説明

抗真菌剤を溶解する方法、および爪への塗布に適している、高濃度の抗真菌剤を含む組成物

本発明は、-少なくとも5%の濃度で、アリルアミンまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤、-水;少なくとも1つの分岐鎖または直鎖のC2〜C8アルカノール;少なくとも1つのグリコールを含む三元溶媒系を含み、水の総量が、組成物の30%(w/w)超に相当する医薬組成物を提供する。この組成物は、爪真菌症を治療するための爪への塗布が意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相当量のアリルアミンのクラスまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤を溶解することを可能にする、水を含む三元溶媒系の開発に関する。この発明は、具体的に爪への塗布に適応した組成物を調製することを可能にし、爪は、場合により、化学的または物理的に穿孔処理または前処理されている。
【0002】
この種の医薬組成物または皮膚組成物は、爪真菌症、特に、皮膚糸状菌またはカンジダ属に起因する爪真菌症のヒトおよび動物における治療にとって特に有用である。
【背景技術】
【0003】
アリルアミンのクラスに由来する抗真菌剤、特に、テルビナフィンまたはナフチフィン、およびモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤、特に、アモロルフィンは、抗真菌制御において有望な化合物である。それらの推定されているか証明されている作用様式は、特に、スクアレンエポキシダーゼの阻害を介する、真菌細胞壁の特異的構成要素であるエルゴステロールのレベルでの阻害が関係している(「Terbinafine: Mode of action and properties of the squalene epoxidase inhibition」British Journal of Dermatology、126巻s39号、2〜69頁(1992年2月);「Preclinical data and mode of action of amorolfine」、Dermatology、1992年、184巻、SUP1(10 ref . )、3〜7頁)。
【0004】
伝統的に、抗真菌薬は、局所的か経口的のどちらかで投与されてきた。
【0005】
経口経路により、6カ月にわたって250mg/日のレベルで投与されるテルビナフィンは、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)に起因する爪真菌症の治療において有効かつ低毒性であることが判明している。しかしながら、この種の治療は、期間および費用の問題を提起し、消化領域に影響を及ぼす副作用、味覚障害、さもなければ一過性皮膚発疹を有することもある(GUPTA A、LYNDE C、LAUZON Gら Cutaneous adverse effects associated with terbinafine therapy: 10 case reports and a review of the literature. Br J Dermatol、1998、138: 529〜532頁)。
【0006】
局所経路により、経爪(transungual)投与は、爪真菌症を治療するための経口投与に代わる代替解決策に相当する。しかしながら、爪への投与の場合に生じる課題は、爪における抗真菌剤の浸透および拡散を確保し、治療上有効な濃度を、爪の中および爪の下、言い換えれば、爪床において得ることを可能にすることである。
【0007】
爪自体は、実際には不溶であるが水との親和性を示す線維性タンパク質であるケラチンで本質的にできている。したがって、爪は、親水性の性質であると考えられ、つまり、爪は、ヒドロゲルのように振る舞う。その結果、経爪塗布について、水中で抗真菌剤を製剤化することが必須と思えるであろう。しかしながら、水は、それ自体が爪の中への拡散能力をほとんど示さず、さらに、水にほとんど不溶である対象とする前述の抗真菌剤、特に、テルビナフィンとの適合性に困難さを有する。
【0008】
従来技術における抗真菌剤の経爪製剤について提案されているすべての技術的解決策の中で、使用されている解決策は、ポリマーの添加による水性-アルコール性混合物の解決策であった。
【0009】
代替方法として、文献EP 0 503 988は、水性-アルコール性媒体を、これまで知られており、皮膚の角質層を通じた活性剤の経皮浸透を促進するために使用されている親水性浸透剤と混合することを提案した。この角質層は、親油性の性質であり、水障壁として振る舞う。
【0010】
しかしながら、そのような親水性浸透剤の存在下であっても、文献EP 0 503 988に記載されている組成物中の水の比率は、組成物の総重量の30%を決して超えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP 0 503 988
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Terbinafine: Mode of action and properties of the squalene epoxidase inhibition」British Journal of Dermatology、126巻s39号、2〜69頁(1992年2月)
【非特許文献2】「Preclinical data and mode of action of amorolfine」、Dermatology、1992年、184巻、SUP1 (10 ref . )、3〜7頁
【非特許文献3】GUPTA A、LYNDE C、LAUZON Gら Cutaneous adverse effects associated with terbinafine therapy: 10 case reports and a review of the literature. Br J Dermatol、1998、138: 529〜532頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、有効量の活性成分の爪を通じた改善された拡散を可能にする、抗真菌剤のための新たな製剤を見いだす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を含み、相当量の対象とする抗真菌剤を溶解する能力、大量の水の可能性、ならびに爪の角質化した爪タブレット(ungual tablet)の中へのおよびそれを通じた有効な拡散および有効な浸透のための能力を組み合わせた三元溶媒系の証明にある。
【0015】
「大量の水」とは、組成物の総重量に対して、30重量%を超える組成物中の水の総量を意味する。
【0016】
より具体的に、本発明は、溶液の形態をとり、
-第一に、有効量の少なくとも1つの抗真菌剤;
-第二に、水、少なくとも1つの分岐鎖または直鎖のC2〜C8アルカノール、および遊離ヒドロキシル機能を有する少なくとも1つのグリコールの混合物で構成される前記抗真菌剤のための溶媒媒体を含む、爪真菌症の治療を意図した皮膚組成物を提供する。
【0017】
この種の組成物は、総水量(total water)が、組成物の総重量に対して(w/w)、30重量%超、有利には、33%超、またはさらに35%超、または、実際には、40%超に相当することを特徴とする。
【0018】
本発明の文脈において、「有効量」の少なくとも1つの抗真菌剤は、組成物における相当量の前記薬剤である。溶媒媒体における、より詳細には、水における溶解度の問題が、相当量のこの種について生じることは明らかである。
【0019】
実際には、相当量の抗真菌剤は、下で定義されているように、総組成物量(total composition)の5%超、またはさらに少なくとも8%、または、実際に、少なくとも10%(w/w)に相当する。したがって、組成物におけるこの薬剤15%まで、または20%を想定することが可能である。
【0020】
場合により、異なるクラスに由来する抗真菌剤の混合物を企図することが可能であることは言うまでもない。
【0021】
すでに述べられているように、より詳細には本発明の標的である対象とする抗真菌剤は、アリルアミンのクラスおよびモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤であり、アリルアミンのクラスが好ましい。
【0022】
アリルアミンのクラス内で、特に、テルビナフィンおよびその酸塩、ならびにナフチフィンおよびその酸塩を挙げることができる。酸塩の中から、塩酸テルビナフィンおよび塩酸ナフチフィンが選択され、それらのそれぞれの式は、下記の通りである;
【0023】
【化1】

【0024】
このクラスに由来する分子の中から、テルビナフィンが選択される。
【0025】
代替方法として、抗真菌剤は、モルホリンのクラス、特に、アモロルフィンおよびその酸塩に属してもよく、その場合、水における溶解度の同様の問題が生じる。
【0026】
上に示されているように、本発明は、水を含み、対象とする抗真菌剤の溶解において相乗効果を示す三元溶媒系の証明に基づいている。
【0027】
この系は、
-アリルアミンのクラスまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤の極貧溶媒(very poor solvent)であることが知られている水;
-単鎖アルコール、より詳細には、少なくとも1つの分岐鎖または直鎖のC2〜C8アルカノール(これらのアルコールは、アリルアミンのクラスまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤のための溶媒であることが知られている);
-少なくとも1つのグリコールを含む。
【0028】
極貧溶媒は、アリルアミンのクラスまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤1%(w/w)以下の溶解を可能にする溶媒である。
【0029】
したがって、注目すべきことに、発明者らは、水を含む3つの溶媒のこの組合せが、対象とする抗真菌剤の溶解において相乗作用を示し、それによって、相当量の抗真菌剤の溶解を同時に可能にしながら、混合物における水の量を増やすことを可能にすることを証明した。
【0030】
すでに述べられているように、注目すべきことに、総水量は、組成物の総重量に対して(w/w)、30重量%超、有利には、33%超、またはさらに35%超、または、実際に、さらに40%超に相当する。結果として、総水量は、有利には、三元溶媒混合物の3分の1超に相当する。
【0031】
総水量とは、水を含有する組成物中の様々な溶媒および/または賦形剤に由来する水の量を加算した、組成物中にそれ自体が導入される水の量を意味する。
【0032】
一方、総水量は、有利には、総組成物量の60%未満、またはさらに50%未満に相当する。
【0033】
この三元系における第二の存在物は、短鎖アルコール、より具体的には、少なくとも1つの分岐鎖または直鎖のC2〜C8アルカノール、好ましくは、エタノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールである。エタノールが特に好ましい。異なるアルコールの混合物も、企図されていてよい。
【0034】
最後に、この三元溶媒系は、少なくとも1つのグリコールを含む。ここでのグリコールは、少なくとも2つのヒドロキシル機能を有する化合物である。本発明は、より詳細には、それらの2つのヒドロキシル機能が、遊離である、つまり、エーテルおよびエステル結合に関与していないグリコールに関する。そのようなグリコールは、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールを包含する。プロピレングリコールが好ましい。異なるグリコールの混合物も、企図されていてよい。
【0035】
有利には、三元溶媒系は、総組成物量の少なくとも60%、またはさらに70%、80%、または、実際に、さらに90%(w/w)に相当する。
【0036】
さらに、有利には、アルコールの比率は、グリコールの比率以上である。
【0037】
さらにより有利には、水の総比率は、グリコールの総比率より大きい。
【0038】
一般的に言えば、本発明による医薬組成物または皮膚組成物は、溶液の形態をとる。ローション、スプレー、エマルジョン、フォームまたはゲルとして同等に製剤化することができ、有利には、流体である。
【0039】
本発明による組成物は、
-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコールおよびフェノキシエタノール、パラベンおよび誘導体などの保存剤;
-ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチルアスコルベート、α-トコフェロールおよび/またはそのエステルなどの抗酸化剤;
-マニキュア液を製造するために化粧品分野において一般に使用されるチタンマイカなどの染料、充填剤または色素;
-例えば、アルキルセルロース誘導体、特に、メチルセルロール、エチルセルロースおよび「KLUCEL」という名前で販売されているものなどのヒドロキシ-アルキルセルロースなどの浸透前に組成物の流れを防ぐことができるポリマー;
-エデト酸二ナトリウム(EDTA)などのキレート化剤;
-シクロメチコーンなどの軟化剤;
-消毒剤、特に、酢酸またはクロルヘキシジンからなる群から選択される少なくとも1つの添加物を包含することもある。
【0040】
これらの添加物の各々の量は、当業者により容易に決定される。
【0041】
すでに述べられているように、本発明による組成物は、経爪的に爪真菌症を治療するのに特に適応している。したがって、爪の表面への塗布が意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】テルビナフィンHClの溶解度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(実施例)
本発明およびその付随する利点は、後に続く作業例からより明らかに浮かび上がるであろう。しかしながら、どんな場合にも、これらの例は制限的ではない。
【0044】
これらの例において、下記の化合物を試験した:
-抗真菌剤=塩酸テルビナフィン(テルビナフィンHCl);
-水=精製水;
-アルコール=エタノール;
-グリコール=プロピレングリコール。
【0045】
1/抗真菌剤の溶解のための三元溶媒系の相乗作用の証明:
テルビナフィンHClに対する異なる溶解度試験を、異なる溶媒系で行った。溶解度は、共に下の方法1により目視で概算し、次いで、下の方法2によるHPLCアッセイにより定量化した。
【0046】
方法1:テルビナフィンHClの溶解
テルビナフィンHClを、20mlのフラスコ中に正確に秤量し、次いで、溶媒を加える。続いて、フラスコを、16時間にわたって、20℃に自動温度調節されたチャンバーに、磁気撹拌しながら入れる。活性成分の一部が溶けなかった場合、さらなる溶媒の添加を行う。次いで、フラスコを、溶解が完了するまで16時間にわたって、自動温度調節されたチャンバーに、磁気撹拌しながら再び入れる。そうならない場合、前ステップを繰り返す。
【0047】
方法2:HPLCによるテルビナフィンの定量化
溶液の調製:
希釈液:
【0048】
【表1】

【0049】
保存溶液
溶液A(300μg/ml)
50mlのメスフラスコにテルビナフィンHClおおよそ15mgを精密に秤量する。希釈液に溶解し、同じ溶媒で定体積にする。2つ組で溶液を調製する(A1、A2)
娘溶液(60μg/ml)
溶液Aを希釈液中で1/5に希釈する。希釈A1=>STD1、希釈A2=>STD2
標準範囲
標準範囲を、4μg/ml〜120μg/mlの当量濃度において、溶液Aの注入体積を変えることにより作成する。
【0050】
試料溶液
40μg/mlから100μg/mlまでの濃度の1試料当たり2つの試験を調製する。
【0051】
動作条件
溶離液相
【0052】
【表2】

【0053】
クロマトグラフィー系のパラメーター
カラム:プレカラムを取り付けたSun Fire C18 4.6×100 mm 3.5μm
カラム温度:30℃
流速:1.5ml/分
注入体積:試料溶液について30μl
分析時間:10分
285nmにおいての検出
グラジエント:
【0054】
【表3】

【0055】
クロマトグラフィー系適合性試験
対照溶液STDを6回注入し、アッセイされる活性成分のピークで、下記のパラメーターを測定する:
【0056】
【表4】

【0057】
-空試料(希釈液)を注入し、空試料のピークがテルビナフィンHClを妨害しないことをチェックする。
-溶液STD1およびSTD2を注入し、2つの対照間の%偏差が、<2%であることをチェックする。
【0058】
A/二元溶媒系:
A-1/エタノール/プロピレングリコール
-エタノールにおいて、テルビナフィンHClの目視溶解度(visual solubility)は、19.7%w/wであり、HPLCアッセイにより18.09%w/wと確認され;
-プロピレングリコールにおいて、テルビナフィンHClの目視溶解度は、8.9%w/wであり、HPLCアッセイにより10.3%w/wと確認され;
-50/50エタノール/プロピレングリコール混合物において、テルビナフィンHClの目視溶解度は、23.3%w/wであり、HPLCアッセイにより20.4%w/wと確認される。
【0059】
結論として、プロピレングリコールは、エタノールほど良好なテルビナフィンHClの溶媒ではないが、二元混合物において得られる溶解度は、エタノールにおいて得られる溶解度よりわずかに大きい。相加効果によれば、テルビナフィンHClの予想溶解度は、14%程度だったであろう。20%程度の溶解度が測定されたという事実は、プロピレングリコールとエタノールの間のテルビナフィンHClの溶解における相乗作用の存在を証明している。
【0060】
A-2/水/エタノール
水において、テルビナフィンHClの目視溶解度は、0.6%w/wである。
【0061】
二元水/エタノール混合物(50/50)の場合、テルビナフィンHClの目視溶解度は、16.7%w/wであり、言い換えると、エタノール単独で得られる溶解度未満である。
【0062】
A-3/水/プロピレングリコール
二元水/プロピレングリコール混合物(50/50)の場合、テルビナフィンHClの目視溶解度は、2.2%w/wまで下がり、すなわち、プロピレングリコール単独で得られる溶解度よりわずかに低い。
【0063】
結論として、二元水/プロピレングリコールおよび水/エタノール混合物において、水は、それぞれ、プロピレングリコールおよびエタノールにおいて得られる溶解度と比較してテルビナフィンHClの溶解度を下げる。
【0064】
B/三元溶媒系:
水15%が、プロピレングリコール70%およびエタノール15%かエタノール70%およびエプロピレングリコール15%のどちらかで構成される混合物中に導入される場合、テルビナフィンHClの目視溶解度は上がり、驚いたことに、それぞれ25.0%w/wおよび25.2%w/wに達する。
【0065】
結論として、いずれの予想とも異なって、二元プロピレングリコール/エタノール混合物(70/15または15/70)中への水(100%まで適量)の導入は、水が、テルビナフィンHClにとってそれ自体貧溶媒であるにもかかわらず、驚いたことに、テルビナフィンHClの溶解度を上げた。したがって、プロピレングリコール/エタノール/水の三元混合物においてテルビナフィンHClの溶解度に関して相乗作用が存在する。
【0066】
経爪塗布のための最適条件、すなわち、医薬組成物中の大量の水および少なくとも10%のテルビナフィンHClの量に近づくため、次いで、水の量を、当量のプロピレングリコール35%およびエタノール35%の存在下で30%まで増やした。
【0067】
これらの条件下で、テルビナフィンHClの目視溶解度は、18.5%w/wであり、すなわち、活性成分の生物学的活性に関して最適であると判断される濃度である10%を十分に上回る。
【0068】
水の量を、当量のプロピレングリコール(33%)およびエタノール(33%)の存在下で33%まで増やした場合、テルビナフィンHClの目視溶解度は、15.5%w/wであり、すなわち、10%を依然として上回る。
【0069】
結論として、意図する塗布において爪に水分を提供し、したがって爪母内での抗真菌剤の改善された拡散を促進するのに望ましい水が、この抗真菌剤に対するその不十分な溶解力にもかかわらず、テルビナフィンHClの溶解度を高めることを可能にするように見える。この溶解度の増加は、プロピレングリコールおよびエタノールの組合せに依存する。
【0070】
上ですでに見られたように、二元水/プロピレングリコールまたは水/エタノール混合物において、水は、テルビナフィンHClの溶解度を下げる。したがって、水/プロピレングリコール/エタノールの三元混合物の組合せのみが、テルビナフィンHClの溶解度を高めることを可能にする。このようにして、テルビナフィンHClの溶解度は、少なくとも水30%を含有する水/プロピレングリコール/エタノールの三元混合物において10%より大きいことが明らかになった(グラフ1)。
【0071】
テルビナフィンの溶解度は、水40%で10%より大きいままであるが、ただし、エタノールの量は、少なくともプロピレングリコールの量以上である。
【0072】
このようにして、少なくともテルビナフィンHCl 10%を溶解することを可能にし、その中で、水の総量が、爪母内でのテルビナフィンの改善された拡散を得るために必要な水の量である少なくとも30%であるプロピレングリコール/エタノール/水の三元混合物の比率を規定することが可能になった。
【0073】
2/三元溶媒系に基づく組成物:
規定されるような三元溶媒系は、溶解度の問題なしに、相当量のテルビナフィンHClを含有する様々な製剤を製造することを可能にした。下の実施例は、例示のために与えられ、決して制限的ではない。
【0074】
各実施例について、処方は、販売状態で使用される各成分のパーセント(第1コラム)の関数として表される。
【0075】
処方は、各成分中に存在する水を考慮に入れることによっても表される。この場合、成分に対応する%は、100%まで添加すると見なされる(第2コラム)。
【0076】
製剤は、下記の手順により調製される:
ステップ1:エタノールにヒドロキシトルエンを溶解する。
ステップ2:ブチル化ヒドロキシトルエンが完全に溶解したら、
プロピレングリコール
精製水
EDTA
を順に添加し、
EDTAの完全な可溶化まで撹拌する。
ステップ3:ステップ2で得られる混合物にテルビナフィンHClを添加する。
完全な可溶化まで撹拌する。
【0077】
(実施例1)
【0078】
【表5】

【0079】
物理的および化学的な安定性を、室温および40℃において3カ月にわたって測定した。
物理的安定性:
T0における仕様
肉眼的外観:澄明な、無色の液体
微視的外観:テルビナフィンHClの結晶がないこと
【0080】
【表6】

【0081】
化学的安定性:
【0082】
【表7】

【0083】
(実施例2)
【0084】
【表8】

【0085】
物理的および化学的な安定性を、室温および40℃において3カ月にわたって測定した。
物理的安定性:
T0における仕様
肉眼的外観:澄明な、無色の、わずかに粘稠な溶液
微視的外観:テルビナフィンHClの結晶がないこと
【0086】
【表9】

【0087】
化学的安定性:
【0088】
【表10】

【0089】
(実施例3)
【0090】
【表11】

【0091】
(実施例4)
【0092】
【表12】

【0093】
(実施例5)
【0094】
【表13】

【0095】
ある種の比率でプロピレングリコール/エタノール/水の三元混合物を使用することにより、我々は、各溶媒を別々に利用して得られるものよりかなり大きいテルビナフィンHCl溶解度を得ることが可能であることを証明した。
【0096】
したがって、このプロピレングリコール/エタノール/水の三元混合物は、使用される比率でテルビナフィンHClの溶解において相乗効果を示す。
【0097】
このプロピレングリコール/エタノール/水の三元混合物に基づき、10%w/wのテルビナフィンHCl含量の可溶化を可能にしながら、最低限30%の総水量を含有する安定な組成物を製造することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5%の濃度で、アリルアミンまたはモルホリンのクラスに由来する抗真菌剤;
以下を含む三元溶媒系
・水;
・少なくとも1つの分岐鎖または直鎖のC2〜C8アルカノール;
・少なくとも1つのグリコール
を含み、
水の総量が、組成物の30%超に相当する、医薬組成物。
【請求項2】
抗真菌剤が、テルビナフィンまたはその酸塩のうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
テルビナフィンの酸塩が、塩酸テルビナフィンであることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗真菌剤の濃度が、8%以上、好ましくは、10%以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アルカノールが、エタノールであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
グリコールが、プロピレングリコールであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ローション、スプレー、エマルジョン、フォームまたはゲルの形態をとることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
下記のリスト:キレート化剤、抗酸化剤、ポリマー、消毒剤、軟化剤から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
爪真菌症を治療するための爪への塗布が意図されている医薬を調製するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519669(P2012−519669A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552461(P2011−552461)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052817
【国際公開番号】WO2010/100252
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】