel Delivery Systems」(アメリカ化学会シンポジウムシリーズ第14巻)に、Edward B.Roche編、「Bioreversible Carriers in Drug Design」(アメリカ薬学会およびPergamon Press、1987年)に、ならびにD.Fleisher,S.RamonおよびH.Barbra著、「Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs」、Advanced Drug Delivery Reviews(1996年)19巻(2)、115〜130頁に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込む。
【0037】
プロドラッグは、患者に投与されたときにin vivoで式(I)の化合物を遊離する何らかの共有結合で結合された担体である。プロドラッグは、通常、日常的操作またはin vivoのいずれかにより、修飾が切断されて親化合物を生ずるように官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグには、例えば、患者に投与されたときに切断されてヒドロキシ、アミンまたはスルフヒドリル基を形成させる任意の基に、ヒドロキシ、アミンまたはスルフヒドリル基が結合した本発明の化合物が含まれる。したがって、プロドラッグの代表的な例には、(限定されることなく)式(I)の化合物のアルコール、スルフヒドリルおよびアミン官能基の中の1つまたは2つ以上の酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体が挙げられる。さらに、カルボン酸(−COOH)基の場合には、メチルエステル、エチルエステル等などのエステルを利用することができる。エステルは、人体中において、それ自体で有効であり得、および/またはin vivoの条件下で加水分解され得る。適当な医薬上許容されるin vivoで加水分解可能なエステル基は、人体中で容易に分解して親酸またはその塩を生ずるものを含む。
【0038】
今後、本発明による化合物と称するものは、式(I)の化合物およびその医薬上許容される誘導体の両者を含む。
【0039】
立体異性体に関して、式(I)の化合物は1を超える不斉炭素原子を有する。図示した一般式(I)において、中黒楔型結合はその結合が紙面の上にあることを示す。破線はその結合が紙面の下にあることを示す。
【0040】
マクロライドの置換基も1つまたは複数の不斉炭素原子を有し得ることは理解されるであろう。したがって、式(I)の化合物は個別のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして出現し得る。すべてのそのような異性体形は、その混合物を含めて本発明の中に含まれる。
【0041】
本発明の化合物がアルケニル基を含む場合には、cis(Z)およびtrans(E)異性も出現し得る。本発明は本発明の化合物の個別の立体異性体を含み、適当な場合、その個別の互変異性体をその混合物と一緒に含む。
【0042】
ジアステレオ異性体またはcisおよびtrans異性体の分離は、従来の方法、例えば、分別結晶、クロマトグラフィーまたはH.P.L.C.により達成することができる。エナンチオおよびジアステレオ的に純粋な物質は、対応する光学的に純粋な中間体から、または、例えばH.P.L.C.などによる、適当なキラルな支持体を使用する対応ラセミ体の分割により、または対応するラセミ化物と適当な光学活性酸もしくは塩基との反応により適宜形成されるジアステレオ異性体塩の分別結晶により、調製することもできる。
【0043】
式(I)の化合物は、結晶または非晶質の形態であってよい。さらに、式(I)の化合物の結晶形のあるものは、多形として存在し得て、それは本発明に含まれる。
【0044】
がヒドロキシ保護基を表す化合物は、一般に、式(I)の他の化合物の調製のための中間体である。
【0045】
OR基が保護されたヒドロキシル基であるとき、これはエーテルまたはアシルオキシ基であることが便利である。特に適当なエーテル基の例には、Rがトリアルキルシリル(すなわちトリメチルシリル)であるものが挙げられる。OR基がアシルオキシ基であるとき、適当なR基の例には、アセチル、ベンゾイルまたはベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0046】
本明細書において基または基の一部として使用する「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。例えば、C1〜6アルキルは1から6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル鎖を意味する。そのような基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、3−メチル−ブチル、ヘキシルおよび2,3−ジメチルブチル等が挙げられる。
【0047】
アルキル鎖が1ないし3個の−O−、−S−またはN(R)−により割り込まれているとき、メチレンスペーサーは、割り込み部分に隣接して存在することができる。したがって、これは、例えば、−CH−O−、および−O−CH−を含むであろう。これらの割り込み部分が2つまたは3つ存在するとき、それらは少なくとも1つのメチレンスペーサーにより分離されている。
【0048】
本明細書において基または基の一部として使用する「アルケニル」という用語は、指定された数の炭素原子を含み、かつ少なくとも1つの二重結合を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。例えば、「C2〜6アルケニル」という用語は、少なくとも2個、最大で6個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1つの二重結合を含む直鎖または分岐アルケニルを意味する。本明細書において使用する「アルケニル」の例には、エテニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、3−ヘキセニル、および1,1−ジメチルブタ−2−エニルが挙げられるが、これらに限定はされない。−O−C2〜6アルケニルの形の基において、二重結合は、好ましくは、酸素に隣接していないことは理解されるであろう。
【0049】
「C1〜5アルカノイル」という用語は、ホルミル、アセチル、プロパノイルまたはブタノイルなどのアシル基を指す。
【0050】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を指す。
【0051】
本明細書で使用する「C3〜7シクロアルキル」基という用語は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルなどの3ないし7炭素原子の非芳香族単環式炭化水素環を指す。
【0052】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、指定された数の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコキシ基を指す。例えば、C1〜6アルコキシは、少なくとも1個、最大で6個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルコキシを意味する。本明細書で使用する「アルコキシ」の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、2−ブトキシ、2−メチル−1−プロポキシ、2−メチル−2−プロポキシ、ペントキシおよびヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0053】
本明細書で基として使用する「ヒドロキシアルキル」という用語は、1ないし3個のヒドロキシル基により置換された、指定された数の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を指す。例えば、C1〜4ヒドロキシルアルキルは、1ないし4個の炭素原子および少なくとも1個のヒドロキシル基を含む直鎖または分岐アルキル鎖を意味する。そのような基の例には、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシブチル等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0054】
本明細書で使用する「複素環」という用語は、特に断らない限り、2ないし6個の炭素原子ならびに酸素、窒素および硫黄から選択された少なくとも1個のヘテロ原子を含む非芳香族、飽和または不飽和の単環を指す。好ましくは、複素環は5ないし7個の環原子を有する。複素環基の例には、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニルおよびチオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0055】
「離脱基」という用語は、求核剤により置き換えることができる化学基を指す。そのような基の例には、ハロゲン、メシレート、トシレートおよびエステル基が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、Aが−NHC(O)−または−C(O)NH−を表す式(I)の化合物およびその医薬上許容される誘導体に関する。この亜集団の中で、すべての他の可変要素は最初に定義されたものである。
【0057】
本発明の他の好ましい態様は、Aが−N(R)CH−または−CHN(R)−を表す式(I)の化合物およびその医薬上許容される誘導体に関する。この亜集団の中で、すべての他の可変要素は最初に定義されたものである。
【0058】
本発明のさらに他の好ましい態様は、Aが−C(O)−、−CH(OH)−、または−C(=NOR)−を表す式(I)の化合物およびその医薬上許容される誘導体に関する。この亜集団の中で、すべての他の可変要素は最初に定義されたものである。
【0059】
の代表例には、水素、非置換C1〜4アルキル例えばメチル、およびC1〜5アルカノイル例えばアセチルが挙げられる。
【0060】
本発明の好ましい態様は、Rが水素またはメチルである式(I)の化合物およびその医薬上許容される誘導体に関する。
【0061】
一実施形態において、RおよびRはヒドロキシである。あるいは、RとRとは一緒になって介在する原子と共に次の構造を有する環基を形成する。
【0062】
【化3】

(式中、Yは−O−および−N(R)−から選択される2価の基である)。
【0063】
「医薬上許容される賦形剤」は、通常安全で無毒性で、かつ生理学的にも他の面でも望ましくないことのない医薬組成物を調製することに有用である賦形剤を意味し、ヒトの医薬用途と同様に獣医学的用途にも許容可能な賦形剤を含む。本明細書で使用する「医薬上許容される賦形剤」は、1つおよび2つ以上両方のそのような賦形剤を含む。
【0064】
状況、疾患または状態を「治療すること」または「治療」は
(1)状況、疾患または状態に悩んでいるかまたはかかり易い可能性はあるが未だその状況、疾患または状態の臨床もしくは準臨床症状を経験または呈示していない哺乳動物で発生する状況、疾患または状態の臨床症状の出現を予防するかまたは遅延させること、
(2)状況、疾患または状態を抑制すること、すなわち、疾患またはその臨床もしくは準臨床症状の少なくとも1つの発生を止めるかまたは緩和すること、または
(3)疾患を軽減すること、すなわち、状況、疾患または状態またはその臨床もしくは準臨床症状の少なくとも1つの後退を起こさせること
を含む。
【0065】
治療される被験者への恩恵は、統計的に有意であるか、または少なくとも患者もしくは医師に感じられるかのいずれかである。
【0066】
「治療有効量」は、状況、疾患または状態を治療するために哺乳動物に投与されたときにそのような治療効果を及ぼすのに十分な化合物量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重、体調および応答性に依存して変化するであろう。
【0067】
急性炎症の4つの古典的症状は、患部における発赤、体温上昇、腫脹および疼痛ならびに侵された器官の機能喪失である。
【0068】
特定の状態に伴う症状および徴候は
・ リウマチ様関節炎−患部関節の疼痛、腫脹、ほてり、および圧痛;全身性早朝硬直、
・ インスリン依存性真性糖尿病−膵島炎、この状態は、網膜症、神経障害、腎症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、および脳血管疾患を含む、炎症要素のある種々の合併症に至る可能性がある、
・ 自己免疫甲状腺炎−脱力感、便秘症、息切れ、顔、手および足のむくみ、末梢部浮腫、徐脈、
・ 多発性硬化症−痙縮性、目のかすみ、眩暈、四肢脱力、四肢知覚異常、
・ ブドウ膜網膜炎−夜間視力の低下、周辺視力の欠損、
・ エリテマトーデス−関節痛、発疹、光線過敏症、発熱、筋肉痛、手足の腫脹、尿検査異常(血尿、円柱尿、タンパク尿)、糸球体腎炎、認知機能不全、血管血栓症、心膜炎、
・ 強皮症−レイノー病;手、腕、脚および顔面の腫脹;皮膚肥厚;指および膝の疼痛、腫脹および硬直;胃腸不全、拘束性肺疾患;心膜炎;腎不全、
・ リウマチ様脊椎炎、骨関節炎、敗血症性関節炎および多発関節炎などの炎症要素を有する他の関節状態−発熱、疼痛、腫脹、圧痛、
・ 髄膜炎、アルツハイマー病、AIDS認知症脳炎などの他の炎症性脳疾患−羞明、認知機能不全、記憶喪失、
・ 網膜炎など他の眼の炎症−視力低下、
・ 湿疹、他の皮膚炎(例えば、アトピー性、接触性)、乾癬、UV照射(日光および類似のUV源)により誘発された熱傷などの炎症性皮膚疾患−紅斑、疼痛、鱗屑、腫脹、圧痛、
・ クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患−疼痛、下痢、便秘症、直腸出血、発熱、関節炎、
・ 喘息−息切れ、喘鳴、
・ アレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患−くしゃみ、そう痒、鼻水、
・ 脳卒中に続く大脳損傷などの急性外傷に伴う状態−感覚喪失、運動能力喪失、認知障害、
・ 心筋虚血に起因する心組織損傷−疼痛、息切れ、
・ 成人呼吸窮迫症候群で出現するような肺損傷−息切れ、過呼吸、酸素化低下、肺浸潤、
・ 敗血症、敗血症ショック、中毒性ショック症候群などの感染を伴う炎症−発熱、呼吸不全、頻拍、低血圧、白血球増多症、骨髄炎、
・ 腎炎(例えば、糸球体腎炎)などの特定器官または組織に伴う他の炎症性状態−乏尿、検尿異常、
・ 虫垂炎−発熱、疼痛、圧痛、白血球増多症、
・ 痛風−疼痛、圧痛、患部関節の腫脹および紅斑、血清および/または尿中尿酸の上昇、
・ 胆嚢炎−腹痛および圧痛、発熱、悪心、白血球増多症、
・ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)−息切れ、喘鳴、
・ 鬱血性心不全−息切れ、ラ音、末梢性浮腫、慢性副鼻腔炎、鼻茸;嚢胞性線維症;び慢性汎細気管支;気管支拡張症;閉塞性細気管支炎、
・ II型糖尿病−心臓血管、眼、腎、および末梢血管疾患を含む終末器官合併症、
・ 肺線維症−過呼吸、息切れ、酸素化低下
・ 冠動脈疾患、粥状動脈硬化、および再狭窄などの血管疾患−疼痛、感覚喪失、脈拍低下、機能喪失、および
・ 移植拒絶に至る同種免疫−疼痛、圧痛、発熱
を含む。
【0069】
COPDに伴う症状は上で概説した。
【0070】
準臨床症状は、臨床症状の顕在化に先行して出現する可能性がある炎症の診断マーカーを含むが、これらに限定はされない。準臨床症状の1分類は、炎症誘発性リンパ系細胞の器官もしくは組織への侵入もしくは集積あるいは病原体または器官もしくは組織に特異的な抗原を認識して炎症誘発性サイトカインを分泌もしくは誘発する活性化された炎症誘発性リンパ系細胞の局所的もしくは末梢的存在などの免疫学的症状である。リンパ系細胞の活性化は当技術分野で知られている技法により測定することができる。
【0071】
受容者内の特定の部位に有効量の有効成分を治療的に「デリバリーする」ことは、特定部位に有効成分の治療的に有効な血中濃度をもたらすことを意味する。これは、例えば、有効成分の受容者への局所または全身投与により達成することができる。
【0072】
本明細書で使用する「受容者」または「被験者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0073】
本発明の好ましい化合物は、実施例1〜27の化合物および医薬上許容されるその誘導体である。
【0074】
調製方法:
式(I)の化合物および医薬上許容されるその誘導体は、下で概略を説明する一般的な方法により調製することができ、前記方法は本発明のさらなる態様を構成する。次の説明において、RないしR基、Aおよびnは、特に断らない限り、式(I)の化合物に対して定義した意味を有する。
【0075】
構造を修飾されるべき官能基以外の如何なる官能基との干渉も回避するために、適当な保護および合成経路における優先事項を選択すべきであることは、当業者には明らかであろう。官能基を保護できる方法およびその結果生ずる保護された誘導体を切断する方法の包括的な考察は、例えば、参照により本明細書に組み込む、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts著「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版(John Wiley & Son,Inc 1991年)およびP.J.Kocienski著「Protecting Groups」(Georg Thieme Verlag 1994年)で与えられている。
【0076】
目標化合物の合成は、当業者に周知の標準的技法を使用して、最後から2番目の中間体中に存在する何らかの保護基を除去することにより完成される。次に、脱保護された最終生成物は、必要に応じて、シリカゲルクロマトグラフィー、シリカゲルでのHPLC等の標準的技法を使用して、または再結晶により精製される。
【0077】
次の合成経路における−NR8a9a基は、式(I)に対して定義された−NRまたは−NRに変換し得る基(例えば、官能性を保護されたアミン)である。下記の反応中に保護基が必要であれば、一般的に、−NR8a9a基の−NR基への変換が行われる。例えば、適当なアミノ保護基の例には、アシル型保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチルおよびアセチル)、芳香族ウレタン型保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および置換Cbzおよび9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、脂肪族ウレタン保護基(例えば、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニルおよびシクロヘキシルオキシカルボニル)およびアルキル型保護基(例えば、ベンジル、トリチルおよびクロロトリチル)が挙げられる。適当な酸素保護基の例には、例えば、トリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルなどのアルキルシリル基、テトラヒドロピラニルまたはtert−ブチルなどのアルキルエーテル、酢酸エステルなどのエステルを挙げることができる。ヒドロキシル基は、非プロトン性溶媒中における、例えば、無水酢酸、無水安息香酸または塩化トリアルキルシリルの反応により保護することができる。非プロトン性溶媒の例は、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキド、テトラヒドロフラン等である。
【0078】
がOC(O)(CHNRであり、かつnが1から8の整数である式(I)の化合物は、Rがヒドロキシ保護基である式(II)の化合物とカルボン酸(III)またはカルボン酸(III)の適当な活性化誘導体との反応と、必要に応じて、それに続くヒドロキシ保護基Rの除去および−NR8a9a基の−NRへの変換により調製することができる。同様に、Rが−OC(O)(CHNRであり、かつRがCHである式(I)の化合物に関係する中間体化合物を同じ方法により調製することができる。
【0079】
【化4】

(II)
HOC(O)(CHNR8a9a (III)
【0080】
カルボン酸の適当な活性化誘導体は、対応するハロゲン化アシル、混合酸無水物または活性化エステル例えばチオールエステルなどを含む。
【0081】
反応は、好ましくは、ハロ炭化水素(例えばジクロロメタン)またはN,N−ジメチルホルムアミドなどの適当な非プロトン性溶媒中で、所望によりジメチルアミノピリジンまたはトリエチルアミンなどの第3級塩基の存在で、または無機塩基(例えば水酸化ナトリウム)の存在で、かつ0°ないし120℃の範囲内の温度で実施される。式(II)および(III)の化合物もジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカルボジイミドの存在で反応させることができる。
【0082】
式(II)の化合物は、例えば、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1巻(1986年)1881〜1890頁および国際特許出願公開第9951616号中に記載されている周知のプロセスに従ってクラジノース糖の酸触媒切断により調製される。
【0083】
本発明のさらなる実施形態において、RがOC(O)(CHNRであり、かつnが1から8の整数である式(I)の化合物は、nが1から8の整数であり、かつLが適当な離脱基である式(IV)の化合物とHNR8a9a(V)との反応により調製することができる。
【0084】
【化5】

(IV)
【0085】
反応は、好ましくは、ハロ炭化水素(例えばジクロロメタン)、エーテル(例えばテトラヒドロフランまたはジメトキシエタン)、アセトニトリルまたは酢酸エチル等、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドまたは1−メチル−1−ピロリドンなどの溶媒中、塩基の存在で実施され、続いて、所望であれば、ヒドロキシル保護基Rの除去および−NR8a9a基の−NRへの変換が行われる。使用することができる塩基の例には、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデカ−7−エンなどの有機塩基、ならびに水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等などの無機塩基が挙げられる。この反応のための適当な離脱基は、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物)またはスルホネート基(例えばトシレート、メタンスルホネート、またはトリフレート)を含む。
【0086】
式(IV)の化合物は、Rがヒドロキシ保護基である式(II)の化合物とカルボン酸HOC(O)(CHL(VI)またはLが前の段落で定義された適当な離脱基である前記カルボン酸の適当な活性化誘導体との反応により調製することができる。カルボキシル基の適当な活性化誘導体は、カルボン酸(III)に対して上で定義されたものである。反応は式(II)の化合物とカルボン酸(III)との反応に対して上に記載した条件を使用して実施される。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、RがOC(O)(CHNRであり、かつnが2である式(I)の化合物は、Rがヒドロキシ保護基である式(VII)の化合物と式HNR8a9aの化合物(V)とのマイケル反応により調製することができる。
【0088】
【化6】

(VII)
【0089】
反応はジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−ピロリドン、ハロ炭化水素(例えばジクロロメタン)、エーテル(例えばテトラヒドロフランまたはジメトキシエタン)、アセトニトリルまたはアルコール(例えばメタノールまたはイソプロパノール)等などの溶媒中で、塩基の存在で実施され、所望であれば、続いてヒドロキシル保護基Rの除去および−NR8a9a基の−NRへの変換が行われる。
【0090】
式(VII)の化合物は、その全体を参照により本明細書に組み込む国際特許出願第03/042228号の特に16〜18頁に記載されている手順に従って調製することができる。したがって、トリエチルアミンなどの塩基の存在における、Rがヒドロキシ保護基である式(II)の化合物と塩化3−クロロプロピオニルとの反応は、式(VII)の化合物を生成させる。
【0091】
が−O−(CHNRである式(I)の化合物は、nが1ないし8の整数である式(VIII)の3−O−アルデヒド化合物と式HNR8a9aの化合物(V)との反応と、必要に応じてそれに続く保護基の除去およびNR8a9a基のNRへの変換により調製することができる。
【0092】
【化7】

(VIII)
【0093】
還元アミノ化反応は、好ましくは、メタノールおよびDMFなどの溶媒中で実施される。適当な還元剤は、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムである。
【0094】
nが1または2である式(VIII)の化合物は、適当に保護された式(IX)の化合物から、9−BBNまたは他の適当なボランによるヒドロホウ素化とそれに続く過酸化物による処理およびそれに続く酸化(n=2)、または四酸化オスミウム/過ヨウ素酸切断により(n=1)、調製することができる。
【0095】
式(IX)の化合物は、Aが−C(OH)−であるとき、例えば9位と11位との間の環状保護により適当に保護された式(II)のC3ヒドロキシ化合物(J.Antibiot.、42巻、293頁、1989年)のパラジウム触媒アリル化(Recl.Trav.Chim.Pays−Bas 102巻、501〜505頁、1983年)により形成させることができる。
【0096】
【化8】

(IX)
【0097】
本発明のさらなる実施形態において、Rが−O−(CHNRである式(I)の化合物は、式(X)の化合物
【0098】
【化9】

(X)
と式HNR8a9a(V)の化合物との反応により調製することができ、その際nは2ないし8の整数であり、かつLは式(IV)の化合物について記載した適当な離脱基である。反応は、好ましくは、ハロ炭化水素(例えばジクロロメタン)、エーテル(例えばテトラヒドロフランまたはジメトキシエタン)、アセトニトリルまたは酢酸エチル等、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドまたは1−メチル−1−ピロリドンなどの溶媒中、塩基の存在で実施され、続いて、所望であれば、保護基Rの除去およびNR8a9a基のNRへの変換が行われる。使用することができる塩基に例には、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデカ−7−エン(DBU)などの有機塩基、ならびに水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等などの無機塩基が挙げられる。この反応のための適当な離脱基は、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物)である。
【0099】
本発明のさらなる実施形態において、Rが−O−(CHNRであり、nが3であり、かつRとRとは同じであり上で定義された意味を有する式(I)の化合物は、ZがCHNHである式(XI)のC3アミンを式HC(O)Rの化合物(XII)で還元アミノ化することにより調製することができる。
【0100】
【化10】

(XI)
【0101】
ZがCHNHである式(XI)の化合物は、式(II)の適当に保護された化合物とアクリロニトリルとの、DMSO、THF、t−BuOHなどの溶媒中NaHなどの塩基の存在における反応により、Zがシアノ基である式(XI)の化合物を生じさせ、続いてシアノ基をアミノ基に接触還元することにより、調製することができる。
【0102】
Aが−C(=NOR)であり、かつRが水素である式(II)の化合物は知られた化合物であって、すなわち、それらは、Aが−C(=NOR)であり、かつRが水素である式(IIa)の化合物(米国特許第3,478,014号またはJournal of Antibiotics、44巻、313頁、1991年)から出発して、例えば、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1巻(1986年)、1881〜1890頁および国際特許出願公開第9951616号に記載されている周知のプロセスに従って、クラジノース糖の酸触媒切断により調製することができる。Rが水素原子以外である化合物は、例えば、欧州特許第1167375号に従って、オキシムのアルキル化により調製することができる。
【0103】
【化11】

(IIa)
【0104】
Aが−CH(OH)−である式(II)の化合物は、Aが−CH(OH)−である式(IIa)の化合物(JACS 79巻、6062頁、1957年、Journal of Antibiotics 43巻、1334頁、1990年)から出発して、クラジノース糖の酸触媒切断により調製することができる。
【0105】
Aが−NHC(O)−または−C(O)NH−であり、かつRがC1〜4アルキルまたはC2〜6アルケニルである式(II)の化合物は、知られている化合物であって、すなわち、それらは、対応する6−O−アルキルまたはアルケニルエリスロマイシンAオキシムから、国際特許出願公開第99/51616号に記載されている手順によるベックマン転位とそれに続くクラジノース糖の酸触媒切断により調製することができる。
【0106】
Aが−NRCH−または−CHN(R)−である式(II)の化合物は知られている化合物であって、すなわち、それらは、Aが−NRCH−または−CHN(R)−である式(IIa)の化合物(米国特許第4328334号、ベルギー特許第892357号、米国特許第4464527号、Bioorg.Med.Chem.Lett.、3巻、1287頁、1993年)から出発して、先の段落に記載された同様な方法により調製することができる。
【0107】
が水素、C2〜4アルキル、またはC1〜5アルカノイルである式(II)の化合物は、Rがメチルである式(IIa)の化合物から出発して、3’−NMe基のクロロギ酸ベンジルでのモノ脱メチルとそれに続く、米国特許第5,250,518号に記載されている2’および3’位におけるベンジルオキシカルボニル基の離脱により調製される。3’−NMe基の脱メチルの別法は、米国特許第3,725,385号および国際特許出願公開第2004/013153号に記載されている、有機溶媒の存在における酢酸ナトリウムおよびヨウ素での処理である。このようにして得られた第2級アミンのそれに続くアルキル化またはアシル化は、従来の合成技法に従って、およびそれに続く、国際特許出願公開第99/51616号に記載されている手順によるクラジノース糖の酸触媒切断により実施される。
【0108】
とRとが一緒になって介在する原子と共に次の構造を有する環基
【0109】
【化12】

(式中、Yは−CH−、−CH(CN)−、−O−、−N(R)−および−CH(SR)−から選択される2価の基である)
を形成している式(II)の化合物は、RとRとが一緒になって介在する原子と共に次の構造を有する環基
【0110】
【化13】

(式中、Yは−CH−、−CH(CN)−、−O−、−N(R)−および−CH(SR)−から選択される2価の基である)
を形成している式(IIa)の化合物から出発して、例えば、国際特許出願公開第2004/039822号に記載されている手順による、当業者に知られている類似の方法と、それに続く、国際特許出願公開第99/51616号に記載されている手順によるクラジノース糖の酸触媒切断により調製することができる。
【0111】
本発明のさらなる態様は、炎症部位に依存して異なる方法、例えば、経皮的に、経口的に、バッカルで、直腸で、非経口的にまたは呼吸管内適用が意図されるときには吸入により投与することができる抗炎症、抗アナフィラキシーおよび免疫調節剤として、式(I)の化合物を使用する方法に関する。
【0112】
本発明の化合物の対応する製剤は、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2もしくはIL−5を含むがこれらに限定はされない炎症性サイトカインまたは他の炎症性メディエーターの産生を含む異常なもしくは望ましくない(過剰な、無制御な、もしくは調節不全の)炎症性免疫応答により惹起される、またはそれに伴ういくつかの疾患(疾患および他の病理学的炎症性状態)の予防および治療処置(予防、遅延、抑制または軽減)ならびに/あるいは過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の抑制に使用することができる。これらの疾患には、リウマチ様関節炎、インスリン依存性真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、多発性硬化症、ブドウ膜網膜炎、エリテマトーデス、強皮症などの自己免疫疾患;乾癬、ざ瘡;リウマチ様脊椎炎、骨関節炎、骨髄炎など炎症性要素を有する他の関節状態;敗血症性関節炎、および多発関節炎;髄膜炎、アルツハイマー病、AIDS認知症脳炎など他の炎症性脳疾患;網膜炎など他の眼の炎症;湿疹、他の皮膚炎(例えば、アトピー性、接触性)、乾癬、UV(日光および同様なUV光源)照射により誘発された熱傷などの炎症性皮膚疾患;クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;COPD;嚢胞性線維症;気管支拡張症;喘息;アレルギー性鼻炎などの他のアレルギー性疾患;慢性副鼻腔炎;脳卒中に続く脳損傷、心筋虚血に起因する心組織損傷、成人呼吸窮迫症候群で起こるような肺損傷などの急性外傷に関連する状態;敗血症、敗血症性ショック、中毒性ショック症候群、特定の器官または組織に伴う他の炎症性状態、例えば、腎炎(例えば、糸球体腎炎)、虫垂炎、痛風、胆嚢炎、鬱血性心不全、II型糖尿病、肺線維症、閉塞性細気管支炎などの感染に伴う炎症;び慢性汎細気管支炎;冠動脈疾患、粥状動脈硬化および再狭窄などの血管疾患;および移植拒絶に至る同種免疫が含まれる。呼吸管内適用を意図するとき、吸入により化合物を投与することもできる。本発明のさらなる目的は、式(I)の有効な化合物の最適なバイオアベイラビリティーを達成するための化合物の種々の製剤の調製に関する。
【0113】
医薬組成物
さらに、本発明は、本発明の化合物の有効量を含む医薬組成物ならびに担体または希釈剤などの医薬上許容される賦形剤に関する。
【0114】
本発明の方法で使用するために、式(I)の化合物をバルクの物質として投与することが可能であるとはいえ、例えば、意図する投与経路および標準的薬務を考慮して選択された医薬上許容される担体との混合物中に作用薬が入っている医薬製剤中の有効成分を提供することが好ましい。
【0115】
本発明の化合物の対応する製剤は、病気の予防(上の「治療」の定義と関連して論じかつ定義された臨床または準臨床症状の1つまたは2つ以上の予防、遅延または抑制を含むがそれらに限定はされない)に、ならびに慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎などの炎症性鼻疾患、鼻茸、大腸疾患例えば、クローン病、結腸炎、腸炎、潰瘍性大腸炎など、皮膚科学的炎症例えば、湿疹、乾癬、アレルギー性皮膚炎、神経皮膚炎、そう痒など、結膜炎およびリウマチ様関節炎を含むいくつかの疾患ならびに病理学的炎症性状態の治療処置に使用することができる。
【0116】
「担体」という用語は、有効化合物と共に投与される希釈剤、賦形剤、および/またはビヒクルを指す。本発明の医薬組成物は1種を超える担体の組合せを含むことができる。そのような薬剤担体は、水、食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む油などの無菌の液体であってよい。水または食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液などの水溶液が、担体として、特に注射溶液剤用に好ましく利用される。適当な薬剤担体はE.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版に記載されている。薬剤担体は、意図する投与経路および標準的薬務を考慮して選択することができる。医薬組成物は、担体として、または担体に加えて、任意の適当な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、および/または可溶化剤を含むことができる。
【0117】
「医薬上許容される賦形剤」は、通常安全で無毒性で、かつ生理学的にも他の面でも望ましくないことのない医薬組成物を調製することに有用である賦形剤を意味し、ヒトの医薬用途と同様に獣医学的用途にも許容可能な賦形剤を含む。本出願で使用する「医薬上許容される賦形剤」は、1つおよび2つ以上両方のそのような賦形剤を含む。
【0118】
本発明に従って使用する医薬組成物は、経口、非経口、経皮、吸入、舌下、局所、埋め込み、鼻内、または経腸的に投与される(または他の粘膜で投与される)懸濁液剤、カプセル剤または錠剤の形態であってよく、それらは1つまたは複数の医薬上許容される担体または賦形剤を使用する従来の方法で剤形化され得ることは理解されるであろう。
【0119】
異なるデリバリー系に依存して異なる組成物/剤形化の要求があり得る。化合物のすべてが同じ経路により投与される必要はないということは理解されるべきである。同様に、組成物が1種を超える有効成分を含むならば、そのときそれらの成分は、同じかまたは異なる経路により投与することができる。例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを使用して、または例えば、鼻内スプレーもしくは吸入用エアロゾルもしくは経口摂取可能な溶液剤として粘膜経路により、または、組成物を、例えば、静脈内、筋肉内もしくは皮下経路によりデリバリーするための注射可能な形態に剤形化して非経口的にデリバリーされるように剤形化することができる。あるいは、剤形化は、多様な経路によりデリバリーされるように設計することができる。
【0120】
さらに本発明は、医薬上許容される媒体と混合された、治療有効量の式(I)の化合物またはその1つの塩を含む医薬製剤に関する。本発明の医薬上許容される剤形は、経口、粘膜および/または非経口投与に適した液剤、例えば、ドロップ剤、シロップ剤、溶液剤、そのまま直ぐに使用できるかまたは凍結乾燥された製品の希釈により調製される注射溶液剤であってもよいが、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ペレット剤、膣坐薬、坐薬、クリーム剤、軟膏(salve)、ゲル剤、軟膏(ointment)のような固形剤もしくは半固形剤、または経皮経路もしくは吸入による投与に適した溶液剤、懸濁液剤、乳液剤、もしくは他の形態である。
【0121】
本発明の化合物は、即時型、遅延型、修飾型、徐放型、パルス型、または放出制御型を適用して投与することができる。
【0122】
器官または組織に限局性の炎症、例えばクローン病などを治療するための剤形にも化合物を導入することができ、その場合、経口的にまたは直腸内に投与することができる。経口投与のための剤形は、炎症部位における化合物のバイオアベイラビリティーを可能にする賦形剤を含有することができる。これは、経腸的遅延放出剤形の異なる組合せにより達成することができる。式Iの化合物は、化合物が浣腸剤の形態で適用されれば、クローン病および腸炎症性疾患の治療に使用することもでき、浣腸のためにはこの分野で周知の適当な剤形を使用することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、経口組成物は、遅い、遅延されたまたは位置を決められた放出(例えば、腸内、特に結腸での放出)をする錠剤またはカプセル剤である。この放出プロファイルは、限定はされないが、胃内の条件に抵抗性であるが結腸でまたは病変もしくは炎症部位が確認された胃腸管の他の場所で内容物を放出するコーティングの使用により達成することができる。または、遅延放出は単に崩壊の遅いコーティングにより達成することができる。または、2つの(遅延および位置を決めた放出)プロファイルは、1つまたは複数の適当なコーティング剤および他の賦形剤の選択により単一剤形中で組み合わせることができる。そのような剤形は、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0124】
経口投与のための剤形は、腸内の炎症部位における化合物のバイオアベイラビリティーを可能にするように設計することができる。これは、遅延放出剤形の異なる組合せにより達成することができる。式Iの化合物は、適当な剤形が使用され得る浣腸の形態で化合物が適用されれば、クローン病および腸炎症性疾患の治療にも使用することができるであろう。
【0125】
遅延されたまたは位置決めされた放出および/または腸内用コート経口剤形のための適当な組成物には、耐水性で、pH感受性で、腸液により消化または乳化される、または湿らせたときに遅いが一定の速度でコートが脱落する材料でフィルム被覆された錠剤剤形が含まれる。適当なコーティング材料には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定はされない。ポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、トリアセチンおよびヒマシ油などの、但しこれらに限定はされない可塑剤を使用することができる。フィルムを着色するために顔料を使用することもできる。坐薬は、カカオバター、坐薬基剤例えばSuppocire CおよびSuppocire NA50(Gattefosse Deutschland GmbH、D−Weil am Rhein、ドイツ所在)など、および水素化パーム油と水素化パーム核油(C8〜C18トリグリセリド)のエステル交換、グリセロールと特定の脂肪酸とのエステル化により得られる他のSuppocire型賦形剤、またはポリグリコシル化グリセリドおよびwhitepsol(添加物を含む水素化植物油誘導体)のような担体を使用することにより調製される。浣腸剤は、本発明の適当な有効化合物および溶媒もしくは懸濁のための賦形剤を使用して剤形化される。懸濁液は、微細化された化合物ならびにカルボキシメチルセルロースおよびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシビニルポリマーおよびその塩、アルギン酸およびその塩、プロピレングリコールのアルギン酸エステル、キトサン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミドポリマー、ポリメタクリル酸ビニル、ポリエチレングリコール、プルロニック、ゼラチン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、可溶性デンプン、プルラン、およびアクリル酸メチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとのコポリマー、レシチン、レシチン誘導体、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、グリセリンの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水和ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびプルロニックのような懸濁液安定剤、増粘剤および乳化剤等を含む適当な媒体ならびにpHが6.5から8の範囲にある適当な緩衝系を使用して剤形化される。防腐剤、マスキング剤の使用が適当である。微細化粒子の平均直径は、1マイクロメーターと20マイクロメーターの間でよく、または1マイクロメーター未満でよい。化合物はそれらの水溶性塩型を使用して剤形に導入することもできる。
【0126】
あるいは、錠剤の基質に、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースまたはアクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマーなどの材料を導入することもできる。これらの後者の材料は圧縮コーティングにより錠剤に適用することもできる。
【0127】
医薬組成物は、治療有効量の有効物質と医薬上許容される担体とを混合することにより調製することができ、投与の方法に依存して異なる形態を有することができる。医薬組成物は、従来の医薬賦形剤および調製方法を使用して調製することができる。経口投与型は、カプセル剤、散剤または錠剤にすることができ、その場合、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第2リン酸カルシウム、マンニトールを含む通常の固体媒体ならびにエタノール、グリセロールおよび水を含むがこれらに限定はされない通常の液体経口賦形剤を添加することができる。すべての賦形剤は、崩壊剤、溶媒、顆粒化剤、加湿剤および結合剤と混合することができる。固体担体を経口用組成物の調製に使用するとき(例えばデンプン、砂糖、カオリン、結合剤崩壊剤)、製剤は、限定されることなく、散剤、顆粒またはコートされた粒子を含むカプセル剤、錠剤、硬質ゼラチンカプセル剤または顆粒剤の形態にすることができ、固体担体の量は変えることができる(1mgと1gの間)。錠剤およびカプセル剤は好ましい経口組成物形態である。
【0128】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、例えば、溶液剤、懸濁剤、または乳液剤を含む、意図する投与方法に適した如何なる形態であってもよい。液体担体は、通常、溶液剤、懸濁液剤、および乳濁液剤を調製する際に使用される。本発明の実施において使用を考慮される液体担体には、水、食塩水、医薬上許容される有機溶媒、医薬上許容される油または脂肪等ならびにそれらの2つ以上の混合物が含まれる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、栄養剤、緩衝剤、防腐剤、懸濁剤、増粘剤、粘度調節剤、安定剤等などの他の適当な医薬上許容される添加剤を含むことができる。適当な有機溶媒には、例えば、エタノールなどの一価アルコール、グリコールなどの多価アルコールが含まれる。適当な油には、例えば、ダイズ油、ココナッツ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油等が含まれる。非経口投与に対して、担体は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等の油状エステルであってもよい。本発明の組成物は、微粒子、マイクロカプセル、カプセル化リポソーム等ならびにそれらの任意の2つ以上の組合せであってもよい。
【0129】
本発明における有用な経口組成物のための医薬上許容される崩壊剤の例には、デンプン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸塩、樹脂、界面活性剤、発泡性組成物、ケイ酸アルミニウム水溶液および架橋ポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0130】
本発明における有用な経口組成物のための医薬上許容される結合剤の例には、アラビアゴム、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースなど、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、トラガカントガム、キサンテン樹脂、アルギン酸塩、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポリエチレングリコールまたはベントナイトが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0131】
経口組成物のための医薬上許容される充填剤の例には、ラクトース、アンヒドロラクトース、ラクトース一水和物、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、セルロース(特に、微結晶セルロース)、ジヒドロまたはアンヒドロリン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0132】
本発明の組成物において有用な医薬上許容される潤滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドのポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、および二酸化ケイ素コロイドが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0133】
経口組成物のための医薬上許容される適当な着香剤の例には、合成芳香および油、花、果物(例えば、バナナ、リンゴ、スミノミザクラ、モモ)の抽出物およびそれらの混合物などの天然芳香油および同様な芳香が挙げられるが、それらに限定はされない。それらの使用は、多くの要因に依存するが、最も重要なのは、医薬組成物を取っているであろう集団の感覚受容性である。
【0134】
経口組成物のための医薬上許容される適当な色素の例には、二酸化チタン、βーカロテンおよびグレープフルーツ果皮の抽出物などの合成および天然色素が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0135】
経口組成物のための医薬上許容される甘味剤の適当な例には、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクトースおよびスクロースが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0136】
医薬上許容される緩衝剤の適当な例には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0137】
医薬上許容される界面活性剤の適当な例には、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0138】
医薬上許容される防腐剤の適当な例には、溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノールなど、第4級アンモニウム塩、およびパラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンその他)など種々の抗菌剤および抗真菌剤が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0139】
医薬上許容される安定剤および抗酸化剤の適当な例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ尿素、トコフェロールおよびブチルヒドロキシアニソールが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0140】
本発明の化合物は、例えば、ヒトまたは獣医学用医薬で使用するための従来の坐薬基剤を含む坐薬として、または、例えば、従来の膣坐薬基剤を含む膣坐薬として剤形化することもできる。
【0141】
経皮または粘膜の外用投与のために、式(I)の化合物は軟膏またはクリーム剤、ゲル剤またはローションの形態で調製することができる。軟膏、クリーム剤およびゲル剤は、適当な乳化剤またはゲル化剤を添加した水または油性基剤を使用して剤形化することができる。本発明の剤形は、式(I)の化合物が加圧下でエアロゾルの形態でデリバリーされる呼吸用吸入に特に重要である。式(I)の化合物は、大部分の粒子について5μm以下の微粒子サイズにするために、例えば、ラクトース、グルコース、高級脂肪酸、ジオクチルスルホコハク酸のナトリウム塩、または最も好ましくはカルボキシメチルセルロース中で均一化された後に、微細化することが好ましい。吸入用剤形のためには、エアロゾルを、有効物質を投薬するためのガスまたは液体の噴射剤と混合することができる。吸入器または噴霧器またはネブライザーを使用することができる。そのような装置は知られている。例えば、Newmanら、Thorax、1985年、40巻、61〜676頁、Berenberg,M.、J.Asthma USA、1985年、22巻、87〜92頁を参照されたい。Birdネブライザーも使用することができる。米国特許第6,402,733号、第6,273,086号および第6,228,346号も参照されたい。
【0142】
皮膚に局所的に適用するために、本発明の薬剤は、例えば、次のもの:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン配合物、乳化ワックス、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水の1つまたは2つ以上との混合物に懸濁または溶解した有効化合物を含む適当な軟膏として剤形化することができる。そのような組成物は、ポリマー、油、液体担体、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤、抗酸化剤、加湿剤、皮膚軟化剤、着色剤、および着香剤などの他の医薬上許容される賦形剤も含むことができる。
【0143】
そのような局所用の組成物に適した医薬上許容されるポリマーの例には、アクリル系ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸塩、トラガカントガム、ペクチン、キサンテンおよびシトサン(cytosan)などの天然ポリマーが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0144】
簡単に述べたように、本発明の化合物は、鼻内にまたは吸入により投与することができ、適当な噴射剤例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134AT””)もしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA)、二酸化炭素もしくは他の適当なガスなど適当な噴射剤を使用した加圧容器、ポンプ、噴霧器もしくはネブライザーからの乾燥粉末吸入器またはエアロゾル噴霧器提供の形態で便利にデリバリーされる。加圧されたエアロゾルの場合、投薬単位は、計量した量をデリバリーするバルブを備えることにより決定することができる。加圧容器、ポンプ、噴霧器またはネブライザーは、例えばエタノールと噴射剤との混合物を、例えばトリオレイン酸ソルビタンなどの潤滑剤をさらに含んでよい溶媒として使用して、有効化合物の溶液または懸濁液を含むことができる。
【0145】
吸入器または注入器に使用するカプセルおよび薬包(例えばゼラチンで作製される)は、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適当な散剤基剤との散剤混合物を含むように剤形化することができる。
【0146】
本発明による化合物は、ヒトまたは獣医学用医薬で使用する目的で、吸入により局所投与するように、ネブライザーによりデリバリーすることができる。
【0147】
本発明の医薬組成物は、容量当たり0.01から99重量%の有効材料を含むことができる。
【0148】
本発明の化合物の治療有効量は、当技術分野において知られた方法により決定することができる。本発明の化合物は、アジスロマイシンおよびクラリスロマイシンなどの他の化合物よりも効率的に所望の部位にデリバリーされるので、アジスロマイシンまたはクラリスロマイシンと(モル基準で)比較して少ない量の本発明の化合物をデリバリーして、それでもなお同じ治療効果を達成することができる。したがって、下表は指針としてのみ役に立つ。本発明の化合物または医薬上許容されるその誘導体の広範囲で好ましい有効量を下表に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
本発明の化合物の有効性は、炎症または抗炎症効果を評価する任意の方法により評価することができる。この目的のためには、微小気泡の注入と組み合わせた超音波造影の使用、炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1、IFN−γなど)の測定、活性化された免疫系細胞(活性化T細胞、炎症を起こしているかまたは移植された組織を特異的に認識する細胞障害性T細胞)の測定ならびに生体観察(浮腫の軽減、紅斑の軽減、そう痒または灼熱感の軽減、体温の低下、罹患した器官の機能改善)ならびに下で述べる任意の方法を含むが、これらに限定されない多くの知られた方法がある。
【0151】
投与は、1日1回、1日2回、それよりも高頻度でもよく、疾患または障害の維持期中に減少させて、例えば、毎日もしくは1日2回の代わりに2日もしくは3日に1回にすることもできる。用量および投与頻度は、当業者に知られた急性期の臨床徴候の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上が軽減するかまたはなくなった寛解期の維持を裏づける臨床徴候に依存するであろう。
【0152】
生物学的アッセイ
本発明の化合物の治療効果は、次のようなin vitroおよびin vivoの実験で測定した。
【0153】
生物学的実施例でアッセイされたサイトカインは、上昇した量で表されるときに、炎症のマーカーであり、また細胞増殖の場合には、免疫細胞の挙動もそれらの活性化の、したがって炎症のマーカーである。したがって、炎症誘発性サイトカインの発現または分泌の減少および細胞増殖の減少は、化合物の抗炎症活性の尺度である。
【0154】
本明細書で規定した生物学的アッセイを使用して分析した化合物は、それが、少なくとも1つの刺激剤(例えば、PMAまたはPHA)での刺激後に、少なくとも1つの抑制機能(すなわちTNF−αまたはIL−6の抑制)において陽性対照(すなわちアジスロマイシン)よりも優れていれば「有効」であると見なされる。より好ましくは、有効な化合物は少なくとも1つの抑制機能において50%を超える抑制を示す。
【0155】
試料調製
in vitro実験で使用される物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Kemika、Cratia)に50mMおよび10mMの濃度で溶解し、1%熱不活化胎児牛血清(FBS)、1%グルタマックス、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンおよび2.5μg/mLファンギゾン(アムホテリシンB)で補完した1mLのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中に50μMおよび10μMの最終濃度にさらに希釈した。培地およびすべての培地補完剤は、Sigma(米国所在)からのFBSを例外として、Gibco(オーストラリア所在)から購入した。
【0156】
末梢血白血球の分離
末梢血白血球(PBL)は、健康な志願者の静脈血から、2%デキストランT−500(Amersham Biosciences、米国所在)での沈降およびそれに続く白血球濃縮血漿の遠心分離により得た。
【0157】
in vitroにおける刺激されたヒト末梢血白血球による炎症誘発性サイトカイン産生の抑制
上記のようにして分離された末梢血白血球(PBL)を、48ウェルのプレート中で、10%熱不活化胎児仔牛血清(FCS、Biowhittaker、米国所在)、100U/mlペニシリン(Gibco、オーストラリア所在)、100μg/mlストレプトマイシン(Gibco、オーストラリア所在)および2mM L−グルタミン(Gibco、オーストラリア所在)で補完したRPMI 1640培地(Institute of Immunology、クロアチア所在)からなる培養培地中に、1ウェル当たり3〜5×10細胞の濃度で接種して、試験化合物を加え、5%COの雰囲気、および湿度90%、37℃で2時間プレインキュベートした。その後、刺激剤(Sigma、米国所在)として、最終濃度2μg/mLのリポ多糖(LPS)、1μg/mLのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)または120μg/mLザイモサンを加えた。試料は上記の条件で一晩インキュベートした。インキュベート終了時に、上清をエッペンドルフチューブに移して、1500gで10分間遠心分離した。細胞上清で、捕捉および検出用抗体(R&D、米国所在)をメーカーの助言に従って使用して、ヒトTNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−8の濃度をサンドイッチELISAにより測定した。
【0158】
次式を使用して抑制率(%)を計算した。
抑制率(%)=(1−試料中のサイトカイン濃度/陽性対照中のサイトカイン濃度)×100
式中、「陽性対照」は物質処理せずに刺激された試料のことである。
【0159】
【表2】

【0160】
末梢血単核細胞の分離
ヘパリン化末梢血を健康な提供者から得て、末梢血単核細胞(PBMC)を、400gで30分間のHistopaque1077(Sigma、米国所在)密度遠心分離により分離した。捕集したPBMCは、血漿中で400g/10分で遠心分離し、RPMI 1640(Institute of Immunology、クロアチア所在)中に再懸濁し、遠心分離により洗浄した。
【0161】
in vitroにおけるヒト末梢血単核細胞増殖に対する効果
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対して2つの異なった濃度(50μMおよび10μM)で物質の影響を評価した。
【0162】
ヘパリン化末梢血を健康な提供者から得て、PBMCを、400gで30分間のHistopaque1077(Sigma、米国所在)密度遠心分離により分離した。刺激剤[PHA(2.5μg/mL)(Sigma、米国所在)またはPMA(10ng/mL)(Sigma、米国所在)とイオノマイシン(500ng/mL)(Calbiochem、米国所在)との両方]および試験物質を存在させて(陽性対照)、または存在させずに(陰性対照)、5%COおよび湿度90%、37℃で、上記のRPMI培地中で、5×10細胞/ウェルを3日間培養した。培養の最後の18時間の間、ウェル当たり1μCiの(H)チミジン(Amersham、米国所在)を細胞に間欠的に投与し、多重セルハーベスター(Packard、米国所在)を使用して、細胞を96ウェルフィルター(Packard Bioscience、米国所在)に収集した。活性化された細胞における(H)チミジンの導入を、TopCount NXT(Packard、米国所在)により測定した。
【0163】
次式を使用して細胞増殖の抑制率(%)を計算した。
抑制率(%)=(1−試料中の1分当たりのカウント(cpm)で表される(H)チミジン導入/陽性対照中のcpmで表される(H)チミジン導入)×100
式中、「陽性対照」は物質処理せずに刺激された試料のことである。
【0164】
【表3】


【0165】
THP−1、Hep G2およびA549細胞系統に対する細胞障害性アッセイ
化合物の抗炎症活性、すなわち、観察されたサイトカイン産生の抑制およびin vitroにおける増殖抑制は、それらの細胞障害性の結果ではない。
【0166】
本発明の化合物の細胞障害性を評価するために、生きている細胞中のコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の測定を実施した。50μMおよび12.5μMの濃度で試験化合物を存在させ、37℃で、上記のRPMI培地中で24時間細胞を培養した。その後、MTT[臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム](Promega、米国所在)を検出試薬として加え、0.5〜2時間インキュベートした。生成したMTT−ホルマザンの量を、490nmで分光学的に測定した(Mosmann,J.Immunol.Methods、1983年、65巻、55〜63頁)。
【0167】
細胞の生存率(%)は、次式を使用して計算した。
細胞生存率(%)=(1−OD490処理細胞/OD490非処理細胞)×100
【0168】
【表4】

【0169】
すべての試験において、本発明の化合物は、抗炎症剤として非常に有効であることが見い出され、抗炎症活性は比較化合物であるアジスロマイシンおよびクラリスロマイシンの抗炎症活性と同等またはそれを超えることが見い出された。
【0170】
それゆえ、抗炎症活性を有する式(I)の化合物が、炎症性病態、特に好中球の変化した細胞機能に伴うこれらの病態、例えば、リウマチ様関節炎、血管炎、糸球体腎炎、虚血再かん流による損傷、粥状動脈硬化、敗血性ショック、ARDS、COPD、嚢胞性線維症および喘息の急性および慢性両方の治療ならびに予防に有用であり得ることは明らかである。
【0171】
治療有効量は、患者の年齢および一般的健康状態と投与経路および使用される医薬製剤とに依存するであろう。治療用量は、通常、約10mg/日と約2000mg/日の間で、好ましくは約30mg/日と約1500mg/日の間である。
【0172】
上に示した病態の治療および/または予防に使用するための本発明の化合物は、経口、直腸、舌下、非経口、局所、経皮、または吸入投与に適した医薬形態で好ましく使用されるであろう。
【0173】
本発明は、医薬上許容される媒体と混合された治療有効量の式(I)の化合物またはその塩もしくは誘導体を含む医薬製剤にさらに関する。本発明の医薬製剤は、経口および/または非経口投与に適した液剤、例えば、ドロップ剤、シロップ剤、溶液剤、そのまま直ぐに使用できるかまたは凍結乾燥された製品の希釈により調製される注射溶液剤であってもよいが、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ペレット剤、膣坐薬、坐薬、クリーム剤、軟膏(salve)、ゲル剤、軟膏(ointment)のような固形剤もしくは半固形剤の形態、または経皮経路もしくは吸入による投与に適した溶液剤、懸濁液剤、乳液剤、もしくは他の形態である。
【0174】
剤形のタイプに依存して、治療有効量の1つまたは2つ以上の式(I)の化合物に加えて、それらは、医薬用の固体もしくは液体賦形剤もしくは希釈剤および可能性として医薬製剤の調製に通常使用される他の添加物、例えば、増粘剤、凝集剤、潤滑剤、崩壊剤、着香剤および着色剤などを含むであろう。
【0175】
本発明の医薬製剤は、通常の方法に従って製造することができる。
【0176】
本発明をより良く例示するために、次の実施例を示す。次の実施例において、側鎖−Oまたは−Nの構造表示は、原子価により適宜−OH、−NH、または−NHと等価である。
【0177】
次の略記号が本明細書で使用される。DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、DCM ジクロロメタン、DMAP 4−ジメチルアミノピリジン、DMF N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO ジメチルスルホキシド、EDCxHCl 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、EtOAc 酢酸エチル、HOAc 酢酸、MeOH メタノール、EtOH エタノール、t−BuOH tert−ブタノール、TEA トリエチルアミン、DEA ジエチルアミン、THF テトラヒドロフラン、DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド、DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン。
【0178】
次の実施例中の化合物は、好ましくは、デソサミニル(desosaminyl)糖のC2位でSの絶対立体配置で結合しており、したがって、デソサミニル糖のC1およびC3に結合している置換基の立体配置に比較してアンチの立体配置にある置換基を有する。
【0179】
本発明の化合物およびプロセスは、例示を意図しているだけで、本発明の範囲を限定するものではない次の実施例に結びつけて、より良く理解されるであろう。開示された実施形態の種々の変形および改良は、当業者には明らかであろう。また、本発明の化学構造、置換基、誘導体、剤形および/または方法に関するものを含むが、それらに限定はされない、そのような変形および改良は、本発明の趣旨および付記した請求項の範囲から逸脱することなく行うことができる。
(実施例)
【0180】
2’−O−アセチル保護化合物は、W.R.Bakerら、J.Org.Chem.1988年、53巻、2340頁に記載されている手順により調製することができる。9−O−(2−クロロベンジル)−保護オキシム化合物は、Y.Watanabeら、J.Antibiot.1993年、46巻、1163頁に記載されている手順により調製することができる。9−O−(1−イソプロポキシシクロヘキシル)−保護オキシム化合物は、Z.Maら、J.Med.Chem.2001年、44巻、4137頁に記載されている手順により調製することができる。11,12−炭酸エステル化合物は、国際特許出願公開第02/50091号に記載されている手順により、またはS.Djokicら、J.Chem.Res.(増補)1988年、152頁に記載されている手順により調製することができる。11−O−メチルアジスロマイシンは、Kobrehelら、J.Antibiotics 1992年、45巻、527頁に記載されている手順により調製することができる。3−O−デクラジノシル化合物は、国際特許出願公開第99/51616号にLazarevskiらにより記載されているようにして調製することができる。11,12−環状カルバメート化合物は、米国特許第6,262,030号に記載されている手順により調製することができる。
(実施例1)
【0181】
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0182】
【化14】

国際特許出願公開第99/51616号の実施例6に従って得られた化合物(1.3g、2.01mmol)の乾燥トルエン(10ml)中の溶液に、TEA(1.14ml、8.24mmol)および塩化3−クロロプロピオニル(0.3ml、3.15mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間攪拌した。トルエン層をNaHCOおよび食塩水で洗浄し、真空下に蒸発させて粗残留物(0.56g)を得た。残留物をメタノール(30ml)に溶解し、室温で48時間攪拌した。
【0183】
メタノールを減圧下で蒸発させて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH=90:9:1.5)により精製して、表記の化合物を得た(0.51g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=659.4
(実施例2)
【0184】
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0185】
【化15】

乾燥メタノール(30ml)中の実施例1で作製された化合物(0.25g、0.38mmol)の溶液にジエチルアミン(0.24ml、2.30mmol)を加え、その反応混合物を40℃で20時間攪拌した。追加のジエチルアミン(0.08ml、0.77mmol)を加えて、混合物をさらに1時間攪拌した。メタノールを減圧下で蒸発させて、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:9:0.5)、表記の化合物を得た(0.14g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=732.62
13C−NMR(125MHz,CDCl)δ:178.0、177.1、172.2、103.4、81.1、797、79.7、77.5、74.0、73.9、70.4、69.5、65.9、50.8、48.2、46.7(x2)、45.8、42.7、40.6、40.4、36.6、33.6、32.8、28.9、21.2、20.9、19.2、18.1、16.2、16.0、15.0、11.3(x2)、9.1
(実施例3)
【0186】
2’−O−アセチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA
【0187】
【化16】

2’−O−アセチル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA
(0.63g、1.0mmol)のトルエン(15ml)中の溶液に、TEA(0.42ml、3.0mmol)および塩化3−クロロプロピオニル(0.095ml、1.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間攪拌し、追加部分のTEA(0.42ml、3.0mmol)および塩化3−クロロプロピオニル(0.095ml、1.0mmol)を加えた。さらに15分間攪拌の後、トルエン(15ml)を加え、その溶液を飽和NaHCO水溶液および食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させ粗生成物を得て、それをカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:5:0.5を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.41g)。
(実施例4)
【0188】
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA
【0189】
【化17】

実施例3で作製された化合物(0.686g、1.0mmol)のMeOH(150ml)中の溶液を40℃で18時間攪拌し、MeOHを蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:9:1.5を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.51g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=644.3
(実施例5)
【0190】
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA
【0191】
【化18】

乾燥メタノール(30ml)中の実施例4で作製された化合物(0.686g、1.0mmol)の溶液にジエチルアミン(1.04ml、10.0mmol)を加えた。その反応混合物を40℃で20時間攪拌し、メタノールを蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:9:0.5を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.43g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=717.4
(実施例6)
【0192】
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12環状カルバメート
中間体:2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12環状カルバメート
【0193】
【化19】

0.25N HCl(15ml)中の2’−O−アセチル−6−O−メチル−エリスロマイシンA11,12−環状カルバメート(0.82g、1.0mmol)の溶液を、室温で一晩攪拌し、DCMで抽出した(3×15ml)。水層のpHを9に調節し、EtOAcで抽出した(4×15ml)。有機層を水で洗浄し(1×50ml)、KCOで乾燥して、溶媒を蒸発させ、前記中間体を得た(0.58g)。
【0194】
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12環状カルバメート
実施例6の中間体(0.657g、1.0mmol)から出発して、表記の化合物を、実施例3の手順に従って作製した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(EtOAc/ヘキサン/TEA=6:3:2を溶離液として)、表記の化合物を得た(0.533g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=711.1
(実施例7)
【0195】
6−O−メチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12−環状カルバメート
【0196】
【化20】

実施例6で合成された最終化合物(0.711g、1.0mmol)から出発して、表記の化合物を、実施例4の手順に従って作製した(0.615g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=669.1
(実施例8)
【0197】
6−O−メチル−3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12−環状カルバメート
【0198】
【化21】

実施例7で合成された化合物(0.669g、1.0mmol)の乾燥メタノール(30ml)中の溶液に、ジエチルアミン(1.04ml、10.0mmol)を加えた。その反応混合物を55℃で48時間攪拌し、メタノールを蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:9:0.5を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.586g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=742.5
(実施例9)
【0199】
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−3’−N−デメチル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0200】
【化22】

実施例1で合成された化合物(0.5g、0.76mmol)およびNaOAc三水和物(0.185g、2.2mmol)のメタノール(12.5ml)中の攪拌されている溶液に、固体ヨウ素(0.195g、0.77mmol)を加えた。その反応混合物を500Wハロゲンランプで3時間照射して、室温に冷却し、溶媒を蒸発させた。固体残留物をEtOAc(100ml)に溶解し、濾過して、濾液をNaHCO飽和水溶液(25ml)および食塩水(25ml)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、蒸発させて、表記の化合物を得た(0.49g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=645.5
(実施例10)
【0201】
3−O−(3−ジエルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−3’−N−デメチル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0202】
【化23】

実施例9で形成された化合物(0.21g、0.33mmol)のジエチルアミン(5ml)中の溶液を40℃で一晩攪拌した。ジエチルアミンを蒸発させて、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(EtOAc/ヘキサン/TEA=10:5:2を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.12g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=718.3
(実施例11)
【0203】
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン
【0204】
【化24】

2’−O−アセチル−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン(1.0g、1.6mmol)およびTEA(0.25ml、1.8mmol)のDCM(5ml)中の溶液に、塩化アクリロイル(0.4ml、4.0mmol)を、分割して4時間の間に加えた。その溶媒を蒸発させて、メタノール(20ml)を加えた。反応混合物を室温で3日間攪拌して、溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(EtOAc/ヘキサン/TEA=10:5:2を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.82g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=645.4
(実施例12)
【0205】
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン
【0206】
【化25】

実施例11で形成された化合物(0.18g、0.28mmol)のDEA(10ml)中の溶液を40℃で一晩攪拌した。DEAを蒸発させて、粗生成物をカラムクロマトグラフィーを使用してシリカゲルで精製し(EtOAc/ヘキサン/TEA=10:5:2を溶離液として)、表記の生成物を得た(0.09g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=718.3
(実施例13)
【0207】
3−O−(2−ジエチルアミノ−アセチル)−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン
【0208】
【化26】

2’−O−アセチル−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン(0.25g、0.4mmol)、ジエチルアミノ酢酸(0.26g、2.0mmol)、EDCxHCl(0.4g、2.0mmol)、およびDMAP(0.25g、2.0mmol)のDCM(5ml)中の溶液を、室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させて、残留物をMeOH(25ml)に溶解し、40℃で一晩攪拌した。MeOHを蒸発させて、表記の生成物を得た(0.24g)。
MS m/z:(ES):[MH]=704.4
(実施例14)
【0209】
3−O−(2−ジエチルアミノ−アセチル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0210】
【化27】

2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA(0.25g、0.39mmol)、ジエチルアミノ酢酸(0.26g、2.0mmol)、EDCxHCl(0.4g、2.0mmol)、およびDMAP(0.25g、2.0mmol)のDCM(5ml)中の溶液を、室温で一晩攪拌した。次いで溶媒を蒸発させて、残留物をMeOH(25ml)に溶解し、40℃で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させて、粗生成物をFlashmasterII−固相抽出技法を使用して精製し(SPE20g、溶離剤としてDCM/MeOH/NHOH=90:5:0.5)、表記の生成物を得た(0.04g)。
MS m/z:(ES):[MH]=718.3
(実施例15)
【0211】
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−アミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA11,12−環状カーボネート
中間体:2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(2−シアノエチル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA11,12−環状カーボネート
【0212】
【化28】

2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA11,12−環状カーボネート(0.38g、0.56mmol)、t−BuOH(0.13ml、1.24mmol)およびNaH(20mg、0.5mmol)のアクリロニトリル(9ml)中の溶液を、0℃で4時間攪拌してから、放置して室温に温めた。アクリロニトリルを蒸発させて、残留物をEtOAcに溶解させ、その溶液を濾過した。濾液をNaHCOの飽和水溶液(3×20ml)および食塩水(3×20ml)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表記の生成物を得た(0.4g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=726.6
【0213】
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−アミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA11,12−環状カーボネート
【0214】
【化29】

実施例15で形成された中間体(0.4g、0.55mmol)およびPtO(70mg)の氷酢酸(13ml)中の懸濁液を4.5バール(0.45MPa)で一晩水素化した。反応混合物を濾過して、HOAcを蒸発させた。残留物をDCM(50ml)に溶解してHO(30ml)を加え、pHを9.4に調節した。水層をDCM(2×30ml)で抽出して、合わせた有機抽出液を無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表記の生成物を得た(0.2g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=730.4
(実施例16)
【0215】
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−アミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0216】
【化30】

実施例15で合成された最終化合物(0.2g、0.27mmol)およびKCO(0.07g、5.1mmol)のMeOH(10ml)およびHO(3ml)中の溶液を40℃で一晩攪拌した。メタノールを蒸発させて、DCM(20ml)およびNaHCOの飽和水溶液(20ml)を加えた。両層を分離して、水層をDCMで抽出した(2×30ml)。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表記の生成物を得た(0.1g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=662.4
(実施例17)
【0217】
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−ジエチルアミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA
【0218】
【化31】

実施例16で形成された化合物(0.1g、0.15mmol)、アセトアルデヒド(21μl、0.37mmol)、NaBH(OAc)(0.077g、0.37mmol)、およびZnCl(30mg、0.22mmol)のジクロロエタン(5ml)中の溶液を、室温で3時間攪拌した。反応混合物を濾過して、ジクロロエタンを蒸発させた。残留物にDCM(20ml)およびHO(20ml)を加えて、pHを9.3に調節し、その溶液をDCMで抽出した(2×15ml)。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表記の生成物を得た(0.03g)。
MS(ES+)m/z:[MH]=718.3
(実施例18ないし26)
【0219】
一般的手順
実施例1で形成された化合物のアセトニトリル(5ml)中の溶液に、対応するアミン化合物(3当量)を加えた。その混合物を60℃で48時間加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させて、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し(DCM/MeOH/NHOH=90:9:0.5)、所望の生成物を得た。
【0220】
次の表は、加えたアミン化合物ならびに式(I)の最終生成物の構造を示す。
【0221】
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


(実施例27)
【0222】
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9−デオキソ−9−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−エリスロマイシンA
【0223】
【化32】

実施例5で形成された化合物(35mg、0.05mmol)およびNaBH(10mg、0.25mmol)のEtOH(1.5ml)中の溶液を、室温で一晩攪拌した。反応混合物を1N HCl(10ml)で希釈し、10分間攪拌してから、pHを9.5に調節した。水層をDCMで抽出した(3×15ml)。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させて、表記の化合物を得た(20mg)。
MS(ES+)m/z:[MH]=719.5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(I)
[式中、
Aは−C(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−N(R)CH−、−CHN(R)−、−CH(OH)−または−C(=NOR)−から選択される2価の基であり、
は−OC(O)(CHNR、−O−(CHNR、または−OC(O)CH=CHであり、
は水素またはヒドロキシル保護基であり、
は水素、非置換C1〜4アルキル、末端炭素原子がCNもしくはNH基で置換されているC1〜4アルキル、またはC1〜5アルカノイルであり、
は水素、C1〜4アルキルまたはC2〜6アルケニルであり、
はヒドロキシ、メトキシ、−OC(O)(CHNRまたは−O−(CHNRであり、
はヒドロキシであるか、または
とRとが介在原子と一緒になって次の構造式:
【化2】

(式中、Yは、−CH−、−CH(CN)−、−O−、−N(R)−または−CH(SR)−から選択される2価の基である)
で示される環状基を形成し、
は水素またはC1〜6アルキルであり、
およびRは、各々独立して、水素、C3〜7シクロアルキル、C1〜18アルキルであり、ここでC1〜18アルキルは
iii)割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または
iv)置換されていないか、あるいはハロゲン、OH、NH、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜C−アルキル)アミノ、CN、NO、OCH、飽和もしくは不飽和のC3〜8員非芳香族環、2ないし6個の炭素原子を含み、飽和もしくは不飽和であり、酸素、硫黄または窒素から選択される1または2個のヘテロ原子を含む複素環式非芳香族環、アルキルカルボニルアルコキシまたはアルコキシカルボニルアミノから選択される1ないし3個の基により置換されており、または
とRとは、それらが結合している窒素と一緒になって、
iii)飽和もしくは不飽和の、酸素、硫黄または窒素から選択される0もしくは1個の追加のヘテロ原子を含む、および/または
iv)置換されていないか、あるいはC1〜5アルカノイル;割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または置換されていないか、あるいはOH、NH、2ないし6個の炭素原子を含み、置換されていないか、あるいはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されている非芳香族複素環、あるいは置換されていないか、またはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されているC3〜7シクロアルキルから選択される1ないし2個の基により置換されているC1〜6アルキル;またはC1〜4ジアルキルアミノから選択される1ないし2個の基により置換されている、
2ないし6個の炭素原子を含む非芳香族複素環を形成しており、
nは、1から8の整数である]
で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項2】
Aが−C(O)−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−N(R)CH−、−CHN(R)−、−CH(OH)−または−C(=NOR)−から選択される2価の基であり、
が−OC(O)(CHNR、−O−(CHNR、または−OC(O)CH=CHであり、
が水素またはヒドロキシル保護基であり、
が非置換C1〜4アルキル、末端炭素原子がCNもしくはNH基で置換されているC1〜4アルキル、またはC1〜5アルカノイルであり、
が水素、C1〜4アルキルまたはC2〜6アルケニルであり、
がヒドロキシ、メトキシ、−OC(O)(CHNRまたは−O−(CHNRであり、
がヒドロキシであるか、または
とRとが介在原子と一緒になって次の構造式:
【化3】

(式中、Yは、−CH−、−CH(CN)−、−O−、−N(R)−または−CH(SR)−から選択される2価の基である)
で示される環状基を形成し、
が水素またはC1〜6アルキルであり、
およびRが、各々独立して、水素、C3〜7シクロアルキル、C1〜18アルキルであり、ここでC1〜18アルキルは
i)割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または
ii)置換されていないか、あるいはハロゲン、OH、NH、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜C−アルキル)アミノ、CN、NO、OCH、飽和もしくは不飽和のC3〜8員非芳香族環、2ないし6個の炭素原子を含み、飽和もしくは不飽和であり、酸素、硫黄または窒素から選択される1または2個のヘテロ原子を含む複素環式非芳香族環、アルキルカルボニルアルコキシまたはアルコキシカルボニルアミノから選択される1ないし3個の基により置換されており、または
とRとが、それらが結合している窒素と一緒になって、
iii)飽和もしくは不飽和の、酸素、硫黄または窒素から選択される0もしくは1個の追加のヘテロ原子を含む、および/または
iv)置換されていないか、あるいはC1〜5アルカノイル;割り込まれていないか、あるいは−O−、−S−または−N(R)−から選択される1ないし3個の2価の基により割り込まれており、および/または置換されていないか、あるいはOH、NH、2ないし6個の炭素原子を含み、置換されていないか、あるいはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されている非芳香族複素環、あるいは置換されていないか、またはC1〜4アルキル、ハロゲン、NH、OH、SH、C1〜6アルコキシまたはC1〜4ヒドロキシアルキルから選択される基により置換されているC3〜7シクロアルキルから選択される1ないし2個の基により置換されているC1〜6アルキルから選択される1ないし2個の基により置換されている、
2ないし6個の炭素原子を含む非芳香族複素環を形成しており、
nが1から8の整数である、
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項3】
Aが−C(O)−または−NHC(O)−から選択される2価の基であり、
が−OC(O)(CHNRまたは−OC(O)CH=CHであり、
がヒドロキシル保護基であり、
が非置換C1〜4アルキルであり、
が水素またはC1〜4アルキルであり、
がヒドロキシであり、
がヒドロキシであるか、または
とRとが介在原子と一緒になって次の構造式:
【化4】

(式中、Yは−NH−である)
で示される環状基を形成し、
およびRが、各々独立して、水素またはC1〜18アルキルであり、および
nが1から8の整数である、
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項4】
Aが−NHC(O)−であり、
が−OC(O)CH=CHまたは−OC(O)(CHNRであり、
がHであり、
が−CHであり、
が−CHであり、
がヒドロキシであり、
がヒドロキシであり、
およびRが、各々、−CHCHであり、および
nが2である、
請求項3記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項5】
Aが−C(O)−、−NHC(O)−、−N(R)CH−または−CH(OH)−から選択される2価の基であり、
が−OC(O)(CHNR、−O−(CHNRまたは−OC(O)CH=CHであり、
が水素またはヒドロキシル保護基であり、
が水素または−CHであり、
が水素または−CHであり、
がヒドロキシであり、
がヒドロキシであるか、または
とRとが介在原子と一緒になって次の構造式:
【化5】

(式中、Yは−O−または−N(R)から選択される2価の基である)
で示される環状基を形成し、
が水素、−CHまたは−CHCHであり、
およびRが、各々独立して、水素、C1〜6アルキルであり、ここでC1〜6アルキルは
i)割り込まれていないか、あるいは2価の基−N(R)−により割り込まれており、および/または
ii)置換されていないか、またはOHにより置換されているか、または
とRとが、それらが結合している窒素と一緒になって、
iii)飽和の、1個の追加の窒素ヘテロ原子を含み、および
iv)1個のC1〜6アルキルにより置換されており、ここで該C1〜6アルキルは割り込まれていないか、あるいは1個の2価の−N(R)−基により割り込まれており、該C1〜6アルキルは置換されていないか、あるいは2ないし6個の炭素原子を含有する1個の非置換複素環またはC1〜4ジアルキルアミノにより置換されている、
2ないし6個の炭素原子を含む非芳香族複素環を形成しており、
nが1から3の整数である、
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項6】
R2が式−C(O)CH3のヒドロキシ保護基である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
2’−O−アセチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA;
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA;
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−エリスロマイシンA;
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12環状カルバメート;
6−O−メチル−3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12−環状カルバメート;
6−O−メチル−3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−エリスロマイシンA11,12−環状カルバメート;
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−3’−N−デメチル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
3−O−(3−ジエルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−3’−N−デメチル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
3−O−プロペノイル−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン;
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン;
3−O−(2−ジエチルアミノ−アセチル)−3−O−デクラジノシル−アジスロマイシン;
3−O−(2−ジエチルアミノ−アセチル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
2’−O−アセチル−6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−アミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA11,12−環状カーボネート;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−アミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−(3−ジエチルアミノプロピル)−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−{3−[4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペラジン−1−イル]−プロピオニル}−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−{3−[4−(2−ジメチルアミノ−エチル)−ピペラジン−1−イル]−プロピオニル}−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−[3−(3−ジメチルアミノ−プロピルアミノ)−プロピオニル]−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−[3−(2−ジメチルアミノ−エチルアミノ)−プロピオニル]−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−{3−[4−(3−ジエチルアミノ−プロピル)−ピペラジン−1−イル]−プロピオニル}−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−{3−[(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミノ]−プロピオニル}−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−{3−[4−(3−ピロリジン−1−イル−プロピル)−[1,4]ジアゼピン−1−イル]−プロピオニル}−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−[3−(3−ジエチルアミノ−プロピルアミノ)−プロピオニル]−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;
6−O−メチル−3−O−デクラジノシル−3−O−[3−(2−ジエチルアミノ−エチルアミノ)−プロピオニル]−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA;および
3−O−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−3−O−デクラジノシル−6−O−メチル−9−デオキシ−9−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−エリスロマイシンA
ならびにその医薬上許容される誘導体
からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
式(I):
【化6】

(I)
の化合物またはその医薬上許容される誘導体の製法であって、以下の工程(a)−(g)の1つを含む方法:
(a)式(II):
【化7】

(II)
の化合物を、式(III):
HOC(O)(CHNR8a9a (III)
のカルボン酸または式(III)のカルボン酸の活性化誘導体と反応させ、ここでRはヒドロキシ保護基であり、R8aおよびR9aは請求項1に記載のRおよびRであるか、あるいは請求項1に記載のRおよびRに変換可能な基であって、Rが−OC(O)(CHNRであり、nが1ないし8の整数である、式(I)の化合物を生成する工程;
(b)式(IV):
【化8】

(IV)
[式中、nは1ないし8の整数であり、Lは適当な脱離基である]
で示される化合物を、HNR8a9a (V)と反応させ、ここでR8aおよびR9aは請求項1に記載のRおよびRであるか、あるいは請求項1に記載のRおよびRに変換可能な基であって、Rが−OC(O)(CHNRであり、nが1ないし8の整数である、式(I)の化合物を生成する工程;
(c)式(VII):
【化9】

(VII)
の化合物を、式:HNR8a9a (V)の化合物と反応させ、ここでR8aおよびR9aは請求項1に記載のRおよびRであるか、あるいは請求項1に記載のRおよびRに変換可能な基であって、Rが−OC(O)(CHNRであり、nが2である、式(I)の化合物を生成する工程;
(d)式(VIII):
【化10】

(VIII)
[式中、nは1ないし8の整数である]
の化合物を、式:HNR8a9a (V)の化合物と反応させ、ここでR8aおよびR9aは請求項1に記載のRおよびRであるか、あるいは請求項1に記載のRおよびRに変換可能な基であって、Rが−O(CHNRであり、nが1ないし8の整数である、式(I)の化合物を生成する工程;
(e)式(X):
【化11】

(X)
[式中、nは2ないし8の整数であり、Lは適当な脱離基である]
の化合物を、式:HNR8a9a (V)の化合物と反応させ、ここでR8aおよびR9aは請求項1に記載のRおよびRであるか、あるいは請求項1に記載のRおよびRに変換可能な基であって、Rが−O(CHNRであり、nが2ないし8の整数である、式(I)の化合物を生成する工程;
(f)式(II)の化合物をアクリロニトリルと反応させ、式(XI):
【化12】

(XI)
[式中、Zはシアノ基である]
で示される化合物を生成し、つづいてシアノ基を接触還元に付し、Zが−CHNHである、式(XI)の化合物を生成する工程であるか;または
(g)Zが−CHNHである、式(XI)の化合物を、式:HC(O)R (XII)の化合物と反応させ、Rが−O−(CHNRであり、RおよびRが請求項1の記載と同意義であり、nが3である、式(I)の化合物を生成する工程;
その後、要すれば、その得られた化合物を以下の1つまたは複数の工程:
i)保護基Rを除去する工程;
ii)R8aおよびR9aをRおよびRに変換する工程;または
iii)式(I)の化合物をその医薬上許容される誘導体に変換する工程
に付す、方法。
【請求項9】
請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体、および医薬上許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
望ましくない炎症性免疫応答により特徴づけられるか、またはかかる応答に伴う、あるいはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5の過度の分泌により誘発されるか、またはかかる分泌に伴う、炎症性疾患、障害、または状態の治療法であって、該炎症性応答を軽減または阻害するのに効果的な量の請求項1記載の化合物を対象に投与することを含む方法。
【請求項11】
対象における白血球の炎症組織への浸潤に伴う炎症性状態、あるいは免疫またはアナフィラキシー障害の治療法であって、該浸潤を阻害または軽減するのに効果的な量の請求項1記載の化合物を該対象に投与することを含む方法。
【請求項12】
炎症性疾患、障害または状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、びまん性汎細気管支炎、成人呼吸窮迫症候群、炎症性腸疾患、クローン病、気管支炎および嚢胞性線維症からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
炎症性疾患、障害または状態が、肺、関節、眼、腸、皮膚または心臓の炎症性疾患、障害または状態である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
炎症性疾患、障害または状態が、喘息、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、びまん性汎細気管支炎、嚢胞性線維症、関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、骨髄炎、静脈洞炎、鼻ポリープ、痛風性関節炎、ブドウ膜炎、結膜炎、炎症性腸症状、クローン病、潰瘍性大腸炎、遠位直腸炎、座瘡、乾癬、湿疹、皮膚炎、心筋梗塞損傷、冠動脈疾患、慢性炎症、内毒素性ショックおよび平滑筋増殖障害からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
サイトカインまたは炎症性メディエーターの過度の無秩序な産生により特徴付けられるか、あるいはかかる産生に伴う炎症性疾患、障害または状態の治療法であって、T−細胞増殖またはサイトカイン産生を軽減または阻害するのに効果的な量の請求項1記載の化合物をその必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項16】
炎症性サイトカイン産生およびリンパ球増殖からなる群より選択される1つまたは複数の炎症プロセスを阻害する方法であって、該炎症プロセスを阻害するのに効果的な量の請求項1記載の化合物に炎症に冒された器官または組織を曝露することを含む、方法。
【請求項17】
炎症性サイトカイン産生を阻害する方法であって、対照となる白血球と比較して、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうち少なくとも1つの産生を減少させるのに効果的な量の請求項1記載の化合物にヒト末梢白血球を曝露することを含む、方法。
【請求項18】
ヒトT−細胞増殖を阻害する方法であって、請求項1記載の化合物に曝露されていない対照としてのT−細胞と比較して、ヒトT−細胞の産生を減少させるのに効果的な量の上記化合物にヒトT−細胞を曝露することを含む、方法。
【請求項19】
炎症プロセスが炎症性サイトカイン産生を含み、対照となる白血球と比較して、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうち少なくとも1つの産生を減少させるのに効果的な量の請求項1記載の化合物にヒト末梢白血球を曝露することを含む、方法。
【請求項20】
TNA−αの産生が軽減される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
IL−1αおよび/またはIL−1βの産生が軽減される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
IL−2および/またはIL−5の産生が軽減される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
炎症プロセスが白血球の増殖を含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
抗原に対する免疫応答が阻害される、請求項16記載の方法。
【請求項25】
炎症プロセスの阻害がサイトカインの産生またはリンパ球の増殖を少なくとも50%まで阻害することを含む、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2008−526946(P2008−526946A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550875(P2007−550875)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001097
【国際公開番号】WO2006/077501
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】