説明

抗酸化組成物

【課題】安全で有害な作用がなく、継続して摂取する事ができる抗酸化作用を有する組成物、ならびにこれを含有する食品、化粧料および飼料を提供すること。
【解決手段】水溶性アラビノキシラン、好ましくはイネ科植物から抽出された水溶性アラビノキシランを含有し、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善に好適な、抗酸化作用を有する組成物、ならびにこの抗酸化作用を有する組成物を含有してなる食品、化粧料および飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アラビノキシランを含有してなることを特徴とする、抗酸化作用を有する組成物に関する。詳細には、好ましくは麦、米、トウモロコシ等のイネ科植物に含まれる水溶性アラビノキシランを含み、生体の活性酸素による悪影響の予防および/または改善に好適な、抗酸化作用を有する組成物、ならびにこの組成物を含有してなる食品、化粧料および飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、生体内では活性酸素の生成量と、活性酸素消去酵素による減少量はバランスが取られており、生体中の活性酸素量は一定に保たれている。しかし、高齢化や、ストレス、偏食、不摂生等の生活環境の影響により、生体内活性酸素が増加することが指摘されている。生体内に不必要の活性酸素が存在すると、老化の亢進や生活習慣病、発癌リスクの増大といった生体への悪影響が起こる。こうしたことから、活性酸素を消去する作用を有する抗酸化物質が注目され、有効な抗酸化物質を見出すべく探索が広く行われている。そしてある種の抗酸化物質が活性酸素による様々な障害、例えば動脈硬化症、高血圧症、それらより発症する脳梗塞、心疾患、およびそれらの後遺症やストレス性潰瘍などの虚血性疾患、癌、糖尿病などの生活習慣病に対する治療薬として、利用されている。これとは別に、生体内の活性酸素は、シミ、ソバカス、ニキビ、しわ、皮膚潰瘍などの原因となり、こうした問題に対して抗酸化物質が有効であるとされている。現在知られているそうした抗酸化物質の代表的なものとして、生体内の活性酸素消去酵素であるSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、天然抗酸化剤であるα−トコフェロール(ビタミンE)およびアスコルビン酸(ビタミンC)、化学合成された抗酸化剤であるBHT(ブチルヒドロキシトルエン)およびBHA(ブチルヒドロキシアニソール)などが挙げられる。しかしながら、これらの抗酸化物質では、安全性に問題があり継続的な摂取が困難であったり、安定性に問題があり使用に制限があるなど、上述した問題を解決するのに十分なものではない。こうしたことから、特に先述の生活習慣病などの疾患に対して有効である抗酸化物質が強く求められている。
【0003】
特許文献1には、糠またはふすまからの水抽出物または有機溶媒抽出物が活性酸素消去作用を示す事が報告されている。しかしながらこの抽出物はどのような成分が含まれているのかについては不明であり、該抽出物は抗酸化作用のみならず、線維芽細胞賦活作用、抗菌作用、保湿作用、皮脂の増大の抑制作用、チロシナーゼ活性阻害作用を有するとされており、この組成物を抗酸化作用を期待して摂取した場合には、思わぬ副作用が起こる可能性がある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−310586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、安全で簡便に日常的に継続して摂取する事ができ、且つ顕著な抗酸化作用を有し、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善に有効な素材に対する要望は高い。本発明の課題は、安全で有害な作用がなく、継続して摂取する事ができる抗酸化作用を有する組成物、ならびにこの組成物を含有する食品、化粧料および飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、小麦ふすまを分解・抽出して得られた水溶性アラビノキシランが抗酸化作用を有する事、すなわち、水溶性アラビノキシランを経口摂取すると、血液中の過酸化脂質の低下作用が認められ、水溶性アラビノキシランが、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善に有用である事を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の抗酸化作用を有する組成物、ならびにこの組成物を含有する食品、化粧料および飼料を提供するものである。
(1)水溶性アラビノキシランを含有してなる抗酸化作用を有する組成物。
(2)前記水溶性アラビノキシランが、イネ科植物から抽出された水溶性アラビノキシランである、前記(1)の抗酸化作用を有する組成物。
(3)前記水溶性アラビノキシランが、分子量500〜50, 000Daの水溶性アラビノキシランである、前記(1)または(2)の抗酸化作用を有する組成物。
(4)前記水溶性アラビノキシランが、分子量500〜10, 000Daの水溶性アラビノキシランを50〜90質量%の量で含有する、前記(1)〜(3)のいずれか1つの抗酸化作用を有する組成物。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1つの抗酸化作用を有する組成物を含有してなる食品、化粧料または飼料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体中の活性酸素を低下させ、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善作用を有し、副作用の心配がなく安全性が高い上に、風味がよく簡便に摂取可能で長期間の継続的摂取が容易な、抗酸化作用を有する組成物、ならびにこの組成物を含有する食品、化粧料および飼料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
本発明に用いられるアラビノキシランは、米、小麦、トウモロコシ等のイネ科植物の食物繊維成分である、ヘミセルロースを構成する主要な多糖類であり、β1−4結合したキシロース鎖にアラビノースが側鎖として結合したものである。本発明の有効成分であるアラビノキシランは、どのような由来のアラビノキシランでもよいが、アラビノキシランを多量に含み、且つ入手が容易であり食経験があり安全である、イネ科植物のヘミセルロースを原料とするのが好ましい。イネ科植物としては小麦、大麦、ライ麦、米、トウモロコシ等が知られているが、本発明に原料として用いられるイネ科植物のアラビノキシラン含有部位は、米、小麦、大麦、エン麦、ヒエ、アワ、トウモロコシ、タケ等のイネ科植物の種実の皮部、外皮部、穂軸部、茎部、葉部を指す。種実の皮部としては、好ましくは小麦のふすま等が挙げられ、小麦ふすまとしては、通常の製粉工程で生じる一般ふすま、それ以外のふすまのいずれも使用でき、組成や製造過程を問わない。そのうちでも特に、一般ふすまを粉砕した後、繊維質に富む区分を分級処理する事により得られた繊維質含量の高いふすまを使用すると、純度のより高いアラビノキシランを高収量で得る事ができる。
【0010】
本発明に用いられる水溶性アラビノキシランは、上記の原料から抽出・分解して得ることができ、抽出・分解には公知の方法が使用できる。通常の場合、約50, 000Da以下の分子量分布を有するアラビノキシランの分解物を主成分としているが、原料に含まれていた不純物由来のタンパク質やアラビノキシラン以外の糖類の成分を含有していてもよい。該水溶性アラビノキシランは、好ましくは糖組成として、キシロース55〜75質量%およびアラビノース5〜25質量%から構成される。該水溶性アラビノキシランは、好ましくは分子量500〜50, 000Daの水溶性アラビノキシラン、より好ましくは分子量500〜10, 000Daの水溶性アラビノキシランを、好ましくは50〜90質量%の量、より好ましくは60〜80質量%の量で含有している。アラビノキシランが、上記範囲内の量で特定の分子量範囲のアラビノキシランを含有していると、水溶性であり水性媒体に溶解しても沈殿せず安定であり、また澄明な水溶液であるため、食品のみならず飲料等にも好適に利用する事ができ、食物繊維特有の食味がなく風味がよいため好ましい。
【0011】
ここで、上記の水溶性アラビノキシランの糖組成は、高速液体クロマトグラフィーによって測定され、また上記分子量分布は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーによって測定され、測定条件等の詳細は後述する実施例にそれぞれ記載したとおりである。
【0012】
アラビノキシランの抽出・分解方法としては、前述のイネ科植物のアラビノキシラン含有部位からアラビノキシランを抽出し、抽出したアラビノキシランを分解する方法であれば、特に制限されるものではなく、公知の方法を適宜採用することもできる。
【0013】
小麦ふすま等に含まれるアラビノキシランは、ヘミセルロースとして植物細胞壁に存在しており、そのままではアラビノキシラン分解物を得る事は容易ではない。本発明において、上記の原料からアラビノキシランを抽出・分解する方法は、ヘミセルロースを抽出した後分解してアラビノキシラン分解物を得る方法や、抽出と同時に分解して得る方法等、アラビノキシラン分解物を得られる方法であればどのようなものでもよい。具体的な抽出および分解を行う方法としては、特許第3079115号公報に記載された方法等が挙げられ、小麦ふすまを原料とした場合について以下に説明する。
【0014】
小麦ふすまは、まず水洗して、蛋白質、少糖類、その他の有機物等の水溶性夾雑物を除去するのが好ましい。その際の水の温度は、小麦ふすま中の有効成分を分解しない温度であれば特に限定されないが、操作のし易さ、夾雑物の除去効率、熱効率等の点から通常20〜70℃がよく、好ましくは30〜60℃がよい。水洗は、小麦ふすまを水に分散させて攪拌しながら行うのが、小麦ふすまからの水溶性夾雑物の除去を円滑に行う事ができ好ましいが、これに限定されない。水に分散させて攪拌しながら水洗する場合には、水100質量部に対して、小麦ふすま約10〜20質量部を分散させて、周速度約10〜30m/秒で約2〜10分間行うのが、操作のし易さ、夾雑物の除去効果率、水洗終了後の小麦ふすまからの水の除去の容易さ等の点から好ましい。
【0015】
次いで、水洗終了後の小麦ふすまから水を除去する。水の除去は、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の固液分離として一般的ないずれの方法で行ってもよい。操作が簡便であり、速やかに水を除去できる点で遠心ろ過による方法が好ましい。水を除去した後の小麦ふすまは、そのまま湿った状態で、または必要に応じて乾燥して、次の処理に供する。
【0016】
小麦ふすまの植物細胞壁構造を部分的に破壊またはゆるやかな構造に変性させる事で、アラビノキシランの抽出を容易に、高収率で行うことができる。そのような方法として、小麦ふすまを水分の存在下、温度100〜145℃、圧力1〜4気圧で短時間加熱処理する方法が挙げられる。ここで水分の存在下とは、加熱処理した後で植物細胞壁崩壊酵素を作用させたときに所望のアラビノキシラン分解物が得られるいかなる量の水分でもよいが、小麦ふすまの乾燥重量に対して1〜8倍量程度の水の添加で通常は十分であって、水分量が前記範囲内であると、圧力損失もなく適度な処置が可能であり好ましい。加熱処理は数秒〜数十分程度、好ましくは1〜10分程度の短時間行えばよく、この範囲以上の長時間行っても効果上の改善はもたらされないため、経済的に不要である。加熱の条件は100〜145℃で1〜4気圧、好ましくは115〜123℃で1. 7〜2. 3気圧である。温度が100℃未満の場合には、アラビノキシランの抽出効率は十分なものではなく、また温度145℃以上または圧力4気圧以上にしてもアラビノキシランの抽出効率はこれ以上上昇せず、不経済であるばかりか他成分の分解反応が生じ、生成物中にフェノール性の酸等の好ましくない生成物が発生するようになる。この加熱処理は、任意の加圧可能な加熱容器例えばオートクレーブを用いて行う事ができるが、連続式加熱加圧装置を用いて連続式操作によって行う事もできる。
【0017】
このように加熱処理された小麦ふすまは、次いで植物細胞壁崩壊酵素によって処理され、上記加熱処理により部分的に破壊またはゆるやかな構造に変性していた植物細胞壁は、容易に分解を受ける事になる。この操作により、ほぼ選択的に植物細胞壁のヘミセルロースより、アラビノキシラン分解物を得る事ができる。そして植物細胞壁崩壊酵素により分解を受けたアラビノキシラン分解物の多くの部分は水溶性であり、未分解の細胞壁成分や水不溶性の繊維質等の固体成分から、水溶性成分として容易に分離する事ができる。
【0018】
本発明で用い得る植物細胞壁崩壊酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられ、単独あるいは複数を混合して用いてよく、複数混合されている複合酵素を用いるのが好ましい。これらの酵素は高等植物、菌類、細菌等に広く分布しており、これらから抽出して用いることもできる。また、微生物に起源を有するものが市販・入手可能であり、これらを用いる事もできる。
【0019】
これらの植物細胞壁崩壊酵素はその至適pHおよび至適温度において使用する事が好ましい。至適pHおよび至適温度は個々の酵素により異なるが、一般にpH5〜7、および25〜60℃の範囲にあり、これらの範囲で処理を行うのが好ましい。これらの酵素は、反応液中に遊離状態で存在させて反応させる事もできる他、酵素を担体に担持させる等、固定化した状態で反応させる事もできる。
【0020】
この酵素による処理は、前記加熱処理した小麦ふすまの乾燥質量に対して0. 01〜1質量%、好ましくは0. 05〜0. 5質量%の量の酵素を用いて行う事が、反応効率および経済性の観点から望ましい。また、反応時間については、上記の酵素量を用いる場合、1〜120分、好ましくは15〜60分の時間反応させることにより、十分に植物細胞壁を崩壊させ、効率的にアラビノキシラン分解物を抽出する事ができる。酵素反応をとめるには、反応液を80〜100℃にすることで、酵素を失活させることができる。
【0021】
以上説明したように、小麦ふすまに特定条件の加熱処理および酵素処理を行う事により、両処理の併用効果により、小麦ふすまから選択的に5〜20質量%のアラビノキシラン分解物を得る事ができる。これらの処理によって得られる水溶性区分中には、小麦ふすま由来の水溶性のアラビノキシラン分解物を含有するので、この水溶性区分をそのまま目的物として取り出してもよい。しかしながら、取り扱いの容易性、保存性等を考慮すると、この水溶性区分から水分を除去し、固体状の形態とする事が好ましい。この水分除去は、アラビノキシラン分解物が変性や熱分解を起こさない条件下であれば、どのような方法でもよく、例えばろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ、スプレークール、ドラムドライ、真空乾燥、凍結乾燥等のいずれの方法も使用できる。また、水溶性区分を適当な担体に結合あるいは担持させた後、上記のような方法により溶媒を除去することで、固形物として得ることもできる。
【0022】
本発明の抗酸化作用を有する組成物は、上記の水溶性のアラビノキシラン分解物を含有する事を特徴とする。本発明の組成物の有効成分である水溶性アラビノキシランは、抗酸化作用、すなわち生体中の活性酸素低下作用を有するため、これを単独、あるいは様々な食品に添加して継続的に摂取する、あるいは化粧料として継続的に適用すると、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善に有用である。また本発明の組成物の有効成分である水溶性アラビノキシランは、小麦等のイネ科植物を原料としているため、安全性が高く、また風味もよいことから、そのまま単独でも充分に経口摂取したり化粧料として適用することが可能であり、長期間の継続的投与が可能である。さらに様々な食品に添加してもその食品の風味を阻害しないため、本発明の組成物を含有する食品は長期間の継続的摂取も容易である。
【0023】
本発明の抗酸化作用を有する組成物は、通常の場合、上記水溶性アラビノキシランの乾燥質量として、成人1日当たり0.1〜20gの範囲で適用される。経口投与の場合、一般的な1日当たりの摂取量は、1〜10gであるが、該水溶性アラビノキシランは、イネ科植物を原料としている安全性の高いものであるため、その摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。
その際、水溶性アラビノキシランをそのまま単独で用いる事もできるが、本発明の効果を阻害しない限り、後述する添加剤のほか、他の抗酸化酵素、抗酸化物質等を単独または複数組み合わせて配合してもよい。
【0024】
前記抗酸化酵素としては、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシターゼ、およびメチオニンレダクターゼ等が挙げられる。
【0025】
前記抗酸化物質としては、ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、コエンザイムQ10等のユビキノン類;ユビキノール類;ケルセチン、ルチン、ミリセチン等のフラボノイド類;α−リポ酸;カロチノイド類;グルタチオン;L−ドーパ;システイン;N−アセチルシステイン;シスチン;タウリン;チロシン;グリコール酸や乳酸等のヒドロキシ酸;フェルラ酸;没食子酸;ポリフェノール類;BHT、BHA等が挙げられる。
【0026】
本発明の抗酸化作用を有する組成物の剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤等の経口剤;坐剤等の経腸製剤;軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等の皮膚外用剤;注射剤等が挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
【0027】
このような剤型の本発明の抗酸化作用を有する組成物は、慣用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等の添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤は周知の方法で表面をコーティングしてもよい。
【0028】
本発明の抗酸化作用を有する組成物が前記添加物や他の抗酸化酵素、抗酸化物質、活性酸素消去物質等を含む場合には、水溶性アラビノキシランの含有量は、その剤型により異なるが、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.01〜80質量%の範囲であり、抗酸化作用を有する組成物の投与量として上述した、成人1日当たりの水溶性アラビノキシラン(乾燥質量)の摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。
【0029】
本発明の抗酸化作用を有する組成物は、生体中の活性酸素量を低下させるため、優れた活性酸素による様々な障害の予防および/または改善作用を奏し、副作用の心配がなく安全性が高い上に、風味がよく簡便に摂取可能で長期間の継続的摂取が容易な、抗酸化作用を有する組成物、ならびにこれを含有する食品、化粧料および飼料を提供できる。
【0030】
本発明の抗酸化作用を有する組成物を含有する食品としては、活性酸素による様々な障害の予防および/または改善により健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品等の他、上記抗酸化作用を有する組成物を配合できる、全ての飲食品が挙げられる。
【0031】
具体的には、錠剤、錠菓、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、経管経腸栄養剤等の流動食、ドリンク剤等の健康食品または栄養補助食品;緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水等の飲料;バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープまたはソース類、菓子(たとえばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
【0032】
本発明の食品は、上記抗酸化作用を有する組成物のほかに、その食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、安定剤、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。
【0033】
本発明の食品において、水溶性アラビノキシランの含有量は、食品の形態により異なるが、通常は0.0001〜90質量%、好ましくは0.01〜70質量%の範囲であり、抗酸化作用を有する組成物の摂取量として上述した、成人1日当たりの水溶性アラビノキシラン(乾燥質量)の摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0034】
また、本発明の抗酸化作用を有する組成物は、そのまま、または汎用の方法でクリーム、乳液、ローション、パック剤、皮膚洗浄料、ハップ剤、エッセンス、ゲル剤、シャンプー、リンス、パウダー、ファンデーション、化粧水、洗顔料、ヘアートニック、ヘアートリートメント、養毛剤、入浴剤、美白剤、UVケア用品、口紅またはリップクリーム等の化粧料に適用することができる。
このときの水溶性アラビノキシランの含有量は、化粧料の形態により異なるが、通常は0.0001〜90質量%、好ましくは0.01〜60質量%の範囲である。
【0035】
本発明の化粧料は、上記抗酸化作用を有する組成物のほかに、所望する剤型に応じて従来公知の賦形剤や香料等をはじめ、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料等の粉末成分、紫外線防御剤、保湿剤、酸化防止剤、pH調整剤、洗浄剤、乾燥剤、乳化剤等を適宜配合して、常法に従って製造することができる。
【0036】
さらに、本発明の抗酸化作用を有する組成物を飼料原料または素材として用いて、家畜用飼料またはペットフード等の動物飼料を製造し、家畜またはペット等の動物に摂取させることもできる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中、水溶性アラビノキシランの糖組成および水溶性アラビノキシランの平均分子量は次の方法で測定した。
【0038】
[水溶性アラビノキシランの糖組成の測定]
水溶性アラビノキシラン5mgを蒸留水1mLに溶解し、50質量%トリフルオロ酢酸1mLを加えて、105℃、2時間の条件で加水分解を行った。加水分解終了後、不溶物を除去し、減圧下に残留する酸を除去したものを高速液体クロマトグラフィー(使用カラム;Shodex Sugar KS-801 昭和電工製)に供した。
【0039】
[水溶性アラビノキシランに含まれる糖類の平均分子量分布測定]

水溶性アラビノキシラン10mgを蒸留水1mLに溶解し、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(使用カラム;Shodex Sugar KS-803 昭和電工製)に供し、次に0.1質量%トリフルオロ酢酸溶液/40質量%アセトニトリル水溶液を使用して1.0mL/分の流速で溶離させた。溶離してきた液の220nmにおける紫外吸収を測定して、測定された吸光度を、分子量既知のマルトース、マルトトリオース、マルトペンタオースおよびプルラン(分子量5, 000および10, 000のもの)から作成した検量線に当てはめて水溶性アラビノキシランに含まれる糖類の分子量を決定した。
【0040】
[製造例]
水溶性アラビノキシランを次のようにして製造した。
(1)反応釜に小麦ふすま(日清製粉製)200gおよび水1. 4Lを仕込み、50℃でミキサーを用いて小麦ふすまを3分間攪拌洗浄した。洗浄後、小麦ふすまをガーゼを用いてろ過して水分を除去した。再度小麦ふすまを反応釜に戻し、水1. 4Lを加えて50℃でミキサーを用いて3分間攪拌洗浄した。これを更にもう一度繰り返し行い、合計3回の洗浄操作を行った。
(2)次いで、洗浄、ろ過後の小麦ふすまをメディウムびんに移し、蒸留水600mLを加えて、オートクレーブ(TONY SS-325) で120℃、10分間加熱・加圧処理した。該処理終了後、室温にて放冷した。
(3)放冷後、残った水分をガーゼを用いたろ過により除去した小麦ふすまを、10Lバケツに投入した。
(4)これに蒸留水4Lを加え、50℃に加熱後、ヘミセルラーゼ(セルラーゼオノヅカ3S ヤクルト薬品工業製)を0. 6g(原料小麦ふすまに対して0. 3質量%)を投入して50℃、60分間反応させた。
(5)反応液を90℃に加熱し、10分間酵素失活させた。
(6)蒸留水を加えて反応液の温度を下げ、脱脂綿でろ過してろ液を分取した。残渣には蒸留水2Lを加えて10分間攪拌し、脱脂綿でろ過してろ液を分取した。
(7)ろ液を合一し、減圧下に水分を除去し、その後凍結乾燥し、さらにこれをミキサーで粉砕して、固形の形態の水溶性アラビノキシラン約20gを得た。
(8)この水溶性アラビノキシランは、タンパク質成分20質量%、糖成分80質量%からなり、糖成分の約80質量%が平均分子量10, 000Da以下(分子量500〜5000:65. 6質量%、分子量5000〜10, 000:6. 6質量%)の範囲にあった。糖成分の95質量%はアラビノース、キシロースおよびグルコースであり、その糖組成はキシロース:アラビノース:グルコースが65:15:20(質量比)であった。また、この固形の水溶性アラビノキシランは、わずかに甘味のある風味の良い粉末であり、これを水性媒体に添加すると、容易に溶解し清澄な液体が得られた。
【0041】
[実施例1]
錠剤の製造
上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン84g、結晶セルロース(旭化成製)10gおよびポリビニルピロリドン(BASF社製)5gを混合し、これにエタノール30mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて打錠用顆粒末とし、打錠機を用いて打錠し、1錠が1gの錠剤100個を製造した。
【0042】
[実施例2]
顆粒剤の製造
上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン100g、乳糖(DMV社製)100gおよび結晶セルロース(旭化成製)40gを混合し、これにエタノール130mLを練合機に添加し、通常の方法により5分間練合した。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥した。乾燥後、整粒し、顆粒剤240gを得た。
【0043】
[実施例3]
シロップ剤の製造
精製水400gを煮沸し、これをかき混ぜながら、白糖750gおよび上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン100gを加えて溶解し、熱時に布ごしし、これに精製水を加えて全量を1000mLとしてシロップ剤を製造した。
【0044】
[実施例4]
流動食の製造
約65℃の純水700gにカゼインナトリウム(DMV社製)40g、マルトデキストリン(三和デンプン製)160gおよび上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン50gを添加して溶解させ、次いでビタミンミックスおよび微量ミネラルの各成分混合液10gを添加した。得られた混合液をホモミキサーに投入し、約8,000rpmにて15分間粗乳化した。得られた乳化液を約20℃に冷却し、香料を添加後、最終メスアップを行った。この液をパウチへ本液230g充填後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って流動食を得た。
【0045】
[実施例5]
パンの製造
小麦粉(強力粉)160gとドライイースト2gを混ぜた。これとは別に、上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン8g、砂糖25g、食塩3gおよび脱脂粉乳6gを温湯70gに溶かし、鶏卵1個を添加してよく混ぜた。これを上記の小麦粉とドライイーストの混合物に加え、よく手でこねた後、バター約40gを加えてよくこね、20個のロールパン生地を作った。次いで、これらのパン生地を発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で約15分焼き、ロールパンを作成した。得られたロールパンは外観、味、食感ともに良好であった。
【0046】
[実施例6]
レトルトご飯の製造
米2合を、一般的な水量の炊飯用水に対して上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン2gを加えて炊飯し、これを慣用の方法に従ってレトルト用パックに充填した後、窒素置換を行いながら密封し、121℃で15分間殺菌を行ってレトルトご飯を得た。得られたレトルトご飯の米飯は、外観、味、食感ともに良好であった。
【0047】
[実施例7]
パスタ用ソースの製造
パスタ用のミートソース一人前(150g)を鍋に入れ、これに上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン5gを加えて加温した。このソースをパウチへ充填した後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って、パスタ用ミートソースを得た。
【0048】
[実施例8]
軟膏剤の製造 (質量%)
A. (1) 製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシラン 1
(2) プロピレングリコール 5
(3) パラオキシ安息香酸メチル 0. 2
(4) カルボキシビニルポリマー 0. 5
B. (5) アジピン酸ジイソプロピル 10
(6) セタノール 2
(7) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 2
(8) モノステアリン酸ポリエチレングリコール 1
(9) パラオキシ安息香酸ブチル 0. 1
C. (10)精製水 バランス
B[(5)〜(9) 成分] を70℃で加熱溶解しながら混合し油相とした。A[(1)〜(4) 成分] を70℃で加熱溶解しながら混合し、これにBの油相を加えて混合乳化し、その後Cを加えながら冷却処理をしてよく混合し、軟膏を得た。
【0049】
[試験例1]
ラジカル消去作用の測定
DPPH(2, 2−diphenyl−1−picrylhydrazyl) は比較的安定なラジカルとして存在するため、ラジカル消去作用の測定に用いられている。
8mgのDPPHを50mLのエタノールに溶解後、蒸留水100mLにメスアップして、DPPH溶液を調製した。
96穴プレートの各ウェルにDPPH溶液180μLを添加し、ここに上記製造例と同様にして得られた固形の水溶性アラビノキシランの試料液(濃度:アラビノキシラン分解物/蒸留水=1mg/200μLまたは10mg/200μL)20μLを添加し、撹拌した。室温で30分間静置後、517nmの吸光度の減少度を測定した。対照として、水溶性アラビノキシランの試料液の代わりに蒸留水のみを添加して測定した。
その結果を対照に対するDPPH量の比として表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、本発明の組成物の有効成分である水溶性アラビノキシランは、対照群に比べてDPPH量を減少させ、優れたラジカル消去作用を有する事が分かる。
【0052】
[試験例2]
抗酸化作用の測定
ラットに表2に示す組成の飼料を与えて、15日間飼育し、飼育後にラットの血液中の過酸化脂質量を下記の方法により測定した。その結果を過酸化脂質量の平均値として表3に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
血液中の過酸化脂質量の測定方法
TBA試薬(0.67質量%チオバルビツール酸と氷酢酸の等量混液)を予め調製しておく。血漿20μLに1/12N硫酸を4mLおよび10質量%リンタングステン酸を0.5mL加えて攪拌混合し、室温で5分間静置した。3000rpmで10分間遠心分離し、沈殿をとり、再度1/12N硫酸を4mLおよび10質量%リンタングステン酸を0.5mL加えて攪拌混合し、室温で5分間静置した。3000rpmで10分間遠心分離し、沈殿を蒸留水4mLに懸濁し、TBA試薬1mLを加えて95℃で1時間反応させた。これを冷却した後、n−ブタノール5mLを加えて攪拌した。遠心分離してn−ブタノール層を分取し、蛍光光度計を用いて蛍光強度を測定した(励起波長:515nm、測定波長:553nm)。過酸化脂質量は下式により求めた。
過酸化脂質量(nmol/mL血漿)=0.5×f/F×1/0.02
式中、f:試料の蛍光強度、F:標準物質(Malonaldehyde Bis(dimethylacetal)0.5nmolの蛍光強度である。
【0055】
【表3】

【0056】
以上の結果から明らかなように、本発明品(本発明の水溶性アラビノキシランを含有する飼料)を食した群は、比較品(標準食)を食した群に比べて、血清中の過酸化脂質が顕著に低下した。したがって、本発明の水溶性アラビノキシランを含有する抗酸化作用を有する組成物は、優れた生体中の活性酸素低下作用を有する事が明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性アラビノキシランを含有してなる抗酸化作用を有する組成物。
【請求項2】
前記水溶性アラビノキシランが、イネ科植物から抽出された水溶性アラビノキシランである、請求項1に記載の抗酸化作用を有する組成物。
【請求項3】
前記水溶性アラビノキシランが、分子量500〜50, 000Daの水溶性アラビノキシランである、請求項1または2に記載の抗酸化作用を有する組成物。
【請求項4】
前記水溶性アラビノキシランが、分子量500〜10, 000Daの水溶性アラビノキシランを50〜90質量%の量で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗酸化作用を有する組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗酸化作用を有する組成物を含有してなる食品、化粧料または飼料。

【公開番号】特開2007−269659(P2007−269659A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95765(P2006−95765)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】