説明

抗血栓活性を有する低分子量多糖

エピK5-N-硫酸の亜硝酸解重合によって、又はK5-N-硫酸の亜硝酸解重合によって得られたLMW-K5-N-硫酸のC5-エピマー化によって調製されたLMW-エピK5-N-硫酸を原料として得られる新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を開示する。方法は、原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を、4つの工程:O-過硫酸化、部分的O-脱硫酸化、6-O-硫酸化及びN-硫酸化に供することからなる。解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、大部分の鎖の還元末端に、ジ硫酸化又はトリ硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットを有し、イズロン酸含量40〜60%、硫酸化度2.3〜2.9及び平均分子量約1,500〜約12,000を有する。これらは、良好な抗血栓活性を発揮するが、出血の危険性は低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固の調節のため又は血栓症の予防又は治療のための薬剤として有用な、K5多糖から誘導された新規な低分子量多糖に関し、この低分子量多糖は、凝固因子についての良好な活性を有し、出血の危険性が低い。さらに詳述すれば、本発明は、硫酸化度2.7〜2.9を有する新規なLMW-エピK5-N,O-硫酸に関し、このLMW-エピK5-N,O-硫酸は、新規なLMW-エピK5-N-硫酸(これ自体は、エピK5-N-硫酸の亜硝酸解重合によって調製される)を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理し、このようにして得られたLMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供し、このようにして得られた部分的O-脱硫酸化生成物を処理して6-O-硫酸化し、最後に、このようにして得られた6-O-再硫酸化生成物を、N-硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理することによって得られる。さらに、本発明は、硫酸化度2.3〜2.9を有する前記LMW-エピK5-N,O-硫酸の製法及び新規な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の如きグリコサミノグリカンは、各種の動物の臓器から工業的に抽出された生体高分子である。
【0003】
特に、抽出により、主に豚の腸粘膜又はウシの肺から得られるヘパリンは、基本的に、α-1→4結合又はβ-1→4結合によって結合されたウロン酸(グルクロン酸又はイズロン酸)及びアミノ糖(グルコサミン)からなる鎖混合物で構成された、約3,000〜約30,000Dの分子量分布をもつ多分散系コポリマーである。ヘパリン中では、ウロン酸ユニットは、2位においてO-硫酸化され、グルコサミンユニットは、存在するグルコサミンユニットの約0.5%において、N-アセチル化又はN-硫酸化、6-O-硫酸化、及び3-O-硫酸化されている。
【0004】
哺乳類におけるヘパリンの特性及び天然の生合成は、Lindahlらによって、1986年、Lane, D及びLindahal, U. (編集者), 「ヘパリン,化学的及び生物学的特性;臨床応用」, Edward Arnold, London, p. 159-190に;Lindahl, U., Feingold D.S.及びRoden L.によって、1986年、TIBS, 11, 221-225に;及びConrad H.E.によって、「ヘパリン結合タンパク質」, 第2章:ヘパリノイドの構造, Academic Press, 1998に記載されている。ヘパリンの生合成は、繰返し二糖ユニットグルクロニル-β-1→4-N-アセチルグルコサミンからなる鎖混合物で構成された、その前駆体N-アセチル-ヘパロサンを原料として行われる。前記前駆体は酵素による変性を受ける。この変性は、N-アセチル基を部分的に加水分解し、この基をSO3-基にて置換し、グルクロン酸ユニットの一部について、5位のカルボキシル基をエピマー化し、それらをイズロン酸ユニットに変換し、及びO-硫酸基を導入して、工業的に抽出されると、二糖ユニット当たり、カルボキシ基について、ほぼ倍の数の硫酸基を有する生成物を生成するものである。これらの酵素変性は、とりわけ、五糖アンチトロンビンIII(ATIII)結合領域(活性五糖と呼ばれる)の形成を導き、この五糖アンチトロンビンIII(ATIII)結合領域は、ヘパリンのATIIIに対する高度の親和結合にとって必要であり、ヘパリンの抗凝固及び抗血栓活性にとって必須である構造である。この五糖(ヘパリンを形成する鎖のいくつかにのみ存在する)は、3位における硫酸化グルコサミンユニット、及びイズロン酸を含有する二糖の間で、間隔を置いて配置されたグルクロン酸を含有する。
【0005】
本質的に、活性五糖の形成は、D-グルクロニルC5-エピメラーゼによって提供される、グルコン酸ユニットの一部におけるカルボキシルのイズロン酸ユニットへのエピマー化反応(C5-エピマー化)及びグルコサミンの3位のヒドロキシル基へ硫酸基を導入する好適な硫酸化によって可能になる。さらに詳述すれば、本質的に、活性五糖の形成は、C5-エピマー化が、まとまって、すなわち、鎖の部分上で、かつ広範囲に生じ、これによって、グルクロン酸ユニットよりも多くのイズロン酸ユニットを含有する生成物を生ずるとの事実によって可能になる。実際、市販のヘパリンは、イズロン酸ユニット約70%及びグルクロン酸ユニット30%を含有する。
【0006】
大腸菌(Escherichia coli)から単離された莢膜K5多糖(Vann W.F.ら, European Journal of Biochemistry, 1981, 116, 359-364(「Vann 1981」)に記載されている)は、繰返し二糖ユニットグルクロニル-β-1→4-N-アセチルグルコサミンで形成される鎖混合物からなり、従って、ヘパリンのN-アセチル-ヘパロサン前駆体の同じ繰返し二糖ユニット(A)
【化1】

を示すことが知られている。莢膜K5多糖(以下、「K5多糖」又はさらに簡単に「K5」と表示する)は、Lormeauらによって、米国特許第5,550,116号に記載されたように、及びCasuらによって、Carbohydrate Research, 1994, 263, 271-284に記載されたように、化学的に修飾されている。抗腫瘍活性、抗癌移転活性、抗ウイルス活性、特に、抗-HIV活性を有するK5-O-硫酸は、ヨーロッパ特許第333243号及び国際特許公開WO98/34958に記載されている。K5は、動物の臓器から抽出されたヘパリン(抽出ヘパリン)と同じ種類の凝固に関するインビトロ生物活性を有する生成物を得るために、化学的及び酵素的手段によっても修飾されている。
【0007】
抽出ヘパリンと同じタイプの凝固に関する活性を有する生成物の形成は、自然界において生ずるものと類似しており、D-グルクロニルC5-エピメラーゼによるC5-エピマー化をキー工程として包含する方法によって達成される。
【0008】
イタリー国特許第1,230,785号、国際特許公開WO92/17507、同WO96/14425及び同WO97/43317に記載された方法は、原料物質として、K5を使用するものである。発酵によるK5を、N-脱アセチル化、続いて、N-硫酸化に供し、このようにして得られたK5-N-硫酸について、マウスの肥満細胞種から(イタリー国特許第1,230,785号)又はウシの肝臓から(国際特許公開WO92/17507、同WO96/14425及び同WO97/43317)得られたミクロソーム酵素の溶液のクロマトグラフィーによって得られたC5-エピメラーゼによるC5-エピマー化を行う。
【0009】
ウシの肝臓からのD-グルクロニルC5-エピメラーゼは、Campbell P.らによって精製されており(J. Biol. Chem., 1994, 269/43, 26953-26958(「Campbell 1994」))、Campbellらは、そのアミノ酸組成を示し、K5-N-硫酸の相当する30%エピマー化生成物への変換に関する溶液状態での使用を記載すると共に、HPLC法、続く、二糖までの完全亜硝酸解重合によるイズロン酸の生成を実証している。
【0010】
国際特許公開WO98/48006には、D-グルクロニルC5-エピメラーゼをコードするDNA配列及びJin-PingらによってJ. Biol. Chem., 2001, 276, 20069-20077(「Jin-Ping 2001」)に示されたように、前記DNAを含有する組換え発現ベクターから得られ、続いて、Campbellらの方法によって精製された組換えD-グルクロニルC5-エピメラーゼが記載されている。
【0011】
完全C5-エピメラーゼ配列は、Crawford B.E.らによって、J. Biol. Chem., 2001, 276(24), 21538-21543(「Crawford 2001」)に記載されている。
【0012】
国際特許公開WO01/72848には、ウロン酸全体に関して、少なくとも40%がイズロン酸にエピマー化され、分子量2,000〜30,000を有し、ATIIIに関する高親和性鎖25〜50%を含有し、及び抗凝固及び抗血栓症活性(HCII/抗Xa比として表される)1.5〜4を有する、K5多糖のN-脱アセチル化、N-硫酸化誘導体の製法が記載されている。
【0013】
前記方法(順次、大腸菌からのK5の調製、N-脱アセチル化及びN-硫酸化、C5-エピマー化、過硫酸化、選択的O-脱硫酸化、6-O-硫酸化及びN-硫酸化を包含する)は、特殊な2価カチオンの存在下、溶液中に存在する又は不動化したC5エピメラーゼによって行われるC5-エピマー化を提供する。国際特許公開WO01/72848によれば、C5エピマー化は、不動化した又は溶液中に存在する天然の又は組換え酵素によって、温度30〜40℃において、1〜24時間で、差なく行われる。
【0014】
さらに、前記国際特許公開公報は、上述の反応工程の終了時、最終生成物について行われる、亜硝酸による解重合反応を開示している。
【0015】
米国特許出願公開第2002/0062019号には、凝固の調節に関して活性であり、硫酸化度2.3〜2.9及び分子量2,000〜30,000、又は4,000〜8,000、又は18,000〜30,000を有するエピK5-N,O-硫酸の製法が記載されている。この方法は、次の工程:(s-a)K5多糖のN-脱アセチル化及び得られたK5-アミンのN-硫酸化、(s-b)K5-N-硫酸のエピマー化、(s-c)エピK5-N-硫酸のO-過硫酸化、(s-d)部分O-脱硫酸化、(s-e)選択的6-O-硫酸化、(s-f)このようにして得られた生成物のN-硫酸化を包含し、工程(s-b)〜(s-f)のいずれかの終了時点で得られた生成物は、容易に、解重合を受ける。この公報には、上記の工程(s-a)〜(s-f)、続く、工程(s-f)の終了時における亜硝酸解重合によって得られた、分子量7,400を有し、硫酸化度2.3〜2.9をもつエピK5-N,O-硫酸が記載されている。
【0016】
この公報には、工程(s-a)〜(s-f)に供される、分子量約5,000をもつK5フラクションも記載されている。
【0017】
用語を統一し、明細書をより分かり易いものとするため、本願明細書では、一般的な用語又は表現を、単数及び複数の形で使用する。特に;
−「K5」又は「K5多糖」は、発酵によって大腸菌から得られた莢膜多糖、すなわち、文献に記載された方法に従って、特に、「Vann 1981」に従って、Manzoni M.ら, Journal of Bioactive Compatible Polymers, 1996, 11, 301-311(「Manzoni 1996」)に従って、又は国際特許公開WO01/72848又は米国特許出願公開第2002/0062019号に記載された方法に従って調製及び精製された、上述のように、非還元末端に、任意に、二重結合を含有する二糖ユニット(A)からなる鎖混合物を意味する(後述の事項が各種のN-アセチルヘパロサンに適用されることは、当業者にとって明白である);
−「C5-エピメラーゼ」は、特に、「Campbell 1994」、国際特許公開WO98/48006、Jin-Ping L.ら, J. Biol. Chem., 2001, 276, 20069-20077(「Jin-Ping 2001」)又は「Crawford 2001」に記載されたようにして調製、単離及び精製された抽出又は組換えのD-グルクロニルC5-エピメラーゼを意味する;
−「K5-アミン」は、少なくとも95%N-脱アセチル化された、好ましくは充分にN-脱アセチル化された、すなわち、N-アセチル基が、通常のNMR装置によって検出されない状態のK5を意味する;
−「K5-N-硫酸」は、少なくとも95%、好ましくは100%N-脱アセチル化され、及びN-硫酸化されたK5(N-アセチル基が、通常のNMR装置によって検出されないため)を意味する;
−「エピK5」は、グルクロン酸ユニットの40〜60%が、イズロン酸ユニットにC5-エピマー化されているK5又はその誘導体を意味する;
−「エピK5-N-硫酸」は、グルクロン酸ユニットの40〜60%が、イズロン酸ユニットにC5-エピマー化されているK5-N-硫酸を意味する;
−「エピK5-アミン-O-過硫酸」は、硫酸化度少なくとも2をもつエピK5-アミン-O-硫酸を意味する;
−「エピK5-N,O-硫酸」は、グルクロン酸ユニットの40〜60%が、イズロン酸ユニットにC5-エピマー化されている、硫酸化度2.3〜2.9をもつK5-N,O-硫酸を意味する;
−定義した上記の一般的な用語及び表現は、発酵後に単離された、一般に、分子量分布約1,500〜約50,000、平均分子量約12,000〜25,000、有利には、15,000〜25,000を持つK5に関する;
−分子量を他に特定しない限り、定義した上記の一般的な用語及び表現は、頭文字「LMW(低分子量)」が先頭に付けられた場合(特に、LMW-エピK5-N-硫酸、LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸、LMW-エピK5-N,O-硫酸)、平均分子量約1,500〜約12,000を有する低分子量生成物を表わす;
−後に「誘導体」が付けられた場合、定義した上記の一般的な用語及び表現は、全体として、本来のK5からの誘導体及び低分子量K5のものの両方を表わす;
−用語「解重合-LMW-エピK5-N-硫酸」は、後述するように、順序(i)→(ii)又は順序(ii)→(i)に従って得られたLMW-エピK5-N-硫酸を示し;同じように、用語「解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸」及び「解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸」は、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を原料として得られた、それぞれ、LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸及びLMW-エピK5-N,O-硫酸を示す;
−定義した上記の一般的な用語及び表現における「K5」の前にある接頭語「エピ」は、全体として、上記に定義したように、本来のK5からの生成物及びエピK5(40〜60%エピマー化されている)からのものの両方を示す。
【0018】
加えて:
−他に特に示さない限り、用語「分子量」又は「平均分子量」は、ヘパリンの標準物及び低分子量ヘパリンの基準物について、HPLCによって測定した分子量を示す;
−分子量に関して、用語「約」は、粘度によって測定された分子量±二糖ユニットの理論質量を意味する(ナトリウムの重量を含み、エピK5-N-硫酸誘導体の場合461として、硫酸化度2.8をもつエピ-K5-N,O-硫酸誘導体の場合644として算定される);
−表現「優勢な化学種」は、LMW-エピK5-N-硫酸、LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸又はLMW-エピK5-N,O-硫酸を構成する混合物において、HPLCによって測定された分子量曲線のピークによって決定された最も代表的な化学種である化合物を意味する;
−他に特別に述べない限り、「硫酸化度」は、Casu B.らによりCarbohydrate Research, 1975, 39, 168-176(「Casu 1975」)に開示された導電率法にて測定された比SO3-/COO-(二糖ユニット当たりの硫酸基の数としても表示される)を意味する;
−「O-過硫酸化条件」は、例えば、B. CasuらによってCarbohydrate Research, 1994, 263, 271-284(「Casu 1994」)に開示された方法Cに従って行われる過激なO-硫酸化を意味する;
−用語「アルキル」は、直鎖状又は分枝状のアルキルを意味し、「テトラブチルアンモニウム」は、テトラ(n-ブチル)アンモニウム基を示す。
【0019】
最後に、文献では、多糖K5(K5)は、「アセチルアミノヘパロサン」とも称されていることが注目されなければならない。このため、K5-アミンは「アミノヘパロサン」に対応し、K5-N-硫酸は「スルフアミノヘパロサン」に対応し、その他も同様であり、一方、これら生成物がエピマー化された場合、文献では、上記用語は、それらの前に用語「エピマー化」が存在している。この明細書では、当該記載は、ここに開示する生成物の起源を強調するため「K5」に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
国際特許出願PCT/IB03/02338号(参考として、本明細書に含める)には、抗血管新生活性及び抗ウイルス活性を有するエピK5-N,O-過硫酸誘導体の調製における中間体として有用なエピK5-アミン-O-過硫酸誘導体が開示されている。このエピK5-アミン-O-過硫酸誘導体は、エピK5-N-硫酸誘導体を、好ましくは水酸化テトラブチルアンモニウムにて処理し、反応混合物を、30〜60分間、pH約7に維持し、このようにして得られた塩、好ましくはテトラブチルアンモニウム塩を単離し、及び、この塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理することからなる方法によって調製される。当該文献は、LMW-エピK5-N-硫酸を原料とするLMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の調製を開示している。
【0021】
イタリー国特許出願第MI2002A001346号及び同第MI2002A001854号(参考として、本明細書に含める)と同様に、前記国際特許出願PCT/IB03/02338号は、初めて、好ましくはN-アセチル基を含有しない(N-アセチル基フリー)LMW-エピK5-N-硫酸(ここで、ウロン酸全体に関するイズロン酸の含量は、40〜60%、好ましくは約50%である)を開示するものである。このLMW-エピK5-N-硫酸は、各種の生物学的パラメーター、特に凝固パラメーターに関する高い活性度を有するLMW-エピK5-N,O-硫酸の調製における有用な中間体である(イタリー国特許出願第MI2002A001346号)。前記LMW-エピK5-N-硫酸の調製は、上記3つの文献に詳細に記載されている。
【0022】
さらに、国際特許出願PCT/IB03/02339号は、
−酸性形の(エピ)K5-N-硫酸誘導体を、第3級又は第4級有機塩基にて処理し、反応混合物を30〜60分間放置し、前記第3級又は第4級塩基の添加によって、溶液のpHを約7に維持し、及び前記塩基との塩を単離し;及び
−前記(エピ)K5-N-硫酸誘導体の有機塩基との塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理し、及び(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体を単離する
ことを包含する方法によって得られる(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体又はその薬学上許容される塩を、有効成分として含有する医薬組成物を開示している。
【0023】
国際特許公開WO01/72848及び米国特許出願公開第2002/0062019号に記載されているように、ウロン酸全体に関して少なくとも40%がエピマー化されて、イズロン酸となっており、かつ低分子量を有するK5多糖のN,O-硫酸化、N-脱アセチル化された誘導体の調製において、国際特許公開WO01/72848に記載された方法の工程(g)の終了時及び米国特許出願公開第2002/0062019号に記載された方法の工程(vi)の終了時に得られた高分子量生成物の解重合は、一般に、解重合前の高分子量生成物よりも、全ての凝固パラメーターに関する活性が非常に低い解重合生成物が生成されるため、不均一な結果を生ずるものであることが観察される。これは、亜硝酸による減成が、硫酸基の存在によって影響を受けるために生ずるものと予測される。特に、Nagasawaらによって、Thrombosis Research, 1992, 65, 463-467(Nagasawa 1992)に記載されているように、グルコサミンの3位における硫酸基の存在によって不均質生成物が生ずる。米国特許出願公開第2002/0062019号では、欠点は、選択的O-脱硫酸化工程を、ジメチルスルホキシド/メタノールによる過硫酸化生成物の反応の時間を135〜165分間の範囲、好ましくは約60℃において、150分間に維持することによって行うことにより解消されている。この特殊で、有利な方法は、国際特許公開WO02/50125に詳細に記載されている。
【0024】
発明者らは、例えば、B. Casuらによって、Carbohydrate Research, 1975, 39, 168-176(Casu 1975)に記載された方法Cに従って、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸をO-過硫酸化反応に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を生成し、得られた解重合-過硫酸化生成物を、選択的O-脱硫酸化、ついで、6-O-硫酸化に供し、及びこのようにして得られた部分的に脱硫酸化された解重合生成物を、最後に、N-硫酸化条件下において硫酸化剤にて処理して、硫酸化度約2.3〜約2.9を有する所望の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離することによって、硫酸化度約2.3〜2.9及び凝固パラメーターに関して良好な活性を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸が得られるとの知見を得た。
【0025】
さらに、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を原料として操作することによって、ジメチルスルホキシド/メタノールによる選択的部分O-脱硫酸化を、より広い範囲の加熱時間で行うことができ、このため、使用する選択的O-脱硫酸化時間を関数として変動するものの、凝固パラメーターに関して常に高い活性を有する最終の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を、再現可能な態様で得ることができるとのとの知見を得た。
【0026】
特に、驚くべきことには、平均分子量約6,000を有する解重合-LMW-エピK5-N-硫酸をO-過硫酸化に供し、このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を選択的O-脱硫酸化に供し、部分的にO-脱硫酸化された解重合生成物を6-O-脱硫酸化及び、ついで、国際特許公開WO02/50125に記載されたものと同様の条件下でのN-硫酸化に供することによって、平均分子量約6,000、硫酸化度2.7〜2.9、低分子量ヘパリン標準物(sLMWH)の活性のいずれも半分の抗-Xa活性及び抗-IIa活性、すなわち、sLMWHのものと同一の抗-Xa/抗-IIa比を有するが、凝固時間を増大させる能力はsLMWHの1/5〜1/8である解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸が得られるとの知見を得た。このように、抗-Xa/抗-IIa比に関する限りsLMWHと同じであり、同じ用量において、sLMWHよりも出血の危険性が2.5〜4倍低い、多糖K5から誘導されたグルコサミノグルカンが、初めて得られた。
【0027】
さらに、O-過硫酸化条件化における解重合-LMW-エピK5-N-硫酸のO-硫酸化剤での処理を包含する方法によって得られる解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸は、全て、実質的に抗凝固活性を欠いているが、国際特許出願PCT/IB03/02339号に記載されたLMW-エピK5-アミン-O-過硫酸のような良好な殺菌活性を有するとの知見を得た。
【0028】
最後に、O-過硫酸化条件下における、対応する(エピ)K5-N-硫酸誘導体のO-硫酸化剤での処理によって得られる、硫酸化度2〜4を有する(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体は、全て、実質的に抗凝固活性を欠いているが、良好な殺菌活性を有しており、従って、医薬組成物の調製のための有効成分であるとの知見を得た。この医薬組成物は、微生物、特にウイルスによる感染症の治療を対象とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
このように、本発明の目的は、硫酸化度2.3〜2.9を有する新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を製造する方法であって、
(a)解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を生成し;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を生成し;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を生成し;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸をN-硫酸化反応に供し、このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を、好ましくは、そのナトリウム塩(任意に、他の薬学上許容されるその塩に変換される)として単離する、
ことを包含することを特徴とする新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の製法を提供することにある。
【0030】
薬学上許容される塩としては、アルカリ金属、特にナトリウム又はカリウムとの塩、アルカリ土類金属、特にカルシウム又はマグネシウムとの塩、アンモニウム塩及び亜鉛塩が好適である。
【0031】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸は、エピK5-N-硫酸を亜硝酸解重合に供し、続いて、通常、水素化ホウ素ナトリウムでの還元を行うことによって調製される。前記原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の調製に使用されるエピK5-N-硫酸は、例えば、国際特許公開WO01/72848、米国特許出願公開第2002/0062019号又は国際特許公開WO02/068477に記載されているもののような、イズロン酸含量40〜60%を有し、N-硫酸基少なくとも95%を含有するものである。
【0032】
さらに詳述すれば、上述の原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸は、K5-N-硫酸を、いずれかの順序で、
(i)単離し、精製し、固体支持体上に不動化した又は溶液中のD-グルクロニルC5-エピメラーゼによる、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びマンガンの中から選ばれる少なくとも1つの2価イオンの存在下、pH約7、温度約30℃、時間12〜24時間でのC5-エピマー化に供し;及び
(ii)亜硝酸解重合に供し、続いて、通常、水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行う
ことを包含する方法によって調製される。
【0033】
表現「いずれかの順序で」は、順序(i)→(ii)、すなわち、上述の順序、又は逆の順序(ii)→(i)、すなわち、K5-N-硫酸を、初めに、亜硝酸解重合反応に供し、続いて、水素化ホウ素ナトリウムでの還元を行い、ついで、上述の条件下でのC5-エピマー化に供することによっても、方法が、差なく実施されることを意味する。好適な順序は、(i)→(ii)の方向である。順序(ii)→(i)は、平均分子量4,000以上を有するLMW-K5-N-硫酸を原料とする場合、好ましくは、約6,000を有するものを原料とする場合に好適に使用される。例えば、当業者であれば、エピK5-N-硫酸1gを使用して、硫酸化度2.3〜2.9を有する対応するLMW-エピK5-N,O-硫酸の調製に有用な中間体を得るために、平均分子量4,000以上、特に、少なくとも6,000をもつLMW-エピK5-N-硫酸を生成することを可能にする亜硝酸ナトリウムの量を決定できる。実際、この場合には、工程(ii)において、最適なエピマー化率(%)が達成される。このように、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の調製が、順序(ii)→(i)に従って行われる場合、平均分子量4,000以上、有利には、5,000〜7,500、好ましくは6,000〜7,500を有する解重合-LMW-K5-N-硫酸についてエピマー化を行う際に、エピマー化は最適な態様で生ずる。
【0034】
符号(i)及び(ii)は、ここで使用するように、これら工程を実施する順序にかかわらず、それぞれ、解重合工程及びC5-エピマー化工程を表す。
【0035】
C5-エピメラーゼは、溶液中に存在する状態又は不活性な固体支持体上に不動化された状態で使用される。後者の場合、例えば、Cambell 1994、国際特許公開WO98/47006、Jin-Ping 2001又はCrawford 2001に従って単離及び精製されたC5-エピメラーゼ(好ましくは、組換えによるもの)を、基質の存在下、すなわち、原料K5-N-硫酸又はLMW-K5-N-硫酸の存在下で、不活性支持体上に不動化させる(LMW-K5-N-硫酸は、通常、平均分子量4,000以上、有利には4,000〜7,500、さらに有利には5,000〜7,500、好ましくは少なくとも6,000をもつ)。不動化は、例えば、国際特許公開WO01/72848に記載されているように、一般的方法に従って行われる。
【0036】
C5-エピマー化反応は、基質(K5-N-硫酸又はLMW-K5-N-硫酸;後者は、通常、平均分子量4,000以上、特に、4,000〜7,500をもつ)0.001〜10g及びカルシウム、マグネシウム、バリウム及びマンガンの中から選ばれる濃度10〜60mMのカチオンを含有するpH約7の25mM HEPES溶液20〜1,000 mlを、不動化酵素1.2×107〜3×1011cpmを収容するカラムを通して循環させ、約30℃、流量30〜220 ml/時間、pH約7を12〜24時間、有利には15〜24時間維持することによって行われる。
【0037】
好ましくは、前記溶液を、流量約200 ml/時間で一夜(15〜20時間)循環させる。公知の方法、例えば、限外濾過及びエタノールによる沈殿によって、得られた生成物を精製、分離する。このようにして得られた生成物は、エピK5-N-硫酸(この場合、水に溶解され、解重合に供される)又はLMW-エピK5-N-硫酸(この場合、最終生成物である)からなる。エピマー化率(実際には、グルクロン酸ユニットに対するイズロン酸ユニットの量)は、国際特許公開WO96/4425に記載された方法に従って1H-NMRを使用することによって算定される。
【0038】
亜硝酸解重合は、公知のヘパリンの解重合法に従って、例えば、ヨーロッパ特許第37,319号、国際特許公開WO82/03627に記載された方法に従って、又はヨーロッパ特許第544,592号に記載されたK5-N-硫酸の解重合法に従って、ただし、アセチル基0〜5%を含有するK5-N-硫酸又はエピK5-N-硫酸を原料として行われる。エピK5-N-硫酸について亜硝酸ナトリウム及び塩酸を使用して行われる解重合では、続いて、その場での水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行う。
【0039】
実際には、(エピ)K5-N-硫酸の冷たい水溶液を、塩酸によって酸性pH(約2)とし、なお冷たい間に、温度(約4℃)及びpH(約2)を一定に維持することによって、亜硝酸ナトリウムにて処理し、解重合(約15〜30分)の終了後、溶液を水酸化ナトリウムにて中和し、なお約4℃において、水素化ホウ素ナトリウムの水溶液によって処理する。還元(約4時間)の終了時、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを塩酸にて分解し、溶液を水酸化ナトリウムにて中和し、解重合(及び還元)生成物を、公知の方法に従って、例えば、エタノール又はアセトンでの簡単な沈殿によって単離する。
【0040】
解重合の終了時に得られた生成物は、特に、平均分子量4,000以上、有利には4,000〜7,500、さらに有利には5,000〜7,500、好ましくは少なくとも6,000を有する場合には、LMW-エピK5-N-硫酸(この場合、最終生成物を構成する)又はLMW-K5-N-硫酸(この場合、上記のように、単離後、直接、上述のようなC5-エピマー化に供される)である。特に、各種の量の亜硝酸ナトリウム/塩酸を使用して、解重合反応を好適に制御することによって、2,5-アンヒドロマンニトールのC2に起因するシグナルの、多糖鎖内のグルコサミンのアノマー炭素のシグナルでの積分によって13C-NMRスペクトルで算定して、平均分子量約1,500〜約12,000、有利には約1,500〜約10,000、好ましくは約1,500〜約7,500を有するLMW-K5-N-硫酸又はLMW-エピK5-N-硫酸が得られる。
【0041】
方法の一般的態様によれば、例えば、エピK5-N-硫酸1gを原料として、原料を脱イオン水100〜200 mlに溶解し、4℃において恒温とする。ついで、亜硝酸ナトリウムの所定量を添加して、所望の平均分子量を得る。例えば、平均分子量約20,000(BioRad BioSil 250カラムを具備し、既知分子量のヘパリン標準物を使用するHPLC法によって測定)を有する(エピ)K5-N-硫酸を原料として、平均分子量約2,000〜約4,000を有するLMW-(エピ)K5-N-硫酸を得るためには、0.2%水溶液に溶解した亜硝酸ナトリウム330〜480 mgを添加することが必要である。(エピ)K5-N-硫酸及び亜硝酸ナトリウムを含有する溶液を4℃に維持し、4℃に冷却した0.1N HClの添加によって、pH2とする。ゆっくりとした攪拌下に溶液を放置して、20〜40分間反応させ、ついで、0.1N NaOHにて中和する。このようにして得られた生成物を含有する溶液を室温とし、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(250〜500 mgを水50〜100 mlに溶解したもの)にて処理し、4〜8時間反応させる。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを、0.1N HClにてpHを5〜5.5とすることによって除去し、混合物をさらに2〜4時間放置する。終了後、混合物を、0.1N NaOHにて中和し、減圧下での蒸発によって生成物を濃縮した後、アセトン又はエタノールでの沈殿によって生成物を回収する。
【0042】
同様に、K5-N-硫酸又はエピK5-N-硫酸1gを原料として、平均分子量約4,000〜約12,000、有利には約4,000〜約7,500、特に6,000〜7,500をもつ解重合-LMW-K5-N-硫酸又は解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を得ることができる亜硝酸ナトリウムの量が決定される。
【0043】
このようにして得られた、イズロン酸含量40〜60%、有利には50〜55%をもち、好ましくはNH2及びN-アセチル基を実質的に含有せず、平均分子量約1,500〜約12,000、有利には約1,500〜約10,000、好ましくは約1,500〜約7,500を有する解重合-LMW-エピK5-N-硫酸又はその化学的又は薬学上許容される塩は、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の製造における原料物質である。
【0044】
有利には、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の製造における原料物質は、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも90%が、式I
【化2】

(式中、ウロン酸ユニットの40〜60%、好ましくは50〜55%はイズロン酸からなり、nは2〜20、有利には3〜15の整数であり、及び対応するカチオンは、化学的又は薬学上許容されるものである)を有するものである解重合-LMW-エピK5-N-硫酸である。
【0045】
この明細書において、用語「化学的」は、化学合成において使用されるカチオン、例えば、ナトリウム、アンモニウム、テトラ(C1-C4)アルキルアンモニウムイオンに関するものであり、又は生成物の精製に関するものである。
【0046】
有利なカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、テトラ(C1-C4)アルキルアンモニウム、アルミニウム及び亜鉛に由来するものである。好適なカチオンは、ナトリウム、カルシウム及びテトラブチルアンモニウムイオンである。
【0047】
上述の対応するエピK5-N-硫酸の亜硝酸解重合及び続く、例えば、水素化ホウ素ナトリウムでの還元によって得られる、鎖の少なくとも90%が上記式Iを有するものである鎖混合物からなる解重合-LMW-エピK5-N-硫酸は、特に興味深い原料物質である。これらの中でも、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が、式I'a
【化3】

(式中、ウロン酸ユニットの40〜60%はイズロン酸ユニットであり、pは4〜8の整数であり、及び対応するカチオンは化学的に又は薬学上許容されるものである)を有するものである解重合-LMW-N-エピK5-N-硫酸が、特に有利な原料物質である。これら物質の平均分子量は、約2,000〜約4,000である。
【0048】
亜硝酸解重合、続く、例えば、水素化ホウ素ナトリウムでの還元からの、これらエピK5-N-硫酸の系統では、前記鎖混合物中の大部分の鎖の還元末端に、構造(a)
【化4】

(式中、Xはヒドロキシメチル基を表す)を含む。従って、大部分の鎖の還元末端は、実際には、構造(b)
【化5】

(式中、Xは上記のとおりである)で表される。
【0049】
本発明による他の特に有利な解重合-LMW-エピK5-N-硫酸原料物質は、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が、式I'b
【化6】

(式中、Xはヒドロキシメチル基であり、mは4、5又は6であり、対応するカチオンは化学的又は薬学上許容されるイオンであり、及びグルクロン酸ユニット及びイズロン酸ユニットは交互に存在し、非還元末端がグルクロン酸ユニット又はイズロン酸ユニットである)で表される化合物である。この場合、グルクロン酸ユニット/イズロン酸ユニットの比は、45/55〜55/45であり、例えば、約50/50である。
【0050】
C5-エピメラーゼ(好ましくは、組換えによるもの;好ましくは、上述の条件下で固体支持体上に不動化したもの)は、従って、自然界においては生ずるが、一般的な態様であるような、K5-N-硫酸誘導体のエピK5-N-硫酸誘導体への「まとまった」エピマー化を許容しない。
【0051】
上述のプロセス(a)〜(d)による新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の調製において、工程(a)は、原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸のO-過硫酸化からなり、このO-過硫酸化は、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を得るため、文献に記載された方法のいずれかに従って、例えば、Casuらによって記載された方法Cに従って、又は、例えば、米国特許出願公開第2002/0062019号に記載されているような前記方法の変法に従って行われる。
【0052】
亜硝酸解重合、続く、例えば、水素化ホウ素ナトリウムでの還元によって、解重合-LMW-エピK5-硫酸から得られる解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の系統では、前記鎖混合物中の大部分の鎖の還元末端に、構造(a')
【化7】

(式中、Rは水素又はSO3-を表す)で表される硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットが存在する。
【0053】
このように、前記鎖混合物中の大部分の鎖の還元末端は、構造(b')
【化8】

(式中、R、R'及びR''は、H又はSO3-を表し、及びウロン酸ユニットはグルクロン酸ユニット又はイズロン酸ユニットである)で表される。
【0054】
米国特許出願公開第2002/0062019号に記載されたように操作することによって、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を濃度10%で含有する溶液を10℃に冷却し、ついで、カチオン交換樹脂IR-120 H+又はその均等物(35〜100 ml)を通過させる。カラム及び溶離液を収容する容器を10℃に維持する。溶液の通過後、透過液のpHが6以上となるまで、脱イオン水によって樹脂を洗浄する(脱イオン水約3容)。第3級又は第4級の有機塩基、例えば、水酸化テトラブチルアンモニウム(15%水溶液)にて酸溶液を中性として、対応するアンモニウム塩を得る。溶液を最少容量に濃縮し、凍結乾燥させる。得られた生成物を、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)20〜500 ml中に懸濁化させ、硫酸化剤、例えば、ピリジン-SO3付加物(固体状又はDMF又はDMSOに溶解したもの)15〜300gを添加する。溶液を、20〜70℃、好ましくは40〜60℃に2〜24時間維持する。
【0055】
反応を停止するため、水1容を添加し、1N NaOHにて、pHを中性とする。アセトンのNaCl飽和溶液での沈殿によってサンプルを回収する。濾過によって、沈殿物を溶媒から分離する。得られた固体を脱イオン水100 mlに溶解し、限外濾過によって、残留塩から精製する。得られた生成物は、Casuら, Carbohyddate Res. 1975, 39, 168-176に従って算定して、2〜最大3.2の硫酸基/カルボキシル基の比を示す。アミノ糖の6位は、80〜95%硫酸化されており、2位は硫酸化されていない。他に、アミノ糖の3位及びウロン酸の2及び3位に硫酸基が存在する。
【0056】
上記工程(a)を、
(a1)酸性形の前記解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を、第3級又は第4級有機塩基にて処理し、反応混合物を30〜60分間静置し、前記第3級又は第4級有機塩基の添加によって、溶液のpHを約7に維持し、及び、その前記有機塩基との塩を単離し;
(a2)前記解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の前記有機塩基との塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理し、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を単離する
ことによって行うことによって、より大きい硫酸基/カルボキシル基の比、すなわち、少なくとも3.4、有利には少なくとも3.5、さらに有利には3.55〜4、好ましくは3.55〜3.8を有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸が得られる。
【0057】
工程(a)又は工程(a1)+(a2)の終了時点で得られる解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸は、硫酸化度2〜4及び平均分子量約2,500〜約12,500、有利には約2,500〜約10,500、好ましくは約2,500〜約8,000を有し、対応するカチオンは化学的又は薬学上許容されるものである。
【0058】
理解されるように、多糖当たりSO3-基1〜3個の添加にもかかわらず、平均分子量約1,500〜約12,000を有する解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を原料とする場合、工程(a)の終了時、約2,000〜約15,000の理論的分子量の代わりに、平均分子量約2,500〜約12,500、すなわち、原料物質のものよりも若干大きい平均分子量を有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸が得られる。この分子量の減少は、工程(a)を行う際の強酸性媒体により、さらに解重合が生ずることによるものである。
【0059】
解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸は、有利には、鎖混合物で形成され、前記鎖化合物において、鎖の少なくとも90%が、式II
【化9】

(式中、ウロン酸ユニットの40〜60%、好ましくは50〜55%はイズロン酸のものであり、硫酸化度2〜4に関して、R、R'及びR''は水素又はSO3-基を表し、qは2〜17、有利には2〜14、好ましくは2〜11の整数であり、大部分の鎖の還元末端には、上記のとおり定義されるユニット(a')が存在し、及び対応するカチオンは化学的又は薬学上許容されるものである)を有するものである。
【0060】
上述の工程(a1)+(a2)に従って得られる非常に大きい硫酸化度(少なくとも3.4、有利には少なくとも3.5、さらに有利には3.55〜4、好ましくは3.55〜3.8)を有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸は、鎖混合物で形成され、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも90%が、式II(ここで、ウロン酸ユニットの40〜60%、好ましくは50〜55%がイズロン酸のものであり、Rが、少なくとも40%、有利には50〜80%、好ましくは約65%SO3-であり、R'及びR''が、共に、SO3-であるか、又はその一方が水素であり、他方が、グルクロン酸において5〜10%SO3-、イズロン酸において10〜15%SO3-であり、qは上記の定義のとおりであり、及び対応するカチオンは、化学的又は薬学上許容されるものである)を有するものである。
【0061】
本発明の方法の工程(b)では、工程(a)の終了時点で得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の選択的O-脱硫酸化が、例えば、A. Naggiら, Carbohydrate Research, 2001, 336, 283-290、国際特許公開WO01/72848又は米国特許出願公開第2002/0062019号に記載された方法に従って、混合物DMSO/メタノール(9/1)にて解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を処理することによって行われる。
【0062】
実際には、工程(a)の終了時点で得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の溶液を、カチオン交換樹脂、例えば、IR-120 H+を通過させ、脱イオン水にて洗浄し、透過した溶液を、第3級又は第4級有機塩基、例えば、ピリジンにて、pH6〜7とする。解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の有機塩基との塩、例えば、そのピリジン塩を、好適に濃縮した溶液の凍結乾燥によって単離する。得られた生成物を、ジメチルスルホキシド/メタノール(約9/1:v/v)溶液にて処理し、得られた溶液を、45〜90℃に、1〜8時間、有利には2〜4時間、好ましくは135〜155分間維持する。部分的にO-脱硫酸化された生成物(主に、第1級ヒドロキシル基及びウロン酸のヒドロキシル基において部分的に脱硫酸化された解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸からなる)を、脱イオン水及び続くアセトンの添加(任意に、飽和までの量で塩化ナトリウムを含有する)による沈殿によって、溶液から単離する。
【0063】
好適な具体例によれば、混合物ジメチルスルホキシド/メタノール(9/1:v/v)を、予め所望の温度に加熱し、これに、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸の塩を添加し、O-脱硫酸化反応の期間は、試薬の全体が予め選択された温度となった瞬間から開始するものとする。主に、第1級ヒドロキシル基及びウロン酸のヒドロキシル基において部分的に脱硫酸化された解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を、上述のようにして単離する。特徴付けのために、少量のサンプルを分離し、残りの生成物を、続く6-O-硫酸化工程(c)のために使用する。
【0064】
工程(c)では、アセトンからの沈殿物をアセトンで洗浄し、水に溶解し、2N NaOHにて、溶液をpH約7.5とし、IR-120 H+樹脂を通過させ、ついで、第3級又は第4級有機塩基、例えば、ピリジン又は水酸化テトラブチルアンモニウムにて中和し、得られた塩を凍結乾燥によって単離する。6-O-硫酸化を、上述の塩をDMFに溶解し、硫酸化剤、例えば、ピリジン-SO3(同じく、DMFに溶解したもの;生成物(テトラブチルアンモニウム塩)の1g当たり2.15gの量)を添加することによって行う。混合物を約0℃に約60〜120分間維持することによって反応を行い、6-O-硫酸化生成物を、溶液をNaOHにて中和し、続いて、アセトン(任意に、飽和までの量で塩化ナトリウムを含有する)にて沈殿させることによって単離する。沈殿操作を数回繰り返す。このようにして得られる6-O-再硫酸化解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸は、6-O-硫酸含量少なくとも80%を有する。
【0065】
工程(d)では、6-O-再硫酸化解重合-LMW-エピK5-O-硫酸を、古典的なN-硫酸化条件下において、硫酸化剤にて処理する。特に、工程(c)の終了時に得られる6-O-再硫酸化解重合-LMW-エピK5-O-硫酸の水溶液を、温度35〜45℃において、炭酸ナトリウムにて、ついで、硫酸化剤、例えば、ピリジン-SO3にて処理することによって操作を行い、硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸からなる最終生成物を、例えば、膜分離精製によって、ナトリウム塩として単離する。N-硫酸化反応を繰り返すこともできる。
【0066】
硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸のナトリウム塩を、公知の方法に従って、例えば、好適な樹脂によるイオン交換によって、溶媒による沈殿によって又は好適な膜を介する限外濾過によって、他の薬学上許容される塩、例えば、他のアルカリ属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム又は亜鉛の塩に変換される。有利な塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム及び亜鉛の塩である。ナトリウム及びカルシウムの塩が好ましい。
【0067】
好適な具体例によれば、本発明は、硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を製造する方法であって、
(ii)K5-N-硫酸を亜硝酸解重合に供して、平均分子量4,000以上、有利には約5,000〜約7,500、好ましくは約6,000〜約7,500を有する解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る工程;
(i)このようにして得られた解重合-LMW-K5-N-硫酸を、D-グルクロニル-C5-エピメラーゼによるC5-エピマー化に供して、イズロン酸ユニット40〜60%を含有する対応の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を得る工程;
(a)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を得る工程;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を、N-硫酸化反応に供し、このようにして、そのナトリウム塩として得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離し、前記塩を、任意に、他の薬学上許容される塩に変換する工程を包含することを特徴とする硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の製法を提供するものである。
【0068】
この好適な方法によれば、硫酸化度2.3〜2.9及び平均分子量少なくとも6,000、特に約6,000〜約12,000、有利には約6,000〜約11,000を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸が得られる。
【0069】
この好適な方法によって得られる硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩は、本発明の好適な他の具体例を表す。好適な塩は上記のもの、特にナトリウム及びカルシウム塩である。
【0070】
他の好適な具体例によれば、本発明は、K5-N-硫酸を原料とし、順序(i)→(ii)を介して、硫酸化度2.3〜2.9及び平均分子量約1,000〜約12,000の全範囲を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の調製を可能にするとする方法を提供するものである。
【0071】
この方法(特に、方法を順序(ii)→(i)で行うことによっては得られない非常に低い平均分子量(約2,000〜約5,000)を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の調製に適する)は、
(i)K5-N-硫酸を、単離し、精製し、固体支持体上に不動化した又は溶液中のD-グルクロニル-C5-エピメラーゼによる、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びマンガンの中から選ばれる少なくとも1つの2価イオンの存在下、pH約7、温度約30℃における12〜24時間のC5-エピマー化に供して、イズロン酸ユニット40〜60%を含有するエピK5-N-硫酸を生成する工程;
(ii)このようにして得られたエピK5-N-硫酸を、亜硝酸解重合、続く、通常、水素化ホウ素ナトリウムによる還元に供して、解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る工程;
(a)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を得る工程;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を、N-硫酸化反応に供し、このようにして、ナトリウム塩として得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離し、前記塩を、任意に、他の薬学上許容される塩に変換する工程を包含する。
【0072】
この他の好適な方法によって得られる、硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩は、本発明のさらに他の工程な具体例を表す。好適な塩は、上記のものであり、特に、ナトリウム又はカルシウム塩である。
【0073】
特に、この他の態様によれば、本発明は、硫酸化度2.3〜2.9を有し、及び約1,500〜約12,000ではあるが、特に5,000以下、好ましくは4,000以下、有利には約1,500〜約5,000、好ましくは約1,500〜約4,000の平均分子量を有する新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸及びその薬学上許容される塩に関する。
【0074】
新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の分子量が、O-過硫酸化工程(a)又は(a1)+(a2)において生ずる部分解重合のため、原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸のものとほぼ等しいことが注目されなければならない。
【0075】
さらに詳述すると、最も好適な具体例によれば、本発明は、硫酸化度2.3〜2.9、有利には2.5〜2.9、好ましくは2.7〜2.9、及び平均分子量約1,500〜約12,000、有利には約1,500〜約10,000、好ましくは約1,500〜約8,000を有し、大部分の鎖の還元末端における構造(a')の存在によって特徴付けられる解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩に関する。LMWHに匹敵する興味深い抗血栓活性を発揮するが、LMWHよりも出血を誘発する危険が2.5〜4倍低い解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩は、平均分子量約6,000を有する。好ましくは、この解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、硫酸化度2.7〜2.9、グルコサミン6-O-硫酸含量80〜95%、グルコサミンN-硫酸含量95〜100%、グルコサミン3-O-硫酸含量45〜55%、グルクロン酸3-O-硫酸含量35〜45%、イズロン酸2-O-硫酸含量15〜25%を有し、大部分の鎖の還元末端に、上記のとおり定義されるユニット(a')を有する。
【0076】
本発明の有利な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも80%が、式III
【化10】

[式中、ウロン酸ユニットの40〜60%はイズロン酸ユニットであり、qは2〜17、有利には2〜14、好ましくは2〜11の整数であり、硫酸化度2.3〜2.9に関して、R、R'及びR''は水素又はSO3-であり、及び前記鎖混合物における大部分の鎖の還元末端には、構造(a')
【化11】

(式中、Rは水素又はSO3-である)で表される硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットが存在し、対応するカチオンは化学的又は薬学上許容されるものである]を有するものである。
【0077】
好適な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩は、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が、式III(ここで、qが8又は9であり、硫酸化度2.7〜2.9に関して、RがSO3-45〜55%であり、R'がイズロン酸においてSO3-35〜45%であり、R''がイズロン酸においてSO3-15〜25%であり、大部分の鎖の還元末端には、上記のとおり定義される構造(a')で表される硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットが存在する)で表される化合物である。
【0078】
本発明の新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、凝固因子に関する非常に興味深い活性を有する。実際、当該化合物は、高い抗-Xa及び抗-IIa活性を有し、凝固の調節のためにヘパリン治療を必要とする患者における出血を誘発する危険性が非常に低い。平均分子量約6,000を有し、硫酸化度2.7〜2.9に関して、95〜100%N-硫酸化、グルコサミンにおいて80〜95%6-O-硫酸化、グルコサミンにおいて45〜55%3-O-硫酸化、グルクロン酸において35〜45%3-O-硫酸化、イズロン酸において15〜25%2-O-硫酸化され、大部分の鎖の還元末端に構造(a')が存在する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩が特に興味深い。後述の実施例1において詳述するこれら解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の1つを、抗-Xa及び抗-IIa活性の古典的なアッセイにおいてテストし、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に関する効果についてもテストした。
【0079】
抗-IIa及び抗-Xa活性の測定に使用した活性度アッセイは、ヘパリン及びアンチトロンビンIII(ATIII)によってなる複合体による凝固酵素の阻害に基づくものである。ATIII及びファクターIIa又はファクターXaを過剰量で添加する。残留する凝固酵素は基質と反応して、分光光度法で測定可能なパラニトロアニリンを放出し、そのレベルは、凝固酵素のレベルに逆比例する。使用する緩衝剤は、抗-Xa活性の測定では、0.9% NaClであり、抗-IIa活性の測定では、Tris 0.05M+NaCl 0.15 M及び1%BSA(ウシ血清アルブミン)である。解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸及び対照化合物(市販の未分画ヘパリン及び市販のLMWH)の活性を、抗-Xa及び抗-IIa活性についてのインターナショナルLMWH標準に対して測定する。抗-Xa活性についての活性度約0.5U/ml、及び抗-IIa活性についての活性度0.05U/mlを表示する希釈を測定する。計算のため、未分画ヘパリンに関する特定活性度を160U/mlと仮定する。
【0080】
IL Test(商標名)APTT Lyophilized Silica Kitを使用して、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸及び対照生成物のAPTTに関する効果を測定した。ファクターX及びプロトロンビンを活性化する複合体を形成するために必要なリン脂質を添加することによって、クエン酸加血漿において、凝固を開始させる。高分子量キニノゲン、カリクレイン及びファクターXIIaの機能のための表面を提供することによってファクターXIIaの生産を促進するために、接触活性化剤を使用する。さらなる反応を誘発するため、カルシウムを添加する。血餅の形成に必要な時間を測定する。
【0081】
テスト化合物及び対照化合物の凝固時間に関する効果の比較において、凝固時間100秒を生ずる推定用量を使用した。この値を得るため、50〜230秒の範囲の凝固時間を生ずる用量を使用して、用量応答曲線を作成した。凝固時間100秒を生ずる用量を、傾向曲線から推定値として得た。
【0082】
上記のテストから、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の抗-Xa及び抗-IIa活性は、LMWHの約50%であることが認められた。結果として、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、抗血栓剤として、同程度の抗-Xa及び抗-IIaをもつLMWHと判断される。
【0083】
また、本発明の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の凝固を増大させる能力は弱いことが認められた。未分画ヘパリン及びLMWHとの比較では、APTTに関して同じ効果を達成するには、約5〜8倍の用量の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸が必要であった。
【0084】
このように、本発明は、sLMWHと同じ生物学的特性を有するが、出血の危険性が低い、多糖K5に由来する生成物を初めて提供するものである。本発明の新規な解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸及びその薬学上許容される塩は、このように、凝固の調節及び血栓症の予防又は治療のための医薬として、及びこれらのための医薬組成物の有効成分として有用である。
【0085】
他の態様によれば、本発明は、有効成分として、上述の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸、特に、硫酸化度2.3〜2.9、平均分子量約1,500〜約12,000を有し、鎖の大部分の還元末端に、上記のとおり定義される構造(a')が存在する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はこれらの薬学上許容される塩を、医薬用キャリーとの混合物として、薬学上有効な量で含有する医薬組成物を提供するものである。
【0086】
経口、皮下、静脈内、経皮、眼科又は局所投与の本発明の医薬組成物では、有効成分は、好ましくは、一般的な医薬用のキャリヤー又はビヒクルとの混合物の形で、剤形単位として投与される。
【0087】
用量は、患者の年齢、体重及び健康状態に応じて変更される。この用量は、1〜1,000 mg、有利には10〜750 mg、好ましくは250〜500 mgの剤形単位の、1日1〜3回での、静脈内、皮下、経口、経皮、点眼又は局所ルートによる投与を含む。非経口(皮下又は静脈内)投与による場合、好適な用量は5〜100mgである。
【0088】
有利には、本発明の医薬組成物は、有効成分として、K5-N-硫酸を原料として、上述の方法の工程(i)→(ii)→(a)〜(d)又は(ii)→(i)→(a)〜(d)に従って得られる解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を含有する。さらに有利には、前記有効成分は、硫酸化度2.3〜2.9及び平均分子量約1,500〜約12,000を有し、大部分の鎖の還元末端に、上記のとおり定義される構造(a')が存在する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸である。好ましくは、前記解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、平均分子量約6,000を有し、硫酸化度2.7〜2.9に関して、95〜100%N-硫酸化され、グルコサミンにおいて80〜95%6-O-硫酸化され、グルコサミンにおいて45〜55%3-O-硫酸化され、グルクロン酸において35〜45%3-O-硫酸化され、イズロン酸において15〜25%2-O-硫酸化されている。
【0089】
他の態様によれば、本発明は、哺乳類において凝固を調節する方法であって、凝固の調節を必要とする哺乳類に、上述の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を有効量で投与することを特徴とする凝固の調節法を提供するものである。さらに、本発明は、哺乳類において血栓症を防止及び治療する方法であって、前記哺乳類に、上述の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を有効量で投与することを特徴とする血栓症の予防及び治療法を提供するものである。凝固の調節及び血栓症の予防又は治療に関する、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の有効量は5〜100 mgである。前記有効量は、上述の中でも、医薬組成物として投与される。有利には、前記解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、硫酸化度2.3〜2.9、平均分子量約1,500〜約12,000を有し、大部分の鎖の還元末端に、上記のとおり定義される構造(a')が存在するものである。
【0090】
好ましくは、前記解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸は、平均分子量約6,000を有し、硫酸化度2.7〜2.9に関して、95〜100%N-硫酸化され、グルコサミンにおいて80〜95%6-O-硫酸化され、グルコサミンにおいて45〜55%3-O-硫酸化され、グルクロン酸において35〜45%3-O-硫酸化され、イズロン酸において15〜25%2-O-硫酸化されている。
【0091】
最後に、上述のように、硫酸化度2〜4を有する(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体は、すべて、抗菌性を有し、感染症、特にウイルス感染症の治療のための医薬組成物の有効成分である。有利には、前記医薬組成物は、有効成分として、(エピ)K5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基との塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤と反応させることによって得られる、硫酸化度2〜4を有する(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体又はその薬学上許容される塩を、医薬用キャリヤーとの混合物の形で、薬学上有効な量で含有する。
【0092】
特に、他の態様によれば、本発明は、その有効成分として、(エピ)K5-N-硫酸誘導体の第3級又は第4級有機塩基との塩(当該第3級又は第4級有機塩基との(エピ)K5-N-硫酸誘導体塩は、その生成直後に、公知の方法に従って、特に、凍結乾燥によって、pH約5〜約9において単離されたものである)を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤と反応させることによって得られる、硫酸化度2〜4を有する(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体又はその薬学上許容される塩を、医薬用キャリヤーとの混合物の形で、薬学上有効な量で含有する医薬組成物を提供するものである。
【0093】
さらに正確には、本発明の組成物の有効成分として使用される(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体は、
(a1')酸性形の(エピ)K5-N-硫酸誘導体を、第3級又は第4級有機塩基にて処理し、第3級又は第4級有機塩基との塩を、その生成直後に、pH約5〜約9において単離すること;
(a2')前記(エピ)K5-N-硫酸誘導体の前記第3級又は第4級有機塩基との塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理し、(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体を、ナトリウム塩(続いて、他の塩に変換される)として単離すること
によって得られる。
【0094】
経口、皮下、静脈内、経皮、眼科又は局所投与用の本発明の医薬組成物では、有効成分である(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体は、好ましくは、剤形単位の形、一般的な医薬賦形剤又はビヒクルとの混合物として投与される。投与計画は、患者の年齢、体重及び健康状態に応じて広い範囲で変動できる。この投与計画には、(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体の用量1〜1000 mg、有利には10〜750 mg、好ましくは250〜500 mg、1日1〜3回、静脈内、皮下、経口、経皮、眼科又は局所投与による投与が含まれる。
【0095】
上記のもののような(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体を含有する医薬組成物は、各種の投与法に適した一般的なキャリヤーを使用して処方される。局所投与に適するクリーム、軟膏、リニメント剤、ゲル剤、泡剤、バルサム、膣ペッサリー、座剤、溶液又は懸濁液の剤形が特に有利である。
【0096】
下記の実施例は本発明を例証するものである。
【0097】
調製I
(i)エピK5-N-硫酸へのエピマー化
国際特許公開WO02/068477の実施例2の工程(i)及び(ii)に記載されているようにして得られたK5-N-硫酸(その1H-NMRスペクトルは、アセチル基又はNH2に関連するシグナルを示さない)10gを、CaCl2を濃度50mMで含有するpH7の25mM HEPES緩衝液600 mlに溶解し、このようにして得られた溶液を、国際特許公開WO01/72848の実施例1に記載されているようにして不動化した組換えC5-エピメラーゼ(国際特許公開WO96/14425)5gを含有するSepharose 4B樹脂を充填した50mlカラムを通して循環させる。30℃、pH7、流量200 ml/hにおいて、24時間反応を行う。得られた生成物を、限外濾過及びエタノールによる沈殿によって精製する。このようにして、イズロン酸含量54%を有するエピK5-N-硫酸を得る。
【0098】
(ii)エピK5-N-硫酸の解重合
蒸留水25ml中に、上記のようにして得られた生成物1gを含有する溶液に、蒸留水115 mlに溶解した亜硝酸ナトリウム230 mgを添加する。ついで、溶液を4℃とし、0.1N HClにてpHを2に調整し、30分間維持する。反応終了時、溶液を室温とし、0.1N NaOHにてpHを7とする。ついで、溶液に、NaBH4 450 mgを添加し、4時間反応させる。4℃のアセトン3容での沈殿、濾過ロートでの濾過によって生成物を回収し、真空オーブン内において40℃で乾燥して、イズロン酸含量54%及び分子量分布(HPLC法で測定)1,000〜4,000をもつ解重合-LMW-エピK5-N-硫酸900 mgを得る。
【0099】
調製II
平均分子量約5,000をもつ解重合-LMW-エピK5-N-硫酸:順序(ii)→(i)
(ii)K5-N-硫酸の解重合
国際特許公開WO02/068477の実施例2の工程(i)及び(ii)に記載されているようにして得られたK5-N-硫酸2gを、亜硝酸ナトリウム100 mg及び水素化ホウ素ナトリウム300 mgを使用して、上記調製Iの工程(ii)に記載のようにして解重合する。平均分子量5,000をもつ解重合-LMW-K5-N-硫酸1.8gを得る。
【0100】
(i)解重合-LMW-K5-N-硫酸のエピマー化
上記工程(ii)で得られた解重合-LMW-K5-N-硫酸1gを、上記調製Iの工程(i)に記載のようにして処理する。イズロン酸/グルクロン酸の比44/56(原料物質における比0/100に対して)、分子量分布2,000〜10,000及び平均分子量5,000Dをもつエピマー化生成物を得る。解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の収率(カルバゾール法(Bitter及びMuir, Anal. Biochem. 1971, 39, 88-92)にて、標準物に対して、ウロン酸含量を測定することによって算定)は90%である。
【0101】
調製III
解重合-LMW-K5-N-硫酸:順序(i)→(ii)
(i)エピK5-N-硫酸へのエピマー化
国際特許公開WO02/068477の実施例2の工程(i)及び(ii)に記載のようにして得られたK5-N-硫酸2gを、50mM CaCl2を含有するpH7の25mM HEPES緩衝液125 mlに溶解する。得られた溶液を、国際特許公開WO96/14425に記載のようにして得られた不動化酵素を含有する樹脂を充填した50mlカラムを通して循環させる。30℃において、流量200 ml/hで、操作を24時間実施する。得られた生成物を、1000D膜を介する限外濾過及びIR 120 H+イオン交換樹脂上の通過、1N NaOHでの溶離液の中和によって精製する。エタノール又はアセトンでの沈殿によってサンプルを回収する。イズロン酸/グルクロン酸の比55/45(原料物質における比0/100に対して)をもつエピマー化生成物を得る。エピマー化率(%)を、国際特許公開WO96/14425に記載の方法に従って1H-NMRにて算定する。エピK5-N-硫酸の収率(カルバゾール法(Bitter及びMuir, Anal. Biochem. 1971, 39, 88-92)にて、標準物に対して、ウロン酸含量を測定することによって算定)は90%である。
【0102】
(ii)エピK5-N-硫酸の解重合
工程(i)において得られた生成物1gを、亜硝酸による減成法及び続く、生成されたアルデヒドの還元によって解重合する。詳しくは、生成物を蒸留水25mlに溶解し、得られた溶液に、蒸留水115 mlに溶解した亜硝酸ナトリウム230 mgを添加することによって操作を行う。ついで、溶液を4℃とし、0.1N HClにてpHを2とし、30分間維持する。反応終了時、溶液を室温とし、0.1N NaOHにてpHを7とする。ついで、溶液に、NaBH4 450 mgを添加し、4時間反応させる。4℃のアセトン3容での沈殿、濾過ロートでの濾過によって生成物を回収し、真空オーブン内において40℃で乾燥して、分子量分布(HPLC法で測定)1,000〜4,000及びグルクロン酸含量45%及びイズロン酸含量54%をもつ解重合-LMW-エピK5-N-硫酸900 mgを得る。
【0103】
調製IV
平均分子量約2,000を有する解重合-LMW-エピK5-N-硫酸
蒸留水200 ml中に、米国特許出願公開第2002/0061019号の実施例12、パラグラフ[0251]〜[0265]に記載のようにして得られたエピK5-N-硫酸1gを含有する溶液に、蒸留水240 mlに溶解した亜硝酸ナトリウム480 mgを添加する。ついで、溶液を4℃とし、0.1N HClにてpHを2に調整し、30分間維持した。反応終了後、0.1N NaOHにてpH7とし、ついで、室温とする。ついで、溶液にNaBH4 450 mgを添加し、4時間反応させる。HClにてpHを5〜6に調整することによって、過剰のNaBH4を除去する。0.1N NaOHにて中和した後、生成物を、4℃のアセトン3容での沈殿、濾過ロートでの濾過によって回収し、真空オーブン内において40℃で乾燥する。鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が式I'b(ここで、mが4である)で表される化合物である平均分子量約2,000の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸900 mgが得られる。
【0104】
調製V
平均分子量約6,000をもつ解重合-LMW-エピK5-N-硫酸
原料のK5-N-硫酸
2N NaOH 800 ml中に、純度95%のK5 8gを含有する溶液を60℃に24時間加熱する。冷却後、6N HClによって、溶液をpH7とする。このようにして中和した溶液に、初めに、炭酸ナトリウム12.8g、ついで、固状のピリジン-SO3付加物12.8gを少量ずつ添加する。反応混合物を40℃に24時間維持する。1000Dカットオフの膜Millipore Prepscale TFF上での限外濾過によって塩を除去した後、得られた生成物を、アセトン3容での沈殿によって回収する。このようにして、K5-N-硫酸8gが得られる。その1N-NMRスペクトルは、N-硫酸化が100%であること(NH2及びアセチル基によるシグナルが存在しない)を示す。
【0105】
解重合-LMW-エピK5-N-硫酸:順序(i)→(ii)
(i)エピマー化
上記のようにして得られたK5-N-硫酸8gを、50mM CaCl2を含有するpH7の0.25M HEPES緩衝液200 mlに溶解し、溶液中、30℃、pH7において、組換えC5-エピメラーゼ9.6×1010 cpmにて24時間処理する。反応終了後、Millipore Prepscale TFF 1000Dカットオフ膜上での限外濾過による塩の除去によって生成物を精製し、アセトン3容にて沈殿させる。このようにして、エピK5-N-硫酸7.5gが得られる。エピマー化率(実際には、国際特許公開WO96/4425に記載された方法に従って、1H-NMRにて算定されたグルクロン酸ユニットに対するイズロン酸ユニットの量)は52%である。
【0106】
(ii)解重合
上記のようにして得られたエピK5-N-硫酸7.5gを水150 mlに溶解し、溶液を4℃で恒温とし、ついで、予め冷却した1M HClにてpHを2.2とする。溶液に、亜硝酸ナトリウム431.2 mg(2%亜硝酸ナトリウム溶液21.56 mlに相当する)を添加する。pHを再度2.2とし、反応混合物を、攪拌下、4℃に20分間維持する。6N HClにてpH7.0に中和した後、溶液に、水素化ホウ素ナトリウム1.35gを添加する。反応混合物を室温に4時間維持することによって還元を行い、ついで、発泡が消失するまで攪拌しながら、1N HClにてpHを5とすることによって過剰の還元剤を分解する。1M NaOHにて、pHを再度7〜7.2とした。解重合生成物を、Millipore TFF 1000Dカットオフ膜での限外濾過及び続くアセトン3容での沈殿によって回収する。このようにして、解重合-LMW-エピK5-N-硫酸7gが得られる。この生成物の平均分子量(HPLCを介して算定)は6,000Dである。
【実施例1】
【0107】
(a)過硫酸化
(a1)解重合-LMW-エピK5-N-硫酸のテトラブチルアンモニウム塩
水350 ml中に、調製Vにおいて得られた解重合-LMW-エピK5-N-硫酸7gを含有する溶液を、IR-120 H+のカラムを通過させた。溶出液のpHは2.91である。透過溶液を、15%水酸化テトラブチルアンモニウム溶液(42.2 ml)にてpH7とし、pHを7に維持するため制御しながら、室温に1時間維持した。回転蒸発器においてテトラブチルアンモニウム塩を濃縮した後、サンプルを冷凍し、凍結乾燥させた。このようにして、原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸のテトラブチルアンモニウム塩10.9gが得られた。
【0108】
(a2)O-過硫酸化
上記のようにして得られたテトラブチルアンモニウム塩を、ジメチルホルムアミド158 mlに溶解し、ついで、DMF 158 mlに溶解したピリジン-SO3 28.8gを添加し、反応混合物を45℃に18時間維持した。反応を停止させるため水316 mlを添加し、30%NaOHにてpHを7とした。NaClにて飽和したアセトン3容(1.896 L)での沈殿及び続くMillipore TFF 1,000D膜での膜分離精製(塩が除去されるまで)によって、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を回収した。
【0109】
(b)選択的O-脱硫酸化
工程(a)で得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を含有する溶液を、室温において、イオン交換樹脂IR-120 H+上を通過させ、pHをピリジンにて6.7とした。ついで、溶液を冷凍し、凍結乾燥に供した。このようにして得られたピリジン塩(10.73g)を、ジメチルスルホキシド97ml及びメタノール11mlを含有する溶液に溶解した。溶媒が65℃で恒温となった時点で、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸のピリジン塩を添加した。溶媒が65℃となった時点を反応開始時点とみなし、この時点から開始して、反応混合物を、この温度に2時間半維持した(調製において、終了時のpHは2.24であった)。氷水を使用することによって反応混合物を冷却して約30℃とし、ついで、水4.5mlを添加した。溶液にアセトン5容を導入することによってサンプルを回収し、生成した沈殿物をguch G4上での濾過によって回収した。ついで、濾過ケーキをアセトンにて洗浄し、水に再度溶解した。2N NaOHにてpHを7.5とした。このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の300 MHz 13C-NMRスペクトルを図1に示す。
【0110】
(c)6-O-硫酸化
溶液をIR-120 H+樹脂上を通過させ、15%水酸化テトラブチルアンモニウム溶液にて中和した。このようにして得られた塩を凍結乾燥して、上記解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸のテトラブチルアンモニウム塩からなる部分的O-脱硫酸化生成物12.34gを得た。このようにして得られたテトラブチルアンモニウム塩を、DMF 150 mlに溶解し、この溶液に、DMF75mlに溶解したピリジン-SO3付加物14gを添加した。反応混合物を0℃に90分間維持し、ついで、これに水110 mlを添加して、反応を停止させた。反応終了後、2N NaOHによって、混合物のpH(調製時には3.4)を7.2とした。NaClにて飽和したアセトン3容での沈殿によってサンプルを回収した。沈殿を促進するため、NaClにて飽和したアセトン数滴を添加した。白色沈殿が形成された。調製において、6-O-硫酸化グルコサミン含量80%、3-O-硫酸化グルコサミン含量50%、3-O-硫酸化グルクロン酸含量40%及び2-O-硫酸化イズロン酸含量20%をもつ解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸6.8gを得るため、操作を2回繰返し行った。
13C-NMRスペクトルを図2に示す。
【0111】
(d)N-硫酸化
工程(c)の終了時に得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を水500 mlに溶解し、ついで、溶液に、水500 mlに溶解した炭酸ナトリウム12.8gを添加した。炭酸塩を添加した後の溶液のpHは10.51であった。溶液を40℃で恒温とした後、固体のピリジン-SO3 12.8gを、少量ずつ、4時間で添加した。調製において、溶液の最終pHは7.2であった。NaClの存在下、ついで、水にて、サンプルを膜分離精製した。硫酸化度2.83及びN-硫酸化グルコサミン含量95〜100%、6-O-硫酸化グルコサミン含量80%、3-O-硫酸化グルコサミン含量50%、3-O-硫酸化グルクロン酸含量40%及び2-O-硫酸化イズロン酸含量20%をもつ解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸8.0gを得た。
【0112】
このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の13C-NMRスペクトルを図3に示す。80〜90ppmの領域において、2,5-アンヒドロマンニトールの代表的な2、3及び4Cによるシグナル(Casu B., Nouv. Rev. Fr. Hematol., 1984, vol. 26, p. 211-19)が存在していた。スペクトルは、前記2,5-アンヒドロマンニトールの1位、3位及び6位の炭素原子の硫酸化を示す80〜90ppmの領域におけるシグナルのシフトを示した。
【実施例2】
【0113】
実施例1に記載のように操作を行って、調製IIにおいて得られた平均分子量5,000をもつ解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を、工程(a)に記載するように、O-過硫酸化に供し、このようにして得られたLMW-エピK5-アミン-O-過硫酸のピリジン塩を、工程(b)に記載するように、DMSO/メタノール混合物(約9/1)にて、70℃で150分間処理し、このようにして得られた部分的O-脱硫酸化生成物のテトラブチルアンモニウム塩を、工程(c)に記載のように、ピリジン-SO3にて、0℃で90分間処理し、最後に、6-O-再硫酸化生成物を、工程(d)に記載のように、初めに炭酸ナトリウムで、ついで、ピリジン-SO3にて処理することによって、平均分子量5,000、硫酸化度2.8及びN-硫酸化グルコサミン含量95〜100%、6-O-硫酸化グルコサミン含量85%、3-O-硫酸化グルコサミン含量48%、3-O-硫酸化グルクロン酸含量38%及び2-O-硫酸化イズロン酸含量20%を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を得た。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施例1の工程(b)において得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の13C-NMRスペクトルである。
【図2】実施例1の工程(c)において得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の13C-NMRスペクトルである。
【図3】硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットの存在を示す、実施例1の工程(d)において得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-N,O-硫酸の13C-NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イズロン酸ユニット40〜60%を含有し、及び硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を製造する方法であって、
(a)イズロン酸ユニット40〜60%を含有する解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を生成し;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を生成し;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を生成し;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸をN-硫酸化反応に供し、このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離する、
ことを包含することを特徴とする、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸の製法。
【請求項2】
得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸をナトリウム塩として単離し、ナトリウム塩を、任意に、他の薬学上許容される塩に変換する、請求項1記載の製法。
【請求項3】
他の塩が、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム又は亜鉛との塩である、請求項2記載の製法。
【請求項4】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が、K5-N-硫酸を、いずれかの順序で、
(i)単離し、精製し、固体支持体上に不動化した又は溶液中のD-グルクロニルC5-エピメラーゼによる、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びマンガンの中から選ばれる少なくとも1つの2価イオンの存在下、pH約7、温度約30℃、時間12〜24時間でのC5-エピマー化に供し;及び
(ii)亜硝酸解重合に供し、続いて、通常、水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行う
ことによって得られたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の製法。
【請求項5】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が、順序(i)→(ii)に従って得られたものであり、平均分子量約1,500〜約12,000を有するものである、請求項4記載の製法。
【請求項6】
平均分子量が約1,500〜約7,500である、請求項5記載の製法。
【請求項7】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が、順序(ii)→(i)に従って得られたものであり、平均分子量約4,000〜約12,000を有するものである、請求項4記載の製法。
【請求項8】
平均分子量が約5,000〜約7,500である、請求項7記載の製法。
【請求項9】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも90%が、式I
【化1】

(式中、ウロン酸ユニットの40〜60%はイズロン酸ユニットであり、nは2〜20の整数であり、及び対応するカチオンは、化学的又は薬学上許容されるものである)を有するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の製法。
【請求項10】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が、式I'a
【化2】

(式中、ウロン酸ユニットの40〜60%はイズロン酸ユニットであり、pは4〜8の整数である)を有するものである、請求項1〜9のいずれかに記載の製法。
【請求項11】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が、鎖混合物の大部分の鎖の還元末端において、構造(a)
【化3】

(式中、Xはヒドロキシメチル基を表す)を示すものである、請求項1〜10のいずれかに記載の製法。
【請求項12】
原料の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸が、鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢な化学種が、式I'b
【化4】

(式中、Xはヒドロキシメチル基であり、mは4、5又は6であり、対応するカチオンは化学的又は薬学上許容されるイオンであり、及びグルクロン酸ユニット及びイズロン酸ユニットは交互に存在し、非還元末端がグルクロン酸ユニット又はイズロン酸ユニットであり、グルクロン酸ユニット/イズロン酸ユニットの比は、45/55〜55/45である)を有するものである、請求項9〜11のいずれかに記載の製法。
【請求項13】
硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を製造する方法であって、
(ii)K5-N-硫酸を亜硝酸解重合に供して、平均分子量4,000以上を有する解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る工程;
(i)このようにして得られた解重合-LMW-K5-N-硫酸を、D-グルクロニル-C5-エピメラーゼによるC5-エピマー化に供して、イズロン酸ユニット40〜60%を含有する対応の解重合-LMW-エピK5-N-硫酸を得る工程;
(a)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を得る工程;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を、N-硫酸化反応に供し、このようにして、そのナトリウム塩として得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離し、前記塩を、任意に、他の薬学上許容される塩に変換する工程を包含することを特徴とする、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の製法。
【請求項14】
工程(ii)の終了時、平均分子量約5,000〜約7,500を有する解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る、請求項13記載の製法。
【請求項15】
工程(ii)の終了時、平均分子量約6,000〜約7,500を有する解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る、請求項13記載の製法。
【請求項16】
硫酸化度2.3〜2.9を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を製造する方法であって、
(i)K5-N-硫酸を、単離し、精製し、固体支持体上に不動化した又は溶液中のD-グルクロニル-C5-エピメラーゼによる、カルシウム、マグネシウム、バリウム及びマンガンの中から選ばれる少なくとも1つの2価イオンの存在下、pH約7、温度約30℃における12〜24時間のC5-エピマー化に供する工程;
(ii)このようにして得られたエピK5-N-硫酸を、亜硝酸解重合、続く、通常水素化ホウ素ナトリウムによる還元に供して、解重合-LMW-K5-N-硫酸を得る工程;
(a)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-N-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、硫酸化剤にて処理して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を得る工程;
(b)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-過硫酸を、選択的O-脱硫酸化に供して、解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(c)このようにして得られた解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-硫酸化剤にて処理して、6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を得る工程;
(d)このようにして得られた6-O-硫酸少なくとも80%を含有する解重合-LMW-エピK5-アミン-O-硫酸を、N-硫酸化反応に供し、及び、このようにして、ナトリウム塩として得られた解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸を単離する工程を包含し、前記ナトリウム塩は、任意に、他の薬学上許容される塩に変換されるものである、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の製法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の製法によって得られた、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項18】
硫酸化度2.3〜2.9、平均分子量約1,500〜約12,000を有し、及びその鎖の大部分の還元末端に、構造(a')
【化5】

(式中、Rは水素又はSO3-である)を有する解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩。
【請求項19】
平均分子量約1,500〜約8,000及び硫酸化度2.5〜2.9を有する、請求項18記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項20】
硫酸化度2.7〜2.9を有する、請求項19記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項21】
平均分子量約6,000を有する、請求項20記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項22】
平均分子量約6,000、硫酸化度2.7〜2.9、グルコサミン6-O-硫酸含量80〜95%、グルコサミンN-硫酸含量95〜100%、グルコサミン3-O-硫酸含量45〜55%、グルクロン酸3-O-硫酸含量35〜45%、イズロン酸2-O-硫酸含量15〜25%を有し、その鎖の大部分の還元末端において構造(a')を示す、請求項18〜21のいずれかに記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩。
【請求項23】
鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも80%が、式III
【化6】

[式中、ウロン酸ユニットの40〜60%はイズロン酸ユニットであり、qは2〜17の整数であり、硫酸化度2.3〜2.9に関して、R、R'及びR''は水素又はSO3-であり、前記鎖混合物における鎖の大部分の還元末端は、構造(a')
【化7】

(式中、Rは水素又はSO3-である)で表される硫酸化2,5-アンヒドロマンニトールユニットを示しており、対応するカチオンは、化学的又は薬学上許容されるものである]を有するものである、請求項18記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項24】
鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも80%が、式III(ここで、qは2〜14の整数である)を有するものである、請求項23記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項25】
鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、鎖の少なくとも80%が、式III(ここで、qは2〜11の整数である)を有するものである、請求項23記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項26】
鎖混合物からなり、前記鎖混合物において、優勢の化学種が、式III(ここで、qは8又は9であり、硫酸化度2.7〜2.9に関して、RはSO3-45〜55%であり、R'はイズロン酸においてSO3-35〜45%であり、R''はイズロン酸においてSO3-15〜25%である)で表される化合物である、請求項23記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸。
【請求項27】
有効成分として、請求項17〜26のいずれかに記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩を、医薬用キャリヤーとの混合物の形で、薬学上有効な量で含有する、医薬組成物。
【請求項28】
哺乳類において凝固を調節する方法であって、凝固の調節を必要とする哺乳類に、請求項17〜26のいずれかに記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の有効量を投与することを特徴とする、哺乳類における凝固の調節法。
【請求項29】
哺乳類において血栓症を予防又は治療する方法であって、前記哺乳類に、請求項17〜26のいずれかに記載の解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩の有効量を投与することを特徴とする、哺乳類における血栓症の予防又は治療法。
【請求項30】
有効量を、医薬用のキャリヤーとの混合物の形で、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩5〜100 mgを含有する組成物として投与する、請求項28記載の方法。
【請求項31】
有効量を、医薬用のキャリヤーとの混合物の形で、解重合-LMW-エピK5-N,O-硫酸又はその薬学上許容される塩5〜100 mgを含有する組成物として投与する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
有効成分として、硫酸化度2〜4を有する(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体又はその薬学上許容される塩を、医薬用キャリヤーとの混合物の形で、薬学上有効な量で含有する、医薬組成物。
【請求項33】
(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体が、(エピ)K5-N-硫酸誘導体の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理することによって調製されたものである、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体が、(エピ)K5-N-硫酸誘導体の第3級又は第4級有機塩基塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理することによって調製されたものであり、前記有機塩基塩が、その調製直後に、pH約5〜約9において単離されたものである、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項35】
(エピ)K5-アミン-O-過硫酸が、
(a1')酸性形の(エピ)K5-N-硫酸誘導体を、第3級又は第4級有機塩基にて処理し、その第3級又は第4級有機塩基との塩を、その調製直後に、pH約5〜約9において単離すること、
(a2')(エピ)K5-N-硫酸誘導体の第3級又は第4級塩基塩を、O-過硫酸化条件下、O-硫酸化剤にて処理し、ナトリウム塩として得られた(エピ)K5-アミン-O-過硫酸誘導体を単離し、該誘導体は、続いて、他の塩に変換されるものである、請求項32記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−514817(P2007−514817A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544586(P2006−544586)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004128
【国際公開番号】WO2005/058976
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504463774)グリコレス 2000 ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】