抗生物質107891、そのA1因子とA2因子、その薬剤学的に許容される塩、組成物、およびその使用
本発明は、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の発酵により産生される微生物起源の抗生物質(任意に抗生物質107891と呼ぶ)と、その薬剤学的に許容される塩および組成物と、感受性のある微生物に対して阻害活性を有する抗細菌剤としてのその使用とに関する。2つの因子(A1因子とA2因子と呼ぶ)を含む複合体である抗生物質107891は、成分としてランチオニンとメチルランチオニンを含有するペプチド構造を有し、これはランチビオティクス群の抗生物質の典型的な特徴である。抗生物質107891およびそのA1因子とA2因子は、メチシリン耐性およびバンコマイシン耐性株を含むグラム陽性細菌に対して良好な抗細菌活性を示し、エム・カタラーリス(M. catarrhalis)、ナイセリア(Neisseria)種、およびインフルエンザ菌(H. influenzae)のようなグラム陰性菌、およびマイコバクテリア(Mycobacteria)に対しても活性がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物起源の抗生物質(任意に抗生物質107891と呼び、これはA1因子とA2因子とを含む複合体である)、その薬剤学的に許容される塩、その医薬組成物、および抗生物質としてその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の別の目的は、ミクロビスポラ(Microbispora)種107891(以後、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024として特定される)、または該抗生物質を産生する能力を保持するその変種もしくは変異体を含有し、菌糸および/または発酵ブロスから本発明の抗生物質を回収し、クロマトグラフィー手段により純粋な物質を単離し、そしてA1因子とA2因子とを分離することを含む、抗生物質107891の製造方法である。
抗生物質107891は、ランチオニン(lanthionine)およびメチルランチオニンを成分として含有するペプチド構造を有する新規抗微生物剤である。これらは、ランチビオティクス(lantibiotics)の典型的な特徴であり、特に主に細胞壁生合成に作用するサブグループの特徴である。
【0003】
ランチビオティクス(lantibiotics)はペプチドであり、チオエーテルアミノ酸ランチオニンならびにいくつかの他の修飾アミノ酸を含有する(H.G. SahlとG. Bierbaum, (1998) 「ランチビオティクス(lantibiotics):グラム陽性細菌からのユニークに修飾されたペプチドの生合成と生物活性」、Ann. Rev. Microbio. 52:41-79)。大半のランチビオティクス(lantibiotics)は抗細菌活性を有するが、一部は異なる薬理学的標的に活性であるとして報告されている。抗細菌ランチビオティクス(lantibiotics)は、その構造により大きく2つに分類される:A型ランチビオティクス(lantibiotics)は典型的には長い両親媒性ペプチドであり、一方B型ランチビオティクス(lantibiotics)はコンパクトで球形である(O. McAuliffe, R.P. RossとC. Hill, (2001):「ランチビオティクス(Lantibiotics):構造、生合成、および作用モード」、FEMS Microb. Rev. 25:285-308)。ニシン(nisin)はA型ランチビオティク(lantibiotic)の典型的な代表であり、一方アクタガルジン(actagardine)(ガルジマイシン(gardimycin))とメルサシジン(mersacidin)は、B型ランチビオティク(lantibiotic)サブクラスに属する。ニシン(nisin)型とメルサシジン(mersacidin)型ランチビオティクス(lantibiotics)の両方とも、膜結合ペプチドグリカン前駆体脂質IIと相互作用するが、この2つのクラスは細菌の増殖プロセスにおいて示す作用が異なる。ニシン型ランチビオティクスは主に、細胞質膜の浸透性化により細菌を死滅させ(H. Brotz, M. Josten, I. Wiedemann, U. Schneider, F. Gotz, G. BierbaumとH.G. Sahl, (1998):「ニシン、エピデルミン、および他のランチビオティクスによる脂質結合ペプチドグリカン前駆体の形成における役割」、Mol. Microbiol. 30:317-27)、一方メルサシジン型のランチビオティクスは細胞壁生合成を阻害することにより細菌細胞を死滅させる(H. Brotz, G. Bierbaum, K. Leopold, P.E. ReynoldsとH.G. Sahl, (1998):「ランチビオティクメルサシジンは脂質IIを標的化することによりペプチドグリカン合成を阻害する」、Antimicrob Agents Chemother. 42:154-60)。
【0004】
ミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRLL30420株により産生される2つの抗生物質(それぞれ抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1として特定される)は、US6,551,591 B1に記載されている。上記特許で報告されている物理化学的データ(例えば、質量スペクトルデータ、分子量、アミノ酸含量)およびLC-MS実験分析の保持時間の比較は、抗生物質107891複合体ならびにその成分A1因子とA2因子が抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1とは異なる化学物質であることを明瞭に示す。
【0005】
EP0592835A2は、抗腫瘍抗生物質BU-4803TA1、A2、B、C1、C2、およびDを記載している。抗生物質BU-4803TA1、A2およびBは、ミクロビスポラ(Microbispora)ATCC55327(AA9966)の発酵ブロスから回収され、一方抗生物質BU-4803TC1、C2、およびDは、それぞれ抗生物質BU-4803TA1、A2、およびBがジメチルスルホキシド中で保存される時の変換産物である。上記抗生物質についてEP0592835A2に報告された物理化学的データ(例えば、外観、UV吸収、分子量、抗腫瘍活性)は、これらが抗生物質107891複合体およびそのA1因子とA2因子とは異なることを明瞭に示す。
【0006】
株と発酵
ミクロビスポラ(Microbispora)種107891は環境中で分離され、2003年2月27日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(10801、University Blvd, Manassas VA 20110-2209 U.S.A.)にブダペスト条約の規定に基づいて寄託された。この株は受け入れ番号PTA-5024が与えられた。
【0007】
抗生物質107891の産生は、これを産生することができる能力を保持するミクロビスポラ(Microbispora)種の株であるミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024またはその変種もしくは変異体を培養し;生じる抗生物質を培養ブロス全体からおよび/または菌糸からおよび/またはろ過した発酵ブロスから単離し;そして単離された抗生物質をクロマトグラフィー手段により精製することにより行われる。いずれにしても、好気的条件下で、同化の容易な炭素、窒素、および無機塩源を含有する水性栄養培地中で抗生物質107891を産生することが好ましい。発酵分野で通常使用される多くの栄養培地を使用することができるが、好ましい培地がいくつかある。
【0008】
好適な炭素源は、ショ糖、フルクトース、グルコース、キシロースなどである。好適な窒素源は、ダイズ粉、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、トリプトン、アミノ酸、加水分解カゼインなどである。培地中に取り込まれる無機塩には、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、および類似のイオンを与えることができる通常の可溶性塩がある。
【0009】
好ましくは抗生物質107891を産生する株は、発酵チューブまたは浸透フラスコ中で前培養され、次に培養物を使用して多量の物質を産生するためにジャーフェーメンターに接種する。前培養に使用される培地は大量発酵に使用されるものと同じでもよいが、他の培地を使用することもできる。抗生物質107891を産生する株は17℃〜37℃の温度で増殖させることができ、最適温度は約28〜30℃である。
【0010】
発酵中、抗生物質107891産生は、感受性微生物のバイオアッセイによりおよび/またはHPLC分析により追跡することができる。抗生物質107891の最大産生は、発酵の約90時間より後で200時間より前に起きる。
【0011】
抗生物質107891は、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024または抗生物質107891を産生することができるその変種もしくは変異体を培養することにより産生され、培養ブロスおよび/または菌糸中に存在する。
【0012】
本説明と請求項において用語「抗生物質107891」は、特に明記しない場合は、A1因子とA2因子とを含む抗生物質107891複合体を特定する。
【0013】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の形態的特徴
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024は、種々の標準固形培地上でよく増殖する。顕微鏡的大きさを、1ml/lのビタミン溶液(塩酸チアミン 25mg/l、パントテン酸カルシウム 250mg/l、ニコチン酸 250mg/l、ビオチン0.5mg/l、リボフラビン 1.25g/l、シアノコバラミン 6.25mg/l、パラアミノ安息香酸 25mg/l、葉酸 500mg/l、塩酸ピリドキサール 500mg/l)を加えたフミン酸−微量塩寒天(組成、g/l:フミン酸 0.5、FeSO4*7H2O 0.001、MnCl2*4H2O 0.001、ZnSO4*7H2O 0.001、NiSO4*6H2O 0.001、MOPS 2、寒天20)中で培養された培養物を使用して測定された。
【0014】
液体培養物(V6培地、組成 g/l:ブドウ糖 22、肉エキス 5、酵母エキス 5、カゼイン 3、NaCl 1.5)中では、28℃で6日間の培養では菌糸の断片化は観察されない。フミン酸−微量塩寒天(28℃で接種の21日後)での顕微鏡観察は、分岐した断片化していない基質菌糸と単軸分枝した気菌糸を示し、多くの長いまっすぐな分岐の少ない気菌糸も見られる。分岐から横に出ている短い胞子体または主気菌糸から直接、特徴的な長い胞子対が生まれる。胞子は球形で非運動性である。胞子嚢様構造または他の特定の構造は観察されていない。
【0015】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の培養特性
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024をAF/MS液体培地(実施例1を参照)中で28℃で200rpmで6日間増殖させ、次に新しいAF/MS液体培地に移し(5%接種)てさらに6日間増殖させ、最後に100mlのV6液体培地(実施例1を参照)中に接種した(7%接種)。28℃で200rpmで6日間増殖後、菌糸を遠心分離して採取し、無菌食塩水溶液中で3回洗浄し、次に希釈して適当な接種物を得た。懸濁物のアリコートをShirlingとGottliebが推奨する種々の培地(E.B. ShirlingとD. Gottlieb, (1966);「ストレプトミセス(Streptomyces)種の性状解析方法」、J. Synst. Bacteriol. 16:313-340)、およびS.A. Waksmanが推奨する培地(S.A. Waksman (1961);「放線菌」、ザウィリアムズアンドウィルキンス社(The Williams and Wilkins Co.)、ボルチモア、第2巻:328-334)上に平行線式で画線した。
【0016】
炭素源およびエネルギー源として種々の炭水化物を利用する能力を、デンプンを含まず、上記ビタミン溶液を加えたISP4培地(各炭素源は最終濃度1%(w/v)で加えた)を基礎培地として使用して測定した。
【0017】
NaCl耐性、増殖pH範囲、ならびに異なる温度で増殖する能力を、ISP2培地上で測定した。すべての培地を28℃で3週間インキュベートした;特に明記しない場合は21日間である。色は自然の昼光下でメルツ‐ポールの表色系(A. MaerzとM.R. Paul、1950−「色辞典(A Dictionary of Colour)」、第2版、マグローヒルブック社(McGraw-Hill Book Co. Inc.)、ニューヨーク)を使用して評価した。硝酸塩を亜硝酸塩に還元する能力をWilliamsらが記載した水っぽい硝酸塩培地(S.T. Williams, M. Goodfellow, G. Alderson, E.M.H. Wellington, P.H.A. SneathとM.J. Sackin, 1983−ストレプトミセス(Streptomyces)と関連する属の数値的分類−J. Gen. Microbiol. 129, 1743-1813)で評価した。
【0018】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の増殖、コロニー外観、基質、および気菌糸の色、色素産生を表Iに記録する。使用した培地のほとんどに栄養増殖が存在し、これは一部の培地にのみ存在した気菌糸とは異なる。使用したどの培地にも、明瞭な色素は存在しなかった。株の生理学的特徴を表IIに示す。増殖と気菌糸産生が17℃で起きたが43℃では起きなかった。ISP2上の気菌糸産生は、6より高いpHで存在したが、1%NaCl存在下では存在しなかった。
種々の炭水化物を増殖のために使用する能力を表IIIに示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
(1ml/Lのビタミン溶液を加えたISP4とグルコース−アスパラギン寒天)
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の化学分類的特徴
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024を、GYM培地(グルコース 4g/l;酵母エキス 4g/l;麦芽エキス 10g/l)中で28℃でロータリーシェーカー上で増殖させ、菌糸を採取し、無菌蒸留水で2回洗浄し、次に凍結乾燥した。アミノ酸の分析は、StaneckとRobertsの方法(J.L. StaneckとG.D. Roberts, (1974);「薄層クロマトグラフィーによる好気的放線菌の同定への簡便なアプローチ」、Appl. Microbiol. 28:226-231)に従って行った。メナキノンと極性脂質とをMinnikinらの方法(D.E. Minnikin, A.G. O'Donnell, M. Goodfellow, G. Alderson, M. Athalye, A. SchaalとJ.H. Parlett, (1984):「イソプレノイドキノンと極性脂質の統合的方法」、J. Microbiol. Meth. 2:233-241)に従って抽出した。極性脂質は薄層クロマトグラフィー(D.E. Minnikin, V. Paterl, L. AlshamaonyとM. Goodfellow, (1977):「ノカルディア(Nocardia)と関連細菌の分類における極性脂質の組成」、Int. J. Syst. Bacteriol. 27:104-117)に従って、メナキノンはHPLC(R.M. Kroppenstedt, (1982):「固定相として逆相RP18と銀付加イオン交換物質とを使用するHPLCによる細菌メナキノンの分離」、J. Liquid. Chromat. 5:2359-2367;R.M. Kroppenstedt, (1985):「細菌分類における化学的方法」における「放線菌と関連生物の脂肪酸とメナキノン分析」、No 20、SAB Technical Series pp.173-199, M. GoodfellowとD.E. Minnikin編、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン)により、脂肪酸メチルエステルはガス−液体クロマトグラフィー(L.T. Miller, (1982):「ヒドロキシ酸を含む細菌脂肪酸メチルエステルの1回の誘導体化法」、J. Clin. Microbiol. 16:584-586:M. Sasser, (1990):「細胞脂肪酸のガスクロマトグラフィーによる細菌の同定」、USFCC News Letters 20:1-6)により分析した。ミコール酸の存在をMinnikinらの方法(D.E. Minnikin, L. AlshamaonyとM. Goodfellow, (1975):「全生物メタノール分解物の薄層クロマトグラフィー分析によるマイコバクテリウム(Mycobacterium)、ノカルディア(Nocardia)および関連群の鑑別」、J. Gen. Microbiol. 88:200-204)。
【0024】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の全細胞加水分解物は、ペプチドグリカンのジアミノ酸としてメソジアミノピメリン酸を含有する。主要なメナキノンはMK-9(III、VIII-H4)、MK-9(H2)、およびMK-9(H0)である。極性脂質パターンは、ホスファチジルエタノールアミン、メチルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル−グリセロール、ジホスファチジル−グリセロール、ホスファチジル−イノシトール、ホスファチジル−イノシトールマンノシド、およびリン脂質を含有するN-アセチルグルコサミン、すなわちLechevalierらのリン脂質IV型(H.A. Lechevalier, C. De BrieveとM.P. Lechevalier, (1977):「好気性放線菌の化学分類:リン脂質組成」、Biochem. Syst. Ecol. 5:246-260)の存在を特徴とする。脂肪酸パターンの主要成分は、アンテイソ 15:0、イソ 16:0、n- 16:0、アンテイソ 17:0、および10-メチル-ヘプタデカン酸(10-Me-17:0)、すなわち3c sensu Kroppenstedtである(R.M. Kroppenstedt, (1985):「細菌分類における化学的方法」における「放線菌と関連生物の脂肪酸とメナキノン分析」、SAB Technical Series pp.173-199, M. GoodfellowとD.E. Minnikin編、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン)。ミコール酸は検出されない。
【0025】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024 16S rDNA配列決定
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の全rRNAの95%に対応する16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列(すなわち1443ヌクレオチド)を公表された方法(P. Mazza, P. Monchiardini, L. Cavaletti, M. SosioとS. Donadio, (2003):「イタリアの土壌から分離された放線菌と関連する属の多様性」、Microbial Ecol. 5:362-372)に従って作成した。これを配列番号1に報告する。
【0026】
この配列を、US6,551,591 B1に報告されたミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRL30420(MF-BA-1768)と比較した。2つの配列を整列させ、1456の整列位置のうちの31で差が見つかり、全体の配列の差は2.13%であった。同一性が97.5%未満の2つの株は通常異なる種に属する(Stackebrandt, E.とEmbley, M.T. (2000) 「環境中の培養不可能な微生物(Diversity of Uncultured Microorganisms in the Environment)」中の「環境中の非培養微生物の多様性」、E.R. ColwellとD.J. Grimes(編)、エーエスエムプレス(ASM, Press)、ワシントンDC、57-75頁)。従って2%レベルの配列の差は非常に高く(Rossello-Mira, R.とAmann, R. (2001)。「原核生物の種の概念」。FEMS Microbiol. Rev. 25:39-67)、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024とミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRL30420(MF-BA-1768)は異なる株であることを示す。
【0027】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の本体
抗生物質107891を産生するこの株は、以下の化学分類的および形態的特徴によりミクロビスポラ(Microbispora)属ストレプトスポランギウム科(Streptosporangiaceae)に割り当てられた:
− 細胞壁中のメソ−ジアミノピメリン酸の存在;
− Lechevalierらに従って多量のMK-9(III、VIII-H4)とリン脂質IV型(H.A. Lechevalier, C. De BrieveとM.P. Lechevalier, (1977):「好気性放線菌の化学分類:リン脂質組成」、Biochem. Syst. Ecol. 5:246-260);
− 3c sensu Kroppenstedtの脂肪酸プロフィール(R.M. Kroppenstedt, (1992):「原核細胞」における「ノカルディオプシス(Nocardiopsis)属」、第II巻、1139-1156頁、A. Balows, H. Truper, M. Dworkin, W. HarderとK.H. Schleifer編;ニューヨーク、スプリンガー−フェアラーク(Springer-Verlag));
− ミコール酸の欠如;
− 気菌糸から横に分岐している短い胞子体の先端の特徴的な長い胞子対の形成。非運動性胞子。
− 16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、すなわち配列番号1に報告された、全rRNAの95%に対応する1443ヌクレオチド、記載のミクロビスポラ(Microbispora)種の16S rDNA配列と>97%の同一性を示す。
【0028】
他の微生物と同様に、抗生物質107891を産生する株の特徴は変化を受ける。例えば株の人工的変種と変異体が、種々の公知の変異誘発物質、例えば紫外線、および化学物質(例えば、亜硝酸、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)および他の多くの物質で処理することにより得られる。抗生物質107891を産生できるミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株のすべての天然のおよび人工的変種および変異体は、本発明の目的においてこれと同等であると見なされ、従って本発明の範囲内である。
【0029】
抗生物質107891の抽出と精製
上記したように抗生物質107891は、菌糸と発酵ブロスのろ過画分の両方にほとんど等しく存在する。
採取されたブロスは処理されて菌糸と発酵ブロスの上清が分離され、菌糸は水混和性溶媒で抽出されて、廃菌糸の除去後に107891抗生物質を含有する溶液が得られる。次にこの菌糸抽出物は別に処理されるか、または上清画分について後述の報告された方法に従って上清とともにプールされる。水混和性溶媒が菌糸抽出物からの抗生物質の回収操作を妨害する時は、水混和性溶媒を蒸留により除去するかまたは非妨害性の濃度まで水で希釈する。
【0030】
本出願において用語「水混和性溶媒」とは、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有し、使用状況により、妥当に広い濃度範囲で水と混和する溶媒を意味する。本発明の化合物の抽出に使用可能な水混和性有機溶媒の例には以下がある:低級アルカノール、例えば(C1-C3)アルカノール、例えばメタノール、エタノール、およびプロパノール;フェニル(C1-C3)アルカノール、例えばベンジルアルコール;低級ケトン、例えば(C3-C4)ケトン、例えばアセトンおよびエチルメチルケトン;環状エーテル、例えばジオキサンおよびテトラヒドロフラン;グリコールおよびその部分的エステル化生成物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、低級アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびジエチルホルムアミド;酢酸ジメチルスルホキシドおよびアセトニトリル。
【0031】
産生微生物の発酵ブロスの上清からの化合物の回収は、それ自体公知の方法、例えば溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法に従って行われる。ろ過した発酵ブロスから本発明の化合物を回収する方法は、水と混和しない有機溶媒による抗生物質107891の抽出と、次におそらく沈殿剤を加えて濃縮抽出物から沈殿させる方法がある。
またこの場合本出願において用語「水と混和しない溶媒」とは、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有し、使用状況により、目的の使用に適した妥当に広い濃度範囲で水とわずかに混和するかまたは実質的に混和しない溶媒を意味する。
【0032】
発酵ブロスからの本発明の化合物の抽出に使用できる水と混和しない有機溶媒の例は以下の通りである:直鎖、分岐鎖または環状の少なくとも4つの炭素原子のアルカノール、例えばn-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、4-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2,2-ジメチル-3-ペンタノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、4,4-ジメチル-2-ペンタノール、5-メチル-2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、5-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メチル-3-ヘキサノール、1−オクタノール、2-オクタノール、シクロペンタノール、2-シクロペンチルエタノール、3−シクロペンチル-1-プロパノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、2,3-ジメチル-シクロヘキサノール、4-エチルシクロヘキサノール、6-メチル-5-ヘプテノ-2-オール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-デカノール、2-デカノール、および3-デカノール;少なくとも5つの炭素原子のケトン、例えばメチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、およびこれらの混合物。
【0033】
当該分野で公知のように、ろ過した発酵ブロスからの生成物抽出は、適当な値にpHを調整するか、および/または抽出溶媒に可溶性の、抗生物質とイオン対を形成する正しい有機溶媒を加えることにより、改良される。
【0034】
当該分野で公知のように相分離は、水相を塩析するすることにより改良される。
抽出後に、多量の水を含有する有機相が回収される時、これはそこから共沸蒸留することが便利である。一般にこれは、水と最少の共沸混合物を形成することができる溶媒を加えることが必要であり、次に必要であれば、適当な沈殿剤を加えて所望の生成物を沈殿させる。水と最少の共沸混合物を形成することができる有機溶媒の代表的な例は以下の通りである:n-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、2,5-ジメチルフラン、ヘキサン、およびm-キシレン;好適な溶媒はn-ブタノールである。
【0035】
沈殿剤の例は、石油エーテル、低級アルキルエーテル、例えばエチルエーテル、プロピルエーテル、およびブチルエーテル、および低級アルキルケトン、例えばアセトンである。
【0036】
抗生物質107891を回収するための好適な方法では、ろ過された発酵ブロスは吸着マトリックスを接触させ、次に極性の水混和性溶媒またはこれらの混合物で溶出し、減圧下で濃縮して油状残渣にし、上記した種類の沈殿剤で沈殿させることができる。
【0037】
本発明の化合物の回収に便利に使用される吸着マトリックスの例は、ポリスチレンまたは混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(例えばM112またはS112、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.);アンバーライト(登録商標)XAD2またはXAD4、ロームアンドハース(Rohm & Haas);ダイアイオン(Diaion)HP20、ミツビシ(Mitsubishi))、アクリル樹脂(例えば、XAD7またはXAD8、ロームアンドハース(Rohm & Haas))、ポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ナイロン、および架橋ポリビニルピロリドン(例えば、ポリアミド-CC6、ポリアミド-SC6、ポリアミド-CC6.6、ポリアミド-CC6AC、およびポリアミド-SC 6AC、マチェレイ−ナーゲル社(Macherey-Nagel & Co.)、ドイツ);PA400、エムベルム社(M. Woelm AG)、ドイツ);およびポリビニルピロリドン樹脂 PVP-CL(アルドリッチケミー社(Aldrich Chemie GmbH & Co.)、KG、ドイツ)、および制御孔架橋デキストラン(例えば、セファデックス(登録商標)LH-20、ファルマシアファインケミカルズ社(Pharmacia Fine Chemicals, AB)である。好ましくは、ポリスチレン樹脂が使用され、特にダイアイオン(Diaion)HP20樹脂が好ましい。
【0038】
ポリスチレン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリアミド樹脂またはアクリル樹脂樹脂の場合、好適な溶出液は水混和性溶媒またはその水性混合物である。水性混合物は、適切なpH値の緩衝液を含有してもよい。
【0039】
またこの場合、本説明と請求項において用語「水混和性溶媒」は、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有する。
【0040】
抗生物質の単離と精製の連続的方法は、ブロス上清からのおよび菌糸からのプール抽出物について行われる。例えばろ過された発酵ブロスまたは上清中に含有される抗生物質産物の部分は吸収樹脂への吸収により回収され、菌糸中に含有される抗生物質産物の部分は水混和性溶媒でそこから抽出され、次に吸収樹脂に吸収され、随時濃縮後に、2セットの吸収樹脂のそれぞれからの溶出画分を一緒にし、次に1つの生成物としてさらに処理される。あるいは、別の抽出段階で利用される2セットの吸収樹脂が同じ種類である時、および同じ機能的特徴を有する時、これらは一緒にプールされて、混合物は例えば水混和性溶媒または水とのこれらの混合物により1つの溶出工程に付される。
【0041】
いずれにしても、粗抗生物質107891を回収するために使用される方法にかかわらず、別の抽出段階から得られる生成物の組合せから得られる粗物質の混合物について、通常連続的精製工程が行われる。
【0042】
粗抗生物質107891の精製は、公知の任意の方法により行われるが、好ましくはクロマトグラフィー法により行われる。これらのクロマトグラフィー法の例は、回収工程について報告されたものであり、シリカゲル、アルミナ、活性化ケイ酸マグネシウムなどの固定相のクロマトグラフィー、または種々の官能基誘導体化を有するシラン化シリカゲルの逆相クロマトグラフィー、および水混和性溶媒または上記の水混和性溶媒の水性混合物で溶出することを含む。
【0043】
例えば、固定相としてRP-8またはRP-18を使用し溶出系としてHCOONH4緩衝液:CH3CNの混合物を使用して、分取HPLCクロマトグラフィーが行われる。
【0044】
精製工程から回収される活性画分は一緒にプールされ、真空下で濃縮され、上記沈殿剤を添加して沈殿され、1回または複数回乾燥もしくは凍結乾燥される。生成物が残存量のギ酸アンモニウムまたは他の緩衝塩を含有する場合、これらは固相抽出カラム、例えばSPEスーパークリーンLCP18スペルコ(SPE Superclean LCP18 Supelco)(ベレフォンテ(Bellefonte)、ペンシルバニア州、アメリカ合衆国)のような逆相樹脂カラムに抗生物質107891を吸収後、蒸留水で洗浄し、適切な水性溶媒混合物(例えばメタノール:水)を用いて溶出して除去される。次に溶出溶媒を除去することにより抗生物質が回収される。
【0045】
従って精製抗生物質107891複合体乾燥調製物は白色粉末として得られる。
当該分野でよくあるように、産生ならびに回収および精製工程は、種々の分析法(例えば、感受性微生物に対する阻害測定法、およびHPLCまたは質量スペクトル法と組合せたHPLCを使用する分析制御)により追跡してもよい。
【0046】
好適な分析HPLC法は、ウォーターズシメトリ−シールド(Waters Simmetry-shield)RP8カラム、5μ(250×4.6mm)を取り付けたウォーターズ(Waters)装置(ウォーターズクロマトグラフィー(Waters Chromatography)、ミルフォード、マサチューセッツ州)で、1ml/分の流速と50℃の温度で溶出して行われる。
【0047】
溶出は多段階工程を使用して行った:時間=0(30% B相);時間=8分(30% B相);時間=28分(40% B相)。A相はアセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)5:95 (v/v)でB相はアセトニトリルであった。UV検出器は282nmであった。
【0048】
カラムからの溶出液を5:95の比率に分け、多い方(約950μl/分)をフォトダイオードアレイ検出器に流した。残りの50μl/分は、フィニガン(Finnigan)LCQイオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)に流した。
【0049】
質量スペクトル分析は以下の条件下で行った:
試料入り口条件:
シートガス(N2)60psi;
Auxガス(N2) 5psi;
毛細管ヒーター 250℃;
試料入り口電圧設定:
極性 陽極と陰極の両方;
イオン噴霧電圧 ±5kV;
毛細管電圧 ±19V;
スキャン条件:最大イオン時間 200ms;
イオン時間 5ms;
フルマイクロスキャン 3;
セグメント:持続30分、スキャンイベント 陽極(150-2000m/z)と陰極(150-2000m/z)。
【0050】
これらの分析HPLC条件において抗生物質107891 A1因子とA2因子は、それぞれ保持時間13.2分と13.9分を示した。同じHPLC系でラモプラニン(Ramoplanin)A2因子(L. Gastaldo, R. Ciabatti, F. Assi, E. Restelli, J.K. Kettenring, L.F. Zerilli, G. Romano, M. DenaroとB. Cavalleri, (1992):「A-16686因子A'1、A'2およびA'3グリコリポデプシペプチド抗生物質の単離、構造決定、および生物活性」、J. Ind. Microbiol. 11:13-18)は、保持時間7.5分に溶出した。
【0051】
抗生物質107891 A1因子とA2因子は、抗生物質107891の精製試料から分取HPLCにより分離してもよい。
A1因子は、シメトリープレップ(Symmetry Prep)C18カラムにより、DMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解した精製抗生物質107891複合体から、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出を使用して3.5mlの流速で分離され精製された。
【0052】
B相はアセトニトリルであった。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であった。純粋な抗生物質107891 A1因子を含有する溶出液画分をプールし、真空下で濃縮した。残存する溶液を凍結乾燥して、純粋なA1因子を白色粉末として得た。
【0053】
A2因子は、シメトリープレップ(Symmetry Prep)C18カラムにより、酢酸:アセトニトリル:100mM ギ酸アンモニウム(pH4)50:120:80 (v/v)混合物に溶解した精製抗生物質107891複合体から、均一溶媒(isocratic)溶出により分離し精製した。均一溶媒(isocratic)溶出は、7mlの流速で、100mM ギ酸アンモニウム(pH4):アセトニトリルを82.5:17.5 (v/v)の比率の混合物を用いて行った。純粋な抗生物質107891 A2因子を含有する溶出画分をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を凍結乾燥してA2因子を白色粉末として得た。
【0054】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子は、2-メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)中の酸/塩基滴定で示されるように、塩基性を有するため、従来法に従って適当な酸と塩を形成することができ、遊離塩基の形で存在することもできる。
【0055】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子は遊離塩基の形で得られると、酸により対応する塩に変換され、これは非毒性の薬剤学的に許容される塩を含有する。適当な塩には、有機および無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモイン酸、ムチン酸、グルタミン酸、樟脳酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸など)との標準的反応で形成される塩がある。抗生物質107891とそのA1因子とA2因子と酸との付加塩は、通常使用されている方法に従って調製することができる。例えば、遊離塩基型の抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子は最小量の適当な溶媒、典型的には低級アルカノールまたは低級アルカノール/水混合物に溶解され、適当な選択された酸の化学量論量が得られた溶液に徐々に加えられ、得られる塩は非溶媒を添加することにより沈殿される。次に、形成される付加塩はろ過または溶媒の蒸発により回収される。
【0056】
あるいはこれらの塩は、凍結乾燥することにより実質的に無水の形で調製することができ、この場合抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子と揮発性酸との塩は、適当量の非揮発性酸で溶解される。次に、溶液は不溶性物質からろ過され、1回または複数回凍結乾燥される。
【0057】
別の塩の形の抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子の溶液から、適切な陰イオンの添加により所望の塩がするなら、特異的な付加塩も得られる。
本発明の非塩化合物から対応する付加塩への変換、およびその逆、すなわち本発明の化合物の付加塩から非塩型への変換は、当業者の技術範囲であり、本発明により包含される。
【0058】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子の塩の形成はいくつかの目的(該抗生物質107891と酸A1因子とA2因子の分離、精製、および治療薬または動物成長の促進物質としての使用を含む)に役立つ。治療目的には、通常薬剤学的に許容される塩が使用される。
用語「薬剤学的に許容される塩」は、温血動物の治療に使用することができる非毒性の塩を特定する。
【0059】
抗生物質107891複合体、そのA1因子とA2因子、および該因子の任意の比率の混合物は、そのまままたは薬剤学的に許容される担体との混合物として投与され、また他の抗微生物剤(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチド)と組合せて投与することができる。
従って併用療法は、最初に投与された化合物の治療効果が、次の化合物の投与時に完全に消失していないような、活性化合物の逐次的、同時の、および別々の投与を含む。
【0060】
本発明の化合物またはその薬剤学的に許容される塩は、非経口、経口、または局所的投与に適した形に調製することができる。抗生物質に感受性の微生物が関与する感染症の治療における静脈内投与用に、適切な可溶化剤(例えばポリプロピレングリコールまたはジメチルアセトアミド)および界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンまたはリン脂質ベースのポリエトキシ化ヒマシ油)またはシクロデキストリンまたはリン脂質ベースの製剤とともに、注射用無菌水内でもよい。注射製剤はまた、適切なシクロデキストリンを用いて得られる。
【0061】
抗生物質107891複合体、そのA1因子とA2因子、および任意の比率の該因子の混合物はまた、経口投与のための適当な剤形、例えばカプセル剤、錠剤、または水性懸濁物として、または局所的適用のために通常のクリームゼリーとともに使用される。ヒトおよび動物の治療のための薬剤としての使用以外に、本発明の化合物はまた動物成長の促進物質として使用することもできる。このために本発明の化合物は、適当な飼料中で経口投与される。使用される正確な濃度は、通常量の飼料が消費される時に成長促進有効量の活性物質を提供するのに必要な濃度である。
【0062】
動物飼料への本発明の活性化合物の添加は、好ましくは有効量の活性化合物を含有する適切な飼料プレ混合物を調製し、プレ混合物を完全な飼料中に取り込むことである。かかる飼料プレ混合物および完全な飼料を調製し投与する方法は、参考書に記載されている(例えば、「応用動物の栄養(Applied Animal Nutrition)」、ダブリューエィチフリードマン社(W.H. Freedman and Co.)、サンフランシスコ、アメリカ合衆国、1969年、または「家畜飼料と供給(Livestock Feeds and Feeding)」、オーアンドビーブックス(O and B books)、コルバリス(Corvallis)、オレゴン州、アメリカ合衆国、1977年)。
【0063】
抗生物質107891の物理化学的特性
A) 質量スペクトル:
電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用すると、抗生物質107891は、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成に対応するそれぞれm/z=1124とm/z=1116に2つの2重プロトン化イオンを与える。電子噴霧条件は以下の通りである:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:220℃;毛細管電圧:3V;注入モード 10μl/分。スペクトルは0.1%のトリフルオロ酢酸を有するメタノール/水 80/20 (v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録し、これを図1A(フルスキャン低分解スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解スペクトル)に報告する。
【0064】
B) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891の赤外吸収スペクトルは、3263; 2929; 1661; 1533; 1402; 1114; 1026 (cm-1)に吸収極大を示す。赤外吸収スペクトルは図2に報告する。1631、1596、および1346の吸収バンドは、残存量のギ酸アンモニウムに帰属する。
【0065】
C) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で行った抗生物質107891のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図3に報告する。
【0066】
D) 1H NMRスペクトルは、混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃でブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して記録した。内部標準物質として、3.31ppmのメタノール−d4の残存シグナルを考慮した。
【0067】
抗生物質107891の1H NMRスペクトルを図4に報告する。メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10 (v/v)に溶解した抗生物質107891の1H NMRスペクトルは、メタノール−d4を内部標準物質(3.31ppm)として使用して600MHzで以下の群のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.93d (CH3), 0.98d (CH3), 1.07t (重複CH3), 1.18t (重複CH3), 1.26s (CH3), 1.30t (重複CH3), 1.62-1.74m (CH2), 1.78d (CH3), 1.80d (CH3), 2.03m (CH2), 2.24m (CH), 2.36m (CH2), 2.72-3.8m (ペプチド性アルファCH), 3.8-5.2m (ペプチド性アルファCH), 5.53-6.08s (CH2), 5.62d (CH 2重結合), 6.42m (CH), 6.92d (CH 2重結合), 7.0-7.55m (芳香族性CH), 7.62-10.4dとm (芳香族性およびペプチド性NH)。
【0068】
E) 13C-NMRスペクトルは、混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃でブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で、内部標準物質としてメタノール−d4の49.15ppmの残存シグナルを使用して記録した。抗生物質107891のデカップリングされた13C NMRスペクトル bbを図5に報告する。
【0069】
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10 (v/v)に溶解した抗生物質107891の13C NMRスペクトルは、メタノール−d4を内部標準物質(49.15ppm)として使用して600MHzで以下の群のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:13.6-23.2 (脂肪族CH3), 26.16-73 (脂肪族CH2とペプチド性アルファCH), 105-136 (芳香族性および2重結合CHと四級炭素), 164.3-176.3 (ペプチド性カルボニル)。
【0070】
F) 抗生物質107891複合体を、モル過剰の0.01M塩酸を含有する2-メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)に溶解した。次に、溶液を0.01N 水酸化カリウム溶液で逆滴定した。生じた滴定曲線は、1塩基イオン化可能な官能基を示した。
【0071】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子のアミノ酸組成
A) 抗生物質107891複合体中の「酸耐性」アミノ酸の測定
抗生物質107891を完全な酸加水分解(HCl 6N、105℃、24時間)に付し、酸処理に耐性の抗生物質のアミノ酸組成を同定した。酸に不安定なアミノ酸は、このアプローチでは検出されない。加水分解は適当な誘導体化後に、同様に誘導体化した標準的アミノ酸の混合物と比較して、HPLC-MSとGC-MS分析により試験した。HPLC分析用に、加水分解試料を6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメート(AccQ-Tag(登録商標)Fluor試薬キット)で処理し、GC分析用に、無水メタノールと無水トリフルオロ酢酸中の3N HClの混合物を用いて処理した。
【0072】
定性的HPLC分析を、液体クロマトグラフィーシステムでDADとMSの同時検出を用いて行った。
HPLC法は以下の条件を有した:
カラム:AccQ-Tag(登録商標)(ウォーターズC18ノボパック(NovoPak) 4μm 3.9×150mm)
カラム温度:37℃
流速:1ml/分
A相:酢酸アンモニウム 140mM pH5(酢酸)
B相:水:アセトニトリル 60:40 (v/v)
【0073】
【表5】
【0074】
UV検出:254nm
MS条件は以下の通りである:
分光光度計:標準電子噴霧源を取り付けたフィニガンLCQデカ(Finnigan LCQ Deca)
毛細管温度:250℃
ソース電圧:4.70KV
ソース電流:80μA
毛細管電圧:-15V
定性的GC分析は、MS-EI検出を取り付けたガスクロマトグラフィーで行った。
【0075】
GC法は以下の条件を有した:
カラム:ジェイアンドダブリューサイエンティフック(J & W Scientific)DB−5、30m×0.254mm ID×0.25μm FT
キャリアーガス:ヘリウム
注入モード:スプリット無し
注入温度:200℃
移動ライン温度:300℃
温度プログラム:50℃から100℃までを2.5℃/分(10分)で、100℃から250℃までを10℃/分(15分)で、250℃で15分
注入量:1μl
【0076】
MS条件は以下の通りである:
分光光度計:フィニガン(Finnigan)TSQ700
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:400mA
電子倍増管:1400V
電子エネルギー:70eV
【0077】
陽イオンモード
スキャン条件:
スキャン範囲:40〜650amu
スキャン時間:1秒
【0078】
抗生物質107891の加水分解物について得られたLC/MSとGC/MSクロマトグラムでは、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0079】
抗生物質107891のA1因子とA2因子を、複合体について報告されているものと同じ条件で(誘導体化とHPLC-MS)完全な酸加水分解に付した。GC-MS分析は、PTVインジェクターを取り付けたサーモフィニガントレース(Thermo Finnigan Trace)GC−MS装置で行った。
【0080】
GC法は以下の条件を有した:
カラム:レステック(Restek)RTX-5MS、15m×0.25mm ID×0.25μm FT
キャリアーガス:ヘリウム
インターフェース温度:250℃
温度プログラム:50℃で1.5分、50℃から100℃までを20℃/分、100℃で1分、100℃から135℃までを20℃/分、135℃で1分、135℃から250℃までを20℃/分、250℃で1分
注入量:1μl
インジェクター:スプリット無しモード、ベース温度50℃、移動温度280℃、移動速度14.5℃/分、移動速度1.45℃/分
【0081】
MS条件は以下の通りである:
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:149μA
電子倍増管:200V
電子エネルギー:70eV
【0082】
陽イオンモード
スキャン条件:
スキャン範囲:30〜500amu
スキャン時間:0.6秒
【0083】
抗生物質107891のA1因子の加水分解物においてHPLC/MSとGC/MSクロマトグラムでは、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0084】
上記方法をA2因子について行うと、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0085】
B) 抗生物質107891複合体とそのA1因子とA2因子中の5-クロロトリプトファンの測定
精製した107891複合体とその単一のA1因子とA2因子の完全な加水分解を、Simpson RJ, Neuberger MR, Liu TY, 「単一の加水分解物からのタンパク質の完全なアミノ酸分析」、Journal Biol. Chem. (アメリカ合衆国)、4月10日、1976、251(7):1936-40に従って行った。
【0086】
この加水分解法は、鉱酸消化に対して通常は不安定なアミノ酸の分解を防止し、こうして、ペプチドの加水分解物からのこれらのアミノ酸(トリプトファンを含む)の測定を可能にする。5-クロロ-DL-トリプトファンの標準試料をバイオシント社(Biosynt AG)(スタアド(Staad)、スイス)から購入し、その構造をNMR分析により確認した;DL-トリプトファンはメルク社(Merck KGaA)(ダルムスタット(Darmstadt)、ドイツ)から購入した。
【0087】
A1因子(1.5mg)を、加水分解の触媒として0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを含有する0.6mlの4N メタンスルホン酸に懸濁した。加水分解は115℃で16時間行った。次に加水分解物を5N NaOHで中和し、等量の蒸留水で希釈した。100μlのこの溶液をLC-MSにより分析した。分離は、シメトリー(Symmetry)C18カラム(5μm) 3.9×20mmプレカラムを取り付けたシメトリー(Symmetry)C18カラム(5μm)4.6×250mmカラム(ウォーターズ社(Waters Co.)、ミルフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)で行った。溶出は1ml/分の流速で25分のB相の0%〜50%の線状勾配で行った。A相は25mMのHCOONH4(pH4.5):CH3CN 95:5 (v/v)で、B相はCH3CNであった。UV検出は280nmで行った。HPLC装置にはフィニガンLCQ(Finnigan LCQ)イオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)が取り付けてあった。カラムからの50μl/分の溶出液をLCQ質量スペクトル計の電子噴霧イオン化(Electrospray Ionization)(ESI)インターフェースに送った。MS分析は以下の条件下で行った:試料入り口:シャーガス(N2)60psi;毛細管ヒーター 210℃;試料入り口電圧極性:陽極と陰極の両方;イオン噴霧電圧 ±4.5KV;毛細管電圧 ±21V;スキャン条件:最大イオン時間 50ms;フルマイクロ;スキャン3。
【0088】
トリプトファンと5-クロロトリプトファンの標準物質は、m/z 205と239のM+H+に対応してそれぞれ8.1分と11.5分の保持時間で溶出した。抗生物質107891 A1因子の加水分解物では、238.97のm/zで11.5分のピークの存在が5-クロロトリプトファンの存在を示した。
標準的トリプトファンは、検出限界0.3μg/mlで使用したクロマトグラフィーシステムで検出可能であった。この値は、試験した抗生物質試料中の該アミノ酸の存在が示したはずの値より低い。抗生物質107891 A1因子の加水分解物のクロマトグラム中で、上記限界内ではトリプトファンは検出されなかった。A2因子の加水分解物と、抗生物質107891複合体の精製試料の加水分解物のLC-MS分析から、同じ結果が得られた。
【0089】
抗生物質107891 A1因子とA2因子の質量スペクトル
抗生物質107891 A1因子は、電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ Deca)装置でサーモフィニガン較正ミックスを使用してMS実験で最も低い同位体組成に対応してm/z=1124の2重にプロトン化したイオンとm/z 1116のA2因子を与える。電子噴霧条件は以下の通りである:噴霧電圧 4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分。スペクトルは、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録し、図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)、および図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)に報告する。
【0090】
抗生物質A1因子とA2因子の正確な質量は、電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定されている。これらのデータに基づきA1因子は、高分解能ESI-FTMSにより測定して、m/z 1124.36124(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2246.71±0.06の分子量を割り当てられた。A2因子は、高分解能ESI-FTMSにより測定して、m/z 1116.36260(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2230.71±0.06の分子量を割り当てられた。
【0091】
抗生物質107891 A1因子とA2因子および抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1の比較
A) US6,551,591 B1に記載されたミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NNRL30420(MF-BA-1768)を、NNRLコレクションから(NNRL collection)得た。探索実験においてミクロビスポラ・コラリナ(M. corallina)NNRL 30420(MF-BA-1768)株は、US6,551,591 B1に記載の条件で三角フラスコで発酵された。採取したブロスをメタノールで希釈して抽出した。菌糸の遠心分離後、上清をHP20ポリスチレン性吸収樹脂にのせ、メタノール:水 70:30混合物で溶出し、これを少量に低減させて、次に凍結乾燥した。
【0092】
クロマトグラムでは、MF-BA-1768β1とMF-BA-1768α1についてUS6,551,591 B1で報告された[M+2H]2+に対応して、2つのピークはそれぞれ1091と1108[M+2H]2+シグナルを示した。次に上記抽出物に抗生物質107891 A1因子とA2因子を加え、混合物をLC-MSで分析した。抗生物質MF-BA-1768β1とMF-BA-1768α1のピークおよび抗生物質107891 A1因子とA2因子のピークは、明確な保持時間と明確な[M+2H]2+ MS断片を有することがわかった。
【0093】
B) さらなる実験で、ミクロビスポラ(Microbispora)種NNRL 30420株(MF-BA-1768)の30リットルのタンク発酵を行い、採取したブロスをUS6,551,591 B1の説明に従って処理した。HP20ポリスチレン樹脂とポリアミドCC6 0.1〜0.3mm(マチェレイ−ナーゲル(Macherey-Nagel))樹脂で連続的な精製工程後、μ10粒子サイズC18フェノメネックス(Phenomenex)(トランス(Torrance)、カリホルニア州、アメリカ合衆国)ルナ(250×12.2mm)カラムの分取HPLCで、27ml/分の流速で以下の多段階プログラムで溶出して2つの個々の物質が得られた:時間=0分(B相 32%);時間=8分(B相 32%);時間=20分(B相 36%);時間=32分(B相 90%)。A相は水中のギ酸0.05% (v/v)であり、B相はCH3CNであった。
【0094】
これらの物質は、表IVに示すようにブドウ球菌や腸球菌に対して抗細菌活性を示した。LC-MS実験では、2つの物質が米国特許6,551,591 B1に記載のように抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1に対応する[M+2H]2+ 2重プロトン化イオンシグナルを示した。
【0095】
【表6】
【0096】
抗微生物試験の実験条件は、以下の表VIで報告された試験で使用したものと同じであった。
単離された抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1のLC-MS分析は、シメトリー(Symmetry)C18(5μm)3.9×20mmプレカラムを取り付けたシメトリー(Symmetry)C18(5μm)4.6×250mmカラム(ウォーターズ社(Waters)、ミルフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)(いずれも50℃の温度でオーブン中で維持した)で行った。溶出は1ml/分の流速で以下の多段階溶出プログラムで行った:時間=0分(B相 30%);時間=8分(B相 30%);時間=20分(B相 45%);時間=24分(B相 90%);および時間=28分(90% B相)。A相は25mMのHCOONH4緩衝液(pH4.5):CH3CN 95:5 (v/v)で、B相はCH3CNであった。HPLC装置にはフィニガンLCQ(Finnigan LCQ)イオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)が取り付けてあった。カラムからの100μl/分の溶出液をLCQ質量スペクトル計のESIインターフェースに送った。MS分析は以下の条件下で行った:試料入り口:シートガス流(N2)25psi、auxガス流 5psi;毛細管ヒーター 210℃;試料入り口電圧極性:陽極と陰極の両方;イオン噴霧電圧 ±4.75KV;毛細管電圧 ±12V;スキャン条件:最大イオン時間 50ms;フルマイクロ:スキャン3。
【0097】
個々の抗生物質因子MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1および抗生物質107891 A1因子とA2因子は、個々におよび混合物中で分析した。結果を以下の表Vに要約する。
【0098】
【表7】
【0099】
同じクロマトグラフィーシステムでラモプラニン(ramoplanin)A2因子(L. Gastaldo, R. Ciabatti, F. Assi, E. Restelli, J.K. Kettenring, L.F. Zerilli, G. Romano, M. DenaroとB. Cavalleri, (1992):「A-16686因子A'1、A'2、およびA'3 グリコリポデプシペプチド抗生物質の単離、構造決定、および生物活性」、J. Ind. Microbiol. 11:13-18)は、11.00分の保持時間で溶出された。
【0100】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のNMRスペクトル
抗生物質107891 A1因子とA2因子の1H NMRスペクトルを、混合物CD3CN:D2O(1:1)中で298Kでブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して記録した。内部標準物質として1.94ppmのアセトニトリルの残存シグナルを考慮した。
【0101】
A) 抗生物質107891 A1因子の1H NMRスペクトルを図8に示す。
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A1因子の1H NMRは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.89d (CH3), 0.94t (重複CH3), 1.1d (CH3), 1.13d (CH3), 1.15t (重複CH3), 149m (CH2), 1.69d (CH3), 1.75m (CH2), 2.11m (CH), 2.26m (CH), 2.5m (CH2), 2.68-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-5.0m (ペプチド性CHα), 5.45-6.17s (CH2), 5.58d (CH 2重結合), 6.36m (CH), 6.86d (CH 2重結合), 7.0-7.45m (芳香族CH)。2.58ppmにジメチルスルホキシドシグナルが存在し、不純物としてギ酸シグナルも8.33ppmに存在する。
【0102】
B) 抗生物質107891 A2因子のデカップリングした1H NMRスペクトルbbは図9に報告される
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.88d (CH3), 0.94d (CH3), 1.06d (CH3), 1.14d (CH3), 148m (CH2), 1.65-1.75m (CH2), 1.67d (CH3), 2.15m (CH), 2.25m (CH), 2.5m (CH2), 2.77-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-4.9m (ペプチド性CHα), 5.45-6.14s (CH2), 5.59d (CH 2重結合), 6.34m (CH), 6.84d (CH 2重結合), 7.0-7.42m (芳香族CH)。2.58ppmにジメチルスルホキシドシグナルが存在し、不純物としてギ酸シグナルも8.32ppmに存在する。
【0103】
抗生物質107891 A1因子の13C-NMRを、CD3CN:D2O(1:1)混合物中で298Kでブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で内部標準物質として1.94ppmのアセトニトリル-d3の残存シグナルを使用して記録した。
【0104】
C) 抗生物質107891 A1因子の13C-NMRスペクトルを図10に示す。CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A1因子の13C-NMRは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.03 (脂肪族CH3), 25.69-77.9 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.6-176.6 (ペプチド性カルボニル)。
【0105】
D) 抗生物質107891 A2因子のデカップリングした13C NMRスペクトルbbは図11に示す
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-22.9 (脂肪族CH3), 25.65-73 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.7-176.1 (ペプチド性カルボニル)。
【0106】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のUVスペクトルとIRスペクトル
A) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891 A1因子の赤外スペクトルは以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3294; 3059; 2926; 1661; 1529; 1433; 1407; 1287; 1114; 1021。赤外スペクトルを図12に示す。
【0107】
B) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録した抗生物質107891 A1因子のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図13に報告する。
【0108】
C) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891 A2因子の赤外スペクトルは以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3296; 3060; 2928; 1661; 1529; 1433; 1407; 1288; 1116。赤外スペクトルを図14に示す。
【0109】
D) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録した抗生物質107891 A2因子のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図15に報告する。
【0110】
上記で報告された物理化学的データに基づき、抗生物質107891 A1因子に以下の構造式を一時的に割り当てることができ、これはその薬剤学的に許容される塩とともに本発明の好適な実施態様である
【化1】
【0111】
上記で報告された物理化学的データに基づき、抗生物質107891 A2因子に以下の構造式を一時的に割り当てることができ、これはその薬剤学的に許容される塩とともに本発明の好適な実施態様である
【化2】
【0112】
抗生物質107891のインビトロ生物活性
抗生物質107891の抗微生物活性を、アメリカ臨床検査標準委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)(NCCLS、書類M7-A5)の推奨に従うブロス微量希釈法により測定した。
使用した株は、臨床分離株またはアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)からの株であった。試験の結果を表VIと表VIIに報告する。
【0113】
抗生物質107891をDMSOに溶解して1000μg/mlのストック溶液を得て、次に水で希釈して使用溶液を得た。使用した培地は、ブドウ球菌、エム・カタラーリス(M. catarrhalis)、腸球菌、およびリステリア菌(L. monocytogenes)用にミューラーヒントンブロス(CAMHB);ストレプトコッカス用にトッドヒューイットブロス(THB);ナイセリア(Neisseria)種用にGC培地+1%イソビタレックス+1%ヘミン(haemine);インフルエンザ菌(H. influenzae)用にブレインハートインフージョン+1% Cサプリメント;乳酸菌用に乳酸菌ブロス;スメグマ菌(M. smegmatis)用にミドルブルーク(Middlebrook)OADC補強ミドルブルーク7H9;シー・アルビカンス(C. albicans)用にウィルキンスシャルグレン(Wilkins Chalgren)ブロス+オキシラーゼ(1:25 v/v);プロピオニバクテリア(Propionibacteria)用にシステイン(0.5g/L)を含有するブルセラ(Brucella)ブロスである。
【0114】
細菌の接種量は105 CFU/mlである。シー・アルビカンス(C. albicans)接種量は1×104 CFU/mlである。すべての試験は0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で行った。培養物は、嫌気的雰囲気を必要とするクロストリジア(Clostridia)とプロピオニバクテリア(Propionibacteria)以外は、35℃でインキュベートした。18〜24時間後、視覚的に読んでMICを測定した。MICは、増殖が見られない抗生物質の最も低い濃度として定義される。
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
抗生物質107891は、グラム陽性細菌に対して良好な抗細菌活性を示す。
メチシリン耐性(MRSA)株およびグリコペプチド系中等度耐性(GISA)株を含むブドウ球菌種に対するMIC範囲は0.13〜4μg/mlであり、腸球菌種に対する最近の臨床分離株(バンコマイシン耐性(VRE)株を含む)に対しては0.5〜4μg/mlである。ストレプトコッカス種に対してはMICは≦0.13μg/mlである。
【0118】
抗生物質107891はまた嫌気性グラム陽性株に対して活性である;MICはクロストリジア(Clostridia)に対して≦0.13μg/mlであり、プロピオニバクテリア(Propionibacteria)に対しては≦0.004〜4μg/mlである。抗微生物活性は、エル・モノシトゲネス(L. monocytogenes)(MIC 0.125μg/ml)と乳酸菌株(MIC範囲 ≦0.13〜4μg/ml)に対して示された。一部のグラム陰性菌は抗生物質107891に対して感受性である;MICは、エム・カタラーリス(M. catarrhalis)に対して1〜0.25μg/mlであり、ナイセリア(Neisseria)種に対して0.5〜0.25μg/mlであり、インフルエンザ菌(H. influenzae)に対して32μg/mlである。
抗生物質107891は、試験した大腸菌(E.coli)とシー・アルビカンス(C. albicans)に対しては活性は無い。
【0119】
タイムキル(time-kill)実験において抗生物質107891は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)GISAとエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)VanA株に対して殺菌活性を示し、24時間で殺菌濃度は、ミューラーヒントンブロス中のMIC値である。
【0120】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、生死に関わる感染症を引き起こし、特にMRSAはすべてのペニシリンやセファロスポリンおよび他の多くの抗生物質に耐性なため、臨床的に特に重要である;さらにこれは患者から患者に伝搬して、医療施設にとって重要な意味を有する感染症の爆発的流行を引き起こす(W. Witte, (1999):「グラム陽性細菌における抗生物質耐性:疫学的側面」、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 44:1-9)。疾病管理センター(CDC)院内感染監視システム(NNIS)は、米国の病院における黄色ブドウ球菌(S. aureus)のメチシリン耐性が、1975年の2.4%から1991年の29%まで増加し、特に集中治療室において高度の耐性が見られると報告した(L. Archibald, L. Philips, D. Monnet, J.E. Jr Mc Gowan, F. Tenover, R. Gaynes, (1997):「米国における入院患者および外来患者からの分離株の抗生物質耐性:集中治療室の高まる重要性」、Clinic Infect. Dis. 24:211-5)。院内ブドウ球菌感染症は、高い罹患率と死亡率を引き起こし、入院期間を延長させ、入院コストを上昇させている。MRSA株の大半は、最も一般的に使用されている抗生物質(現在使用されているマクロライド系、アミノグリコシド系、およびβ−ラクタム系抗生物質と、最新世代のセファロスポリン系を含む)のいくつかに耐性である。
【0121】
感染症(例えば、心内膜炎、髄膜炎、および敗血症)の原因であるバンコマイシン耐性院内獲得病原体は、治療的課題が大きくなっている(Y Cetinkaya, P. FalkとC.G. Mayhall, (2000):「バンコマイシン耐性腸球菌」、Clin. Microbiol. Rev. 13:686-707;L.B. Rice, (2002):「バンコマイシン耐性腸球菌の出現」、Emerg. Infec. Dis. 7:183-7)。
【0122】
肺炎球菌(S. pneumoniae)とエム・カタラーリス(M. catarrhalis)は、ヒトの重要な病原体であることが認識されている。これらは呼吸器感染症、特に小児の中耳炎および老人の下気道感染症の一般的な原因である。エム・カタラーリス(M. catarrhalis)と肺炎球菌(S. pneumoniae)は最近、呼吸器の最も一般的な病原体として認められた(M.C. EnrightとH. McKenzy, (1997):「モラキセラ(ブランハメラ)・カタラーリス(Moraxella (Branhamella) catarrhalis)。再発見された病原体の臨床的および分子的側面」、J. Med. Microbiol. 46:360-71)。
【0123】
クロストリジア(Clostridia)は異なる疾患(ガス壊疽と関連する創傷感染症、破傷風、ボツリヌス中毒、抗生物質関連下痢(CDAD)、および偽膜性腸炎)に関与する。これらの微生物のほとんどは、疾患の病理発生で重要な役割を果たす外毒素を産生する。シー・ディフィシル(C. difficile)は、CDAD症例の25%と実質的にすべての偽膜性腸炎症例の原因菌である。過去数年、バンコマイシン耐性腸球菌感染またはコロニー形成を有する患者でシー・ディフィシル(C. difficile)同時感染が存在している(J.G. Barlett, (1992):「抗生物質関連下痢」、Clinic. Infect. Dis. 15:573-581)。
【0124】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のインビトロ生物活性
表VIIIは、抗生物質107891 A1因子とA2因子の抗微生物活性を報告する。MICは上記の微量ブロス希釈法により測定した。
【0125】
【表10】
【0126】
抗生物質107891のインビボ生物活性
免疫適格マウスまたは好中球減少マウスの急性致死感染の実験で体重23〜25gのメスのアイシーアール(ICR)マウス(ハーランイタリアエスピーエー(Harlan Italia SpA)−S. Pietroら、ナチソネ(Natisone)、イタリア)を使用した。4日と1日にシクロホスファミドの2つの腹腔内投与(200mg/kgと100mg/kg)により好中球減少を誘導した後、マウスに感染させた。
【0127】
免疫適格マウス(8匹/用量/処理群)にメチシリン耐性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SA3817)または標準物質メチシリン耐性株(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Smith ATCC19636)の臨床分離株の細菌懸濁液を腹腔内接種するか、または好中球減少マウスにグリコペプチド耐性腸球菌(エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)A533)の臨床分離株を接種することにより、感染を誘導した。0.5mlの5%細菌ムチン(ディフコ(Difco))で細菌抗原刺激(約106 細胞/マウス)を行った。未処理の動物は感染後24〜72時間以内に死亡した。抗生物質処理は、抗原刺激の10〜15分内に開始した。抗生物質107891を異なる水性調製物中で1回静脈内または皮下投与した。7日目に生存している動物の割合から50%有効用量(ED50)と95%信頼限界をスピマン−ケーバー(Spearman-Karber)法により計算した(D.J. Finney, (1952):「生物学的測定法における統計的方法」、524-530頁中の「スピマン−ケーバー(Spearman-Karber)法」、チャールズグリフィン社(Charles Griffin & Co., Ltd.)、ロンドン)。結果を以下の表IXに報告する。
【0128】
抗生物質107891は試験した最大用量200mg/kgまで毒性は無かった。
【0129】
【表11】
【0130】
調製物:
A:10% (v/v) DMSO、10%(w/v) ベータヒドロキシプロピルシクロデキストリン(シグマ(Sigma))、水中80% (v/v)の5% (v/v) グルコース
B:10% (v/v) DMSO、0.1M 水性CH3COOH中の40% (v/v) PEG400
C:水中50% (v/v) PEG400
株:
I. MSSA:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Smith819 ATCC19636
II. MRSA:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)3817、臨床分離株
III. VanA:エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)A533、臨床分離株、好中球減少マウスへ
【実施例】
【0131】
実施例
実施例1:ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の発酵法
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株をオートミール寒天スラント上で28℃で2〜3週間維持した。1つのスラントの微生物内容物を5mlの無菌水でこすり落とし、100mlの接種培地(AF/MS)(これは以下からなる(g/l):ブドウ糖 20、酵母エキス 2、ダイズミール 8、NaCl 1、および炭酸カルシウム 4)を含有する500mlの三角フラスコ中に接種した。蒸留水中で培地を調製し、pHを7.3に調整した後、121℃で20分滅菌した。接種したフラスコをロータリーシェーカー上で200rpmで28℃で培養した。4〜6日後この培養物の5%を、同じ発酵培地を含有する第2のシリーズのフラスコに接種した。72時間インキュベーション後200mlを、3リットルの同じ栄養培地を含有する4リットルのバイオリアクター中に移した。
【0132】
発酵を30℃で700rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で行った。72時間後培養物(1.5リットル)を15リットルの同じ栄養培地を含有する20リットルのバイオリアクター中に移した。発酵を30℃で500rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で48時間行い、次に生産タンクに移した。抗生物質107891の生産を、200リットルの生産培地M8(以下からなる(g/l):デンプン 20、グルコース 10、酵母エキス 2、加水分解カゼイン 4、肉エキス 2、炭酸カルシウム 3)を含有する300リットルの発酵槽中で行った。培地を脱イオン水中で調製し、pHを7.2に調整した後、121℃で25分滅菌した。冷却後発酵槽に約14リットル(7%)の前培養物を接種した。発酵槽を29℃で180rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度でヘッド圧0.36barで運転した。98時間の発酵後、発酵槽を採取した。
【0133】
全培養物ブロスを同量のメタノールで抽出後、抗生物質107891の生産を既に記載されているようにHPLCにより追跡した。抽出は室温で1時間攪拌して行った。
【0134】
実施例2:ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の別の発酵法
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024を、100mlの増殖培地(G1)(これは以下からなる(g/l):ブドウ糖 10、麦芽糖 10、ダイズ油 10、ダイズミール 8、酵母エキス 2、炭酸カルシウム 4)を含有する500mlの三角フラスコ中に接種した。脱イオン水中で培地を調製し、pHを調整せずに121℃で20分滅菌した。接種したフラスコを、良好な増殖が観察されるまで、200rpmで28℃で120〜168時間インキュベートした。次にフラスコを使用して、3リットルの接種培地AF/MS(これは実施例1に記載のように作成される)を含有する4リットルのバイオリアクター中に移した(3%)。30℃で700rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で120時間の発酵後、15リットルの培養物を15リットルの同じ栄養培地を含有する20リットルのバイオリアクター中に移した。発酵を30℃で600rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で96時間行い、次に生産タンクに移した。
【0135】
抗生物質生産を、200リットルの生産培地(V6)(以下からなる(g/l):ブドウ糖 20、酵母エキス 5、肉エキス 2、加水分解カゼイン 3、ペプトン 5、NaCl 1.5)を含有する300リットルの発酵槽中で行った。培地を脱イオン水中でNaOHでpHを7.5に調整した後、121℃で20分滅菌した。
【0136】
発酵槽に14リットル(7%)の種培養物を接種し、発酵を29℃で180rpmで攪拌して100リットルの標準的空気/分(0.5vvm)で通気して行った。抗生物質107891の生産を既に記載されているようにHPLCにより追跡した。約160後発酵物を採取した。
【0137】
実施例3:抗生物質107891の回収
実施例1に記載の発酵ブロスをタンゼンシャル(tangential)ろ過システム(0.1μm 孔径の膜、コッホカルボーコール(Koch Carbo-Cor)、コッホウィルミントン(Koch Wilmington)、アメリカ合衆国)によりろ過して170リットルの上清と30リットルの濃菌糸を得た。抗生物質107891複合体はろ液(A)と菌糸(B)中に存在した。
【0138】
(A) ろ過したブロスを室温で一晩ダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(4リットル)の存在下で攪拌した。次に樹脂を回収し、10リットルのメタノール:水 4:6 (v/v)で洗浄し、まず10リットルのメタノール:水 9:1 (v/v)で、次に10リットルのメタノール:水:ブタノール 9:1:1 (v/v/v)で、バッチ的に溶出した。抗生物質107891を含有するプールした溶出画分をロータリーエバポレーターで少量に濃縮し、次に凍結乾燥して32gの原料を得た。この原料をn-ブタノール(1リットル)に溶解し、次に800mlの水で3回連続して抽出した。有機層を減圧下で油状物残渣に濃縮して、これをメタノールに溶解した。石油エーテルを加えると、5gの粗抗生物質調製物が沈殿して得られた。
【0139】
(B) 25リットルのメタノールを添加後、菌糸を含有する保持物部分を1時間攪拌し、ろ過して45リットルの菌糸抽出物を得た。次にこの溶液を水(20リットル)で希釈して、室温で一晩ダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(1リットル)とともに攪拌した。次に樹脂を回収し、2リットルのメタノール:水 40:60 (v/v)で洗浄し、3リットルのメタノール:水 85:15 (v/v)と次に2リットルのメタノール:水 90:10 (v/v)で、バッチ的に逐次溶出した。溶出した画分を黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の寒天拡散法と前記の分析HPLC法により、抗生物質107891の存在について追跡した。
抗生物質107891を含有する溶出した画分をプールし、減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、8.1gの粗抗生物質107891を得た。
【0140】
実施例4:抗生物質107891の別の回収法
実施例2に記載の200リットルタンク発酵から採取したブロスをpH6.8にし、ブロスをタンゼンシャルろ過システム(0.1μm 孔径の膜、コッホカルボーコール(Koch Carbo-Cor))によりろ過した。透過物(180リットル)を室温で一晩2リットルのダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(三菱化学(Mitsubishi Chemical))とともに攪拌し、次に樹脂を回収した。
【0141】
メタノール(25リットル)を、濃縮菌糸を含有するタンゼンシャルろ過システム(約20リットル)中の保持物部分に加えた。この懸濁物を1時間攪拌し、次に微量ろ過システムでろ過して約20リットルの残存保持物容量を得た。次に追加のメタノール(25リットル)を加え、上記方法を全部で5サイクル順次繰り返した。プールしたメタノール抽出物(約125リットル)を160リットルの脱ミネラル水で希釈し、室温で一晩3リットルのダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂とともに攪拌した。次に樹脂を回収し、上記方法に従ってブロス透過物を抽出するのに使用したダイアイオン(Diaion)HP-20樹脂とともにプールした。プールした樹脂を、20リットルの水:メタノール 6:4 (v/v)を有するクロマトグラフィーカラム中に洗浄した。抗生物質107891を23リットルのメタノール:50mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH3.5):n-ブタノール 9:1:1 (v/v)で溶出した。次にこの溶出液を真空下で濃縮して最終容量3リットルを得た。次に濃縮溶液をpH4.5で、水:メタノール 7:3 (v/v)で調整した2.5リットルのポリアミドCC6 0.1〜0.3μm(マチェレイ−ナーゲル(Macherey-Nagel))にのせた。カラムを水:メタノール 7:3 (v/v)、次に25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH3.5):メタノール 7:3 (v/v)で洗浄した。抗生物質を水:メタノール 3:7 (v/v)、次に1:9 (v/v)混合液で溶出した。 1:9 (v/v)比の25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH2.8):メタノールを用いて溶出を完了した。抗生物質107891を含有する溶出液をプールし、真空下で乾燥で濃縮して最終容量を1リットルにした。7M 水酸化アンモニウムを用いて濃縮溶液のpHを4から5.7にして、次に混合液を遠心分離して沈殿物を得た。この固体を水に懸濁し、凍結乾燥して、6.96gの抗生物質107891調製物を得た。
【0142】
実施例5:抗生物質107891の精製
実施例3に記載のように調製した粗抗生物質107891(3.6g)を、100gの逆相C8(EC) 40〜70μm粒子サイズ、60A孔径のIST(インターナショナルソルベントテクノロジー(International sorbent Technology)、ミッドグラモルガン(Mid-Glamorgan)、英国)の中圧クロマトグラフィーにより、B-687勾配生成機、B-684フラクションコレクター、B-685ガラスカラム 70×460mmを取り付けたブチ(Buchi)B-680中圧クロマトグラフィーシステム(ブチラボラトリウムズ−テクニク社(Buchi laboratoriums-technik AG)、フラウィル(Flawil)、スイス)を使用して精製した。樹脂はあらかじめA相:B相 8:2 (v/v)の混合液で調整し、次に20%〜60%のB相の60分の線形勾配を用いて25ml/分で60分で溶出した。
A相はアセトニトリル:20mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6) 10:90 (v/v)であり、B相はアセトニトリル:20mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6) 90:10 (v/v)であった。
抗生物質107891を含有する画分をプールし、真空下で濃縮し、水から2回凍結乾燥して、430mgの精製抗生物質107891を得た。
【0143】
実施例6:分取HPLCによる抗生物質107891の精製
抗生物質107891を、ハイバープレパックトリクロソルブ(Hiber prepacked lichrosorb)RP8(7μm粒子サイズ)カラムRT250〜25mm、メルク(Merck)の分取HPLCにより、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出を使用して30ml/分流速で精製した。A相は25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であり、B相はアセトニトリルであった。
実施例5からの抗生物質107891の試料(300mg)をDMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解し、300μlをクロマトグラフィー実験で処理した。抗生物質107891は典型的には15〜16分で溶出された。抗生物質107891を含有する5回のクロマトグラフィー実験の溶出した画分をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を順次水から3回凍結乾燥して、31mgの抗生物質107891を白色粉末として得た。
【0144】
実施例7:抗生物質107891の個々のA1因子とA2因子の分離と精製
実施例5の抗生物質107891複合体からシメトリープレップ(Symmetry Prep)C18(7μmの粒子サイズ)カラム 7.8×200mm(ウォーターズ社(Waters)、ミルドフォールド(Mildfold)、アメリカ合衆国)の分取HPLCにより、2つの異なる溶出プログラムを使用してA1因子とA2因子を分離し精製した。
【0145】
A) A1因子は、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出により3.5mlの流速で精製した。A相は25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であり、B相はアセトニトリルであった。精製した抗生物質107891複合体(15mg)を350μlのDMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解し、クロマトグラフィー実験で処理した。A1とA2因子は典型的には11〜13分の時間枠内で溶出した。次に溶出した画分をHPLCにより上記分析条件下で分析した。14回のクロマトグラフィー実験の画分(純粋な抗生物質107891 A1因子を含有する)をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を順次水から3回凍結乾燥して、15mgの純粋なA1因子を白色粉末として得た。
【0146】
B) A2因子は、100mM ギ酸アンモニウム(pH4):アセトニトリル 82.5:17.5 (v/v)を用いて7mlの流速で均一溶媒溶出により精製した。精製した抗生物質107891複合体(5mg)を250μlの酢酸:アセトニトリル:100mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4) 50:120:80 (v/v)混合液に溶解し、クロマトグラフィー実験で処理した。A1とA2因子は典型的には9〜10分の時間枠内で溶出した。次に溶出した画分をHPLCにより上記分析条件下で分析した。20回のクロマトグラフィー実験の画分(純粋な抗生物質107891 A2因子を含有する)をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を水から2回凍結乾燥して、8mgの純粋なA2因子を白色粉末として得た。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】図1A(フルスキャン低分解能スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は抗生物質107891の質量スペクトルであり、m/z 1124とm/z 1116の2重プロトン化イオンを示す。
【図1B】図1A(フルスキャン低分解能スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は抗生物質107891の質量スペクトルであり、m/z 1124とm/z 1116の2重プロトン化イオンを示す。
【図2】図2は、KBrに分散した抗生物質107891のIR吸収スペクトルである。
【図3】図3は、メタノール:水に溶解した抗生物質107891のUVスペクトルである。
【図4】図4は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃で記録した1H NMRスペクトルである。
【図5】図5は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃で記録した13C NMRスペクトルである。
【図6A】図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A1因子の質量スペクトルであり、m/z 1124の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図6B】図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A1因子の質量スペクトルであり、m/z 1124の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図7A】図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A2因子の質量スペクトルであり、m/z 1116の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図7B】図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A2因子の質量スペクトルであり、m/z 1116の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図8】図8は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、CD3CN:D2O(1:1)中で298Kで記録した抗生物質107891 A1因子の1H NMRスペクトルである。
【図9】図9は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、CD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルである。
【図10】図10は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でCD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A1因子の13C NMRスペクトルである。
【図11】図11は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でCD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A2因子の13C NMRスペクトルである。
【図12】図12は、KBrに分散した抗生物質107891 A1因子のIR吸収スペクトルである。
【図13】図13は、メタノール:H2Oに溶解した抗生物質107891 A1因子のUVスペクトルである。
【図14】図14は、KBrに分散した抗生物質107891 A2因子のIR吸収スペクトルである。
【図15】図15は、メタノール:H2Oに分散した抗生物質107891 A2因子のUVスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物起源の抗生物質(任意に抗生物質107891と呼び、これはA1因子とA2因子とを含む複合体である)、その薬剤学的に許容される塩、その医薬組成物、および抗生物質としてその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の別の目的は、ミクロビスポラ(Microbispora)種107891(以後、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024として特定される)、または該抗生物質を産生する能力を保持するその変種もしくは変異体を含有し、菌糸および/または発酵ブロスから本発明の抗生物質を回収し、クロマトグラフィー手段により純粋な物質を単離し、そしてA1因子とA2因子とを分離することを含む、抗生物質107891の製造方法である。
抗生物質107891は、ランチオニン(lanthionine)およびメチルランチオニンを成分として含有するペプチド構造を有する新規抗微生物剤である。これらは、ランチビオティクス(lantibiotics)の典型的な特徴であり、特に主に細胞壁生合成に作用するサブグループの特徴である。
【0003】
ランチビオティクス(lantibiotics)はペプチドであり、チオエーテルアミノ酸ランチオニンならびにいくつかの他の修飾アミノ酸を含有する(H.G. SahlとG. Bierbaum, (1998) 「ランチビオティクス(lantibiotics):グラム陽性細菌からのユニークに修飾されたペプチドの生合成と生物活性」、Ann. Rev. Microbio. 52:41-79)。大半のランチビオティクス(lantibiotics)は抗細菌活性を有するが、一部は異なる薬理学的標的に活性であるとして報告されている。抗細菌ランチビオティクス(lantibiotics)は、その構造により大きく2つに分類される:A型ランチビオティクス(lantibiotics)は典型的には長い両親媒性ペプチドであり、一方B型ランチビオティクス(lantibiotics)はコンパクトで球形である(O. McAuliffe, R.P. RossとC. Hill, (2001):「ランチビオティクス(Lantibiotics):構造、生合成、および作用モード」、FEMS Microb. Rev. 25:285-308)。ニシン(nisin)はA型ランチビオティク(lantibiotic)の典型的な代表であり、一方アクタガルジン(actagardine)(ガルジマイシン(gardimycin))とメルサシジン(mersacidin)は、B型ランチビオティク(lantibiotic)サブクラスに属する。ニシン(nisin)型とメルサシジン(mersacidin)型ランチビオティクス(lantibiotics)の両方とも、膜結合ペプチドグリカン前駆体脂質IIと相互作用するが、この2つのクラスは細菌の増殖プロセスにおいて示す作用が異なる。ニシン型ランチビオティクスは主に、細胞質膜の浸透性化により細菌を死滅させ(H. Brotz, M. Josten, I. Wiedemann, U. Schneider, F. Gotz, G. BierbaumとH.G. Sahl, (1998):「ニシン、エピデルミン、および他のランチビオティクスによる脂質結合ペプチドグリカン前駆体の形成における役割」、Mol. Microbiol. 30:317-27)、一方メルサシジン型のランチビオティクスは細胞壁生合成を阻害することにより細菌細胞を死滅させる(H. Brotz, G. Bierbaum, K. Leopold, P.E. ReynoldsとH.G. Sahl, (1998):「ランチビオティクメルサシジンは脂質IIを標的化することによりペプチドグリカン合成を阻害する」、Antimicrob Agents Chemother. 42:154-60)。
【0004】
ミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRLL30420株により産生される2つの抗生物質(それぞれ抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1として特定される)は、US6,551,591 B1に記載されている。上記特許で報告されている物理化学的データ(例えば、質量スペクトルデータ、分子量、アミノ酸含量)およびLC-MS実験分析の保持時間の比較は、抗生物質107891複合体ならびにその成分A1因子とA2因子が抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1とは異なる化学物質であることを明瞭に示す。
【0005】
EP0592835A2は、抗腫瘍抗生物質BU-4803TA1、A2、B、C1、C2、およびDを記載している。抗生物質BU-4803TA1、A2およびBは、ミクロビスポラ(Microbispora)ATCC55327(AA9966)の発酵ブロスから回収され、一方抗生物質BU-4803TC1、C2、およびDは、それぞれ抗生物質BU-4803TA1、A2、およびBがジメチルスルホキシド中で保存される時の変換産物である。上記抗生物質についてEP0592835A2に報告された物理化学的データ(例えば、外観、UV吸収、分子量、抗腫瘍活性)は、これらが抗生物質107891複合体およびそのA1因子とA2因子とは異なることを明瞭に示す。
【0006】
株と発酵
ミクロビスポラ(Microbispora)種107891は環境中で分離され、2003年2月27日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(10801、University Blvd, Manassas VA 20110-2209 U.S.A.)にブダペスト条約の規定に基づいて寄託された。この株は受け入れ番号PTA-5024が与えられた。
【0007】
抗生物質107891の産生は、これを産生することができる能力を保持するミクロビスポラ(Microbispora)種の株であるミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024またはその変種もしくは変異体を培養し;生じる抗生物質を培養ブロス全体からおよび/または菌糸からおよび/またはろ過した発酵ブロスから単離し;そして単離された抗生物質をクロマトグラフィー手段により精製することにより行われる。いずれにしても、好気的条件下で、同化の容易な炭素、窒素、および無機塩源を含有する水性栄養培地中で抗生物質107891を産生することが好ましい。発酵分野で通常使用される多くの栄養培地を使用することができるが、好ましい培地がいくつかある。
【0008】
好適な炭素源は、ショ糖、フルクトース、グルコース、キシロースなどである。好適な窒素源は、ダイズ粉、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、トリプトン、アミノ酸、加水分解カゼインなどである。培地中に取り込まれる無機塩には、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、コバルト、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、および類似のイオンを与えることができる通常の可溶性塩がある。
【0009】
好ましくは抗生物質107891を産生する株は、発酵チューブまたは浸透フラスコ中で前培養され、次に培養物を使用して多量の物質を産生するためにジャーフェーメンターに接種する。前培養に使用される培地は大量発酵に使用されるものと同じでもよいが、他の培地を使用することもできる。抗生物質107891を産生する株は17℃〜37℃の温度で増殖させることができ、最適温度は約28〜30℃である。
【0010】
発酵中、抗生物質107891産生は、感受性微生物のバイオアッセイによりおよび/またはHPLC分析により追跡することができる。抗生物質107891の最大産生は、発酵の約90時間より後で200時間より前に起きる。
【0011】
抗生物質107891は、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024または抗生物質107891を産生することができるその変種もしくは変異体を培養することにより産生され、培養ブロスおよび/または菌糸中に存在する。
【0012】
本説明と請求項において用語「抗生物質107891」は、特に明記しない場合は、A1因子とA2因子とを含む抗生物質107891複合体を特定する。
【0013】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の形態的特徴
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024は、種々の標準固形培地上でよく増殖する。顕微鏡的大きさを、1ml/lのビタミン溶液(塩酸チアミン 25mg/l、パントテン酸カルシウム 250mg/l、ニコチン酸 250mg/l、ビオチン0.5mg/l、リボフラビン 1.25g/l、シアノコバラミン 6.25mg/l、パラアミノ安息香酸 25mg/l、葉酸 500mg/l、塩酸ピリドキサール 500mg/l)を加えたフミン酸−微量塩寒天(組成、g/l:フミン酸 0.5、FeSO4*7H2O 0.001、MnCl2*4H2O 0.001、ZnSO4*7H2O 0.001、NiSO4*6H2O 0.001、MOPS 2、寒天20)中で培養された培養物を使用して測定された。
【0014】
液体培養物(V6培地、組成 g/l:ブドウ糖 22、肉エキス 5、酵母エキス 5、カゼイン 3、NaCl 1.5)中では、28℃で6日間の培養では菌糸の断片化は観察されない。フミン酸−微量塩寒天(28℃で接種の21日後)での顕微鏡観察は、分岐した断片化していない基質菌糸と単軸分枝した気菌糸を示し、多くの長いまっすぐな分岐の少ない気菌糸も見られる。分岐から横に出ている短い胞子体または主気菌糸から直接、特徴的な長い胞子対が生まれる。胞子は球形で非運動性である。胞子嚢様構造または他の特定の構造は観察されていない。
【0015】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の培養特性
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024をAF/MS液体培地(実施例1を参照)中で28℃で200rpmで6日間増殖させ、次に新しいAF/MS液体培地に移し(5%接種)てさらに6日間増殖させ、最後に100mlのV6液体培地(実施例1を参照)中に接種した(7%接種)。28℃で200rpmで6日間増殖後、菌糸を遠心分離して採取し、無菌食塩水溶液中で3回洗浄し、次に希釈して適当な接種物を得た。懸濁物のアリコートをShirlingとGottliebが推奨する種々の培地(E.B. ShirlingとD. Gottlieb, (1966);「ストレプトミセス(Streptomyces)種の性状解析方法」、J. Synst. Bacteriol. 16:313-340)、およびS.A. Waksmanが推奨する培地(S.A. Waksman (1961);「放線菌」、ザウィリアムズアンドウィルキンス社(The Williams and Wilkins Co.)、ボルチモア、第2巻:328-334)上に平行線式で画線した。
【0016】
炭素源およびエネルギー源として種々の炭水化物を利用する能力を、デンプンを含まず、上記ビタミン溶液を加えたISP4培地(各炭素源は最終濃度1%(w/v)で加えた)を基礎培地として使用して測定した。
【0017】
NaCl耐性、増殖pH範囲、ならびに異なる温度で増殖する能力を、ISP2培地上で測定した。すべての培地を28℃で3週間インキュベートした;特に明記しない場合は21日間である。色は自然の昼光下でメルツ‐ポールの表色系(A. MaerzとM.R. Paul、1950−「色辞典(A Dictionary of Colour)」、第2版、マグローヒルブック社(McGraw-Hill Book Co. Inc.)、ニューヨーク)を使用して評価した。硝酸塩を亜硝酸塩に還元する能力をWilliamsらが記載した水っぽい硝酸塩培地(S.T. Williams, M. Goodfellow, G. Alderson, E.M.H. Wellington, P.H.A. SneathとM.J. Sackin, 1983−ストレプトミセス(Streptomyces)と関連する属の数値的分類−J. Gen. Microbiol. 129, 1743-1813)で評価した。
【0018】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の増殖、コロニー外観、基質、および気菌糸の色、色素産生を表Iに記録する。使用した培地のほとんどに栄養増殖が存在し、これは一部の培地にのみ存在した気菌糸とは異なる。使用したどの培地にも、明瞭な色素は存在しなかった。株の生理学的特徴を表IIに示す。増殖と気菌糸産生が17℃で起きたが43℃では起きなかった。ISP2上の気菌糸産生は、6より高いpHで存在したが、1%NaCl存在下では存在しなかった。
種々の炭水化物を増殖のために使用する能力を表IIIに示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
(1ml/Lのビタミン溶液を加えたISP4とグルコース−アスパラギン寒天)
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の化学分類的特徴
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024を、GYM培地(グルコース 4g/l;酵母エキス 4g/l;麦芽エキス 10g/l)中で28℃でロータリーシェーカー上で増殖させ、菌糸を採取し、無菌蒸留水で2回洗浄し、次に凍結乾燥した。アミノ酸の分析は、StaneckとRobertsの方法(J.L. StaneckとG.D. Roberts, (1974);「薄層クロマトグラフィーによる好気的放線菌の同定への簡便なアプローチ」、Appl. Microbiol. 28:226-231)に従って行った。メナキノンと極性脂質とをMinnikinらの方法(D.E. Minnikin, A.G. O'Donnell, M. Goodfellow, G. Alderson, M. Athalye, A. SchaalとJ.H. Parlett, (1984):「イソプレノイドキノンと極性脂質の統合的方法」、J. Microbiol. Meth. 2:233-241)に従って抽出した。極性脂質は薄層クロマトグラフィー(D.E. Minnikin, V. Paterl, L. AlshamaonyとM. Goodfellow, (1977):「ノカルディア(Nocardia)と関連細菌の分類における極性脂質の組成」、Int. J. Syst. Bacteriol. 27:104-117)に従って、メナキノンはHPLC(R.M. Kroppenstedt, (1982):「固定相として逆相RP18と銀付加イオン交換物質とを使用するHPLCによる細菌メナキノンの分離」、J. Liquid. Chromat. 5:2359-2367;R.M. Kroppenstedt, (1985):「細菌分類における化学的方法」における「放線菌と関連生物の脂肪酸とメナキノン分析」、No 20、SAB Technical Series pp.173-199, M. GoodfellowとD.E. Minnikin編、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン)により、脂肪酸メチルエステルはガス−液体クロマトグラフィー(L.T. Miller, (1982):「ヒドロキシ酸を含む細菌脂肪酸メチルエステルの1回の誘導体化法」、J. Clin. Microbiol. 16:584-586:M. Sasser, (1990):「細胞脂肪酸のガスクロマトグラフィーによる細菌の同定」、USFCC News Letters 20:1-6)により分析した。ミコール酸の存在をMinnikinらの方法(D.E. Minnikin, L. AlshamaonyとM. Goodfellow, (1975):「全生物メタノール分解物の薄層クロマトグラフィー分析によるマイコバクテリウム(Mycobacterium)、ノカルディア(Nocardia)および関連群の鑑別」、J. Gen. Microbiol. 88:200-204)。
【0024】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の全細胞加水分解物は、ペプチドグリカンのジアミノ酸としてメソジアミノピメリン酸を含有する。主要なメナキノンはMK-9(III、VIII-H4)、MK-9(H2)、およびMK-9(H0)である。極性脂質パターンは、ホスファチジルエタノールアミン、メチルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジル−グリセロール、ジホスファチジル−グリセロール、ホスファチジル−イノシトール、ホスファチジル−イノシトールマンノシド、およびリン脂質を含有するN-アセチルグルコサミン、すなわちLechevalierらのリン脂質IV型(H.A. Lechevalier, C. De BrieveとM.P. Lechevalier, (1977):「好気性放線菌の化学分類:リン脂質組成」、Biochem. Syst. Ecol. 5:246-260)の存在を特徴とする。脂肪酸パターンの主要成分は、アンテイソ 15:0、イソ 16:0、n- 16:0、アンテイソ 17:0、および10-メチル-ヘプタデカン酸(10-Me-17:0)、すなわち3c sensu Kroppenstedtである(R.M. Kroppenstedt, (1985):「細菌分類における化学的方法」における「放線菌と関連生物の脂肪酸とメナキノン分析」、SAB Technical Series pp.173-199, M. GoodfellowとD.E. Minnikin編、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン)。ミコール酸は検出されない。
【0025】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024 16S rDNA配列決定
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の全rRNAの95%に対応する16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列(すなわち1443ヌクレオチド)を公表された方法(P. Mazza, P. Monchiardini, L. Cavaletti, M. SosioとS. Donadio, (2003):「イタリアの土壌から分離された放線菌と関連する属の多様性」、Microbial Ecol. 5:362-372)に従って作成した。これを配列番号1に報告する。
【0026】
この配列を、US6,551,591 B1に報告されたミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRL30420(MF-BA-1768)と比較した。2つの配列を整列させ、1456の整列位置のうちの31で差が見つかり、全体の配列の差は2.13%であった。同一性が97.5%未満の2つの株は通常異なる種に属する(Stackebrandt, E.とEmbley, M.T. (2000) 「環境中の培養不可能な微生物(Diversity of Uncultured Microorganisms in the Environment)」中の「環境中の非培養微生物の多様性」、E.R. ColwellとD.J. Grimes(編)、エーエスエムプレス(ASM, Press)、ワシントンDC、57-75頁)。従って2%レベルの配列の差は非常に高く(Rossello-Mira, R.とAmann, R. (2001)。「原核生物の種の概念」。FEMS Microbiol. Rev. 25:39-67)、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024とミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NRRL30420(MF-BA-1768)は異なる株であることを示す。
【0027】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株の本体
抗生物質107891を産生するこの株は、以下の化学分類的および形態的特徴によりミクロビスポラ(Microbispora)属ストレプトスポランギウム科(Streptosporangiaceae)に割り当てられた:
− 細胞壁中のメソ−ジアミノピメリン酸の存在;
− Lechevalierらに従って多量のMK-9(III、VIII-H4)とリン脂質IV型(H.A. Lechevalier, C. De BrieveとM.P. Lechevalier, (1977):「好気性放線菌の化学分類:リン脂質組成」、Biochem. Syst. Ecol. 5:246-260);
− 3c sensu Kroppenstedtの脂肪酸プロフィール(R.M. Kroppenstedt, (1992):「原核細胞」における「ノカルディオプシス(Nocardiopsis)属」、第II巻、1139-1156頁、A. Balows, H. Truper, M. Dworkin, W. HarderとK.H. Schleifer編;ニューヨーク、スプリンガー−フェアラーク(Springer-Verlag));
− ミコール酸の欠如;
− 気菌糸から横に分岐している短い胞子体の先端の特徴的な長い胞子対の形成。非運動性胞子。
− 16 rRNA遺伝子(16S rDNA)の部分配列、すなわち配列番号1に報告された、全rRNAの95%に対応する1443ヌクレオチド、記載のミクロビスポラ(Microbispora)種の16S rDNA配列と>97%の同一性を示す。
【0028】
他の微生物と同様に、抗生物質107891を産生する株の特徴は変化を受ける。例えば株の人工的変種と変異体が、種々の公知の変異誘発物質、例えば紫外線、および化学物質(例えば、亜硝酸、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)および他の多くの物質で処理することにより得られる。抗生物質107891を産生できるミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株のすべての天然のおよび人工的変種および変異体は、本発明の目的においてこれと同等であると見なされ、従って本発明の範囲内である。
【0029】
抗生物質107891の抽出と精製
上記したように抗生物質107891は、菌糸と発酵ブロスのろ過画分の両方にほとんど等しく存在する。
採取されたブロスは処理されて菌糸と発酵ブロスの上清が分離され、菌糸は水混和性溶媒で抽出されて、廃菌糸の除去後に107891抗生物質を含有する溶液が得られる。次にこの菌糸抽出物は別に処理されるか、または上清画分について後述の報告された方法に従って上清とともにプールされる。水混和性溶媒が菌糸抽出物からの抗生物質の回収操作を妨害する時は、水混和性溶媒を蒸留により除去するかまたは非妨害性の濃度まで水で希釈する。
【0030】
本出願において用語「水混和性溶媒」とは、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有し、使用状況により、妥当に広い濃度範囲で水と混和する溶媒を意味する。本発明の化合物の抽出に使用可能な水混和性有機溶媒の例には以下がある:低級アルカノール、例えば(C1-C3)アルカノール、例えばメタノール、エタノール、およびプロパノール;フェニル(C1-C3)アルカノール、例えばベンジルアルコール;低級ケトン、例えば(C3-C4)ケトン、例えばアセトンおよびエチルメチルケトン;環状エーテル、例えばジオキサンおよびテトラヒドロフラン;グリコールおよびその部分的エステル化生成物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、低級アミド、例えばジメチルホルムアミドおよびジエチルホルムアミド;酢酸ジメチルスルホキシドおよびアセトニトリル。
【0031】
産生微生物の発酵ブロスの上清からの化合物の回収は、それ自体公知の方法、例えば溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法に従って行われる。ろ過した発酵ブロスから本発明の化合物を回収する方法は、水と混和しない有機溶媒による抗生物質107891の抽出と、次におそらく沈殿剤を加えて濃縮抽出物から沈殿させる方法がある。
またこの場合本出願において用語「水と混和しない溶媒」とは、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有し、使用状況により、目的の使用に適した妥当に広い濃度範囲で水とわずかに混和するかまたは実質的に混和しない溶媒を意味する。
【0032】
発酵ブロスからの本発明の化合物の抽出に使用できる水と混和しない有機溶媒の例は以下の通りである:直鎖、分岐鎖または環状の少なくとも4つの炭素原子のアルカノール、例えばn-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、4-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2,2-ジメチル-3-ペンタノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、4,4-ジメチル-2-ペンタノール、5-メチル-2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、5-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メチル-3-ヘキサノール、1−オクタノール、2-オクタノール、シクロペンタノール、2-シクロペンチルエタノール、3−シクロペンチル-1-プロパノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、2,3-ジメチル-シクロヘキサノール、4-エチルシクロヘキサノール、6-メチル-5-ヘプテノ-2-オール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-デカノール、2-デカノール、および3-デカノール;少なくとも5つの炭素原子のケトン、例えばメチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、およびこれらの混合物。
【0033】
当該分野で公知のように、ろ過した発酵ブロスからの生成物抽出は、適当な値にpHを調整するか、および/または抽出溶媒に可溶性の、抗生物質とイオン対を形成する正しい有機溶媒を加えることにより、改良される。
【0034】
当該分野で公知のように相分離は、水相を塩析するすることにより改良される。
抽出後に、多量の水を含有する有機相が回収される時、これはそこから共沸蒸留することが便利である。一般にこれは、水と最少の共沸混合物を形成することができる溶媒を加えることが必要であり、次に必要であれば、適当な沈殿剤を加えて所望の生成物を沈殿させる。水と最少の共沸混合物を形成することができる有機溶媒の代表的な例は以下の通りである:n-ブタノール、ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、2,5-ジメチルフラン、ヘキサン、およびm-キシレン;好適な溶媒はn-ブタノールである。
【0035】
沈殿剤の例は、石油エーテル、低級アルキルエーテル、例えばエチルエーテル、プロピルエーテル、およびブチルエーテル、および低級アルキルケトン、例えばアセトンである。
【0036】
抗生物質107891を回収するための好適な方法では、ろ過された発酵ブロスは吸着マトリックスを接触させ、次に極性の水混和性溶媒またはこれらの混合物で溶出し、減圧下で濃縮して油状残渣にし、上記した種類の沈殿剤で沈殿させることができる。
【0037】
本発明の化合物の回収に便利に使用される吸着マトリックスの例は、ポリスチレンまたは混合ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂(例えばM112またはS112、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.);アンバーライト(登録商標)XAD2またはXAD4、ロームアンドハース(Rohm & Haas);ダイアイオン(Diaion)HP20、ミツビシ(Mitsubishi))、アクリル樹脂(例えば、XAD7またはXAD8、ロームアンドハース(Rohm & Haas))、ポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ナイロン、および架橋ポリビニルピロリドン(例えば、ポリアミド-CC6、ポリアミド-SC6、ポリアミド-CC6.6、ポリアミド-CC6AC、およびポリアミド-SC 6AC、マチェレイ−ナーゲル社(Macherey-Nagel & Co.)、ドイツ);PA400、エムベルム社(M. Woelm AG)、ドイツ);およびポリビニルピロリドン樹脂 PVP-CL(アルドリッチケミー社(Aldrich Chemie GmbH & Co.)、KG、ドイツ)、および制御孔架橋デキストラン(例えば、セファデックス(登録商標)LH-20、ファルマシアファインケミカルズ社(Pharmacia Fine Chemicals, AB)である。好ましくは、ポリスチレン樹脂が使用され、特にダイアイオン(Diaion)HP20樹脂が好ましい。
【0038】
ポリスチレン、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリアミド樹脂またはアクリル樹脂樹脂の場合、好適な溶出液は水混和性溶媒またはその水性混合物である。水性混合物は、適切なpH値の緩衝液を含有してもよい。
【0039】
またこの場合、本説明と請求項において用語「水混和性溶媒」は、この用語について現在当該分野で与えられている意味を有する。
【0040】
抗生物質の単離と精製の連続的方法は、ブロス上清からのおよび菌糸からのプール抽出物について行われる。例えばろ過された発酵ブロスまたは上清中に含有される抗生物質産物の部分は吸収樹脂への吸収により回収され、菌糸中に含有される抗生物質産物の部分は水混和性溶媒でそこから抽出され、次に吸収樹脂に吸収され、随時濃縮後に、2セットの吸収樹脂のそれぞれからの溶出画分を一緒にし、次に1つの生成物としてさらに処理される。あるいは、別の抽出段階で利用される2セットの吸収樹脂が同じ種類である時、および同じ機能的特徴を有する時、これらは一緒にプールされて、混合物は例えば水混和性溶媒または水とのこれらの混合物により1つの溶出工程に付される。
【0041】
いずれにしても、粗抗生物質107891を回収するために使用される方法にかかわらず、別の抽出段階から得られる生成物の組合せから得られる粗物質の混合物について、通常連続的精製工程が行われる。
【0042】
粗抗生物質107891の精製は、公知の任意の方法により行われるが、好ましくはクロマトグラフィー法により行われる。これらのクロマトグラフィー法の例は、回収工程について報告されたものであり、シリカゲル、アルミナ、活性化ケイ酸マグネシウムなどの固定相のクロマトグラフィー、または種々の官能基誘導体化を有するシラン化シリカゲルの逆相クロマトグラフィー、および水混和性溶媒または上記の水混和性溶媒の水性混合物で溶出することを含む。
【0043】
例えば、固定相としてRP-8またはRP-18を使用し溶出系としてHCOONH4緩衝液:CH3CNの混合物を使用して、分取HPLCクロマトグラフィーが行われる。
【0044】
精製工程から回収される活性画分は一緒にプールされ、真空下で濃縮され、上記沈殿剤を添加して沈殿され、1回または複数回乾燥もしくは凍結乾燥される。生成物が残存量のギ酸アンモニウムまたは他の緩衝塩を含有する場合、これらは固相抽出カラム、例えばSPEスーパークリーンLCP18スペルコ(SPE Superclean LCP18 Supelco)(ベレフォンテ(Bellefonte)、ペンシルバニア州、アメリカ合衆国)のような逆相樹脂カラムに抗生物質107891を吸収後、蒸留水で洗浄し、適切な水性溶媒混合物(例えばメタノール:水)を用いて溶出して除去される。次に溶出溶媒を除去することにより抗生物質が回収される。
【0045】
従って精製抗生物質107891複合体乾燥調製物は白色粉末として得られる。
当該分野でよくあるように、産生ならびに回収および精製工程は、種々の分析法(例えば、感受性微生物に対する阻害測定法、およびHPLCまたは質量スペクトル法と組合せたHPLCを使用する分析制御)により追跡してもよい。
【0046】
好適な分析HPLC法は、ウォーターズシメトリ−シールド(Waters Simmetry-shield)RP8カラム、5μ(250×4.6mm)を取り付けたウォーターズ(Waters)装置(ウォーターズクロマトグラフィー(Waters Chromatography)、ミルフォード、マサチューセッツ州)で、1ml/分の流速と50℃の温度で溶出して行われる。
【0047】
溶出は多段階工程を使用して行った:時間=0(30% B相);時間=8分(30% B相);時間=28分(40% B相)。A相はアセトニトリル:100mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)5:95 (v/v)でB相はアセトニトリルであった。UV検出器は282nmであった。
【0048】
カラムからの溶出液を5:95の比率に分け、多い方(約950μl/分)をフォトダイオードアレイ検出器に流した。残りの50μl/分は、フィニガン(Finnigan)LCQイオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)に流した。
【0049】
質量スペクトル分析は以下の条件下で行った:
試料入り口条件:
シートガス(N2)60psi;
Auxガス(N2) 5psi;
毛細管ヒーター 250℃;
試料入り口電圧設定:
極性 陽極と陰極の両方;
イオン噴霧電圧 ±5kV;
毛細管電圧 ±19V;
スキャン条件:最大イオン時間 200ms;
イオン時間 5ms;
フルマイクロスキャン 3;
セグメント:持続30分、スキャンイベント 陽極(150-2000m/z)と陰極(150-2000m/z)。
【0050】
これらの分析HPLC条件において抗生物質107891 A1因子とA2因子は、それぞれ保持時間13.2分と13.9分を示した。同じHPLC系でラモプラニン(Ramoplanin)A2因子(L. Gastaldo, R. Ciabatti, F. Assi, E. Restelli, J.K. Kettenring, L.F. Zerilli, G. Romano, M. DenaroとB. Cavalleri, (1992):「A-16686因子A'1、A'2およびA'3グリコリポデプシペプチド抗生物質の単離、構造決定、および生物活性」、J. Ind. Microbiol. 11:13-18)は、保持時間7.5分に溶出した。
【0051】
抗生物質107891 A1因子とA2因子は、抗生物質107891の精製試料から分取HPLCにより分離してもよい。
A1因子は、シメトリープレップ(Symmetry Prep)C18カラムにより、DMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解した精製抗生物質107891複合体から、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出を使用して3.5mlの流速で分離され精製された。
【0052】
B相はアセトニトリルであった。A相は、25mMギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であった。純粋な抗生物質107891 A1因子を含有する溶出液画分をプールし、真空下で濃縮した。残存する溶液を凍結乾燥して、純粋なA1因子を白色粉末として得た。
【0053】
A2因子は、シメトリープレップ(Symmetry Prep)C18カラムにより、酢酸:アセトニトリル:100mM ギ酸アンモニウム(pH4)50:120:80 (v/v)混合物に溶解した精製抗生物質107891複合体から、均一溶媒(isocratic)溶出により分離し精製した。均一溶媒(isocratic)溶出は、7mlの流速で、100mM ギ酸アンモニウム(pH4):アセトニトリルを82.5:17.5 (v/v)の比率の混合物を用いて行った。純粋な抗生物質107891 A2因子を含有する溶出画分をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を凍結乾燥してA2因子を白色粉末として得た。
【0054】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子は、2-メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)中の酸/塩基滴定で示されるように、塩基性を有するため、従来法に従って適当な酸と塩を形成することができ、遊離塩基の形で存在することもできる。
【0055】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子は遊離塩基の形で得られると、酸により対応する塩に変換され、これは非毒性の薬剤学的に許容される塩を含有する。適当な塩には、有機および無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、パルミチン酸、コール酸、パモイン酸、ムチン酸、グルタミン酸、樟脳酸、グルタル酸、グリコール酸、フタル酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ソルビン酸、ピクリン酸、安息香酸、桂皮酸など)との標準的反応で形成される塩がある。抗生物質107891とそのA1因子とA2因子と酸との付加塩は、通常使用されている方法に従って調製することができる。例えば、遊離塩基型の抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子は最小量の適当な溶媒、典型的には低級アルカノールまたは低級アルカノール/水混合物に溶解され、適当な選択された酸の化学量論量が得られた溶液に徐々に加えられ、得られる塩は非溶媒を添加することにより沈殿される。次に、形成される付加塩はろ過または溶媒の蒸発により回収される。
【0056】
あるいはこれらの塩は、凍結乾燥することにより実質的に無水の形で調製することができ、この場合抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子と揮発性酸との塩は、適当量の非揮発性酸で溶解される。次に、溶液は不溶性物質からろ過され、1回または複数回凍結乾燥される。
【0057】
別の塩の形の抗生物質107891またはそのA1因子もしくはA2因子の溶液から、適切な陰イオンの添加により所望の塩がするなら、特異的な付加塩も得られる。
本発明の非塩化合物から対応する付加塩への変換、およびその逆、すなわち本発明の化合物の付加塩から非塩型への変換は、当業者の技術範囲であり、本発明により包含される。
【0058】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子の塩の形成はいくつかの目的(該抗生物質107891と酸A1因子とA2因子の分離、精製、および治療薬または動物成長の促進物質としての使用を含む)に役立つ。治療目的には、通常薬剤学的に許容される塩が使用される。
用語「薬剤学的に許容される塩」は、温血動物の治療に使用することができる非毒性の塩を特定する。
【0059】
抗生物質107891複合体、そのA1因子とA2因子、および該因子の任意の比率の混合物は、そのまままたは薬剤学的に許容される担体との混合物として投与され、また他の抗微生物剤(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびグリコペプチド)と組合せて投与することができる。
従って併用療法は、最初に投与された化合物の治療効果が、次の化合物の投与時に完全に消失していないような、活性化合物の逐次的、同時の、および別々の投与を含む。
【0060】
本発明の化合物またはその薬剤学的に許容される塩は、非経口、経口、または局所的投与に適した形に調製することができる。抗生物質に感受性の微生物が関与する感染症の治療における静脈内投与用に、適切な可溶化剤(例えばポリプロピレングリコールまたはジメチルアセトアミド)および界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンまたはリン脂質ベースのポリエトキシ化ヒマシ油)またはシクロデキストリンまたはリン脂質ベースの製剤とともに、注射用無菌水内でもよい。注射製剤はまた、適切なシクロデキストリンを用いて得られる。
【0061】
抗生物質107891複合体、そのA1因子とA2因子、および任意の比率の該因子の混合物はまた、経口投与のための適当な剤形、例えばカプセル剤、錠剤、または水性懸濁物として、または局所的適用のために通常のクリームゼリーとともに使用される。ヒトおよび動物の治療のための薬剤としての使用以外に、本発明の化合物はまた動物成長の促進物質として使用することもできる。このために本発明の化合物は、適当な飼料中で経口投与される。使用される正確な濃度は、通常量の飼料が消費される時に成長促進有効量の活性物質を提供するのに必要な濃度である。
【0062】
動物飼料への本発明の活性化合物の添加は、好ましくは有効量の活性化合物を含有する適切な飼料プレ混合物を調製し、プレ混合物を完全な飼料中に取り込むことである。かかる飼料プレ混合物および完全な飼料を調製し投与する方法は、参考書に記載されている(例えば、「応用動物の栄養(Applied Animal Nutrition)」、ダブリューエィチフリードマン社(W.H. Freedman and Co.)、サンフランシスコ、アメリカ合衆国、1969年、または「家畜飼料と供給(Livestock Feeds and Feeding)」、オーアンドビーブックス(O and B books)、コルバリス(Corvallis)、オレゴン州、アメリカ合衆国、1977年)。
【0063】
抗生物質107891の物理化学的特性
A) 質量スペクトル:
電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用すると、抗生物質107891は、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成に対応するそれぞれm/z=1124とm/z=1116に2つの2重プロトン化イオンを与える。電子噴霧条件は以下の通りである:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:220℃;毛細管電圧:3V;注入モード 10μl/分。スペクトルは0.1%のトリフルオロ酢酸を有するメタノール/水 80/20 (v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録し、これを図1A(フルスキャン低分解スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解スペクトル)に報告する。
【0064】
B) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891の赤外吸収スペクトルは、3263; 2929; 1661; 1533; 1402; 1114; 1026 (cm-1)に吸収極大を示す。赤外吸収スペクトルは図2に報告する。1631、1596、および1346の吸収バンドは、残存量のギ酸アンモニウムに帰属する。
【0065】
C) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で行った抗生物質107891のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図3に報告する。
【0066】
D) 1H NMRスペクトルは、混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃でブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して記録した。内部標準物質として、3.31ppmのメタノール−d4の残存シグナルを考慮した。
【0067】
抗生物質107891の1H NMRスペクトルを図4に報告する。メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10 (v/v)に溶解した抗生物質107891の1H NMRスペクトルは、メタノール−d4を内部標準物質(3.31ppm)として使用して600MHzで以下の群のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.93d (CH3), 0.98d (CH3), 1.07t (重複CH3), 1.18t (重複CH3), 1.26s (CH3), 1.30t (重複CH3), 1.62-1.74m (CH2), 1.78d (CH3), 1.80d (CH3), 2.03m (CH2), 2.24m (CH), 2.36m (CH2), 2.72-3.8m (ペプチド性アルファCH), 3.8-5.2m (ペプチド性アルファCH), 5.53-6.08s (CH2), 5.62d (CH 2重結合), 6.42m (CH), 6.92d (CH 2重結合), 7.0-7.55m (芳香族性CH), 7.62-10.4dとm (芳香族性およびペプチド性NH)。
【0068】
E) 13C-NMRスペクトルは、混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃でブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で、内部標準物質としてメタノール−d4の49.15ppmの残存シグナルを使用して記録した。抗生物質107891のデカップリングされた13C NMRスペクトル bbを図5に報告する。
【0069】
メタノール−d4:H2O(0.01N HCl)40:10 (v/v)に溶解した抗生物質107891の13C NMRスペクトルは、メタノール−d4を内部標準物質(49.15ppm)として使用して600MHzで以下の群のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:13.6-23.2 (脂肪族CH3), 26.16-73 (脂肪族CH2とペプチド性アルファCH), 105-136 (芳香族性および2重結合CHと四級炭素), 164.3-176.3 (ペプチド性カルボニル)。
【0070】
F) 抗生物質107891複合体を、モル過剰の0.01M塩酸を含有する2-メトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)に溶解した。次に、溶液を0.01N 水酸化カリウム溶液で逆滴定した。生じた滴定曲線は、1塩基イオン化可能な官能基を示した。
【0071】
抗生物質107891とそのA1因子とA2因子のアミノ酸組成
A) 抗生物質107891複合体中の「酸耐性」アミノ酸の測定
抗生物質107891を完全な酸加水分解(HCl 6N、105℃、24時間)に付し、酸処理に耐性の抗生物質のアミノ酸組成を同定した。酸に不安定なアミノ酸は、このアプローチでは検出されない。加水分解は適当な誘導体化後に、同様に誘導体化した標準的アミノ酸の混合物と比較して、HPLC-MSとGC-MS分析により試験した。HPLC分析用に、加水分解試料を6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメート(AccQ-Tag(登録商標)Fluor試薬キット)で処理し、GC分析用に、無水メタノールと無水トリフルオロ酢酸中の3N HClの混合物を用いて処理した。
【0072】
定性的HPLC分析を、液体クロマトグラフィーシステムでDADとMSの同時検出を用いて行った。
HPLC法は以下の条件を有した:
カラム:AccQ-Tag(登録商標)(ウォーターズC18ノボパック(NovoPak) 4μm 3.9×150mm)
カラム温度:37℃
流速:1ml/分
A相:酢酸アンモニウム 140mM pH5(酢酸)
B相:水:アセトニトリル 60:40 (v/v)
【0073】
【表5】
【0074】
UV検出:254nm
MS条件は以下の通りである:
分光光度計:標準電子噴霧源を取り付けたフィニガンLCQデカ(Finnigan LCQ Deca)
毛細管温度:250℃
ソース電圧:4.70KV
ソース電流:80μA
毛細管電圧:-15V
定性的GC分析は、MS-EI検出を取り付けたガスクロマトグラフィーで行った。
【0075】
GC法は以下の条件を有した:
カラム:ジェイアンドダブリューサイエンティフック(J & W Scientific)DB−5、30m×0.254mm ID×0.25μm FT
キャリアーガス:ヘリウム
注入モード:スプリット無し
注入温度:200℃
移動ライン温度:300℃
温度プログラム:50℃から100℃までを2.5℃/分(10分)で、100℃から250℃までを10℃/分(15分)で、250℃で15分
注入量:1μl
【0076】
MS条件は以下の通りである:
分光光度計:フィニガン(Finnigan)TSQ700
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:400mA
電子倍増管:1400V
電子エネルギー:70eV
【0077】
陽イオンモード
スキャン条件:
スキャン範囲:40〜650amu
スキャン時間:1秒
【0078】
抗生物質107891の加水分解物について得られたLC/MSとGC/MSクロマトグラムでは、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0079】
抗生物質107891のA1因子とA2因子を、複合体について報告されているものと同じ条件で(誘導体化とHPLC-MS)完全な酸加水分解に付した。GC-MS分析は、PTVインジェクターを取り付けたサーモフィニガントレース(Thermo Finnigan Trace)GC−MS装置で行った。
【0080】
GC法は以下の条件を有した:
カラム:レステック(Restek)RTX-5MS、15m×0.25mm ID×0.25μm FT
キャリアーガス:ヘリウム
インターフェース温度:250℃
温度プログラム:50℃で1.5分、50℃から100℃までを20℃/分、100℃で1分、100℃から135℃までを20℃/分、135℃で1分、135℃から250℃までを20℃/分、250℃で1分
注入量:1μl
インジェクター:スプリット無しモード、ベース温度50℃、移動温度280℃、移動速度14.5℃/分、移動速度1.45℃/分
【0081】
MS条件は以下の通りである:
イオン化モード:電子衝撃
電圧設定:
フィラメント電流:149μA
電子倍増管:200V
電子エネルギー:70eV
【0082】
陽イオンモード
スキャン条件:
スキャン範囲:30〜500amu
スキャン時間:0.6秒
【0083】
抗生物質107891のA1因子の加水分解物においてHPLC/MSとGC/MSクロマトグラムでは、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0084】
上記方法をA2因子について行うと、以下のアミノ酸が他の未同定のピークとともに同定された:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(NMR試験は、これがアスパラギンの変換産物であり、これが加水分解でアスパラギン酸を生成することを示す)、フェニルアラニン、およびロイシン。
【0085】
B) 抗生物質107891複合体とそのA1因子とA2因子中の5-クロロトリプトファンの測定
精製した107891複合体とその単一のA1因子とA2因子の完全な加水分解を、Simpson RJ, Neuberger MR, Liu TY, 「単一の加水分解物からのタンパク質の完全なアミノ酸分析」、Journal Biol. Chem. (アメリカ合衆国)、4月10日、1976、251(7):1936-40に従って行った。
【0086】
この加水分解法は、鉱酸消化に対して通常は不安定なアミノ酸の分解を防止し、こうして、ペプチドの加水分解物からのこれらのアミノ酸(トリプトファンを含む)の測定を可能にする。5-クロロ-DL-トリプトファンの標準試料をバイオシント社(Biosynt AG)(スタアド(Staad)、スイス)から購入し、その構造をNMR分析により確認した;DL-トリプトファンはメルク社(Merck KGaA)(ダルムスタット(Darmstadt)、ドイツ)から購入した。
【0087】
A1因子(1.5mg)を、加水分解の触媒として0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを含有する0.6mlの4N メタンスルホン酸に懸濁した。加水分解は115℃で16時間行った。次に加水分解物を5N NaOHで中和し、等量の蒸留水で希釈した。100μlのこの溶液をLC-MSにより分析した。分離は、シメトリー(Symmetry)C18カラム(5μm) 3.9×20mmプレカラムを取り付けたシメトリー(Symmetry)C18カラム(5μm)4.6×250mmカラム(ウォーターズ社(Waters Co.)、ミルフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)で行った。溶出は1ml/分の流速で25分のB相の0%〜50%の線状勾配で行った。A相は25mMのHCOONH4(pH4.5):CH3CN 95:5 (v/v)で、B相はCH3CNであった。UV検出は280nmで行った。HPLC装置にはフィニガンLCQ(Finnigan LCQ)イオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)が取り付けてあった。カラムからの50μl/分の溶出液をLCQ質量スペクトル計の電子噴霧イオン化(Electrospray Ionization)(ESI)インターフェースに送った。MS分析は以下の条件下で行った:試料入り口:シャーガス(N2)60psi;毛細管ヒーター 210℃;試料入り口電圧極性:陽極と陰極の両方;イオン噴霧電圧 ±4.5KV;毛細管電圧 ±21V;スキャン条件:最大イオン時間 50ms;フルマイクロ;スキャン3。
【0088】
トリプトファンと5-クロロトリプトファンの標準物質は、m/z 205と239のM+H+に対応してそれぞれ8.1分と11.5分の保持時間で溶出した。抗生物質107891 A1因子の加水分解物では、238.97のm/zで11.5分のピークの存在が5-クロロトリプトファンの存在を示した。
標準的トリプトファンは、検出限界0.3μg/mlで使用したクロマトグラフィーシステムで検出可能であった。この値は、試験した抗生物質試料中の該アミノ酸の存在が示したはずの値より低い。抗生物質107891 A1因子の加水分解物のクロマトグラム中で、上記限界内ではトリプトファンは検出されなかった。A2因子の加水分解物と、抗生物質107891複合体の精製試料の加水分解物のLC-MS分析から、同じ結果が得られた。
【0089】
抗生物質107891 A1因子とA2因子の質量スペクトル
抗生物質107891 A1因子は、電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ Deca)装置でサーモフィニガン較正ミックスを使用してMS実験で最も低い同位体組成に対応してm/z=1124の2重にプロトン化したイオンとm/z 1116のA2因子を与える。電子噴霧条件は以下の通りである:噴霧電圧 4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分。スペクトルは、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録し、図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)、および図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)に報告する。
【0090】
抗生物質A1因子とA2因子の正確な質量は、電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定されている。これらのデータに基づきA1因子は、高分解能ESI-FTMSにより測定して、m/z 1124.36124(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2246.71±0.06の分子量を割り当てられた。A2因子は、高分解能ESI-FTMSにより測定して、m/z 1116.36260(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2230.71±0.06の分子量を割り当てられた。
【0091】
抗生物質107891 A1因子とA2因子および抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1の比較
A) US6,551,591 B1に記載されたミクロビスポラ・コラリナ(Microbispora corallina)NNRL30420(MF-BA-1768)を、NNRLコレクションから(NNRL collection)得た。探索実験においてミクロビスポラ・コラリナ(M. corallina)NNRL 30420(MF-BA-1768)株は、US6,551,591 B1に記載の条件で三角フラスコで発酵された。採取したブロスをメタノールで希釈して抽出した。菌糸の遠心分離後、上清をHP20ポリスチレン性吸収樹脂にのせ、メタノール:水 70:30混合物で溶出し、これを少量に低減させて、次に凍結乾燥した。
【0092】
クロマトグラムでは、MF-BA-1768β1とMF-BA-1768α1についてUS6,551,591 B1で報告された[M+2H]2+に対応して、2つのピークはそれぞれ1091と1108[M+2H]2+シグナルを示した。次に上記抽出物に抗生物質107891 A1因子とA2因子を加え、混合物をLC-MSで分析した。抗生物質MF-BA-1768β1とMF-BA-1768α1のピークおよび抗生物質107891 A1因子とA2因子のピークは、明確な保持時間と明確な[M+2H]2+ MS断片を有することがわかった。
【0093】
B) さらなる実験で、ミクロビスポラ(Microbispora)種NNRL 30420株(MF-BA-1768)の30リットルのタンク発酵を行い、採取したブロスをUS6,551,591 B1の説明に従って処理した。HP20ポリスチレン樹脂とポリアミドCC6 0.1〜0.3mm(マチェレイ−ナーゲル(Macherey-Nagel))樹脂で連続的な精製工程後、μ10粒子サイズC18フェノメネックス(Phenomenex)(トランス(Torrance)、カリホルニア州、アメリカ合衆国)ルナ(250×12.2mm)カラムの分取HPLCで、27ml/分の流速で以下の多段階プログラムで溶出して2つの個々の物質が得られた:時間=0分(B相 32%);時間=8分(B相 32%);時間=20分(B相 36%);時間=32分(B相 90%)。A相は水中のギ酸0.05% (v/v)であり、B相はCH3CNであった。
【0094】
これらの物質は、表IVに示すようにブドウ球菌や腸球菌に対して抗細菌活性を示した。LC-MS実験では、2つの物質が米国特許6,551,591 B1に記載のように抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1に対応する[M+2H]2+ 2重プロトン化イオンシグナルを示した。
【0095】
【表6】
【0096】
抗微生物試験の実験条件は、以下の表VIで報告された試験で使用したものと同じであった。
単離された抗生物質MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1のLC-MS分析は、シメトリー(Symmetry)C18(5μm)3.9×20mmプレカラムを取り付けたシメトリー(Symmetry)C18(5μm)4.6×250mmカラム(ウォーターズ社(Waters)、ミルフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)(いずれも50℃の温度でオーブン中で維持した)で行った。溶出は1ml/分の流速で以下の多段階溶出プログラムで行った:時間=0分(B相 30%);時間=8分(B相 30%);時間=20分(B相 45%);時間=24分(B相 90%);および時間=28分(90% B相)。A相は25mMのHCOONH4緩衝液(pH4.5):CH3CN 95:5 (v/v)で、B相はCH3CNであった。HPLC装置にはフィニガンLCQ(Finnigan LCQ)イオン捕捉質量スペクトル計(サーモクエスト(Thermoquest)、フィニガン(Finnigan)MAT、サンホセ、カリホルニア州)が取り付けてあった。カラムからの100μl/分の溶出液をLCQ質量スペクトル計のESIインターフェースに送った。MS分析は以下の条件下で行った:試料入り口:シートガス流(N2)25psi、auxガス流 5psi;毛細管ヒーター 210℃;試料入り口電圧極性:陽極と陰極の両方;イオン噴霧電圧 ±4.75KV;毛細管電圧 ±12V;スキャン条件:最大イオン時間 50ms;フルマイクロ:スキャン3。
【0097】
個々の抗生物質因子MF-BA-1768α1とMF-BA-1768β1および抗生物質107891 A1因子とA2因子は、個々におよび混合物中で分析した。結果を以下の表Vに要約する。
【0098】
【表7】
【0099】
同じクロマトグラフィーシステムでラモプラニン(ramoplanin)A2因子(L. Gastaldo, R. Ciabatti, F. Assi, E. Restelli, J.K. Kettenring, L.F. Zerilli, G. Romano, M. DenaroとB. Cavalleri, (1992):「A-16686因子A'1、A'2、およびA'3 グリコリポデプシペプチド抗生物質の単離、構造決定、および生物活性」、J. Ind. Microbiol. 11:13-18)は、11.00分の保持時間で溶出された。
【0100】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のNMRスペクトル
抗生物質107891 A1因子とA2因子の1H NMRスペクトルを、混合物CD3CN:D2O(1:1)中で298Kでブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して記録した。内部標準物質として1.94ppmのアセトニトリルの残存シグナルを考慮した。
【0101】
A) 抗生物質107891 A1因子の1H NMRスペクトルを図8に示す。
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A1因子の1H NMRは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.89d (CH3), 0.94t (重複CH3), 1.1d (CH3), 1.13d (CH3), 1.15t (重複CH3), 149m (CH2), 1.69d (CH3), 1.75m (CH2), 2.11m (CH), 2.26m (CH), 2.5m (CH2), 2.68-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-5.0m (ペプチド性CHα), 5.45-6.17s (CH2), 5.58d (CH 2重結合), 6.36m (CH), 6.86d (CH 2重結合), 7.0-7.45m (芳香族CH)。2.58ppmにジメチルスルホキシドシグナルが存在し、不純物としてギ酸シグナルも8.33ppmに存在する。
【0102】
B) 抗生物質107891 A2因子のデカップリングした1H NMRスペクトルbbは図9に報告される
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.88d (CH3), 0.94d (CH3), 1.06d (CH3), 1.14d (CH3), 148m (CH2), 1.65-1.75m (CH2), 1.67d (CH3), 2.15m (CH), 2.25m (CH), 2.5m (CH2), 2.77-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-4.9m (ペプチド性CHα), 5.45-6.14s (CH2), 5.59d (CH 2重結合), 6.34m (CH), 6.84d (CH 2重結合), 7.0-7.42m (芳香族CH)。2.58ppmにジメチルスルホキシドシグナルが存在し、不純物としてギ酸シグナルも8.32ppmに存在する。
【0103】
抗生物質107891 A1因子の13C-NMRを、CD3CN:D2O(1:1)混合物中で298Kでブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で内部標準物質として1.94ppmのアセトニトリル-d3の残存シグナルを使用して記録した。
【0104】
C) 抗生物質107891 A1因子の13C-NMRスペクトルを図10に示す。CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A1因子の13C-NMRは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.03 (脂肪族CH3), 25.69-77.9 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.6-176.6 (ペプチド性カルボニル)。
【0105】
D) 抗生物質107891 A2因子のデカップリングした13C NMRスペクトルbbは図11に示す
CD3CN:D2O(1:1)に溶解した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルは、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-22.9 (脂肪族CH3), 25.65-73 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.7-176.1 (ペプチド性カルボニル)。
【0106】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のUVスペクトルとIRスペクトル
A) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891 A1因子の赤外スペクトルは以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3294; 3059; 2926; 1661; 1529; 1433; 1407; 1287; 1114; 1021。赤外スペクトルを図12に示す。
【0107】
B) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録した抗生物質107891 A1因子のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図13に報告する。
【0108】
C) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した抗生物質107891 A2因子の赤外スペクトルは以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3296; 3060; 2928; 1661; 1529; 1433; 1407; 1288; 1116。赤外スペクトルを図14に示す。
【0109】
D) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録した抗生物質107891 A2因子のUVスペクトルは、226と267nmに2つのショルダーを示す。UVスペクトルを図15に報告する。
【0110】
上記で報告された物理化学的データに基づき、抗生物質107891 A1因子に以下の構造式を一時的に割り当てることができ、これはその薬剤学的に許容される塩とともに本発明の好適な実施態様である
【化1】
【0111】
上記で報告された物理化学的データに基づき、抗生物質107891 A2因子に以下の構造式を一時的に割り当てることができ、これはその薬剤学的に許容される塩とともに本発明の好適な実施態様である
【化2】
【0112】
抗生物質107891のインビトロ生物活性
抗生物質107891の抗微生物活性を、アメリカ臨床検査標準委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)(NCCLS、書類M7-A5)の推奨に従うブロス微量希釈法により測定した。
使用した株は、臨床分離株またはアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)からの株であった。試験の結果を表VIと表VIIに報告する。
【0113】
抗生物質107891をDMSOに溶解して1000μg/mlのストック溶液を得て、次に水で希釈して使用溶液を得た。使用した培地は、ブドウ球菌、エム・カタラーリス(M. catarrhalis)、腸球菌、およびリステリア菌(L. monocytogenes)用にミューラーヒントンブロス(CAMHB);ストレプトコッカス用にトッドヒューイットブロス(THB);ナイセリア(Neisseria)種用にGC培地+1%イソビタレックス+1%ヘミン(haemine);インフルエンザ菌(H. influenzae)用にブレインハートインフージョン+1% Cサプリメント;乳酸菌用に乳酸菌ブロス;スメグマ菌(M. smegmatis)用にミドルブルーク(Middlebrook)OADC補強ミドルブルーク7H9;シー・アルビカンス(C. albicans)用にウィルキンスシャルグレン(Wilkins Chalgren)ブロス+オキシラーゼ(1:25 v/v);プロピオニバクテリア(Propionibacteria)用にシステイン(0.5g/L)を含有するブルセラ(Brucella)ブロスである。
【0114】
細菌の接種量は105 CFU/mlである。シー・アルビカンス(C. albicans)接種量は1×104 CFU/mlである。すべての試験は0.02%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下で行った。培養物は、嫌気的雰囲気を必要とするクロストリジア(Clostridia)とプロピオニバクテリア(Propionibacteria)以外は、35℃でインキュベートした。18〜24時間後、視覚的に読んでMICを測定した。MICは、増殖が見られない抗生物質の最も低い濃度として定義される。
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
抗生物質107891は、グラム陽性細菌に対して良好な抗細菌活性を示す。
メチシリン耐性(MRSA)株およびグリコペプチド系中等度耐性(GISA)株を含むブドウ球菌種に対するMIC範囲は0.13〜4μg/mlであり、腸球菌種に対する最近の臨床分離株(バンコマイシン耐性(VRE)株を含む)に対しては0.5〜4μg/mlである。ストレプトコッカス種に対してはMICは≦0.13μg/mlである。
【0118】
抗生物質107891はまた嫌気性グラム陽性株に対して活性である;MICはクロストリジア(Clostridia)に対して≦0.13μg/mlであり、プロピオニバクテリア(Propionibacteria)に対しては≦0.004〜4μg/mlである。抗微生物活性は、エル・モノシトゲネス(L. monocytogenes)(MIC 0.125μg/ml)と乳酸菌株(MIC範囲 ≦0.13〜4μg/ml)に対して示された。一部のグラム陰性菌は抗生物質107891に対して感受性である;MICは、エム・カタラーリス(M. catarrhalis)に対して1〜0.25μg/mlであり、ナイセリア(Neisseria)種に対して0.5〜0.25μg/mlであり、インフルエンザ菌(H. influenzae)に対して32μg/mlである。
抗生物質107891は、試験した大腸菌(E.coli)とシー・アルビカンス(C. albicans)に対しては活性は無い。
【0119】
タイムキル(time-kill)実験において抗生物質107891は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)GISAとエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)VanA株に対して殺菌活性を示し、24時間で殺菌濃度は、ミューラーヒントンブロス中のMIC値である。
【0120】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、生死に関わる感染症を引き起こし、特にMRSAはすべてのペニシリンやセファロスポリンおよび他の多くの抗生物質に耐性なため、臨床的に特に重要である;さらにこれは患者から患者に伝搬して、医療施設にとって重要な意味を有する感染症の爆発的流行を引き起こす(W. Witte, (1999):「グラム陽性細菌における抗生物質耐性:疫学的側面」、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 44:1-9)。疾病管理センター(CDC)院内感染監視システム(NNIS)は、米国の病院における黄色ブドウ球菌(S. aureus)のメチシリン耐性が、1975年の2.4%から1991年の29%まで増加し、特に集中治療室において高度の耐性が見られると報告した(L. Archibald, L. Philips, D. Monnet, J.E. Jr Mc Gowan, F. Tenover, R. Gaynes, (1997):「米国における入院患者および外来患者からの分離株の抗生物質耐性:集中治療室の高まる重要性」、Clinic Infect. Dis. 24:211-5)。院内ブドウ球菌感染症は、高い罹患率と死亡率を引き起こし、入院期間を延長させ、入院コストを上昇させている。MRSA株の大半は、最も一般的に使用されている抗生物質(現在使用されているマクロライド系、アミノグリコシド系、およびβ−ラクタム系抗生物質と、最新世代のセファロスポリン系を含む)のいくつかに耐性である。
【0121】
感染症(例えば、心内膜炎、髄膜炎、および敗血症)の原因であるバンコマイシン耐性院内獲得病原体は、治療的課題が大きくなっている(Y Cetinkaya, P. FalkとC.G. Mayhall, (2000):「バンコマイシン耐性腸球菌」、Clin. Microbiol. Rev. 13:686-707;L.B. Rice, (2002):「バンコマイシン耐性腸球菌の出現」、Emerg. Infec. Dis. 7:183-7)。
【0122】
肺炎球菌(S. pneumoniae)とエム・カタラーリス(M. catarrhalis)は、ヒトの重要な病原体であることが認識されている。これらは呼吸器感染症、特に小児の中耳炎および老人の下気道感染症の一般的な原因である。エム・カタラーリス(M. catarrhalis)と肺炎球菌(S. pneumoniae)は最近、呼吸器の最も一般的な病原体として認められた(M.C. EnrightとH. McKenzy, (1997):「モラキセラ(ブランハメラ)・カタラーリス(Moraxella (Branhamella) catarrhalis)。再発見された病原体の臨床的および分子的側面」、J. Med. Microbiol. 46:360-71)。
【0123】
クロストリジア(Clostridia)は異なる疾患(ガス壊疽と関連する創傷感染症、破傷風、ボツリヌス中毒、抗生物質関連下痢(CDAD)、および偽膜性腸炎)に関与する。これらの微生物のほとんどは、疾患の病理発生で重要な役割を果たす外毒素を産生する。シー・ディフィシル(C. difficile)は、CDAD症例の25%と実質的にすべての偽膜性腸炎症例の原因菌である。過去数年、バンコマイシン耐性腸球菌感染またはコロニー形成を有する患者でシー・ディフィシル(C. difficile)同時感染が存在している(J.G. Barlett, (1992):「抗生物質関連下痢」、Clinic. Infect. Dis. 15:573-581)。
【0124】
抗生物質107891 A1因子とA2因子のインビトロ生物活性
表VIIIは、抗生物質107891 A1因子とA2因子の抗微生物活性を報告する。MICは上記の微量ブロス希釈法により測定した。
【0125】
【表10】
【0126】
抗生物質107891のインビボ生物活性
免疫適格マウスまたは好中球減少マウスの急性致死感染の実験で体重23〜25gのメスのアイシーアール(ICR)マウス(ハーランイタリアエスピーエー(Harlan Italia SpA)−S. Pietroら、ナチソネ(Natisone)、イタリア)を使用した。4日と1日にシクロホスファミドの2つの腹腔内投与(200mg/kgと100mg/kg)により好中球減少を誘導した後、マウスに感染させた。
【0127】
免疫適格マウス(8匹/用量/処理群)にメチシリン耐性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SA3817)または標準物質メチシリン耐性株(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Smith ATCC19636)の臨床分離株の細菌懸濁液を腹腔内接種するか、または好中球減少マウスにグリコペプチド耐性腸球菌(エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)A533)の臨床分離株を接種することにより、感染を誘導した。0.5mlの5%細菌ムチン(ディフコ(Difco))で細菌抗原刺激(約106 細胞/マウス)を行った。未処理の動物は感染後24〜72時間以内に死亡した。抗生物質処理は、抗原刺激の10〜15分内に開始した。抗生物質107891を異なる水性調製物中で1回静脈内または皮下投与した。7日目に生存している動物の割合から50%有効用量(ED50)と95%信頼限界をスピマン−ケーバー(Spearman-Karber)法により計算した(D.J. Finney, (1952):「生物学的測定法における統計的方法」、524-530頁中の「スピマン−ケーバー(Spearman-Karber)法」、チャールズグリフィン社(Charles Griffin & Co., Ltd.)、ロンドン)。結果を以下の表IXに報告する。
【0128】
抗生物質107891は試験した最大用量200mg/kgまで毒性は無かった。
【0129】
【表11】
【0130】
調製物:
A:10% (v/v) DMSO、10%(w/v) ベータヒドロキシプロピルシクロデキストリン(シグマ(Sigma))、水中80% (v/v)の5% (v/v) グルコース
B:10% (v/v) DMSO、0.1M 水性CH3COOH中の40% (v/v) PEG400
C:水中50% (v/v) PEG400
株:
I. MSSA:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Smith819 ATCC19636
II. MRSA:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)3817、臨床分離株
III. VanA:エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)A533、臨床分離株、好中球減少マウスへ
【実施例】
【0131】
実施例
実施例1:ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の発酵法
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株をオートミール寒天スラント上で28℃で2〜3週間維持した。1つのスラントの微生物内容物を5mlの無菌水でこすり落とし、100mlの接種培地(AF/MS)(これは以下からなる(g/l):ブドウ糖 20、酵母エキス 2、ダイズミール 8、NaCl 1、および炭酸カルシウム 4)を含有する500mlの三角フラスコ中に接種した。蒸留水中で培地を調製し、pHを7.3に調整した後、121℃で20分滅菌した。接種したフラスコをロータリーシェーカー上で200rpmで28℃で培養した。4〜6日後この培養物の5%を、同じ発酵培地を含有する第2のシリーズのフラスコに接種した。72時間インキュベーション後200mlを、3リットルの同じ栄養培地を含有する4リットルのバイオリアクター中に移した。
【0132】
発酵を30℃で700rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で行った。72時間後培養物(1.5リットル)を15リットルの同じ栄養培地を含有する20リットルのバイオリアクター中に移した。発酵を30℃で500rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で48時間行い、次に生産タンクに移した。抗生物質107891の生産を、200リットルの生産培地M8(以下からなる(g/l):デンプン 20、グルコース 10、酵母エキス 2、加水分解カゼイン 4、肉エキス 2、炭酸カルシウム 3)を含有する300リットルの発酵槽中で行った。培地を脱イオン水中で調製し、pHを7.2に調整した後、121℃で25分滅菌した。冷却後発酵槽に約14リットル(7%)の前培養物を接種した。発酵槽を29℃で180rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度でヘッド圧0.36barで運転した。98時間の発酵後、発酵槽を採取した。
【0133】
全培養物ブロスを同量のメタノールで抽出後、抗生物質107891の生産を既に記載されているようにHPLCにより追跡した。抽出は室温で1時間攪拌して行った。
【0134】
実施例2:ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024の別の発酵法
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024を、100mlの増殖培地(G1)(これは以下からなる(g/l):ブドウ糖 10、麦芽糖 10、ダイズ油 10、ダイズミール 8、酵母エキス 2、炭酸カルシウム 4)を含有する500mlの三角フラスコ中に接種した。脱イオン水中で培地を調製し、pHを調整せずに121℃で20分滅菌した。接種したフラスコを、良好な増殖が観察されるまで、200rpmで28℃で120〜168時間インキュベートした。次にフラスコを使用して、3リットルの接種培地AF/MS(これは実施例1に記載のように作成される)を含有する4リットルのバイオリアクター中に移した(3%)。30℃で700rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で120時間の発酵後、15リットルの培養物を15リットルの同じ栄養培地を含有する20リットルのバイオリアクター中に移した。発酵を30℃で600rpmで攪拌して0.5vvmの通気速度で96時間行い、次に生産タンクに移した。
【0135】
抗生物質生産を、200リットルの生産培地(V6)(以下からなる(g/l):ブドウ糖 20、酵母エキス 5、肉エキス 2、加水分解カゼイン 3、ペプトン 5、NaCl 1.5)を含有する300リットルの発酵槽中で行った。培地を脱イオン水中でNaOHでpHを7.5に調整した後、121℃で20分滅菌した。
【0136】
発酵槽に14リットル(7%)の種培養物を接種し、発酵を29℃で180rpmで攪拌して100リットルの標準的空気/分(0.5vvm)で通気して行った。抗生物質107891の生産を既に記載されているようにHPLCにより追跡した。約160後発酵物を採取した。
【0137】
実施例3:抗生物質107891の回収
実施例1に記載の発酵ブロスをタンゼンシャル(tangential)ろ過システム(0.1μm 孔径の膜、コッホカルボーコール(Koch Carbo-Cor)、コッホウィルミントン(Koch Wilmington)、アメリカ合衆国)によりろ過して170リットルの上清と30リットルの濃菌糸を得た。抗生物質107891複合体はろ液(A)と菌糸(B)中に存在した。
【0138】
(A) ろ過したブロスを室温で一晩ダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(4リットル)の存在下で攪拌した。次に樹脂を回収し、10リットルのメタノール:水 4:6 (v/v)で洗浄し、まず10リットルのメタノール:水 9:1 (v/v)で、次に10リットルのメタノール:水:ブタノール 9:1:1 (v/v/v)で、バッチ的に溶出した。抗生物質107891を含有するプールした溶出画分をロータリーエバポレーターで少量に濃縮し、次に凍結乾燥して32gの原料を得た。この原料をn-ブタノール(1リットル)に溶解し、次に800mlの水で3回連続して抽出した。有機層を減圧下で油状物残渣に濃縮して、これをメタノールに溶解した。石油エーテルを加えると、5gの粗抗生物質調製物が沈殿して得られた。
【0139】
(B) 25リットルのメタノールを添加後、菌糸を含有する保持物部分を1時間攪拌し、ろ過して45リットルの菌糸抽出物を得た。次にこの溶液を水(20リットル)で希釈して、室温で一晩ダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(1リットル)とともに攪拌した。次に樹脂を回収し、2リットルのメタノール:水 40:60 (v/v)で洗浄し、3リットルのメタノール:水 85:15 (v/v)と次に2リットルのメタノール:水 90:10 (v/v)で、バッチ的に逐次溶出した。溶出した画分を黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の寒天拡散法と前記の分析HPLC法により、抗生物質107891の存在について追跡した。
抗生物質107891を含有する溶出した画分をプールし、減圧下で濃縮し、凍結乾燥して、8.1gの粗抗生物質107891を得た。
【0140】
実施例4:抗生物質107891の別の回収法
実施例2に記載の200リットルタンク発酵から採取したブロスをpH6.8にし、ブロスをタンゼンシャルろ過システム(0.1μm 孔径の膜、コッホカルボーコール(Koch Carbo-Cor))によりろ過した。透過物(180リットル)を室温で一晩2リットルのダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂(三菱化学(Mitsubishi Chemical))とともに攪拌し、次に樹脂を回収した。
【0141】
メタノール(25リットル)を、濃縮菌糸を含有するタンゼンシャルろ過システム(約20リットル)中の保持物部分に加えた。この懸濁物を1時間攪拌し、次に微量ろ過システムでろ過して約20リットルの残存保持物容量を得た。次に追加のメタノール(25リットル)を加え、上記方法を全部で5サイクル順次繰り返した。プールしたメタノール抽出物(約125リットル)を160リットルの脱ミネラル水で希釈し、室温で一晩3リットルのダイアイオン(Diaion)HP-20ポリスチレン樹脂とともに攪拌した。次に樹脂を回収し、上記方法に従ってブロス透過物を抽出するのに使用したダイアイオン(Diaion)HP-20樹脂とともにプールした。プールした樹脂を、20リットルの水:メタノール 6:4 (v/v)を有するクロマトグラフィーカラム中に洗浄した。抗生物質107891を23リットルのメタノール:50mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH3.5):n-ブタノール 9:1:1 (v/v)で溶出した。次にこの溶出液を真空下で濃縮して最終容量3リットルを得た。次に濃縮溶液をpH4.5で、水:メタノール 7:3 (v/v)で調整した2.5リットルのポリアミドCC6 0.1〜0.3μm(マチェレイ−ナーゲル(Macherey-Nagel))にのせた。カラムを水:メタノール 7:3 (v/v)、次に25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH3.5):メタノール 7:3 (v/v)で洗浄した。抗生物質を水:メタノール 3:7 (v/v)、次に1:9 (v/v)混合液で溶出した。 1:9 (v/v)比の25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH2.8):メタノールを用いて溶出を完了した。抗生物質107891を含有する溶出液をプールし、真空下で乾燥で濃縮して最終容量を1リットルにした。7M 水酸化アンモニウムを用いて濃縮溶液のpHを4から5.7にして、次に混合液を遠心分離して沈殿物を得た。この固体を水に懸濁し、凍結乾燥して、6.96gの抗生物質107891調製物を得た。
【0142】
実施例5:抗生物質107891の精製
実施例3に記載のように調製した粗抗生物質107891(3.6g)を、100gの逆相C8(EC) 40〜70μm粒子サイズ、60A孔径のIST(インターナショナルソルベントテクノロジー(International sorbent Technology)、ミッドグラモルガン(Mid-Glamorgan)、英国)の中圧クロマトグラフィーにより、B-687勾配生成機、B-684フラクションコレクター、B-685ガラスカラム 70×460mmを取り付けたブチ(Buchi)B-680中圧クロマトグラフィーシステム(ブチラボラトリウムズ−テクニク社(Buchi laboratoriums-technik AG)、フラウィル(Flawil)、スイス)を使用して精製した。樹脂はあらかじめA相:B相 8:2 (v/v)の混合液で調整し、次に20%〜60%のB相の60分の線形勾配を用いて25ml/分で60分で溶出した。
A相はアセトニトリル:20mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6) 10:90 (v/v)であり、B相はアセトニトリル:20mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH6.6) 90:10 (v/v)であった。
抗生物質107891を含有する画分をプールし、真空下で濃縮し、水から2回凍結乾燥して、430mgの精製抗生物質107891を得た。
【0143】
実施例6:分取HPLCによる抗生物質107891の精製
抗生物質107891を、ハイバープレパックトリクロソルブ(Hiber prepacked lichrosorb)RP8(7μm粒子サイズ)カラムRT250〜25mm、メルク(Merck)の分取HPLCにより、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出を使用して30ml/分流速で精製した。A相は25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であり、B相はアセトニトリルであった。
実施例5からの抗生物質107891の試料(300mg)をDMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解し、300μlをクロマトグラフィー実験で処理した。抗生物質107891は典型的には15〜16分で溶出された。抗生物質107891を含有する5回のクロマトグラフィー実験の溶出した画分をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を順次水から3回凍結乾燥して、31mgの抗生物質107891を白色粉末として得た。
【0144】
実施例7:抗生物質107891の個々のA1因子とA2因子の分離と精製
実施例5の抗生物質107891複合体からシメトリープレップ(Symmetry Prep)C18(7μmの粒子サイズ)カラム 7.8×200mm(ウォーターズ社(Waters)、ミルドフォールド(Mildfold)、アメリカ合衆国)の分取HPLCにより、2つの異なる溶出プログラムを使用してA1因子とA2因子を分離し精製した。
【0145】
A) A1因子は、B相の30%〜45%の25分の線形勾配溶出により3.5mlの流速で精製した。A相は25mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4.5):アセトニトリル 95:5 (v/v)であり、B相はアセトニトリルであった。精製した抗生物質107891複合体(15mg)を350μlのDMSO:ギ酸 95:5 (v/v)に溶解し、クロマトグラフィー実験で処理した。A1とA2因子は典型的には11〜13分の時間枠内で溶出した。次に溶出した画分をHPLCにより上記分析条件下で分析した。14回のクロマトグラフィー実験の画分(純粋な抗生物質107891 A1因子を含有する)をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を順次水から3回凍結乾燥して、15mgの純粋なA1因子を白色粉末として得た。
【0146】
B) A2因子は、100mM ギ酸アンモニウム(pH4):アセトニトリル 82.5:17.5 (v/v)を用いて7mlの流速で均一溶媒溶出により精製した。精製した抗生物質107891複合体(5mg)を250μlの酢酸:アセトニトリル:100mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH4) 50:120:80 (v/v)混合液に溶解し、クロマトグラフィー実験で処理した。A1とA2因子は典型的には9〜10分の時間枠内で溶出した。次に溶出した画分をHPLCにより上記分析条件下で分析した。20回のクロマトグラフィー実験の画分(純粋な抗生物質107891 A2因子を含有する)をプールし、真空下で濃縮した。残存溶液を水から2回凍結乾燥して、8mgの純粋なA2因子を白色粉末として得た。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】図1A(フルスキャン低分解能スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は抗生物質107891の質量スペクトルであり、m/z 1124とm/z 1116の2重プロトン化イオンを示す。
【図1B】図1A(フルスキャン低分解能スペクトル)と1B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は抗生物質107891の質量スペクトルであり、m/z 1124とm/z 1116の2重プロトン化イオンを示す。
【図2】図2は、KBrに分散した抗生物質107891のIR吸収スペクトルである。
【図3】図3は、メタノール:水に溶解した抗生物質107891のUVスペクトルである。
【図4】図4は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃で記録した1H NMRスペクトルである。
【図5】図5は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でメタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で40℃で記録した13C NMRスペクトルである。
【図6A】図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A1因子の質量スペクトルであり、m/z 1124の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図6B】図6A(フルスキャン低分解能スペクトル)と6B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A1因子の質量スペクトルであり、m/z 1124の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図7A】図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A2因子の質量スペクトルであり、m/z 1116の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図7B】図7A(フルスキャン低分解能スペクトル)と7B(ズームスキャン高分解能スペクトル)は、抗生物質107891 A2因子の質量スペクトルであり、m/z 1116の2重プロトン化イオン[M+2H]2+を示す。
【図8】図8は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、CD3CN:D2O(1:1)中で298Kで記録した抗生物質107891 A1因子の1H NMRスペクトルである。
【図9】図9は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、CD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A2因子の1H NMRスペクトルである。
【図10】図10は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でCD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A1因子の13C NMRスペクトルである。
【図11】図11は、ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計でCD3CN:D2O(1:1)混合液中で298Kで記録した抗生物質107891 A2因子の13C NMRスペクトルである。
【図12】図12は、KBrに分散した抗生物質107891 A1因子のIR吸収スペクトルである。
【図13】図13は、メタノール:H2Oに溶解した抗生物質107891 A1因子のUVスペクトルである。
【図14】図14は、KBrに分散した抗生物質107891 A2因子のIR吸収スペクトルである。
【図15】図15は、メタノール:H2Oに分散した抗生物質107891 A2因子のUVスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有する、白色粉末であるA1因子とA2因子とを含む抗生物質107891複合体:
(A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用して以下の電子噴霧条件:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:220℃;毛細管電圧:3V;注入モード 10μl/分を使用して、0.1%のトリフルオロ酢酸を有するメタノール/水 80/20 (v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図1Aと1B)は、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成に対応するそれぞれm/z=1124とm/z=1116に2つの2重プロトン化イオンを示す、
(B) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペトル(図2)は、3263; 2929; 1661; 1533; 1402; 1114; 1026 (cm-1)に吸収極大を示す、
(C) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O 80:20 (v/v)で行ったUVスペクトル(図3)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
(D) ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、内部標準物質として3.31ppmのメタノール−d4の残存シグナルを使用して、40℃で混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で記録した1H NMRスペクトル(図4)は以下のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.93d (CH3), 0.98d (CH3), 1.07t (重複CH3), 1.18t (重複CH3), 1.26s (CH3), 1.30t (重複CH3), 1.62-1.74m (CH2), 1.78d (CH3), 1.80d (CH3), 2.03m (CH2), 2.24m (CH), 2.36m (CH2), 2.72-3.8m (ペプチド性アルファCH), 3.8-5.2m (ペプチド性アルファCH), 5.53-6.08s (CH2), 5.62d (CH 2重結合), 6.42m (CH), 6.92d (CH 2重結合), 7.0-7.55m (芳香族性CH), 7.62-10.4dとm (芳香族性およびペプチド性NH)、
(E) ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で、内部標準物質としてメタノール−d4の49.15ppmの残存シグナルを使用して、40℃で混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で記録した13C-NMRスペクトル(図5)は、以下のシグナルを示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.2 (脂肪族CH3), 26.16-73 (脂肪族CH2とペプチド性アルファCH), 105-136 (芳香族性および2重結合CHと四級炭素), 164.3-176.3 (ペプチド性カルボニル)、
(F) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの変加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
G) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す、
H) モル過剰の0.01N 塩酸を含有するメトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)中の0.01N 水酸化カリウムで行った酸/塩基滴定により検出される塩基性のイオン化可能な官能基。
【請求項2】
以下を示す白色粉末である抗生物質107891のA1因子:
A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ Deca)装置でサーモフィニガン較正ミックスを使用して、以下の電子噴霧条件:噴霧電圧 4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分を使用して、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図6Aと6b)で、最も低い同位体組成に対応してm/z=1124の2重にプロトン化したイオン、
B) 電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定された抗生物質の正確な質量は、m/z 1124.36124(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2246.7±0.06の分子量に対応する、
C) CD3CN:D2O(1:1)に溶解した時、1H NMRスペクトル(図8)は600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用すると以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.89d (CH3), 0.94t (重複CH3), 1.1d (CH3), 1.13d (CH3), 1.15t (重複CH3), 149m (CH2), 1.69d (CH3), 1.75m (CH2), 2.11m (CH), 2.26m (CH), 2.5m (CH2), 2.68-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-5.0m (ペプチド性CHα), 5.45-6.17s (CH2), 5.58d (CH 2重結合), 6.36m (CH), 6.86d (CH 2重結合), 7.0-7.45m (芳香族CH)、
D) CD3CN:D2O(1:1)に溶解した時、13C-NMRスペクトル(図10)は600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用すると以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.03 (脂肪族CH3), 25.69-77.9 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.6-176.6 (ペプチド性カルボニル)、
E) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペクトル(図12)は以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3294; 3059; 2926; 1661; 1529; 1433; 1407; 1287; 1114; 1021、
F) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録したUVスペクトル(図13)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
G) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
H) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す。
【請求項3】
以下の構造式を一時的に割り当てることができる請求項2に記載の抗生物質107891 A1因子:
【化1】
。
【請求項4】
以下を示す白色粉末である抗生物質107891のA2因子:
(A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用して以下の電子噴霧条件:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分を使用して、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図7Aと7b)で、最も低い同位体組成に対応してm/z=1116の2重にプロトン化したイオン、
B) 電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定された正確な質量は、m/z 1116.36260(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2230.71±0.06の分子量に対応する、
C) CD3CN:D2O(1:1)に溶解すると1H NMRスペクトル(図9)は、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.88d (CH3), 0.94d (CH3), 1.06d (CH3), 1.14d (CH3), 148m (CH2), 1.65-1.75m (CH2), 1.67d (CH3), 2.15m (CH), 2.25m (CH), 2.5m (CH2), 2.77-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-4.9m (ペプチド性CHα), 5.45-6.14s (CH2), 5.59d (CH 2重結合), 6.34m (CH), 6.84d (CH 2重結合), 7.0-7.42m (芳香族CH)、
D) CD3CN:D2O(1:1)に溶解すると13C NMRスペクトル(図11)は、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-22.9 (脂肪族CH3), 25.65-73 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.7-176.1 (ペプチド性カルボニル)、
E) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペクトル(図14)は以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3296; 3060; 2928; 1661; 1529; 1433; 1407; 1288; 1116、
F) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録したUVスペクトル(図15)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
G) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
H) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す。
【請求項5】
以下の構造式を一時的に割り当てることができる請求項4に記載の抗生物質107891 A2因子:
【化2】
。
【請求項6】
請求項1に記載の抗生物質107891とそのA1因子とA2因子および酸とのその塩を生産する方法であって:
− 該抗生物質を産生する能力を保持するミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024またはその変種もしくは変異体を、好気的条件下で、同化可能な炭素、窒素、および無機塩源を含有する水性栄養培地中で培養し;
− 生じる抗生物質を菌糸および/またはろ過した発酵ブロスから単離し;
− 単離した抗生物質107891を精製し、および随時A1因子とA2因子をそこから分離する、ことを含む前記方法。
【請求項7】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株、または抗生物質107891を産生するその変種もしくは変異体が前培養される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6と7のいずれか1項に記載の方法であって、抗生物質107891の単離は、発酵ブロスをろ過し、ろ過した発酵ブロスから、水と非混和性の溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法よりなる群から選択される方法に従って抗生物質を回収することを特徴とする前記方法。
【請求項9】
請求項6と7のいずれか1項に記載の方法であって、抗生物質107891の単離は、発酵ブロスの上清から菌糸を分離し、菌糸を水混和性溶媒で抽出して、こうして廃菌糸の除去後に、粗抗生物質を含有する水混和性の溶液が得られ、これは別々に処理されるかまたは請求項8のろ過した発酵ブロスとともにプールして、溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法よりなる群から選択される方法により抗生物質107891を回収することを特徴とする前記方法。
【請求項10】
菌糸抽出物中の水混和性溶媒の濃度は、そこから抗生物質を回収する前に、低下させられることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ろ過された発酵ブロスは、吸収樹脂、好ましくはポリスチレン、混合ポリスチレン−ジビニルベンゼンもしくはポリアミド樹脂と接触させられ、該樹脂は極性の水混和性溶媒またはこれらの水との混合液で溶出され、こうして粗抗生物質107891を含有する溶液が得られることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
菌糸はC1-C3アルカノール、好ましくはメタノール、で抽出され、菌糸抽出物は吸収樹脂、好ましくはポリスチレン樹脂、と接触させられ、そこから、水混和性溶媒またはこれらの水との混合液で溶出され、こうして粗抗生物質107891を含有する溶液が得られることを特徴とする、請求項9と10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
粗抗生物質107891を含有する溶液はプールされ、該抗生物質107891のさらなる精製のために処理されることを特徴とする、請求項8、9、10、および12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
粗抗生物質107891を含有する溶液は濃縮され、次に凍結乾燥されて粗該抗生物質107891固体生成物を与えることを特徴とする、請求項11、12、および13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
吸収された抗生物質を含有する吸収樹脂はプールされ、その混合物は極性の水混和性溶媒または水とのこれらの混合物で溶出されることを特徴とする、請求項11と12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗生物質107891はクロマトグラフィー法、好ましくは分取HPLCまたは中圧クロマトグラフィー、により精製されることを特徴とする、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
A1因子とA2因子は分取HPLCにより精製抗生物質107891から分離されることを特徴とする、請求項6〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、および任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩から選択される抗生物質を含む医薬組成物。
【請求項19】
薬剤学的に許容される担体を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬剤として使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩。
【請求項21】
細菌感染症の治療または予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩の使用。
【請求項22】
動物成長促進物質としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその非毒性の塩の使用。
【請求項23】
深部好気的条件下で、同化可能な炭素、窒素および無機塩源の存在下で培養すると、請求項1の抗生物質を産生する能力を保持する、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株、またはその変種もしくは変異体の生物学的に純粋な培養物。
【請求項1】
以下の特徴を有する、白色粉末であるA1因子とA2因子とを含む抗生物質107891複合体:
(A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用して以下の電子噴霧条件:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:220℃;毛細管電圧:3V;注入モード 10μl/分を使用して、0.1%のトリフルオロ酢酸を有するメタノール/水 80/20 (v/v)中の0.2mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図1Aと1B)は、複合体A1因子とA2因子の最も低い同位体組成に対応するそれぞれm/z=1124とm/z=1116に2つの2重プロトン化イオンを示す、
(B) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペトル(図2)は、3263; 2929; 1661; 1533; 1402; 1114; 1026 (cm-1)に吸収極大を示す、
(C) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O 80:20 (v/v)で行ったUVスペクトル(図3)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
(D) ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で水抑制シーケンスを適用して、内部標準物質として3.31ppmのメタノール−d4の残存シグナルを使用して、40℃で混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で記録した1H NMRスペクトル(図4)は以下のシグナルを示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.93d (CH3), 0.98d (CH3), 1.07t (重複CH3), 1.18t (重複CH3), 1.26s (CH3), 1.30t (重複CH3), 1.62-1.74m (CH2), 1.78d (CH3), 1.80d (CH3), 2.03m (CH2), 2.24m (CH), 2.36m (CH2), 2.72-3.8m (ペプチド性アルファCH), 3.8-5.2m (ペプチド性アルファCH), 5.53-6.08s (CH2), 5.62d (CH 2重結合), 6.42m (CH), 6.92d (CH 2重結合), 7.0-7.55m (芳香族性CH), 7.62-10.4dとm (芳香族性およびペプチド性NH)、
(E) ブルーカー(Bruker)AMX600分光光度計で、内部標準物質としてメタノール−d4の49.15ppmの残存シグナルを使用して、40℃で混合物メタノール−d4:H2O(pH4.3 HCl)40:10 (v/v)中で記録した13C-NMRスペクトル(図5)は、以下のシグナルを示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.2 (脂肪族CH3), 26.16-73 (脂肪族CH2とペプチド性アルファCH), 105-136 (芳香族性および2重結合CHと四級炭素), 164.3-176.3 (ペプチド性カルボニル)、
(F) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの変加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
G) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す、
H) モル過剰の0.01N 塩酸を含有するメトキシエタノール(MCS):H2O 12:3 (v/v)中の0.01N 水酸化カリウムで行った酸/塩基滴定により検出される塩基性のイオン化可能な官能基。
【請求項2】
以下を示す白色粉末である抗生物質107891のA1因子:
A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ Deca)装置でサーモフィニガン較正ミックスを使用して、以下の電子噴霧条件:噴霧電圧 4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分を使用して、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図6Aと6b)で、最も低い同位体組成に対応してm/z=1124の2重にプロトン化したイオン、
B) 電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定された抗生物質の正確な質量は、m/z 1124.36124(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2246.7±0.06の分子量に対応する、
C) CD3CN:D2O(1:1)に溶解した時、1H NMRスペクトル(図8)は600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用すると以下の群のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.89d (CH3), 0.94t (重複CH3), 1.1d (CH3), 1.13d (CH3), 1.15t (重複CH3), 149m (CH2), 1.69d (CH3), 1.75m (CH2), 2.11m (CH), 2.26m (CH), 2.5m (CH2), 2.68-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-5.0m (ペプチド性CHα), 5.45-6.17s (CH2), 5.58d (CH 2重結合), 6.36m (CH), 6.86d (CH 2重結合), 7.0-7.45m (芳香族CH)、
D) CD3CN:D2O(1:1)に溶解した時、13C-NMRスペクトル(図10)は600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用すると以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-23.03 (脂肪族CH3), 25.69-77.9 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.6-176.6 (ペプチド性カルボニル)、
E) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペクトル(図12)は以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3294; 3059; 2926; 1661; 1529; 1433; 1407; 1287; 1114; 1021、
F) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録したUVスペクトル(図13)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
G) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
H) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す。
【請求項3】
以下の構造式を一時的に割り当てることができる請求項2に記載の抗生物質107891 A1因子:
【化1】
。
【請求項4】
以下を示す白色粉末である抗生物質107891のA2因子:
(A) 電子噴霧源を取り付けたサーモフィニガンLCQデカ(Thermofinnigan LCQ deca)装置でサーモフィニガン(Thermofinnigan)較正ミックスを使用して以下の電子噴霧条件:噴霧電圧:4.7kV;毛細管温度:250℃;毛細管電圧:8V;注入モード 10μl/分を使用して、酢酸0.5%を有するアセトニトリル:水 50:50 (v/v)中の0.1mg/ml溶液から記録した質量スペクトル(図7Aと7b)で、最も低い同位体組成に対応してm/z=1116の2重にプロトン化したイオン、
B) 電子噴霧源を取り付けたブルーカーダルトニクスアペックス(Bruker Daltonics APEX)II、4.7テスラ(Tesla)分光光度計を使用して測定された正確な質量は、m/z 1116.36260(正確度30ppm)で[M+2H]2+から計算された単一同位体質量 2230.71±0.06の分子量に対応する、
C) CD3CN:D2O(1:1)に溶解すると1H NMRスペクトル(図9)は、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.94ppm)として使用して以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm、多重性;(帰属)]:0.84d (CH3), 0.88d (CH3), 0.94d (CH3), 1.06d (CH3), 1.14d (CH3), 148m (CH2), 1.65-1.75m (CH2), 1.67d (CH3), 2.15m (CH), 2.25m (CH), 2.5m (CH2), 2.77-3.8m (ペプチド性CHβ), 3.8-4.9m (ペプチド性CHα), 5.45-6.14s (CH2), 5.59d (CH 2重結合), 6.34m (CH), 6.84d (CH 2重結合), 7.0-7.42m (芳香族CH)、
D) CD3CN:D2O(1:1)に溶解すると13C NMRスペクトル(図11)は、600MHzでCD3CNを内部標準物質(1.39ppm)として使用して以下のシグナル(ppm)を示す[δ=ppm;(帰属)]:13.6-22.9 (脂肪族CH3), 25.65-73 (脂肪族CH2とペプチド性CHα), 105-137.3 (芳香族および2重結合CHおよび4級炭素), 165.7-176.1 (ペプチド性カルボニル)、
E) ブルーカー(Bruker)FT-IR分光光度計モデルIFS48を用いてKBr中で記録した赤外スペクトル(図14)は以下(cm-1)で吸収極大を示す: 3296; 3060; 2928; 1661; 1529; 1433; 1407; 1288; 1116、
F) パーキンエルマー(Perkin Elmer)分光光度計ラムダ(Lambda)16を用いてメタノール/H2O(80:20比)で記録したUVスペクトル(図15)は、226と267nmに2つのショルダーを示す、
G) 6N HCl(105℃、24時間)中の酸加水分解物は、6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシインイミジルカルバメートで誘導体化後に、他の未同定のピークとともに以下のアミノ酸の存在を示す:ランチオニン、メチルランチオニン、グリシン、プロリン、バリン、アスパラギン酸(アスパラギンの加水分解産物)、フェニルアラニン、およびロイシン、
H) 0.2% (w/v)の3-(2-アミノエチル)インドールを触媒として含有する4N メタンスルホン酸の酸加水分解物(115℃、16時間)は、5-クロロトリプトファンの存在を示す。
【請求項5】
以下の構造式を一時的に割り当てることができる請求項4に記載の抗生物質107891 A2因子:
【化2】
。
【請求項6】
請求項1に記載の抗生物質107891とそのA1因子とA2因子および酸とのその塩を生産する方法であって:
− 該抗生物質を産生する能力を保持するミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024またはその変種もしくは変異体を、好気的条件下で、同化可能な炭素、窒素、および無機塩源を含有する水性栄養培地中で培養し;
− 生じる抗生物質を菌糸および/またはろ過した発酵ブロスから単離し;
− 単離した抗生物質107891を精製し、および随時A1因子とA2因子をそこから分離する、ことを含む前記方法。
【請求項7】
ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株、または抗生物質107891を産生するその変種もしくは変異体が前培養される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6と7のいずれか1項に記載の方法であって、抗生物質107891の単離は、発酵ブロスをろ過し、ろ過した発酵ブロスから、水と非混和性の溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法よりなる群から選択される方法に従って抗生物質を回収することを特徴とする前記方法。
【請求項9】
請求項6と7のいずれか1項に記載の方法であって、抗生物質107891の単離は、発酵ブロスの上清から菌糸を分離し、菌糸を水混和性溶媒で抽出して、こうして廃菌糸の除去後に、粗抗生物質を含有する水混和性の溶液が得られ、これは別々に処理されるかまたは請求項8のろ過した発酵ブロスとともにプールして、溶媒による抽出、非溶媒を加えてまたは溶液のpHを変化させて沈降、吸収クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子排除クロマトグラフィーなど、または該方法の2つ以上の組合せを含む方法よりなる群から選択される方法により抗生物質107891を回収することを特徴とする前記方法。
【請求項10】
菌糸抽出物中の水混和性溶媒の濃度は、そこから抗生物質を回収する前に、低下させられることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ろ過された発酵ブロスは、吸収樹脂、好ましくはポリスチレン、混合ポリスチレン−ジビニルベンゼンもしくはポリアミド樹脂と接触させられ、該樹脂は極性の水混和性溶媒またはこれらの水との混合液で溶出され、こうして粗抗生物質107891を含有する溶液が得られることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
菌糸はC1-C3アルカノール、好ましくはメタノール、で抽出され、菌糸抽出物は吸収樹脂、好ましくはポリスチレン樹脂、と接触させられ、そこから、水混和性溶媒またはこれらの水との混合液で溶出され、こうして粗抗生物質107891を含有する溶液が得られることを特徴とする、請求項9と10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
粗抗生物質107891を含有する溶液はプールされ、該抗生物質107891のさらなる精製のために処理されることを特徴とする、請求項8、9、10、および12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
粗抗生物質107891を含有する溶液は濃縮され、次に凍結乾燥されて粗該抗生物質107891固体生成物を与えることを特徴とする、請求項11、12、および13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
吸収された抗生物質を含有する吸収樹脂はプールされ、その混合物は極性の水混和性溶媒または水とのこれらの混合物で溶出されることを特徴とする、請求項11と12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗生物質107891はクロマトグラフィー法、好ましくは分取HPLCまたは中圧クロマトグラフィー、により精製されることを特徴とする、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
A1因子とA2因子は分取HPLCにより精製抗生物質107891から分離されることを特徴とする、請求項6〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、および任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩から選択される抗生物質を含む医薬組成物。
【請求項19】
薬剤学的に許容される担体を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
薬剤として使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩。
【請求項21】
細菌感染症の治療または予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその薬剤学的に許容される塩の使用。
【請求項22】
動物成長促進物質としての、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗生物質107891、そのA1因子、そのA2因子、または任意の比率の該因子の混合物、または酸とのその非毒性の塩の使用。
【請求項23】
深部好気的条件下で、同化可能な炭素、窒素および無機塩源の存在下で培養すると、請求項1の抗生物質を産生する能力を保持する、ミクロビスポラ(Microbispora)種ATCC PTA-5024株、またはその変種もしくは変異体の生物学的に純粋な培養物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−525479(P2007−525479A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520724(P2006−520724)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007658
【国際公開番号】WO2005/014628
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504464380)ビキュロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VICURON PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007658
【国際公開番号】WO2005/014628
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504464380)ビキュロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VICURON PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】
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