説明

抗血管形成タンパク質およびその使用方法

【課題】インビボでの腫瘍成長を停止し、また、内皮管アッセイを含むいくつかのインビトロモデルにおいて毛細血管の形成を阻害するIV型コラーゲンのα1鎖、α2鎖およびα3鎖のNC1ドメインのC末端フラグメントを提供する。
【解決手段】抗血管形成特性を有するIV型コラーゲンのα鎖のNC1ドメインを含むタンパク質である、アレステン(Arresten)、カンスタチン(Canstatin・)およびタムスタチン(Tumstatin・)は、インビボでの腫瘍成長を停止し、また、内皮管アッセイを含むいくつかのインビトロモデルにおいて毛細血管の形成を阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血管形成タンパク質およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、1998年6月17日に出願された米国仮出願第60/089,689号、および、また1999年3月25日に出願された米国仮出願第60/126,175号の利益を主張するものであり、その全教示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0003】
発明の背景
血管基底膜は、コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、フィブロネクチンおよびエンタクチン(entactin)等の巨大分子からなる(Timpl,R.,1996,Curr Opin Cell Biol 8:618-24)。機能的に、コラーゲンは細胞接着、細胞移動、細胞分化および細胞成長を促進し(Paulsson,M.,1992,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol. 27:93-127・)、また、これらの機能を介して、予め存在している血管からの新たな血管の形成プロセスである血管形成の際に、内皮細胞の増殖および挙動において重要な役割を果たすと推定される(Madri,J.A. et al.,1986,J.Histochem.Cytochem. 34:85-91;Folkman,J.,1972,Ann.Surg. 175:409-16)。血管形成は複雑なプロセスであり、内皮細胞の発芽および移動、それらの細胞の増殖、および管様構造へのそれらの分化ならびに発達途上の血管周囲の基底膜マトリックスの生成を必要とする。さらに、血管形成は、創傷治癒および子宮内膜再構築等の通常の生理学的事象に重要なプロセスである(Folkman,J. et al.,1995,J.Biol.Chem. 267:10931-34)。現在では、血管形成は数mm2 の大きさを超える充実性腫瘍の転移および増殖に必要であるということが充分に報告されている(Folkman,J.,1972,Ann.Surg. 175:409-16;Folkman,J.,1995,Nat.Med. 1:27-31・)。いくつかの研究によればコラーゲン代謝のインヒビターは抗血管形成特性を有することが示されており、これは、基底膜コラーゲン合成および沈着が血管形成および生存に重要であることを支持する(Maragoudakis,M.E. et al.,1994,Kidney Int. 43:147-50;Haralabopoulos,G.C. et al.,1994,Lab.Invest. 71:575-82・)。しかしながら、基底膜組織および血管形成におけるコラーゲンの正確な役割は未だ充分には理解されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明は、抗血管形成特性を有するIV型コラーゲンのα鎖のNC1ドメインを含むタンパク質に関する。特に、本発明は、新規タンパク質である、アレステン(Arresten)、カンスタチン(Canstatin・)およびタムスタチン(Tumstatin・)および生物学的に活性な(たとえば、抗血管形成)フラグメント、変異体、アナログ、ホモログおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの多量体(たとえば、二量体)および融合タンパク質(本明細書においてはキメラタンパク質ともいう)に関する。これらのタンパク質は全て、IV型コラーゲンのNC1〔non-collagenous 1・(非コラーゲン性1)〕のC末端フラグメントを含む。より詳細には、アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンは、各々IV型コラーゲンのα1鎖、α2鎖およびα3鎖のNC1ドメインのC末端フラグメントである。特に、アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンは単量体タンパク質である。3つ全て、インビボでの腫瘍成長を停止し、また、内皮管アッセイを含むいくつかのインビトロモデルにおいて毛細血管の形成を阻害する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は、
〔1〕 配列番号:6のアミノ酸配列からなる単離された組換えタンパク質、
〔2〕 配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質のシュードモナス(Pseudomonas)エラスターゼ消化によって調製される単離された組換えタンパク質フラグメントであって、該タンパク質フラグメントは、10kDaのフラグメントであり、内皮管形成を阻害する、フラグメント、
〔3〕 〔1〕記載のタンパク質、または〔2〕記載の10kDaのタンパク質フラグメントを含むキメラタンパク質、
〔4〕 〔1〕記載のタンパク質および/または〔2〕記載のフラグメントを含む組成物、
〔5〕 薬学的に適合可能な担体をさらに含む〔4〕記載の組成物、
〔6〕 〔1〕記載のタンパク質、〔2〕記載のフラグメント、および〔3〕記載のタンパク質からなる群より選択される1つ以上を含み、ならびにエンドスタチン、アンジオスタチン、レスチン、およびアポミグレンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質分子をさらに含む組成物、
〔7〕 配列番号:6のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質または配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質のシュードモナス(Pseudomonas)エラスターゼ消化によって調製される10kDaのフラグメントを含む医薬であって、組織と接触することによって、哺乳動物の組織における血管形成活性を阻害するための医薬、
〔8〕 該組織が、血管形成依存性癌、良性腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬、眼血管形成疾患、オースラー−ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク新血管形成、毛細管拡張症、血友病関節、血管線維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、ネコひっかき病、ヘリコバクターピロリ潰瘍、透析移植片血管アクセス狭窄、および肥満からなる群より選ばれる疾患を有する個体の組織である、〔7〕記載の医薬、
〔9〕 疾患が癌である〔8〕記載の医薬、
〔10〕 血管形成活性を特徴とする疾患を有する個体に、放射線療法、化学療法、または免疫療法を組み合わせて投与される、〔9〕記載の医薬、
〔11〕 医薬が産児制限剤である〔7〕記載の医薬、
〔12〕 〔1〕記載のタンパク質または〔2〕記載のいずれかのタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチド
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、単離されたアレステンおよび組換え的に生産されたアレステンを包含する。アレステンは、本明細書においてはアレスチン(Arrestin)ともいい、IV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメインを含んでおり、抗血管形成活性を有する。また、本発明は、単離されたアレステンの抗血管形成フラグメント、単離されたアレステンおよび抗血管形成フラグメントの多量体、およびそれらの抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含する。また、生物学的に活性な成分として、単離されたアレステン、その抗血管形成フラグメント、または両方を含む組成物を包含する。他の態様では、本発明は、増殖性疾患が血管形成活性を特徴とする哺乳動物における癌等の増殖性疾患の治療方法を特色とする。かかる方法は、抗血管形成アレステンまたはそのフラグメントを含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。また、抗血管形成アレステンおよびそのフラグメントを用いて、細胞移動または内皮細胞増殖を防ぐことができる。単離された抗血管形成アレステンおよびそのフラグメントに対する抗体も特色とする。
【0007】
本発明はまた、単離されたカンスタチンおよび組換え的に生産されたカンスタチンを包含する。カンスタチンは、IV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメインを含んでおり、抗血管形成活性を有する。また、本発明は、単離されたカンスタチンの抗血管形成フラグメント、単離されたカンスタチンおよび抗血管形成フラグメントの多量体、およびそれらの抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含する。また、生物学的に活性な成分として、単離されたカンスタチン、その抗血管形成フラグメント、または両方を含む組成物を包含する。他の態様では、本発明は、増殖性疾患が血管形成活性を特徴とする哺乳動物における癌等の増殖性疾患の治療方法を特色とする。かかる方法は、抗血管形成カンスタチンまたはそのフラグメントを含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。また、抗血管形成カンスタチンおよびそのフラグメントを用いて、細胞移動または内皮細胞増殖を防ぐことができる。単離された抗血管形成カンスタチンおよびそのフラグメントに対する抗体も特色とする。
【0008】
本発明は同様に、単離されたタムスタチンおよび組換え的に生産されたタムスタチンを包含する。タムスタチンは、IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインを含んでおり、抗血管形成活性を有する。また、本発明は、単離されたタムスタチンの抗血管形成フラグメント、単離されたタムスタチンおよび抗血管形成フラグメントの多量体、およびそれらの抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含する。また、生物学的に活性な成分として、単離されたタムスタチン、その抗血管形成フラグメント、または両方を含む組成物を包含する。他の態様では、本発明は、増殖性疾患が血管形成活性を特徴とする哺乳動物における癌等の増殖性疾患の治療方法を特色とする。かかる方法は、抗血管形成タムスタチンまたはそのフラグメントを含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。また、抗血管形成タムスタチンおよびそのフラグメントを用いて、細胞移動または内皮細胞増殖を防ぐことができる。単離された抗血管形成タムスタチンおよびそのフラグメントに対する抗体も特色とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
好ましくない血管形成に伴い、多様な疾患が生ずる。一方、ある時点において、または特定の組織中で、何らかの条件下で、毛細血管の成長と肥大を停止させることが可能であれば、多くの疾患や好ましくない病態を予防または改善することができる。基底膜構造は、IV型コラーゲンのC末端球状非コラーゲン性(NCl)ドメインを介して発生すると推定されるIV型コラーゲンネットワークの集合に依存している(Timple, R., 1996, Curr Opin Cell Biol 8:618-24;Timple, R. et al., 1981, Eur. J. Biochem. 120:203-211 )。IV型コラーゲンは、6つの異なる遺伝子産物、すなわちα1からα6でできている(Prockop, D.J. et al., 1995, Annu. Rev. Biochem. 64:403-34 )。α1およびα2アイソフォームはヒト基底膜中に普遍的に存在するが(Paulsson, M., 1992, Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 27:93-127)、他の4つのアイソフォームは限定的分布を示す(Kalluri,R.etal.,1997, J. Clin. Invest. 99:2470-8)。
【0010】
腫瘍成長および転移の過程には、既存の血管からの新たな毛細血管の形成、すなわち血管形成が不可欠である(Folkman, J. et al., 1992, J. Biol. Chem. 267:10931-4;Folkman,J.,1995, Nat. Med. 1:27-31;Hanahan, D. et al., 1996, Cell 86:353-64)。ヒトおよび動物の腫瘍は、当初は血管化されないが、腫瘍が数mm3 以上に成長するために、血管化することがある(Folkman, J., 1995, Nat. Med. 1:27-31;Hanahan,D.etal.,1996, Cell 86:353-64)。血管形成表現型へのスイッチには、血管形成刺激剤のアップレギュレーションと血管形成インヒビターのダウンレギュレーションの両者が必要である(Folkman,J.,1995, Nat. Med. 1:27-31)。血管内皮成長因子(VEGF)と塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)は、腫瘍中で最も普通に発現される血管形成因子である。血管化した腫瘍は、腫瘍成長を相乗的に促進しうるこれらの血管形成因子の1つ以上のものを過剰発現することがある。VEGFなどの単一の血管形成因子を受容体アンタゴニストで阻害しても、腫瘍成長を停止させることはできない。いくつかの血管形成インヒビターが最近同定されているが、IFN−α、血小板因子4(Maione,T.E.etal.,1990, Science 247:77-9 )およびPEX(Brooks, P.C. et al., 1998, Cell 92:391-400)などある種の因子は腫瘍細胞と内因的には関連していないが、アンジオスタチン(O'Reilly, M.S. et al., 1994, Cell 79:315-28 )とエンドスタチン(O'Reilly, M.S. et al., 1997, Cell 88:277-85 )は、腫瘍組織そのものによって生成される腫瘍関連血管形成インヒビターである。これらの内因性血管形成インヒビターによる腫瘍成長および転移の治療は非常に効果的であって、魅力的な発想であるが、抗血管形成療法に関連して起こり得るいくつかの問題を考慮に入れなければならない。長期的抗血管形成療法によって惹起される遅延型毒性ならびに治療時の創傷治癒および生殖系血管形成の障害の可能性も十分考慮しなければならない。
【0011】
本発明においては、抗血管形成の性質を有するタンパク質、およびそれらのフラグメント、アナログ、誘導体、ホモログおよび変異体、ならびにこれらのタンパク質、アナログ、誘導体、ホモログおよび変異体を用いて血管形成関与増生疾患を阻害する方法について説明する。該タンパク質は、IV型コラーゲンのα鎖のNClドメイン、または該ドメインの一部から成るものであり、具体的には、IV型コラーゲンのα1、α2およびα3鎖のNClドメインの単量体から成る。これらのタンパク質は、とくに単量体状である場合、癌のインビボのモデルにおける腫瘍成長を停止させるとともに、内皮管アッセイを含むいくつかのインビトロのモデルにおける毛細血管の形成も阻害する。
【0012】
これらのタンパク質は、NClドメインの接合部領域を含んでいることもある。α4、α5、およびα6鎖は抗血管形成活性が低下しているか検出できなくなっていることを示唆する証拠があることから、α1、α2、またはα3鎖が好ましい。一般に、六量体型も活性がほとんどないか低下していることを示唆する証拠があることから、該タンパク質の単量体型が好ましい。
【0013】
さらに具体的には、本発明は、ヒトIV型コラーゲンのNClドメインのα1鎖のN末端にあるアミノ酸に対応する約230個分のアミノ酸の長さを有するタンパク質である「アレステン(Arresten)」と呼ばれるタンパク質について説明する(Hostikka, S.L. et al., 1988, J. Biol. Chem. 263:19488-93)。
【0014】
本明細書で開示されるように、ヒトアレステンは、ペリプラズム輸送を行いうるがゆえに可溶性タンパク質を生成するpET22bなどの細菌発現プラスミドを用いて、大腸菌中で製造することができる。該タンパク質は、C末端の6個のヒスチジンタグを有する29kDaの融合タンパク質として発現される。追加の3kDa(26kDaに加わる)は、ポリリンカーおよびヒスチジンのタグ配列に由来する。アレステンは、pcDNA3.1真核細胞ベクターを用いて、293腎細胞中で分泌可溶性タンパク質としても製造された。この293産生タンパク質は、精製タグや検出タグを保持していない。
【0015】
大腸菌産生アレステンは、0.25μg/mlのED50をもって、用量依存的にbFGF刺激内皮細胞の増殖を阻害する。腎癌細胞(786−0)、前立腺癌細胞(PC−3)、またはヒト前立腺上皮細胞(HPEC)の増殖に及ぼす有意な影響は認められなかった。エンドスタチンは、アレステンより3倍高い0.75μg/mlのED50で、C−PAE細胞の増殖を阻害したが、A−498癌細胞を阻害しなかった。
【0016】
本明細書で説明するように、内皮細胞の増殖および移動が特異的に阻害されることは、アレステンが、細胞表面タンパク質または受容体を介して機能する可能性があることを示している。マトリックスメタロプロテイナーゼすなわちMMPが阻害されることは、アレステンが、バチマスタット(batimastat)(BB−94)やマリマスタット(marimastat)(BB−2516)と同様に、腫瘍の成長および転移において直接的役目を果たしていることを示唆している。
【0017】
本発明においては、IV型コラーゲンのα2鎖のNClドメインであるカンスタチン(Canstatin・)を用いて、血管形成を阻害させたが、この阻害は、内皮細胞の増殖と移動の阻害および内皮管形成の阻害によってアッセイした。カンスタチンにより、内皮細胞の増殖と移動が特異的に阻害されたことは、この物質が抗血管形成活性を有すること、および細胞表面タンパク質/受容体を介して機能する可能性があることも証明している。インテグリンは、細胞外マトリックス結合能力および移動や増殖などの細胞挙動を調節する能力を有することからみて、候補分子となりうる。とくに、avb3インテグリンは、血管形成時に誘導されること、および相手を選ばず結合しうることから、カンスタチン受容体であり得る。
【0018】
本発明においては、IV型コラーゲンのα3鎖のNClドメインであるタムスタチン(Tumstatin )(Timple, R. et al., 1981, Eur. J. Biochem. 120:203-11;Turner, N. et al., 1992, J. Clin. Invest. 89:592-601)を用いて、インビトロおよびインビボの血管形成および腫瘍成長モデルにおける血管内皮細胞の増殖および血管形成を調節した。α3(IV)鎖の分布は、GBMなどある種の基底膜、数種類の蝸牛基底膜、前房水晶体嚢などの眼基底膜、デスメ膜、卵巣および精巣基底膜(Frojdman, K. et al., 1998, Differentiation 83:125-30)、および肺胞毛細血管基底膜(Kashtan,C.E., 1998, J. Am. Soc. Nephrol. 9:1736-50 )に限定されている。しかしながら、この鎖は、腎臓メサンギウム、皮膚の血管基底膜および表皮基底膜、および肝臓の血管基底膜(Kashtan, C.E., 上掲)には見当たらない。創傷治癒の過程では、IV型コラーゲンのα3およびα4鎖は「既存の」すなわち皮膚血管系の基底膜の成分ではないがゆえに、これら2つの鎖以外のα鎖が集合して、新たな毛細血管を形成する。α3(IV)鎖は正常なヒトの皮膚における本来の成分ではないので、創傷治癒の病変におけるコラーゲン集合および血管形成の過程が、タムスタチンを用いた治療によって変化することはない。
【0019】
α3(IV)鎖は、ヒト腎臓血管基底膜ならびにGBM中で発現される(Kalluri, R. et al., 1997, J. Clin. Invest. 99:2470-8)。これらの「既存の」血管は、腎細胞癌などの原発性腎腫瘍の進行に関与していると推定される。タムスタチンは、α3(IV)鎖とその他のα鎖の集合を介する新生血管形成を破壊することによって、原発性腎腫瘍の治療に有効であり得る。腎細胞癌の診断を受ける患者数は、1996年の米国において約3万人であり(Mulders,P.etal.,1997, Cancer Res. 57:5189-95)、転移症例の予後は非常に悪い。放射線療法と化学療法の進歩にもかかわらず、治療を受けた患者の長期生存率はあまり改善されていない(Mulders,P., 上掲)。腎細胞癌の有意治療選択肢がないことから、新規治療方式を確立することが非常に重要である。この事実に鑑み、最近、充実性腫瘍の新生血管形成のターゲティングが、いくつかの動物モデルにおいて有望な成績を挙げている(Baillie, C.T. et al., 1995, Br. J. Cancer 72:257-67 ;Burrows, F.J. et al., 1994, Pharmacol. Ther. 64:155-74;Thorpe, P.E. et al., 1995, Breast Cancer Res. Treat. 36:237-51)。インビボにおける腎細胞癌成長の阻害にタムスタチンが有効であることは、この分子が、この腫瘍タイプに対して有効な抗血管形成療法になり得ることを示している。
【0020】
本発明においては、タムスタチンは内皮細胞増殖を特異的に阻害し、インビトロにおいて腫瘍細胞株PC−3および786−Oの増殖に対しては影響を及ぼさなかった。タムスタチンは内皮細胞移動を阻害しなかったが、インビトロにおける内皮管形成を有意に抑制した。これらの成績を総合すると、タムスタチンは、血管形成過程における様々な段階を阻害することにより、新たな血管の形成を抑制することがわかる。
【0021】
インビボ試験で、タムスタチンは、マトリゲルプラグ(matrigelplug・)アッセイにおける血管形成を阻害し、マウス異種移植片モデルにおけるPC−3腫瘍および786−O腫瘍の成長を抑制した。タムスタチンが大型腫瘍の成長を阻害したことは、臨床現場における腫瘍の治療に鑑みてとくに有意義である。
【0022】
タムスタチンは、肺出血と急速進行性糸球体腎炎を特徴とする自己免疫疾患であるグッドパスチャー症候群の病原エピトープを保持しているため(Butkowski, R.J. et al., 1987, J. Biol. Chem. 262:7874-77;Saus, J. et al., 1988, J. Biol. Chem. 263:13374-80;Kalluri, R. et al., 1991, J. Biol. Chem. 266:24018-24 )、タムスタチンの短期的または長期的投与がこの自己免疫疾患を誘導する可能性がある。いくつかのグループが、α3(IV)NCl上のグッドパスチャー症候群自己エピトープの位置をマッピングまたは予測しようと試みており、N末端部分、中間部分、およびC末端部分が該エピトープを保持することが報告された(Kalluri, R. et al., 1995, J. Am. Soc. Nephrol. 6:1178-85;Kalluri,R.etal.,1996, J. Biol. Chem. 271:9062-8 ;Levy, J.B. et al., 1997, J. Am. Soc. Nephrol. 8:1698-1705 ;Quinones, S. et al., 1992, J. Biol. Chem. 267:19780-4 ;Kefalides, N.A. et al., 1993, Kidney Int. 43:94-100 ;Netzer, K.O. et al., 1999, J. Biol. Chem. 274:11267-74)。最近、組換えキメラ構築物を用いて、α3(IV)NClのN末端のみに対する自己抗体の反応性が腎臓生存率と相関していることが報告された(Hellmark, T. et al., 1999, Kidney Int. 55:936-44)。N末端部分の最初の40個のアミノ酸に対する疾患関連エピトープも同定された。グッドパスチャー症候群のエピトープを除去するために、N末端の53個のアミノ酸残基を欠損する切形型タムスタチンが合成されたが、この分子は、マウス異種移植片モデルにおいて786−O腫瘍成長に対して阻害作用を示す。また、この分子は、グッドパスチャー症候群の重症患者の自己抗体には結合しなかった。これらの結果から、タムスタチンの抗血管形成領域は、N末端の53個のアミノ酸が除去されても保存されることがわかる。
【0023】
タムスタチンにより内皮細胞増殖が特異的に阻害されることから、タムスタチンは細胞表面タンパク質/受容体を介して機能する可能性があることが強く示唆される。血管形成は、インテグリンavb3が介在する特異的内皮細胞付着事象にも依存している(Brooks, P.C. et al., 1994, Cell 79:1157-64)。タムスタチンは、増殖中の内皮細胞とマトリックス成分の相互作用を破壊する可能性があるため、内皮細胞をアポトーシスに導く可能性がある(Re, F. et al., 1994, J. Cell. Biol. 127:537-46)。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、腫瘍中の新たな血管の形成を調節する重要酵素であると推定されている(Ray, J.M. et al., 1994; Eur. Respir. J. 7:2062-72 )。最近、MMP−2のインヒビター(PEX)が、血管形成を阻害することにより、腫瘍成長を抑制し得ることが証明された(Brooks, P.C. et al., Cell 92:391-400)。タムスタチンは、MMPの活性を阻害することにより機能する可能性がある。
【0024】
タムスタチンは、インビトロおよびインビボにおける血管形成を阻害して、腫瘍進行の抑制をもたらす。この方式を患者に適用するためには、全身投与による潜在的毒性または副作用も考慮しなければならない。タムスタチンの分布が限定されていて、皮膚基底膜中にはほとんど存在しないことから、タムスタチン治療による副作用の可能性は低いことが示唆される。また、腎臓などの一部臓器の血管基底膜中にタムスタチンが存在することから、一部臓器で発生する腫瘍のターゲティングにおいて、独自の利点を示し得ることが示唆される。究極的には、遺伝子導入法を用いて、腫瘍血管系においてインビボでタムスタチン遺伝子を発現させる代替方式を開発することが望ましい(Kashihara, N. et al., 1997, Exp. Nephrol. 5:126-31;Maeshima, Y. et al., 1996, J. Am. Soc. Nephrol. 7:2219-29 ;Maeshima, T. et al., 1998, J. Clin. Invest. 101:2589-97 )。
【0025】
α3(IV)鎖の分布は一部臓器の基底膜に限定されているため、α鎖の集合を阻害することにタムスタチン分子が示し得る機構を考慮すれば、タムスタチンの有害性は低い可能性が高い。さらに、α3(IV)鎖は、腎臓の血管基底膜中にも認められ(Kalluri, R. et al., 1997, J. Clin. Invest. 99:2470-8)、これらの血管は腎細胞癌などの原発性腎腫瘍の進行に関与していると考えられる。したがって、タムスタチンは、α3(IV)鎖と他のα鎖の集合を破壊することにより、上記腫瘍の治療に有効である可能性がある。
【0026】
本明細書で使用する場合、「血管形成」という用語は、1つの組織または臓器中に新たな血管が生成することを意味し、内皮細胞増殖を包含する。通常の生理条件下では、ヒトや動物は、非常に特異的な限定された状況においてのみ血管形成を受ける。たとえば、血管形成は通常、創傷治癒、胎児および胚の発育、および黄体、子宮内膜および胎盤の形成において認められる。「内皮」という用語は、漿液腔、リンパ管、および血管の内側を構成する平坦上皮細胞の薄層を意味する。したがって、「抗血管形成活性」とは、ある組成物が血管の成長を阻害する能力をいう。血管の成長は複雑な一連の事象であり、それぞれの内皮細胞の下にある基底膜の局所的分解、これらの細胞の増殖、将来血管となる場所への該細胞の移動、新たな血管膜を形成するための該細胞の再構成、内皮細胞増殖の停止、および血管周囲細胞およびその他の新たな血管壁を支持する細胞の取り込みを包含する。したがって、本明細書で使用する場合、「抗血管形成活性」とは、これらの段階の一部または全体が阻害されることで、最終的に新たな血管の形成が阻害されることを包含する。
【0027】
抗血管形成活性には、一般的には、ある組成物が血管形成を阻害する能力、たとえば、線維芽細胞成長因子、血管形成関連因子、またはその他の公知の成長因子の存在下で、培養ウシ毛細血管内皮細胞の成長または移動を阻害する能力をいう内皮阻害活性を包含する。「成長因子」は、細胞の成長、再生、または合成活性を刺激する組成物である。「血管形成関連因子」は、血管形成を阻害するか促進する因子である。血管形成関連因子の具体例としては、血管形成促進剤である塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などの血管形成成長因子が挙げられる。血管形成関連因子のもう1つの具体例としては、たとえばアンジオスタチン(たとえば米国特許第5,801,012号、米国特許第5,837,682号、米国特許第5,733,876号、米国特許第5,776,704号、米国特許第5,639,725号、米国特許第5,792,845号、WO96/35774、WO95/29242、WO96/41194、WO97/23500参照)またはエンドスタチン(たとえばWO97/15666参照) などの血管形成阻害因子が挙げられる。
【0028】
「実質的に同一の生理活性」または「実質的に同一またはそれ以上の生理活性」とは、常法のアッセイで測定した場合に、ある組成物が抗血管形成活性を有し、アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンと同様の挙動を示すことを意味する。「常法のアッセイ」としては、分子生物学分野において、抗血管形成活性、細胞周期停止、およびアポトーシスを評価する目的に使用されるプロトコルが挙げられるが、これらに限定されない。かかるアッセイとしては、内皮細胞増殖、内皮細胞移動、細胞周期解析、および内皮細胞管形成のアッセイ、たとえばアポトーシス細胞形態またはアネキシンV−FITCアッセイによるアポトーシスの検出、漿尿膜(CAM)アッセイ、およびヌードマウスにおける腎癌腫瘍成長の阻害が挙げられるが、これらに限定されない。かかるアッセイを、下記実施例に示す。
【0029】
「アレステン」は、本明細書において「アレスチン」ともいうが、アレステン配列ならびに他の哺乳類に由来するアレステンのアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログ、および対立遺伝子変異体、ならびにアレステンアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログおよび対立遺伝子変異体を包含するものとする。
【0030】
本明細書で使用する場合、「カンスタチン」は、カンスタチン配列ならびに他の哺乳類に由来するカンスタチンのアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログ、および対立遺伝子変異体、ならびにカンスタチンアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログおよび対立遺伝子変異体を包含するものとする。
【0031】
本明細書で使用する場合、「タムスタチン」は、タムスタチン配列ならびに他の哺乳類に由来するタムスタチンのアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログ、および対立遺伝子変異体、ならびにタムスタチンアミノ酸配列のフラグメント、変異体、ホモログ、アナログおよび対立遺伝子変異体を包含するものとする。
【0032】
本発明は、内皮阻害活性(たとえばある組成物が一般的に血管形成を阻害する能力、たとえば線維芽細胞成長因子、血管形成関連因子、またはその他の公知の成長因子の存在下で、培養ウシ毛細血管内皮細胞の成長または移動を阻害する能力)を有するアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンのあらゆる誘導体を包含するものと解する。本発明は、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンタンパク質全体、これらのタンパク質の誘導体およびこれらのタンパク質の生理活性フラグメントを包含する。これらのものには、アミノ酸置換を有するか、糖またはその他の分子がアミノ酸官能基に付着したものを有するアレステン、カンスタチンまたはタムスタチン活性のあるタンパク質が含まれる。
【0033】
本発明は、アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンのフラグメント、変異体、ホモログおよびアナログについても説明する。アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンの「フラグメント」は、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドの少なくとも25個の連続アミノ酸から成るアレステン、カンスタチンまたはタムスタチン分子より短いアミノ酸配列である。かかる分子は、たとえば全長または部分リンカー配列に対応するアミノ酸残基またはアミノ酸配列など、クローン化の過程から得られた追加アミノ酸をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明の範囲に含まれるためには、かかる変異体は、上記追加アミノ酸残基の有無に関わらず、参照ポリペプチドの天然型または全長型と実質的に同一の生理活性を有するものでなければならない。
【0034】
かかるフラグメントの1つである「タムスタチンN−53」と呼ばれるフラグメントは、常法のアッセイによって測定した場合、全長タムスタチンと同等の抗血管形成活性を有することが判明した。タムスタチンN−53は、N末端の53個のアミノ酸が欠失しているタムスタチン分子から成る。本明細書で説明するその他の変異体フラグメントは、本明細書で説明するアッセイによって示されるように、非常に高いレベルの抗血管形成活性を有することが判明している。これらのフラグメント、すなわち「タムスタチン333」、「タムスタチン334」、「12kDaアレステンフラグメント」、「8kDaアレステンフラグメント」、および「10kDaカンスタチンフラグメント」は、それぞれ75ng/ml、20ng/ml、50ng/ml、50ng/ml、および80ng/mlのED50値を有する。一方、全長アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンは、それぞれ400ng/ml、400ng/ml、および550ng/mlのED50値を有することが判明した。タムスタチン333は配列番号:10のアミノ酸2位〜125位より成り、タムスタチン334は配列番号:10のアミノ酸126位〜245位より成る。
【0035】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンの「変異体」とは、同等の参照アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドのアミノ酸配列に近縁のアミノ酸配列の変化を有するポリペプチドを意味する。かかる変化は、自然的に、または人為的操作によるか、化学エネルギー(たとえばX線)によるか、その他の形の化学的突然変異誘発によるか、遺伝子工学によるか、交配またはその他の形の遺伝情報の交換の結果として起こり得る。突然変異としては、たとえば塩基変化、欠失、挿入、逆位、転位、または重複が挙げられる。アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンの変異体型は、同等の参照アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドに対して抗血管形成活性が増大または減少している場合があり、かかる変異体は、たとえば全体または部分リンカー配列に対応するアミノ酸残基またはアミノ酸配列など、クローン化の過程から得られる追加アミノ酸を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0036】
本発明の抗血管形成タンパク質の変異体/フラグメントは、PCRクローン化によって生成させることができる。下記実施例18で説明され、Fig.23および24に示されるように、「タムスタチン333」および「タムスタチン334」と呼ばれるフラグメントをこのようにして生成させたところ、全長タムスタチンより優れた抗血管形成活性を有することがわかった。かかるフラグメントを作製するためには、PCRプライマーを、各セットのプライマーがタンパク質全体から公知サブ配列を増幅させるようなやり方で、公知配列から設計される。次いで、これらのサブ配列を、pET22bベクターなどの適当な発現ベクターにクローン化し、発現タンパク質の抗血管形成活性を、下記アッセイで説明されているように試験する。
【0037】
本発明の抗血管形成タンパク質の変異体/フラグメントは、Mariyama, M.ら、(1992, J. Biol. Chem. 267:1253-8)によって記載され、下記実施例24で説明されているようにして、シュードモナス(Pseudomonas・)エラスターゼ消化によって生成させることもできる。この方法を用いて、12kDaおよび8kDaアレスチン変異体、および10kDaカンスタチン変異体を製造したが、これら3つのものはいずれも、元の全長タンパク質よりも高いレベルの抗血管形成活性を有する。
【0038】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンの「アナログ」とは、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチン分子全体またはそのフラグメントもしくは対立遺伝子変異体のいずれかと実質的に同様の天然に存在しない分子であって、実質的に同一またはそれ以上の生理活性を有する分子を意味する。かかるアナログは、生理活性アレステン、カンスタチンまたはタムスタチン、ならびにそのフラグメント、変異体、ホモログ、および対立遺伝子変異体の誘導体(たとえば上記に定義される化学誘導体)であって、未修飾のアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチド、フラグメント、変異体、ホモログ、または対立遺伝子変異体と定性的に同様のアゴニストまたはアンタゴニスト効果を示す誘導体を包含するものとする。
【0039】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンの「対立遺伝子」とは、参照アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドのポリペプチド配列に対する天然配列変異を含有するポリペプチド配列を意味する。アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの「対立遺伝子」とは、参照アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンポリペプチドをコードする参照ポリヌクレオチド配列に対する配列変異を含有するポリヌクレオチド配列であって、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体が対立遺伝子型のアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を意味する。
【0040】
特定のポリペプチドが、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンのフラグメント、変異体、アナログ、または対立遺伝子変異体のいずれか1つのものであってもよいし、これらのものの2つ以上であってもよく、たとえば1つのポリペプチドはアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンポリペプチドのアナログかつ変異体であってもよい。たとえば、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチン分子の短縮型(たとえばアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンのフラグメント)を、実験室内で作製することができる。次いで、そのフラグメントを、当該分野において公知の手段により突然変異誘発させると、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンのフラグメントかつ変異体である分子が作製される。別の具体例では、後で一部の哺乳類個体中で対立遺伝子型のアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンとして存在することが明らかになる変異体を作製することができる。したがって、かかる変異体アレステン、カンスタチンまたはタムスタチン分子は、変異体かつ対立遺伝子変異体である。フラグメント、変異体、対立遺伝子変異体、およびアナログのかかる組み合わせは、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0041】
たとえば、下記実施例18で説明する大腸菌発現クローン化法によって作製されたタムスタチンは単量体である。大腸菌発現クローン化法は、天然のタンパク質中には存在しないポリリンカー配列とヒスチジンタグを発現タンパク質に付加するため、このものは融合またはキメラタンパク質でもある。やはり実施例18で説明するタムスタチンフラグメント「タムスタチンN−53」は、全長タムスタチンタンパク質のフラグメントかつ欠失変異体であり、同じ大腸菌発現クローン化法によって作製すると、やはり追加配列が付加されるので、このものも全長タムスタチンタンパク質の融合またはキメラ変異体フラグメントである。このタムスタチンN−53のサブユニットを、たとえば二量体や三量体などへと一体化させると、タムスタチンタンパク質のキメラ変異体フラグメントの多量体状融合体が生じる。
【0042】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンをコードするポリヌクレオチドと実質的に同一の核酸配列を有するポリヌクレオチドも、本発明の範囲に含まれる。「実質的に同一の配列」とは、たとえば別の核酸またはポリペプチドなどの参照配列と少なくとも約70%の配列相同性、通常は参照配列と少なくとも約80%の配列相同性、好ましくは少なくとも約90%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約95%の相同性、最も好ましくは参照配列と少なくとも約97%の配列相同性を示す核酸またはポリペプチドを意味する。配列の比較長は、通常、少なくともヌクレオチド塩基75個またはアミノ酸25個分、より好ましくは少なくともヌクレオチド塩基150個またはアミノ酸50個分、最も好ましくはヌクレオチド塩基243〜264個またはアミノ酸81〜88個分である。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」とは、アミノ酸の分子鎖を表し、特定の長さの産物をいうのではない。すなわち、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語は、たとえば糖化、アセチル化、リン酸化などの発現後修飾をすでに受けているポリペプチドも包含するものとする。
【0043】
本明細書で使用する場合、「配列相同性」とは、たとえば2個のポリヌクレオチドまたは2個のポリペプチドなど2個のポリマー状分子どうしのサブユニット配列類似性をいう。たとえば2個のペプチドのそれぞれにおける位置がセリンによって占拠されている場合、2個の分子の両者におけるサブユニット位置が同一の単量体状サブユニットによって占拠されると、これらのものはその位置において相同になる。2個の配列どうしの相同性は、マッチングする位置すなわち相同の位置の数に正比例し、たとえば2個のペプチドまたは化合物配列中の位置の半数(たとえばサブユニット10個分の長さのポリマーにおける5つの位置)が相同である場合、2個の配列は50%相同であり、たとえば10個のうちの9個など位置数の90%がマッチすると、2個の配列は90%の配列相同性があることになる。例示すると、アミノ酸配列R2 R5 R7R10R6 R3 とR9R8 R1 R10R6R3 は6つの位置のうちの3つを共有しているので、50%の配列相同性があり、配列R2 R5 R7R10R6 R3 とR8R1 R10R6 R3は5つの位置のうちの3つを共有しているので、60%の配列相同性がある。2個の配列どうしの相同性は、マッチングする位置すなわち相同の位置の数に正比例する。したがって、参照配列の一部が特定のペプチドを欠失すると、その欠失箇所は配列相同性の計算を行う目的のためには算定されず、たとえば、R2 R5 R7R10R6 R3 とR2R5 R7 R10R3は6つの位置のうちの5つを共有しているので、83.3%の配列相同性がある。
【0044】
相同性は、たとえばBLASTNやBLASTP(http: //www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ から入手可能)などの配列解析ソフトウエアを用いて測定されることが多い。BLASTN(ヌクレオチド配列用)によって2個の配列を比較(たとえば2個の配列を互いに対して「ブラスト(Blasting)」処理する、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html)するためのデフォールトパラメーターは、マッチリウォード=1、ミスマッチペナルティー=−2、オープンギャップ=5、伸長ギャップ=2である。タンパク質配列用のBLASTPを用いる場合のデフォールトパラメーターは、マッチリウォード=0、ミスマッチペナルティー=0、オープンギャップ=11、および伸長ギャップ=1である。
【0045】
2個の配列に「配列相補性」がある場合、該2個の配列は、保存的置換のみによって互いに異なることを意味する。ポリペプチド配列の場合、かかる保存的置換は、配列中の特定位置における1個のアミノ酸が同じクラスの別のアミノ酸(たとえばバリンがロイシンに、アルギニンがリジンに置換するなど、疎水性、電荷、pKまたはその他の立体配置的または化学的性質の特性を共有するアミノ酸)に置換しているものから成る。または、ポリペプチドの生理活性が破壊される程度に該ポリペプチドの立体配置または折りたたみを変化させることはない配列の位置における1つ以上の非保存的アミノ酸置換、欠失、または挿入によって異なるものである。「保存的置換」の具体例としては、ポリペプチドが必須の生理活性を示すという条件の下に、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの非極性(疎水性)残基が別のものに置換しているもの;アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、トレオニンとセリンの間などの1つの極性(親水性)残基が別のものに置換しているもの;リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどの1つの塩基性残基が別のものに置換しているもの;またはアスパラギン酸またはグルタミン酸などの1つの酸性残基が別のものに置換しているもの;または非誘導体化残基の代わりに化学誘導体化残基を使用するものが挙げられる。配列相補性を有する2個の配列は、「配列ホモログ」と呼ばれることがある。
【0046】
ポリペプチドの相補性は、通常、配列解析ソフトウエア(たとえばGenetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705の配列解析ソフトウエアパッケージ)を用いて測定される。タンパク質解析ソフトウエアは、様々な置換、欠失、およびその他の修飾に対する相補性の程度を割り当てることにより、類似配列をマッチさせる。保存的置換は通常、下記グループ内の置換を含む。すなわち、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンである。
【0047】
アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンの化学誘導体も本発明の範囲に含まれる。「化学誘導体」とは、官能側基の反応によって化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する対象ポリペプチドをいう。かかる誘導体化残基としては、たとえば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成している分子が挙げられる。遊離カルボキシル基を誘導体化させて、塩、メチルおよびエチルエステルまたはその他のタイプのエステルまたはヒドラジドを形成させてもよい。遊離水酸基を誘導体化させて、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成させてもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導体化させて、N−イムベンジルヒスチジンを形成させてもよい。化学誘導体には、20種類の標準アミノ酸のうちの1つ以上の天然アミノ酸誘導体を含有するペプチドも含まれる。たとえば、4−ヒドロキシプロリンをプロリンに置換させてもよいし;5−ヒドロキシリジンをリジンに置換させてもよいし;3−メチルヒスチジンをヒスチジンに置換させてもよいし;ホモセリンをセリンに置換させてもよいし;オルニチンをリジンに置換させてもよい。
【0048】
本発明はまた、抗血管形成タンパク質、それらのフラグメント、変異体、ホモログ、アナログ、および対立遺伝子変異体から成る融合タンパク質およびキメラタンパク質も包含する。融合またはキメラタンパク質は、組換え発現とクローニング過程によって製造することができ、たとえば全長または部分リンカー配列に対応する追加のアミノ酸またはアミノ酸配列から成るタンパク質を製造することができ、たとえば本発明のアレステンを大腸菌中で製造したもの(下記実施例2参照)は、ヒスチジンタグを含む追加ベクター配列がタンパク質に付加されている。本明細書で使用する場合、「融合またはキメラタンパク質」とは、元のタンパク質配列に対するこのタイプの変化を包含するものとする。同様の変化が、カンスタチンおよびタムスタチンタンパク質に対しても作製された(それぞれ実施例11および18)。融合またはキメラタンパク質は、単一のタンパク質の多量体から成ることができ、たとえば抗血管形成タンパク質または融合およびキメラタンパク質の反復単位は、数個のタンパク質、たとえば該抗血管形成タンパク質の数個のものでできていてもよい。該融合またはキメラタンパク質は、2つ以上の公知の抗血管形成タンパク質(たとえばアンジオスタチンとエンドスタチン、またはアンジオスタチンとエンドスタチンの生理活性フラグメント)を組み合わせたもの、または1つの抗血管形成タンパク質とターゲティング剤を組み合わせたもの(たとえばエンドスタチンと上皮成長因子(EGF) またはRGDペプチド)、または1つの抗血管形成タンパク質と免疫グロブリン分子を組み合わせたもの(たとえばエンドスタチンとIgG、とくにFc部分を除去したIgG)から成ることができる。融合およびキメラタンパク質は、抗血管形成タンパク質、それらのフラグメント、変異体、ホモログ、アナログ、および対立遺伝子変異体、ならびにその他の抗血管形成タンパク質、たとえばエンドスタチンまたはアンジオスタチンを含むこともできる。その他の抗血管形成タンパク質には、レスチン(restin)およびアポミグレン(apomigren・)(PCT/US98/26058、この文献の教示は参照により本明細書に含まれる)およびエンドスタチンのフラグメント(PCT/US98/26057、この文献の教示は参照により本明細書に含まれる)も含まれ得る。本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」とは、たとえば化学療法剤をコードするポリヌクレオチドが抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドに連結されている化学療法剤を送達するための追加成分を包含する場合もあり得る。融合またはキメラタンパク質は、たとえば二量体や三量体など抗血管形成タンパク質の多量体を包含する場合もあり得る。かかる融合またはキメラタンパク質は、翻訳後修飾を介して連結(たとえば化学連結)させることができるが、融合タンパク質全体を組換え法により製造してもよい。
【0049】
アレステン、カンスタチン、タムスタチン、それらのフラグメント、変異体、ホモログ、アナログおよび対立遺伝子変異体から成る多量体状タンパク質も本発明の範囲に含まれるものとする。「多量体」とは、サブユニットタンパク質の2つ以上のコピーから成るタンパク質を意味する。該サブユニットタンパク質は、本発明のタンパク質の1つであってよく、たとえばアレステンが2回以上反復されているもの、またはたとえばタムスタチン333などのタムスタチン変異体またはフラグメントなどのフラグメント、変異体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体が2回以上反復されているものであってよい。かかる多量体は、融合またはキメラタンパク質であってもよく、たとえば反復タムスタチン変異体を、単一コピー中に存在していてもよいポリリンカー配列、および/または1つ以上の抗血管形成ペプチドと組み合わせてもよく、あるいはタンデム反復されていてもよく、たとえば1つのタンパク質がタンパク質全体内の2つ以上の多量体から成るものであってもよい。
【0050】
本発明は、アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンをコードする1つ以上の単離ポリヌクレオチドから成る組成物、ならびにかかるポリヌクレオチドを含有するベクターおよび宿主細胞、ならびにアレステン、カンスタチンおよびタムスタチン、およびそれらのフラグメント、変異体、ホモログ、アナログおよび対立遺伝子変異体を製造するための方法も包含する。本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、核酸の断片(pieces)が挿入またはクローン化されていてもよい担体であって、該核酸の断片を宿主細胞中に導入する機能を示す担体を意味する。かかるベクターは、導入される核酸断片の複製および/または発現をもたらしてもよい。ベクターの具体例としては、たとえばプラスミド、バクテリオファージ、または哺乳類、植物または昆虫ウイルス、またはリガンド−核酸コンジュゲート、リポソーム、または脂質−核酸複合体などの非ウイルスベクターに由来する核酸分子が挙げられる。導入される核分子は、発現制御配列に作動可能に連結されて、該導入核酸を発現し得る発現ベクターを形成させることが望ましい。核酸のかかる導入は一般に「形質転換」と呼ばれ、挿入に用いられる方法の如何に関わらず、宿主細胞に外来ポリヌクレオチドが挿入されることをいう。たとえば、直接取り込み、トランスダクションまたはf交配が含まれる。外来ポリヌクレオチドは、たとえばプラスミドなどの非統合ベクターとして維持することができるが、あるいは、宿主ゲノム中に統合させてもよい。「作動可能に連結される」とは、上記成分が、意図的なやり方で機能させられる関係にある状況をいい、たとえばコード配列に対して「作動可能に連結された」制御配列を、該コード配列の発現が制御配列にふさわしい条件化で行われるようなやり方でライゲーションさせる。「コード配列」は、適当な調節配列の制御化に置かれると(たとえば作動可能に連結されると)、mRNAに転写されてポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5’末端の翻訳開始コドンと3’末端の翻訳終止コドンによって決定されている。かかる境界は天然に生じることができるが、当該分野において公知の方法によりポリヌクレオチド配列に導入または付加させることもできる。コード配列としては、mRNA、cDNA、および組換えポリヌクレオチド配列を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0051】
クローン化ポリヌクレオチドがクローン化されるベクターは、原核生物中で機能するという理由で選ぶことができるが、真核生物中で機能するという理由で選んでもよい。アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンタンパク質をコードするポリヌクレオチドのクローン化と、該ポリヌクレオチドからのこれらのタンパク質の発現の両者が可能なベクターの2つの具体例として、それぞれ細菌および酵母におけるタンパク質の発現が可能なpET22bおよびpET28(a)ベクター(Novagen, Madison, Wisconsin, USA)および修飾pPICZαAベクター(In Vitrogen, San Diego, California, USA )が挙げられる。(たとえばPCT/US98/25892参照、この文献の教示は参照により本明細書に含まれる)。
【0052】
ポリヌクレオチドが適当なベクターにクローン化されたならば、適当な宿主細胞に形質転換させることができる。「宿主細胞」とは、ベクターを介して導入核酸のレシピエントとしてすでに使用されているか、使用することができる細胞を意味する。宿主細胞は原核細胞または真核細胞、哺乳類、植物、または昆虫であることができ、単細胞として、またはたとえば培養物としてのコレクションとして、または組織培養状態で、または組織もしくは生物体中に存在することができる。宿主細胞は、たとえば哺乳類などの多細胞生物の正常または疾患組織から得ることもできる。本明細書で使用する場合、宿主細胞とは、核酸で形質転換された元の細胞のみならず、該核酸を依然として含有しているかかる細胞の子孫をも含むものとする。
【0053】
1つの態様においては、抗血管形成タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドは、ペプチドをコードするポリヌクレオチドリンカーをさらに含む。かかるリンカーは当業者にとって公知であり、たとえば該リンカーは、少なくとも1つの追加アミノ酸をコードする少なくとも1つの追加コドンを含むことができる。通常、該リンカーは、1個から20個または30個のアミノ酸から成る。ポリヌクレオチドリンカーは、抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドと同様に翻訳され、その結果、少なくとも1つの追加アミノ酸残基を抗血管形成タンパク質のアミノまたはカルボキシル末端に有する抗血管形成タンパク質の発現が起きる。該単数または複数の追加アミノ酸は、該抗血管形成タンパク質の活性を低下させないことが重要である。
【0054】
ポリヌクレオチドを選んでベクターに挿入した後、ベクターを、適切な原核生物系に形質転換させ、その系を、該生理活性抗血管形成タンパク質の製造に適した培養条件下で培養する(たとえば継代する) ことにより、生理活性抗血管形成タンパク質、またはその変異体、誘導体、フラグメントまたは融合タンパク質を製造する。1つの態様においては、本発明は、抗血管形成タンパク質をコードするポリヌクレオチドをベクターpET22b、pET17bまたはpET28aにクローン化させ、次いでこれらのベクターを細菌に形質転換させる工程を含む。細菌宿主系は、その後、該抗血管形成タンパク質を発現する。通常、抗血管形成タンパク質は、培養液1リットルあたり約10〜20ミリグラム以上の量で産生される。
【0055】
本発明の別の態様においては、真核細胞ベクターは修飾酵母ベクターから成る。1つの方法は、マルチプルクローン化部位を含有するpPICzαプラスミドを使用するものである。該マルチプルクローン化部位は、His.タグモチーフをマルチプルクローン化部位に挿入している。さらに、ベクターは、NdeI部位またはその他の適切な制限部位を付加するように修飾することができる。かかる部位は、当業者にとって公知である。本態様によって製造される抗血管形成タンパク質は、1個以上のヒスチジン、通常は約5〜20個のヒスチジンから成るヒスチジンタグモチーフ(His.タグ)を含む。該タグは、該タンパク質の抗血管形成性を阻害するものであってはならない。
【0056】
たとえばアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンを製造する1つの方法は、それぞれ配列番号:1、配列番号:5、または配列番号:9のポリヌクレオチドを増幅させ、それを、たとえばpET22b、pET28(a)、pPICZαA、またはその他の発現ベクターにクローン化させ、該ポリヌクレオチドを含有する該ベクターを、該ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現し得る宿主細胞に形質転換させ、該形質転換宿主細胞を、該タンパク質の発現に適した培養条件下で培養し、次いで、該タンパク質を培養物から抽出および精製するものである。一般的には抗血管形成タンパク質、具体的にはアレステン、カンスタチンおよびタムスタチンを製造する代表的方法を、下記実施例に示す。アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンタンパク質は、たとえばトランスジェニックの雌性ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタの乳汁の成分としてなどトランスジェニック動物の産物として、またはたとえばトウモロコシ中のデンプン分子と化合または連結させたトランスジェニック植物の産物として、発現させてもよい。
【0057】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンは、従来の公知の化学合成法によって製造してもよい。合成手段により本発明のタンパク質を構築する方法は、当業者にとって公知である。合成的に構築されたアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンタンパク質配列は、たとえば組換え的に製造されたアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンと、一次、二次または三次構造特性および/または立体配置特性を共有させるために、生理活性を含む生物学的性質をそれらのものと共通的に保持してもよい。すなわち、合成的に構築されたアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンタンパク質配列は、たとえば治療用化合物のスクリーニングにおいて、および抗体生成のための免疫学的プロセスにおいて、組換え的に製造され精製されたアレステン、カンスタチンまたはタムスタチンタンパク質に対する生理活性または免疫学的置換物として用いてもよい。
【0058】
アレステン、カンスタチンおよびタムスタチンタンパク質は、常法のアッセイにおいて下記実施例に示されるようにして測定される抗血管形成を阻害する上で有用である。アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンは、たとえば内皮細胞以外の細胞など、他の細胞型の成長を阻害しない。
【0059】
アレステン、カンスタチンまたはタムスタチンをコードするポリヌクレオチドは、単離DNAまたはcDNAライブラリーからクローン化することができる。本明細書で「単離」と称される核酸ポリペプチドは、それらが得られた生物学的供給源の物質(たとえば核酸の混合物中または細胞中に存在するもの)を実質的に含まない(すなわち完全に分離されている)核酸またはポリペプチドであり、さらにプロセシングを受けていてもよい。「単離」核酸またはポリペプチドとしては、本明細書で説明する方法、類似の方法、またはその他の適切な方法によって得られる核酸またはポリペプチドが挙げられ、実質的に純粋な核酸またはポリペプチド、化学合成によって製造された核酸またはポリペプチド、化学的または生物学的方法を組み合わせたものによって製造された核酸またはポリペプチド、および組換え法によって製造された核酸またはポリペプチドが単離されたものが含まれる。したがって、単離されたポリペプチドとは、通常は関連している他のタンパク質、炭水化物、脂質、およびその他の細胞成分を比較的含んでいないものを意味する。単離された核酸は、該核酸の由来元である生物の天然ゲノム中で直接連続している核酸の両者と直接連続(すなわち共有結合)していない。したがって、該用語は、たとえばベクター(たとえば自己複製ウイルスまたはプラスミド)に組み込まれている核酸、または化学的手段または制限エンドヌクレアーゼ処理によって製造された核酸フラグメントなど、他の核酸とは独立している別の分子として存在する核酸を包含する。
【0060】
本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、他の抗血管形成タンパク質を単離するためのプローブを設計する目的に用いることもできる。特殊な方法が、ジェイコブスら(Jacobs et al. )の米国特許第5,837, 490号に示されているが、この文献の教示全体は参照によりすべて本明細書に含まれる。オリゴヌクレオチドプローブの設計は、以下の項目に従うことが好ましい。すなわち、(a)プローブは、塩基が存在する場合は、最少数のアンビギュアス(ambiguous)塩基(「N」)を有する配列のエリアに対して設計されなければならない。また、(b)プローブは、約80℃(各AまたはTについては2℃、各GまたはCについては4度を想定)のTmを有するように設計されなければならない。
【0061】
オリゴヌクレオチドは、通常のオリゴヌクレオチド標識技術を用いて、g−32P−ATP(比活性6000Ci/mmole)とT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識されることが好ましい。他の標識技術を用いることもできる。取り込まれなかった標識体は、ゲル濾過クロマトグラフィーまたはその他の確立された方法によって除去されることが好ましい。プローブに取り込まれた放射活性の量は、シンチレーションカウンターにおける測定によって定量されなければならない。生じたプローブの比活性は、約4x106 dpm/pmoleであることが好ましい。全長クローンのプールを含有する細菌培養物を融解させ、100μlの原液を用いて、100μg/mlのアンピシリンを含有する25mlの滅菌Lブロスを入れた滅菌培養フラスコに接種することが好ましい。培養物は、37℃で飽和になるまで培養することが好ましく、飽和培養物は、新鮮Lブロスで希釈することが好ましい。これらの希釈物の一定量を平板培養に付して、37℃で一夜培養したときに、150mmペトリ皿中で100μg/mlのアンピシリンと1.5%の寒天を含有するLブロスを含む固形細菌培地上で約5000個の明瞭でよく分離されたコロニーを生じる希釈度と容量を求めることが好ましい。明瞭でよく分離されたコロニーを得る他の公知方法を用いることもできる。
【0062】
次いで、コロニーハイブリダイゼーションの常法手順を用いて、コロニーをニトロセルロースフィルターに移し、溶菌、変性および加熱しなければならない。高度ストリンジェント条件とは、たとえば65℃で1xSSC、または42℃で1xSSCと50%ホルムアミドで処理するのと少なくとも同程度にストリンジェントな条件をいう。中等度ストリンジェント条件とは、65℃で4xSSC、または42℃で4xSSCと50%ホルムアミドで処理するのと少なくとも同程度にストリンジェントな条件をいう。低度ストリンジェント条件とは、50℃で4xSSC、または40℃で6xSSCと50%ホルムアミドで処理するのと少なくとも同程度にストリンジェントな条件をいう。
【0063】
次いで、フィルターを、0.5%SDS、100μg/mlの酵母RNA、および10mMのEDTAを含有する6倍SSC(20x原液は、1リットルあたり175.3gのNaCl、1リットルあたり88.2gのクエン酸NaをNaOHでpH7.0に調整したもの)(150mmフィルター1枚あたり約10mL)中でゆっくり撹拌しながら、65℃で1時間保温することが好ましい。次いで、プローブを、1x106 dpm/mLより大きいか同等な濃度で、ハイブリダイゼーション混合物に添加することが好ましい。次いで、フィルターを、ゆっくり撹拌しながら65℃で一夜保温することが好ましい。次いで、フィルターを、撹拌しないで室温で、500mLの2xSSC/0.5%SDS中で洗浄することが好ましく、さらに続いて、室温で振盪しながら、500mLの2xSSC/0.1%SDS中で15分間にわたり洗浄することが好ましい。65℃で0.1xSSC/0.5%SDSによる3回目の洗浄を30分間から1時間にわたり行ってもよい。次いで、フィルターを乾燥させ、X線フィルム上で陽性物を可視化させるのに十分な時間にわたりオートラジオグラフィーに付すことが好ましい。他の公知のハイブリダイゼーション法を用いることもできる。次いで、陽性クローンを釣菌し、培養し、常法を用いてプラスミドDNAを単離する。次いで、クローンを、制限酵素解析、ハイブリダイゼーション解析、またはDNA配列決定法によって確認することができる。
【0064】
本発明は、アレステン、カンスタチン、タムスタチンまたはそれらの生理活性フラグメント、アナログ、ホモログ、誘導体または変異体を用いて、哺乳類組織における血管形成を阻害する方法を含む。さらに具体的には、本発明は、血管形成関与疾患を、1つ以上の抗血管形成タンパク質またはそれらの1つ以上の生理活性フラグメント、または抗血管形成活性を有するフラグメントを組み合わせたもの、またはアゴニストおよびアンタゴニストの有効量で治療する方法を含む。抗血管形成タンパク質の有効量とは、疾患または病態を生ぜしめる血管形成を阻害することで、該疾患または病態を完全にまたは部分的に改善させるのに十分な量である。血管形成関与疾患の改善は、たとえば腫瘍のサイズの減少または腫瘍成長停止など、疾患の症状の改善を観察することによって、判定することができる。本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、患者にとって有意義な利益、すなわち関連する医学的状態の治療、治癒、予防または軽減、またはかかる状態の治療、治癒、予防または軽減の速度の増大を示すのに十分な組成物または方法の各有効成分の合計量を意味することもある。1つの組み合わせに対して適用される場合、該用語は、併用的、連続的、または同時的に投与されるかに関わらず、該治療効果をもたらす有効成分の合計量をいう。血管形成関与疾患としては、癌、充実性腫瘍、血液性腫瘍(たとえば白血病)、腫瘍転移、良性腫瘍(たとえば血管腫、聴覚神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫)、慢性関節リウマチ、乾癬、眼血管形成疾患(たとえば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管形成緑内障、水晶体後線維増殖、ルベオーシス)、オースラー−ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク新血管形成、毛細管拡張症、血友病関節、血管線維種、および創傷肉芽形成が挙げられるが、これらに限定されない。抗血管形成タンパク質は、内皮細胞の過剰または異常刺激による疾患の治療に有用である。これらの疾患としては、腸管癒着、クローン病、動脈硬化、強皮症、および過形成性瘢痕(すなわちケロイド)が挙げられるが、これらに限定されない。抗血管形成タンパク質は、胚着床に必要な血管形成を予防することにより、産児制限剤として用いることができる。抗血管形成タンパク質は、ネコひっかき病〔ロケレ ミナリア クイントサ(Rochele minalia quintosa)〕や潰瘍(ヘリコバクター ピロリ)など病理的に血管形成を伴う疾患の治療に有用である。抗血管形成タンパク質は、たとえば脂肪組織における毛細血管形成を阻害することによりその肥大を予防することで、透析移植片血管アクセス狭窄(dialysis graft vascular access stenosis )および肥満を予防する目的に用いることもできる。抗血管形成タンパク質は、局在化(たとえば転移していない)疾患を治療する目的に用いることもできる。「癌」とは、新生物成長、過形成性または増殖性成長または異常細胞発育の病理的状態を意味し、充実性腫瘍、非充実性腫瘍、および白血病で見られるものなどの異常細胞増殖を含む。本明細書で使用する場合、「癌」とは、血管形成依存性の癌および腫瘍、すなわち血液を供給する血管の数と密度の増大を、その成長(容積および/または質量の増大) に必要とする腫瘍も意味する。「後退」とは、当業者にとって公知の方法を用いて測定される腫瘍質量とサイズの減少をいう。
【0065】
あるいは、たとえば創傷治癒において、または梗塞後心臓組織において、血管形成の増大が望まれる場合には、抗血管形成タンパク質に対する抗体または抗血清を用いて、局在化された天然の抗血管形成タンパク質およびプロセスをブロックすることで、新たな血管の形成を増大させ、組織の萎縮を阻害することができる。
【0066】
抗血管形成タンパク質は、疾患治療のための他の組成物および手順と組み合わせて用いてもよい。たとえば、腫瘍は、従来通り、外科手術、放射線照射、化学療法、または免疫療法を抗血管形成タンパク質と組み合わせたもので治療してもよく、次いで、抗血管形成タンパク質を患者に投与して、微小転移の潜伏期間を延長させ、残留する原発性腫瘍の成長を安定化および阻害させてもよい。抗血管形成タンパク質、またはそれらのフラグメント、抗血清、受容体アゴニスト、または受容体アンタゴニスト、またはそれらを組み合わせたものを、他の抗血管形成化合物、または他の抗血管形成タンパク質(たとえばアンジオスタチン、エンドスタチン)のタンパク質、フラグメント、抗血清、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニストと組み合わせて用いることもできる。さらに、抗血管形成タンパク質、またはそれらのフラグメント、抗血清、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、またはそれらを組み合わせたものを、薬学的に許容される賦形剤、および任意には生分解性ポリマーなどの徐放性マトリックスと組み合わせて、治療用組成物を形成させる。本発明の組成物は、エンドスタチンまたはアンジオスタチン、およびそれらの変異体、フラグメント、およびアナログなど、他の抗血管形成タンパク質または化学化合物をさらに含んでいてもよい。該組成物は、化学療法剤や放射性剤など、該タンパク質の活性を強化するか、治療に際してその活性または用途を引き立たせる他剤をさらに含有していてもよい。かかる追加的因子および/または剤を該組成物に含有させて、本発明のタンパク質と相乗的効果を生じさせたり、副作用を極力抑えることができる。また、本発明の組成物の投与は、たとえば化学療法または放射線療法レジメンと組み合わせて投与するなど、他の療法と併用投与することができる。
【0067】
本発明は、哺乳類組織における血管形成を、組織を本発明のタンパク質から成る組成物と接触させることにより、阻害する方法を含む。「接触させる」とは、局所施用のみならず、該組成物を該組織に、または該組織の細胞に導入する送達方式をも意味する。
【0068】
遅放性送達系または徐放性送達系の使用も本発明に含まれる。かかる系は、たとえば年齢または疾患経過そのものにより衰弱している患者など外科手術が困難または不可能であったり、リスク・効果解析で治癒よりコントロールが求められる状況において、とくに望ましい。
【0069】
本明細書で使用する場合、徐放性マトリックスは、酵素的または酸/塩基加水分解によるか、溶解によって分解可能な、通常はポリマーである物質でできているマトリックスである。体内に挿入されたマトリックスは、酵素と体液によって作用させられる。徐放性マトリックスは、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチド・コグリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリタンパク質、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンなどのアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコンなどの生体適合性物質から選ばれることが望ましい。好ましい生分解性マトリックスとしては、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチド・コグリコリド(乳酸とグリコール酸の共重合体)のいずれか1つのもののマトリックスが挙げられる。
【0070】
本発明の血管形成調節組成物は、固体、液体またはエアゾルであってよく、公知の投与経路によって投与することができる。固体組成物の具体例としては、錠剤、クリーム剤、およびインプラント剤型が挙げられる。錠剤は経口的に投与することができ、治療用クリーム剤は局所的に投与することができる。インプラント剤型は、たとえば腫瘍部位において局所的に投与することができるが、血管形成調節組成物の全身放出を目的として、たとえば皮下的に留置してもよい。液体組成物の具体例としては、皮下、静脈内、動脈内注射用の処方、および局所投与および眼内投与用処方が挙げられる。エアゾル処方の具体例としては、肺への投与用の吸入処方が挙げられる。
【0071】
上記抗血管形成活性を有するタンパク質およびタンパク質フラグメントは、当業者にとって公知の処方方法を用いて、薬学的に許容される処方として、単離され実質的に精製済みのタンパク質およびタンパク質フラグメントとして提供することができる。これらの処方は通常の経路によって投与することができる。一般に、該組成物は、局所、経皮、腹腔内、頭蓋内、脳脊髄液内、脳内、腟内、子宮内、経口、直腸内または非経口的(たとえば静脈内、脊髄内、皮下または筋肉内)経路によって投与してよい。また、抗血管形成タンパク質は、該化合物を徐放させる生分解性ポリマーに取り込ませて、該ポリマーを、たとえば腫瘍の部位など、薬物送達が望まれる場所の付近にインプラントさせるか、抗血管形成タンパク質が全身的に徐々に放出されるようにインプラントしてもよい。浸透圧ミニポンプを用いて、カニューレを介して、高濃度の抗血管形成タンパク質を、転移体または腫瘍への血管系に直接送達させるなど、関心部位に制御送達させてもよい。生分解性ポリマーおよびそれらの用途については、たとえばBremら、(1991) (J. Neurosurg. 74:441-446 )において詳細に説明されているが、この文献は参照により全て本明細書に含まれる。
【0072】
本発明のポリペプチドを含有する組成物は、たとえば、単位用量の注射によるなどして、静脈内投与することができる。本発明の治療用組成物について使用する場合、「単位用量」という用語は、対象に対する単位投与量として適切である物理的に明確な単位をいい、各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと関連して所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の有効成分を含有している。
【0073】
本発明の組成物の投与方式としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射ならびに輸液が挙げられる。非経口的注射用医薬組成物は、薬学的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液、ならびに使用直前に無菌の注射溶液または分散液に再構成される無菌粉末から成る。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの具体例としては、水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびその適当な混合物、植物油(たとえばオリーブ油) およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性を、たとえばレシチンなどの被覆物質の使用により、分散液の場合は、必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持してもよい。これらの組成物は、保存料、湿潤化剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントをさらに含有していてもよい。パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など様々な抗細菌剤および抗真菌剤を含有させることで、微生物活動の予防を確実にしてもよい。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含ませることも望ましい。吸収を遅らせるモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの剤を含有させることにより、注射用医薬剤型の長期的吸収を起こさせてもよい。蓄積注射剤型は、薬物のマイクロカプセルマトリックスを、ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)などの生分解性ポリマー中で形成させることによって、作製される。ポリマーに対する薬物の比率および使用する特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。蓄積注射用処方は、薬物を、生体組織適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに封入することによって調製される場合もある。該注射用処方は、たとえば細菌捕捉フィルターを通す濾過によるか、使用直前に滅菌水またはその他の滅菌注射媒体に溶解または分散させることができる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を添加することによって、滅菌してもよい。
【0074】
本発明の治療用組成物は、たとえば無機または有機酸から得てもよい、当該成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容される塩」とは、正当な医学的判断の範囲内で、好ましくない毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよびヒトより下等な動物の組織と接触する用途に適した塩であって、妥当な利益/リスク比に相当する塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当該分野において公知である。たとえば、S.M. Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences (1977)66:1 et seq. において、薬学的に許容される塩を詳細に記載しているが、この文献は参照により本明細書に含まれる。薬学的に許容される塩としては、たとえば塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることもできる。該塩は、本発明の化合物を最終的に単離および精製する際にインサイチュウで調製してもよく、遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることにより別に調製してもよい。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、二硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシメタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチル塩化物、臭化物およびヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル塩化物、臭化物およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよびフェネチル臭化物などのようなアリルアルキルハロゲン化物などの剤で四級化(quaternized・)することができる。このようにして、水または脂溶性または分散性の生成物が得られる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために使用することができる酸の具体例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸および蓚酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸が挙げられる。
【0075】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」、「生理的に忍容される」という用語およびそれらの文法変化形が組成物、担体、希釈剤および試薬についていわれるときは、互換的に用いられ、当該物質が、吐き気、めまい、胃もたれなどの好ましくない生理的影響をほとんど引き起こさないで、哺乳類に対して投与し得ることを表す。溶解または分散された有効成分を含有する薬理学的組成物の調製は、当該分野において自明であり、処方に応じて限定される必要はない。通常、かかる組成物は、液状の溶液または懸濁液のいずれかとして注射剤として調製されるが、使用前の液状の溶液または懸濁液に適した固形剤型を調製することもできる。該製剤は、乳化させることもできる。
【0076】
有効成分は、薬学的に許容され、かつその有効成分と適合する賦形剤と、本明細書で説明する治療方法における用途に適した量で、混合することができる。適当な賦形剤としては、たとえば水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど、およびそれらを組み合わせたものが挙げられる。また、所望により、該組成物は、有効成分の効果を強化する湿潤化または乳化剤、pH緩衝剤などの助剤を少量含有することができる。
【0077】
本発明の抗血管形成タンパク質は、プロドラッグから成る組成物に含有させることもできる。本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、たとえば血液中の酵素加水分解によって、インビボで急速に変換されて、親化合物を生成する化合物をいう。詳細な議論が、(T. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the ACS Symposium Series およびEdward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and PermagonPress, 1987 )でなされ、これらの文献はいずれも参照により本明細書に含まれる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、(1)正当な医学的判断の範囲内で、好ましくない毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび動物の組織と接触する用途に適した本発明の化合物のプロドラッグであって、適当な対リスク利益比に相当し、かつそれらの目的用途に有効であるプロドラッグ、および(2)可能である場合は、親化合物の双極性イオン型をいう。
【0078】
本発明の抗血管形成タンパク質の投与量は、治療されている疾患状態または病態およびヒトまたは動物の体重や状態および化合物の投与経路など、その他の臨床的因子によって決まる。ヒトまたは動物を治療する場合、体重1kgあたり約10mgから体重1kgあたり約20mgのタンパク質を投与することができる。たとえば本発明のタンパク質を放射線療法、化学療法、または免疫療法と併用するなどの併用療法においては、たとえば体重1kgあたり約0.1mgから体重1kgあたり約0.2mgまで投与量を減らすことができる。特定の動物またはヒトにおける抗血管形成タンパク質の半減期に応じて、抗血管形成タンパク質を、1日あたり数回から1週間に1回の間で投与することができる。本発明は、ヒト用途と獣医科用途の両方の用途があるものと解される。本発明の方法は、単回投与、ならびに同時的であるか長期にわたるかに関わらず複数回投与が可能である。また、抗血管形成タンパク質は、たとえば化学療法、放射線療法、または免疫療法など、他の形の療法と併用投与することができる。
【0079】
抗血管形成タンパク質処方としては、経口、直腸内、眼内(硝子体内または眼房内を含む)、鼻腔内、局所(頬内および舌下を含む)、子宮内、腟内または非経口(皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮内、頭蓋内、気管内、および硬膜外を含む)投与に適したものが挙げられる。抗血管形成タンパク質処方は、単位剤型として簡便に投与することができ、従来の製薬技術によって調製することができる。かかる技術としては、有効成分と単数または複数の医薬担体または単数または複数の賦形剤を会合させる工程を含む。一般に、該処方は、有効成分を液状担体または粉砕した固形担体または両者と均一かつ緊密に会合させた後、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0080】
非経口投与に適した処方としては、処方を想定レシピエントの血液と等張化する抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含有していてもよい水性および非水性の無菌注射溶液;および懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。該処方は、たとえば封入アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量容器に入れて投与することができ、たとえば注射用水などの無菌液状担体を使用直前に添加するだけで、凍結乾燥(リオフィライズ)状態で保存することができる。処方用注射溶液および懸濁液は、上記種類の無菌粉末、粒剤および錠剤から調製することができる。
【0081】
本発明のタンパク質の有効量が経口的に投与される場合、本発明の抗血管形成タンパク質は、錠剤、カプセル剤、散剤、溶液またはエリキシル剤の形を取ることになる。錠剤型で投与される場合、本発明の医薬組成物は、ゼラチンやアジュバントなどの固形担体をさらに含有してよい。該錠剤、カプセル剤、および散剤は、本発明のタンパク質を約5から95%含有しているが、本発明のタンパク質を約25から95%含有していることが好ましい。液剤型で投与される場合、水、石油、ラッカセイ油、鉱油、ダイズ油、またはゴマ油などの動植物起源の油、または合成油などの液状担体を添加することができる。液剤型の該医薬組成物は、生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールをさらに含有することができる。液剤型で投与される場合、該医薬組成物は、本発明のタンパク質を約0.5から90重量%含んでいるが、本発明のタンパク質を約1から50%含んでいることが好ましい。
【0082】
本発明のタンパク質の有効量が静脈内、皮内または皮下注射によって投与される場合、本発明のタンパク質は、発熱性物質不含の非経口的に許容される水溶液の形を取ることになる。かかる非経口的に許容されるタンパク質溶液は、pH、等張性、安定性などに関して配慮されており、その調製は、当該分野における技術の範囲内である。好ましい静脈内、皮内、または皮下注射用医薬組成物は、本発明のタンパク質以外に、当該分野において公知であるように、「塩化ナトリウム注射液」、「リンゲル注射液」、「デキストロース注射液」、「デキストロース・塩化ナトリウム注射液」、「乳酸加リンゲル注射液」、またはその他のビヒクルなどの等張ビヒクルを含有していなければならない。本発明の医薬組成物は、安定剤、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、またはその他の当業者にとって公知の添加剤をさらに含有することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物における本発明のタンパク質の量は、治療されている病態の性質と程度により、また患者がそれまで受けていた先行的治療の性質によって決まる。究極的には、主治医が、各患者を治療するのに用いる本発明のタンパク質の量を決定する。まず、主治医は、本発明のタンパク質を低用量で投与し、患者の反応を観察する。患者にとって最適の治療効果が得られるまで、より高用量で本発明のタンパク質を投与し、その時点で、投与量をそれ以上増やさない。
【0084】
本発明の医薬組成物を用いた静脈内投与療法の期間は、治療されている疾患の程度と各患者の状態および潜在的特異体質反応によって決まる。本発明のタンパク質の各投与の期間は、連続的静脈内投与で12から24時間の範囲に入る。究極的には、主治医が、本発明の医薬組成物を用いた静脈内投与療法の適切な期間を決定する。
【0085】
好ましい単位投与処方は、投与成分の1日あたり用量または単位、1日あたりサブ用量(sub-dose)、またはその適当な分数を含有する処方である。とくに上記の成分以外にも、本発明の処方は、対象処方タイプにふさわしい当該分野において従来公知の他剤を含むことができるものとする。任意に、細胞傷害剤を添加するか、他の形で、抗血管形成タンパク質またはそれらの生理機能性タンパク質フラグメントと併用することで、複合療法を患者に提供してもよい。
【0086】
該治療用組成物は、現時点で、獣医科用途にも有用である。ヒト以外にも、とくに家畜動物およびサラブレッド馬は、本発明のタンパク質によるかかる治療の対象として望ましい。
【0087】
リシンなどの細胞傷害剤を、抗血管形成タンパク質およびそれらのフラグメントに連結させることで、該抗血管形成タンパク質に結合する細胞を破壊する手段を提供することができる。これらの細胞は、微小転移や原発性腫瘍を含む多くの場所で見られるが、これらに限定されない。細胞傷害剤に連結させたタンパク質を、所望の場所への送達を最大化するように設計されたやり方で輸液投与する。たとえば、リシン連結高度親和性フラグメントを、ターゲット部位に血液を供給する血管にカニューレを介して、またはターゲットに直接、送達させる。かかる剤は、輸液カニューレに接続した浸透圧ポンプを介して、制御されたやり方で送達させることもある。抗血管形成タンパク質に対するアンタゴニストを組み合わせたものを、血管形成シミュレーターとともに併用投与して、組織の血管形成を増大させてもよい。この治療レジメンは、効果的な転移癌破壊手段を提供する。
【0088】
上記以外の治療方法としては、抗血管形成タンパク質、それらのフラグメント、アナログ、抗血清、または受容体アゴニストおよびアンタゴニストを細胞傷害剤に連結させたものの投与が挙げられる。抗血管形成タンパク質は、起源がヒトまたは動物であってよいものと解する。抗血管形成タンパク質は、化学反応によって、または組換え技術を発現系と組み合わせたものによって、合成的に製造することもできる。抗血管形成タンパク質は、単離IV型コラーゲンを酵素的に分解することで、抗血管形成活性を有するタンパク質を生成させることによって、製造することもできる。抗血管形成タンパク質は、IV型コラーゲンを分解して該抗血管形成タンパク質を生成させる内因性酵素の作用を模倣する化合物によって製造してもよい。抗血管形成タンパク質の製造は、分解酵素の活性に影響を及ぼす化合物によって調節してもよい。
【0089】
本発明は、抗血管形成タンパク質またはそれらの変異体、フラグメント、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが患者の体内に導入され調節される遺伝子治療をも包含する。遺伝子産物タンパク質を発現させるためにDNAを細胞に転位または送達させる、遺伝子治療とも呼ばれる様々な方法が、Gene Transfer into Mammalian Somatic Cells in vivo, N. Yang (1992) Crit. Rev. Biotechn. 12(4):335-356 に開示されているが、この文献は参照により本明細書に含まれる。遺伝子治療は、エクスビボまたはインビボ治療のいずれかにおける用途のための体細胞または生殖細胞へのDNA配列の組み込みを包含する。遺伝子治療は、遺伝子を置換し、正常または異常な遺伝子機能を強化させ、感染症およびその他の病理に対抗する機能を発揮する。
【0090】
これらの医学的問題を遺伝子治療で治療する方式としては、欠陥遺伝子を同定した後で機能遺伝子を添加することで、該欠陥遺伝子の機能に置換するか、やや機能する遺伝子を強化するなどの治療法式;または病態を治療するか、組織または臓器を治療レジメンに対してより感受性にする産物タンパク質の遺伝子を添加するなどの予防方式が挙げられる。予防方式の具体例としては、1つ以上の抗血管形成タンパク質をコードするものなどの遺伝子を患者の体内に導入することで、血管形成の発生を予防してもよく;腫瘍細胞を放射線に対してより感受性にする遺伝子を挿入した後、その腫瘍に放射線を照射して、腫瘍細胞の死滅性を高めることもできる。
【0091】
抗血管形成タンパク質のDNAまたは調節配列の導入のための多くのプロトコルも本発明に含まれる。抗血管形成タンパク質と特異的に関連しているのが普通であるもの以外のプロモーター配列、または抗血管形成タンパク質の産生を増大させる他の配列のトランスダクションも、遺伝子治療の方法とみなされる。本技術の具体例として、細胞中でエリスロポエチン遺伝子に変化する「遺伝子スイッチ」を挿入する相同組換え法を用いたものが、Transkaryotic Therapies, Inc., of Cambridge, Mass., に示されている。Genetic Engineering News, Apr. 15, 1994 参照。かかる「遺伝子スイッチ」を用いて、抗血管形成タンパク質(または受容体)を発現しないのが普通である細胞中で該タンパク質(または受容体)を活性化させることができる。
【0092】
遺伝子治療のための遺伝子導入方法は、3つの範疇に大別される。すなわち、物理的方法(たとえばエレクトロポレーション、直接遺伝子導入および粒子ボンバードメント)、化学的方法(たとえば脂質利用担体、またはその他の非ウイルスベクター)および生物学的方法(たとえばウイルス由来ベクターおよび受容体取り込み)である。たとえば、DNAで被覆されたリポソームを含む非ウイルスベクターを使用することができる。かかるリポソーム/DNA複合体は、直接的に患者に静脈内注射することができる。リポソーム/DNA複合体は肝臓で濃縮され、DNAをマクロファージとクッパー細胞に送達させると考えられる。これらの細胞は生存期間が長いため、送達DNAの長期的発現をもたらす。また、ベクターすなわち遺伝子の「はだかの」DNAを、所望の臓器、組織または腫瘍に直接注射することで、治療用DNAのターゲット化送達を行ってもよい。
【0093】
遺伝子治療方法は、送達部位別に説明することもできる。基本的な遺伝子送達手段としては、エクスビボ遺伝子導入、インビボ遺伝子導入、およびインビトロ遺伝子導入が挙げられる。エクスビボ遺伝子導入では、細胞を患者から採取し、細胞培養で成長させる。DNAを細胞にトランスフェクトさせ、トランスフェクト細胞を数的に増殖させた後、患者に戻す。インビトロ遺伝子導入では、組織培養細胞など培養状態で成長する細胞が形質転換細胞となり、特定の患者の特定の細胞はこれに該当しない。これらの「実験室細胞」をトランスフェクトさせ、トランスフェクト細胞を選抜し、増殖させて、患者への移植またはその他の用途に使用する。
【0094】
インビボ遺伝子導入は、患者の細胞が患者の体内にあるときに、DNAを細胞に導入するものである。方法としては、非感染性ウイルスを用いたウイルス介在遺伝子導入を用いて、遺伝子を患者に送達するか、はだかのDNAを患者の体内の部位に注射して、DNAを、遺伝子産物タンパク質が発現される細胞の一定の比率のものに取り込ませるものが挙げられる。また、本明細書で説明する「遺伝子銃」の使用など、他の方法を、抗血管形成タンパク質の産生を制御するDNAまたは調節配列のインビトロ挿入に用いることができる。
【0095】
遺伝子治療の化学的方法としては、必ずしもリポソームでなくてもよい脂質ベース化合物を用いて、DNAを細胞膜通過させるものがある。負電荷DNAに結合する脂質ベース陽イオンであるリポフェクチンまたはサイトフェクチンは、細胞膜を通過して、DNAを細胞内部に送ることができる複合体を形成する。別の化学的方法では、特定のリガンドを細胞表面受容体に結合させ、それを封入し、細胞膜を通して輸送させる受容体ベースのエンドサイトーシスを利用する。リガンドは、DNAに結合し、複合体全体が細胞内に輸送される。リガンド遺伝子複合体が血流内に注射された後、受容体を有するターゲット細胞がリガンドと特異的に結合し、リガンド−DNA複合体を細胞内へ輸送する。
【0096】
多くの遺伝子治療方法は、ウイルスベクターを用いて遺伝子を細胞に挿入する。たとえば、変化させたレトロウイルスベクターをエクスビボの方法で用いて、遺伝子を末梢および腫瘍浸潤リンパ球、肝細胞、上皮細胞、筋肉細胞、またはその他の体細胞に導入する。次いで、これらの変化細胞を患者に導入することで、挿入DNA由来の遺伝子産物を提供する。
【0097】
ウイルスベクターは、インビボのプロトコルによる遺伝子の細胞への挿入にも用いられている。外来遺伝子の組織特異的発現を起こさせるために、組織特異的であることが知られているシス作用性調節エレメントまたはプロモーターを用いることができる。あるいは、この発現は、インビボにおいてDNAまたはウイルスベクターを特定の解剖部位にインサイチュウ送達することで行うことができる。たとえば、インビボにおける血管への遺伝子導入が、動脈壁上の選ばれた部位において、インビトロでトランスデュース内皮細胞を移植することによって、行われている。ウイルスは周囲の細胞に感染し、これらの細胞も遺伝子産物を発現した。ウイルスベクターは、たとえばカテーテルにより、インビボ部位に直接送達させることで、特定のエリアのみをウイルスに感染させ、長期的な部位特異的遺伝子発現をもたらすことができる。レトロウイルスベクターを用いるインビボ遺伝子導入は、変化ウイルスを、臓器につながる血管に注射することによっても、哺乳類組織および肝臓組織中で起きることが示されている。
【0098】
遺伝子治療プロトコルに用いられてきたウイルスベクターとしては、レトロウイルス、ポリオウイルスまたはシンドビスウイルスなどのその他のRNAウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、ワクシニアおよびその他のDNAウイルスが挙げられる。複製欠損ネズミレトロウイルスベクターは、最も広く利用されている遺伝子導入ベクターである。ネズミ白血病レトロウイルスは、1本鎖RNAが核コアタンパク質およびポリメラーゼ(pol)酵素と複合体化したものが、タンパク質コア(gag)に封入され、宿主範囲を決定する糖タンパク質エンベロープ(env)に取り囲まれているものから成る。レトロウイルスのゲノム構造には、5’および3’の長鎖末端反復単位(LTR)において閉鎖されたgag、pol、およびenv遺伝子が含まれている。レトロウイルスベクター系は、ウイルス構造タンパク質がパッケージング細胞株においてトランスの位置で提供されるという条件の下に、5’および3’LTRを含有するミニマルベクターおよびパッケージングシグナルさえあれば、ベクターのパッケージング、感染およびターゲット細胞への取り込みを起こさせるのに十分であるという事実を利用している。遺伝子導入におけるレトロウイルスベクターの基本的長所としては、ほとんどの細胞タイプにおいて効率的な感染と遺伝子発現が行えること、ターゲット細胞染色体DNAへの単一コピーベクターの取り込みが正確に行えること、およびレトロウイルスゲノムの操作が容易であることが挙げられる。
【0099】
アデノウイルスは、線状2本鎖DNAがコアタンパク質と複合体を形成し、カプシドタンパク質で囲まれたものから成る。分子ウイルス学の進歩により、これらの生物の生物学的性質を利用して、新規遺伝子配列をインビボでターゲット細胞にトランスデュースし得るベクターを作製することが可能になった。アデノウイルスベースのベクターは、高レベルの遺伝子産物タンパク質を発現する。アデノウイルスベクターは、低タイターのウイルスとでさえ、高い効力の感染性を有する。また、該ウイルスは、細胞不含ビリオンとして完全感染性を示すので、プロデューサー細胞株の注射は不要である。アデノウイルスベクターのもう1つの長所となり得るのは、異種遺伝子の長期的発現をインビボで行うことができる点である。
【0100】
DNA送達の機械的方法としては、リポソームまたはその他の膜融合用ベシクルなどの融合誘発性脂質ベシクル、リポフェクチンなどのカチオン脂質を含んでいるDNAの脂質粒子、DNAのポリリジン介在導入、生殖または体細胞へのDNAのマイクロ注射などのDNAの直接注射、「遺伝子銃」に使用される金粒子などの空圧送達DNA被覆粒子、およびリン酸カルシウムトランスフェクションなどの無機化学的アプローチが挙げられる。粒子介在遺伝子導入法は、当初、植物組織の形質転換に用いられた。粒子ボンバードメント装置すなわち「遺伝子銃」により、動力を発生させ、DNA被覆高密度粒子(金やタングステンなど)を、ターゲット臓器、組織または細胞への進入が可能になる高い速度まで加速させる。粒子ボンバードメントは、インビトロ系において、またはエクスビボまたはインビボ技術とともに用いて、DNAを細胞、組織または臓器に導入することができる。別の方法であるリガンド介在遺伝子治療は、DNAを特異的リガンドと複合体化させて、リガンド−DNAコンジュゲートを形成させることで、DNAを特定の細胞または組織に送達させる。
【0101】
プラスミドDNAを筋細胞に注射すると、高い比率の細胞がトランスフェクトされ、マーカー遺伝子を持続的に発現するようになることがわかっている。プラスミドのDNAは、細胞のゲノム中に取り込ませてもよいし、取り込ませなくてもよい。トランスフェクトDNAを取り込ませない場合、最終分化した非増殖性組織中で、細胞またはミトコンドリアゲノムの突然変異挿入、欠失、または置換の恐れなく、長期的に、遺伝子産物タンパク質のトランスフェクションと発現が可能になる。長期的ではあるが必ずしも永続的である必要はない治療用遺伝子の特定細胞への導入は、遺伝疾患の治療法または予防用途を提供する。DNAを定期的に再注射して、レシピエント細胞のゲノムに突然変異を起こさせないで、遺伝子産物レベルを維持することができる。外来DNAを取り込ませない場合、全ての構築物が様々な遺伝子産物を発現しつつ、1つの細胞内でいくつかの異なる外来DNA構築物を存在させることができる。
【0102】
遺伝子導入のためのエレクトロポレーションは、電流を利用して、細胞または組織をエレクトロポレーション介在の介在遺伝子導入に対して感受性にする。DNA分子が細胞に進入できるようなやり方で、一定の電場強度を有する短時間の電気インパルスを用いて、膜の透過性を増大させる。本技術を、インビトロ系において、またはエクスビボまたはインビボ技術とともに用いて、DNAを細胞、組織または臓器に導入することができる。
【0103】
インビボにおける担体介在遺伝子導入を利用して、外来DNAを細胞にトランスフェクトさせることができる。担体−DNA複合体を、簡便に体液または血流に導入した後で、部位特異的に体内のターゲット臓器または組織に送達させることができる。リポソームと、ポリリジン、リポフェクチンまたはサイトフェクチンなどのポリカチオンのいずれも用いることができる。細胞特異的または臓器特異的であるリポソームを作製することができるので、リポソームが保持する外来DNAがターゲット細胞に取り込まれる。ある種の細胞上の特異的受容体にターゲット化されている免疫リポソームの注射は、DNAを受容体担持細胞に挿入する簡便な方法として用いることができる。これまで用いられてきた別の担体系として、インビボ遺伝子導入のためにDNAを肝細胞に運ぶためのアシアロ糖タンパク質/ポリリジンコンジュゲート系がある。
【0104】
トランスフェクトDNAは、そのDNAがレシピエント細胞に運ばれた後で、細胞質中または核質中にとどまるように、他種の担体と複合体化させてもよい。DNAは、特異的に作製されたベシクル複合体中の担体核タンパク質と結合させて、核に直接送達させることができる。
【0105】
抗血管形成タンパク質の遺伝子調節は、抗血管形成タンパク質の1つをコードする遺伝子、またはその遺伝子と関連する制御領域、またはその対応するRNA転写物に結合する化合物を投与することで、転写または翻訳の速度を変化させることによって、行うことができる。また、抗血管形成タンパク質をコードするDNA配列でトランスフェクトされた細胞を、患者に投与して、それらのタンパク質のインビボの供給源を提供することができる。たとえば、細胞は、抗血管形成タンパク質をコードする核酸配列を含有するベクターでトランスフェクトすることができる。トランスフェクト細胞は、患者の正常組織や患者の疾患組織に由来する細胞であってもよいし、患者以外の細胞であってもよい。
【0106】
たとえば、患者から採取した腫瘍細胞を、本発明のタンパク質を発現し得るベクターでトランスフェクトし、患者に戻すことができる。トランスフェクトされた腫瘍細胞は、腫瘍の成長を阻害するレベルのタンパク質を患者体内で産生する。患者は、ヒトまたはヒト以外の動物であってよい。細胞は、非ベクター、またはエレクトロポレーション、イオノポレーション(ionoporation)など当該分野において公知の物理的または化学的方法によるか、「遺伝子銃」を介して、トランスフェクトさせてもよい。また、DNAは、担体の補助なしに、患者体内に直接注射してもよい。とくに、DNAは、皮膚、筋肉または血液中に注射することができる。
【0107】
抗血管形成タンパク質を患者体内にトランスフェクトするための遺伝子治療プロトコルは、抗血管形成タンパク質DNAを細胞のゲノムに、またはミニ染色体に取り込ませることによるか、細胞の細胞質または核質中で別個の複製または非複製DNA構築物として、行うことができる。抗血管形成タンパク質の発現は、長期的に持続してもよいし、定期的に再注射を行って、所望の細胞、組織または臓器中タンパク質レベルまたは所定の血中レベルを維持してもよい。
【0108】
また、本発明は抗体および抗血清を包含する。かかる抗体および抗血清は、新規な抗血管形成タンパク質の試験に用いることができ、また、血管形成活性またはその欠如を特徴とする、またはそれに関連する疾患および症状の診断、予後、または治療において使用することができる。かかる抗体および抗血清はまた、所望の、たとえば、梗塞後の心臓組織において、本発明のタンパク質に対する抗体または抗血清を使用して、天然の抗血管形成タンパク質の局在およびプロセスをブロックし、新たな血管形成を増加し、ならびに心臓組織の萎縮を阻害するという、血管形成の上流調節に使用することができる。
【0109】
かかる抗体および抗血清は、診断用組成物、予後用組成物または治療用組成物を作製するために薬学的に許容され得る組成物および担体と組み合わせることができる。用語「抗体」または「抗体分子」とは、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗体結合部位またはパラトープを含む分子の集団をいう。
【0110】
抗血管形成タンパク質を特異的に結合する抗体を用いる受動的な抗体療法を実施して、生殖、発達、および創傷治癒および組織修復等の血管形成依存性プロセスを調節することができる。また、抗血管形成タンパク質の抗体のFab領域に対する抗血清を投与し、該タンパク質に対する内因性の抗血清の該タンパク質に結合する能力をブロックすることができる。
【0111】
本発明の抗血管形成タンパク質はまた、1つまたは複数のインヒビターおよび1つまたは複数のレセプターに対し特異的な抗体を作製するのに使用することができる。かかる抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。抗血管形成タンパク質またはそれらのレセプターに特異的に結合するこれらの抗体は、体液または体組織において抗血管形成タンパク質またはそれらのレセプターを検出または定量するための、当業者に既知の診断方法および診断用キットにおいて使用され得る。これらの試験からの結果を用いて、癌および他の血管形成媒介疾患の発生または再生の診断または予測を行うことができる。
【0112】
本発明はまた、血管形成活性を特徴とする疾患の診断または予後における、抗血管形成タンパク質、それらのタンパク質に対する抗体、およびそれらのタンパク質および/またはそれらの抗体を含む組成物の使用を含む。本明細書で使用する用語「予後方法」とは、疾患、特に血管形成依存性疾患と診断されたヒトまたは動物の疾患の進行に関する予測を可能にする方法を意味する。本明細書で使用する用語「診断方法」とは、ヒトまたは動物内でのあるいはヒトまたは動物上での血管形成依存性疾患の存在または型の決定を可能にする方法を意味する。
【0113】
抗血管形成タンパク質を診断方法および診断用キットに用いて、該タンパク質を結合することができる抗体を検出および定量することができる。これらのキットは、インサイチュウでの原発性腫瘍により分泌される抗血管形成タンパク質の存在下に微小転移の広がりを示す抗血管形成タンパク質に対する循環する抗体の検出を可能にするであろう。かかる循環する抗タンパク質抗体を有する患者は、多様な腫瘍および癌が発生している可能性がより高いかもしれず、また、治療または緩解の期間の後の癌の再生を有している可能性がより高いかもしれない。これらの抗タンパク質抗体のFabフラグメントを抗原として用い、抗タンパク質抗体を中和するために用い得る抗タンパク質Fabフラグメント抗血清を生成してもよい。かかる方法は、抗タンパク質抗体による循環するタンパク質の除去を減少させ、それにより、効果的に抗血管形成タンパク質の循環レベルを向上するであろう。
【0114】
本発明はまた、抗血管形成タンパク質に特異的なレセプターの単離を含む。組織への高新和性結合を有するタンパク質フラグメントを用いて、アフィニティーカラム上で抗血管形成タンパク質のレセプターを単離することができる。1つまたは複数のレセプターの単離と精製は、抗血管形成タンパク質の作用機構の解明への基本工程である。レセプターの単離およびアゴニストおよびアンタゴニストの同定は、生物学的活性への最終経路であるレセプターの活性を調節するための薬物の開発を容易にするであろう。レセプターの単離は、インサイチュウおよび溶液ハイブリダイゼーション技術に使用してレセプターの位置および合成を追跡するためのヌクレオチドプローブの構築を可能にする。さらに、レセプターの遺伝子を単離し得、発現ベクターに組み込み得、また、細胞型、組織または腫瘍の抗血管形成タンパク質を結合する能力および局部的な血管形成を阻害する能力を増加するために、患者の腫瘍細胞等の細胞にトランスフェクトし得る。
【0115】
抗血管形成タンパク質を用いて、培養腫瘍細胞から抗血管形成タンパク質の1つまたは複数のレセプターの単離のためのアフィニティーカラムを開発する。レセプターの単離および精製の後にアミノ酸配列解析を行う。この情報を用いて、レセプターをコードする1つまたは複数の遺伝子を同定し得、単離し得る。次いで、クローニングされた核酸配列をレセプターを発現することができるベクターへの挿入のために開発する。これらの技術は当業者に充分に知られている。腫瘍細胞へのレセプターをコードする核酸配列のトランスフェクション、およびトランスフェクトされた腫瘍細胞によるレセプターの発現は、内因性または外因性の抗血管形成タンパク質への細胞の応答性を高め、それにより、転移増殖の速度が減少する。
【0116】
本発明の血管形成阻害性タンパク質は標準の微量化学装置において合成し得、HPLCおよび質量分光光学法で純度を調べることができる。タンパク質合成、HPLC精製および質量分光光学法の方法は一般に当業者に公知である。また、高血管形成タンパク質およびそれらのレセプタータンパク質を組換え大腸菌または酵母発現系で生産し、カラムクロマトグラフィーで精製する。
【0117】
無傷の抗血管形成タンパク質の異なるタンパク質フラグメントを、特に限定するものではないが、以下のようないくつかの適用における使用のために合成することができる;特異的抗血清の開発のための抗原として、抗血管形成タンパク質の結合部位において活性なアゴニストおよびアンタゴニストとして、抗血管形成タンパク質を結合する細胞の標的殺傷のための細胞傷害性薬剤に連結するための、または該薬剤と組み合わせるタンパク質として。
【0118】
抗血管形成タンパク質の合成タンパク質フラグメントは種々の用途を有する。高い特異性および親和力で抗血管形成タンパク質のレセプターに結合するタンパク質を放射性標識し、オートラジオグラフィーおよび膜結合技術を用いて結合部位の視覚化および定量に使用する。この適用は、重要な診断用および研究用ツールを提供する。1つまたは複数のレセプターの結合特性の認識は、1つまたは複数のレセプターに関連するトランスダクションメカニズムの調査を容易にする。
【0119】
抗血管形成タンパク質およびそれらに由来するタンパク質は、標準法を用いて他の分子に結合し得る。抗血管形成タンパク質のアミノ末端およびカルボキシル末端は両方ともチロシンおよびリジン残基を含んでおり、多くの技術、たとえば、慣用の技術(チロシン残基−クロラミンT、ヨードゲン、ラクトペルオキシダーゼ;リジン残基−ボルトン−ハンター試薬)を用いる放射性標識により同位体および非同位体で標識される。これらの結合技術は当業者によく知られている。他方、チロシンまたはリジンは、タンパク質上の反応性のアミノ基およびヒドロキシル基の標識を容易にするためにこれらの残基を有しないフラグメントに付加される。結合技術は、特に限定されるものではないが、アミノ、スルフヒドラル、カルボキシル、アミド、フェノール、およびイミダゾールを含むアミノ酸に対し利用可能な官能基に基づいて選択される。これらの結合に作用するのに用いられる種々の試薬としては、中でも、グルタルアルデヒド、ジアゾ化ベンジジン、カルボジイミド、およびp−ベンゾキノンが挙げられる。
【0120】
抗血管形成タンパク質は、種々の適用のために、同位体、酵素、担体タンパク質、細胞傷害性試薬、蛍光分子、化学発光物質、生物発光物質および他の化合物に化学的に結合される。結合反応の効率は、特異的反応に適する異なる技術を用いて決定される。たとえば、125 Iによる本発明のタンパク質の放射性標識は高い特異性活性のクロラミンTおよびNa125 Iを用いて行われる。反応はメタ重亜硫酸ナトリウムで終了し、処分可能なカラムで脱塩する。標識タンパク質をカラムから溶出し、フラクションを回収する。アリコート(aliquots)を各フラクションから採り除き、放射活性をガンマカウンターで測定する。この方式では、未反応Na125 Iは標識タンパク質から分離される。最も高い特異的放射活性を有するタンパク質フラクションを抗血管形成タンパク質に結合する能力の解析等の続く使用のために保存する。
【0121】
また、短命な同位体による抗血管形成タンパク質の標識では、ポジトロンエミッショントモグラフィーまたは他の近代X線撮影技術を用いるインビボでのレセプター結合部位の視覚化によりタンパク質の結合部位を有する腫瘍を位置づけることを可能にする。
【0122】
これらの合成タンパク質内でのアミノ酸の組織的な置換は、1つまたは複数のレセプターへの結合を増強または消去する抗血管形成タンパク質の1つまたは複数のレセプターに対する高親和性のタンパク質アゴニストおよびアンタゴニストを生ずる。かかるアゴニストを用いて微小転移の成長を抑制し、それにより、癌の広がりを制限する。抗血管形成タンパク質に対するアンタゴニストは、抗血管形成タンパク質の阻害作用をブロックし、かつ血管形成を促進するために、不充分な血管新生の場合に適用される。たとえば、この処理は、糖尿病における創傷治癒を促進する治療効果を有するかもしれない。
【0123】
本発明をさらに以下の実施例により説明する。かかる実施例は、本発明の範囲において如何様な限定にも解釈されることを意図していない。一方、種々の他の態様、修飾、およびそれらの均等物に対し、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付する特許請求の範囲の範囲を逸脱することなく当業者にそれら自身を示唆する余地を有するかもしれないことを明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0124】
実施例
実施例1:天然アレステンの単離。
アレステンはヒトの胎盤および羊膜組織からミリグラム量で得ることができる。アレステンおよび類似タンパク質を単離するためのプロトコールは他の研究者によって記述されている(例えばLangeveld,J.P.ら,1988,J.Biol.Chem. 263:10481−10488;Saus,J.ら,1988,J.Biol.Chem. 263:13374−13380;Gunwar,S.ら,1990,J.Biol.Chem. 265:5466−5469;Gunwar S.ら,1991,J.Biol.Chem. 266:15318−15324;Kahsai,T.Z.ら,1997,J.Biol.Chem. 272:17023−17032)。組換え型アレステンの生産は、Neilsonら(1993,J.Biol.Chem. 268:8402−8406)に記載されている。このタンパク質は293腎細胞でも発現させることができる(例えばHohenester,E.ら,1998,EMBO J. 17:1656−1664に記載の方法による)。アレステンはPihlajaniemi,T.ら(1985,J.Biol.Chem. 260:7681−7687)の方法でも単離できる。
【0125】
IV型コラーゲンのNC1ドメインのα1鎖のヌクレオチド配列(配列番号:1)とアミノ酸配列(配列番号:2)をFig.1に示す。アレステンのおよその始まりと終わりに印をつけてある。アレステンは一般にIV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメインを含み、またNC1ドメインの直前の12アミノ酸である接合領域もおそらく含んでいる。
【0126】
天然アレステンを、細菌性コラゲナーゼ、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、HPLCおよびアフィニティークロマトグラフィーを使って、ヒト胎盤から単離した(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem. 266:15318−24;Weber,S.ら,1984,Eur.J.Biohem. 139:401−10)。ヒト胎盤から単離されたIV型コラーゲン単量体をC−18疎水性カラム(Pharmacia,米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使ってHPLC精製した。構成タンパク質をアセトニトリル勾配(32%−39%)で分離した。主要ピークが認められ、それは小さな二重ピークだった。SDS−PAGE解析では、第1ピーク内に2つのバンドが認められ、第2ピークにはタンパク質は検出されなかった。免疫ブロッティングでも、第2ピークに免疫検出可能なタンパク質は見つからず、主要ピークはアレステンであると同定された。
【0127】
実施例2:大腸菌におけるアレステンの組換え生産。
アレステンをコードする配列を、α1NC1(IV)/pDSベクター(Neilson,E.G.ら,1993,J.Bio.Chem. 268:8402−5)からPCRにより、フォワードプライマー5' −CGG GAT CCT TCT GTT GAT CAC GGC TTC−3' (配列番号:3)およびリバースプライマー5' −CCC AAG CTT TGT TCT TCT CAT ACA GAC−3' (配列番号:4)を用いて増幅した。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化し、予め消化しておいたpET22b(+)(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)にライゲートした。この構造をFig.2に示す。これにより、アレステンはpelBリーダー配列の下流にpelBリーダー配列とインフレームで配置され、ペリプラズム局在と可溶性タンパク質の発現が可能になった。タンパク質にはアミノ酸MDIGINSD(配列番号:13)をコードする追加のベクター配列が付加された。配列の3' 末端をポリヒスチジンタグ配列とインフレームでライゲートした。cDNAの3' 末端とhis−タグの間の追加のベクター配列はアミノ酸KLAAALE(配列番号:14)をコードした。陽性クローンの両鎖を配列決定した。
【0128】
アレステンをコードするプラスミド構築物をまず大腸菌HMS174(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換し、次に、発現用のBL21(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換した。終夜細菌培養物を使ってLB培地の500ml培養に接種した。この培養を細胞が0.6のOD600 に達するまで約4時間生育させた。次に、最終濃度が1〜2mMになるようにIPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。2時間の誘導後に、5000×gでの遠心分離によって細胞を収集し、6Mグアニジン、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)に再懸濁することによって、細胞を溶解した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、12,000×gで30分間遠心分離した。上清画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,ドイツ・ヒルデン)に毎分2mlの流速で4〜6回通した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中の10mMイミダゾールと25mMイミダゾールの両方を使って洗浄することにより、非特異的に結合したタンパク質を除去した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中のイミダゾール濃度を順次増加して(50mM、125mMおよび250mM)、上記のカラムからアレステンタンパク質を溶出させた。溶出したタンパク質を4℃でPBSに対して2回透析した。透析中に総タンパク質のごく一部が沈殿した。透析したタンパク質を集め、約3500×gで遠心分離して、ペレット画分と上清画分に分離した。各画分中のタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce Chemical Co.,米国イリノイ州ロックフォード)および定量的SDS−PAGE解析で決定した。総タンパク質のうち約22%がペレット中にあり、残りの78%が可溶性タンパク質として回収された。タンパク質の全収量は約10mg/リットルだった。
【0129】
大腸菌発現タンパク質は主に可溶性タンパク質として単離され、SDS−PAGEでは29kDaに単量体バンドが認められた。付加的な3kDaはポリリンカー配列およびヒスチジンタグ配列に起因し、アレステン抗体および6−ヒスチジンタグ抗体の両方によって免疫検出された。
【0130】
実施例3:293胎児腎細胞におけるアレステンの発現。
α1(IV)NC1を含有するpDSプラスミドを使って、リーダーシグナル配列がpcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,米国カリフォルニア州サンディエゴ)中にインフレームで付加されるような方法で、アレステンを増幅した。全長α1(IV)鎖の5' 末端に由来するリーダー配列をNC1ドメインの5' 側にクローニングして、培養培地へのタンパク質分泌を可能にした。そのアレステン含有組換えベクターを、フランキングプライマーを使って配列決定した。エラーを含まないcDNAクローンをさらに精製し、それをインビトロ翻訳実験に使用して、タンパク質発現を確認した。そのアレステン含有プラスミドおよび対照プラスミドを使用して、293細胞を塩化カルシウム法でトランスフェクトした。トランスフェクトされたクローンをジェネティシン抗生物質処理(Life Technologies/Gibco BRL,米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)によって選択した。その細胞を、細胞死が明らかでなくなるまで、上記抗生物質の存在下に3週間放置した。次にクローンをT−225フラスコに拡大し、コンフルエントになるまで生育させた。次に上清を集め、アミコン濃縮器(Amicon)を使って濃縮した。濃縮した上清をSDS−PAGE、免疫ブロッティングおよびELISAによってアレステン発現について解析した。ELISAにより上清に強い結合が検出された。SDS−PAGE解析では、約30kDaに単一の主要バンドが認められた。アレステン含有上清を、アレステン特異的抗体(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem. 266:15318−24)を使ったアフィニティークロマトグラフィーにかけた。アレステン抗体との免疫反応性を示す約30kDaの単量体を含む主要ピークが同定された。培養液1リットルにつき約1〜2mgの組換えアレステンが生産された。
【0131】
実施例4:アレステンは内皮細胞増殖を阻害する。
10%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM中でC−PAE細胞をコンフルエントまで生育させ、接触阻害状態を48時間保った。対照細胞は786−0(腎癌)細胞、PC−3細胞、HPEC細胞、およびA−498(腎癌)細胞とした。細胞を37℃で5分間のトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)によって収集した。1%FCSを含むDMEMに懸濁した12,500個の細胞を、10μg/mlフィブロネクチンで被覆した24ウェルプレートの各ウェルに加えた。その細胞を5%CO2 および湿度95%、37℃で24時間インキュベートした。培地を取り除き、0.5%FCSと3ng/ml bFGF(R&D Systems,米国ミネソタ州ミネアポリス)を含むDMEMで置き換えた。非刺激対照にはbFGFを与えなかった。細胞を0.01〜50μg/mlの濃度のアレステンまたはエンドスタチンで処理した。処理時に、全てのウェルに1マイクロキュリーの3 H−チミジンを添加した。24時間後に、培地を除去し、ウェルをPBSで洗浄した。細胞を1N NaOHで抽出し、4mlのScintiVerse II(Fisher Scientific,米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)溶液が入っているシンチレーションバイアルに加えた。シンチレーションカウンターを使ってチミジン取り込みを測定した。その結果をFig.3AおよびFig.3Bに示す。Fig.3AおよびFig.3Bは、様々な量のアレステン(Fig.3A)またはエンドスタチン(Fig.3B)で処理したC−PAE細胞への3 H−チミジンの取り込みを示す一組のグラフである。アレステンはエンドスタチンと同様にC−PAEにおけるチミジン取り込みを阻害するようであった。アレステンおよびエンドスタチンで処理した対照細胞の挙動もFig.4A、4B、4Cおよび4Dに示すが、アレステンは786−0細胞(Fig.4A)、PC−3細胞(Fig.4B)またはHPEC細胞(Fig.4C)に対してほとんど影響をもたなかった。エンドスタチンはA−498細胞に対してほとんど影響をもたなかった(Fig.4D)。Fig.3およびFig.4に示す各群はすべて三連の試料を表す。
【0132】
実施例5:アレステンは内皮細胞移動を阻害する。
FBSによって誘発される走化性に対するアレステンとエンドスタチンの阻害効果を、ヒト臍静脈内皮細胞(ECV−304細胞,ATCC 1998−CRL,ATCC(アメリカン タイプ カルチャー コレクション,米国20110−2209バージニア州マナッサス、ユニバーシティーブールバード10801))で、ボイエンチャンバー測定法(Neuro−Probe,Inc.,米国メリーランド州キャビンジョン)を使って調べた。10%FBSおよび5ng/ml DilC18(3)生細胞蛍光染料(Molecular Probes,Inc.,米国オレゴン州ユージーン)を含むM199培地で、ECV−304細胞を一晩生育させた。トリプシン処理し、0.5%FBSを含むM199で細胞を洗浄、希釈した後、60,000個の細胞を、アレステンまたはエンドスタチン(2〜40μg/ml)と共に、もしくはアレステンまたはエンドスタチンを伴なわずに、上チャンバーウェルに播種した。2%FBSを含むM199培地を化学誘引物質として下チャンバーに入れた。細胞含有コンパートメントを孔径8μmのポリカーボネートフィルター(Poretics Corp.,米国カリフォルニア州リバーモア)で化学誘引物質から隔離した。そのチャンバーを5%CO2 および湿度95%、37℃で4.5時間インキュベートした。非移動細胞を捨て、上ウェルをPBSで洗浄した後、フィルターをプラスチック製の刃で削り、4%ホルムアルデヒド/PBS中で固定し、ガラススライド上に置いた。蛍光強拡大視野を用いて、数個の独立した均質な像を、画像処理ソフトウェアPMIS(Roper Scientific/Photometrics,米国アリゾナ州トゥーソン)で操作したデジタルSenSysTMカメラで記録した。代表的画像をFig.5A、5Bおよび5Cに示す。これらの図は2μg/mlのアレステンが20μg/mlのエンドスタチンと同程度に有効であることを示している。OPTIMAS 6.0ソフトウェア(Media Cybernetics,ニューヨーク州ロチェスター)を使って細胞数を数えた。その結果をFig.6に示す。この図は顕微鏡写真に見られる結果をグラフで表したものである。
【0133】
実施例6:アレステンは内皮管形成を阻害する。
内皮管形成の阻害を測定するために、320μlのマトリゲル(Collaborative Biomedical Products,米国マサチューセッツ州ベッドフォード)を24ウェルプレートの各ウェルに加えて、重合させた(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract. 190:854−63)。抗生物質を含まないEGM−2培地(Clonetics Corporation,米国カリフォルニア州サンディエゴ)に懸濁した25,000個のマウス大動脈内皮細胞(MAE)を、マトリゲルで被覆した各ウェルに移した。その細胞を、濃度を順次増加させたアレステン、BSA、滅菌PBSまたは7Sドメインで処理した。全てのアッセイは三連で行なった。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(接眼レンズ3.3×、対物レンズ10×)を使って観察した。次に、400DK被覆TMAXフィルム(Kodak)を使って細胞を写真撮影した。細胞をdiff−quik固定液(Sigma Chemical Company,米国ミズーリ州セントルイス)で染色し、再び写真撮影した。10視野を観察し、管の数を数えて平均した。その結果をFig.7に示す。この図はアレステンが対照と比較して管形成を阻害することを示している。十分に形成された管の代表例は、7Sドメインで処理した細胞を示すFig.8Aに見ることができる(倍率100×)。これに対してFig.8Bは、0.8μg/mlアレステンで処理したMAE細胞では管がうまく形成されないか、全く形成されないことを示している(倍率100×)。
【0134】
マトリゲルアッセイをC57/BL6マウスでインビボでも行なった。マトリゲルを4℃で一晩融解した。次に、それを20U/mlのヘパリン(Pierce Chemical Co.,米国イリノイ州ロックフォード)、150ng/mlのbFGF(R&D Systems,米国ミネソタ州ミネアポリス)および1μg/mlのアレステンまたは10μg/mlのエンドスタチンと混合した。そのマトリゲル混合物を、21ゲージ注射針を使って皮下に注射した。対照群には血管形成インヒビターを含まない点以外は同じ混合物を投与した。14日後に、マウスを屠殺し、マトリゲルのプラグを取り出した。そのマトリゲルプラグを4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液中で室温にて4時間固定した後、PBSに24時間切り換えた。そのプラグをパラフィンに包埋し、切片化し、H&E染色した。切片を光学顕微鏡で調べ、強拡大の10視野から血管数を数えて平均した。
【0135】
マトリゲルを順次濃度を増加させたアレステンと共に、またはアレステンを伴なわずに、bFGFの存在下においた場合、1μg/mlのアレステンと10μg/mlのエンドスタチンでは血管数に50%の減少が観察された。これらの結果は、アレステンが血管形成過程の様々な段階を阻害することによって新血管の形成に影響を及ぼすことを示している。また、これらの結果は、1μg/mlのアレステンが、インビボでの新血管形成の阻害に関して、10μg/mlのエンドスタチンと同程度に有効であることも示している。
【0136】
実施例7:アレステンはインビボで腫瘍転移を阻害する。
C57/BL6マウスに100万個のMC38/MUC1(Gong,J.ら,1997,Nat.Med. 3:558−61)を静脈内注射した。26日間にわたって一日おきに、5匹の対照マウスに10mMの滅菌PBSを注射し、6匹の実験マウスに4mg/mlアレステンを投与した。処理の26日後に、各マウスについて肺腫瘍結節数を数え、上記の2群について平均した。各群で2例の死亡が記録された。アレステンは一次小節の平均数を対照マウスでの300から200まで有意に減少させた。
【0137】
実施例8:アレステンはインビボで腫瘍成長を阻害する。
200万個の786−0細胞を7〜9週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスに皮下注射した。6匹のマウスからなる第1群では、腫瘍を約700mm3 まで増殖させた。6匹のマウスからなる第2群では、腫瘍を100mm3 まで増殖させた。滅菌PBS中のアレステンを、700mm3 の腫瘍を持つマウスについては20mg/kg、100mm3 の腫瘍を持つマウスについては10mg/kgの濃度で、10日間にわたって毎日I.P.注射した。対照マウスにはBSAまたはPBSビヒクルを投与した。その結果をFig.9AおよびFig.9Bに示す。Fig.9Aは、10mg/kgアレステン処理マウス(白四角)、BSA処理マウス(+)、および対照マウス(黒丸)に関して、腫瘍容積の700mm3 からの増加を示すプロットである。アレステン処理マウスの腫瘍は700mm3 から500mm3 に収縮したが、BSA処理マウスおよび対照マウスの腫瘍は10日間で約1200mm3 に増殖した。Fig.9Bは、100mm3 の腫瘍を持つマウスでも、アレステン(白四角)は腫瘍を約80mm3 に収縮させたが、BSA処理腫瘍(+)は10日間でほぼ500mm3 までサイズが増大したことを示している。
【0138】
約500万個のPC−3細胞(ヒト前立腺腺癌細胞)を収集し、7〜9週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍を10日間増殖させた後、ノギスで測定した。腫瘍容積は標準的な公式(幅2 ×長さ×0.52)を使って計算した(O' Reilly,M.S.ら,1997,Cell 88:277−85;O' Reilly,M/Sら,1994,Cell 79:315−28)。マウスを5〜6匹ずつの群に分割した。実験群には、アレステン(10mg/kg/日)またはエンドスタチン(10mg/kg/日)を毎日I.P.注射した。対照群には毎日PBSを投与した。その結果をFig.9Cに示す。これはアレステン(白四角)がエンドスタチン(黒三角)と同程度か、またはエンドスタチンよりわずかに強く、腫瘍の増殖を阻害したことを示している。アレステン用量を4mg/kg/日に変更して、この実験を繰返した。その結果をFig.9Dに示す。8日後(矢印)に処理を停止したが、追加のアレステン処理を行なわなくても、有意な阻害はさらに12日間にわたって継続した。12日間の無処理後に、腫瘍はアレステンの阻害的影響を免れ始めた。
【0139】
実施例9:アレステンの循環半減期。
ヒト胎盤から単離された天然アレステンを200gのサイズのレート(rate)に静脈内注射した。各ラットに5mgのヒトアレステンを投与した。抗アレステン抗体を使用して、様々な時点で、循環アレステンの存在について、直接ELISAによって血清を解析した。同量の血清が解析に使用されることを保証するために、対照として血清アルブミンも各時点で評価した。アレステンは約36時間の半減期で血清中を循環することがわかった。
【0140】
もう一つのラット群には200μgのヒトアレステンをI.P.および/または皮下注射し、肺、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、脳、精巣、卵巣などにおける発病の徴候について評価した。直接ELISAを行なったところ、これらのラットの血清中にアレステン抗体が検出され、以前にも観察されているように(Kalluri,R.ら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6201−5)、多少の内因性IgG沈着が腎糸球体基底膜に認められた。この腎臓における抗体沈着は、炎症または腎機能低下の徴候を何も伴なわなかった。これらの実験からアレステンは非病原性であることが示唆される。
【0141】
実施例10:アレステンによるMMP−2酵素の結合と阻害。
MMP−2、MMP−9、およびそれらの酵素に対する抗体をOncogene,Inc.から購入した。既に記述されているように(Kalluri,R.ら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6201−5)、ヒト胎盤から単離された天然アレステンを用いて、直接ELISAを行なった。MMP−2およびMMP−9はどちらも特異的にアレステンを結合した。これらの酵素は7Sドメインを結合しなかった。この結合はTIMP−2およびTIMP−1結合とはそれぞれ無関係だった。
【0142】
アレステンの基底膜分解能を評価するために、マトリゲルをMMP−2およびMMP−9と共に穏やかに振盪しながら37℃で6時間インキュベートした。上清を、SDS−PAGEおよびIV型コラーゲンのα2鎖に対する抗体による免疫ブロットによって解析した。分解アッセイの開始時に、アレステンを順次濃度を増加させて添加し、MMP−2活性の阻害を観察した。NC1ドメインはSDS−PAGEゲル中で26kDaの単量体および56kDaの二量体として分離し、IV型コラーゲン抗体を用いたウェスタンブロットによって可視化することができた。順次濃度を増加させたアレステンが、MMP−2による基底膜の分解を阻害したことから、アレステンはMMP−2を結合して、それが基底膜コラーゲンを分解するのを防ぎうることが示された。同様の結果がMMP−9についても得られた。
【0143】
実施例11:大腸菌におけるカンスタチンの組換え生産。
IV型コラーゲンのα2NC1ドメインのヌクレオチド配列(配列番号:5)およびアミノ酸配列(配列番号:6)をFig.10に示す。カンスタチンをコードする配列を、PCRによって、α2NCI(IV)/pDSベクター(Neilson,E.G.ら,1993,J.Biol.Chem. 268:8402−5)から、フォワードプライマー5'・−CGG GAT CCT GTC AGC ATC GGC TAC CTC−3' (配列番号:7)およびリバースプライマー5' −CCC AAG CTT CAG GTT CTT CAT GCA CAC−3' (配列番号:8)を使って増幅した。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化し、前もって消化しておいたpET22b(+)(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)にライゲートした。その構造をFig.11に示す。かかるライゲーションにより、カンスタチンはpelBリーダー配列の下流にpelBリーダー配列とインフレームで配置され、ペリプラズム局在と可溶性タンパク質の発現が可能になった。タンパク質にはアミノ酸MDIGINSD(配列番号:13)をコードする追加のベクター配列が付加された。配列の3' 末端はポリヒスチジンタグ配列とインフレームでライゲートされた。cDNAの3' 末端とhis−タグの間の追加のベクター配列はアミノ酸KLAAALE(配列番号:14)をコードした。陽性クローンの両鎖を配列決定した。
【0144】
カンスタチンをコードするプラスミド構築物をまず大腸菌HMS174(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換し、次に発現用のBL21(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換した。終夜細菌培養物を使ってLB培地の500ml培養に接種した。この培養を細胞が0.6のOD600 に達するまで約4時間生育させた。次に、最終濃度が0.5mMになるようにIPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。2時間の誘導後に、5,000×gでの遠心分離によって細胞を収集し、6Mグアニジン、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)に再懸濁することによって、細胞を溶解した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、12,000×gで30分間遠心分離した。上清画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,ドイツ・ヒルデン)に2ml/分の流速で4〜6回通した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の10mM、25mMおよび50mMイミダゾールを15mlずつ使って洗浄することにより、非特異的に結合したタンパク質を除去した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl、pH8.0中の2種類の濃度のイミダゾール(125mMおよび250mM)を使って、上記のカラムからカンスタチンタンパク質を溶出させた。溶出したタンパク質を4℃でPBSに対して2回透析した。透析中に総タンパク質の一部が沈殿した。透析したタンパク質を集め、約3,500×gで遠心分離して、ペレット画分と上清画分に分離した。各画分中のタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce Chemical Co.,米国イリノイ州ロックフォード)および定量的SDS−PAGE解析で決定した。SDS−PAGE解析では29kDaに単量体バンドが認められ、余分な3kDaはポリリンカー配列およびヒスチジンタグ配列に起因した。カンスタチンを含む溶出液を合わせ、以降のアッセイに使用するためにPBSに対して透析した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングで解析したカンスタチンタンパク質は、ポリヒスチジンタグ抗体によって検出された。IV型コラーゲンNC1抗体も、細菌によって発現された組換えコンスタチン(constatin)タンパク質を検出した。
【0145】
大腸菌発現タンパク質は主に可溶性タンパク質として単離された。総タンパク質のうち約40%がペレット中にあり、残りの60%が可溶性タンパク質として回収された。タンパク質の全収量は約15mg/リットルだった。
【0146】
実施例12:293胎児腎細胞におけるカンスタチンの発現。
α2(IV)NC1を含有するpDSプラスミド(Neilson,E.G.ら,1993,J.iol.Chem. 268:8402−5)を使って、リーダーシグナル配列がpcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,米国カリフォルニア州サンディエゴ)中にインフレームで付加されるような方法で、カンスタチンをPCR増幅した。全長α2(IV)鎖の5' 末端に由来するリーダー配列をNC1ドメインの5' 側にクローニングして、培養培地へのタンパク質分泌を可能にした。そのカンスタチン含有組換えベクターを、フランキングプライマーを使って配列決定した。エラーを含まないcDNAクローンをさらに精製し、それをインビトロ翻訳実験に使用して、タンパク質発現を確認した。そのカンスタチン含有プラスミドおよび対照プラスミドを使用して、293細胞を塩化カルシウム法(Kingston,R.E.,1996,「Calcium Phosphate Transfection(リン酸カルシウムトランスフェクション)」,Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.ら編,Wiley and Sons,Inc.,米国ニューヨーク州ニューヨーク)の9.1.4〜9.1.7頁)でトランスフェクトした。トランスフェクトされたクローンをジェネティシン(Life Technologies/Gibco BRL,米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)抗生物質処理によって選択した。その細胞を、細胞死が明らかでなくなるまで、上記抗生物質の存在下に3週間放置した。クローンをT−225フラスコに拡大し、コンフルエントになるまで生育させた。次に上清を集め、アミコン濃縮器(Amicon,Inc.)を使って濃縮した。濃縮した上清をSDS−PAGE、免疫ブロッティングおよびELISAによってカンスタチン発現について解析した。ELISAにより上清に強い結合が検出された。カンスタチン含有上清をカンスタチン特異的抗体(Gunwar,S.ら,1991,J.Biol.Chem. 266:15318−24)を使ったアフィニティークロマトグラフィーにかけた。カンスタチン抗体(抗α2 NC1抗体,1:200希釈)との免疫反応性を示す約24kDaの純粋な単量体を含む主要ピークが同定された。
【0147】
実施例13:カンスタチンは内皮細胞増殖を阻害する。
10%ウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEM中で子ウシ大動脈内皮(CPAE)細胞をコンフルエントまで生育させ、接触阻害状態を48時間保った。細胞を37℃で5分間のトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)によって収集した。0.5%FCSを含むDMEMに懸濁した12,500個の細胞を、10μg/mlフィブロネクチンで被覆した24穴プレートの各ウェルに加えた。その細胞を5%CO2 および湿度95%、37℃で24時間インキュベートした。培地を取り除き、0.5%FCS(非刺激細胞)または10%FCS(刺激および処理細胞)を含むDMEMで置き換えた。786−0、PC−3およびHEK293細胞を対照とし、同じ方法でコンフルエントに生育させ、トリプシン処理し、プレートに播種した。細胞を0.025〜40mg/mlの濃度のカンスタチンまたはエンドスタチンで3回処理した。チミジン取り込み実験では、全てのウェルに1ミリキュリーの3 H−チミジンを処理時に添加した。24時間後に、培地を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。放射活性を1N NaOHで抽出し、4mlのScintiVerse II(Fisher Scientific,米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)溶液が入っているシンチレーションバイアルに加えた。シンチレーションカウンターを使ってチミジン取り込みを測定した。
【0148】
その結果をFig.12AとFig.12Bに示す。Fig.12Aは、CPAE細胞の増殖に対する様々な量のカンスタチンの影響を示すヒストグラムである。チミジン取り込み量をカウント毎分の単位でy軸上に示す。x軸上の「0.5%」は、0.5%FCS(非刺激)対照であり、「10%」は10%FCS(刺激)対照である。カンスタチンの濃度を順次増加させて処理することにより、チミジン取り込みは着実に減少した。Fig.12Bは、非内皮細胞786−0、PC−3およびHEK293でのチミジン取り込みに対する順次量を増加させたカンスタチンの影響を示すヒストグラムである。チミジン取り込み量をカウント毎分の単位でy軸に示し、x軸は上記3つの細胞株のそれぞれについて0.5%FCS(非刺激)対照および10%FCS(刺激)対照を示し、その後ろに、順次増加させたカンスタチンの濃度が示してある。全ての群は三連の試料を表し、バーは平均カウント毎分±平均の標準誤差を表す。
【0149】
メチレンブルー染色試験も行なった。3,100個の細胞を各ウェルに加え、上述のように処理した後、Oliverらの方法(Oliver,M.H.ら,1989,J.Cell.Science 92:513−8)を使って細胞数を数えた。全てのウェルを100mlの1×PBSで1回洗浄し、100mlの10%ホルマリン/中性緩衝食塩水(Sigma Chemical Co.,米国ミズーリ州セントルイス)を室温で30分間添加することにより、細胞を固定した。ホルマリンを除去した後、0.01Mホウ酸緩衝液(pH8.5)中の1%メチレンブルー(Sigma Chemical Co.,米国ミズーリ州セントルイス)溶液を使って、室温で30分間、細胞を染色した。染色溶液を除去した後、ウェルを100mlの0.01Mホウ酸緩衝液(pH8.5)で5回洗浄した。100mlの0.1N HCl/エタノール(1:1混合液)を使って、室温で1時間にわたって、メチレンブルーを細胞から抽出した。メチレンブルー染色の量を、波長655nmでの吸光度を使って、マイクロプレートリーダー(BioRad,米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)で測定した。
【0150】
その結果をFig.12CおよびFig.12Dに示す。Fig.12Cは、CPAE細胞による色素の取り込みに対する順次量を増加させたカンスタチンの影響を示すヒストグラムである。OD655 の吸光度をy軸上に示す。「0.1%」は0.1%FCS処理(非刺激)対照を表し、「10%」は10%FCS処理(刺激)対照である。残りのバーは、順次濃度を増加させたカンスタチンによる処理を表す。CPAE細胞では、約0.625〜1.25μg/mlのカンスタチン処理レベルで、色素取り込み量が非刺激細胞に見られるレベルにまで低下した。Fig.12Dは、非内皮細胞HEK293(白抜きのバー)およびPC−3(斜線付きのバー)に対する様々なカンスタチン濃度の影響を示すヒストグラムである。OD655 の吸光度をy軸に示す。「0.1%」は0.1%FCS処理(非刺激)対照を表し、「10%」は10%FCS処理(刺激)対照を表す。バーは1処理濃度につき8ウェルに関する655nmでの相対吸光度単位の平均±標準誤差を表す。
【0151】
10%血清刺激内皮細胞の用量依存的阻害が約0.5μg/mlのED50値で検出された(Fig.12AおよびFig.12C)。40mg/mlまでのカンスタチン用量では、腎癌細胞(786−0)、前立腺癌細胞(PC−3)またはヒト胎児腎細胞(HEK293)の増殖に対する有意な影響は観察されなかった(Fig.12BおよびFig.12D)。この内皮細胞特異性は、カンスタチンがおそらくとりわけ効果的な抗血管形成剤であることを示している。
【0152】
実施例14:カンスタチンは内皮細胞移動を阻害する。
血管形成の過程で、内皮細胞は、増殖するだけでなく移動もする。そこで内皮細胞移動に対するカンスタチンの影響を評価した。FBSによって誘発される走化性に対するカンスタチンとエンドスタチンの阻害効果を、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)で、ボイエンチャンバーアッセイ(Neuro−Probe,Inc.,米国メリーランド州キャビンジョン)を使って調べた。10%FBSおよび5ng/ml DiIC18(3)生細胞蛍光染料(Molecular Probes,Inc.,米国オレゴン州ユージーン)を含むM199培地(Life Technologies/Gibco BRL,米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)で、HUVEC細胞を一晩生育させた。トリプシン処理し、0.5%FBSを含むM199で細胞を洗浄、希釈した後、60,000個の細胞を、カンスタチン(0.01または1.00mg/ml)と共に、またはカンスタチンを伴なわずに、上チャンバーウェルに播種した。2%FBSを含むM199培地を化学誘引物質として下チャンバーに入れた。細胞含有コンパートメントを孔径8μmのポリカーボネートフィルター(Poretics Corp.,米国カリフォルニア州リバーモア)で化学誘引物質から隔離した。そのチャンバーを5%CO2 および湿度95%、37℃で4.5時間インキュベートした。非移動細胞を捨て、上ウェルをPBSで洗浄した後、フィルターをプラスチック製の刃で削り、4%ホルムアルデヒド/PBS中で固定し、ガラススライド上に置いた。蛍光強拡大視野を用いて、数個の独立した均質な像を、画像処理ソフトウェアPMIS(Roper Scientific/Photometrics,米国アリゾナ州トゥーソン)で操作したデジタルSenSysTMカメラで記録した。OPTIMIZE 6.0ソフトウェアプログラム(Media Cybernetics,ニューヨーク州ロチェスター)を使って細胞数を数えた(Klemke,R.L.ら,1994,J.Cell.Biol.127:859−66)。
【0153】
その結果をFig.13に示す。この図は、VEGFなし(VEGFなしまたは血清)およびVEGF(1%FCSおよび10ng/ml VEGF)による細胞の処理、および0.01μg/mlカンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび0.01μg/mlカンスタチン)および1.0μg/mlカンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび1μg/mlカンスタチン)による処理について、1視野あたりの移動した内皮細胞数(y軸)を示す棒グラフである。
【0154】
カンスタチンはHUVECの移動を阻害し、有意な効果が10ng/mlで観察された。内皮細胞の増殖と移動の両方を阻害できるカンスタチンの能力から、カンスタチンは血管形成の過程の1つを超える段階で作用することが示唆される。あるいはカンスタチンは、刺激された内皮細胞にとって、増殖と移動の両方に影響を及ぼしうるアポトーシスシグナルとして作用するのかもしれない。アポトーシス誘導は、別の抗血管形成分子であるアンジオスタチン(O' Reilly,M.S.ら,1994,Cell 79:315−28;Lucas,R.ら,1998,Blood 92:4730−41)について報告されている。
【0155】
実施例15:カンスタチンは内皮管形成を阻害する。
カンスタチンの抗血管形成能に関する最初の試験として、マウス基底膜タンパク質の固体ゲルであるマトリゲルでの内皮細胞による管形成を妨害するその能力について評価した。マウス大動脈内皮細胞をマトリゲル上で培養すると、それらは素早く整列し、中空管様の構造を形成する。
【0156】
マトリゲル(Collaborative Biomedical Products,米国マサチューセッツ州ベッドフォード)を24ウェルプレートの各ウェルに加えて(320ml)、重合させた(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract. 190:854−63)。抗生物質を含まないEGM−2培地(Clonetics Corporation,米国カリフォルニア州サンディエゴ)に懸濁した25,000個のマウス大動脈内皮細胞(MAE)を、マトリゲルで被覆した各ウェルに移した。その細胞を、順次濃度を増加させたカンスタチン、BSA、滅菌PBSまたはα5−NC1ドメインで処理した。全てのアッセイを三連で行なった。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(接眼レンズ3.3×、対物レンズ10×)を使って観察した。次に、400DK被覆TMAXフィルム(Kodak)を使って細胞を写真撮影した。細胞をdiff−quik固定液(Sigma Chemical Co.,米国ミズーリ州セントルイス)で染色し、再び写真撮影した(Grant,D.S.ら,1994,Pathol.Res.Pract.190:854−63)。10視野を観察し、管の数を数えて平均した。
【0157】
その結果をFig.14に示す。この図は、BSA(白四角)、カンスタチン(黒四角)およびα5NC1(白丸)で様々な処理を施した場合の管形成の量を対照(PBS処理ウェル)管形成の百分率(y軸)として表すグラフである。垂直方向の線分は平均の標準誤差を表す。この結果は、カンスタチンが対照と比較して内皮管形成を著しく減少させることを示している。
【0158】
カンスタチンは用量依存的に内皮管形成を選択的に阻害し、1mgのカンスタチンタンパク質の添加により、ほぼ完全な管形成の阻害が観察された(Fig.14)。対照タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)もIV型コラーゲンα5鎖のNC1ドメインも、内皮管形成に影響しなかったことから、このアッセイにおけるカンスタチンの阻害効果はカンスタチンに特異的であって、添加タンパク質の含有量によるものではないことが証明された。これらの結果はカンスタチンが抗血管形成剤であることを示している。
【0159】
実施例16:カンスタチンはインビボで腫瘍成長を阻害する。
ヒト前立腺腺癌細胞(PC−3細胞)を培養から収集し、滅菌PBS中の200万個の細胞を7〜9週齢の雄性SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍を約4週間増殖させた後、動物を4匹ずつの群に分割した。実験群には、総体積0.1mlのPBS中に10mg/kgの用量のカンスタチンを毎日I.P.注射した。対照群には等体積のPBSを毎日投与した。処理の開始時点(第0日)で、腫瘍の容積は、対照マウスの場合は88mm3 〜135mm3 、カンスタチン処理マウスの場合は108mm3 〜149mm3 の範囲にあった。各群には5匹のマウスを含めた。所定の日の腫瘍容積計算値を処理第0日の容積で割ることによって腫瘍容積率(V/V0 )を求めた。その結果をFig.15Aに示す。この図は、処理日(x軸)に対してプロットした腫瘍容積率(y軸)±標準誤差を示すグラフである。カンスタチン処理(黒四角)腫瘍は、対照(白四角)と比較してサイズがわずかしか増加しなかった。
【0160】
第二のPC−3実験では、PC−3細胞を培養から収集し、300万個の細胞を6〜7週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスに注射し、腫瘍を約2週間にわたって皮下で増殖させた後、マウスを4匹ずつの群に分割した。実験群(4匹)には総体積0.2mlのPBS中に3mg/kgの用量のカンスタチンまたは同じ体積のPBS中に8mg/kgの用量のエンドスタチンを毎日I.P.注射した。対照群(4匹)には、等体積のPBSを毎日投与した。腫瘍の長さと幅をノギスを使って測定し、標準的な公式:長さ×幅2 ×0.52を用いて腫瘍容積を計算した。腫瘍容積は26mm3 〜73mm3 の範囲にあり、上述のように所定の日の腫瘍容積計算値を処理第0日の容積で割ることによって腫瘍容積率(V/V0 )を求めた。その結果をFig.15Bに示す。この図は、処理日(x軸)に対してプロットした腫瘍容積率(y軸)±標準誤差を示すグラフである。対照(白四角)と比較して、カンスタチン処理(黒四角)腫瘍はサイズがわずかしか増加せず、その結果は、エンドスタチン(白丸)で達成された結果と比べてひけをとらなかった。
【0161】
腎細胞癌細胞モデルとして、200万個の786−0細胞を7〜9週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍を約100mm3 または約700mm3 まで増殖させた。各群には6匹のマウスを含めた。滅菌PBS中のカンスタチンを10mg/kgの濃度で10日間にわたって毎日I.P.注射した。対照群には同体積のPBSを投与した。その結果をFig.15C(100mm3 腫瘍)およびFig.31D(700mm3 腫瘍)に示す。どちらの群でも、カンスタチン処理(黒四角)腫瘍は、対照(白四角)と比較して実際に収縮した。
【0162】
大腸菌で生産されたカンスタチンは、小さい腎細胞癌(786−0)腫瘍(100mm3 ,Fig.15C)および大きい腎細胞癌(786−0)腫瘍(700mm3 ,Fig.15D)の増殖を抑制した。重症複合型免疫不全(SCID)マウス中のヒト前立腺(PC−3)腫瘍の場合、10mg/kgのカンスタチンにより、腫瘍容積率がビヒクルのみを注射したマウスの55%に保たれた。胸腺欠損(nu/nu)マウスで、さらに低用量のカンスタチンおよびエンドスタチンを使用したところ、3mg/kgのカンスタチンは8mg/kgのエンドスタチンと同程度の抑制効果を示した。どのインビボ試験でも、マウスは消耗の徴候を示すことなく健康そうな外観を呈し、処理中に死亡したマウスはいなかった。
【0163】
実施例17:カンスタチン処理マウスでのCD31免疫組織化学。
インビボでの腫瘍サイズの減少から、これらの腫瘍における血管の形成に対する抑制効果が示唆された。腫瘍血管を検出するために、抗CD31抗体アルカリホスファターゼコンジュゲートによる免疫組織化学をパラフィン包埋腫瘍切片で行なった。摘出した腫瘍をスカペル(scapel)で厚さ約3〜4mmの数片に切断した後、4%パラホルムアルデヒド中で24時間固定した。次に組織をPBSに24時間切り換えた後、脱水し、パラフィン包埋した。パラフィンに包埋した後、3mm組織切片を切断し、マウントした。切片を脱パラフィンし、再水和し、300mg/mlプロテアーゼXXIV(Sigma Chemical Co.,米国ミズーリ州セントルイス)で37℃にて5分間前処理した。100%エタノール中で消化を停止した。切片を風乾し、再水和し、10%ウサギ血清でブロックした。次にスライドをラット抗マウスCD31モノクローナル抗体(PharMingen,米国カリフォルニア州サンディエゴ)の1:50希釈液と共に4℃で一晩インキュベートした後、ウサギ抗ラット免疫グロブリン(DAKO)およびラットAPAAP(DAKO)の1:50希釈と共に37℃でそれぞれ30分間、順次インキュベートした。新しいフクシンで発色反応を行なった。切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0164】
カンスタチン処理腫瘍には、対照腫瘍と比較して、血管数の減少が認められた。
【0165】
実施例18:大腸菌におけるタムスタチンおよびタムスタチン変異体の組換え生産。
IV型コラーゲンのNC1ドメインのα3鎖のヌクレオチド配列(配列番号:9)およびアミノ酸配列(配列番号:10)をFig.16に示す。タムスタチンをコードする配列を、PCRによって、α3NCI(IV)/pDSベクター(Neilson,E.G.ら,1993,J.Biol.Chem. 268:8402−5)から、フォワードプライマー5' −CGG GAT CCG GGT TTG AAA GGA AAA CGT−3' (配列番号:11)およびリバースプライマー5' −CCC AAG CTT TCA GTG TCT TTT CTT CAT−3' (配列番号:12)を使って増幅した。得られたcDNAフラグメントをBamHIおよびHindIIIで消化し、前もって消化しておいたpET22b(+)(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)にライゲートした。その構造をFig.17に示す。かかるライゲーションにより、タムスタチンはpelBリーダー配列の下流にpelBリーダー配列とインフレームで配置され、ペリプラズム局在と可溶性タンパク質の発現が可能になった。タンパク質にはアミノ酸MDIGINSD(配列番号:13)をコードする追加のベクター配列が付加された。配列の3' 末端はポリヒスチジンタグ配列とインフレームでライゲートされた。cDNAの3' 末端とhis−タグの間の追加のベクター配列はアミノ酸KLAAALE(配列番号:14)をコードした。陽性クローンの両鎖を配列決定した。タムスタチンをコードするプラスミド構築物をまず大腸菌HMS174(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換し、次に発現用のBL21(Novagen,米国ウィスコンシン州マディソン)に形質転換した。終夜細菌培養物を使ってLB培地(Fisher Scientific,米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)の500ml培養に接種した。この培養を細胞が0.6のOD600 に達するまで約4時間生育させた。次に、最終濃度が1mMになるようにIPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。2時間の誘導後に、5,000×gでの遠心分離によって細胞を収集し、6Mグアニジン、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)に再懸濁することによって、細胞を溶解した。再懸濁した細胞を短時間超音波処理し、12,000×gで30分間遠心分離した。上清画分を5mlのNi−NTAアガロースカラム(Qiagen,ドイツ・ヒルデン)に毎分2mlの流速で4〜6回通した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中の10mMイミダゾールと25mMイミダゾールの両方を使って洗浄することにより、非特異的に結合したタンパク質を除去した。8M尿素、0.1M NaH2 PO4 、0.01M Tris−HCl(pH8.0)中のイミダゾール濃度を順次増加して(50mM、125mMおよび250mM)、上記のカラムからタムスタチンタンパク質を溶出させた。溶出したタンパク質を4℃のPBSに対して2回透析した。透析中に総タンパク質の一部が沈殿した。透析したタンパク質を集め、約3,500×gで遠心分離して、不溶性(ペレット)画分と可溶性(上清)画分に分離した。
【0166】
大腸菌発現タムスタチンは主に可溶性タンパク質として単離され、SDS−PAGE解析では31kDaに単量体バンドが認められた。余分な3kDaはポリリンカー配列およびヒスチジンタグ配列に起因する。このバンドを含む溶出画分を、以降の実験に使用した。各画分中のタンパク質濃度は、BCAアッセイ(Pierce Chemical Co.,米国イリノイ州ロックフォード)および走査デンシトメトリーを用いた定量的SDS−PAGE解析によって決定した。還元条件下では、非還元条件でタムスタチンの二量体に相当する60kD付近に観察されたバンドが、31kDaの単一バンドとして分離した。タンパク質の全収量は1リットルにつき約5mgだった。
【0167】
53個のN末端アミノ酸を欠く組換え切形型タムスタチン(タムスタチン−N53)を大腸菌中で生産し、他の変異体について以前記載されているようにして精製した(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8)。この変異体は、α3(IV)NC1単量体内の切形アミノ酸の位置を示す構成図であるFig.18に記載されている。黒丸は、「タムスタチン−N53」を生成するためにタムスタチンから欠失させたN末端の53個のアミノ酸残基に相当する(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8)。短いバーでマークしたジスルフィド結合はα1(IV)NC1およびα2(IV)NC1において存在しているように配置されている(Siebold,B. et al.,1988,Eur.J.Biochem. 176:617-24)。明瞭にするため、可能な2つのジスルフィド立体配置の内の1つのみを示す。
【0168】
ヒトα(IV)NC1に対するウサギ抗体を以前に記載されるようにして調製した(Kalluri,R. et al.,1997,J.Clin.Invest. 99:2470-8・)。モノクローナルラット抗マウスCD31(血小板内皮細胞接着分子、PECAM−1)抗体を(PharMingen,San Diego,California,USA・)から購入した。FITC結合ヤギ抗ラットIgG抗体、FITC結合ヤギ抗ウサギIgG抗体、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体をSigma Chemical Co.(St.Louis,Missouri,USA・)から購入した。
【0169】
前記得られた濃縮上清を、以前に記載されたようにしてタムスタチンの発現についてSDS−PAGEおよびイムノブロッティングで解析した(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8)。一次元のSDS−PAGEを12%分離ゲルおよび不連続の緩衝液系を用いて行った。分離したタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、2%BSAで室温にて30分間ブロックした。残りの結合部位をブロックした後、膜を完全に洗浄用緩衝液で洗浄し、1%BSA含有PBSで1:1000に希釈された一次抗体と共にインキュベートした。インキュベーションはシェーカー上で一夜室温にて行った。次いで、ブロットを洗浄用緩衝液で完全に洗浄し、シェーカー上で室温にて3時間ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合した二次抗体と共にインキュベートした。ブロットを再度完全に洗浄し、基質(0.01%塩化コバルトおよびニッケルアンモニウム含有0.05Mリン酸緩衝液中のジアミノベンジジン)を加えて、室温にて10分間インキュベートした。次いで、基質溶液を流し出し、過酸化水素含有基質緩衝液を加えた。バンドを発色させた後、反応を蒸留水で止め、ブロットを乾燥した。31kDaの単一バンドが観察された。
【0170】
実施例19:293胎児肝細胞におけるタムスタチンの発現。
ヒトタムスタチンをまた、pcDNA3.1真核細胞ベクターを用い293胎児肝細胞において分泌性の可溶性タンパク質として生産した。この組換えタンパク質(いずれの精製用または検出用タグをも有しない)をアフィニティークロマトグラフィーを用いて単離し、純粋な単量体型をSDS−PAGEおよびイムノブロット解析により主要ピークにおいて検出した。
【0171】
α3(IV)NC1含有pDSプラスミド(Neilson,E.G. et al.,1993,J.Biol.Chem. 268:8402-5)を用い、pcDNA3.1真核細胞発現ベクター(InVitrogen,San Diego,California,USA・)にインフレームでリーダーシグナル配列を付加するようにPCRでタムスタチンを増幅した。全長α3(IV)鎖の5’末端由来のリーダー配列を、タンパク質分泌が培養培地に生ずるようにNC1ドメインの5’にクローニングした。タムスタチン含有組換えベクターを、フランキングプライマーを用いて両鎖について配列決定した。エラーを含まないcDNAクローンをさらに精製し、タンパク質発現を確認するためにインビトロでの翻訳研究に使用した。タムスタチン含有プラスミドおよび対照プラスミドを用いて、塩化カルシウム法を用いて293細胞をトランスフェクトした(Sambrook,J. et al.,1989,Molecular Cloning:ALaboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,USA,pps.16.32-16.40・)。トランスフェクトされたクローンをジェネティシン(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA・)抗生物質処理により選抜した。細胞は、明確な細胞死がなくなるまで抗生物質の存在下で3週間放置した。クローンをT−225フラスコへ拡張し、コンフルエントまで増殖させた。次いで、上清を回収し、アミコン濃縮器を用いて濃縮した(Amicon,Inc.,Beverly,Massachusetts,USA・)。濃縮上清をタムスタチンの発現についてSDS−PAGE、イムノブロッティングおよびELISAで解析した。上清における強い結合がELISAで検出された。
【0172】
タムスタチン含有上清をアフィニティークロマトグラフィーに供し、抗タムスタチンおよび抗6−ヒスチジンタグ抗体(Gunwar,S. et al.,1991,J.Biol.Chem. 266:15318-24・)の両方を用いて免疫検出した。タムスタチン抗体と免疫反応する約31kDaの単量体を含む主要ピークを同定した。
【0173】
実施例20:タムスタチンは内皮細胞増殖を阻害する。
C−PAE細胞に対するタムスタチンの抗増殖性作用を、大腸菌産生可溶性タンパク質を用いて3 H−チミジン取り込みアッセイにより調べた。
細胞株および培養。786−0(腎明細胞癌株)、PC−3(ヒト前立腺腺癌細胞株)、C−PAE(ウシ肺動脈内皮細胞株)、MAE(マウス大動脈内皮細胞株)を全てアメリカンタイプカルチャーコレクションから得た。786−0細胞株およびC−PAE細胞株をDMEM(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersburg,Maryland,USA・)中に維持し、ECV−304細胞をM199中に維持し、また、MAE細胞を10%ウシ胎仔血清(FCS)、100units/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシンを添加したEGM−2(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中に維持した。
増殖アッセイ。C−PAE細胞を10%FCS含有DMEM中でコンフルエンスまで増殖させ、48時間接触阻害を続けた。C−PAE細胞を第2パッセージおよび第4パッセージの間で用いた。786−0細胞とPC−3細胞を本実験において非内皮性対照として用いた。細胞を37℃で5分間のトリプシン処理(Life Technologies/Gibco BRL,Gaithersberg,Maryland,USA・)により回収した。0.1%FCS含有DMEM中の12,500個の細胞のサスペンジョンを10μg/mlフィブロネクチンで被覆した24穴プレートの各ウェルに添加した。細胞を5%CO2 および湿度95%で37度にて24時間インキュベートした。培地を除去して、20%FCS含有DMEMで置き換えた。非刺激対照細胞を0.1%FCSと共にインキュベートした。細胞を0.01〜10mg/mlの範囲の種々の濃度のタムスタチンで処理した。全てのウェルに処理開始から12時間後に1mCurieの3 H−チミジンを添加した。24時間後、培地を除去し、ウェルをPBSで3回洗浄した。細胞を1N NaOHで抽出し、4mlのScintiVerseII(Fisher Scientific,Pittsburgh,Pennsylvania,USA・)溶液を含むシンチレーションバイアルに添加した。チミジン取り込みをシンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0174】
結果を、種々の濃度のタムスタチン(x軸)で処理した場合のC−PAE細胞(Fig.19A)、PC−3細胞(Fig.19B)および786−0細胞(Fig.19C)についての3 H−チミジン取り込み(y軸)を示すヒストグラムであるFig.19A、19Bおよび19Cに示す。全ての群は3連の試料を示す。タムスタチンは用量依存的様式で20%FCS刺激3 H−チミジン取り込みを有意に阻害した。ED50は約0.01mg/mlであった(Fig.19A)。また、前立腺癌細胞(PC−3)または腎癌細胞(786−0)で、タムスタチン20mg/mlまでの濃度でさえ、有意な抗増殖性作用は観察されなかった(Fig.19Bおよび19C)。タムスタチン処理(0.1〜10mg/ml)における3 H−チミジン取り込みの平均値と対照の平均値との間の差は有意であった(P<0.05)。PC−3細胞または786−0細胞をタムスタチンで処理した場合、阻害作用は観察されなかった(Fig.19B、19C)。各カラムは3連のウェルの平均±SEを表す。この実験は3回繰り返した。星印でマークした棒は、片側スチューデントのt検定でP<0.05で有意である。
【0175】
実施例21:タムスタチンは内皮管形成を阻害する。
マトリゲル(matrigel)(Collaborative Biomedical Products,Bedford,Massachusetts,USA )を24穴プレートの各ウェルに添加し(320ml)、重合させた(Grant,D.S. et al.,1994,Pathol.Res.Pract.190:854-63)。抗生物質を含まないEGM−2培地(Clonetics Corporation,San Diego,California,USA)中の25,000個のMAE細胞のサスペンジョンをマトリゲルで被覆した各ウェルに移した(Grant,D.S. et al.,1994,Pathol.Res.Pract. 190:854-63・)。細胞を順に濃度を増加させたタムスタチン、BSAまたは7Sドメインで処理した。対照細胞は滅菌したBSAと共にインキュベートした。全てのアッセイは3連で行った。細胞を37℃で24〜48時間インキュベートし、CK2オリンパス顕微鏡(3.3×接眼レンズ、10×対物レンズの拡大)を用いて観察した。次いで、細胞を400DKで被覆したTMAXフィルム(Kodak・)を用いて写真撮影した。細胞をジフ−クイック(diff-quik・)固定液(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)で染色し、再度写真撮影した(Grant,D.S. et al.,1994,Pathol.Res.Pract. 190:854-63・)。10個の視野を観察し、管の数を実験プロトコルを知らない2人の研究者に計数させ、平均をとった。
【0176】
結果をFig.20に示す。マウス大動脈内皮細胞を、マウス基底膜タンパク質の固体ゲルであるマトリゲル上で培養すると、それらは急速に整列し、中空管様構造を形成する(Haralabopoulos,G.C. et al.,1994,Lab.Invest. 71:575-82・)。293細胞で生産されたタムスタチンは、BSA対照と比較して用量依存的様式でMAE細胞における内皮管形成を有意に阻害した(Fig.20)。1mg/mlのタンパク質による処理後の管形成の割合はBSA98.0±4.0、タムスタチン14.0±4.0であった。同様な結果がまた、大腸菌で生産したタムスタチンを用いて得られた。IV型コラーゲンの7Sドメイン(N末端非コラーゲン性ドメイン)は内皮管形成に作用しなかった。タムスタチンによる最大の阻害に800〜1000ng/mlの間で達した。タムスタチン処理(黒丸、0.1〜10mg/ml)の平均割合の値と対照〔BSA(白四角)、7Sドメイン(白丸)〕の平均割合の値との間の差は有意(p<0.05)であった。各点は3連のウェルの平均±SEを表す。この実験は3回繰り返した。星印でマークしたデータ点は、片側スチューデントのt検定でp<0.05で有意であった。充分に形成された管が7Sドメイン処理で観察された。0.8mg/mlのタムスタチンで処理したMAE細胞は管形成の減少を示した。
【0177】
新たな毛細血管の形成に対するタムスタチンのインビボでの作用を評価するために、マトリゲルプラグアッセイ(matrigel plug assay・)を行った(Passaniti,A. et al.,1992,Lab Invest. 67:519-29)。5〜6週齢の雄性C57/BL6マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine,USA・)を得た。マトリゲル(Collaborative Biochemical Products,Bedford,Massachusetts,USA)を一夜4℃で溶解した。C57/BL6マウスに注射する前に、20U/mlのヘパリン(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA・)、150ng/mlのbFGF(R&D Systems,Minneapolis,Minnesota,USA・)、および1mg/mlのタムスタチンと混合した。対照群には血管形成インヒビターを与えなかった。マトリゲル混合物を21ゲージ針を用いて皮下注射した。14日後、マウスを屠殺し、マトリゲルプラグを除去した。マトリゲルプラグを室温にて4時間、4%パラホルムアルデヒド(PBS中)にて固定し、次いで24時間、PBSに切り換えた。プラグをパラフィンで包埋し、切片にし、H&E染色した。切片を光学顕微鏡で調べ、10個の強拡大(high power)視野から血管の数を計数し、平均をとった。全切片は、研究プロトコルを知らない病理学者によりコードされ、観察された。
【0178】
マトリゲルを大腸菌に生産させたタムスタチンの有りまたはなしで、bFGFおよびヘパリンの存在下に置いた場合、血管数の67%の減少が、1mg/mlのタムスタチン処理で観察された。強拡大視野当たりの血管数は、タムスタチン、2.25±1.32および対照、7.50±2.17であった。各カラムは1群当たり5〜6匹のマウスの平均±SEを表わす。タムスタチン(1mg/ml)はPBSで処理した対照と比較してインビボでの血管新生を有意に阻害した。タムスタチン処理動物の平均割合の値と対照動物の平均割合の値との間の差は有意(p<0.05)であった。タムスタチン処理は、片側スチューデントのt検定でp<0.05で有意であった。
【0179】
実施例22:タムスタチンおよびタムスタチンの変異体はインビボでの腫瘍成長を阻害する。
500万個のPC−3細胞を回収し、7〜9週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスの背に皮下注射した。ノギスを用いて測定し、容積を標準式 幅2 ×長さ×0.52を用いて計算した。腫瘍を約100mm3 まで増殖させ、次いで、動物を5匹または6匹のマウスの群に分けた。滅菌したPBS中のタムスタチンまたはマウスエンドスタチンを、各々の実験群に対し、10日間、毎日腹腔内注射(20mg/kg)した。対照群にはビヒクル注射を行った(BSAまたはPBS)。腫瘍容積を10日間に渡り2または3日ごとに計算した。結果を、PBS対照(白四角)、20mg/kgのタムスタチン(黒丸)および20mg/kgのエンドスタチン(白丸)についての処理日数(x軸)に対するmm3 での腫瘍容積(y軸)を示すグラフであるFig.21Aに示す。大腸菌で生産したタムスタチンは、PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖を有意に阻害した(Fig.21A)。タムスタチンは20mg/Kgで、エンドスタチン20mg/kgにおけるのと同様に腫瘍成長を阻害した(Fig.21A)。腫瘍成長に対する有意な阻害作用が10日目に観察された(対照202.8±50.0mm3 、タムスタチン82.9±25.2mm3 、エンドスタチン68.9±16.7mm3 )。タムスタチンまたはエンドスタチンの毎日の腹腔内注射は、対照と比較して、ヒト前立腺腺癌細胞(PC−3)腫瘍の増殖を阻害した。この実験は、腫瘍容積が100mm3 未満の時に開始した。
【0180】
マウスで確立した他の原発性腫瘍に対するタムスタチンの作用も研究した。200万個の786−0腎細胞癌細胞を7〜9週齢雄性胸腺欠損ヌードマウスの背に皮下注射した。腫瘍を約600〜約700mm3 まで増殖させ、次いで、動物を6匹ずつの群に分けた。滅菌したPBS中のタムスタチンを10日間、毎日、腹腔内注射(6mg/kg)した。対照群にはBSA注射を行った。結果を、PBS対照(白四角)および6mg/kgのタムスタチン(黒丸)についての処理日数(x軸)に対するmm3 での腫瘍容積(y軸)を示すグラフであるFig.21Bに示す。大腸菌で生産したタムスタチンは6mg/kgで、BSA対照と比較して、786−0ヒト腎細胞癌の腫瘍成長を阻害した(Fig.21B)。腫瘍成長に対する有意な阻害作用が10日目に観察された(対照1096±179.7mm3 、タムスタチン619±120.7mm3 )。タムスタチンの毎日の腹腔内注射は、対照と比較して、ヒト腎細胞癌(786−0)の腫瘍成長を阻害した。この実験は、腫瘍容積が600〜700mm3 の時に開始した。各点は、1群当たり5〜6匹のマウスの平均±SEを表わす。星印のデータ点マーカーは、片側スチューデントのt検定でp<0.05で有意であった。
【0181】
IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメイン〔α3(IV)NC1〕の部分はグッドパスチャー(Goodpasture・)症候群の病原性エピトープである(Butkowski,R.J. et al.,1987,J.Biol.Chem. 262:7874-7;Saus,J. et al.,1988,J.Biol.Chem. 263:13374-80;Kalluri,R. et al.,1991,J.Biol.Chem. 266:24018-24・)。グッドパスチャー症候群は、肺出血および/または急速に進行する糸球体腎炎を特徴とする自己免疫疾患である(Wilson,C.&F.Dixon,1986,The Kidney,W.B. Sanders Co.,Philadelphia,Pennsylvania,USA,pps.80-89;Hudson,B.G. et al.,1993,J.Biol.Chem. 268:16033-6・)。これらの症状は、α3(IV)NC1に対する自己抗体の結合を介する腎糸球体および歯槽基底膜の崩壊により生ずる(Wilson,1986,前記;Hudson,1993,前記)。幾つかのグループがα3(IV)上のグッドパスチャー自己抗原の位置を位置づけまたは予測することを試みており(Kalluri,R. et al.,1995,J.Am.Soc.Nephrol. 6:1178-85;(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8;Levy,J.B. et al.,1997,J.Am.Soc.Nephrol. 8:1698-1705;Kefalides,N.A. et al.,1993,Kidney Int. 43:94-100;Quinones,S. et al.,1992,J.Biol.Chem. 267:19780-4(J.Biol.Chem. 269:17358・における誤植);Netzer,K.O. et al.,1999,J.Biol.Chem. 274:11267-74)、N末端、C末端、および中央部分の残基がエピトープの位置であると報告している。最近、最も可能性の高い疾患関連病原性エピトープがN末端位置において同定され(Hellmark,T. et al.,1999,Kidney Int. 55:936-44・)、さらに、N末端の40個のアミノ酸に限定された。切形型タムスタチンは、病原性グッドパスチャー自己エピトープに相当するN末端の53個のアミノ酸を欠くように設計された(タムスタチン−N53)。この変異体タンパク質を以下の実験で用いた。
【0182】
200万個の786−0腎細胞癌細胞を7〜9週齢の雄性胸腺欠損ヌードマウスの背に皮下注射した。腫瘍を約100〜150mm3 のサイズまで増殖させた。次いで、マウスを5匹の群に分け、10日間、20mg/kgの53個のN末端アミノ酸を欠く大腸菌で発現させた切形型タムスタチンを毎日、腹腔内注射した(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8)。対照マウスにはPBS注射を行った。結果を、対照マウス(白四角)およびタムスタチン変異体N26で処理したマウス(黒丸)についての処理日数(x軸)に対する腫瘍容積(y軸)の増加を示すグラフであるFig.22に示す。大腸菌で生産したタムスタチン−N53は20mg/kgで、対照と比較して4日〜10日で786−0ヒト腎腫瘍の増殖を有意に阻害した(10日目:タムスタチン−N53 110.0±29.0mm、対照345.0±24.0mm)(Fig.22)。各点は、5〜6匹マウス/群の平均±SEを表わす。星印のデータ点マーカーは、片側スチューデントt検定でp<0.05で有意であった。
【0183】
実施例23:α3(IV)NC1およびCD31の免疫組織化学的染色。
7週齢の雄性C57/BL6マウス由来の腎臓および皮膚組織を免疫蛍光顕微鏡により評価するために加工した。組織試料を液体窒素中で凍結し、4mm厚の切片を用いた。組織は以前に記載されているようにして間接的な免疫蛍光技術により加工した(Kalluri,R. et al.,1996,J.Biol.Chem. 271:9062-8)。凍結切片を、一次抗体、ポリクローナル抗CD31抗体(1:100希釈)またはポリクローナル抗α3(IV)NC1抗体(1:50希釈)で染色した後、二次抗体、FITC結合抗ラットIgG抗体またはFITC結合抗ヒトIgG抗体で染色した。免疫蛍光をオリンパス蛍光顕微鏡(東京、日本国)の下で調べた。陰性対照は、一次抗体を無関係な免疫前血清で置き換えることにより行った。
【0184】
マウス腎臓では、a3(IV)NC1の発現がGBMおよび血管基底膜において観察された。CD31、PECAM−1の発現は糸球体内皮および血管内皮において観察された。マウス皮膚では、α3(IV)NC1は表皮基底膜および血管基底膜に存在しなかった。CD31の発現は皮膚の血管内皮において観察された。CD31発現は、マウス腎臓における糸球体および小管の内皮において観察され、α3(IV)NC1発現は糸球体基底膜および糸球体外血管基底膜において観察された。CD31の発現は、マウス皮膚の真皮小管の内皮において観察された。α3(IV)NC1発現は内皮基底膜に存在せず、真皮小管の基底膜においてほとんど観察されなかった。これらの結果は、タムスタチンの分布が制限される例を示す。
【0185】
実施例24:抗血管形成タンパク質の変異体およびフラグメント
アレステンおよびカンスタチンのフラグメントおよび変異体も、マリヤマら(1992,J.Biol.Chem. 267:1253-8)のシュードモナス(Pseudomonas・)エラスターゼ消化により作製した。消化物をゲルろ過HPLCで分離し、得られたフラグメントをSDS−PAGEで解析し、前記内皮管アッセイで評価した。これらのフラグメントは、アレステンの12kDaフラグメント、アレステンの8kDaフラグメント、カンスタチンの10kDaフラグメントを含む。また、タムスタチンの2つのフラグメント(「333」および「334」)をPCRクローニングにより生成した。
【0186】
Fig.23に示すように、前記のようにして行った内皮管アッセイで、2つのアレステンフラグメント〔12kDa(黒四角)および8kDa(白四角)〕およびカンスタチンフラグメント〔19kDa(黒三角)〕は、アレステン(黒丸)またはカンスタチン(白丸)が行ったよりもさらにより大きな程度で内皮管の形成を阻害した。Fig.24は、同様にタムスタチンフラグメント、「333」(黒丸)および「334」(白丸)がタムスタチン(黒三角)より性能が優れることを示す。BSA(黒四角)およびα6鎖(白四角)を対照として用いた。
【0187】
全ての参照文献、特許、および特許出願は、それらの全体において参照により本明細書に取り込まれる。本発明をその好ましい態様を参照して詳細に示し、また記載したが、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明において成されてよいということを当業者は理解するであろう。
【0188】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1] IV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメイン、IV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメイン、もしくはIV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインからなる群より選ばれる単離されたタンパク質、またはそのフラグメント、アナログ、誘導体もしくは変異体であって、該タンパク質、そのフラグメント、アナログ、誘導体または変異体が抗血管形成特性を有するものである、単離されたタンパク質。
[2] タンパク質が単量体である[1]記載の単離されたタンパク質。
[3] タンパク質がアレステンである[2]記載の単離されたタンパク質。
[4] タンパク質がカンスタチンである[2]記載の単離されたタンパク質。
[5] タンパク質がタムスタチンである[2]記載の単離されたタンパク質。
[6] 抗血管形成活性を有する、[1]記載のタンパク質、またはそのフラグメント、アナログ、誘導体もしくは変異体の多量体。
[7] 抗血管形成活性を有する、1つまたはそれ以上の[1]記載のタンパク質、またはそのフラグメント、アナログ、誘導体もしくは変異体を含んでなるキメラタンパク質。
[8] エンドスタチンもしくはそのフラグメント、アンジオスタチンもしくはそのフラグメント、レスチンもしくはそのフラグメント、アポミグレンもしくはそのフラグメント、または他の抗血管形成タンパク質、もしくはそのフラグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質分子をさらに含んでなる[7]記載のキメラタンパク質。
[9] 生物学的に活性な成分として1つまたはそれ以上の[1]記載のタンパク質を含んでなる組成物。
[10] [9]記載の組成物と薬学的に適合可能な担体。
[11] 生物学的に活性な成分として1つまたはそれ以上の[1]記載のタンパク質を含んでなり、かつエンドスタチンもしくはそのフラグメント、アンジオスタチンもしくはそのフラグメント、レスチンもしくはそのフラグメント、アポミグレンもしくはそのフラグメント、または他の抗血管形成タンパク質、もしくはそのフラグメントからなる群より選ばれる少なくとも1つのタンパク質分子をさらに含んでなる組成物。
[12] 生物学的に活性な成分として[6]記載の多量体を含んでなる組成物。
[13] 生物学的に活性な成分として[7]記載のキメラタンパク質を含んでなる組成物。
[14] [1]記載のタンパク質、またはそのフラグメント、アナログ、誘導体または変異体をコードするものであって、該タンパク質またはそのフラグメント、アナログ、誘導体もしくは変異体が抗血管形成活性を有するものである、単離されたポリヌクレオチド。
[15] 発現制御配列に作動可能に連結されているものである[14]記載の単離されたポリヌクレオチド。
[16] [15]記載のポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞。
[17] 細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞または植物細胞からなる群より選ばれるものである[16]記載の宿主細胞。
[18] [3]記載のタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
[19] [4]記載のタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
[20] [5]記載のタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
[21] (a)[14]記載のポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞の培養物を増殖させる工程、ここで、該宿主細胞は細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞または植物細胞からなる群より選ばれるものである;ならびに
(b)培養物からタンパク質を精製する工程;
を含み、かかる工程により、[14]記載のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質を生産する、[14]記載のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の生産方法。
[22] (a)中等度ストリンジェンシーな条件下で[14]記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズする1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドプローブを製造する工程;
(b)該1つまたは複数のプローブを哺乳動物DNAにハイブリダイズさせる工程;ならびに
(c)1つまたは複数のプローブで検出されたDNAポリヌクレオチドを単離する工程;
により生産される単離されたポリヌクレオチドであって、そのヌクレオチド配列が[14]記載のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に相当するものである単離されたポリヌクレオチド。
[23] インビトロで処理され、[14]記載のポリヌクレオチドを挿入された哺乳動物細胞を哺乳動物に導入する工程および該哺乳動物において血管形成活性を阻害するのに充分な量の抗血管形成タンパク質の治療上有効量を前記哺乳動物においてインビボで発現させる工程を含む、哺乳動物への抗血管形成タンパク質の提供方法。
[24] 抗血管形成タンパク質の発現が一過的発現である[23]記載の方法。
[25] 細胞が、血球、TIL細胞、骨髄細胞、血管細胞、腫瘍細胞、肝細胞、筋細胞、線維芽細胞からなる群より選ばれる[23]記載の方法。
[26] ポリヌクレオチドがウイルスベクターにより細胞に挿入される[25]記載の方法。
[27] [1]記載の単離されたタンパク質、そのアナログ、誘導体ホモログまたは変異体に対する特異的に結合する抗体。
[28] 1つまたはそれ以上の以下のもの:1つまたはそれ以上の[1]記載の単離されたタンパク質、[1]記載の単離されたタンパク質のフラグメント、アナログ、誘導体もしくは変異体、[1]記載のタンパク質の多量体、[1]記載のフラグメントの多量体、1つまたはそれ以上の[1]記載のタンパク質を含んでなるキメラタンパク質、または[1]記載のタンパク質のフラグメントを含んでなるキメラタンパク質、を含んでなる組成物と組織を接触させる工程を含む、哺乳動物組織における抗血管形成活性の阻害方法。
[29] 疾患が、血管形成依存性癌、良性腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬、眼血管形成疾患、オースラー−ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク新血管形成、毛細管拡張症、血友病関節、血管腺維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、ネコひっかき病、ヘリコバクターピロリ潰瘍、透析移植片血管アクセス狭窄、不妊症、肥満からなる群より選ばれる、[28]記載の方法。
[30] 疾患が癌である[29]記載の方法。
[31] 疾患を有する患者に、放射線療法、化学療法、または免疫療法を組み合わせて組成物を投与する工程を含む、血管形成活性を特徴とする疾患を阻害するための[28]記載の組成物の使用方法。
[32] 抗血管形成活性を有する、配列番号:10のアミノ酸2位〜アミノ酸125位を含んでなるポリペプチド。
[33] [32]記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[34] 抗血管形成活性を有する、配列番号:10のアミノ酸125位〜アミノ酸245位を含んでなるポリペプチド。
[35] [34]記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[36] PCRクローニングの方法により作製される、IV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
[37] PCRクローニングの方法により作製される、IV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
[38] PCRクローニングの方法により作製される、IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
[39] シュードモナスエラスターゼ消化により作製される、IV型コラーゲンのα1鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
[40] 12kDaのサイズである[39]記載の抗血管形成フラグメント。
[41] 8kDaのサイズである[39]記載の抗血管形成フラグメント。
[42] シュードモナスエラスターゼ消化により作製される、IV型コラーゲンのα2鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
[43] 10kDaのサイズである[42]記載の抗血管形成フラグメント。
[44] シュードモナスエラスターゼ消化により作製される、IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメインの抗血管形成フラグメント。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1A】Fig.1Aおよび1Bは、ヒトIV型コラーゲンのα1鎖のヌクレオチド配列(Fig.1A、配列番号:1)およびアミノ酸配列(Fig.1B、配列番号:2)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:3)およびリバースプライマー(配列番号:4)の位置を示す。
【図1B】Fig.1Aおよび1Bは、ヒトIV型コラーゲンのα1鎖のヌクレオチド配列(Fig.1A、配列番号:1)およびアミノ酸配列(Fig.1B、配列番号:2)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:3)およびリバースプライマー(配列番号:4)の位置を示す。
【図2】Fig.2は、アレステンクローニングベクターpET22b(+)を示す概略図である。フォワードプライマー(配列番号:3)およびリバースプライマー(配列番号:4)ならびにアレステンがクローニングされる部位を示す。
【図3】Fig.3Aおよび3Bは、内皮細胞(C−PAE)増殖の指標としての3 H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステン(Fig.3A、0μg/ml〜10μg/ml、x軸)およびエンドスタチン(Fig.3B、0μg/ml〜10μg/ml、x軸)の影響を示す、1組の線グラフである。
【図4A】Fig.4A、4B、4Cおよび4Dは、内皮細胞増殖の指標としての3 H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステンおよびエンドスタチンの影響を示す、1組の4つの棒グラフである。Fig.4A、4Bおよび4Cは、786−0細胞、PC−3細胞、HPEC細胞各々に対するアレステン〔0μg/ml〜50μg/ml(Fig.4Aおよび4B)および0μg/ml〜10μg/ml(Fig.4C)〕の影響を示す。Fig.4Dは、A−498細胞に対する0.1〜10μg/mlエンドスタチンの影響を示す。
【図4B】Fig.4A、4B、4Cおよび4Dは、内皮細胞増殖の指標としての3 H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステンおよびエンドスタチンの影響を示す、1組の4つの棒グラフである。Fig.4A、4Bおよび4Cは、786−0細胞、PC−3細胞、HPEC細胞各々に対するアレステン〔0μg/ml〜50μg/ml(Fig.4Aおよび4B)および0μg/ml〜10μg/ml(Fig.4C)〕の影響を示す。Fig.4Dは、A−498細胞に対する0.1〜10μg/mlエンドスタチンの影響を示す。
【図4C】Fig.4A、4B、4Cおよび4Dは、内皮細胞増殖の指標としての3 H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステンおよびエンドスタチンの影響を示す、1組の4つの棒グラフである。Fig.4A、4Bおよび4Cは、786−0細胞、PC−3細胞、HPEC細胞各々に対するアレステン〔0μg/ml〜50μg/ml(Fig.4Aおよび4B)および0μg/ml〜10μg/ml(Fig.4C)〕の影響を示す。Fig.4Dは、A−498細胞に対する0.1〜10μg/mlエンドスタチンの影響を示す。
【図4D】Fig.4A、4B、4Cおよび4Dは、内皮細胞増殖の指標としての3 H−チミジン取り込み(y軸)に対するアレステンおよびエンドスタチンの影響を示す、1組の4つの棒グラフである。Fig.4A、4Bおよび4Cは、786−0細胞、PC−3細胞、HPEC細胞各々に対するアレステン〔0μg/ml〜50μg/ml(Fig.4Aおよび4B)および0μg/ml〜10μg/ml(Fig.4C)〕の影響を示す。Fig.4Dは、A−498細胞に対する0.1〜10μg/mlエンドスタチンの影響を示す。
【図5】Fig.5A、5Bおよび5Cは、ヒト臍静脈内皮(ECV−304)細胞におけるFBS−誘発走化性を介する内皮細胞移動に対するアレステン(2μg/ml、Fig.5B)およびエンドスタチン(20μg/ml、Fig.5C)の影響を示す1組の4つの顕微鏡写真である。Fig.5Aは、未処理の対照細胞を示す。
【図6】Fig.6は、Fig.5の結果をグラフ形式で示す棒グラフである。Fig.6は、ECV−304内皮細胞の移動に対するアレステン(2μg/mlまたは20μg/ml)およびエンドスタチン(2.5μg/mlまたは20μg/ml)の影響を示す。
【図7】Fig.7は、内皮管形成に対するアレステンの影響を示す線グラフである。管形成の割合をy軸に、インヒビターの濃度をx軸に示す。処理は:なし(対照、黒菱形)、BSA(対照、白三角)、7Sドメイン(対照、X)およびアレステン(黒四角)であった。
【図8】Fig.8Aおよび8Bは、対照(Fig.8A)と比較した内皮管形成に対するアレステン(0.8μg/ml、Fig.8B)の影響を示す1組の顕微鏡写真である。
【図9】Fig.9A、9B、9Cおよび9Dは、インビボでの腫瘍成長に対するアレステンおよびエンドスタチンの影響を示す1組の4つの線グラフである。Fig.9Aは、10mg/kgのアレステン処理(白四角)、BSA処理(+)、および対照マウス(黒丸)についての700mm3 からの腫瘍容積の増加を示すプロットである。Fig.9Bは、10mg/kgのアレステン処理(白四角)およびBSA処理(+)腫瘍についての100mm3 からの腫瘍容積の増加を示す。Fig.9Cは、10mg/kgのアレステン処理(白四角)、エンドスタチン処理(黒三角)、および対照マウス(黒丸)についての約100mm3 からの腫瘍容積の増加を示す。Fig.9Dは、アレステン(白四角)対対照(黒丸)で処理した場合の200mm3 の腫瘍についての増加を示す。
【図10A】Fig.10Aおよび10Bは、ヒトIV型コラーゲンのα2鎖のヌクレオチド配列(Fig.10A、配列番号:5)およびアミノ酸配列(Fig.10B、配列番号:6)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:7)およびリバースプライマー(配列番号:8)の位置を示す。
【図10B】Fig.10Aおよび10Bは、ヒトIV型コラーゲンのα2鎖のヌクレオチド配列(Fig.10A、配列番号:5)およびアミノ酸配列(Fig.10B、配列番号:6)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:7)およびリバースプライマー(配列番号:8)の位置を示す。
【図11】Fig.11は、カンスタチンクローニングベクターpET22b(+)を示す概略図である。フォワードプライマー(配列番号:7)およびリバースプライマー(配列番号:8)ならびにカンスタチンがクローニングされる部位を示す。
【図12】Fig.12A、12B、12Cおよび12Dは、内皮(C−PAE)細胞(Fig.12Aおよび12C)および非内皮(786−0、PC−3およびHEK293)細胞(Fig.12Bおよび12D)の増殖に対する種々の濃度のカンスタチン(x軸)の影響を示すヒストグラムである。増殖は、3 H−チミジン取り込み(Fig.12Aおよび12B)およびメチレンブルー染色(Fig.12Bおよび12D)の関数として測定した。
【図13】Fig.13は、VEGFなし(VEGFなしまたは血清)、およびVEGF(1%FCSおよび10ng/ml VEGF)細胞の処理についての、および0.01μg/ml カンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび0.01μg/ml カンスタチン)および1.0μg/ml カンスタチン(1%FCSおよび10ng/ml VEGFおよび1μg/ml カンスタチン)の処理についての、視野当たりの移動した内皮細胞の数(y軸)を示す棒グラフである。
【図14】Fig.14は、BSA(白四角)、カンスタチン(黒四角)、およびα5NC1(白丸)の種々の処理の下での対照(PBS処理ウェル)管形成の割合(y軸)としての内皮管形成の量を示す線グラフである。垂直方向の線分は平均の標準誤差を示す。
【図15】Fig.15A、15B、15Cおよび15Dは、処理日数(x軸)に対してプロットした、腫瘍容積率(y軸、Fig.15Aおよび15B)またはmm3 での腫瘍容積(y軸、Fig.15Cおよび15D)に関するカンスタチン(黒四角)、エンドスタチン(白丸)および対照(白四角)のPC−3細胞(Fig.15Aおよび15B)および786−0細胞(Fig.15Cおよび15D)に対する影響を示す線グラフである。
【図16A】Fig.16Aおよび16Bは、ヒトIV型コラーゲンのα3鎖のヌクレオチド配列(Fig.16A、配列番号:9)およびアミノ酸配列(Fig.16B、配列番号:10)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:11)およびリバースプライマー(配列番号:12)の位置を示す。「タムスタチン333」フラグメントおよび「タムスタチン334」フラグメントの始まりと終わりも示す。
【図16B】Fig.16Aおよび16Bは、ヒトIV型コラーゲンのα3鎖のヌクレオチド配列(Fig.16A、配列番号:9)およびアミノ酸配列(Fig.16B、配列番号:10)を示す図である。フォワードプライマー(配列番号:11)およびリバースプライマー(配列番号:12)の位置を示す。「タムスタチン333」フラグメントおよび「タムスタチン334」フラグメントの始まりと終わりも示す。
【図17】Fig.17は、タムスタチンクローニングベクターpET22b(+)を示す概略図である。フォワードプライマー(配列番号:11)およびリバースプライマー(配列番号:12)ならびにタムスタチンがクローニングされる部位を示す。
【図18】Fig.18は、タムスタチン変異体タムスタチンN−53におけるα3(IV)NC1単量体内の切形アミノ酸の位置を示す概略図である。黒丸は、この変異体を作製するためにタムスタチンから欠失させたN末端の53個のアミノ酸残基に相当する。短いバーでマークしたジスルフィド結合は、それらがα1(IV)NC1およびα2(IV)NC1において生ずるように配置されている。
【図19】Fig.19A、19Bおよび19Cは、種々の濃度のタムスタチン(x軸)で処理した場合のC−PAE細胞(Fig.19A)、PC−3細胞(Fig.19B)および786−0細胞(Fig.19C)についての3 H−チミジン取り込み(y軸)を示す1組の3つのヒストグラムである。全ての群は3連の試料を示す。
【図20】Fig.20は、種々の量のタムスタチン(黒丸)、BSA(対照、白四角)および7Sドメイン(対照、白丸)(x軸)の内皮管形成(y軸)に対する影響を示す線グラフである。
【図21】Fig.21Aおよび21Bは、タムスタチン(黒丸)およびエンドスタチン(白丸)対対照(白四角)での処理日数(x軸)に対する腫瘍容積(mm3 、y軸)への影響を示す1組の線グラフである。星印をつけたデータ点は、片側スチューデントの検定によるP<0.05で有意である。
【図22】Fig.22は、処理日数(x軸)に対してプロットした、腫瘍容積(y軸)に関する対照マウス(白四角)、タムスタチン変異体N−53で処理されたマウス(黒丸)に対する増加を示す線グラフである。星印をつけたデータポイントは、片側スチューデントの検定によるP<0.05で有意である。
【図23】Fig.23は、アレステン(黒丸)、カンスタチン(白丸)、アレステンの12kDaフラグメント(黒四角)、アレステンの8kDaフラグメント(白四角)、およびカンスタチンの10kDaフラグメント(黒三角)の濃度変化(x軸)による内皮管形成(y軸)の阻害を示す線グラフである。
【図24】Fig.24は、タムスタチンフラグメント333(黒丸)、タムスタチンフラグメント334(白丸)、BSA(対照、黒四角)、α6(対照、白四角)、およびタムスタチン(黒三角)の濃度変化(x軸)による内皮管形成(y軸)の阻害を示す線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:6のアミノ酸配列からなる単離された組換えタンパク質。
【請求項2】
配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質のシュードモナス(Pseudomonas)エラスターゼ消化によって調製される単離された組換えタンパク質フラグメントであって、該タンパク質フラグメントは、10kDaのフラグメントであり、内皮管形成を阻害する、フラグメント。
【請求項3】
請求項1記載のタンパク質、または請求項2記載の10kDaのタンパク質フラグメントを含むキメラタンパク質。
【請求項4】
請求項1記載のタンパク質および/または請求項2記載のフラグメントを含む組成物。
【請求項5】
薬学的に適合可能な担体をさらに含む請求項4記載の組成物。
【請求項6】
請求項1記載のタンパク質、請求項2記載のフラグメント、および請求項3記載のタンパク質からなる群より選択される1つ以上を含み、ならびにエンドスタチン、アンジオスタチン、レスチン、およびアポミグレンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質分子をさらに含む組成物。
【請求項7】
配列番号:6のアミノ酸配列からなる単離されたタンパク質または配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質のシュードモナス(Pseudomonas)エラスターゼ消化によって調製される10kDaのフラグメントを含む医薬であって、組織と接触することによって、哺乳動物の組織における血管形成活性を阻害するための医薬。
【請求項8】
該組織が、血管形成依存性癌、良性腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬、眼血管形成疾患、オースラー−ウェーバー症候群、心筋血管形成、プラーク新血管形成、毛細管拡張症、血友病関節、血管線維腫、創傷肉芽形成、腸管癒着、動脈硬化、強皮症、過形成性瘢痕、ネコひっかき病、ヘリコバクターピロリ潰瘍、透析移植片血管アクセス狭窄、および肥満からなる群より選ばれる疾患を有する個体の組織である、請求項7記載の医薬。
【請求項9】
疾患が癌である請求項8記載の医薬。
【請求項10】
血管形成活性を特徴とする疾患を有する個体に、放射線療法、化学療法、または免疫療法を組み合わせて投与される、請求項9記載の医薬。
【請求項11】
医薬が産児制限剤である請求項7記載の医薬。
【請求項12】
請求項1記載のタンパク質または請求項2記載のいずれかのタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチド。

【図11】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−301823(P2008−301823A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164926(P2008−164926)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【分割の表示】特願2007−244618(P2007−244618)の分割
【原出願日】平成11年6月17日(1999.6.17)
【出願人】(599036059)ベス イスラエル ディーコネス メディカル センター (4)
【Fターム(参考)】