説明

抗菌剤としてのβ−シクロデキストリン誘導体

本発明は、病原菌がこれまでに暴露されたことのない、従って耐性を発生していない、新しいクラスの抗生物質を提供する。この新しいクラスの抗生物質は、β−シクロデキストリン(β−CD)の誘導体であり、7個のD−グルコース単位を含む環状分子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年1月28日に提出された米国特許仮出願第60/647,841号の利益を主張し、これの内容は参照としてその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、病原菌に対する新しい抗生物質の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野の概要
多くの細菌がヒトに病気を引き起こすことが知られている。これらの細菌には、腸球菌(Enterococcus faecium)、大腸菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Bacillus atrophaeus、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、豚コレラ菌(Salmonella choleraesuis)、炭阻菌(Bacillus anthracis)、およびその他多数が含まれる。最近の気がかりな傾向としては、多くの病原菌において現在の抗生物質に対する耐性が発生していることである。従って、それへの耐性がまだ現れていない新しい抗生物質の必要性が存在する。かかる抗生物質は、抗生物質の新しいクラスのメンバーであるのが好ましく、これによりこれらの抗生物質に対する進化的耐性を作ることがより困難となる。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、それに対して病原菌がこれまで暴露されたことのない、従って耐性を発生していない、新しいクラスの抗生物質を提供する。この新しいクラスの抗生物質は、β−シクロデキストリン(β−CD)の誘導体であり、これは7個のD−グルコース単位を含む環状分子である。
【0005】
第1の観点において、本発明は、化合物であって、式:
【化1】

式中、RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、OSONa、またはNHであり;およびRはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる前記化合物を提供する。
第2の観点において、本発明は医薬組成物を提供する。これら組成物は、本発明で開示された化合物の1種または2種以上のメンバーおよび薬学的に許容し得る担体を含む。
【0006】
第3の観点において、本発明は、1種または2種以上の化合物であって、式:
【化2】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10であり、mは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる化合物を、抗菌剤として用いるための方法を提供する。この観点の1つの態様において、本発明は、細菌の増殖を阻害する方法を提供する。この観点のさらなる態様において、本発明は、細菌感染症を処置する方法を提供する。この観点のさらなる態様において、本発明は、細菌感染症を予防する方法を提供する。
第4の観点において、本発明は、抗生物質の活性を強化して、臨床的に用いられる抗生物質に耐性を有する細菌の増殖を阻害し、これらの細菌による感染症を処置または予防するための方法を提供する。
【0007】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、病原菌に対する新しい抗生物質の開発に関する。本発明は、それに対して病原菌がこれまで暴露されたことのない、従って耐性を発生していない、新しいクラスの抗生物質を提供する。この新しいクラスの抗生物質は、β−シクロデキストリン(β−CD)の誘導体であり、これは7個のD−グルコース単位を含む環状分子である。
【0008】
第1の観点において、本発明は、化合物であって、式:
【化3】

式中、RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、OSONa、またはNHであり;およびRはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる前記化合物を提供する。
【0009】
第2の観点において、本発明は医薬組成物を提供する。これら組成物は、本発明で開示された化合物の1種または2種以上のメンバーおよび薬学的に許容し得る担体を含む。
本明細書において、用語「生理学的に許容し得る」とは、本発明の第1または第3の観点による化合物の有効性を妨害せず、細胞、細胞培養物、組織または生物などの生体系に適合する物質を意味する。ある態様において、生体系は、哺乳動物などの生物である。ある態様において、哺乳動物はヒトである。
【0010】
本明細書において、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、脂質、または当分野において医薬製剤に用いられることが知られている他の物質を包含する。担体、賦形剤または希釈剤の特性は、特定用途の投与経路に依存することが理解される。これらの物質を含む、薬学的に許容し得る製剤の製造は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing, Co., Easton, PA, 1990, ISBN: 0-912734-04-3に記載されている。
【0011】
第3の観点において、本発明は、本発明の第1および第2の観点による1種または2種以上の化合物を、抗菌剤として用いるための方法を提供する。この観点の1つの態様において、本発明は、細菌の増殖を阻害する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、細菌を、式:
【化4】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10であり、mは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる化合物の1種または2種以上のメンバーと接触させることを含む。
【0012】
本発明のために、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子のアルキル基を意味する。用語「アルキル」および「アリール」は、置換されているかまたは無置換であってもよい、アルキルまたはアリール基を含む。好ましい置換は、限定なく、アミノ基を含む、窒素含有部分による置換を含み、これは、好ましくはアルキルまたはアリール基により、一または二置換されていてもよい。また、本発明のために、用語「アルキル」は、1個または2個以上の窒素原子と残りの数の炭素原子とを有する、1〜7個の原子の鎖を含む。
【0013】
この観点のさらなる態様において、本発明は、細菌感染症の処置のための方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、細菌感染症を有する哺乳動物に、式:
【化5】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10であり、mは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる化合物の1種または2種以上のメンバーを投与することを含む。
【0014】
本発明のために、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子のアルキル基を意味する。用語「アルキル」および「アリール」は、置換されているかまたは無置換であってもよい、アルキルまたはアリール基を含む。好ましい置換は、限定なく、アミノ基を含む、窒素含有部分による置換を含み、これは、好ましくはアルキルまたはアリール基により、一または二置換されていてもよい。また、本発明のために、用語「アルキル」は、1個または2個以上の窒素原子と残りの数の炭素原子とを有する、1〜7個の原子の鎖を含む。
【0015】
この観点のさらなる態様において、本発明は、細菌感染症を予防する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、細菌感染症にかかりやすい哺乳動物に、式:
【化6】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10であり、mは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる化合物の1種または2種以上のメンバーを投与することを含む。
【0016】
本発明のために、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子のアルキル基を意味する。用語「アルキル」および「アリール」は、置換されているかまたは無置換であってもよい、アルキルまたはアリール基を含む。好ましい置換は、限定なく、アミノ基を含む、窒素含有部分による置換を含み、これは、好ましくはアルキルまたはアリール基により、一または二置換されていてもよい。また、本発明のために、用語「アルキル」は、1個または2個以上の窒素原子と残りの数の炭素原子とを有する、1〜7個の原子の鎖を含む。
本発明のこの観点による方法において、細菌は哺乳動物中に存在する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0017】
本発明のこの観点による方法において、化合物の投与は任意の好適な経路で行うことができ、これには限定なく、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内または膣内を含む。治療組成物の投与は、既知の手順と用量で、感染の症状または代理マーカーを低減させるのに有効な時間、行うことができる。医師は、投与するのに適切な用量、または細菌感染症を予防するのに有用な治療プロトコルを決定することができる。同時にまたは順番に、本発明の1種または2種以上の治療組成物の治療的に有効な量を、単一の処置エピソードとして個人に投与することが望ましい場合もある。
【0018】
第4の観点において、本発明は、抗生物質の活性を強化して、臨床的に用いられる抗生物質に耐性を有する細菌の増殖を阻害し、これらの細菌による感染症を処置または予防するための方法を提供する。本発明のこの観点による方法は、細菌を、前記抗生物質および式:
【化7】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもでき、ここでR、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子は随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよく、そしてここでnは約1〜約15、好ましくは約1〜約10であり、mは約1〜約15、好ましくは約1〜約10である、
で表わされる化合物の1種または2種以上のメンバーに接触させることを含む。
【0019】
本発明のために、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子のアルキル基を意味する。用語「アルキル」および「アリール」は、置換されているかまたは無置換であってもよい、アルキルまたはアリール基を含む。好ましい置換は、限定なく、アミノ基を含む、窒素含有部分による置換を含み、これは、好ましくはアルキルまたはアリール基により、一または二置換されていてもよい。また、本発明のために、用語「アルキル」は、1個または2個以上の窒素原子と残りの数の炭素原子とを有する、1〜7個の原子の鎖を含む。
【0020】
本発明のために、細菌もしくは細菌感染症が、ある抗生物質に対して「耐性がある」または「抵抗性」の用語は、該抗生物質に対する完全な耐性、または部分的な耐性を含み、これは、本明細書において、問題の微生物についてのある抗生物質のMICが増加する状況として定義される。
本発明のために、強化作用とは、ある化合物が、1種または2種以上の微生物についてのある抗菌剤のMICを、実質的に低下させている状況として定義することができる。これは、細菌耐性によりその有効性が損なわれた抗菌剤の治療的有効性を、効果的に回復する場合を含む。
【0021】
本発明による任意の方法において、本発明の化合物の1種または2種以上のメンバーは、疾病または状態を処置するのに有用であって、該化合物の抗菌効果を低下させない、任意の他の抗生物質と組み合わせて投与することができる。本発明のこの観点のためには、用語「組み合わせて」とは、同一患者での同一の疾病を処置する過程におけることを意味し、該化合物および抗生物質の任意の順序での投与を含み、これには同時投与および、時間的に間隔をあけての投与、例えば、順番に1つをもう1つの直後に投与するものから、数日間までの間隔をあけての投与を含む。かかる組合せの処置はまた、化合物および、独立して抗生物質の、1回を超える投与も含むことができる。化合物および抗生物質の投与は、同一または異なる経路をとってよい。
本発明のこの観点による方法において、細菌は哺乳動物中に存在する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0022】
本発明のこの観点による方法において、化合物の投与は任意の好適な経路で行うことができ、これには限定なく、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内または膣内を含む。治療組成物の投与は、既知の手順と用量で、感染の症状または代理マーカーを低減するのに有効な時間、行うことができる。医師は、投与する適切な用量、または細菌感染症を予防するのに有用な治療プロトコルを決定することができる。同時にまたは順番に、本発明の1種または2種以上の治療組成物の治療的に有効な量を、単一の処置エピソードとして個人に投与することが望ましい場合もある。
【0023】
本発明による方法のある観点において、比較的スペクトルの広い抗生物質を有し、種々の異なる細菌感染症を処置できることが望ましい。他の観点、例えばバイオテロリズムの予防などにおいては、可能性の高いバイオテロリズム生物に特異的で、正常な生理的寄与菌は保護しつつ細菌からの防御を得ることができる、スペクトルの狭い抗生物質を有することが望ましい場合もある。本発明は、これらの目的それぞれを達成するための方法を提供する。
【0024】
以下の例は、本発明のある特に好ましい態様をさらに説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0025】
例1
細菌増殖の標準化
ミューラーヒントンまたはブレインハート・インフュージョン寒天プレート(細菌株に応じて)から、1〜3個の細菌コロニーを取り、3mlのミューラーヒントンブロスまたはブレインハート・インフュージョン培地(細菌株に応じて)に移した。細菌をインキュベーター内で37℃で、2〜4時間増殖させた。細菌を播種した培地を0.9%生理食塩水に分散させて、マックファーランド基準密度に整合させた。100μlの標準化播種物を、20mlの培地に加えた(希釈1)。10μlの新しい希釈液を、990μlの培地に加えて混合した(希釈2)。10μlの希釈液2を寒天プレート上に広げ、一晩増殖させた。次にコロニーをプレートした。
【0026】
例2
細菌パネル試験
試験化合物を、ジメチルスルホキシド中に10μg/mlに希釈した。4μlの希釈試験化合物を、下の表1に示すように、96ウェルNUNCマイクロプレートのカラム2に入れた。4μlのリファムピシン抗生物質を、カラム2のH列に入れた。
表1:96ウェルNUNCマイクロプレートセットアップ、濃度:μg/ml
【表1】

【0027】
次に全てのウェルに、100μlの播種培地(例1からの希釈1)を満たした。次に100μlの播種培地をカラム2に加え、内容物をピペットして完全に混合した。次に全100μlをカラム2から移し、カラム3に混合した。このプロセスを、左から右まで、カラム2〜12が順番に希釈されるように継続し、カラム12から最後に取り出した内容物は廃棄した。プレートを3Mシーリングテープで被覆し(腸球菌(Enterococcus faecium)を含有するプレートはAir Poreシーリングテープで被覆した)、20〜24時間増殖させた。次に細胞毒性ウェル(クリアウェル)のスコアを計測し、化合物の効力(potency)を決定した。結果を下の表2に示す。結果は、幾つかの化合物は不活性であったが、他は広いスペクトルまたは狭いスペクトルの活性のどちらかを示した。
【0028】
表2:試験化合物の活性(MICはμg/ml表示)
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
【表8】

【0035】
【表9】

【0036】
【表10】

【0037】
【表11】

【0038】
【表12】

【0039】
【表13】

【0040】
【表14】

【0041】
【表15】

【0042】
【表16】

【0043】
【表17】

【0044】
【表18】

【0045】
【表19】

【0046】
【表20】

【0047】
例3
緑膿菌の臨床的単離物に対する、臨床的に用いられる抗生物質の化合物による強化作用
多数の病原菌が多くの臨床的に用いられる抗生物質に対して耐性を発生させた。本明細書に記載されたプロトコルに従って、種々の化合物を臨床的に用いられる抗生物質と混合し、緑膿菌(P. aeruginosa)を処置した。結果を下の表3および表4に示す。これらの結果は、本発明の化合物が、既知の抗生物質の活性を強化可能であることを示す。
【0048】
表3:既知の抗生物質のみの活性、または本発明の化合物と組み合わせた場合の活性
【表21】

【0049】
表4:既知の抗生物質のみの活性または本発明の化合物と組み合わせた場合の活性(AG=アミノグリコシド)
【表22】

【0050】
例4
本化合物はメチシリン耐性に対する活性を保持する
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、抗生物質メチシリンに対する耐性を有する細菌感染であり、この抗生物質メチシリンによっては殺傷することができない。本明細書に記載のプロトコルに従って、種々の化合物を抗生物質と用いて、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性)を処置した。結果を下の表5に示す。これらの結果は、本発明の化合物が、メチシリン耐性に対して活性を保持可能であることを示す。
表5:メチシリン耐性に対する本化合物の活性
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

式中、RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、O−低級アルキル、OMe、OSONa、またはNHであり;およびRはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもできる、
で表わされる化合物。
【請求項2】
nが約1〜約10である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子が随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項5】
細菌の増殖を阻害する方法であって、該細菌を、式:
【化2】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもできる、
で表わされる化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項6】
nが約1〜約10であり、およびmが約1〜約10である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子が随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよい、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
細菌が哺乳動物中に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
細菌感染症を処置するための方法であって、細菌感染症を有する哺乳動物に、式:
【化3】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもできる、
で表わされる化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
nが約1〜約10であり、およびmが約1〜約10である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子が随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよい、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物がヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
細菌感染症を予防するための方法であって、細菌感染症にかかりやすい哺乳動物に、式:
【化4】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもできる、
で表わされる化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
nが約1〜約10であり、およびmが約1〜約10である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子が随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
抗生物質の活性を強化して、該抗生物質に耐性のある細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記細菌を、該抗生物質および式:
【化5】

式中、RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、またはO(CHCHO)であり;RはH、OH、OAc、OMe、O−低級アルキル、OSONa、またはNHであり;およびRはH、NH、S(CHNH、I、N、SH、低級アルキル、S−アルキルグアニジル、O−アルキルグアニジル、S−アミノアルキル、O−アミノアルキル、アミノアルキル、O−低級アルキル、アラルキル、アリール、1または2以上の複素環、OSONaまたはNであって、これはアルキル、アラルキル、アリール、複素環または複素環アルキルにより一、二または三置換されており、そしてこれらの置換基のいずれかはさらにN、OまたはSにより置換されることもでき、それはさらにH、アルキル、アラルキルまたはアリールにより置換されることもできる、
で表わされる化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項19】
nが約1〜約10であり、およびmが約1〜約10である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
、RおよびRの各々について、任意の1個または2個以上の炭素原子が随意的にS、NまたはOにより置き換えられていてもよい、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
細菌が哺乳動物中に存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物がヒトである、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528761(P2008−528761A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553231(P2007−553231)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/002801
【国際公開番号】WO2006/083678
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507255190)ピナクル ファーマシューティカルズ,インク. (2)
【Fターム(参考)】