説明

抗癌治療法

有効治療量のドセタキセルを有効治療量のET-743との組合せで投与する工程を含む、癌に対して人体を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容が本明細書に参考として組み込まれる2006年5月12日出願の米国60/800510から優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、癌の治療法および、具体的にはエクテナサイジン743(ET-743)を他の薬との組合せで使用するヒトの癌の有効な治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、身体の一部にある細胞が制御を外れて増殖し始める際に発症する。多種類の癌があるが、それらはすべて異常細胞の制御を外れたな増殖のために始まる。癌細胞は、近くの組織に浸潤でき、かつ血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分に拡散できる。いくつかの主な型の癌がある。癌腫は、皮内または内部の臓器を区切るもしくは覆う組織内に生じる癌である。臓器および血管の内層を含む身体の内部および外部の表面を覆う上皮細胞は、癌腫を生じる場合がある。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管または他の結合組織もしくは支持組織に生じる癌である。白血病は、骨髄などの血液形成組織において始まり、多数の異常血液細胞の産生および血流への流入を生じる癌である。リンパ腫および多種の骨髄腫は、免疫系の細胞において生じる癌である。
【0004】
追加的に癌は、浸潤的であり、新たな部位に転移する傾向がある。それは、周囲の組織に直接拡散し、かつリンパ系および循環系を通じても播種できる。
【0005】
局所的な疾病に対する手術および放射線、ならびに化学療法を含む多くの治療法が、癌に対して利用できる。しかし、多くの癌の型に対して利用できる治療法の有効性は、限定的であり、臨床的利益を示す新規の改善された形態の治療法が必要とされている。これは、進行したおよび/または転移性の疾病を呈している患者、ならびに抵抗性の獲得のためまたは付随する毒性による治療投与における制限のために有効でなくなっているかまたは許容できなくなっている、確立された治療法で既に治療された後に、進行性の疾病を再発している患者について特にあてはまる。
【0006】
1950年代から、著しい進歩が癌の化学療法管理においてなされている。不幸にも、全癌患者の50%超は、最初の治療法に反応しないかまたは治療への最初の反応の後に再発を経験し、最終的には進行性で転移性の疾病で死亡する。したがって、新たな抗癌剤の設計および発見の継続的遂行は、極めて重要である。伝統的な形態における化学療法は、DNA、RNAおよびタンパク質の生合成を含む一般的な細胞代謝過程を標的にすることによって急速に増殖している癌細胞を殺すことに主に焦点をおいている。
【0007】
化学療法薬は、それらがどの様に癌細胞内の特定の化学物質に影響するか、どの細胞活性または過程を薬剤が妨害するか、および細胞周期のどの具体的な時期に薬剤が影響するかに基づいていくつかの群に分けられる。最も一般的に使用される型の化学療法薬は:DNAアルキル化薬(シクロホスファミド、イホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、ダカルバジンなど)、代謝拮抗物質(5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン)、分裂阻害剤(パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど)、アントラサイクリン類(ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンなど)、トポイソメラーゼII阻害剤(トポテカン、イリノテカン、エトポシド、テニポシドなど)、ホルモン療法(タモキシフェン、フルタミドなど)を含む。理想的な抗腫瘍薬は、非癌細胞に対するその毒性と比較して広い係数を有し、癌細胞を選択的に殺すであろうし、かつそれは、長期間の薬への暴露の後であっても癌細胞に対するその有効性を維持するであろう。不幸にも、これらの薬剤での現在の化学療法は、理想的なプロファイルを有していない。ほとんどは、非常に狭い治療係数を有しており、加えて、わずかに致死量より低い濃度の化学療法剤にさらした癌性細胞は、そのような薬剤への抵抗性、およびいくつかの他の抗腫瘍薬剤に対する交差抵抗性をしばしば発達させる場合がある。
【0008】
エクテナサイジン743(ET-743)は、最初に海生尾索類(エクテナサイディア・タービナタ(Ecteinascidia turbinate))から単離されたテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであり、以下の構造を有する:
【0009】
【化1】

【0010】
ET-743の概説、その化学、作用機序ならびに前臨床および臨床開発は、Kesteren、Ch. Vanら、2003年、Anti-Cancer Drugs、14(7)、487〜502頁「Yondelis(trabectedin、ET-743):the development of an anticancer agent of marine origin」およびその参考文献に見出すことができる。
【0011】
ET-743は、例えば黒色腫、卵巣癌腫および乳癌腫を含む様々なヒトの腫瘍のアシミックマウスにおいて増殖させた異種移植片に対して強力な抗癌活性を有している。
【0012】
ET-743の有望な反応が、肉腫、乳癌腫および卵巣癌腫を有する患者において観察されている。したがって本新薬は、様々な新生物疾患を有する癌患者におけるいくつかの第II相および第III相臨床試験において現在精力的に研究されている。
【0013】
単独でまたは他の薬との組合せでの、癌に対する人体の治療のためのET-743の使用についてのさらなる詳細は、その全体が参考として本明細書に組み込まれるWO 00 69441において示されている。
【0014】
異なる作用機序を有する薬を使用する併用療法は、治療される腫瘍による耐性の発達の予防を助ける認められた治療方法である。他の抗癌剤との組合せにおけるET-743のin vitro活性が研究されており、例えば、本明細書に参考としてその全体が組み込まれるWO 02 36135を参照されたい。
【0015】
ドセタキセルは、タキソイド族に属する抗新生物剤である。それは、植物イチイの再生可能な針葉生物資源から抽出される前駆体から開始する半合成によって調製できる。ドセタキセルの化学名は、5β-20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタキス-11-エン-9-オン 4-アセテート-2-ベンゾエート三水和物を有する(2R,3S)-N-カルボキシ-3-フェニルイソセリン,N-tert-ブチルエステル,13-エステルである。ドセタキセルは、以下の構造式を有する:
【0016】
【化2】

【0017】
本抗新生物剤は、有糸分裂および分裂間期細胞機能に不可欠である細胞内の微小管網を破壊することによって作用する。ドセタキセルは、遊離のチューブリンに結合し、安定な微小管へのチューブリンの会合を促進し、同時にそれらの解離を阻害する。これは、正常な機能を有さない微小管束の産生および微小管の安定化を導き、細胞において有糸分裂の阻害を生じる。それは、先行する化学療法の不調後の局所的に進行したまたは転移した乳癌および非小細胞肺癌を有する患者の治療に適用される。
【0018】
Barrera H.らは、in vitroアッセイにおける肺腫瘍および乳房腫瘍細胞系に対するET-743およびドセタキセルの顕著な追加的相互作用を報告した(Proceedings of the American Association for Cancer Research、Volume 40、1999年3月を参照されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】各用量レベルでの治療期間を示すグラフである。
【図2】進行した悪性疾患を有する患者における同時投与後のトラベクテジンおよびドセタキセルの薬物動態学的パラメーターを示すグラフである。
【図3】進行した悪性疾患を有する患者における同時投与後のトラベクテジンおよびドセタキセルの薬物動態学的パラメーターを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ET-743は、以下の構造を有する天然化合物である:
【0027】
【化3】

【0028】
用語「ET-743」は、本明細書において、任意の薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、水和物、または、患者への投与において本明細書に記載の化合物を(直接的にもしくは間接的に)提供できる任意の他の化合物を包含している。しかし、薬学的に許容されない塩も、それらが薬学的に許容される塩の調製において有用であり得ることから本発明の範囲の中に入ることは理解されるであろう。塩およびプロドラッグならびに誘導体の調製は、当分野において周知の方法によって実施され得る。本発明による使用のためのET-743は、入手可能な基準物質として記載の通りエクテナサイディア・タービナタ(Ecteinascidia turbinata)からの単離および精製によって天然物として得られる。別法として、ET-743は、半合成または合成過程によって調製でき、例えば、両方とも本明細書に参考として組み込まれるWO 00 69862、WO 01 87895を参照されたい。
【0029】
ET-743は、ET-743および、治療的使用のための適切な製剤中、具体的にはショ糖および適切なpHに緩衝するリン酸塩を含有する製剤中の賦形剤からなる滅菌済み凍結乾燥物として供給および保存され得る。他の製剤において、滅菌済み凍結乾燥物の形態でのET-743は、マンニトールおよび適切なpHに緩衝するリン酸塩と共に提供される。ET-743製剤についてのさらなる説明は、その全体が本明細書に参考として組み込まれるWO 2006 046079において提供される。
【0030】
周期的投薬手順を使用するET-743とドセタキセルとの組合せは、ヒトにおける抗腫瘍効力の増大を導き得ることが、驚くべきことに見出されている。抗腫瘍効力の増大は、ET-743およびドセタキセルを単独で使用する治療との比較においてである。加えて、ドセタキセルとET-743との組合せは、長期間、両方の薬が最高または最高付近の治療量で投与され得る際に、ある程度十分に許容されることが見出されている。単独または組合せでのET-743の投与量、スケジュールおよび投与に関するさらなる情報は、その全体が本明細書に参考として組み込まれるWO 00 69441、WO 02 36135、WO 03 039571、WO 2004 105761、WO 2005 039584、WO 2005 049031、WO 2005 049030、WO 2005 049029およびPCT/GB2005/050189において提供される。
【0031】
一態様において、本発明は、ドセタキセルと共にET-743を採用する併用療法による癌に対する人体の有効な治療のための医薬の調製におけるET-743の使用を対象とする。
【0032】
他の態様において、本発明は、ET-743と共にドセタキセルを採用する併用療法による癌に対する人体の有効な治療のための医薬の調製におけるドセタキセルの使用を対象とする。
【0033】
本明細書全体を通じて使用される用語「組合せ」は、同一のまたは別々の医薬製剤中での、同時または異なる時点での、治療薬の投与を包含することを意味する。
【0034】
さらなる態様において本発明は、有効治療量のET-743を有効治療量のドセタキセルとの組合せで投与する工程を含む、癌に対して人体を治療する方法を対象とする。
【0035】
本発明は、有効治療量のドセタキセルを有効治療量のET-743との組合せで投与する工程を含む、癌に対して人体を治療する方法も提供する。
【0036】
他の態様において、本発明は、少なくとも1サイクル分の用量単位でのET-743の供給物ならびに投薬スケジュールに従ってET-743を投与するための説明書を含む、ET-743をドセタキセルとの組合せで投与するための医療用キットであって、用量単位が定義された治療のために適切な量のET-743および薬学的に許容される担体を含有する医療用キットを対象とする。
【0037】
他の態様において、本発明は、少なくとも1サイクル分の用量単位でのドセタキセルの供給物ならびに投薬スケジュールに従ってドセタキセルを投与するための説明書を含む、ドセタキセルをET-743との組合せで投与するための医薬用キットであって、用量単位が定義された治療のために適切な量のドセタキセルおよび薬学的に許容される担体を含有する医療用キットを対象とする。
【0038】
他の態様において、本発明は、少なくとも1サイクル分の用量単位でのET-743の供給物ならびに投薬スケジュールに従ってET-743を投与するための説明書を含む、ET-743をドセタキセルとの組合せで投与するための医薬用キットであって、用量単位が定義された治療のために適切な量のET-743および薬学的に許容される担体を含有する医療用キットを対象とする。キットは、少なくとも1サイクル分の用量単位でのドセタキセルの供給物ならびに投薬スケジュールに従ってドセタキセルを投与するための説明書も含み、ここで用量単位は、定義された治療のための適切な量のドセタキセルおよび薬学的に許容される担体を含有する。
【0039】
本方法の組成物の投与は、好ましくは静脈注射による。投与は、最大耐量(MTD)以内で持続的または周期的に実施され得る。明細書全体を通じて、MTDは、用量レベルコホートの三分の一未満の対象が用量制限毒性(DLT)を経験する最高の用量に関するものとする。
【0040】
ET-743およびドセタキセルは、同時または異なる時点での投与のための別々の医薬として提供され得る。好ましくは、ET-743およびドセタキセルは、異なる時点での投与のための別々の医薬として提供される。別々に異なる時点で投与される場合、ET-743またはドセタキセルのいずれも最初に投与され得る;しかし、ドセタキセルに続いてET-743を投与することは、好ましい。ET-743の投与とドセタキセルの投与とを1時間離すことは、好ましい。
【0041】
典型的な、注入時間は72時間まで、より好ましくは1〜24時間、最も好ましくは1〜6時間である。ドセタキセルおよびET-743が異なる時点での投与のための別々の医薬として提供される場合は、それぞれについての注入時間は、異なって良い。
【0042】
ドセタキセルについての注入時間は、一般的に6時間まで、より好ましくは1〜3時間、最も好ましくは約1時間である。ET-743についての注入時間は、一般的に24時間まで、より好ましくは約1、約3または約24時間である。病院に一晩入院することなく実施される治療を可能にする短い注入時間は、特に望ましい。
【0043】
本発明の本態様の組成物の正確な用量が、具体的な製剤、適用様式および具体的な位置、宿主および治療される腫瘍に応じて変化することは理解されるであろう。年齢、体重、性別、食餌、投与の時期、排出の速度、宿主の状態、薬の組合せ、反応感受性および疾病の重症度などの他の要因が考慮に入れられるべきである。すべての用量は、身体表面積の平方メートル(m2)当たりのミリグラム数(mg)で表される。本発明の本方法におけるドセタキセルおよびET-743は組合せで使用されることから、それぞれの用量は最適な臨床反応を提供するように調整される。
【0044】
本発明の本方法において、ドセタキセルの120mg/m2まで、より好ましくは50〜100mg/m2、最も好ましくは、60〜75mg/m2の用量が使用される。約60mg/m2、約65mg/m2、約70mg/m2または約75mg/m2の用量は、特に好ましく、約60mg/m2または約75mg/m2は、最も好ましい。
【0045】
ET-743の1.5mg/m2まで、より好ましくは0.4〜1.3mg/m2、さらに好ましくは1.1〜1.3mg/m2の用量が使用される。約0.4mg/m2、約0.5mg/m2、約0.6mg/m2、約0.7mg/m2、約0.8mg/m2、約0.9mg/m2、約1.0mg/m2、約1.1mg/m2、約1.2mg/m2または約1.3mg/m2の用量は、特に好ましく、約1.1mg/m2または約1.3mg/m2は、最も好ましい。
【0046】
本発明の例示的実施形態は、本明細書における所与の範囲内であり、それぞれの用量範囲内でそれぞれ独立的に選択されるドセタキセルおよびET-743の用量で提供される。本発明の例示的実施形態は、ドセタキセル約60mg/m2およびET-743約1.1mg/m2、ならびにドセタキセル約60mg/m2およびET-743約1.3mg/m2の用量で提供される。本発明の追加的な例示的実施形態は、ドセタキセル約75mg/m2およびET-743約1.3mg/m2の用量で提供される。
【0047】
本発明の本態様の好ましい実施形態により、ドセタキセル60〜75mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743も1.3mg/m2まで静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0048】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル60〜75mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743 0.4〜1.3mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0049】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル60〜75mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743 1.1〜1.3mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0050】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル約60mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743約1.1mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0051】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル約60mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743約1.3mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0052】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル約75mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743約1.1mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0053】
本発明の本態様のさらなる好ましい実施形態により、ドセタキセル約75mg/m2が静脈内に投与され、続いてET-743 約1.3mg/m2も静脈内に投与される。ドセタキセルは、好ましくは6時間まで、より好ましくは1〜2時間、最も好ましくは約1時間の注入時間をかけて投与される。ET-743は、好ましくは約1、約2、約3または約24時間の注入時間をかけて投与され、最も好ましくは、ET-743は約3時間かけて投与される。
【0054】
組合せの投与は、本発明の方法によるサイクルで実施される。ドセタキセルおよびET-743の静脈内注入は、典型的には3週間ごとに患者に与えられ、各サイクルにおいて患者が回復する静止期を許可する。各サイクルの好ましい期間は、典型的には3から4週間である;必要に応じて複数回のサイクルが与えられ得る。投薬遅延および/または用量低減ならびにスケジュール調整は、治療に対する個々の患者の許容性に依存して必要に応じて実施される。
【0055】
具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル120mg/m2までは、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743 1.5mg/m2までの注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0056】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル50〜100mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約0.4〜1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0057】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル50〜100mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1〜1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0058】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル60〜75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約0.4〜1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0059】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル60〜75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1〜1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0060】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約60 mg/m2または約75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1 mg/m2または約1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0061】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約60 mg/m2または約75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0062】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約60 mg/m2または約75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1 mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0063】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約60 mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1 mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0064】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.1 mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0065】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約60 mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0066】
本発明のさらなる具体的な好ましい実施形態により、3週間ごとに、ドセタキセル約75mg/m2が、注入時間約1時間をかけて患者に投与され、約1時間の休息の後、ET-743約1.3mg/m2の注入時間約3時間をかけての投与が続く。
【0067】
上記用量の実施形態は、4週間の注入スケジュールにも応用できる。
【0068】
好ましい本実施形態において使用される投薬療法による投薬療法を使用することによって、両方の薬が最高または最高付近の治療量で長期間投与される場合に、組合せが十分に許容されることが見出されている。
【0069】
前投薬および支持的投薬を与え得る。組み込まれたKesterenによる文献において言及された通り、ET-743とデキサメタゾンとの組合せは、肝毒性の予防において役割を有することから、予想外の利益を与える。したがって、典型的にはET-743注入の時期付近で、デキサメタゾンを患者に投与することは、好ましい。例えば、ET-743投与開始の1日前にデキサメタゾンの投与を始め、ET-743投与期間中を通じてデキサメタゾンの投与を継続し、ET-743投与が完了した1日以上後に終了することは好ましい。デキサメタゾンの投与は、例えばET-743の投与に1日または複数日前からまたは続いて延長し得る。同様に、ドセタキセルについての前投薬としてデキサメタゾンを投与することも可能である。さらなる選択は、ドセタキセルおよび/またはET-743についての支持的投薬としてのフィルグラスチム(G-CSF)、およびET-743についての前投薬または支持的投薬としての5-HT3アンタゴニストの投与を含む。支持的投薬としてのデキサメタゾンおよびG-CSFの両方の前投与は、本発明の方法において特に好ましい。
【0070】
腫瘍の型および疾病の進行段階に依存して、本発明の治療法は腫瘍の後退の促進、腫瘍増殖の停止および/または転移の予防において有用である。詳細には、本発明の方法は、ヒトの患者、特に再発しているかまたは先行する化学療法に抵抗性である患者に適している。一次治療も想定されている。
【0071】
好ましくは、併用療法は、肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、膵臓癌、胃腺癌、結腸直腸癌、中皮腫、腎臓癌、子宮内膜癌、頭頸部癌腫、前立腺癌ならびに肺癌(NSCLCおよびSCLC)の治療のために上記スケジュールおよび用量に従って使用される。最も好ましくは、患者は肉腫、特に軟部組織肉腫を有する患者である。卵巣癌および乳癌も、併用療法に好ましく適している。
【0072】
ET-743およびドセタキセルが本発明の方法による組合せで投与される場合、両化学療法剤は、それらが単剤として投与されているかのように、同じ最高または最高付近の用量で投与できることが驚くべきことに確認されている。驚くべきことに、組み合わせた場合のこれら2種の薬剤の毒性は、各薬剤の最高治療量の使用を妨げない。したがって、ET-743が単剤として投与される場合に投与されるのと同じET-743の最高用量、すなわち21日ごとに3時間かけての1.3mg/m2を、単剤として投与される場合に臨床診療で使用されるドセタキセルの最高用量、すなわち21日ごとに1時間かけての60〜100mg/m2と共に投与できる。
【0073】
したがって、他の態様において本発明は、ドセタキセルとの組合せで有効治療量のET-743を投与する工程を含む、癌に対する人体の治療におけるET-743の耐用量を最大化するための方法を対象とする。
【0074】
実施例1は、ドセタキセル75mg/m2または60mg/m2との組合せにおけるET-743のMTDを評価するための試験の結果を第I相臨床試験の結果と共に示す。
【0075】
したがって本発明は、治療方法、癌の治療のための組成物の調製における化合物の使用および関連する実施形態を提供する。本発明は、治療方法における使用のための本発明の組成物にも及ぶ。
【0076】
本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物を活性成分として含有し、薬学的に許容される担体を含む医薬調製物、ならびにそれらの調製のための過程にも関する。
【0077】
他の態様において、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための、有効治療量のET-743またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための、有効治療量のドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0079】
追加的に、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための、有効治療量のET-743またはその薬学的に許容される塩、有効治療量のドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0080】
他の態様において、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための組成物の調製における、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0081】
関連する態様において、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための組成物の調製における、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義する過程および方法における使用のための組成物の調製における、ET-743またはその薬学的に許容されるその塩およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0083】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法において、癌の治療のための医薬の製造のための、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0084】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法において、癌の治療のための医薬の製造のための、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0085】
関連する態様において、本発明は、癌の治療のための医薬の製造のためのドセタキセルまたはその薬学的に許容されるその塩との組合せにおける、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0086】
他の態様において、本発明は、癌の治療のための、ドセタキセルとの併用療法における、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0087】
関連する態様において、本発明は、癌の治療のための、ET-743との併用療法における、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0088】
他の態様において、本発明は、癌の治療のための、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩との組合せにおける、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0089】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法における、医薬としての、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0090】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法における、医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0091】
他の態様において、本発明は、医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩との組合せにおける、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0092】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法における、癌の治療のための医薬としての、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0093】
関連する態様において、本発明は、ET-743との組合せにおける、癌の治療のための医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0094】
他の態様において、本発明は、癌の治療のための医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩との組合せでの、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0095】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法における、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬としての、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0096】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法における、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0097】
他の態様において、本発明は、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬としての、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩との併用療法における、本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬としての、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0098】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法における、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬の製造のための、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0099】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法における、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬の製造のための、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0100】
他の態様において、本発明は、癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される医薬の製造のための、ET-743またはその薬学的に許容される塩およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0101】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法における、ET-743の1つもしくは複数の用量単位、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の製剤であって、前記用量単位が癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される製剤をさらに提供する。
【0102】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法における、ドセタキセルの1つもしくは複数の用量単位、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の製剤であって、前記用量単位が癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される製剤をさらに提供する。
【0103】
他の態様において、本発明は、ET-743の1つもしくは複数の用量単位、その薬学的に許容可能な塩、またはその医薬組成物の製剤およびドセタキセルの1つもしくは複数の用量単位、その薬学的に許容可能な塩、またはその医薬組成物の製剤であって、前記用量単位が癌の治療のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される製剤をさらに提供する。
【0104】
他の態様において、本発明は、ドセタキセルとの併用療法において、本明細書において定義する過程および方法における使用のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される組成物の調製における、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0105】
関連する態様において、本発明は、ET-743との併用療法において、本明細書において定義する過程および方法における使用のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される組成物の調製における、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用をさらに提供する。
【0106】
他の態様において、本発明は、ET-743またはその薬学的に許容される塩の、組成物の調製における使用およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の、組成物の調製における使用を提供し、どちらも本明細書において定義の過程および方法における使用のために本明細書において定義する用量および/またはスケジュールにおいて提供されるために処方される。
【0107】
他の態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールのために具体的に構成される、ET-743またはその薬学的に許容される塩の医薬、用量単位、製剤もしくは組成物をさらに提供し、ET-743はドセタキセルとの併用療法において与えられる。この具体的な構成は、最終的な医薬の調製過程において実施され、患者を治療する際に医師によって行われる行為の一部ではない。
【0108】
関連する態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールに具体的に構成される、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の医薬、用量単位、製剤もしくは組成物をさらに提供し、ドセタキセルはET-743との併用療法において与えられる。この具体的な構成は、最終的な医薬の調製過程において実施され、患者を治療する際に医師によって行われる行為の一部ではない。
【0109】
他の態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールに具体的に構成される、ET-743またはその薬学的に許容される塩の医薬、用量単位、製剤もしくは組成物を、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールに具体的に構成される、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の医薬、用量単位、製剤もしくは組成物と共にさらに提供する。この具体的な構成は、最終的な医薬の調製過程において実施され、患者を治療する際に医師によって行われる行為の一部ではない。
【0110】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与に具体的に採用される、ET-743またはその薬学的に許容される塩を含み、ET-743がドセタキセルとの併用療法において与えられる用量単位、医薬、製剤もしくは組成物を提供する。
【0111】
関連する態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与に具体的に採用される、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含み、ドセタキセルがET-743との併用療法において与えられる用量単位、医薬、製剤もしくは組成物を提供する。
【0112】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与に具体的に採用される、ET-743またはその薬学的に許容される塩を含む用量単位、医薬、製剤、または組成物およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩を含む用量単位、医薬、製剤または組成物を提供する。
【0113】
さらなる態様において、本発明は、癌の治療のための医薬における、ET-743またはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成され、ET-743がドセタキセルとの併用療法において与えられる使用を提供する。
【0114】
関連する態様において、本発明は、癌の治療のための医薬における、ドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成され、ドセタキセルがET-743との併用療法において与えられる使用を提供する。
【0115】
さらなる態様において、本発明は、癌の治療のための医薬における、ET-743またはその薬学的に許容される塩およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成される使用を提供する。
【0116】
さらなる態様において、本発明は、癌の治療のための医薬の製造のためのET-743またはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成され、ET-743がドセタキセルとの併用療法において与えられる使用を提供する。
【0117】
関連する態様において、本発明は、癌の治療のための医薬の製造のためのドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成され、ドセタキセルがET-743との併用療法において与えられる使用を提供する。
【0118】
さらなる態様において、本発明は、癌の治療のための医薬の製造のためのET-743またはその薬学的に許容される塩およびドセタキセルまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、医薬が本明細書において所与の用量および/またはスケジュールでの投与のために構成される使用を提供する。
【0119】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。それは、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0120】
さらに簡明な記載を提供するために、本明細書において示されるいくつかの定量的表現は、用語「約(about)」によって制限されない。用語「約(about)」が明白に使用されているか否かにかかわらず、本明細書において示される全ての量は、実際に示された値を指すことを意味し、それが、そのような示された値について実験条件および/または測定条件による同等物および近似を含む当分野の通常の技術に基づいて合理的に推測されるそのような示された値の近似を指すことも意味していることは理解される。
【実施例】
【0121】
実施例全体を通じてエクテナサイジン743(ET-743)は、トラベクテジンとも称される。
【0122】
<実施例1>
ドセタキセルとトラベクテジンとを組み合わせる第I相臨床試験を実施した。本試験の目的は、21日ごとに投与される、ドセタキセル(60mg/m2または75mg/m2)との組合せにおけるトラベクテジンの最大耐量(MTD)を決定することであった。追加的目的は、この薬の組合せの安全性プロファイルを評価すること、ならびに組合せで与えられる場合のトラベクテジンおよびドセタキセルの薬物動態を評価することであった。最大耐量(MTD)は、その用量レベルコホートの対象の1/3未満が用量制限毒性を経験する最高の用量に関する。
【0123】
この臨床試験に登録した対象者は、標準的な治癒的または緩和的手段が存在しないか、または、もはや有効でない、転移性または切除不可能な悪性疾患を有する成人(年齢≧18歳)患者であった。参加基準は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)全身状態(PS)スコアの0または1、先行する治療の急性毒性からの臨床的に十分な回復、十分な肝臓機能および腎臓機能ならびにトラベクテジンにさらされたことがないことを含んでいた。
【0124】
本発明者らは、60mg/m2または75mg/m2の一定のドセタキセル用量を1時間かけて静脈経由で投与し、続いて、ドセタキセルとET-743の投与の間に1時間の休息を有して、6種のトラベクテジン用量(0.4、0.6、0.75、0.9、1.1および1.3mg/m2)から1種を3時間かけて静脈経由で投与する用量設定試験を設計した。本治療は、21日ごとに繰り返した。表1は標準的「3+3」用量漸増ガイドラインを使用する、本臨床試験に適用した用量漸増を示す。制限付きの患者は、≦1の先行する化学療法投与を受けたが、無制限の患者は、制限を有さなかった。加えて、用量レベル2aより後についての手順書の変更は、一次予防薬G-CSFの投与を可能にした。
【0125】
【表1】

【0126】
2種の追加的レベル、ドセタキセル60mg/m2およびトラベクテジン1.3mg/m2(レベル6a)ならびにドセタキセル75mg/m2およびトラベクテジン1.3mg/m2(レベル7)である用量の、レベル6aならびにレベル7も評価した。4名の無制限患者を用量レベル6aに登録し、3名の制限付き患者を用量レベル7に登録した。両レベルにおいて、患者は一次予防薬としてG-CSFも受けた。
【0127】
支持的手段として、各サイクルの前日に開始する3日間連続の前投薬としてデキサメタゾンを投与した(5回の経口投与に加えて、第1日目のドセタキセル注入の前の1回の静脈投与の合計)。追加的に、患者は、支持的投薬としてのフィルグラスチム(G-CSF)を受けた:最初は、G-CSFの投与はサイクル1の後にだけ許可されていたが、2bコホート以上において一次予防的G-CSFの投与を可能にするように手順を変更した。最後に、輸血、抗生物質および補充的制吐薬などの他の治療法も必要に応じて投与した。
【0128】
用量制限毒性(DLT)は、以下の通り定義される:
−>5日間のまたは発熱もしくは敗血症を伴う絶対好中球数(ANC)<500/μL
−血小板数<25000/μL
−非血液学的毒性グレード3/4(適切な制吐剤にもかかわらず生じる以外の悪心/嘔吐を除く)または>1週間の継続するグレード3トランスアミナイティス
−>3週間の次の治療計画開始の遅延
【0129】
肉腫を有する10名、前立腺癌を有する4名、頭頸部癌腫を有する3名、NSCLCを有する2名、SCLCを有する2名、直腸結腸癌を有する1名、胃癌を有する1名、卵巣癌を有する1名、膵臓癌を有する1名、腎臓癌を有する1名および他の型の癌を有するさらに8名の34名の患者が、治療されている。34名のうち11名の患者は、全身状態(PS)が0(完全に活動的、発病以前の能力を全て制限を受けることなく実行できる)であった(表2)。
【0130】
【表2】

【0131】
表3および図1は、各用量レベルにおける合計治療期間を示す。
【0132】
【表3A】

【表3B】

【0133】
表4は、各用量レベルにおける相対用量強度を示す。
【0134】
【表4A】

【表4B】

【0135】
6DLTの合計は報告されており、表5に示す。
【0136】
【表5】

【0137】
上記に挙げたDLTに加えて、レベル7で治療された患者の1/3は、グレード3疲労に関連するDLTを生じた。
【0138】
グレード3および4の毒性に関する治療薬について最も悪い点は、好中球減少症、白血球減少症、トランスアミナーゼ上昇および疲労に関する。表6は、患者2名(対象の≧5%)以上で頻繁に報告された薬関連のグレード3/4有害事象を示す。最初の治療投与から、最後の治療投与の30日後までのいずれかの時点で報告された有害事象が含まれる。毒性グレードを定義するために、NCI共通毒性基準(Common Toxicity Criteria version)2.0を使用した。
【0139】
【表6A】

【表6B】

【0140】
追加的に、表7は、報告された最も一般的な有害事象を示す。最初の治療投与から最後の治療投与後30日以内までのいずれかの時点で報告された有害事象が含まれる。発生率は、患者数に基づく。
【0141】
【表7A】

【表7B】

【0142】
最終投与後30日以内に疾病の進行による死亡はなかった。
【0143】
腹膜癌を有する患者1名は、完全寛解を得た。患者17名(前立腺癌を有する4名、肉腫を有する4名、SCLCを有する2名ならびに脂肪肉腫、悪性中皮腫胸膜、子宮内膜間質部肉腫、胆嚢癌、胃癌および卵巣癌の各1名ならびに不明1名)は、病勢安定を得た(表8)。
【0144】
【表8A】

【表8B】

【0145】
トラベクテジンおよびドセタキセルの投与後に薬物動態学的相互作用は観察されなかった(表9a、図2および表9b、図3)。
【0146】
【表9A】

【表9B】

【0147】
この試験から、本発明者らは、トラベクテジンおよびドセタキセルのG-CSF支持薬を伴う投与は、安全でありかつ十分に許容されると結論する。加えて、両方の薬が最高(または最高付近の)治療量で長期間投与される場合、この組合せは、十分に許容されることが示されている。
【0148】
一次データは、患者1名が完全寛解に達し、かつ17名が病勢安定を維持していることで、進行した癌を有する患者におけるトラベクテジン/ドセタキセルの組合せについての活性を示唆する。
【0149】
追加的に、ドセタキセルの薬物動態が、トラベクテジンの付随投与によって明白に有害に影響されないことが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効治療量のET-743を有効治療量のドセタキセルとの組合せで投与する工程を含む、癌に対して人体を治療する方法。
【請求項2】
ET-743およびドセタキセルが、単剤として投与される場合の最高または最高付近の治療量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ET-743およびドセタキセルが連続的に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
最初にドセタキセルが、続いてET-743が投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ET-743およびドセタキセルが静脈内注入によって投与され、かつET-743についての注入時間が24時間までおよびドセタキセルの注入時間が6時間までである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ET-743についての注入時間が約3時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ドセタキセルについての注入時間が約1時間である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ET-743およびドセタキセルが3または4週間ごとに1回投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ET-743およびドセタキセルが3週間ごとに1回投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ET-743およびドセタキセルが同日中に投与され、最初にドセタキセルが投与され、約1時間の休息の後にET-743の投与が続く、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ET-743が用量約0.4から約1.3mg/m2の間で投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ET-743が用量約1.1mg/m2または約1.3mg/m2で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ドセタキセルが用量約50から約100mg/m2の間で投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ドセタキセルが用量約60mg/m2または約75mg/m2で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ドセタキセルが用量約60mg/m2で注入時間約1時間をかけて投与され、次いでET-743が用量約1.3mg/m2で注入時間約3時間をかけて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ドセタキセルが用量約60mg/m2で注入時間約1時間をかけて投与され、次いでET-743が用量約1.1mg/m2で注入時間約3時間をかけて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ドセタキセルが用量約75mg/m2で注入時間約1時間をかけて投与され、次いでET-743が用量約1.1mg/m2で注入時間約3時間をかけて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ドセタキセルが用量約75mg/m2で注入時間約1時間をかけて投与され、次いでET-743が用量約1.3mg/m2で注入時間約3時間をかけて投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
フィルグラスチムを投与する工程をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者が再発性であるか、または先行する化学療法に抵抗性である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
患者が、肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、膵臓癌、胃腺癌、結腸直腸癌、中皮腫、腎臓癌、子宮内膜癌、頭頸部癌腫、前立腺癌および肺癌から選択される癌を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法のための医薬の調製におけるET-743の使用。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法のための医薬の調製におけるドセタキセルの使用。
【請求項24】
少なくとも1サイクル分の、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法のために適切な量のET-743および薬学的に許容される担体を含有する用量単位でのET-743の供給物、ならびに前記方法に従ってET-743を投与するための説明書を含む、ET-743をドセタキセルとの組合せで投与するための医療用キット。
【請求項25】
少なくとも1サイクル分の、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法のために適切な量のドセタキセルおよび薬学的に許容される担体を含有する用量単位でのドセタキセルの供給物、ならびに前記方法に従ってドセタキセルを投与するための説明書を含む、ドセタキセルをET-743との組合せで投与するための医療用キット。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公表番号】特表2009−536956(P2009−536956A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510180(P2009−510180)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/068727
【国際公開番号】WO2007/134203
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】