説明

抗酸化性物質

【課題】 本発明の課題は、ヤエヤマアオキ果実を用いた、風味が改善され、さらに優れた抗酸化活性を有する抗酸化性物質を提供することである。
【解決手段】 ヤエヤマアオキ果実の焙煎物を抽出して得られる抗酸化性物質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤエヤマアオキ果実の焙煎物を抽出することによって得られる抗酸化性物質に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤエヤマアオキはポリネシア、東南アジア、オーストラリア、インド、小笠原諸島、沖縄などの熱帯、亜熱帯の海岸地帯に群生する熱帯植物で、学術名をモリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia L.)といい、その果実は、怪我、打ち身、火傷などの痛み止め、感染症や伝染病、炎症や食中毒の解毒などの病気治療の民間薬として長い間利用されてきた。
【0003】
このヤエヤマアオキの水や低級アルコール等による抽出物が抗酸化作用を有しており、これを皮膚用外用剤に用いることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、この報告による抽出方法によってヤエヤマアオキの果実を抽出しても、抗酸化作用の低い抽出物しか得られなかった。
【0004】
また、これまでのヤエヤマアオキ果実の加工方法は、果実自体をそのままスライスした後乾燥するか、自然発酵や固液分離の技術による加工に留まっていた。さらに、この果実表面は、最初は緑色であるが、熟すと黄白色になり、その後の果肉の軟化とともに中鎖脂肪酸による特有の発酵臭を発するようになるため、飲料や食品として利用することが困難であった。
【0005】
これに対し、ヤエヤマアオキにパイナップルを併用することによって、その臭いを低減できることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、この報告のように、特定の成分を併用することによってヤエヤマアオキ果実の臭いをマスキングする方法では、飲料や食品としての利用範囲が限定され、さらに他の成分との組み合わせが困難になるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−121112
【特許文献2】特開2003−153667
【0006】
したがって、風味を改善しつつ、高い抗酸化作用を有する抗酸化性物質を得ることができるヤエヤマアオキ果実の加工方法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ヤエヤマアオキ果実を用いて、優れた抗酸化活性を有する抗酸化性物質を提供することであり、さらには、風味が改善された抗酸化性物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ヤエヤマアオキ果実を焙煎処理したものを抽出原料とすることによって、その抽出物の抗酸化活性が著しく高まるとともに、その特有の臭いが低減され、風味が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ヤエヤマアオキ果実の焙煎物を抽出することによって得られる抗酸化性物質に関する。
【0010】
また本発明は、上記抗酸化性物質を含有する飲食品又は化粧料に関する。
【0011】
さらに本発明は、上記抗酸化性物質を有効成分として含有する抗酸化剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた抗酸化活性を有する抗酸化性物質を得ることができ、この抗酸化性物質は、食用の果実由来であるため、安全性が高いものである。
【0013】
したがって、この抗酸化性物質は、飲食品や化粧料に配合し、それらの品質の劣化を抑制したり、これらを摂取あるいは適用することによって、健康増進、老化防止効果等の効果を得ることができる。
【0014】
また、本発明による抗酸化性物質は、その風味が改善されたものであるため、マスキング等特別な処理を必要とすることなく、食品や飲料等に幅広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において原料として用いるヤエヤマアオキ果実は、その熟度に限定されることなく用いることができ、完熟果であっても、未熟果であっても良いが、より抗酸化活性の高い抗酸化性物質が得られるため、完熟果が特に好ましい。果実が完熟果であるか、未熟果であるかは、果皮色あるいは種皮色によって判別することができ、未熟果では、果皮色は緑色で、種皮色は白色であるのに対し、完熟果では、果皮色は黄白色で、種皮色は黒色であるため、目視により判別が可能である。
【0016】
また、本発明に用いるヤエヤマアオキ果実は、完熟果又は未熟果として収穫した直後のものを用いてもよく、収穫後一定期間貯蔵したものを用いてもよい。ヤエヤマアオキの完熟果を収穫し、室温で貯蔵した場合、通常5日程度で果実が軟化を開始し、その後自然発酵するが、例えば、この軟化直後の果実や発酵した果実を用いることができる。これらのうち、収穫直後のものが、抗酸化活性が高くなるため好ましい。
【0017】
さらに、上記ヤエヤマアオキ果実は、果肉及び種子のうちいずれか一方又はその両方を含むものであるが、より抗酸化活性を高めることができるため、種子を除いた果肉部分のみを用いるのが好ましい。
【0018】
さらにまた、上記ヤエヤマアオキ果実は、予め、スライス、乾燥、粉砕等の処理をしたものを原料として用いることが好ましい。具体的には、10mm程度にスライスした後、これを温風乾燥や真空凍結乾燥などによって乾燥し、さらにこれを常法によって粉砕し、篩を通して粒径を調整して得られる粉末のものを原料として用いることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるヤエヤマアオキ果実の焙煎物(以下、「焙煎物」という)は、上記原料であるヤエヤマアオキの果実を焙煎して得られるものである。この焙煎の方法は特に限定されるものではなく、常法により行うことができるが、赤外線又は遠赤外線による焙煎が好ましい。また、この焙煎の温度は、120〜190℃が好ましく、焙煎の時間は、好ましくは6〜25分である。この範囲のうち、収穫直後〜収穫後の貯蔵期間が2ヶ月程度の果実を焙煎する場合は、140〜180℃、15〜20分が特に好ましい。さらに貯蔵期間が長くなると、温度は上記範囲のうち比較的低い温度により、時間も上記範囲のうち比較的短い時間により焙煎処理した方が抗酸化活性が高くなる傾向にあるため、例えば、収穫後の貯蔵期間が6カ月以上経過した果実を焙煎する場合は、温度は120〜140℃、時間は、6〜10分の範囲が好ましい。
【0020】
本発明の抗酸化性物質は、上記焙煎物を抽出して得られるものである。この抽出する溶媒としては、例えば、水やアルコール等を用いることができるが、より抗酸化活性が高いものを得るためには、水を用いることが好ましく、温度80〜100℃の熱水を用いることが更に好ましい。
【0021】
このようにして得られる抗酸化性物質は、抽出した状態の液状物として用いても良いが、更に必要に応じて、限外濾過膜、吸着樹脂充填カラム等の分画手段により精製したものを用いても良く、更に凍結乾燥等の手段により乾燥させた粉末状のものを使用しても良い。
【0022】
上記のようにして得られた抗酸化性物質は、ヤエヤマアオキ果実の非焙煎物を水や低級アルコール等によって抽出して得た物に比べ、格段に高い抗酸化作用を有するものである。本発明の抗酸化物の抗酸化活性は、特に制約されるものではないが、DPPH退色法による抗酸化活性が30(μmol−Trolox.eq/g乾物)以上であることが好ましく、更に50(μmol−Trolox.eq/g乾物)以上であることが好ましい。なお、本発明におけるDPPH退色法による抗酸化活性とは、公知方法(M.S.Nenseterら、Atheroscler.Thromb.15、1338−1344、1995)による。すなわち、DPPH(1、1-ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)の50%メタノール溶液に抗酸化性物質を加えて、DPPHラジカルをどの程度消去できるかを、DPPHを同じ濃度で含む溶液の波長520nmにおける吸光度に対して、吸光度の低下を読みとる比色試験で評価するものであり、1μmolのTroloxがDPPHラジカルを消去する活性を1単位として、Trolox相当量で表されるものである。
【0023】
かくして得られた本発明の抗酸化性物質は、優れた抗酸化活性を有するとともに、食用果実由来の成分であるため、安全性も高いものである。従って、飲食品及び化粧品等に用いることによって、それらの品質の劣化を抑制したり、保存性を高めることができる。また、本発明の抗酸化性物質を含有する飲食品を摂取したり、本発明抗酸化性物質を含有する化粧品を適用することによって、健康増進効果や老化防止効果等を得ることができるものである。
【0024】
また、本発明の抗酸化性物質を有効成分とする抗酸化剤は、医薬等として利用することも可能である。すなわち、活性酸素は生体のマクロファージ内に発生し、マクロファージの捕食した異物を分解する防御機構としての役割を持つ反面、過剰に生じてマクロファージ外に分泌されると、細胞や血管を傷つけたりして各種疾患の原因となる。すなわち活性酸素が生体膜を構成している多価不飽和脂肪酸を攻撃すると、脂質過酸化の連鎖反応が起こり、過酸化脂質を生成・蓄積する。さらには進んで、膜にある酵素や受容体などを傷つけると細胞や臓器の機能に異常をきたし、老化や生活習慣病の原因となる。この活性酸素から細胞や臓器を守る働きをするのが、抗酸化性物質であり、抗酸化性物質を摂取することによって、電子状態が著しく不安定なために反応性に富む活性酸素に対して抗酸化物質の電子を与えることができ、その結果、連鎖的な過酸化反応が抑えられる。したがって、本発明の抗酸化剤は、かかる活性酸素の過剰を原因とする疾患に対する治療薬として用いることができるのである。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0026】
実 施 例 1
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果をスライスし、40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した。次いで、これをミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し、原料粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた原料粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して、その到達温度が100℃及び120℃〜200℃の10℃毎のいずれかの温度になるまで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得た。到達温度と所要時間の関係を図1に示す。
(3)熱水抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して、抽出液を得た。
【0027】
実 施 例 2
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、実施例1と同様にして抽出液を得た。
【0028】
実 施 例 3
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で2ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、実施例1と同様にして抽出液を得た。
【0029】
比 較 例 1
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果をスライスし、40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した。次いでこれをミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通通過したものを選別し粉末を得た。
(2)熱水抽出液の調製
(1)で得られた粉末1gに対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して抽出液を得た。
【0030】
比 較 例 2
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、比較例1と同様にして抽出液を得た。
【0031】
比 較 例 3
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で2ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、比較例1と同様にして抽出液を得た。
【0032】
試 験 例 1
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた抽出液全量を蒸留水で100mlにメスアップし、上記したDPPH退色法により抗酸化活性を測定した。結果を図2に示す。実施例1〜3については、最も高い抗酸化活性を示した焙煎到達温度における値とした。
【0033】
実 施 例 4
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの未熟果をスライスし、40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した。次いでこれをミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し原料粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた原料粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して、その到達温度が100℃及び120℃〜200℃の10℃毎のいずれかの温度になるまで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得た。
(3)熱水抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して、抽出液を得た。
【0034】
試 験 例 2
実施例1及び実施例4で得られた抽出液全量を蒸留水で100mlにメスアップし、上記したDPPH退色法により抗酸化活性を測定した。結果を図3に示す。
【0035】
実 施 例 5
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果100gを真空凍結乾燥し、17gの乾燥物を得た。これを果肉部分と種子部分に分離させたところ、果肉部分が8.5g、種子部分が8.6gであった。この果肉部分を、ミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し原料粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた原料粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して、その到達温度が100℃及び120℃〜200℃の10℃毎のいずれかの温度になるまで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得た。
(3)熱水抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過し抽出液を得た。
【0036】
実 施 例 6
果肉部分を種子部分に代えた以外は実施例5と同様にして抽出液を得た。
【0037】
実 施 例 7
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果100gを真空凍結乾燥し、17gの乾燥物を得た。これを果肉部分と種子部分に分離させたところ、果肉部分が8.5g、種子部分が8.6gであった。この種子部分をミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し原料粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた原料粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して、その到達温度が100℃及び120℃〜200℃の10℃毎のいずれかの温度になるまで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得た。
(3)エタノール抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、80%エタノールを加え、一夜静置して抽出を行った。これをろ紙濾過し抽出液を得た。
【0038】
試 験 例 3
実施例5〜6で得られた抽出液全量を、蒸留水で100mlにメスアップし、また、実施例7で得られた抽出液全量を80%エタノールで100mlにメスアップし、それぞれについて上記したDPPH退色法により抗酸化活性を測定した。結果を図4に示す。
【0039】
実 施 例 8
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、実施例5と同様にして抽出液を得た。
【0040】
実 施 例 9
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で2ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、実施例5と同様にして抽出液を得た。
【0041】
比 較 例 4
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果をスライスし、真空凍結乾燥して、この乾燥物を果肉部分と種子部分に分離した。このうち果肉部分のみを、ミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し粉末を得た。
(2)熱水抽出液の調製
(1)で得られた粉末1gに対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して抽出液を得た。
【0042】
比 較 例 5
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、比較例4と同様にして抽出液を得た。
【0043】
比 較 例 6
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で2ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は、比較例4と同様にして抽出液を得た。
【0044】
試 験 例 4
実施例5、8〜9及び比較例4〜6で得られた抽出液全量を蒸留水で100mlにメスアップし、上記したDPPH退色法により抗酸化活性を測定した。実施例5、8〜9については、最も高い抗酸化活性を示した焙煎到達温度における値とした。結果を図5に示す。
【0045】
実 施 例 10
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、スライスして40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した後、ミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して170℃まで17分かけて昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得た。
(3)抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して熱水抽出液を得た。また、(2)で得られた焙煎物に対して、80%エタノール100mlを加え、一夜静置して抽出を行った。これをろ紙濾過してエタノール抽出液を得た。
【0046】
実 施 例 11
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代え、また、80℃から開始して170℃まで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得たことを、80℃から開始して160℃まで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得たことに代えた以外は、実施例10と同様にして、抽出液を得た。
【0047】
実 施 例 12
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で3ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代え、また、80℃から開始して170℃まで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得たことを、80℃から開始して150℃まで昇温させながら遠赤外焙煎を行い焙煎物を得たことに代えた以外は、実施例10と同様にして、抽出液を得た。
【0048】
比 較 例 7
(1)供試材料の調製
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果をスライスし、40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した後、ミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し粉末を得た。
(2)抽出液の調製
(1)で得られた粉末1gに対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して熱水抽出液を得た。また、(1)で得られた粉末に対して、80%エタノール100mlを加え、一夜静置して抽出を行った。これをろ紙濾過してエタノール抽出液を得た。
【0049】
比 較 例 8
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で4〜5日貯蔵した軟化直後のヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は比較例7と同様にして抽出液を得た。
【0050】
比 較 例 9
収穫直後のヤエヤマアオキの完熟果を、室温で3ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果に代えた以外は比較例7と同様にして抽出液を得た。
【0051】
試 験 例 5
実施例10〜12及び試験例7〜9で得られた抽出液全量を、抽出に用いた溶媒と同じ溶媒で100mlにメスアップし、上記DPPH退色法により抗酸化活性を測定した。結果を図6に示す。
【0052】
試 験 例 6
実施例1〜3で得られた抽出液全量を、蒸留水で100mlにメスアップし、被検液を調製した。次いで、50%エタノール実験系になるように被検液100μlを加え、全量を2600μlとして撹拌した後、520nmでの可視部吸光度を測定して被検液の着色度を調べた。結果を図7に示す。
【0053】
実 施 例 13
(1)供試材料の調製
室温で2ヶ月貯蔵して発酵させたヤエヤマアオキの完熟果をスライスし、40℃温風乾燥により水分2%程度まで乾燥した後、ミルサー(イワタニ社製、IFM−100)によって粉砕し、40メッシュの篩を通過したものを選別し粉末を得た。
(2)焙煎物の調製
(1)で得られた粉末1gを平底蒸発皿に入れ、遠赤外線熱風循環式定温恒温器(いすずPPS―112S)を用い、80℃から開始して150℃まで昇温させながら遠赤外焙煎を行い、焙煎物を得た。
(3)熱水抽出液の調製
(2)で得られた焙煎物に対して、蒸留水100mlを加え、10分間の加熱還流抽出を行った。これをろ紙濾過して抽出液を得た。
【0054】
試 験 例 7
実施例13及び比較例3で得られた抽出液全量を蒸留水で100mlにメスアップしたものについて16名のパネラーによって、官能評価を行った。それぞれの香りおよび味について5段階のいずれに該当するか評価し、各段階の合計人数を求めた。香りについて表1に、味について表2にそれぞれ結果を示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の抗酸化性物質は、優れた抗酸化活性を有すると共に安全性も高いものであり、しかも風味も改善されたものである。従って、このものは、飲食品や化粧料の配合成分として好適に用いることができる。また、このものを有効成分とする抗酸化剤は、生体内の過剰の活性酸素を原因とする疾患の治療薬としても有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1〜13で行った焙煎処理における到達温度と所要時間の関係を示す図 である。
【図2】実施例1〜3で得られた抗酸化性物質の抗酸化活性を示す図である。
【図3】実施例1及び4で得られた抗酸化性物質の抗酸化活性を示す図である。
【図4】実施例5〜7で得られた抗酸化性物質の抗酸化活性を示す図である。
【図5】実施例5、8及び9で得られた抗酸化性物質の抗酸化活性を示す図である。
【図6】実施例10〜12で得られた抗酸化性物質の抗酸化活性を示す図である。
【図7】実施例1〜3で得られた抗酸化性物質の着色度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤエヤマアオキ果実の焙煎物を抽出することによって得られる抗酸化性物質。
【請求項2】
DPPH退色法による抗酸化活性が30(μmol−Trolox.eq/g乾物)以上である請求項1記載の抗酸化性物質。
【請求項3】
焙煎物が、120〜190℃の温度で焙煎されたものである請求項1又は2記載の抗酸化性物質。
【請求項4】
焙煎物が、遠赤外線により焙煎されたものである請求項1ないし3の何れかの項記載の抗酸化性物質。
【請求項5】
抽出が、熱水を使用して行われるものである請求項1ないし4の何れかの項記載の抗酸化性物質。
【請求項6】
ヤエヤマアオキ果実が、完熟果である請求項1ないし5の何れかの項記載の抗酸化性物質。
【請求項7】
ヤエヤマアオキ果実が、収穫直後のものである請求項1ないし6の何れかの項記載の抗酸化性物質。
【請求項8】
ヤエヤマアオキ果実が、種子を除いた果肉である請求項1ないし7の何れかの項記載の抗酸化性物質。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかの項記載の抗酸化性物質を含有する飲食品。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかの項記載の抗酸化性物質を含有する化粧料。
【請求項11】
請求項1ないし8の何れかの項記載の抗酸化性物質を有効成分として含有する抗酸化剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−55963(P2007−55963A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245454(P2005−245454)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年8月20日 日本食品科学工学第52回大会事務局発行の「日本食品科学工学第52回大会講演集」に発表
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【Fターム(参考)】