説明

抗血栓化合物

本発明は、式Iの化合物:オリゴ糖−スペーサー−GPIIb/IIIaアンタゴニストIに関する


(式中、オリゴ糖は、構造Iの負に帯電した五糖類の残基であり、電荷は正に帯電した対イオンによって補償され;スペーサーは、15−50個の原子長を有する本質的に薬理学的不活性な結合残基であり;GPIIb/IIIaアンタゴニストは、チロフィバンまたはその類似体から誘導された残基である。)または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグもしくはその溶媒和物に関する。本発明の化合物は、抗血栓活性を有し、血栓症の治療または予防に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗血栓化合物、活性成分として本化合物を含む医薬組成物、および薬物製造のための前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性心筋梗塞、虚血および脳卒中は、アテローム性動脈硬化の冠動脈において閉塞性血栓の形成により引き起こされる。動脈血栓は、フィブリノゲン(の濃度の上昇)により凝集する血小板(栓球)によって形成される。このプロセスは、フィブリノゲンが分解されてフィブリンクロットになる凝固系の励起状態および不均衡に関連している。これら主要および二次的止血経路の1つにおける介入は、(動脈)血栓症の治療に不可欠である。
【0003】
セリンプロテアーゼは、血液凝固カスケードで重要な役割を果たす酵素である。このプロテアーゼグループのファミリーは、例えば、トロンビン、トリプシン、VIIa、IXa、Xa、XIa、XIIa因子およびプロテインCである。トロンビンは、凝固カスケードにおける最終のセリンプロテアーゼ酵素である。トロンビンの主な機能は、フィブリノゲンを分解して、架橋して不溶性ゲルを形成するフィブリンモノマーを生成させることである。さらに、トロンビンは、カスケードの初期にVおよびVIII因子の活性化によって、それ自体の産生を制御する。また、特定の受容体に作用して、血小板凝集、内皮細胞活性化および線維芽細胞増殖を引き起こすという細胞レベルでの重要な作用を有する。したがって、トロンビンは止血および血栓形成において中心的な調節的役割を有する。Xa因子は、プロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する。Xa因子の阻害により、効果的に血液凝固が抑制される。血小板凝集は、トロンビンだけでなく、ADP、コラーゲンおよびエピネフリンなど、いくつかの活性化因子によって引き起こされる。すべての場合において、血小板凝集に至る最終の共通経路は、フィブリノゲンの受容体である主要な糖タンパク質複合体GPIIb/IIIaへのフィブリノゲンの結合である。したがって、このタンパク質へのフィブリノゲンの結合の阻害は、(動脈)血栓形成の予防および血栓障害の治療のために、血小板凝集を抑制する非常に有効な方法と考えられる。
【0004】
GPIIb/IIIa(αIIbβ)は、インテグリンファミリーに属する表面受容体である。インテグリンは、αサブユニットおよびβサブユニットの2つの鎖から成り、これらはカルシウム依存的様式で非共有結合によって一緒に保持されている。GPIIbは、二価陽イオン結合ドメインとサブユニット(αIIb)を構成し、一方、GPIIIaは、プロティピカル(protypical)なβサブユニット(β3)である。インテグリンは、体全体を通して細胞から単離されており、細胞−細胞および細胞−基質の接着およびシグナル伝達のメディエータである。GPIIb/IIIaには3つの結合部位があり、このうち1つはアミノ配列Arg−Gly−Asp(RGD結合部位)を認識し、他の1つはLys−Gln−Ala−Gly−Asp(KQAGD結合部位)を認識し、さらに1つはLys−Gly−Asp(KGD結合部位)を認識する。
【0005】
循環する血小板ごとに、35,000から100,000のGPIIb/IIIa複合体があり;大部分が血小板表面に分布し、内部に予備のより少量の蓄えを有する。GPIIb/IIIa複合体は、血小板がADPまたはトロンビンなどの外因性アゴニストによって活性化されるまで、この血漿リガンドと相互作用を起こさない。これが起こると、複合体の細胞外部分における立体配座の変化を生じさせる内から外へのシグナル(inside−out signal)が発生し、立体配座の変化により分子がフィブリノゲンおよび他のリガンドへ結合することが可能になる。
【0006】
フィブリノゲンのα鎖(RGD)およびγ鎖(KQAGDV)断片を模倣している化合物がアンタゴニストとして作用する可能性がある。ペプチド模倣構造に基づく多数の強力なGPIIb/IIIaアンタゴニストが以前に報告されている。
【0007】
いくつかの(非常に)強力な例には、Ro435054、ゼミロフィバン、RWJ50042、チロフィバンおよびラミフィバンがある。しかし、(1つには)化合物の半減期が短いことによって引き起こされる、血小板凝集の一貫した制御の欠如およびあいまいな薬理学的挙動により、in vitroにおいて優れた効力および薬理学的特性を示す他のGPIIb/IIIaアンタゴニストのかなりの数が、さらに開発されていないか、または後期臨床試験に達したあと、保留されている。短い半減期は、遊離型薬物の血漿濃度における大きな変動につながり、用量反応における個人間変動の原因となる可能性がある(治療の監視が必要とされる。)。
【0008】
さらにH.Darius in Thromb Res.2001,103,S117−S124では、GPIIb/IIIaアンタゴニストに関するすべての大規模臨床試験において、治療効果は、ごくわずかなもので、さらに糖タンパク質GPIIb/IIIa受容体アンタゴニストで治療した患者群では、死亡率の増加すら観察されていたことを報告した。血小板フィブリノゲン受容体の制御についての知識が依然として非常に限られていることに加えて、本薬物の狭い治療域(therapeutic window)および限られた生物学的利用率は、この治療不成功の原因であると考えられた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結論として、GPIIb/IIIaアンタゴニストが予測可能な抗血栓作用、好ましくは、より長い半減期を(血小板凝集の一貫したレベルの抑制を達成するために)有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
欧州特許出願04005343.1において、現在、新規な化合物が報告されており、本化合物は、凝固カスケード(Xa因子)および血小板凝集経路(GPIIb/IIIa)の両方における2つの主要な標的を阻害することによる複合の薬理学的特性を有する二重阻害剤(dual inhibitor)である。本発明は、特に興味深い薬理学的特性を有するそのような二重阻害剤に関する。
【0011】
本発明の化合物は、式I
オリゴ糖−スペーサー−GPIIb/IIIaアンタゴニスト I
(式中、オリゴ糖は、以下の構造の負に帯電した五糖類の残基であり、
【0012】
【化3】

電荷は正に帯電した対イオンによって補償され;
スペーサーは、15−50個の原子長の本質的に薬理学的不活性な結合残基であり;
GPIIb/IIIaアンタゴニストは、チロフィバンまたはその類似体から誘導された残基である。)
を有し、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグもしくはその溶媒和物である。
【0013】
本発明の化合物は、Xa凝固因子のATIII介在による阻害およびフィブリノゲンのこの受容体への結合に拮抗することによる血小板凝集の抑制の両方により有効な抗血栓症薬である。GPIIb/IIIa阻害剤を抗凝固療法と組み合わせる当技術分野で公知の併用療法(例えば、Expert Opin.Investig.Drugs(2003)12(9),1567、US2003/0199457A1およびUS6541488に記載のもの)と比較して、本発明の化合物の薬物動態学的および薬力学的プロフィールは、より一貫した血小板凝集の制御および用量反応におけるより少ない個人間変動をもたらす。
【0014】
本発明の化合物は、血栓症を治療および(場合によって)予防することに有用である。これは凝固カスケードが活性化される多くの血栓および血栓形成前(prothrombotic)の状態を含み、これらには深部静脈血栓、肺塞栓症、血栓静脈炎、血栓症または塞栓症による動脈閉塞、血管形成中または後の動脈再閉塞、動脈損傷または侵襲的心臓病学的手技後の再狭窄、術後の静脈血栓症または塞栓症、脳卒中および心筋梗塞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0015】
好ましい実施形態では、スペーサーは、オリゴ糖残基の酸素を含まないスペーサーの「バックボーン」に沿って数えられる25−35個の原子を有する本質的に薬理学的不活性な結合残基である。スペーサーの化学的性質は、本発明の化合物の抗血栓活性に対して重要性が低い。スペーサーは、環式構造および不飽和結合などの(いくぶん)固定された要素を含む可能性がある。しかし、本発明の化合物のスペーサーは、好ましくは柔軟である。適切なスペーサーは、当業者により容易にデザインされることができる。しかし、合成上の理由のために、スペーサーは長い程適さないと考えられるがより長いスペーサーが、依然として本発明の化合物にうまく適用することができる。好ましいスペーサーは、少なくとも1つの−(CHCHO)−要素を含む。より好ましいスペーサーは、より多くの、好ましくは6つの−(CHCHO)−要素を含む。もっとも好ましいスペーサーは、−(CHCHO)−(CH−NH−C(O)−CHO−(CHCHO)−(CH−NH−C(O)−であり、印で示された末端は、オリゴ糖残基の酸素に結合していることを示す。
【0016】
GPIIb/IIIaアンタゴニスト残基へのスペーサー付着部位は、GPIIb/IIIaアンタゴニスト活性が消失しないとすれば、基本的に任意に選択することができる。したがって、(場合によってエステル化された)カルボン酸部分およびチロフィバン(またはその類似体)の塩基部分は、無変化のままでなければならない。
【0017】
好ましくは、GPIIb/IIIaアンタゴニストは、チロフィバン類似体から誘導された残基である。
【0018】
本発明の一実施形態は、構造IIを有する化合物である。
【0019】
【化4】

【0020】
正に帯電した対イオンは、H、Na、K、Ca2+などを意味する。好ましくは、本発明の化合物は、これらのナトリウム塩の形態である。
チロフィバンは、以下の構造を有する。
【0021】
【化5】

【0022】
「プロドラッグ」という用語は、例えば、式Iの化合物(式中、GPIIb/IIIaアンタゴニスト残基中のカルボキシレート基は、エステル化されている。)などの活性化合物へ体内で代謝される化合物を意味する。
【0023】
本発明による溶媒和物は、水和物を含む。
【0024】
本発明の化合物は、当技術分野で一般に公知の方法を使用して、アミノ酸、ペプチド模倣物または付加官能基(additional functional group)(例えば、−COOH、−NH、−SH、−OHなど)でチロフィバンを場合によって修飾することによって調製することができる。そのような修飾化合物の合成の例は、Bioorganic Chemistry 29,357−379(2001)に記載されており、ここでは本化合物は、標的薬物送達のための潜在的ベクターとして示唆されている。本発明によれば、場合によって修飾されたチロフィバンは、(a)五糖類−スペーサー残基に結合するか、または(b)引き続いて五糖類−スペーサー−残基に結合するスペーサーに結合する(例えば、WO99/65934;WO01/42262によって公知の方法により)。五糖類へのスペーサーの結合は、例えば、EP0649854に記載の方法を用いて実施することができる。
【0025】
本発明の化合物を調製するための上記の方法における手順のステップであるペプチド結合は、ペプチド断片の結合(または縮合)のための当技術分野で一般に公知の方法、例えば、アジド法、混合無水物法、活性化エステル法、カルボジイミド法(carbodiimide method)によるか、または好ましくはTBTUなどのアンモニウム/ウロニウム塩の影響下、特にN−ヒドロキシスクシンイミドおよびN−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの触媒およびラセミ化抑制化合物の添加によって実施することができる。概要は、The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol 3,E.Gross and J.Meienhofer編(Academic Press,New York,1981)およびPeptides:Chemistry and Biology,N.Sewald and H.−D.Jakubke(Wiley−VCH,Weinheim,2002)に示されている。
【0026】
本化合物に存在するアミン官能基は、N−保護基(tert−ブチル臭化オキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基もしくはフタロイル(Phth)基などのαアミノ基の保護にペプチド化学において一般に使用される基を意味する。)による、合成手順の間に保護できるか、またはアジド部分のデマスキングによって導入できる。アミノ保護基およびそれらの除去に関する概要は、上記のThe Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol 3およびPeptides:Chemistry and Biologyにおいて示されている。アミジン官能基が存在する場合、結合のステップで非保護のままにしておくか、またはアリルオキシカルボニルもしくはベンジルオキシカルボニルなどのカルバミン酸塩を用いて保護することができる。アミジン官能基は、前駆体として1,2,4−オキサジアゾリン−5−オン部分を用いて温和な条件下で導入するのが好ましい。
【0027】
カルボン酸基を、tert−ブチルエステルなどのα−カルボン酸基の保護のために、ペプチド化学において一般に使用される基によって保護することができる。修飾されたGPIIb/IIIaアンタゴニストのカルボン酸基を、ベンジルエステルとして好ましくは保護する。保護基の除去は、これら保護基の性質によって異なる方法で行うことができる。通常、脱保護は、酸性条件下およびスカベンジャーの存在下、または接触水素化などの還元条件下で行う。
【0028】
オリゴ糖へのチロフィバン(またはその類似体)の抱合の必要条件は、カルボキシレート基などの直交性反応型(orthogonally reactive)のアンカー基が存在することで、これらはオリゴ糖−スペーサー誘導体に結合するか、またはスペーサーを通してオリゴ糖−スペーサー誘導体に結合することができる。大部分の場合、そのような抱合を可能にするために、チロフィバンの(追加的な)修飾が必要である。
【0029】
式Iの化合物への途中のスペーサー誘導構成要素の構築は、アミノ酸、これらの誘導体もしくはペプチド模倣物の段階的導入による直鎖状様式、または中間構築物のブロック結合による収束的様式でのいずれかの当技術分野で公知の方法を用いる様々な方法において達成することができる。
【0030】
遊離塩基の形態で生じる可能性のある本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で反応混合物から単離することができる。また、薬学的に許容される塩は、式Iの遊離塩基を、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機または無機酸で処理することによって得ることができる。
【0031】
本発明の化合物またはその中間体は、キラル炭素原子を有することができ、したがって、純粋なエナンチオマー、またはエナンチオマーの混合物、またはジアステレオマーを含む混合物として得ることができる。純粋なエナンチオマーを得るための方法は、例えば、光学活性な酸およびラミセ混合物から得られる塩の結晶化、またはキラルカラムを用いたクロマトグラフィーなどの当技術分野において公知である。ジアステレオマーのために、順相または逆相カラムを使用することができる。
【0032】
本発明の化合物は、経腸的または非経口的に投与することができる。正確な用量ならびにこれら化合物およびその組成のレジメンは、薬物を投与される個々の被験者の必要性、苦痛または必要性の程度および医療従事者の判断に必然的に依存する。通常、非経口投与は、吸収に多く依存する他の投与方法より用量が少ない。しかし、ヒトにおける1日投与量は、好ましくは0.0001〜10mg/kg体重、より好ましくは0.001〜1mg/kg体重である。
【0033】
また、本発明の化合物を用いて製造された薬物を、(短期)抗凝固療法における補助剤として使用することができる。そのような場合において、本薬物を、アスピリン、クロピドグレルまたはスタチンなどのそのような疾患状態を治療することにおいて有用な他の化合物と共に投与する。例えば、標準的参考文献のGennaroら、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版,Mack Publishing Company,1990、特にPart 8:Pharmaceutical Preparations and Their Manufactureを参照)に記載のように、薬学的に適切な助剤と混合して、本化合物を、丸剤、錠剤などの固体用量単位に圧縮するか、またはカプセルもしくは坐剤に加工することができる。また、薬学的に適切な液体を用いて、本化合物を、例えば、注射製剤として、または例えば、鼻腔噴霧剤としての使用のためなど噴霧剤として、溶液、懸濁液、乳濁液の形態に適用することができる。
【0034】
錠剤のような用量単位を製造するために、増量剤、着色剤、ポリマー結合剤などの従来の添加物の使用が考えられる。一般に、活性化合物の機能を妨げない薬学的に許容される添加剤を使用することができる。組成を投与することができる適切な担体は、適切な量において使用したラクトース、デンプン、セルロース誘導体など、またはその混合物を含む。
【0035】
本発明は、以下の実施例により、さらに例証される。
【0036】
(実施例)
使用される略語
ADP=アデノシン二リン酸
ATIII=抗トロンビンIII
Bn=ベンジル
DiPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N―ジメチルホルムアミド
Et=エチル
Me=メチル
RT=室温
TBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩
TRAP=トロンビン受容体アゴニストペプチド
Z=ベンジルオキシカルボニル
【実施例1】
【0037】
メチル O−2,3−ジ−O−メチル−4−O−<<12−N−<3−{[15−N−(15−アザ−1−ケト−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデシル)]−カルボニル}−ベンゼンスルホニル>−4−O−{4−(4−ピペリジニル)−ブチル}−L−チロシル>−12−アザ−3,6,9−トリオキサ−ドデシル>>−6−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラヌロノシル−(1−>4)−O−2,3,6−トリ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラヌロノシル−(1−>4)−2,3,6−トリ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシドノナキスナトリウム塩(3)
【0038】
(スキーム1)
化合物3を、化合物1(102mg、54μmol)[WO01/42262に記載の誘導体化された単糖類5とUS2004/0024197に記載の四糖類48とを、脱保護および硫酸化を含むこれら特許出願に記載の方法と同様な方法を用いて結合させることにより得ることができる。]とEP04005343.1に記載のように調製した化合物2(60mg、57μmol)の結合により得た。
【0039】
こうして、カルボン酸誘導体(57μmol)2を、乾燥DMF(2×3mL)中で繰り返し濃縮することにより乾燥させ、DMF(2mL)に溶解し、N雰囲気下のTBTU(19mg、57μmol)およびDiPEA(9.8μL、57μmol)の存在下で撹拌した。1時間後に、五糖類1(53μmol)を加えた。反応混合物を、RTで終夜撹拌し、イオン交換(Mono−Q)および逆相(Luna C18)クロマトグラフィーによって分析した。反応混合物を濃縮した(<50℃、15mmHg)。(粗)生成物(HO/t−BuOH中に10mg/mL、1/1、v/v)を、10%Pd/C(等量(重量)を粗成生物に対して加えた。)による水素添加(H)により脱保護した。16時間後に、溶液を脱気し、0.45μM HPLCフィルターによってろ過し、減圧下(<50℃、15mmHg)で濃縮した。抱合体を、イオン交換クロマトグラフィー(Q−セファロース(Q−sepharose)、緩衝液:HO→2M NaCl)により精製した後、セファデックスG25カラム(HO)により脱塩し、凍結乾燥させた。収量72mg(52%)。
H NMR(DO,600MHz,HH−COSY):δ 7.84(m,1H)、7.75(m,1H)、7.62(m,1H)、7.42(t,1H)、6.83(d,2H)、6.48(d,2H)、5.38(d,1H)、5.33(m,1H)、5.08(d,1H)、5.02(bs,1H)、4.58(d,1H)、4.46(bs,2H)、4.28(m,2H)、4.17(m,1H)、4.22(m,1H)、4.20(m,2H)、4.11(m,2H)、4.04(d,1H)、4.03(m,1H)、4.02(m,1H)、3.88(m,2H)、3.84(m,2H)、3.82(m,1H)、3.79(m,1H)、3.72(1H,m)、3.66(m,2H)、3.62〜3.33(m,54H)、3.20(dd,1H)、3.18(m,1H)、2.92(m,2H)、1.92(m,2H)、1.70(m,2H)、1.58(m,1H)、1.44(m,2H)、1.33(m,4H)。
ESI−MS:m/z 1225.2[M+5H+2Na]2−、823.8[M+3Na+3H]3−、816.5[M+2Na+4H]3−、809.1[M+Na+5H]3−
【0040】
【化6】

【実施例2】
【0041】
薬理学
1.1 ADPにより誘発されたモルモットの血小板凝集の抑制に関するin vitro試験
in vitroにおけるヒトまたはモルモットの多血小板血漿(PRP)に対するアデノシン二リン酸(ADP)の添加は、血小板凝集を誘発する。この凝集は、PRPの光学濃度(OD)における変化を測定することにより評価することができる。以下のin vitro試験は、モルモットのADP誘発凝集への干渉について試験化合物を評価するために使用した。
【0042】
材料
多血小板血漿(PRP):自由流(Free−flowing)の血液を、健常ボランティアまたはモルモットから採取し、蒸留水中の0.1容量のクエン酸ナトリウム.2HO、3.8%(w/v)に収集する。最終濃度は、0.38%クエン酸ナトリウムである。クエン酸塩添加血を、室温でHettich Rotanta/APにおいて1,600N/kg(160g、すなわち900rpm)で遠心する。15分後、遠心を、遠心機のブレーキを切って中止し、上清(=PRP)を収集する。0.9%NaCl中50μMのADP(分析グレード)の新鮮なMQ水溶液を直ちに使用する。このアッセイにおいて、チロフィバン(静注用0.25mg/mL濃縮液として購入したAGGRASTAT(登録商標)(MSD))は、30〜60nMの濃度で5μM ADPにより誘発されたヒトの血小板凝集を50%抑制する(IC50)。
【0043】
器具
1.シスメックス(Sysmex)血球計数器モデルKX−21。
2.620nmフィルター付きのラボシステムズ(Labsystems)iEMSリーダーMF、1,000rpmおよび一定温度37℃に設定されたオービタルシェイカー(orbital shaker)。吸収を、ラボシステムズiEMSプログラムで測定する。
3.針付き血液採取システム600mL、artP4203(NPBI)。
4.96ウェル平底マイクロプレート(Greiner Labortechnik)。
【0044】
手順
上清内の血小板(PRP)を、シスメックス血球計数器を用いて計数し、上清をPPP(乏血小板血漿)で希釈し、約400,000±50,000plt/mLを含むPRPを得る。PRPは、室温で20分以上、3時間未満で安定化するはずである。
【0045】
150μLのPRPを、ピペットでマイクロプレートのウェルに移す。様々な濃度(化合物当たり7つの濃度)の30μLの試験化合物またはビヒクルを加え、マイクロプレートを、37℃でラボシステムズiEMSリーダーMFにかける。次に光学濃度(OD620)を、620nmで測定する。リーダーで2分間振盪(1,000rpm)後、ODを再度測定する。これは血小板の安定性(自然発生の血小板凝集のないこと)について検証するためである。次に、50μM ADP溶液20μLを加え、ODを、620で毎分動力学的に14分間測定する。2つの測定間に、プレートを1,000rpmで40秒間振盪させる。試験化合物ごとに、異なるボランティア由来のPRPを用いて少なくとも2回の実験で調査する。
【0046】
反応の評価
化合物の各濃度(ビヒクルを含む)での平均ODを、t=0分およびt=10分で算出する。各濃度における抑制率を、以下の式を用いて算出する。
【0047】
【数1】

【0048】
試験化合物のIC50は、ADP誘発の血小板凝集が50%減少する濃度である。このために、抑制率の値を、化合物の濃度に対してプロットし、IC50をGraphpad Prism3.0を用いて(様々な傾きで)算出する。
【0049】
1.2 TRAPにより誘発されたヒトの血小板凝集の抑制に関するin vitro試験
in vitroにおける洗浄されたヒトまたはモルモットの血小板(WPL)へのトロンビン受容体アゴニストペプチド(TRAP)の添加により、血小板凝集を誘発する。この凝集は、WPLの光学濃度を測定することにより判定することができる。ここに記載のin vitro試験は、TRAP誘発のヒト血小板凝集を抑制する試験化合物の活性を分析するために用いられる。マイクロプレートリーダーは、同時にいくつかの化合物の活性を測定するために用いられる。
【0050】
材料
ワトソン緩衝液の組成:
O 1L当たり
NaCl 7.83g(134mmol)
KCl 0.22g(2.9mmol)
NaHCO 1.01g(12mmol)
NaHPO.2HO 0.06g(0.34mmol)
MgCl.6HO 0.20g(1mmol)
グルコース0.90g(5mmol)
HEPES 1.19g(5mmol)
pHは、NaOH(1mol/L)TNP緩衝液で7.4に調整する。
【0051】
TNP緩衝液の組成:
O 1L当たり
トロメタミン(トリス)6.057g(50mmol)
NaCl 5.844g(100mmol)
PEG6000 3.0g
溶液のpHは、HCl(10mol/L)により37℃で7.4に調整する。
【0052】
PGI溶液:
KOH(1mol/L)中の1mg/mLのプロスタグランジンI原液を−20℃で保存する。使用直前に、氷冷NaCl(9.0g/L)中の5μg/mLの溶液を調製する。
【0053】
多血小板血漿(PRP):
自由流の血液を、健常ボランティアまたはモルモットから採取し、MQ水中の0.1容量の3.8%クエン酸ナトリウム.2HO(w/v)に収集する。最終濃度は、0.38%クエン酸ナトリウムである。クエン酸塩添加血を、室温でHettich Rotanta/APにおいて1,600N/kg(160g)で遠心する。15分後、遠心を、遠心機のブレーキを切って中止する。さらに上清(=PRP)を収集し、乏血小板血漿で希釈し、約400,000血小板/mLを含む懸濁液を得る。
【0054】
乏血小板血漿(PPP):
クエン酸塩添加血を、RTで約20,000N/kgで10分間遠心し、PPPをサイホンで移す。
【0055】
洗浄血小板(WPL):
一定分量の1μLのPGI溶液を、1mLのPRPに加え、その後、RTで約20,000N/kgで10分間遠心する。血漿をサイホンで移し、5ng/mLのPGIを含むワトソン緩衝液を血小板ペレットに加え、血小板を、プラスチック棒で静かに撹拌しながら原容量に再懸濁する。血小板懸濁液を、20,000N/kgで再度遠心する。血小板をワトソン緩衝液で再懸濁し、約400,000血小板/mLを含む懸濁液を得る。
【0056】
TRAP溶液:
TRAPをHOに溶解し、50μmol/Lを含む溶液を得る。新鮮な溶液を毎日調製する必要がある。すべての水溶液に対して、超高純度のHO(ミリQの品質)を使用する。
【0057】
ヒトフィブリノゲン(Kordia/ERL、art nr:FIB2粉末):0.5gのフィブリノゲン粉末を、真空下で50mLのMQ水に溶解する。この原液を、−20℃で100μLの一定分量で保存する。使用直前に、0.5mg/mLの生理食塩水溶液を調製する。
【0058】
このアッセイにおいて、チロフィバン(静注用0.25mg/mL濃縮液として購入したAGGRASTAT(登録商標)(MSD))は、30〜60nM(IC50)の最終濃度で5μM TRAPにより誘発されたヒトの血小板凝集を50%抑制する。
【0059】
手順
WPL濃度を、シスメックス血球計数器で計数し、懸濁液をワトソン緩衝剤で希釈し、約400,000plt/mLの濃度を得る。使用前に、WPLを、室温で20分以上、3〜4時間未満で安定化させる。
【0060】
150μLのWPLを、ピペットでマイクロプレートのウェルに移す。試験化合物またはビヒクル15μLおよび15μLのフィブリノゲン溶液を加え、マイクロプレートを、37℃でマイクロプレートリーダーにかける。次に、光学密度(OD)を、405nmで測定し、リーダーにおいて2分間振盪後、血小板の安定性(自然発生の血小板凝集のないこと)を検証するために、OD405を再度測定する。50μM TRAP溶液20μLを加え、OD405を405nmで14分間に毎分、動力学的に測定する。2つの測定間に、プレートを1,000rpmで40秒間振盪させる。試験化合物のIC50の判定のために、化合物ごとに、異なるボランティア由来のWPLを用いて少なくとも2回の実験において調査する。
【0061】
反応の評価:
各濃度(ビヒクルを含む)の平均ODを、t=0分およびt=10分で算出する。各濃度における抑制率を、以下の式によりマイクロソフトエクセルを用いて算出する。
【0062】
【数2】

【0063】
化合物の濃度を、抑制率に対してプロットする。IC50をGraphpad Prism3.0を用いて(様々な傾きで)算出する。試験化合物のIC50は、TRAP誘発の血小板凝集が50%減少する濃度である。
【0064】
1.3 ヒト血漿における抗Xa因子活性の判定のためのin vitro試験
ヒト血漿における試験化合物の抗Xa因子活性を、TeienおよびLieにより報告された方法を用いてS2222(Chromogenix、Chromogenics Ltd、スウェーデン、ムルンダール(Molndal))によりアミド分解的(amidolytically)に測定した(Teien AN,Lie M.Evaluation of an amidolytic heparin assay method increased sensitivity by adding purified antithrombin III.Thromb.Res.1977,10:399−410)。抗Xa活性を、アミド分解活性(amidolytic activity)と標準ヘパリンの検量線との比較後にU/μmolで表す。
【0065】
【表1】

【0066】
2.1薬物動態
化合物3の薬物動態学的特性について300〜400grのオスのウィスター系ラットにおいて検査した。ラットを、O/NO/イソフルランの混合物の吸入により麻酔し、その後に右側の頚静脈にカニューレを挿入した。翌日、ラットに100または500nmol/kgの用量を皮下注射した。皮下注射後、血液をいくつかの時間間隔で検体採取した。次に血液を遠心し、その後、血漿をサイホンで移し、使用するまで−20℃で保存した。試験化合物自体の原液から作成した検量線に対する得られた血漿試料中の試験化合物の濃度を、S2222(Chromogenix、Chromogenics Ltd、スウェーデン、ムルンダール(Molndal))を用いてTeienおよびLieの方法を基にした抗Xa活性の測定によりアミド分解的に測定した(Teien AN,Lie M.Evaluation of an amidolytic heparin assay method increased sensitivity by adding purified antithrombin III.Thromb.Res.1977,10:399−410)。試料中の濃度をnmol/mLで表し、動態パラメータを、WinNonlinのノンコンパートメントモデルで算出した。
【0067】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
オリゴ糖−スペーサー−GPIIb/IIIaアンタゴニスト I
(式中、オリゴ糖は、以下の構造の負に帯電した五糖類の残基であり、
【化1】

電荷は正に帯電した対イオンによって補償され;
スペーサーは、15−50個の原子長の本質的に薬理学的不活性な結合残基であり;
GPIIb/IIIaアンタゴニストは、チロフィバンまたはその類似体から誘導された残基である。)
または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグもしくはその溶媒和物。
【請求項2】
スペーサーが25−35個の原子長を有する、請求項1の化合物。
【請求項3】
スペーサーが少なくとも1つの−(CHCHO)−要素を含む、請求項1または2の化合物。
【請求項4】
GPIIb/IIIaアンタゴニストがチロフィバン類似体から誘導された残基である、請求項1から3のいずれか一項の化合物。
【請求項5】
構造
【化2】

を有する、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項6】
このナトリウム塩の形態である、請求項5の化合物。
【請求項7】
修飾されたチロフィバン類似体がスペーサーに結合され、引き続いて、オリゴ糖−スペーサー−残基に結合されるステップを含む、式Iの化合物の調製方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項の化合物および薬学的に適切な助剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
治療に使用するための請求項1から6のいずれか一項の化合物。
【請求項10】
血栓症を治療または予防するための薬物製造のための請求項1から6のいずれか一項の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−511544(P2009−511544A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535003(P2008−535003)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067128
【国際公開番号】WO2007/042470
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】