説明

抗菌・防腐剤組成物および粉末状化粧料

【課題】安全性に優れ、パラベンや銀ゼオライトに比して優れた効果を有する抗菌・防腐剤組成物を提供する。
【解決手段】アシル化アミノ酸(A)とグリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)及びグリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)を(A):(B):(C)の重量比として1:0.1〜10:0.1〜10で含有する。本発明の好ましい態様においては、アシル化アミノ酸(A)がカプロイルグリシンであり、グリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)がカプリル酸グリセリルであり、グリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)がエチルヘキシルグリセリンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌・防腐剤組成物および粉末状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パラオキシ安息香酸エステル類(所謂パラベン)、抗菌・防腐剤として知られており、例えば、粉末状化粧料においても使用されている(非特許文献1)。また、銀ゼオライトも無機系抗菌剤として各種の用途に使用されている。しかしながら、抗菌・防腐剤としては、安全性に優れて一層効果のあるものが要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】新化粧品学(2001年1月28日 2版I刷、株式会社 南山堂発行)第226〜229頁「使用できる抗菌剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、安全性に優れ、パラベンや銀ゼオライトに比して優れた効果を有する抗菌・防腐剤組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、上記の抗菌・防腐剤組成物を配合した粉末状化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の第1の要旨は、アシル化アミノ酸(A)とグリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)及びグリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)を(A):(B):(C)の重量比として1:0.1〜10:0.1〜10で含有することを特徴とする抗菌・防腐剤組成物に存する。そして、本発明の第2の要旨は、上記の抗菌・防腐剤組成物を配合して成ること特徴とする粉末状化粧料に存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安全性に優れ、パラベンや銀ゼオライトに比して優れた効果を有する抗菌・防腐剤組成物およびこれを配合して成る粉末状化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
<抗菌・防腐剤組成物>
先ず、本発明の抗菌・防腐剤組成物について説明する。本発明の抗菌・防腐剤組成物は、アシル化アミノ酸(A)とグリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)及びグリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)を必須成分として含有する。
【0009】
(アシル化アミノ酸)
アシル化アミノ酸のアシル基の炭素数は、通常6〜22の範囲であり、アシル基の炭化水素鎖は飽和のものでも不飽和のものでもよく、直鎖状のものでも、分岐鎖を有するものでもよい。アシル基の具体例としては、カプリロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、イソステアロイル、オレイル等が挙げられる。一方、アシル化アミノ酸のアミノ酸としては、14種のアミノ酸、すなわち、グリシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−スレオニン、L−セリン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン、L−アスパラギン酸及びL−グルタミン酸の何れであってもよい。アシル化アミノ酸の中では、カプリロイルグリシン(カプリル酸とグリシンとの縮合物)が好ましい。カプリロイルグリシンは、(株)成和化成より商品名「リパサイドC8G」として市販されており、容易に入手することが出来る。
【0010】
(グリセリンの直鎖脂肪酸エステル)
直鎖脂肪酸の炭素数は通常6〜22の範囲である。直鎖脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。これらの中ではカプリン酸、すなわち、これに対応するカプリン酸グリセリルが好ましい。
【0011】
(グリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル)
分岐脂肪族アルコールの炭素数は通常3〜10の範囲である。分岐脂肪族アルコールの具体例としては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、イソヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、3−メチル−1−ブチルアルコール、4−メチル−2−ペンチルアルコール。これらの中では、2−エチルヘキシルアルコール、すなわち、これに対応する2−エチルヘキシルグリセリンが好ましい。
【0012】
(前記のエステル及びエーテルの混合物)
グリセリンの直鎖脂肪酸エステル及びグリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテルは、両者の混合物として市販されている場合がある。例えば、日光ケミカルズ(株)より市販されている商品「ニコガード88」は、カプリン酸グリセリルと2−エチルヘキシルグリセリンの約1:1重量比の混合物であり、本発明において好適に使用し得る。
【0013】
本発明の抗菌・防腐剤組成物において、アシル化アミノ酸(A)、グリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)、グリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)の使用割合は、(A):(B):(C)の重量比として、通常1:0.1〜10:0.1〜10、好ましくは1:0.5〜5:0.5〜5、更に好ましくは1:0.5〜2:0.5〜2の範囲である。(B)が0.1未満の場合は十分に抗菌・防腐効果が得られず、(B)が10超過の場合はベタツキ感などが生じて使用感に劣る。また、(C)が0.1未満の場合および10超過の場合においても(B)の場合と同様である。
【0014】
<粉末状化粧料>
次に、本発明の粉末状化粧料について説明する。本発明において粉末状化粧料とは、粉体を構成成分の主として含有する化粧料を指し、通常、化粧料総量を基準として粉体を75質量%以上含有するものである。例えば、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク等のメイクアップ化粧料や、ボディパウダーやベビーパウダーのようなボディ用化粧料などが挙げられる。特にパウダーファンデーション、アイシャドウ、アイブロー、チーク等の一般に密閉性の低い容器を用いられる化粧料において本発明の効果は顕著である。
【0015】
本発明の粉末状化粧料は、粉末状化粧料に一般的に用いられる各種成分によって調製される。斯かる成分としては、例えば、赤色104号、赤色102号、赤色226号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黒色401号等の色素、青色1号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン粉末などの高分子、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青などの有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素、ラウロイルリジン、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス油、シリコーン油、リン脂質、脂肪酸類、金属石鹸(例えば、アルミニウムジステアレート、ミリスチン酸亜鉛など)、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤、ビタミン類、紫外線吸収剤、抗酸化剤、マルチトール、キシリトール、ショ糖、グルコース、ラフィノース、ヒアルロン酸およびその塩、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アラビアガム、アルギン酸(塩)、カラギーナン、寒天、グアーガム、クインスシード、タマリンドガム、デキストリン、デキストラン、デンプン、ローカストビーンガム、カラヤガム、トラガカントガム、ペクチン、マルメロ、キトサン、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸(塩)、プルラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、ポリアクリル酸アミド、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、コンドロイチン4硫酸、コンドロイチン6硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン4,6ジ硫酸、デルマタン4,6ジ硫酸、ケラタン硫酸、ヘバラン硫酸等が挙げられ、またその塩類としては、例えばこれらムコ多糖のカリウム塩、ナトリウム塩等、水溶性高分子、pH調整剤、着色料、香料、動植物性蛋白質及びその分解物、動植物性多糖類及びその分解物、微生物培養代謝成分、血流促進剤、消炎剤、抗炎症剤、乳化剤、抗アレルギー剤、細胞賦活剤、アミノ酸とその塩類、角質溶解剤、収斂剤、増泡剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤が挙げられる。
【0016】
本発明の粉末状化粧料は、前記の抗菌・防腐剤組成物を配合して成ること特徴とする。抗菌・防腐剤組成物の配合量は、粉末状化粧料の総量を基準として、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜1重量%であり、当該範囲内であるとパラベンや銀ゼオライトを使用することなく、また、パラベンや銀ゼオライトを最小限にした処方系において、有効な抗菌・防腐効果を発揮できる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、%は重量%を意味する。実施例および比較例における試験方法および評価方法について以下に記す。
【0018】
実施例1:
表1に示す配合処方により、パウダーファンデーションを調製し、抗菌・防腐試験を行った。抗菌・防腐試験は、調製したパウダーファンデーションに各指標菌を10個/mLになるように接種し、菌数の経時変化を測定した(USP XXIV及び日本薬局方第15改正第2追補に準拠)。結果を表2に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
比較例1及び2:
実施例1において、「リパサイドC8G及びニコガード88」の代わりに、「リパサイドC8G」又は「ニコガード88」を使用した以外は、実施例1と同様に、パウダーファンデーションを調製し、抗菌・防腐試験を行った。結果を表2に示す。
【0021】
比較例3及び4:
実施例1において、「リパサイドC8G及びニコガード88」の代わりに、「パラベン」又は「銀ゼオライト」を使用した以外は、実施例1と同様に、パウダーファンデーションを調製し、抗菌・防腐試験を行った。結果を表3に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
表2に示す結果から明らかなように、「リパサイドC8G」と「ニコガード88」とを併用することにより、カプリロイルグリシン(アシル化アミノ酸)、カプリン酸グリセリル(グリセリンの直鎖脂肪酸エステル)、2−エチルヘキサン酸グリセリル(グリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル)の3成分を含有することにした本発明の抗菌・防腐剤組成物は、「リパサイドC8G」及び「ニコガード88」の各単独に比して顕著な抗菌・防腐効果を奏することが出来る。
【0025】
また、表3に示す結果から明らかなように、本発明の抗菌・防腐剤組成物は、パラベンや銀ゼオライトと比して顕著な抗菌・防腐効果を奏することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル化アミノ酸(A)とグリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)及びグリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)を(A):(B):(C)の重量比として1:0.1〜10:0.1〜10で含有することを特徴とする抗菌・防腐剤組成物。
【請求項2】
アシル化アミノ酸(A)がカプロイルグリシンであり、グリセリンの直鎖脂肪酸エステル(B)がカプリル酸グリセリルであり、グリセリンの分岐脂肪族アルコールとのエーテル(C)がエチルヘキシルグリセリンである請求項1に記載の抗菌・防腐剤組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の抗菌・防腐剤組成物を配合して成ること特徴とする粉末状化粧料。

【公開番号】特開2012−51848(P2012−51848A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196666(P2010−196666)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500470840)アサヌマ コーポレーション株式会社 (18)
【Fターム(参考)】