説明

抗TNF薬及び自己抗体の検出用アッセイ

本発明は、試料中の抗TNFα薬治療剤及び自己抗体の存在又はレベルを検出及び測定するアッセイを提供する。本発明は、治療を最適化し及び抗TNFα薬治療を受けている患者を監視して前記薬剤に対する自己抗体(例えば、HACA及び/又はHAHA)の存在又はレベルを検出するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年10月26日に出願された米国特許仮出願第61/255,048号、2009年11月19日に出願された米国特許仮出願第61/262,877号、2010年4月15日に出願された米国特許仮出願第61/324,635号、2010年5月17日に出願された米国特許仮出願第61/345,567号、2010年6月3日に出願された米国特許仮出願第61/351,269号、2010年10月4日に出願された米国特許仮出願第61/389,672号、及び2010年10月15日に出願された米国特許仮出願第61/393,581号についての優先権を主張し、これらの開示内容は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
自己免疫疾患は重要なかつ広がりを見せている医学的問題である。例えば、慢性関節リウマチ(RA)は米国で200万人を超える人々を冒す自己免疫疾患である。RAは関節の慢性炎症を引き起こすものであり、典型的には関節破壊及び機能的障害(functional disability)を引き起こす可能性を有する進行性の病気である。遺伝的素因、感染因子及び環境的要因はいずれもこの疾病の病因とされているが、慢性関節リウマチの原因は不明である。活動性RAにおける症状として、疲労、食欲不振、微熱、筋肉痛、関節痛及びこわばりを挙げることができる。また、疾病の再燃時には、滑膜の炎症によって、関節が頻繁に赤くなり、腫れ、痛みそして圧痛を伴うようになる。さらに、RAは全身性疾患であるので、炎症は、眼瞼腺(glands of the eyes)、口腔腺、肺粘膜、心膜、及び血管を含む、関節以外の体の領域及び器官に影響を与えることがある。
【0003】
RA及び他の自己免疫疾患の管理のための従来的な治療として、即効性の「第一選択薬」及び遅効性の「第二選択薬」を挙げることができる。第一選択薬は痛み及び炎症を軽減する。かかる第一選択薬の例として、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェン、エトドラク及び他の非ステロイド系の抗炎症薬(NSAID)、並びに経口的に投与されるか又は組織及び関節内に直接注射されるコルチコステロイドを挙げることができる。第二選択薬は、疾病の緩解を促進し進行性の関節破壊を防止するもので疾患修飾性抗リウマチ薬又はDMARDとも呼ばれる。第二選択薬の例として、金、ヒドロクロロキン、アザルフィジン及び免疫抑制薬、例えば、メトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル及びシクロスポリンなどを挙げることができるが、これらの薬剤は有害な副作用を有していることがある。従って、慢性関節リウマチ及び他の自己免疫疾患に対する別の治療法が探求されている。
【0004】
腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)は、当初は所定のマウス腫瘍の壊死を誘発するその能力に基づいて同定された、単球及びマクロファージを含む、多くの細胞型によって産生されるサイトカインである。その後、悪液質(cachexia)に関連した、カケクチンと呼ばれる因子がTNF−αと一致することが示された。TNF−αは、ショック(shock)、敗血症、感染、自己免疫疾患、RA、クローン病、移植片拒絶(transplant rejection)及び移植片対宿主病を含む、ヒトの種々の他の疾病及び疾患の病態生理に関与するとされている。
【0005】
種々のヒトの疾患におけるヒトTNF−α(hTNF−α)の有害な役割のために、治療戦略は、hTNF−α活性を阻害又は抑制する(counteract)ように設計されてきた。とりわけ、hTNF−α活性を阻害する手段として、hTNF−αに結合しそれを中和する抗体が捜し求められてきた。かかる抗体の最も初期の一部は、hTNF−αで免疫されたマウスのリンパ球から調製したハイブリドーマによって分泌される、マウスモノクローナル抗体(mAbs)であった(例えば、Moellerらに対する米国特許第5,231,024号参照)。これらのマウス抗hTNF−α抗体はしばしばhTNF−αに対して高い親和性を示しそしてhTNF−α活性を中和することができるが、一方で、それらのインビボの使用は、例えば、短い血清半減期、特定のヒトエフェクター機能の惹起(trigger)不能、及びヒトにおけるマウス抗体に対する望ましくない免疫応答の誘発(elicitation)(「ヒト抗マウス抗体」(HAMA)反応)などの、ヒトへのマウス抗体の投与に関連した問題によって制限されてきた。
【0006】
ごく最近になって、生物学的療法が、例えば、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療に適用されている。例えば、4種のTNFα阻害剤、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、キメラ抗TNFα mAb、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、TNFR−Ig Fc融合タンパク質、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、ヒト抗TNFα mAb、及びCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、ペグ化Fab断片は、FDAによって慢性関節リウマチの治療に対して承認されている。CIMZIA(商標)は、中等度から重症のクローン病(CD)の治療にも用いられる。かかる生物学的療法は慢性関節リウマチ及び例えば、CDなどの、他の自己免疫疾患の治療における好結果が示されたが、一方で、かかる治療に対して、治療された全ての被検者が応答し又は充分に応答するわけではない。さらに、TNFα阻害剤の投与は、該薬剤に対する免疫応答を誘発しそして例えば、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)などの、自己抗体の産生を導くことがある。かかるHACA、HAHA、又はHAMA免疫応答は、前記薬剤を用いたさらなる処理を不可能にする免疫療法TNFα阻害剤の薬物動態及び生体内分布における劇的変化及び過敏性反応(hypersensitive reaction)に関連していることがある。このように、当該技術分野では、患者試料中の抗TNFα生物学的製剤及び/又はそれらの自己抗体の存在を検出してTNFα阻害剤療法を監視し及び治療決定を誘導するアッセイが必要である。本発明は、この要求を満たしさらに関連した利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
TNFαは炎症性疾患、自己免疫疾患、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、悪性腫瘍、及び/又は神経変性疾患に関係するとされてきており、例えば、慢性関節リウマチ及びクローン病などの疾病における特定の生物学的療法についての有用な標的である。例えば、抗TNFα抗体などのTNFα阻害剤は重要な種類の治療薬である。抗TNFα生物学的製剤及び/又はそれらの自己抗体の存在を検出するアッセイ方法が必要である。
【0008】
そこで、本発明は、1つの実施形態において、試料中の抗TNFα薬の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識されたTNFαを抗TNFα薬を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、抗TNFα薬との標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、標識されたTNFαと抗TNFα薬とは互いに共有結合していない)を形成する工程と;
(b)標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して標識された複合体を(例えば、フリーの標識されたTNFαから)分離する工程と;及び
(c)標識された複合体を検出し、それによって抗TNFα薬の存在又はレベルを検出する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0009】
或る場合に、この方法は、例えば、かかる抗TNFα薬療法を受けている被験者由来の、試料中のREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、及びCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)のレベルを測定するのに有用である。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬を該抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料と接触させて自己抗体との標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、標識されたTNFαと自己抗体とは互いに共有結合していない)を形成する工程と;
(b)前記標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して標識された複合体を(例えば、フリーの標識された抗TNFα薬から)分離する工程と;及び
(c)前記標識された複合体を検出し、それによって自己抗体の存在又はレベルを検出する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0011】
或る場合に、この方法は、例えば、抗TNFα薬療法を受けている被験者由来の、試料中の自己抗体であって、限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を含む自己抗体のレベルを測定するのに有用である。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬及び標識されたTNFαを該抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、標識された抗TNFα薬と、標識されたTNFαと、及び自己抗体との間の第一の標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、第一の標識された複合体の成分同士は互いに共有結合していない)並びに標識された抗TNFα薬と自己抗体との間の第二の標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、第二の標識された複合体の成分同士は互いに共有結合していない)を形成し、ここで標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとは異なった標識を含んでいる工程と;
(b)前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体を(例えば、フリーの標識されたTNFα及びフリーの標識された抗TNFα薬から)分離する工程と;及び
(c)前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体を検出し、それによって、前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体の双方が存在している場合には非中和型の自己抗体の存在又はレベルを検出し(すなわち、自己抗体は抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を干渉しない)、そして前記第二の標識された複合体のみが存在している場合には中和型の自己抗体の存在又はレベルを検出する(すなわち、自己抗体は抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を干渉する)工程と、
を含む、前記方法を提供する。
【0013】
或る場合に、この方法は、例えば、抗TNFα薬療法を受けている被験者由来の、試料中の自己抗体であって、限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を含む自己抗体のレベルを測定するのに有用である。
【0014】
関連した実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬を該抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、標識された抗TNFα薬と自己抗体との間の第一の標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、標識された抗TNFα薬と自己抗体とは互いに共有結合していない)を形成する工程と;
(b)前記第一の標識された複合体を第一のサイズ排除クロマトグラフィーに付して前記第一の標識された複合体を(例えば、フリーの標識された抗TNFα薬から)分離する工程と;及び
(c)前記第一の標識された複合体を検出し、それによって自己抗体の存在又はレベルを検出する工程と、
(d)標識されたTNFαを前記第一の標識された複合体と接触させて、標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとの間の第二の標識された複合体(すなわち、免疫複合体又はイムノコンジュゲート)(すなわち、標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとは互いに共有結合していない)を形成し、ここで標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとは異なった標識を含んでいる工程と;
(e)前記第二の標識された複合体を第二のサイズ排除クロマトグラフィーに付して前記第二の標識された複合体を(例えば、フリーの標識されたTNFαから)分離する工程と;及び
(f)前記第二の標識された複合体を検出し、それによって中和型の自己抗体の存在又はレベルを検出する(すなわち、自己抗体は抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を干渉する)工程と、
を含む、方法を提供する。
【0015】
或る場合に、この方法は、例えば、抗TNFα薬療法を受けている被験者由来の、試料中の自己抗体であって、限定されないが、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を含む自己抗体のレベルを測定するのに有用である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者に対する前記抗TNFα薬の有効量を決定する方法であって、以下の工程:
(a)前記被験者由来の第一の試料中の前記抗TNFα薬のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第一の試料を或る量の標識されたTNFαと接触させて該標識されたTNFαを前記抗TNFα薬と共に含む第一の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第一の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記抗TNFα薬の前記レベルを測定する工程と、
を含む工程と;
(b)前記被験者由来の第二の試料中の前記抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第二の試料を或る量の標識された抗TNFα薬と接触させて前記標識された抗TNFα薬を前記自己抗体と共に含む第二の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第二の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記自己抗体の前記レベルを測定する工程と、
を含む工程と;及び
(c)工程(a)において測定された前記抗TNFα薬のレベルから工程(b)において測定された前記自己抗体のレベルを減算し、それによって前記抗TNFα薬の有効量を決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における前記抗TNFα薬の有効量を最適化する方法であって、以下の工程:
(a)本発明の方法に従って前記抗TNFα薬の有効量を決定する工程と;
(b)前記抗TNFα薬の前記有効量を前記抗TNFα薬の前記レベルと比較する工程と;及び
(c)工程(b)の比較に基づいて前記被験者に対する前記抗TNFα薬の今後の用量を決定し、それによって前記抗TNFα薬の治療量を最適化する工程と、
を含む、前記方法を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における治療を最適化し及び/又は前記抗TNFα薬に対する毒性を低減する方法であって、
(a)前記被験者由来の第一の試料中の前記抗TNFα薬のレベルを測定する工程と;
(b)前記被験者由来の第二の試料中の前記抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程と;及び
(c)前記抗TNFα薬及び前記自己抗体のレベルに基づいて前記被験者に対する今後の治療過程を決定し、それによって治療を最適化し及び/又は前記抗TNFα薬に対する毒性を低減する工程、
を含む、方法を提供する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を有する又は有すると疑われる試料中の該抗TNFα薬の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、
(a)或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて標識されたTNFαと前記抗TNFα薬との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識されたTNFα及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識されたTNFαのピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の前記プロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識されたTNFαの前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;
(f)工程(c)から結果として得られた積分を工程(d)から結果として得られた積分で除することによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記抗TNFα薬の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における抗TNFα薬の治療量を最適化する方法であって:前段落の工程(e)の標識されたTNFα対標識された内部標準の比の、前段落の工程(f)の標識されたTNFα対標識された内部標準の比との比較に基づいて被験者に対する抗TNFα薬の今後の用量を決定し、それによって抗TNFα薬の治療量を最適化する工程を含む、方法を提供する。
【0021】
或る実施形態において、本発明は、自己抗体を有する又は有すると疑われる試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、以下の工程:
(a)或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて前記標識された抗TNFα薬と前記自己抗体との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識された抗TNFα薬及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識された抗TNFα薬のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識された抗TNFα薬の前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;及び
(f)工程(c)及び工程(d)から結果として得られた積分を除する(dividing the resultant integration from step (c) and (d))ことによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記自己抗体の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬の存在又はレベル及び抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを測定するキットであって、以下:
(a)或る量の標識されたTNFαを含む第一の測定基体(substrate)と;
(b)或る量の標識された抗TNFα薬を含む第二の測定基体と;
(c)場合により、或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を含む第三の測定基体と;
(d)場合により、或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を含む第四の測定基体と;
(e)場合により、被験者から試料を抽出する手段と;及び
(f)場合により、前記キットを使用するための取扱説明書(pamphlet of instructions)と、
を含む、キットを提供する。
【0023】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】サイズ排除HPLCを用いてTNFα−Alexa647とHUMIRA(商品名)との間の結合を検出する、本発明のアッセイの典型的な実施形態を示す図である。
【0025】
【図2】TNFα−Alexa647へのHUMIRA(商品名)の結合の用量反応(dose response)曲線を示す図である。
【0026】
【図3】架橋(bridging)アッセイとして知られる、現在のELISAをベースとしたHACAレベルの測定法を示す図である。
【0027】
【図4】REMICADE(商品名)に対して産生されたHACA/HAHAの濃度を測定するための本発明の自己抗体検出アッセイの典型的な概略を示す図である。
【0028】
【図5】REMICADE(商品名)−Alexa647への抗ヒトIgG抗体結合の用量反応分析を示す図である。
【0029】
【図6】REMICADE(商品名)−Alexa647への抗ヒトIgG抗体結合の第二の用量反応分析を示す図である。
【0030】
【図7】REMICADE(商品名)−Alexa647への抗ヒトIgG抗体結合の用量反応曲線を示す図である。
【0031】
【図8】正常なヒト血清及びHACA陽性血清におけるREMICADE(商品名)−Alexa647免疫複合体形成を示す図である。
【0032】
【図9】本発明のモビリティシフトアッセイ又は架橋アッセイを用いて実施した20の患者血清試料からのHACA測定の要約を提供する図である。
【0033】
【図10】本発明の新規なHACAアッセイに対する現行のHACA血清濃度測定法の比較及び要約を提供する図である。
【0034】
【図11】正常(NHS)又はHACA陽性(HPS)血清とインキュベートしたフルオロフォア(Fl)標識されたIFXのSE−HPLCプロファイルを示す図である。インキュベーション混合物へのHACA陽性血清の増量の添加は用量依存的に高分子量(higher molecular mass)溶出位置C1及びC2へIFX−Flピークをシフトさせた。
【0035】
【図12】モビリティシフトアッセイによって決定された、HACA陽性血清の希釈度の増加に伴って生成された結合及びフリーのIFX−Flの用量反応曲線を示す図である。(A)増加希釈度のHACA陽性血清をIFX−Fl 37.5ngとインキュベートした。希釈度を高める(HACAが減少する)につれて、SE−HPLC分析においてフリーのIFX−Flが増加することが見出された。(B)増加希釈度のHACA陽性血清をIFX−Fl 37.5ngとインキュベートした。希釈度を高める(HACAが減少する)につれて、SE−HPLC分析においてHACA結合したIFX−Flが減少することが見出された。
【0036】
【図13】正常(NHS)の又はIFXスパイクされた血清とインキュベートしたTNFα−FlのSE−HPLCプロファイルを示す図である。インキュベーション混合物へのIFXスパイク血清の増量の添加は用量依存的に高分子量溶出位置へ蛍光TNFαピークをシフトさせた。
【0037】
【図14】モビリティシフトアッセイによって決定された、IFXスパイク血清の希釈度の増加に伴って生成された結合及びフリーのTNFαの用量反応曲線を示す図である。インキュベーション混合物に添加したIFXの濃度の増加につれてフリーTNFαの百分率が減少するが結合TNFαの百分率は増加する。
【0038】
【図15】モビリティシフトアッセイによる種々の時点におけるIFXで治療されたIBD患者における相対的HACAレベル及びIFX濃度の測定値を示す図である。
【0039】
【図16】患者管理−種々の時点におけるIFXで治療されたIBD患者の血清中のHACAレベル及びIFX濃度の測定値を示す図である。
【0040】
【図17】(A)非中和性又は(B)中和性の自己抗体、例えば、HACAなど、の存在を検出する本発明のアッセイの典型的な実施形態を示す図である。
【0041】
【図18】中和性自己抗体、例えば、HACAなど、の存在を検出する本発明のアッセイの代替的な実施形態を示す図である。
【0042】
【図19】種々の量の抗ヒトIgGの存在下で正常ヒト血清(NHS)とインキュベートしたFl標識されたADLのモビリティシフトプロファイルを示す図である。インキュベーション混合物への抗ヒトIgGの増量の添加は用量依存的に高分子量溶出位置C1及びC2へフリーFl−ADLピーク(FA)をシフトさせたが、内部標準(IC)は変化しなかった。
【0043】
【図20】フリーのFl−ADLのシフトに関する抗ヒトIgGの用量反応曲線を示す図である。増量の抗ヒトIgGをFl−ADL 37.5ng及び内部標準とインキュベートした。反応混合物への抗体の添加量が増えれば増えるほど、内部標準に対するフリーFl−ADLの比は低下した。
【0044】
【図21】種々の量のADLの存在下に正常ヒト血清(NHS)とインキュベートしたFl標識されたTNFαのモビリティシフトプロファイルを示す図である。Ex=494nm;Em=519nm。インキュベーション混合物へのADLの増量の添加は、用量依存的に高分子量溶出位置へTNF−Flピーク(FT)をシフトさせたが、内部標準(IC)は変化しなかった。
【0045】
【図22】フリーのTNF−α−Flのシフトに関するADLの用量反応曲線を示す図である。増量のADLをTNF−α−Fl 100ng及び内部標準とインキュベートした。反応混合物への抗体ADLの添加量が増えれば増えるほど、内部標準に対するフリーTNF−α−Flの比は低下した。
【0046】
【図23】正常の(NHS)又はプールHACA陽性患者血清とインキュベートしたFl標識されたRemicade(IFX)のモビリティシフトプロファイルを示す図である。
【0047】
【図24】正常の(NHS)又はマウス抗ヒトIgG1抗体とインキュベートしたFl標識されたHUMIRA(ADL)のモビリティシフトプロファイルを示す図である。
【0048】
【図25】正常の(NHS)又はプールHAHA陽性患者血清とインキュベートしたFl標識されたHUMIRA(ADL)のモビリティシフトプロファイルを示す図である。
【発明の詳細な記載】
【0049】
I.序論
本発明は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いたホモジニアスモビリティシフトアッセイがTNFα阻害剤並びにそれらに対して産成される自己抗体(例えば、HACA、HAHAなど)の存在又はレベルを測定するのにとりわけ有利であるという発見に一部基づいている。とりわけ、本発明はいかなる洗浄工程も必要としない「ミックスアンドリード(mix and read)」アッセイを提供する。結果として、複合及び非複合のタンパク質治療薬が容易に相互に分離される。さらに、本発明のアッセイを用いてフリーの薬剤に由来する任意の可能性のある干渉が最小化される。対照的に、HACA又はHAHAレベルを測定する典型的なELISAは、最大で3ヶ月かかることがあるが、体内からTNFα阻害剤が除去されるまで実施することができない。さらに、本発明は、抗TNFα抗体のほかにも一般に広範囲のタンパク質治療薬に適用することができる。本発明のアッセイはまた、固体表面への抗原の結合を回避し、無関係のIgG類の非特定的結合を排除し、弱い親和性で抗体を検出し、そして現在利用することができる検出法、例えば、エンザイムイムノアッセイなどより高い感度及び特異性を示すので、有利である。
【0050】
抗TNFα生物学的製剤並びに他の免疫治療薬の血清濃度を測定することの重要性は、臨床試験のときに薬物動態性及び忍容性(例えば、免疫応答)試験を実施すべきことをFDAが要求している事実によって示される。本発明は、これらの薬剤を受けている患者を監視して、患者が適正な用量を得ていること、その薬剤が体内からあまりに急速に除去されるものでないこと、及び患者がその薬剤に対して免疫応答を発現していないことを確かめるのにも有用である。さらに、本発明は、初期薬剤で不首尾のための異なった薬剤間での切り替えを導くのに有用である。
【0051】
II.定義
本明細書中で用いる場合、以下の用語は他に断らない限りそれらに与えられた意味を有する。
【0052】
用語「抗TNFα薬」又は「TNFα阻害剤」は、本明細書中で用いる場合、例えば、TNFαとTNFαに対する細胞表面受容体との相互作用を阻害すること、TNFαタンパク質産生を阻害すること、TNFα遺伝子発現を阻害すること、細胞からのTNFα分泌を阻害すること、TNFα受容体シグナル伝達を阻害すること又は被験者にTNFα活性の低下を生じさせる任意の他の手段などによって、直接的に又は間接的にTNFα活性を阻害する、タンパク質、抗体、抗体断片、融合タンパク質(例えば、Ig融合タンパク質又はFc融合タンパク質)、多価結合タンパク質(例えば、DVD Ig)、小分子TNFαアンタゴニスト及び類似の天然に存在する若しくは非天然に存在する分子、及び/又は組換え体及び/又はその操作型形態(engineered forms)を含む薬剤を包含するように意図される。用語「抗TNFα薬」又は「TNFα阻害剤」は、好ましくは、TNFα活性を阻害する薬剤を含む。TNFα阻害剤の例として、エタネルセプト(ENBREL(商品名)、Amgen社)、インフリキシマブ(REMICADE(商品名)、Johnson and Johnson社)、ヒト抗TNFモノクローナル抗体アダリムマブ(D2E7/HUMIRA(商品名)、Abbott Laboratories社)、セルトリズマブ ペゴル(CIMZIA(商標)、UCB社)、CDP 571(Celltech社)、及びCDP 870(Celltech社)並びにTNFα活性が有害である疾患(例えば、RA)を患っている又は患うリスクのある被験者に投与した場合にその疾患が治療されるような、TNFα活性を阻害する他の化合物を挙げることができる。
【0053】
用語「TNFα阻害剤に対する応答性を予測する」は、本明細書中で用いる場合、TNFα阻害剤を用いた被験者の治療がその被験者に有効である(例えば、測定可能な利益を与える)か否かの可能性を評価する能力を指すものとする。とりわけ、治療が有効であるか否かの可能性を評価する前記能力は、典型的には、治療が始まり、そして有効性の指標(例えば、測定可能な利益の指標)が被験者において観察された後に発揮される。とりわけ好ましいTNFα阻害剤は、TNFα媒介性の疾病又は疾患、例えば、慢性関節リウマチ、又は炎症性腸疾患(IBD)など、の治療においてヒトに用いるのにFDAによって承認されている生物学的製剤であり、それらの製剤として、アダリムマブ(HUMIRA(商品名))、インフリキシマブ(REMICADE(商品名))、エタネルセプト(ENBREL(商品名))、及びセルトリズマブ ペゴル(CIMZIA(商標)、UCB社)を挙げることができる。
【0054】
用語「サイズ排除クロマトグラフィー」(SEC)は、溶液中の分子をそれらのサイズ及び/又は流体力学的体積(hydrodynamic volume)に基づいて分離するクロマトグラフ法を含むものとする。それは、例えば、タンパク質及びそのコンジュゲートなどの、の大分子又は高分子複合体(macromolecular complexes)に適用される。典型的には、水溶液を用いてカラムを通して試料を運ぶ(transport)場合の技術がゲル濾過クロマトグラフィーとして知られている。
【0055】
用語「複合体」、「免疫複合体」、「コンジュゲート」及び「イムノコンジュゲート」は、限定的でなく、抗TNFα薬に結合したTNFα(例えば、非共有手段による)、抗TNFα薬に対する抗体に結合した抗TNFα薬(例えば、非共有手段による)、及び抗TNFα薬に対する抗体及びTNFαの双方に結合した抗TNFα薬(例えば、非共有手段による)を含む。
【0056】
本明細書中で用いる場合、用語「標識された」によって修飾された実体(entity)は、任意の実体、分子、タンパク質、酵素、抗体、抗体断片、サイトカイン、又は経験的に検出可能である別の分子若しくは化学的実体とコンジュゲートされる関連した種類(specie)を含む。標識された実体の標識として適切な化学種は、限定的でなく、蛍光色素、例えば、Alexa Fluor(商標)色素、例えば、Alexa Fluor(商標)647など、量子ドット(quantum dots)、光学色素、発光色素、及び放射性核種、例えば、125I、を含む。
【0057】
用語「有効量」は、治療効果を必要とする被験者においてその治療効果を達成することができる薬剤の用量並びに物質の生体利用可能量(bioavailable amount)を含む。用語「生体利用可能」は、薬剤の投与された用量の治療活性に利用することができる部分を含む。例えば、TNFαが病態生理に関与するとされている疾病及び疾患、例えば、限定的でなく、ショック、敗血症、感染、自己免疫疾患、RA、クローン病、移植片拒絶及び移植片対宿主病、を治療するのに有用な薬剤の有効量は、それと関連した1つ又は2つ以上の症状を予防し又は軽減することができる量であることができる。
【0058】
語句「曲線下面積」は、二次元プロットの一部分の積分を説明するのに用いられる数学的技術用語である。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットにおいて、プロットにおける種々のピークは特定の分子の検出を示す。これらのピークの積分は、最小y軸値、例えば、二次元プロットのベースラインによって囲まれ(circumscribed)、かつ二次元プロット自体によって囲まれた面積を含む。ピークの積分は、次の計算式、曲線下面積=∫ab f(x)dx(式中、f(x)は二次元プロットを描く関数であり、そして変数「a」及び「b」は積分されるピークのx軸両端(x-axis limits)を示す)によっても等しく説明される。
【0059】
語句「蛍光標識検出」は、蛍光標識を検出する手段を含む。検出手段として、限定的でなく、分光計、蛍光光度計、光度計、一般にクロマトグラフィー機器と一体となっている検出装置、例えば、限定的でなく、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィーなど、例えば、限定的でなく、Agilent−1200HPLCシステムなど、を挙げることができる。
【0060】
大括弧「[ ]」は、その大括弧内の種類をその濃度によって表していることを示す。
【0061】
語句「治療を最適化する」は、用量(例えば、有効量又はレベル)及び/又は特定の治療の型を最適化することを含む。例えば、抗TNFα薬の用量を最適化することは、次に被験者に投与される抗TNFα薬の量を増量又は減量することを含む。或る場合に、抗TNFα薬の型を最適化することは、投与される抗TNFα薬を或る薬剤から異なる薬剤(例えば、異なる抗TNFα薬)に変更することを含む。或る他の場合に、治療を最適化することは、或る用量の(例えば、増量した、減量した、又は前の用量と同量の)抗TNFα薬を免疫抑制薬と組み合わせて同時投与することを含む。
【0062】
用語「同時投与する」は、或る活性薬剤の生理学的効果の期間が第二の活性薬剤の生理学的効果と重なるように、2種以上の活性薬剤を投与することを含む。
【0063】
用語「被験者」、「患者」、又は「個体」は典型的には、ヒトを指すが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ヒツジ科動物、ブタ科動物などを含む他の動物も指す。
【0064】
用語「治療過程」は、TNFα媒介性の疾病又は疾患と関連した1つ又は2つ以上の症状を軽減又は予防するように取られる任意の治療的アプローチを含む。この用語は、TNFα媒介性の疾病又は疾患を伴う個体の健康を改善するのに有効な任意の化合物の投与、薬剤、手順、及び/又はレジメンを包含し、そして本明細書中に記載の任意の治療薬を含む。当業者であれば、抗TNFα薬及び/又は該抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又は濃度レベルに基づいて、治療過程又は目下の治療過程の用量を変更(例えば、増量又は減量)することができることは理解されよう。
【0065】
用語「免疫抑制薬」又は「免疫抑制剤」は、照射によるように又は薬剤、例えば、代謝拮抗薬、抗リンパ球血清、抗体など、の投与によるように、免疫抑制効果、例えば、免疫応答の防止又は減少、を生成することができる任意の物質を含む。適当な免疫抑制薬の例として、限定的でなく、チオプリン薬、例えば、アザチオプリン(AZA)及びその代謝産物など;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセート(MTX)など;シロリムス(ラパマイシン);テムシロリムス;エベロリムス;タクロリムス(FK−506);FK−778;抗リンパ球グロブリン抗体、抗胸腺細胞グロブリン抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、及び抗体−毒素コンジュゲート;シクロスポリン;ミコフェノレート;ミゾリビンモノホスフェート;スコパロン;酢酸グラチラマー;それらの代謝産物;それらの薬剤学的に許容することのできる塩;それらの誘導体;それらのプロドラッグ;及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0066】
用語「チオプリン薬」は、アザチオプリン(AZA)、6−メルカプトプリン(6−MP)、又は治療有効性を有するそれらの任意の代謝産物を含み、限定的でなく、6−チオグアニン(6−TG)、6−メチルメルカプトプリンリボシド、6−チオイノシンヌクレオチド(例えば、6−チオイノシンモノホスフェート、6−チオイノシンジホスフェート、6−チオイノシントリホスフェート)、6−チオグアニンヌクレオチド(例えば、6−チオグアノシンモノホスフェート、6−チオグアノシンジホスフェート、6−チオグアノシントリホスフェート)、6−チオキサントシンヌクレオチド(例えば、6−チオキサントシンモノホスフェート、6−チオキサントシンジホスフェート、6−チオキサントシントリホスフェート)、それらの誘導体、それらのアナログ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0067】
用語「試料」は個体から得られる任意の生物学的検体を含む。本発明に用いるのに適当な試料として、限定的でなく、全血、血漿、血清、唾液、尿、便、涙液、他の任意の体液、組織試料(例えば、生検)、及びその細胞抽出物(例えば、赤血球細胞抽出物)を挙げることができる。好ましい実施形態において、試料は血清試料である。当業者であれば、分析前に試料、例えば、血清試料など、を希釈することができることは理解されよう。或る場合に、用語「試料」は、限定的でなく、血液、体組織、血清、リンパ液、リンパ節組織、脾臓組織、骨髄、又は1種又は2種以上のこれらの組織に由来するイムノグロブリン富化画分を含む。或る他の場合に、用語「試料」は血清を含み又は血清若しくは血液由来のイムノグロブリン富化画分である。或る場合に、用語「試料」は体液を含む。
【0068】
III.実施形態の記載
本発明の方法の工程は、必ずしも、本発明の方法を提示する特定の順序で実施しなければならないというものではない。当業者であれば、本発明の方法の工程の他の順序付けが本発明の範囲内に包含されることを理解されよう。
【0069】
或る実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識されたTNFαを抗TNFα薬を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、抗TNFα薬との標識された複合体を形成する工程と;
(b)前記標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して前記標識された複合体を分離する工程と;及び
(c)前記標識された複合体を検出し、それによって抗TNFα薬を検出する工程と、
を含む、前記方法を提供する。
【0070】
或る場合に、本発明の方法は、以下の抗TNFα抗体:REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、及びCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)に対してとりわけ有用である。
【0071】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、全身性炎症に関与するサイトカインでありそして急性期反応を刺激する一群のサイトカインのメンバーである。TNFαの主要な役割は、免疫細胞の調節にある。TNFαはアポトーシス細胞死を誘導し、炎症を誘発し、及び腫瘍形成及びウイルス複製を阻害することもできる。TNFは主に、安定なホモトリマーに配列された212アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質として産生される。
【0072】
用語「TNF−α」は、本明細書中で用いる場合、17kDa分泌型及び26kDa膜結合型として存在するヒトサイトカインを含むことを意図し、その生物学的に活性な型は非共有結合で結合した17kDa分子の三量体からなる。TNF−αの構造は、例えば、Jones, et al. (1989) Nature, 338:225-228にさらに記載されている。用語TNFαは、ヒト、組換えヒトTNF−α(rhTNF−α)、又はヒトTNFαタンパク質に対する少なくとも約80%の同一性を含むことを意図する。ヒトTNFαは、35アミノ酸(aa)細胞質ドメイン、21aa膜貫通セグメント、及び177aa細胞外ドメイン(ECD)からなる(Pennica, D. et al. (1984) Nature 312:724)。ECD内で、ヒトTNFαは、アカゲザルTNFαと97%のaa配列同一性を及びウシ科動物、イヌ科動物、コットンラット、ウマ科動物、ネコ科動物、マウス、ブタ科動物、及びラットTNFαと71%92%のaa配列相同性を共有する。TNFαは、標準的な組換え発現方法によって調製することも又は商業的に購入することもできる(R&D Systems社、カタログ番号210−TA、ミネソタ州ミネアポリス)。
【0073】
或る実施形態において、「TNF−α」は、抗TNF−α抗体が結合することのできる分子又は分子の一部である「抗原」である。TNF−αは1つ又は2つ以上のエピトープを有していることがある。或る場合に、TNF−αは、高度に選択的な方法で、抗TNF−α抗体と反応する。本発明の抗体、本発明の抗TNF抗体の断片及び領域に結合する好ましい抗原は、配列番号1の少なくとも5つのアミノ酸を含む。或る場合に、TNF−αは、抗TNF−α抗体、その断片及び領域に結合することのできるTNFαのエピトープを有する充分な長さである。
【0074】
或る実施形態において、抗TNF−α抗体、その断片及び領域に結合する充分な長さのエピトープを有するTNF−αの長さは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220のアミノ酸の長さである。1つの実施形態において、用いられるTNF−αは配列番号1の残基77−233を含む。
【0075】
或る場合に、TNF−αの可溶性部分、すなわち、配列番号1の残基77−233、の少なくとも1つのアミノ酸を標識する。或る場合には、アミン反応性フルオロフォア誘導体を用いる。ほとんどの場合、アミン反応性基は、アミンとの反応時にカルボキサミド、スルホンアミド又はチオ尿素を形成するアシル化剤である。実質的には、全てのタンパク質がリシン残基を有しており、そして大部分がN末端に遊離のアミンを有しているので標識に対する結合点として用いることができる。好ましい実施形態において、残基77が標識され、そして用いられるTNF−αが配列番号1の残基77−233を含む。他の実施形態において、多くの第一アミンを標識してTNF−αを多重に標識する。
【0076】
或る場合に、TNF−αの一部、すなわち、抗体、及びその断片及び領域によって認識される部分、は標識しない。言い換えると、TNF−α抗原の所定の部分は、抗TNF活性、抗体、及びその断片、及び可変領域(variable regions)によって認識され、及び/又はそれらと結合するTNFの立体的(topographical)又は三次元エピトープを備えている。これらの部分は、好ましくは、自由に結合できる状態にあり、従って標識されない。これらは、配列番号:1の残基136−157及び164−185を含む。
【0077】
Tyr-Ser-Gln-Val-Leu-Phe-Lys-Gly-Gln-Gly-Cys-Pro-Ser-Thr-His-Val-Leu-Leu-Thr-His-Thr-Ile;及び
【0078】
Tyr-Gln-Thr-Lys-Val-Asn-Leu-Leu-Ser-Ala-Ile-Lys-Ser-Pro-Cys-Gln-Arg-Glu-Thr-Pro-Glu-Gly。
【0079】
種々の検出可能な基(1つ又は複数)を用いてTNFα又は抗TNFα薬を標識することができる。好ましくは、フルオロフォア又は蛍光色素を用いてTNFα又は抗TNFα薬を標識する。本発明に用いるのに適切な典型的フルオロフォアは、参照により本明細書中に組み込まれる、Molecular Probes Catalogueにリストされているものを含む(R. Haugland, The Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, 10th Edition, Molecular probes, Inc. (2005)参照)。かかる典型的なフルオロフォアとして、限定的でなく、Alexa Fluor(商標)色素、例えば、Alexa Fluor(商標)350、Alexa Fluor(商標)405、Alexa Fluor(商標)430、Alexa Fluor(商標)488、Alexa Fluor(商標)514、Alexa Fluor(商標)532、Alexa Fluor(商標)546、Alexa Fluor(商標)555、Alexa Fluor(商標)568、Alexa Fluor(商標)594、Alexa Fluor(商標)610、Alexa Fluor(商標)633、Alexa Fluor(商標)635、Alexa Fluor(商標)647、Alexa Fluor(商標)660、Alexa Fluor(商標)680、Alexa Fluor(商標)700、Alexa Fluor(商標)750、及び/又はAlexa Fluor(商標)790、並びに他のフルオロフォア、例えば、塩化ダンシル(Dansyl Chloride)(DNS−Cl)、5−(ヨードアセトアミダ)フルオロセイン(5-(iodoacetamida)fluoroscein)(5−IAF)、フルオロセイン5−イソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミン5−(及び6−)イソチオシアネート(TRITC)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン)、7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イルクロリド(NBD−Cl)、臭化エチジウム、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、5−カルボキシローダミン6Gヒドロクロリド、リサミンローダミンB塩化スルホニル、Texas Red(商標)塩化スルホニル、BODIPY(商標)、ナフタルアミンスルホン酸(例えば、1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(ANS)、6−(p−トルイジニル)ナフタレン−2−スルホン酸(TNS)など)、アントロイル脂肪酸(Anthroyl fatty acid)、DPH、パリナリン酸、TMA−DPH、フルオレニル脂肪酸、フルオレセイン−ホスファチジルエタノールアミン、Texas red−ホスファチジルエタノールアミン、ピレニル−ホスファチジルコリン、フルオレニル−ホスホチジルコリン、メロシアニン(Merocyanine)540、1−(3−スルホナトプロピル)−4−[β−[2−[(ジ−n−ブチルアミノ)−6−ナフチル]ビニル]ピリジニウムベタイン(ナフチルスチリル)、3,3’ジプロピルチアジカルボシアニン(ジS−C−(5))、4−(p−ジペンチルアミノスチリル)−1−メチルピリジニウム(ジ−5−ASP)、Cy−3ヨードアセトアミド、Cy−5−N−ヒドロキシスクシンイミド、Cy−7−イソチオシアネート、ローダミン800、IR−125、チアゾールオレンジ、アズールB、ナイルブルー、Alフタロシアニン、オキサキシン−1,4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、ヘキスト33342、TOTO、アクリジンオレンジ、エチジウムホモダイマー、N−(エトキシカルボニルメチル)−6−メトキシキノリニウム(MQAE)、フラ−2、カルシウムグリーン、カルボキシSNARF−6、BAPTA、クマリン、フィトフルオル(phytofluors)、コロネン、金属配位子錯体、IRDye(商標)700DX、IRDye(商標)700、IRDye(商標)800RS、IRDye(商標)800CW、IRDye(商標)800、Cy5、Cy5.5、Cy7、DY676、DY680、DY682、DY780、及びそれらの混合物などを挙げることができる。追加の適切なフルオロフォアとして、酵素補因子、ランタニド、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、又はそれらの突然変異体及び誘導体を挙げることができる。本発明の1つの実施形態において、特異的な結合対の第二のメンバーはそこに結合された検出可能な基を有している。
【0080】
典型的には、蛍光基は、ポリメチン、フタロシアニン(pthalocyanines)、シアニン、キサンテン、フルオレン、ローダミン、クマリン、フルオレセイン及びBODIPY(商標)を含む色素のカテゴリーから選択されるフルオロフォアである。
【0081】
1つの実施形態において、蛍光基は、約650〜約900nmの範囲で発光する近赤外(NIR)フルオロフォアである。近赤外フルオロフォア技術の使用は、その技術が生体基質(biosubstrates)の自己蛍光由来のバックグランドを実質的に除去又は低減するので、生物学的アッセイにおいて有利である。近IR蛍光技術の別の利点は、励起光源からの散乱光の散乱強度が波長の逆4乗に比例するので、該散乱光が大きく低減されることである。低いバックグランド蛍光及び低い散乱は、高感度検出に必須である高いシグナル対ノイズ比をもたらす。さらに、生物学的組織における近IR領域(650nm〜900nm)の光学的透明窓は、生物学的構成要素を通る光の透過を必要とするインビボイメージング及び細胞内検出に対してNIR蛍光を有用な技術にしている。この実施形態の側面において、蛍光基は、好ましくは、IRDye(商標)700DX、IRDye(商標)700、IRDye(商標)800RS、IRDye(商標)800CW、IRDye(商標)800、Alexa Fluor(商標)660、Alexa Fluor(商標)680、Alexa Fluor(商標)700、Alexa Fluor(商標)750、Alexa Fluor(商標)790、Cy5、Cy5.5、Cy7、DY 676、DY680、DY682及びDY780からなる群から選択される。或る実施形態において、近赤外基は、IRDye(商標)800CW、IRDye(商標)800、IRDye(商標)700DX、IRDye(商標)700、又はDynomic DY676である。
【0082】
蛍光標識化(labeling)は、フルオロフォアの化学的に反応性の誘導体を用いて行われる。一般的な反応性基として、アミン反応性イソチオシアネート誘導体、例えば、FITC及びTRITC(フルオレセイン及びローダミンの誘導体)など、アミン反応性スクシンイミジルエステル、例えば、NHS−フルオレセインなど、及びスルフヒドリル反応性マレイミド活性化フルオル(fluors)、例えば、フルオレセイン−5−マレイミドなど、を挙げることができ、それらの多くは商業的に入手可能である。これらの反応性色素のいずれかとTNFα又は抗TNFα薬との反応は、フルオロフォアとTNFα又は抗TNFα薬との間に形成される安定な共有結合を生じさせる。
【0083】
或る実施形態においては、蛍光標識化反応の後、標識された標的分子から任意の非反応のフルオロフォアを除去する必要がしばしばある。これは多くの場合、フルオロフォアと標識されたタンパク質との間のサイズ差を利用して、サイズ排除クロマトグラフィーによって達成される。
【0084】
反応性蛍光色素は多くの供給源から入手することができる。標的分子内の種々の官能基への結合に対して異なる反応性基を用いてそれらを得ることができる。それらは、標識化反応を実施するための全ての構成要素を含む標識化キットにより利用することもできる。1つの好ましい側面において、Invitrogen社製のAlexa Fluor(商標)647 C2マレイミド(カタログ番号A−20347)を用いる。
【0085】
抗TNFα抗体のTNFαへの又は抗薬剤抗体(ADA)の抗TNFα抗体への特異的な免疫学的結合は直接的に又は間接的に検出することができる。直接的な標識として、抗体に結合された蛍光又は発光タグ、金属、色素、放射性核種などを挙げることができる。或る場合に、試料中の抗TNFα抗体又はADAのそれぞれの濃度レベルを決定するのに、ヨウ素125(125I)で標識されたTNFα又は抗TNFα抗体を用いることができる。他の場合に、試料中の抗TNFα抗体又はADAのそれぞれに対して特異的な化学発光TNFα又は抗TNFα抗体を用いた化学発光アッセイが抗TNFα抗体又はADA濃度レベルの高感度での非放射性検出に適している。特定の場合に、蛍光色素で標識されたTNFα又は抗TNFα抗体も、試料中の抗TNFα抗体又はADAのそれぞれの濃度レベルを決定するのに適している。蛍光色素の例として、限定的でなく、Alexa Fluor(商標)色素、DAPI、フルオレセイン、ヘキスト(Hoechst)33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、Texas Red、及びリサミン(lissamine)を挙げることができる。蛍光色素に結合される二次抗体は商業的に入手することができ、例えば、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals社(カリフォルニア州バーリンゲーム)から入手することができる。
【0086】
間接的な標識として、当該技術分野で周知の種々の酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどを挙げることができる。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば、450nmにおいて検出可能な可溶性生成物を過酸化水素の存在下に生ずる色素生産性基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に用いることができる。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば、405nmにおいて容易に検出可能な可溶性生成物を生ずる、色素生産性基質p−ニトロフェニルホスフェートと共に用いることができる。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、410nmにおいて検出可能な可溶性生成物を生ずる、色素生産性基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)と共に用いることができる。ウレアーゼ検出系は、基質、例えば、尿素−ブロモクレゾールパープル(Sigma Immunochemicals社;ミズーリ州セントルイス)と共に用いることができる。酵素に結合される有用な二次抗体は多くの商業的供給源から入手することができ、例えば、ヤギF(ab’)抗ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson ImmunoResearch社(ペンシルバニア州ウェストグローブ)から購入することができる。
【0087】
直接的又は間接的な標識からのシグナルは、例えば、色素生産性基質由来の色を検出する分光光度計を用いて;放射線を検出する放射線測定器、例えば、125Iの検出用ガンマカウンターなど、を用いて;又は所定の波長の光の存在下に蛍光を検出する蛍光光度計を用いて、分析することができる。酵素結合抗体の検出には、製造業者の使用説明書に従い、分光光度計、例えば、EMAX Microplate Reader(Molecular Devices社;カリフォルニア州メンロパーク)など、を用いて、抗TNFα抗体又はADAレベルの量の定量分析を行なうことができる。所望により、本発明のアッセイは自動化し又はロボット制御により実施することができ、そして多数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。
【0088】
或る実施形態において、サイズ排除クロマトグラフィーを用いる。SECの根本的な原理は、異なるサイズの粒子は異なる速度で固定相を通って溶出する(濾過する)ことである。これは、溶液の粒子のサイズに基づいた分離をもたらす。全ての粒子が同時に又はほぼ同時にロードされるという条件で、同じサイズの粒子は一緒に溶出する。それぞれのサイズ排除カラムは、分離することができる分子量の範囲を有している。排除限界はこの範囲の上端の分子量を規定しそして分子が大きすぎて固定相にトラップすることができないところが排除限界である。透過限界は分離範囲の下端の分子量を規定しそして充分に小さなサイズの分子が完全に固定相の細孔中に浸透することができるところが透過限界であり、この分子質量未満の分子は全てとても小さいためシングルバンドとして溶出する。
【0089】
或る側面において、溶出液を一定の体積、又は画分に集める。粒子がサイズにおいて類似していればいるほど、それらは同じ画分に存在し別々には検出されない可能性が高くなる。好ましくは、集めた画分を分光技術によって検査して溶出された粒子の濃度を決定する。典型的には、本発明に有用な分光検出技術として、限定的でなく、蛍光定量法、屈折率(RI)、及び紫外線(UV)を挙げることができる。或る場合に、溶出体積は分子流体力学的体積の対数に対してほぼ直線的に減少する(すなわち、より重い(heaver)部分が最初に抜け出る)。
【0090】
或る側面において、これらの方法は、抗TNFα薬、例えば、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、キメラ抗TNFα mAb、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、TNFR−Ig Fc融合タンパク質、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、ヒト抗TNFα mAb、及びCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、ペグ化Fab断片を含む抗体など、の量を検出するのに有用である。
【0091】
或る場合に、抗TNFα薬(例えば、抗TNFα抗体)を検出した後に、検量線(standard curve)を用いて抗TNFα薬を測定する。
【0092】
別の実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬を試料と接触させて自己抗体との標識された複合体を形成する工程と;
(b)前記標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して標識された複合体を分離する工程と;及び
(c)標識された複合体の存在又はレベルを検出し(detecting the presence or level labeled complex)、それによって自己抗体を検出する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0093】
或る場合に、自己抗体として、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を挙げることができる。
【0094】
さらに別の実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬及び標識されたTNFαを該抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、標識された抗TNFα薬と、標識されたTNFαと、そして自己抗体との間の第一の標識された複合体、及び標識された抗TNFα薬と自己抗体との間の第二の標識された複合体を形成し、ここで標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとは異なる標識を含んでいる、工程と;
(b)前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体をサイズ排除クロマトグラフィーに付して第一の標識された複合体及び第二の標識された複合体を分離する工程と;及び
(c)前記第一の標識された複合体及び前記第二の標識された複合体を検出し、それによって第一の標識された複合体及び第二の標識された複合体の双方が存在している場合には非中和型の自己抗体を検出し、そして第二の標識された複合体だけが存在している場合には中和型の自己抗体を検出する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0095】
或る場合に、自己抗体として、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を挙げることができる。
【0096】
関連した実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを検出する方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗TNFα薬を該抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料と接触させて、標識された抗TNFα薬と自己抗体との間の第一の標識された複合体を形成する工程と;
(b)前記第一の標識された複合体を第一のサイズ排除クロマトグラフィーに付して第一の標識された複合体を分離する工程と;
(c)前記第一の標識された複合体を検出し、それによって自己抗体の存在又はレベルを検出する工程と;
(d)標識されたTNFαを前記第一の標識された複合体と接触させて、標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとの間の第二の標識された複合体を形成し、ここで標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとは異なる標識を含んでいる、工程と;
(e)前記第二の標識された複合体を第二のサイズ排除クロマトグラフィーに付して、第二の標識された複合体を分離する工程と;及び
(f)第二の標識された複合体を検出し、それによって中和型の自己抗体の存在又はレベルを検出する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0097】
或る場合に、自己抗体として、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びヒト抗マウス抗体(HAMA)を挙げることができる。
【0098】
他の実施形態において、本明細書中に記載したアッセイ方法を用いて、TNFα阻害剤に対する応答性、とりわけ、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、クローン病など)を有する被験者における抗TNFα抗体に対する反応性を予測することができる。この方法において、抗TNFα抗体の正しい用量又は治療用量、すなわち、治療濃度レベルについて被験者をアッセイすることによって、その個体がその治療に応答するか否かを予測することができる。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を有する被験者における自己免疫疾患を監視する方法であって、経時的に、抗TNFα抗体の正しい用量又は治療用量、すなわち、治療濃度レベルについて被験者をアッセイすることを含む。この方法により、その個体が所与の時間期間にわたってその療法に応答するか否かを予測することができる。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者に対する抗TNFα薬の有効量を決定する方法であって、以下の工程:
(a)被験者由来の第一の試料中の抗TNFα薬のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第一の試料を或る量の標識されたTNFαと接触させて標識されたTNFαを抗TNFα薬と共に含む第一の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第一の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって抗TNFα薬のレベルを測定する工程と、
を含む工程と;
(b)被験者由来の第二の試料中の前記抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第二の試料を或る量の標識された抗TNFα薬と接触させて標識された抗TNFα薬を自己抗体と共に含む第二の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第二の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって自己抗体のレベルを測定する工程と、
を含む工程と;及び
(c)工程(a)において測定された抗TNFα薬のレベルから工程(b)において測定された自己抗体のレベルを減算し、それによって前記抗TNFα薬の有効量を決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0101】
関連した実施形態において、本発明はさらに、工程(a)(ii)における検出が以下の工程:
(1)サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の第一のプロットから標識されたTNFαのピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(2)第一のプロットから第一の複合体のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(3)工程(2)から結果として得られた積分を工程(1)から結果として得られた積分によって除することによって比を決定する工程と;及び
(4)標識されたTNFαの前記量に工程(3)の比を乗ずる工程と、
を含む方法を提供する。
【0102】
関連した実施形態において、本発明はさらに、工程(b)(ii)における検出が、以下の工程:
(1)サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の第二プロットから標識された抗TNFα薬のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(2)第二のプロットから第二の複合体のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(3)工程(2)から結果として得られた積分を工程(1)から結果として得られた積分によって除することによって比を決定する工程と;及び
(4)標識された抗TNFα薬の前記量に工程(3)の比を乗ずる工程と、
を含む方法を提供する。
【0103】
関連した実施形態において、本発明はさらに、第一の試料及び第二の試料の双方が血清試料であることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬を用いた治療の間に被験者から前記第一の試料及び前記第二の試料の双方を得ることを提供する。なお別の関連した実施形態において、本発明はさらに、工程(a)(ii)及び/又は工程(b)(ii)における検出が蛍光標識検出を含むことを提供する。
【0104】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における抗TNFαの治療量を最適化する方法であって、以下の工程:
(a)本発明の方法に従って抗TNFα薬の有効量を決定する工程と;
(b)抗TNFα薬の前記有効量を抗TNFα薬の前記レベルと比較する工程と;及び
(c)工程(c)の比較に基づいて被験者に対する抗TNFα薬の今後の用量を決定し、それによって抗TNFα薬の治療量を最適化する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0105】
関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬の有効量が抗TNFα薬のレベルより低い場合に抗TNFα薬の今後の用量を増加させることを提供する。関連した実施形態において、本発明は、抗TNFα薬の有効量が抗TNFα薬のレベルにほぼ等しくなるように抗TNFα薬の今後の用量を増加させることを提供する。
【0106】
或る他の実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーであることを提供する。
【0107】
或る実施形態において、抗TNFα薬はインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である。或る他の実施形態において、抗TNFα薬はアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である。他の実施形態において、抗TNFα薬はエタネルセプト(ENBREL(商品名))である。或る他の実施形態において、抗TNFα薬はCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である。他の実施形態において、標識されたTNFαはフルオロフォアで標識されたTNFαである。或る他の実施形態において、測定された抗TNFα薬を定量化する。或る実施形態において、測定されたTNFαを定量化する。他の実施形態において、標識された複合体が最初に溶出され、その後にフリーの標識されたTNFαが溶出される。或る他の実施形態において、標識された複合体が最初に溶出され、その後にフリーの標識された抗TNFα抗体が溶出される。或る実施形態において、サイズ排除クロマトグラフィーはサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)である。或る他の実施形態において、自己抗体はヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、又はそれらの組み合わせから選択されるメンバーである。或る実施形態において、測定された自己抗体を定量化する。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者において治療を最適化し及び/又は抗TNFα薬に対する毒性を低減する方法であって、以下の工程:
(a)被験者由来の第一の試料中の抗TNFα薬のレベルを測定する工程と;
(b)被験者由来の第二の試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程と;及び
(c)前記抗TNFα薬及び自己抗体のレベルに基づいて被験者に対する今後の治療過程を決定し、それによって治療を最適化し及び/又は抗TNFα薬に対する毒性を低減する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0109】
関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが高レベルでありかつ自己抗体のレベルが低レベルである場合に、抗TNFα薬と一緒に免疫抑制剤を同時投与することを含む。別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが中レベルでありかつ自己抗体のレベルが低レベルである場合に、抗TNFα薬のレベルを増加させかつ免疫抑制薬を同時投与することを含む。別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが中レベルでありかつ自己抗体のレベルが中レベルである場合に、異なる抗TNFα薬を投与することを含む。なお別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが低レベルでありかつ前記自己抗体のレベルが高レベルである場合に、異なる抗TNFα薬を投与することを含む。別の関連した実施形態において、インフリキシマブ(REMICADE(商品名))の代わりにアダリムマブ(HUMIRA(商品名))を投与する。
【0110】
或る実施形態において、語句「高レベルの抗TNFα薬」は、約10〜約100ng/10μL、約10〜約70ng/10μL、又は約10〜約50ng/10μLの薬剤レベルを含む。他の実施形態において、語句「高レベルの抗TNFα薬」は約10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ng/10μLより多い薬剤レベルを含む。
【0111】
或る実施形態において、語句「中レベルの抗TNFα薬」は、約5.0〜約50ng/10μL、約5.0〜約30ng/10μL、約5.0〜約20ng/10μL、又は約5.0〜約10ng/10μLの薬剤レベルを含む。他の実施形態において、語句「中レベルの抗TNFα薬」は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1ng/10μLの薬剤レベルを含む。
【0112】
或る実施形態において、語句「低レベルの抗TNFα薬」は、約0〜約10ng/10μL、約0〜約8ng/10μL、又は約0〜約5ng/10μLの薬剤レベルを含む。他の実施形態において、語句「低レベルの抗TNFα薬」は、約10、9.0、8.0、7.0、6.0、5.0、4.0、3.0、2.0、1.0、又は0.5ng/10μLよりほぼ少ない薬剤レベルを含む。
【0113】
頭字語「ADA」は、語句「抗薬剤抗体」を含む。
【0114】
或る実施形態において、語句「高レベルの抗薬剤抗体」は、約3.0〜約100ng/10μL、約3.0〜約50ng/10μL、約10〜約100ng/10μL、約10〜約50ng/10μL、又は約20〜約50ng/10μLの抗薬剤抗体レベルを含む。或る他の実施形態において、語句「高レベルの抗薬剤抗体」は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ng/10μLよりほぼ多い抗薬剤抗体レベルを含む。
【0115】
或る実施形態において、語句「中レベルの抗薬剤抗体」は、約0.5〜約20ng/10μL、約0.5〜約10ng/10μL、約2.0〜約20ng/10μL、約2.0〜約10ng/10μL、約2.0〜約5.0ng/10μL、又は約2.0〜約5.0ng/10μLの抗薬剤抗体レベルを含む。
【0116】
或る実施形態において、語句「低レベルの抗薬剤抗体」は、約0.0〜約5.0ng/10μL、約0.1〜約5.0ng/10μL、約0.0〜約2.0ng/10μL、約0.1〜約2.0ng/10μL、又は約0.5〜約2.0ng/10μLの抗薬剤抗体レベルを含む。他の実施形態において、語句「低レベルの抗薬剤抗体」は、約5.0、4.0、3.0、2.0、1.0、又は0.5ng/10μLよりほぼ少ない抗薬剤抗体レベルを含む。
【0117】
或る実施形態において、本発明の方法はさらに、以下の工程:
(i)第一の試料を或る量の標識されたTNFαと接触させて標識されたTNFαを抗TNFα薬と共に含む第一の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第一の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって抗TNFα薬のレベルを測定する工程と、
を含むアッセイを用いて抗TNFα薬を測定することを提供する。
【0118】
或る実施形態において、本発明の方法はさらに、以下の工程:
(i)第二の試料を或る量の標識された抗TNFα薬と接触させて標識された抗TNFα薬を自己抗体と共に含む第二の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第二の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって自己抗体のレベルを測定する工程と、
を含むアッセイを用いて自己抗体を測定することを提供する。
【0119】
関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、抗TNFα薬がREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーであることを提供する。関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))であることを提供する。或る他の実施形態において、抗TNFα薬はアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である。或る他の実施形態において、抗TNFα薬はエタネルセプト(ENBREL(商品名))である。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)であることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、測定された抗TNFα薬を定量化することを提供する。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、第一の試料及び第二の試料の双方が血清であることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、抗TNFα薬を用いた治療の間に被験者から第一の試料及び第二の試料の双方を得ることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、自己抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、又はそれらの組み合わせから選択されるメンバーであることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、測定された自己抗体を定量化することを提供する。
【0120】
或る実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を有する又は有すると疑われる試料中の抗TNFα薬の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、以下の工程:
(a)或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて標識されたTNFαと抗TNFα薬との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識されたTNFα及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識されたTNFαのピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識されたTNFαの前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;
(f)工程(c)から結果として得られた積分を工程(d)から結果として得られた積分で除することによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記抗TNFα薬の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0121】
関連した実施形態において、本発明はさらに、工程(e)において決定された第一の比が約80:1〜約100:1であることを提供する。別の関連した実施形態において、本発明はさらに、工程(e)において決定された第一の比が約100:1であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、標識された内部標準がBiocytin−Alexa488であることを提供する。或る実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は、分析される試料100μL当たり約1〜約25ngである。或る他の実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は、分析される試料100μL当たり約5〜約25ng、分析される試料100μL当たり約5〜約20ng、分析される試料100μL当たり約1〜約20ng、分析される試料100μL当たり約1〜約10ng、又は分析される試料100μL当たり約1〜約5ngである。さらなる実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は、分析される試料100μL当たり約1、5、10、15、20、又は25ngである。
【0122】
或る実施形態において、本発明は、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における抗TNFα薬の治療量を最適化する方法であって、以下の工程:本発明の方法に従って前記第一の比と前記第二の比との比較に基づいて被験者に対する抗TNFαの今後の用量を決定し、それによって抗TNFα薬の治療量を最適化する工程、を含む方法を提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、前記方法が、以下の工程:前記第一の比が約100:1でありかつ前記第二の比が約95:1未満である場合に抗TNFα薬の今後の用量を増加させ、それによって抗TNFα薬の治療量を最適化する工程、を含むことを提供する。別の関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーであることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がアダリムマブ(HUMIRA(商品名))であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がエタネルセプト(ENBREL(商品名))であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、標識されたTNFαがフルオロフォアで標識されたTNFαであることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、検出された抗TNFα薬を定量化することを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、標識された複合体が最初に溶出され、その後にフリーの標識されたTNFαが溶出されることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、試料が血清であることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から試料を得ることを提供する。関連した実施形態において、本発明はさらに、サイズ排除クロマトグラフィーがサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)であることを提供する。
【0123】
或る実施形態において、本発明は、自己抗体を有する又は有すると疑われる試料中の抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、以下の工程:
(a)或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて前記標識された抗TNFα薬と前記自己抗体との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識された抗TNFα及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識された抗TNFα薬のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の前記プロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識された抗TNFα薬の前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;及び
(f)工程(c)及び工程(d)から結果として得られた積分を除することによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記自己抗体の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0124】
関連した実施形態において、工程(e)において決定された第一の比は約80:1〜約100:1である。別の関連した実施形態において、工程(e)において決定された第一の比は約100:1である。関連した実施形態において、標識された内部標準はBiocytin−Alexa488である。或る実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は分析される試料100μL当たり約50〜約200pgである。或る他の実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は、分析される試料100μL当たり約100〜約200pg、分析される試料100μL当たり約150〜約200pg、分析される試料100μL当たり約50〜約150pg、又は分析される試料100μL当たり約50〜約100pgである。さらなる実施形態において、標識された内部標準(例えば、Biocytin−Alexa488)の量は、分析される試料100μL当たり約50、75、100、125、150、175、又は200pgである。
【0125】
関連した実施形態において、抗TNFα薬は、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。関連した実施形態において、抗TNFα薬はインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である。関連した実施形態において、抗TNFα薬はアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である。関連した実施形態において、抗TNFα薬はエタネルセプト(ENBREL(商品名))である。関連した実施形態において、抗TNFα薬はCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である。関連した実施形態において、検出された自己抗体を定量化する。関連した実施形態において、標識された複合体が最初に溶出され、その後にフリーの標識された抗TNFα抗体が溶出される。関連した実施形態において、試料は血清である。関連した実施形態において、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から試料を得る。関連した実施形態において、サイズ排除クロマトグラフィーはサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)である。関連した実施形態において、自己抗体はヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。関連した実施形態において、検出された自己抗体を定量化する。
【0126】
関連した実施形態において、本発明の方法はさらに、今後の治療過程を決定することを提供する。今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが高レベルでありかつ自己抗体のレベルが低レベルである場合に、抗TNFα薬と一緒に免疫抑制剤を同時投与することを含む。別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが中レベルでありかつ自己抗体のレベルが低レベルである場合に、抗TNFα薬のレベルを増加させかつ免疫抑制薬を同時投与することを含む。別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが中レベルでありかつ自己抗体のレベルが中レベルである場合に、異なる抗TNFα薬を投与することを含む。なお別の関連した実施形態において、今後の治療過程は、抗TNFα薬のレベルが低レベルでありかつ自己抗体のレベルが高レベルである場合に、異なる抗TNFα薬を投与することを含む。別の関連した実施形態において、インフリキシマブ(REMICADE(商品名))の代わりにアダリムマブ(HUMIRA(商品名))を投与する。
【0127】
或る実施形態において、本発明は、試料中の抗TNFα薬の存在又はレベル及び抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを測定するキットであって、以下:
(a)或る量の標識されたTNFαを含む第一の測定基体と;
(b)或る量の標識された抗TNFα薬を含む第二の測定基体と;
(c)場合により、或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を含む第三の測定基体と;
(d)場合により、或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を含む第四の測定基体と;
(e)場合により、被験者から試料を抽出する手段と;及び
(f)場合により、前記キットを使用するための取扱説明書と、
を含む、キットを提供する。
【0128】
関連した実施形態において、前記基体は、本発明の化学薬品(chemicals)と共に堆積させる(deposit)ことができる任意の材料を含み、そして前記基体として、限定的でなく、ニトロセルロース、シリカゲル、薄層クロマトグラフィー基体、木製スティック、セルロース、綿、ポリエチレン、それらの組み合わせなど、を挙げることができる。別の関連した実施形態において、配列されたアレイ、マトリックス、又はマトリックスアレイにおいて前記材料上に本発明の化学薬品を堆積させることができる。
【0129】
関連した実施形態において、前記キットはさらに、標識されたTNFα、標識された抗TNFα薬、及び/又は標識された内部標準を検出する手段を含む。関連した実施形態において、前記キットはさらに、限定的でなく、蛍光標識検出、UV照射検出、又はヨウ素照射を含む検出手段を含む。関連した実施形態において、前記キットはさらに、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)装置を含む。関連した実施形態において、ニトロセルロース、シリカゲル、及びサイズ排除クロマトグラフ媒体から第一、第二、第三、及び第四の測定基体を選択する。関連した実施形態において、抗TNFα薬は、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。関連した実施形態において、標識されたTNFαはフルオロフォアで標識されたTNFαである。関連した実施形態において、試料は血清である。関連した実施形態において、抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から試料を得る。関連した実施形態において、自己抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。
【0130】
IV.本発明に関連した種類(species)の生理学的範囲及びレベル
REMICADE(商品名)を用いて治療される患者のREMICADE(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりREMICADE(商品名)約1〜10mgの範囲にある。或る実施形態において、REMICADE(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりREMICADE(商品名)3〜8mgの範囲にある。或る他の実施形態において、REMICADE(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりREMICADE(商品名)約5mgである。
【0131】
REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)の典型的な用量は、1mL当たり約0.05μg〜約80μgの範囲にある。或る実施形態において、REMICADE(商品名)の用量は1mL当たり約0.05μg〜約50μgの範囲にある。或る他の実施形態において、REMICADE(商品名)の用量は1mL当たり約0.05μg〜約30μgである。或る実施形態において、REMICADE(商品名)の用量は1mL当たり約30μgである。或る他の実施形態において、REMICADE(商品名)の用量は1mL当たり約50μgである。
【0132】
HUMIRA(商品名)を用いて治療される患者のHUMIRA(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりHUMIRA(商品名)約0.1〜10mgの範囲にある。或る実施形態において、HUMIRA(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりHUMIRA(商品名)0.1〜8mgの範囲にある。或る他の実施形態において、HUMIRA(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりHUMIRA(商品名)約1mgの範囲にある。或る実施形態において、HUMIRA(商品名)の治療有効レベルは、患者体重1kg当たりHUMIRA(商品名)約0.8mgである。
【0133】
HUMIRA(商品名)の典型的な用量は、1mL当たり約0.05μg〜約150μgの範囲にある。或る実施形態において、HUMIRA(商品名)の用量は1mL当たり約0.05μg〜約100μgの範囲にある。或る他の実施形態において、HUMIRA(商品名)の用量は1mL当たり約0.05μg〜約50μgである。或る実施形態において、HUMIRA(商品名)の用量は1mL当たり約30μgである。或る実施形態において、HUMIRA(商品名)の用量は1mL当たり約32μgである。或る他の実施形態において、HUMIRA(商品名)の用量は1mL当たり約50μgである。
【0134】
V.典型的な疾病及びその治療のための治療抗体
或る実施形態において、本発明は治療モノクローナル抗体を用いることができる。表1は、承認されている又は現在開発中である治療モノクローナル抗体の典型的なリストを提供する。臨床開発中のモノクローナル抗体治療薬及び承認製品の広範なリストは、「418 Biotechnology Medicines in Testing Promise to Bolster the Arsenal Against Disease」と題された2006 PhRMA Reportに開示されている。
【0135】
とりわけ好ましい治療抗体として、限定的でなく、抗TNFαモノクローナル抗体、例えば、(1)Remicade(商品名)(インフリキシマブ)、マウス−ヒトIgGI−カッパ抗TNFαモノクローナル抗体、(2)Enbrel(商品名)(エタネルセプト)、ヒトTNF受容体2とヒトIgGIとの融合タンパク質、及び(3)Humira(商品名)(アダリムマブ)、完全ヒトIgG1−カッパ抗TNFαモノクローナル抗体など、を挙げることができる。2つの他の抗TNFα抗体構築物は、同じ疾病の一部を有する患者において重要なフェーズIII試験で有望性を示した:(4)Cimzia(商品名)CDP870(セルトリズマブ ペゴル)、ヒト化抗TNFαモノクローナル抗体のペグ化Fab断片、及び(5)CNTO148(ゴリムルナブ(golimlunab))、完全ヒトIgGI−カッパ抗TNFαモノクローナル抗体。
【0136】
好ましい種類の治療抗体は、多くの自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、重度(severe)乾癬、慢性ブドウ膜炎、重度サルコイドーシス、及びウェゲナー肉芽腫症など、の治療に用いられる抗TNFα単鎖モノクローナル抗体である。
【0137】
本発明は、抗TNFαのバイオアベイラビリティ/濃度を決定するのに有用であることに加えて、例えば、治療又は診断の目的などで、体内で用いられた任意の治療抗体のバイオアベイラビリティ/濃度を決定することに用いるのにも適している。以下の表1はインビボで用いられる種々の治療モノクローナル抗体と相関する医療的適応の一覧も提供する。
【0138】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、治療抗体に対する自己抗体の存在又は濃度レベルの決定に用いるのに適している。
【0139】
従って、本発明は、治療(又は診断)が被験者に治療抗体を投与することを含む治療を最適化する方法に用いることができる。前記方法は、本明細書中で言及した疾病又は疾患1種又は2種以上の治療(又は診断)を最適化するためのものであることができ、該疾病又は疾患は下記の1種又は2種以上を含む:
【0140】
感染症、例えば、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、HIV、炭疽、カンジダ症、ブドウ球菌感染、C型肝炎など。
【0141】
自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ、クローン病、B細胞非ホジキンリンパ腫、多発性硬化症(Multiple scleorisis)、SLE、強直性脊椎炎、狼瘡、乾癬性関節炎、エリテマトーデス(erythematosus)など。
【0142】
炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(juvenile idiopatmc arthritis)、強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、重度乾癬、慢性ブドウ膜炎、サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症、及び中心的特徴として炎症を伴う他の疾患など。
【0143】
血液疾患、例えば、敗血症、敗血性ショック、発作性夜間血色素尿症、及び溶血性尿毒症症候群など。
【0144】
癌、例えば、結腸直腸癌、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病、未分化大細胞リンパ腫、頭頸部の扁平上皮細胞癌、HER2過剰発現転移性乳癌の治療、急性骨髄性白血病、前立腺癌(例えば、腺癌)、小細胞肺癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、固形腫瘍、乳癌、早期HER2陽性乳癌、第一選択の非扁平上皮NSCLC癌、AML、ヘアリー細胞白血病、神経芽腫、腎癌、脳腫瘍、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨転移、SCLC、頭/頸部癌、第一選択の膵臓癌、SCLC、NSCLC、頭部及び頸部の癌、血液系及び固形腫瘍、進行性固形腫瘍、消化管癌、膵癌、皮膚T細胞性リンパ腫、非皮膚T細胞性リンパ腫、CLL、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、メソテリン発現腫瘍、膠芽細胞腫、転移性膵臓、血液悪性腫瘍、皮膚未分化大細胞MAbリンパ腫、AML、骨髄異形成症候群など。
【0145】
循環器疾病、例えば、アテローム性動脈硬化症急性心筋梗塞、心肺バイパス、アンギナなど。
【0146】
代謝疾患、例えば、糖尿病、例えば、I型糖尿病など。
【0147】
消化器疾患、例えば、クローン病、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)病、潰瘍性大腸炎など。
【0148】
眼疾患、例えば、ブドウ膜炎など。
【0149】
遺伝的疾患、例えば、発作性夜間血色素尿症(PNH)など。
【0150】
神経学的疾患、例えば、変形性関節症の痛み及びアルツハイマー病など。
【0151】
呼吸器疾患、例えば、呼吸器疾病、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD、鼻ポリープ症、小児喘息など。
【0152】
皮膚疾患、例えば、慢性の中等度から重度のプラーク乾癬を含む、乾癬など。
【0153】
移植片拒絶、例えば、急性腎臓移植拒絶反応、心臓及び肝臓移植拒絶反応の逆転(reversal)、腎臓移植拒絶反応の防止、急性腎臓移植拒絶反応の予防、腎臓移植拒絶反応など。
【0154】
他の疾患、例えば、虫垂炎の診断、腎炎、閉経後骨粗しょう症(骨疾患)、過好酸球増加症候群、好酸球性食道炎及びピーナッツアレルギーなど。
【0155】
1つの実施形態において、疾病は、上記群の特定の疾病及び疾患の1つ又は2つ以上から選択される。
【表1】








【0156】
VI.治療及び治療のモニタリング
本明細書に記載の方法に従って、抗TNFα薬治療を受けている被験者の診断又は予後診断が決定されれば、又は、TNFαが病態生理に関与するとされている疾病及び疾患、例えば、限定的でなく、ショック、敗血症、感染、自己免疫疾患、RA、クローン病、移植片拒絶及び移植片対宿主病、と診断された個体における抗TNFα薬に対する応答の可能性が予測されれば、本発明はさらに、その診断、予後診断、又は予測に基づく治療過程を推奨することを含んでいることができる。或る場合に、本発明はさらに、TNF−αが病態生理に関与するとされている疾病及び疾患と関連した1種又は2種以上の症状を治療するのに有効な抗TNFα薬の治療的有効量をその個体に投与することを含んでいることができる。治療適用のために、抗TNFα薬は単独で又は追加の抗TNFα薬1種又は2種以上及び/又は抗TNFα薬に関連した副作用を低減する薬剤(例えば、免疫抑制薬)1種又は2種以上と組み合わせて同時投与することができる。抗TNFα薬の例は本明細書中に記載したが、その例として限定的でなく、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、生物学的薬剤、通常の薬剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。このようにして、本発明は好適に、治療決定を導きそして適正な薬剤が適正な患者に適正な時間に与えられるように抗TNFα薬に対する最適化及び治療選択を知らせることによって臨床医が「個別化医療」を行うことを可能にする。
【0157】
抗TNFα薬は、必要に応じて適当な医薬賦形剤と共に投与することができ、そして任意の許容される投与方法によって行うことができる。従って、投与は、例えば、静脈内、局所的、皮下的、経皮的(transcutaneous)、経皮性(transdermal)、筋肉内、経口的、経頬的、舌下、歯内、経口蓋、関節内、非経口的、動脈内、皮内、心室内(intraventricular)、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、膣内又は吸入によるものであることができる。「同時投与」とは、抗TNFα薬を、第二薬(例えば、別の抗TNFα薬、抗TNFα薬の副作用を低減するのに有用な薬剤など)と同時に、その直前に、又はその直後に投与することを意味する。
【0158】
治療的有効量の抗TNFα薬は、繰り返して、例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、又は9回以上にわたり投与することができ、又はその用量を持続点滴によって投与することができる。投与は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、又は液体の剤形、例えば、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液、乳濁液、坐剤、停留浣腸、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、エアロゾル、フォーム(foams)等の形態を、好ましくは、正確な投与量の単一投与に適した単位剤形でとることができる。
【0159】
用語「単位剤形」は、本明細書中で用いる場合、ヒト被験者及び他の哺乳動物に対する単位投与量として適当な物理的に個別の単位を含み、各単位は、望ましい作用発現、忍容性、及び/又は治療効果をもたらすように計算された所定量の抗TNFα薬を適当な医薬賦形剤と共に含む(例えば、アンプル)。さらに、より濃厚にされた剤形を製造することができ、次にその剤形からより希釈された単位剤形を調製することができる。このように、より濃厚にされた剤形は、抗TNFα薬の量より実質的に多い量、例えば、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれを超える倍数の量を含む。
【0160】
前記のような剤形の製造方法は当業者に公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)参照)。剤形は、典型的には、通常の薬剤学的担体又は賦形剤を含んでおりそしてさらに他の医薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織透過促進剤(tissue permeation enhancer)、可溶化剤などを含んでいることができる。適切な賦形剤は、当該技術分野で周知の方法によって、特定の剤形及び投与経路に合せることができる(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、前出)。
【0161】
適当な賦形剤の例として、限定的でなく、ラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸、例えば、Carbopol、例えば、Carbopol 941、Carbopol 980、Carbopol 981等を挙げることができる。剤形はさらに、潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油など;湿潤剤;乳化剤;懸濁剤;保存剤、例えば、メチル−、エチル−、及びプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(すなわち、パラベン)など;pH調整剤、例えば、無機及び有機の酸及び塩基;甘味料;及び香味料を含んでいることができる。剤形は、生分解性ポリマビーズ、デキストラン、及びシクロデキストリン包接錯体も含んでいることができる。
【0162】
経口投与について、治療的に有効な投与は、錠剤、カプセル剤、乳濁液、懸濁液、水剤、シロップ剤、噴霧剤、ロゼンジ、散剤、及び徐放性製剤の形態であることができる。経口投与に適した賦形剤として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカン、セルロース、グルコース、ゼラチン、ショ糖、及び炭酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0163】
或る実施形態において、治療的に有効な投与は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態をとり、そしてこのように、剤形は抗TNFα薬と共に、任意の以下の成分を含んでいることができる:希釈剤、例えば、ラクトース、ショ糖、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えば、デンプン又はその誘導体など;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム等;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体など。抗TNFα薬は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体中に配置された(disposed)坐剤に製剤化することもできる。
【0164】
液体剤形は、担体、例えば、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム0.9%w/v)、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等の中に抗TNFα薬及び場合により1種又は2種以上の薬剤学的に許容することのできるアジュバントを溶解又は分散させて、例えば、経口的、局所的、又は静脈内投与のための、溶液又は懸濁液を形成することにより製造することができる。抗TNFα薬は、停留浣腸に製剤化することもできる。
【0165】
局所的投与について、治療的に有効な投与は、乳濁液、ローション、ゲル、フォーム、クリーム、ゼリー、水剤、懸濁液、軟膏、及び経皮パッチの形態であることができる。吸入による投与について、抗TNFα薬は乾燥粉末として又はネブライザーを介して液体の形態で送達することができる。非経口的投与について、治療的に有効な投与は、滅菌された注射溶液及び滅菌包装された散剤の形態であることができる。好ましくは、注射溶液は、pH約4.5〜約7.5で製剤化される。
【0166】
治療的に有効な投与は、凍結乾燥された形態で提供することもできる。かかる剤形は、投与前の再構成のために、緩衝剤、例えば、炭酸水素塩、を含んでいることができ、又は、例えば、水による再構成のために凍結乾燥の剤形中に緩衝剤を含んでいることができる。凍結乾燥の剤形はさらに、適当な血管収縮剤、例えば、エピネフリン、を含んでいることができる。凍結乾燥の剤形は、再構成された剤形を直ちに個体に投与することができるように、場合により再構成用の緩衝剤と一緒に包装されたシリンジにより提供することができる。
【0167】
病態生理においてTNFαが関与するとされる疾病及び疾患の治療に対する治療的使用において、抗TNFα薬は初回投与量一日当たり約0.001mg/kg〜約1000mg/kgで投与することができる。一日量範囲で約0.01mg/kg〜約500mg/kg、約0.1mg/kg〜約200mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、又は約10mg/kg〜約50mg/kgを用いることができる。しかしながら、投与量は、個体、疾病、疾患、又は症状の重症度、及び用いられる抗TNFα薬の要件に基づいて変化させることができる。例えば、本明細書に記載の方法に従って疾病、疾患、及び/又は症状の種類及び重症度を考慮して投与量を経験的に決定することができる。本発明に照らすと、個体に投与される用量は、その個体において経時的に有利な治療応答を与えるのに充分な量であるべきである。投与量の大きさは、個体における特定の抗TNFα薬の投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定することもできる。特定の状態に対する適正な投与量の決定は、医師の技能の範囲内である。一般に、治療は、抗TNFα薬の最適用量より少ない低用量で開始される。その後、状況に応じて最適な効果が達成されるまで投与量は少しずつ増やされる。便宜のために、望ましい場合には、一日の全投与量をその一日間でいくつかの部分に分けて投与することができる。
【0168】
用語「抗TNFα薬」は、本明細書中で用いる場合、病態生理においてTNF−αが関与するとされる疾病及び疾患と関連した1種又は2種以上の症状を治療するのに有効な薬剤の薬剤学的に許容することのできるあらゆる形態を包含する。例えば、抗TNFα薬は、ラセミ又は異性体混合物、又はイオン交換樹脂に結合した固体複合体(solid complex)等であることができる。さらに、抗TNFα薬は溶媒和物の形態であることができる。この用語は、記載されている抗TNFα薬の薬剤学的に許容することのできるあらゆる塩、誘導体、及び類似体だけでなく、それらの組み合わせも含むことも意図している。例えば、抗TNFα薬の薬学的に許容することのできる塩として、限定的でなく、その酒石酸塩、コハク酸塩、タルタレート(tartarate)、バイタルタレート(bitartarate)、二塩酸塩、サリチル酸塩、ヘミコハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、塩酸塩、カルバミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及び安息香酸塩の形態だけでなく、それらの組み合わせ等も挙げることができる。任意の形態の抗TNFα薬、例えば、抗TNFα薬の薬剤学的に許容することのできる塩、抗TNFα薬の遊離塩基、又はそれらの混合物が本発明の方法に用いるのに適している。適当な抗TNFα薬の例として、限定的でなく、生物学的薬剤、通常の薬剤、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0169】
治療薬は、例えば、抗サイトカイン及びケモカイン抗体、例えば、抗腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)抗体などを含む。抗TNFα抗体の限定的でない例として以下を挙げることができる:キメラモノクローナル抗体、例えば、キメラIgG1抗TNFαモノクローナル抗体である、インフリキシマブ(Remicade(商標))(Centocor社;ペンシルバニア州ホーシャム)など;ヒト化モノクローナル抗体、例えば、CDP571及びペグ化されたCDP870など;完全ヒトモノクローナル抗体、例えば、アダリムマブ(Humira(商標))(Abbott Laboratories社;イリノイ州アボットパーク)など;p75融合タンパク質、例えば、エタネルセプト(Enbrel(商標))(Amgen社;カリフォルニア州サウザンドオークス;Wyeth Pharmaceuticals社;ペンシルバニア州カレッジビル)、小分子(例えば、MAPキナーゼ阻害剤);及びそれらの組み合わせ。Ghosh, Novartis Found Symp., 263:193-205 (2004)参照。
【0170】
他の生物学的薬剤として、例えば、抗細胞接着(anti-cell adhesion)抗体、例えば、細胞接着分子α4−インテグリンに対するヒト化モノクローナル抗体である、ナタリズマブ(Tysabri(商標))(Elan Pharmaceuticals社;アイルランド ダブリン;Biogen Idec社;マサチューセッツ州ケンブリッジ)、及びヒト化IgG1抗α4β7−インテグリンモノクローナル抗体である、MLN−02(Millennium Pharmaceuticals社;マサチューセッツ州ケンブリッジ)など;抗T細胞剤;抗CD3抗体、例えば、ヒト化IgG2M3抗CD3オノクローナル抗体(onoclonal antibody)である、ビシリズマブ(Nuvion(商標))(PDL BioPharma社;ネバダ州インクラインビレッジ)など;抗CD4抗体、例えば、キメラ抗CD4モノクローナル抗体である、プリリキシマブ(cM−T412)(Centocor社;ペンシルバニア州ホーシャム)など;抗IL−2受容体アルファ(CD25)抗体、例えば、ヒト化IgG1抗CD25モノクローナル抗体である、ダクリズマブZenapax(商標))(PDL BioPharma社;ネバダ州インクラインビレッジ;Roche社;ニュージャージー州ナットリー)、及びキメラIgG1抗CD25モノクローナル抗体である、バシリキシマブ(Simulect(商標))(Novartis社;スイス、バーゼル)など;それらの組み合わせを挙げることができる。
【0171】
周期的な時間間隔で個体を監視して、該個体の試料から診断、予後診断及び/又は予測情報が得られれば所定の治療レジメンの効果を評価することもできる。例えば、治療抗体及び/又は該治療抗体に向けられた(directed to)自己抗体の存在又は濃度レベルは、治療抗体を用いた治療の治療効果に基づいて変化することがある。或る場合には、患者を監視して、個別化されたアプローチにおける応答を評価し及び所定の薬剤又は治療の効果を理解することができる。さらに、患者は薬剤に応答しないこともあるが、抗体レベルが変化することがあり、このことはこれらの患者が患者の抗体レベルによって同定することができる特別な集団(応答を示さない)に属していることを示唆する。これらの患者には、目下の治療を中止し、そして代わりの治療を処方することができる。
【0172】
周期的な時間間隔で個体を監視して、種々の抗体の濃度又はレベルを評価することもできる。種々の時点での抗体レベル、並びに抗体レベルの経時的な変化率は重要である。或る場合には、個体における閾値量を超えた1種又は2種以上の抗体(例えば、抗TNFα抗体に対する自己抗体)の増加率は、該個体が有意に高い合併症を発現するリスク又は副作用のリスクを有していることを示す。マーカー速度(すなわち、或る時間期間にわたる抗体レベルの変化)の形で連続的な検査から得られる情報は、疾病の重症度、疾病の合併症のリスク、及び/又は副作用のリスクと関連づけることができる。
【0173】
本発明の方法は、例えば、治療モノクローナル抗体を用いた治療に対して、一次(primary)無応答者又は低応答者を同定することも備えている。これらの一次無反応者又は低反応者は、例えば、治療薬に対する先天性の又は前に発現した(pre-developed)イムノグロブリン応答を偶然に有している患者であることがある。治療薬が診断用抗体である場合、一次無応答者又は低応答者の同定は、各個別患者に対する適当な治療薬の選択を確実にすることができる。
【0174】
本発明に係る方法は、例えば、二次応答不全(secondary response failure)を有する患者を同定するのに用いることができる。二次応答不全は無症候性であることがあり、すなわち、治療の効果が低下してきた又は効果がなくなったことが唯一の徴候となる。或る場合に、本発明の方法は、患者又は医師が治療効果が少ないことに気付くより前に二次応答不全の発現を同定するのに有効である。より多量の治療投与量を付与して正確なインビボ濃度が達成されることを確実にすることができ、又は代わりの治療を選択することができ、又はそれらを組み合わせることができる。治療薬が診断薬である場合、二次応答不全の発現はとりわけ取り返しのつかない(catastrophic)ことになることがある。疾病/薬剤のサイズ及び/又は位置を決定することが、例えば、いずれかの二次転移の存在及び/又は位置を同定するのに、重要である場合、癌などの疾病、及び一部の感染症の監視に放射標識されたモノクローナル抗体がルーチン的に用いられる。気付かずに応答不全(一次又は二次)の発現が生じている場合、患者は「問題なしという診断(all clear)」、すなわち、誤った陰性結果を受けることがあり、これは治療の中止を導いて今後の疾病の再発を招き、疾病がずっと進行してしまい場合によっては治療することのできない状態となることがある。
【0175】
別のカテゴリーの応答不全は、不利な副作用と関連した(例えば、二次)応答不全の発現である。被験者における宿主免疫応答の発現は有害な又は不快な副作用を伴うことがある。これらは、ヒト又はヒト化治療薬を認識するが他の宿主イムノグロブリンとの間の識別ができない抗体の発現によって引き起こされることがある。従って、本発明の方法は、前記治療薬に対する先天性の又は前に発現したイムノグロブリン応答のいずれかを有する被験者及び、例えば、応答不全に関連した不利な副作用を受けやすいことがある被験者を同定するのに適している。
【0176】
本発明の方法は、患者へのモノクローナル治療薬の投与を伴う治療レジメンの選択及び管理に適している。従って、本明細書中に記載した治療抗体の濃度又はバイオアベイラビリティを決定する方法を、疾病又は疾患の治療方法に組み込むことができる。治療的処置の過程の間に本発明の方法を用いて患者の免疫学的状態を監視することによって、高価な治療薬をコスト効果的に用いることを確保しながら、患者に最大の治療利益を保証できるように治療薬の選択及び/又は投与を適合させることができる。
【0177】
本発明の方法を用いて、患者が治療薬(例えば、治療抗体)の変更された投与量レジメン又は代わりの医薬治療のいずれを必要としているかを決定することができる。
【0178】
本発明の方法はさらに、患者の治療薬(例えば、治療抗体)の血清濃度又はバイオアベイラビリティの周期的評価を含んでいることができる。
【0179】
本発明の方法は、被験者が治療抗体などの治療薬に対する免疫応答を発現したか否かを決定する工程も備えている。
【0180】
本発明の方法は、患者における治療応答の欠如が治療抗体、例えば、抗TNFα抗体など、に対する患者由来のイムノグロブリンの形成によるものか否かを決定することも備えている。
【0181】
本発明はさらに、治療抗体を用いて治療することのできる疾病を患う患者に対して適切な薬剤治療を選択する方法を備えている。
【0182】
本発明は、患者が治療抗体に二次応答不全を発現するか否かの可能性を決定する予後診断方法も備えている。
【0183】
VII.実施例
特定の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は説明の目的で提供するものであり、いかなる仕方によっても本発明を限定しようとするものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果を得るように変更し又は改変することができる種々の非臨界的パラメータを容易に認識するであろう。
【0184】
実施例1.抗TNFα生物学的製剤のレベルを測定するための新規なモビリティシフトアッセイ
本例は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて蛍光標識されたTNFαへの抗TNFα薬の結合を検出する、患者試料(例えば、血清)中の抗TNFα薬濃度を測定するための新規なホモジニアスアッセイを説明する。このアッセイは、洗浄工程の必要をなくし、バックグランド及び血清干渉の問題を低減させる可視及び/又は蛍光スペクトルによる検出を可能にするフルオロフォアを使用し、高感度の蛍光標識検出によって低力価で患者中の抗TNFα薬を検出する能力を増大させ、そして液相反応として生じることによって、ELISAプレートなどの固体表面への結合によるエピトープの任意の変化の機会を低減させるので、有利である。
【0185】
1つの典型的な実施形態によれば、フルオロフォア(例えば、Alexa647)を用いてTNFαを標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はそれらの双方によって検出することができる。標識されたTNFαを液相反応によりヒト血清とインキュベートして、血清中に存在する抗TNFα薬を結合させる。標識されたTNFαを液相反応により既知量の抗TNFα薬とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識されたTNFαへの抗TNFα薬の結合は、標識されたTNFα単独に比べてピークを左側にシフトさせる。次いで、血清試料中に存在する抗TNFα薬の濃度を検量線及び対照と比べることができる。
【0186】
図1は、サイズ排除HPLCを用いてTNFα−Alexa647とHUMIRA(商品名)(アダリムマブ)との結合を検出する本発明のアッセイの例を示している。図1に示すように、TNFα−Alexa647へのHUMIRA(商品名)の結合は、TNFα−Alexa647のピークを左側へシフトさせた。
【0187】
図2は、TNFα−Alexa647へのHUMIRA(商品名)の結合の用量反応曲線を示す。とりわけ、図2Aは、サイズ排除クロマトグラフィーアッセイにおいてHUMIRA(商品名)が用量依存的にTNFα−Alexa647のシフトを増加させたことを示す。図2Bは、1%ヒト血清の存在がサイズ排除クロマトグラフィーアッセイにおいてTNFα−Alexa647のシフトに有意な影響を及ぼさなかったことを示す。図2Cは、プールされたRF陽性血清の存在がサイズ排除クロマトグラフィーアッセイにおいてTNFα−Alexa647のシフトに有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
【0188】
このように、本例は、HUMIRA(商品名)などの抗TNFα薬を受けている患者を監視して:(1)適切な薬剤投与量の決定に導き;(2)薬剤の薬物動態を評価し、例えば、薬剤が体内からどれだけ急速に排出されていくかを決定し;及び(3)治療法、例えば、目下の抗TNFα薬から異なるTNFα阻害剤へ又は別の種類の治療へ切り替えるか否か、の決定を導く上での本発明の有用性を示している。
【0189】
実施例2.HACA及びHAHAレベルを測定するための新規なモビリティシフトアッセイ
本例は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて蛍光標識された抗TNFα薬への自己抗体(例えば、HACA及び/又はHAHA)の結合を検出して、患者試料(例えば、血清)中の前記自己抗体濃度を測定するための新規なホモジニアスアッセイを説明する。このアッセイは、低親和性のHACA及びHAHAを除去する洗浄工程の必要をなくし、バックグランド及び血清干渉の問題を低減させる可視及び/又は蛍光スペクトルによる検出を可能にするフルオロフォアを使用し、高感度の蛍光標識検出によって低力価で患者中のHACA及びHAHAを検出する能力を増大させ、そして液相反応として生じることによって、ELISAプレートなどの固体表面への結合によるエピトープの任意の変化の機会を低減させるので、有利である。
【0190】
TNFα阻害剤に対して産生される自己抗体(例えば、HACA、HAHA等)を測定することの臨床的有用性は、インフリキシマブ1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgを用いて治療された慢性関節リウマチの患者の53%、21%、及び7%にHACAが検出されたという事実によって説明される。インフリキシマブをメトトレキセートと組み合わせた場合、抗体の発生率は下がって15%、7%、及び0%となったが、このことは併用の免疫抑制治療が抗薬剤応答を低下させるのに効果的であることを示しているが、高用量の抗TNFα薬は耐性を生じさせることがあることも示している。クローン病において、さらに高い発生率が報告された;5回の注入後、61%の患者がHACAを有していた。HACAが存在する場合には臨床応答が短縮化された。Rutgeerts, N. Engl. J. Med., 348:601-608 (2003)参照。155人の患者において2005年から2008年の3年間の期間にわたり測定されたインフリキシマブ及びHACAレベルの遡及研究は、炎症性腸疾患の患者の22.6%(N=35)にHACAが検出されたことを示した。Afif et al., “Clinical Utility of Measuring Infliximab and Human Anti-Chimeric Antibody Levels in Patients with Inflammatory Bowel Disease”; Digestive Disease Weekに示された論文;May 30-June 3, 2009; Chicago, IL参照。著者らは、臨床症状だけに基づいて治療法を変更することは不適切な管理に帰することがあると結論した。
【0191】
このホモジニアスモビリティシフトアッセイは、患者試料中の自己抗体(例えば、HACA及び/又はHAHA)濃度を測定するための図3に示した架橋アッセイなどの現行法より有利であるが、それは本発明の方法が、ELISAプレート由来の固相干渉及び非特異的結合なしに、抗TNFα薬由来の干渉(例えば、架橋アッセイの場合、抗TNFα薬トラフレベルにおいてHACA測定を行わなければならない)なしに、かつ抗体の多価(multivalency)への依存性(例えば、IgG4抗体は、IgG4抗体がバイスペシフィックであり同一の抗原を架橋することができないので架橋アッセイを用いて検出されない)なしに、HACAなどの自己抗体の濃度を測定することができるからである。このように、本発明は、現行法に勝る少なくとも以下の利点を有する:固体表面への抗原の結合を回避し(変性回避);IgG4効果(effect)を除去し;治療抗体トラフ問題を克服し;弱親和性を有する抗体を検出し;無関係のIgG類の非特異的結合を除去し;そして検出の感度及び特異性を高める。
【0192】
1つの典型的な実施形態において、抗TNFα薬(例えば、REMICADE(商品名))をフルオロフォア(例えば、Alexa647)で標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はそれらの双方で検出することができる。液相反応により標識された抗TNFα薬をヒト血清とインキュベートして、血清中に存在するHACA及びHAHAを結合させる。液相反応により標識された抗TNFα薬を既知量の抗IgG抗体とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識された抗TNFα薬への自己抗体の結合は、標識された薬剤単独に比べてピークの左側へのシフトを生じさせる。次いで、血清試料中に存在するHACA及びHAHAの濃度を検量線及び対照と比較することができる。図4は、REMICADE(商品名)に対して産生されたHACA/HAHAの濃度を測定するための本発明の自己抗体検出アッセイの典型的な概略を示す。或る場合に、高いHACA/HAHAレベルは、REMICADE(商品名)を用いた目下の治療をHUMIRA(商品名)などの別の抗TNFα薬に切り替えるべきことを示している。
【0193】
このアッセイの原理は、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)上での抗体結合したAlexa647標識されたREMICADE(商品名)複合体対フリーのAlexa647標識されたREMICADE(商品名)の、複合体の分子量の増加によるモビリティシフトに基づく。
【0194】
本例のクロマトグラフィーは、分子量分画範囲5,000〜70,000及び移動相1X PBS、pH7.4、流速0.5mL/minを有し650nmにおけるUV検出を備えたBio−Sep 300x7.8mm SEC−3000カラム(Phenomenex社)を用いて、Agilent−1200HPLCシステムにより実施した。Bio−Sep 300x7.8mmを用いたAgilent−1200HPLCシステムの前のSEC−3000カラムは、BioSep 75x7.8mm SEC−3000である分析用プレカラムである。各分析に対して、試料体積100μLをカラム上にロードする。
【0195】
SE−HPLC分析の前に1X PBS、pH7.3の溶出バッファ中で室温において1時間にわたり既知量の抗体とAlexa647標識されたREMICADE(商品名)とをインキュベートすることによって、抗体結合したAlexa647標識されたREMICADE(商品名)複合体を形成する。
【0196】
図5は、本発明のサイズ排除クロマトグラフィーアッセイを用いて検出された、REMICADE(商品名)−Alexa647への抗ヒトIgG抗体結合の用量反応分析を示す。REMICADE(商品名)−Alexa647への抗IgG抗体の結合は、REMICADE(商品名)−Alexa647のピークを左側へシフトさせた。図6は、本発明のサイズ排除クロマトグラフィーアッセイを用いて検出された、REMICADE(商品名)−Alexa647への抗ヒトIgG抗体結合の第二の用量反応分析を示す。より多量の抗IgG抗体は、REMICADE(商品名)−Alexa647のピークの左側へのシフトによって示されるように、抗IgG/REMICADE(商品名)−Alexa647の複合体の形成の用量依存性の増加をもたらした。図7は、REMICADE(商品名)−Alexa647への抗IgG抗体結合の用量反応曲線を示す。
【0197】
図8は、注入試料100μLで本発明のサイズ排除クロマトグラフィーアッセイを用いて検出された正常ヒト血清及びHACA陽性血清中のREMICADE(商品名)−Alexa647免疫複合体形成を示す。図8に示すように、患者試料中に存在するHACAのREMICADE(商品名)−Alexa647への結合は、REMICADE(商品名)−Alexa647のピークを左側へシフトさせた。このように、本発明のサイズ排除クロマトグラフィーアッセイは、REMICADE(商品名)の存在下でHACAを測定し、患者が治療中の間に利用することができ、弱いHACA結合及び強いHACA結合の双方を測定し、ミックスアンドリードモビリティシフトアッセイであり、そして標識されたREMICADE(商品名)を用いてHACA及びREMICADE(商品名)と平衡化する(equilibrate)他のアプローチまで拡張することができるので、とりわけ有利である。
【0198】
図9は、架橋アッセイ及び本発明のモビリティシフトアッセイを用いて実施した20の患者血清試料からのHACA測定の要約を提供する。この比較試験は、本発明の方法が現行法より高い感度を有していることを示しているが、その理由は架橋アッセイを用いて測定した場合にHACA陰性であった3つの試料が本発明のモビリティシフトアッセイを用いて測定すると実際にはHACA陽性であったからである(患者番号SK07070305、SK07070595、及びSK07110035参照)。
【0199】
このように、本例は、抗TNFα薬(例えば、REMICADE(商品名))を受けている患者を監視して薬剤に対する自己抗体(例えば、HACA及び/又はHAHA)の存在又はレベルを検出することにおける本発明の有用性を証明するものであるが、それはかかる免疫応答が薬剤を用いたさらなる治療を妨げる抗TNFα薬の薬物動態及び生体内分布における劇的な変化及び過敏性反応と関連していることがあるからである。
【0200】
結論として、実施例1及び2は、Alexa647を用いてTNFα及び抗TNFα抗体を有効に標識することができることを示している。標識されたTNFα−Alexa647を抗TNFα抗体とインキュベートした場合、標識されたTNFα/抗TNFα薬複合体のリテンションタイムはシフトされ、そして該シフトを生じさせた抗TNFα薬の量はHPLCを用いて定量化することができた。さらに、標識された抗TNFα薬を抗ヒトIgG抗体とインキュベートした場合、標識された抗TNFα薬/抗IgG抗体複合体のリテンションタイムはシフトされ、そして該シフトを生じさせた抗IgG抗体の量はHPLCを用いて定量化することができた。さらに、アッセイ系における少ない血清量(low serum content)はHPLC分析にほとんど影響を及ぼさないことが示された。最後に、抗TNFα薬及びHACA/HAHAアッセイについて検量線を作成することができ、それを用いて患者血清中の抗TNFα薬又はHACA/HAHAレベルを定量化することができた。有利なことに、本発明は或る側面において、モビリティーシフトアッセイ、例えば、薬剤及び該薬剤に対する抗体の双方を測定すべく開発されたホモジニアスミックスアンドリードアッセイなど、を提供する。抗TNFα生物学的製剤であるREMICADE(商品名)及びHUMIRAについての検量線を作成し、そしてREMICADE(商品名)に対するHACA抗体についての検量線も作成した。このモビリティーシフトアッセイフォーマットは、ELISAとは異なり、固体表面への抗原のコーティングを排除しそして無関係なIgG類の非特異的結合による影響を受けない。アッセイフォーマットは単純であるが、極めて感度が高いのであらゆる抗TNFα生物学的薬剤(例えば、REMICADE(商品名)、HUMIRA、Enbrel及びCimzia)並びに患者血清中の中和抗体(抗REMICADE(商品名))を検出するのに用いることができる。
【0201】
実施例3.新規なモビリティシフトアッセイを用いた患者血清中のヒト抗キメラ抗体(HACA)及びインフリキシマブ(IFX)レベルの測定
要約
背景:インフリキシマブ(IFX)は、自己免疫疾患、例えば、慢性関節リウマチ(RA)及び炎症性腸疾患(IBD)など、を治療するのに有効であることが示されているTNFαに対するキメラモノクローナル抗体治療薬である。しかしながら、ヒトキメラ抗体(HACA)の検出を通して一部のIFX治療された患者にIFXに対する抗体が見出されたが、これは薬剤の効果を低下させまたは逆の作用を引き起こすことがある。個々の患者においてHACA及びIFXレベルを監視することは、IFXを用いた投薬及び治療を最適化するのに役立つことができる。HACAを検出するための現行法は固相アッセイであるが、これは循環血液中のIFXの存在がHACAの存在をマスクすることがあるという事実による制限があるので、IFXの投与の少なくとも8週間後にならないと測定することができない。さらに、この時間経過は、循環血液中の高分子量免疫複合体の急速なクリアランスのため、アッセイを混乱させる。これらの欠点を克服するため、本発明者らは、IFXを用いて治療された患者の血清中IFX及びHACAレベルを測定するための新規な方法を開発し評価した。
【0202】
方法:新規な非放射性標識で液相のサイズ排除(SE)−HPLCモビリティシフトアッセイを開発して、IFXを用いて治療された患者由来の血清中のHACA及びIFXレベルを測定した。免疫複合体(例えば、TNFα/IFX又はIFX/HACA)、フリーのTNFα又はIFX、及び結合/フリーの比を高感度で分解して計算することができる。種々の濃度のIFX又はプールHACA陽性血清とインキュベートすることによって作成した検量線を用いて血清中IFX又はHACA濃度を決定した。この新規なアッセイを用いて、本発明者らは、IFXを用いて治療された再発IBD患者から採取した血清中のIFX及びHACAレベルを測定しそして従来の架橋(Bridge)ELISAアッセイによって得られたそれらに関する結果と比較した。
【0203】
結果:高感度のこの新規なアッセイから用量反応曲線を作成した。過剰のIFXの存在下にHACAの検出が示された。IFXを用いて治療された患者由来の117の血清試料において、65の試料が検出限界を超えるIFXレベルを有していることが見出され、平均値は11.0+6.9mg/mLであった。HACAレベルについては、33(28.2%)の試料が陽性であることが見出されたが、一方で、架橋ELISAアッセイは24の陽性試料だけを検出した。本発明者らは、架橋アッセイによって決定された試料から9の誤(false)陰性及び9の誤陽性も同定した。IFX治療の過程の間に11人の患者でHACAレベルが増加したことを見出したと同時に、IFXレベルが有意に低下したことを見出した。
【0204】
結論:新規な非放射性標識で液相のモビリティシフトアッセイを開発して、IFXを用いて治療された患者由来の血清中のIFX及びHACAレベルを測定した。このアッセイは高い感度及び正確度を有しており、そして得られた結果は再現性があった。この新規なアッセイは、有利なことに、患者が治療中の間にHACA及びIFXを測定するのに用いることができる。
【0205】
序論
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)は、自己免疫疾患、例えば、クローン病(CD)及び慢性関節リウマチ(RA)など、の病因の中心的役割を演ずる。治療抗体、例えば、インフリキシマブ(ヒト−マウスキメラモノクローナルIgG1κ)又はアダリムマブ(完全ヒトモノクローナル抗体)など、を用いたTNFαの遮断はCD及びRAにおける疾病活性を低下させることが充分に実証されている。しかしながら、患者の約30〜40%は抗TNFα治療薬に対して応答せず、そして一部の患者は充分な応答の欠如のためにより多い用量又は投与頻度の調整を必要とする。個々の患者における薬剤バイオアベイラビリティ及び薬物動態の相違は、治療の失敗の原因となることがある。患者にHACA/HAHAを発現させる薬剤の免疫原性は、軽度のアレルギー反応からアナフィラキシーショックまでの範囲の有害反応を生じさせることがあった。これらの問題は今や、多くの研究者、薬剤管理機関(drug-controlling agencies)、健康保険会社、及び製薬会社によって認識されている。さらに、或る抗TNFα薬に対して二次応答不全の多くの患者は他の抗TNFα薬への切り替えから利益を得るが、このことは治療に用いられたタンパク質に対して特異的に指向された中和抗体の役割を示唆している(Radstake et al., Ann. Rheum. Dis., 68(11):1739-45 (2009))。従って、薬剤投与を個々の患者に合わせることができかつ患者に対するリスクをほとんど又は全く伴わずに効果的かつ経済的に長期の治療を施すことができるように薬剤及びHACA/HAHAについて患者を監視することが必要とされる(Bendtzen et al., Scand. J. Gastroenterol., 44(7):774-81 (2009))。
【0206】
幾つかの酵素結合免疫測定法を用いて循環血液中の薬剤及びHACA/HAHAのレベルが評価されてきた。図10は、HACAの測定に用いることができる現行のアッセイを本発明の新規なHACAアッセイと比較した要約を提供する。現行の方法の限界の1つは、循環血液中に測定することのできる量の薬剤が存在する場合に抗体レベルの測定が困難であるということである。IFXの投与の少なくとも8週間後でなければ測定を行うことができないHACA検出の現行の固相方法とは対照的に、本発明の新規なアッセイは、IFXを用いて治療されている間に患者由来の血清中のHACA及びIFXレベルを測定することができる非放射性標識で液相のサイズ排除(SE)−HPLCアッセイである。
【0207】
患者における抗TNFα生物学的薬剤及びTNFα生物学的薬剤に対する抗体の血清濃度を測定することについての論拠は以下の通りである:(1)臨床試験におけるPK研究に対し;(2)臨床試験の間にわたり生物学的薬剤に対する患者の免疫応答を監視することが;(3)HACA又はHAHAを測定することによって生物学的薬剤に対する患者の応答を監視して各患者に対する薬剤投与量を導くことが;及び(4)最初の薬剤がうまくいかないときは異なる生物学的薬剤に切り替えるためのガイドとして用いるために、FDAによって要求されることがある。
【0208】
方法
患者血清中のインフリキシマブ(IFX)レベルのSE−HPLC分析。製造業者の使用説明書に従って、ヒト組換え型TNFαをフルオロフォア(「Fl」、例えば、Alexa Fluor(商標)488)で標識した。標識されたTNFαを種々の量のIFX又は患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。FLDを用いてフリーのTNFα−Fl及び結合したTNFα−Fl免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。検量線から血清中のIFXレベルを計算した。
【0209】
患者血清中のHACAレベルのSE−HPLC分析。精製したIFXをFlで標識した。標識されたIFXを種々の希釈度のプールしたHACA陽性血清又は希釈した患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。FLDを用いてフリーのIFX−Fl及び結合したIFX−Fl免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。結合したIFX−FlとフリーのIFX−Flとの比を用いてHACAレベルを決定した。
【0210】
血清中のHACAを測定するためのモビリティシフトアッセイ手順。このアッセイの原理は、フリーのFl標識されたIFXに対するHACA結合したFl標識されたインフリキシマブ(IFX)複合体の、該複合体の分子量の増加によるサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)上でのモビリティシフトに基づく。このクロマトグラフィーは、分子量分画範囲5,000〜70,000及び移動相1X PBS、pH7.3、流速0.5mL/minを有しFLDを備えたBio−Sep 300x7.8mm SEC−3000カラム(Phenomenex社)を用いて、Agilent−1200HPLCシステムにより実施した。Bio−Sep 300x7.8mmを用いたAgilent−1200HPLCシステムの前のSEC−3000カラムは、BioSep 75x7.8mm SEC−3000である分析用プレカラムである。各分析に対して試料体積100μLをカラム上にロードする。SE−HPLC分析の前に1X PBS、pH7.3、溶出バッファ中で室温において1時間にわたりIFX治療された患者由来の血清及びFl標識されたIFXをインキュベートすることによってHACA結合したFl標識されたIFX複合体を形成する。
【0211】
結果
図11は、高分子量複合体のモビリティシフトによるフリーのIFX−FlからのHACA結合したIFX−Fl複合体の分離を示す。パネルc及びdからわかるように、蛍光ピークのリテンションタイムは21.8分から15.5〜19.0分へシフトした。反応混合物中にHACAが多く存在すればするほど、クロマトグラムにはより少ないフリーIFX−Flが残りそしてより多く免疫複合体が形成される。図12は、HACAの添加によって生じた蛍光ピークシフトの用量反応曲線を示す。HACA陽性試料を用いて、本発明者らは血清の1:1000希釈でピークシフトを検出することができた。
【0212】
図13は、高分子量複合体のモビリティシフトによるフリーのTNFα−FlからのIFX結合したTNFα−Fl複合体の分離を示す。パネルc及びdからわかるように、蛍光ピークのリテンションタイムは24分から13〜19.5分へシフトした。反応混合物中にIFXが多く存在すればするほど、クロマトグラムにはより少ないフリーのTNFα−Flが残りそしてより多く免疫複合体が形成される。図14は、IFXの添加によって生じたTNFα−Flピークシフトの用量反応曲線を示す。添加されたIFXに基づき、検出限界は血清中IFX10ng/mLである。
【0213】
架橋アッセイによって測定されたHACA陽性及び陰性患者由来の血清試料を試験することによって本発明の新規なモビリティシフトアッセイの妥当性確認を行った(表2)。このアッセイを用いて、本発明者らは、IFXを用いて治療された117人のIBD患者及び50人の健常被験者由来の血清試料を分析した。50の健常被験者試料全てが検出限界未満のIFXレベルを有しているのに対し、65の患者試料は平均IFX濃度11.0μg/mLを有している。表3は、架橋アッセイ及びモビリティシフトアッセイによって測定された健常対照及びIFXを用いて治療されたIBD患者の血清中のHACAレベルを示す。架橋アッセイはモビリティシフトアッセイより少ないHACA陽性患者及びより多い誤陰性並びにより多い誤陽性を検出した。
【表2】

【表3】

【0214】
図15は、IFX治療過程の間のIBD患者におけるHACAレベルとIFX濃度との関係を示す。HACAはV10(30週間)という早期に検出することができそしてIFX治療の間にわたり一部の患者で増加し続けた。図16は、本発明のアッセイを用いてIFXの存在下でHACAを検出することができることを示す。血清中のより高レベルのHACAは、検出することができたより低レベルのIFXと関連していた(例えば、バイオアベイラビリティを低下させた)。このようにIFXを用いて治療中の間のHACAの早期検出は、医師及び/又は患者が他の抗TNFα薬に切り替え又はIFXの用量を増加させるように導くことができる。
【0215】
結論
フルオロフォア(「Fl」)で抗TNFα生物学的薬剤を容易に標識することができ、そしてHACA/HAHAを測定するのに用いられるモビリティシフトアッセイフォーマットは典型的なELISAのような固体表面への抗原のコーティング及び複数回の洗浄及びインキュベーション工程を伴わないホモジニアスアッセイである。Fl標識されたIFXのHACA陽性血清とのインキュベーションは、SE−HPLCにおいてフリーのFl標識されたIFXと比べて異なる位置に溶出する免疫複合体の形成を生じさせ、このようにしてHACAの量を定量化することができる。他の血清成分の存在はこのモビリティシフトアッセイにほとんど影響を及ぼさない。このモビリティシフトアッセイフォーマットは、ELISAと異なり、無関係のIgG類の非特異的結合によって影響されることなくIgG4イソタイプを検出する。健常血清試料はFl標識されたIFXのモビリティシフトを生じさせることはなく、そしてIFXを用いて治療された患者の28.2%がHACAを有することが本発明のアッセイによって見出された。このように、本明細書中に記載したアッセイフォーマットは極めて感度がよく、患者血清中の全ての生物学的薬剤(例えば、REMICADE(商品名)、HUMIRA、Enbrel及びCimzia)並びにそれらの抗体(例えば、抗REMICADE(商品名)、抗HUMIRA、抗Enbrel及び抗Cimzia)を検出するのに適用することができる。とりわけ、本発明のモビリティシフトアッセイを用いてIFXの存在下にHACAを検出することができるので、IFXを用いて治療中の間のHACAの早期検出は医師及び/又は患者が他の抗TNFα薬に切り替え又はIFXの今後の用量を増加させるように導くことができる。
【0216】
本発明者らは、IFXを用いて治療された患者から得られた血清試料中のIFX及びHACAレベルを測定するための新規な非放射性標識で液相のSE−HPLCアッセイを開発した。この新規なアッセイは高い感度、正確度、及び精度を有し、そして結果は高い再現性を有しており、このことはこのアッセイを多数のヒト血清試料の日常試験に適したものとする。この新規なアッセイフォーマットは、ELISAと異なり、固体表面への抗原のコーティングを省きかつ無関係なIgG類の非特異的結合による影響を受けない。本明細書中に記載したアッセイフォーマットのこれらの利点は、試験の誤陰性及び誤陽性の結果を低減させる。有利なことに、本発明のアッセイフォーマットは極めて高感度であり、これを用いて患者が治療中の間に血清中に存在する全ての生物学的薬剤並びにそれらの抗体を検出することができる。
【0217】
実施例4.新規なモビリティシフトアッセイを用いた患者血清中の中和及び非中和ヒト抗キメラ抗体(HACA)の間の識別
本例は、患者試料(例えば、血清)中の自己抗体(例えば、HACA)濃度を測定し及びかかる自己抗体が中和自己抗体又は非中和自己抗体のいずれであるかを、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて蛍光標識されたTNFαの存在下に蛍光標識された抗TNFα薬に対するこれらの自己抗体の結合を検出して決定するための新規なホモジニアスアッセイを説明する。これらのアッセイは、低親和性のHACAを除去する洗浄工程を不要にし、バックグランド及び血清干渉問題を低減する可視及び/又は蛍光スペクトルでの検出を可能にする明確な(distinct)フルオロフォアを用い、高感度の蛍光標識検出により低力価で患者の中和又は非中和HACAを検出する能力を増大させ、そして液相反応として生じることによってELISAプレートなどの固体表面への結合によるエピトープにおける任意の変化の機会を低減させるので、有利である。
【0218】
或る典型的な実施形態において、抗TNFα薬(例えば、REMICADE(商品名))をフルオロフォア「F1」で標識し(例えば、図17A参照)、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はその双方により検出することができる。同様に、TNFαをフルオロフォア「F2」で標識し(例えば、図17A参照)、フルオロフォアは同様に可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はその双方により検出することができ、そして「F1」と「F2」は異なるフルオロフォアである。標識された抗TNFα薬を液相反応によりヒト血清とインキュベートし、そして標識されたTNFαをこの反応に加えて標識された抗TNFα薬、標識されたTNFα、及び/又は血清中に存在するHACAの間で複合体(すなわち、免疫複合体)を形成させる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識された抗TNFαへの自己抗体(例えば、HACA)及び標識されたTNFαの双方の結合は、自己抗体と標識された抗TNFα薬との間の二重複合体(例えば、図17Aの「免疫複合体2」)、標識された薬剤単独、又は標識されたTNFα単独と比べてピークの左側へのシフトを生じさせる(例えば、図17Aの「免疫複合体1」)。この自己抗体(例えば、HACA)と、標識されたTNFαと、及び標識された抗TNFα薬との三重複合体の存在は、血清試料中に存在する自己抗体が抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を干渉しないような、非中和型の自己抗体(例えば、HACA)であることを示す。図17Aに示すように、1つの特定の実施形態において、血清中に非中和性HACAが存在する場合に、F1−REMICADE(商品名)及びF2−TNFαの双方についてシフトが観察され、これは免疫複合体1及び免疫複合体2の双方のピークの増加とフリーのF1−REMICADE(商品名)及びフリーのF2−TNFαのピークの低下とをもたらす。しかしながら、自己抗体(例えば、HACA)と、標識されたTNFαと、標識された抗TNFα薬との三重複合体が存在しない、自己抗体(例えば、HACA)と標識された抗TNFα薬との間の二重複合体(例えば、図17Bの「免疫複合体2」)の存在は、血清試料中に存在する自己抗体が、抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を干渉するような、中和型の自己抗体(例えば、HACA)であることを示す。図17Bに示すように、1つの特定の実施形態において、中和HACAが血清中に存在する場合には、F1−REMICADE(商品名)についてシフトが観察され、これは免疫複合体2ピークの増加と、フリーのF1−REMICADE(商品名)ピークの低下と、フリーのF2−TNFαピークの無変化とをもたらす。或る場合に、中和性HACAの存在は、REMICADE(商品名)を用いた目下の治療をHUMIRA(商品名)などの別の抗TNFα薬に切り替えるべきことを示す。
【0219】
これに代わる実施形態において、標識された抗TNFα薬を最初に液相反応においてヒト血清とインキュベートして標識された抗TNFα薬と血清中の存在するHACAとの間で複合体(すなわち、免疫複合体)を形成させる。インキュベーション後、試料を直接に第一のサイズ排除カラム上にロードする。標識された抗TNFα薬への自己抗体(例えば、HACA)の結合は、標識された薬剤単独と比べてピークの左側へのシフト(例えば、図18の「免疫複合体2」)を生じさせる。次いで、標識されたTNFαをこの反応に加えて、標識された抗TNFα薬への結合に対して標識されたTNFαが自己抗体(例えば、HACA)と置き換わり(例えば、競合し)、それによって標識された抗TNFα薬と標識されたTNFαとの間の複合体(すなわち、免疫複合体)を形成させることができるか否かを決定する。インキュベーション後、試料を直接に第二のサイズ排除カラム上にロードした。標識されたTNFαへの標識された抗TNFα薬の結合は、標識されたTNFα単独に比べてピークの左側へのシフトを生じさせる(例えば、図18の「免疫複合体3」)。標識されたTNFαの添加による自己抗体(例えば、HACA)と標識された抗TNFα薬との間の結合の分裂は、血清試料中に存在する自己抗体が、抗TNFα薬とTNFαとの間の結合を妨げるような中和型の自己抗体(例えば、HACA)であることを示す。或る場合には、中和性HACAの存在はREMICADE(商品名)を用いた目下の治療をHUMIRA(商品名)などの別の抗TNFαに切り替えるべきことを示す。
【0220】
実施例5.新規なホモジニアスモビリティシフトアッセイを用いた患者血清中のアダリムマブに対するヒト抗薬剤抗体(ADA)の分析
背景及び目的:TNFαに対するモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ(IFX)、アダリムマブ(HUMIRA(商品名))、及びセルトリズマブは、炎症性腸疾患(IBD)及び他の炎症性疾患を治療するのに有効であることが示されている。抗薬剤抗体(ADA)は薬剤の効果を低下させ及び/又は有害作用を引き起こすことがある。しかしながら、ADAはキメラ抗体インフリキシマブを用いて治療された患者にだけでなく、ヒト化抗体アダリムマブを用いて治療された患者にも見出されている。個々の患者のADA及び薬剤レベルの監視は、患者の治療及び投薬を最適化するのに役立つことができる。本発明者らは、患者由来の血清中のHACA(ヒト抗キメラ抗体)及びIFXの双方を正確に測定する、非放射性標識で液相のホモジニアスモビリティシフトアッセイを開発した。このアッセイ方法は、HACAを検出するための現在の固相アッセイの主たる限界、すなわち、循環血液中のIFXの存在下にHACAを正確に検出することができないこと、を克服する。本研究において、本発明者らは、ヒト化抗体薬、アダリムマブを用いて治療された患者の血清中のADA及び薬剤レベルを測定するこの新規な方法を評価した。
【0221】
方法:このモビリティシフトアッセイは、サイズ排除分離におけるフリー抗原に対する抗原抗体免疫複合体のリテンションタイムのシフトに基づくものであった。フルオロフォアで標識されたアダリムマブ又はTNF−α及び内部標準を血清試料と混合して、ADA又は薬剤の存在下でフリーのアダリムマブ及びTNF−αのモビリティシフトを測定した。フリーアダリムマブ又はTNF−αの内部標準に対する比の変化が免疫複合体形成の指標である。種々の濃度の抗ヒトIgG抗体又は精製アダリムマブと共にインキュベートすることによって作成した検量線を用いてADA又はアダリムマブの血清濃度を決定した。モビリティシフトアッセイを用いて、本発明者らは、アダリムマブを用いて治療されたIBD患者で応答を失った患者から採取した血清中のアダリムマブ及びADAレベルを測定した。
【0222】
結果:標識されたアダリムマブのモビリティシフトの測定に対し抗ヒトIgG抗体を用いて用量反応曲線を作成した。このアッセイの検出限界は抗ヒトIgG 1ngであった。ADAについて50の健常対照由来の血清を試験したところ全ての試料が検出限界未満のADAレベルを有していた(すなわち、フリーの標識されたアダリムマブのシフトはなかった)。外因的に添加されたアダリムマブの存在下でADAの検出も実証された。アダリムマブを用いて治療された患者の薬剤濃度を測定するために、本発明者らは標識されたTNF−αのモビリティシフトについて種々の量のアダリムマブを用いて検量線を作成し、そしてアダリムマブの検出限界は10ngであった。
【0223】
結論:本発明の非放射性標識で液相のホモジニアスモビリティシフトアッセイを適用して、アダリムマブを用いて治療された患者由来の血清試料中のADA及びアダリムマブのレベルを測定した。このアッセイは、高い感度及び正確度を有し再現性のあることが見出され、そしてアダリムマブを用いて治療された患者由来の血清試料中のADAレベルを評価するのに用いることができる。
【0224】
実施例6.新規な独自の(Proprietary)モビリティシフトアッセイを用いた患者血清中のアダリムマブに対する抗薬剤抗体(ADA)の分析
要約
背景:抗TNF−α薬剤、例えば、インフリキシマブ(IFX)及びアダリムマブ(ADL)などは炎症性腸疾患(IBD)を治療するのに有効であることが示されている。しかしながら、治療された患者におけるADAの誘発は薬剤の効果を低下させ及び/又は有害作用を引き起こすことがある。実際に、ADAはIFXを用いて治療された患者だけでなく、ADLを用いて治療された患者にも見出されている。個々の患者のADA及び薬剤レベルの監視は、患者の治療及び投薬を最適化するのに役立つことができる。本発明者らは、IFX治療された患者由来の血清中のHACA(ヒト抗キメラ抗体)及びIFXの双方を正確に測定する、独自のモビリティシフトアッセイを開発した。このアッセイは、HACAを検出するための現在の固相アッセイの主たる限界、すなわち、循環血液中のIFXの存在下にHACAを正確に検出することができないこと、を克服する。本研究において、本発明者らは、完全ヒト化抗体薬、ADLを用いて治療された患者の血清中のADA及び薬剤レベルを測定するこの新規なアッセイを評価した。
【0225】
方法:このモビリティシフトアッセイは、サイズ排除クロマトグラフィーにおけるフリー抗原に対する抗原抗体免疫複合体のリテンションタイムのシフトに基づくものであった。フルオロフォアで標識されたADL又はTNF−α及び内部標準を血清試料と混合して、ADA又は薬剤の存在下での標識されたADL及びTNF−αのモビリティシフトを測定した。フリーADL又はTNF−αの内部標準に対する比の変化が免疫複合体形成の指標である。種々の濃度の抗ヒトIgG抗体又は精製ADLと共にインキュベートすることによって作成した検量線を用いてADA又はADLの血清濃度を決定した。このアッセイを用いて、本発明者らは、ADLを用いて治療されたIBD患者から採取した血清中のADL及びADAレベルを測定した。
【0226】
結果:標識されたADLのモビリティシフトの測定に対し抗ヒトIgG抗体を用いて用量反応曲線を作成した。このアッセイの検出限界は抗ヒトIgG10ngであった。ADAについて100人の健常対照由来の血清を試験したところ全ての試料が検出限界未満のADAレベルを有していた(すなわち、フリーの標識されたADLのシフトはなかった)。ADLを用いて治療された114人のIBD患者の中で5つにおいてADAの検出が示された。ADLを用いて治療された患者の薬剤濃度を測定するために、本発明者らは標識されたTNF−αのシフトについて種々の量のADLを用いて検出限界10ngの検量線を作成した。
【0227】
結論:本発明者らは、本発明者らの独自の非放射性標識で液相のホモジニアスモビリティシフトアッセイを適用して、ADLを用いて治療された患者由来の血清試料中のADA及びADLのレベルを測定した。このアッセイは、高い感度及び正確度を有し再現性があり、ADLを用いて治療された患者由来の血清試料中のADAレベルを評価するのに有効である。
【0228】
序論
抗腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)生物学的製剤、例えば、インフリキシマブ(IFX)、エタネルセプト、アダリムマブ(ADL)、及びセルトリズマブ ペゴルなどは、クローン病(CD)及び慢性関節リウマチ(RA)を含む多くの自己免疫疾患において疾患活性を低減させることが示されている。しかしながら、一部の患者では抗TNF−α治療に応答せず、また、他の患者では充分な応答が欠如しているためより多量の又はより高頻度の投与が必要であるか、又は注入反応を発現する。
【0229】
患者に薬剤に対する抗体を発現させる治療抗体の免疫原性は、治療の失敗及び注入反応の原因となることがある。IFXのようなキメラ抗体は、ADLなどの完全ヒト化抗体と比べて抗体産生を誘発するより高い潜在能力を有する。RA患者におけるIFXに対する抗体(HACA)の発生率(prevalence)は12%から44%まで変化しそして患者血清中のIFXのレベル及び治療応答に反比例するように見える。完全ヒト化ADLはマウス又はキメラ抗体より免疫原性が少ないように思われる一方で、幾つかの研究ではヒト抗ヒト化抗体(HAHA)の形成が報告されており、また、RA及びCD患者において1%から87%までの抗体産生の発生率が示されている(Aikawa et al., Immunogenicity of Anti-TNF-alpha agents in autoimmune diseases. Clin. Rev. Allergy Immunol., 38(2-3):82-9 (2010))。
【0230】
1つの抗TNFα薬に対する二次応答不全を起こした多くの患者は、別の抗TNFα薬へ切り替えること又は用量を増量すること及び/又は投与頻度を増加させることから利益を受けることがある。従って、薬剤投与を個々の患者に適合させることができるように、薬剤及び抗薬剤抗体(ADA)レベルについて患者を監視することが求められる。このアプローチは、保証される(warranted)場合には用量の調整を、又はADAレベルが存在する場合には投薬の中止を可能にする。(Bendtzen et al., Individual medicine in inflammatory bowel disease: monitoring bioavailability, pharmacokinetics and immunogenicity of anti-tumour necrosis factor-alpha antibodies. Scand. J. Gastroenterol., 44(7):774-81 (2009); Afif et al., Clinical utility of measuring infliximab and human anti-chimeric antibody concentrations in patients with inflammatory bowel disease. Am. J. Gastroenterol., 105(5):1133-9 (2010))。
【0231】
HACA及びHAHAを測定するための多くのアッセイが開発されてきた。現行の方法の限界の1つは、循環血液中に高いレベルの薬剤が存在する場合にADAレベルを容易には測定することができないことである。
【0232】
本発明者らは、ADLを用いて治療された患者由来の血清中のADA及びADLレベルを測定するための、血清中の薬剤の存在により影響を受けない独自の非放射性標識で液相のモビリティシフトアッセイを開発した。
【0233】
方法
フルオロフォア(Fl)標識されたADLを患者血清とインキュベートして免疫複合体を形成した。Fl標識された小ペプチドを各反応において内部標準として含めた。種々の量の抗ヒトIgGを用いて検量線を作成して血清中のADAレベルを決定した。サイズ排除クロマトグラフィーによって、フリーのFl標識されたADLをその分子量に基づいて抗体結合複合体から分離した。各試料からフリーのFl標識ADL対内部標準の比を用いて検量線からHAHA濃度を外挿した。同様の方法を用いて、Fl標識されたTNF−αによって患者血清試料中のADLレベルを測定した。
【0234】
結果
図19は、高分子量の複合体のモビリティシフトによるフリーFl−ADLからの抗ヒトIgG結合Fl−ADL複合体の分離を示す。パネルc〜hに示したように、蛍光ピークのリテンションタイムは10.1分から7.3〜9.5分へシフトした。反応混合物に抗ヒトIgGをより多く添加すればするほど、クロマトグラムにはより少ないフリーADLが残りそしてより多く免疫複合体が形成される(h〜c)。内部標準のリテンションタイムは13.5分である。
【0235】
図20は、抗ヒトIgGの添加によって生じた蛍光ピークシフトの用量反応曲線を示す。抗ヒトIgGの濃度を増加させると、免疫複合体の形成のためにフリーADL対内部標準の比は低下する。アッセイ感度は抗ヒトIgG10ng/mLである。内部標準「Fl−BioCyt」は、緑色蛍光性Alexa Fluor(商標)488フルオロフォアをビオチン及びアルデヒド固定性(aldehyde-fixable)第一アミン(リシン)と結合するAlexa Fluor(商標)488−ビオシチン(BioCyt)に対応する(Invitrogen社;カリフォルニア州カールスバッド)。
【0236】
図21は、高分子量複合体のモビリティシフトによるフリーのTNF−α−FlからのADL結合したTNF−α−Fl複合体の分離を示す。パネルc及びjに示したように、蛍光ピークのリテンションタイムは11.9分から6.5〜10.5分へシフトした。反応混合物中にADLが多く存在すればするほど、クロマトグラムにはより少ないフリーのTNF−α−Flピークが残りそしてより多く免疫複合体が形成される。
【0237】
図22は、ADLの添加によって生じたTNF−α−Flピークシフトの用量反応曲線を示す。添加されたADLに基づいて、検出限界は血清中ADL10ng/mLである。
【0238】
表4は、100人の健常被験者及びADLを用いて治療された114人のIBD患者に由来する血清試料を、本発明のモビリティシフトアッセイを用いてADA及びADLレベルについて分析した内容を示す。100の健常被験者試料は全て検出限界未満のADAレベルを有していた(フリーFl−ADLのシフトなし)が、一方で、114の患者試料のうち5つは0.012〜>20μg/mLのADA濃度を有していた。100の健常被験者試料におけるADLレベルの平均値は0.76±1.0μg/mL(範囲0〜9.4μg/mL)であった。ADLを用いて治療された患者由来の114の血清試料中のADLレベルの平均値は10.8±17.8μg/mL(範囲0〜139μg/mL)であった。ADA陽性試料の5つのうち4つは検出不能レベルのADLを有していた。
【表4】

【0239】
表5は、100人の健常被験者及びADLを用いて治療された114人のIBD患者由来の血清試料のさらなる解析を提供する。とりわけ、ADL0〜4μg/mLを有する42の患者試料のうち4つは平均ADA濃度0.012〜>20μg/mLを有していた。4つのADA陽性試料のうち4つは検出不能レベルのADLを有していた。ADAの検出のために、ADLを用いて治療された114人のIBD患者をADL0〜4μg/mL及びADL>4μg/mLの2つのカテゴリーに分けた。4μg/mLを超えるADLの患者をより多量のADL−Flを用いて試験することにより循環血液中のADLのADL−Flとの競合を検討することができる。
【表5】

【0240】
結論
HACA/IFXの測定に用いたモビリティシフトアッセイフォーマットは、固体表面への抗原のコーティングを伴わず、かつ典型的なELISAのような複数回の洗浄及びインキュベーション工程を伴わないホモジニアスアッセイである。このアッセイを適用してADA及び抗TNF薬を測定することができる。このアッセイの感度(μg/mL範囲)は、ELISA法(mg/mL範囲)と比較して患者血清に関するADA及びADL双方の測定に対して高感度である。健常対照の血清試料はFl標識されたADLのモビリティシフトを生じさせなかったが、ADLを用いて治療された患者の4.3%はこのアッセイによってADAを有することが見出された。とりわけ、ADL0.4μg/mLを有する患者の9.52%はこのアッセイにおいてADAを有することが見出された。健常試料及び患者試料のより高濃度のADL−Flを用いたさらなる評価を行う予定である。健常対照の血清試料は、Fl標識されたTNF−αのモビリティシフトを生じさせたが、これはTNF−αの可溶性のフリーの受容体の存在によるものであったとすることができ、ADLを用いて治療された患者のADLの平均はそれよりずっと高かった(10.8μg/mL対0.76μg/mL)。患者がADL治療を受けている間にADAを早期に検出し及びADL薬剤レベルを監視することは、医師がADLの投与量を最適化し又は適切な場合には別の抗TNF−α薬に切り替え、そしてそのことによって患者の疾病の全体的な管理を最適化することを可能にする。
【0241】
実施例7:REMICADE(商品名)及びヒト抗薬剤抗体の濃度レベルの決定
本例は、血清試料中の抗TNFα薬、例えば、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、のレベルを決定し、並びにヒト抗薬剤抗体、例えば、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)に対するヒト抗キメラ抗体(HACA)、のレベルを決定する方法を説明する。
【0242】
工程1:試料中のREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)の濃度レベルの決定
【0243】
1つの典型的な実施形態において、TNFαをフルオロフォア(例えば、Alexa647)で標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はその双方によって検出することができる。標識されたTNFαを液相反応によりヒト血清とインキュベートして血清中に存在する抗TNFα薬を結合させる。標識されたTNFαを液相反応により既知量の抗TNFα薬とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識されたTNFαへの抗TNFα薬の結合は、標識されたTNFα単独と比べてピークの左側へのシフトを生じさせる。そして、血清試料中に存在する抗TNFα薬の濃度を検量線及び対照と比較することができる。
【0244】
患者血清中のREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)のSE−HPLC分析
製造業者の使用説明書に従って、ヒト組換え型TNFαをフルオロフォア、Alexa Fluor(商標)488で標識した。標識されたTNFαを種々の量のREMICADE(商品名)又は患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。蛍光標識検出を用いてフリーの標識されたTNFα及び結合した標識されたTNFα免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。検量線から血清中のREMICADE(商品名)レベルを計算した。
【0245】
以下の方程式がこのアッセイに当てはまる:
方程式I:標識されたTNFα+REMICADE(商品名)→(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体
方程式II:[REMICADE(商品名)]標識されたTNFαなしに存在=[(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体
方程式III:[REMICADE(商品名)]=[(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体]/[標識されたTNFα]×[標識されたTNFα]
【0246】
工程1において、既知量の標識されたTNFαを、REMICADE(商品名)含有血清試料と接触させる。標識されたTNFαとREMICADE(商品名)とは複合体、(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体を形成する(方程式I参照)。ほとんど全てのREMICADE(商品名)が標識されたTNFαと複合体を形成するので、標識されたTNFαの導入前に存在するREMICADE(商品名)の濃度は、標識されたTNFα・REMICADE(商品名)複合体の測定濃度と等しくなる(方程式II参照)。[(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体]/[標識されたTNFα]の比に[標識されたTNFα]を乗じることによって、REMICADE(商品名)の濃度レベルを計算する(方程式III参照)。[(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体]/[標識されたTNFα]の比は、サイズ排除HPLCからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから、(標識されたTNFα・REMICADE(商品名))複合体ピークに対する曲線下面積を積分し、そして前記プロットから標識されたTNFαピークに対する曲線下面積の結果として得られる積分でこの数を除することによって得られる。[標識されたTNFα]は演繹的に(a priori)知られる。
【0247】
工程2:ヒト抗キメラ抗体HACAのレベル決定
【0248】
1つの典型的な実施形態において、抗TNFα薬、例えば、REMICADE(商品名)、をフルオロフォア、例えば、Alexa647、で標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はその双方によって検出することができる。標識された抗TNFα薬を液相反応によりヒト血清とインキュベートして血清中に存在するHACAを結合させる。標識された抗TNFα薬を液相反応により既知量の抗IgG抗体又はプールした陽性患者の血清とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識された抗TNFα薬への自己抗体の結合は、標識された薬剤単独と比べてピークの左側へのシフトを生じさせる。そして、血清試料中に存在するHACAの濃度を検量線及び対照と比較することができる。
【0249】
患者血清中のHACAレベルのSE−HPLC分析。精製REMICADE(商品名)をフルオロフォアで標識した。標識されたREMICADE(商品名)を種々の希釈度のプールしたHACA陽性血清又は希釈した患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。蛍光標識検出を用いてフリーの標識されたREMICADE(商品名)及び結合した標識されたREMICADE(商品名)免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。結合した標識されたREMICADE(商品名)とフリーのREMICADE(商品名)との比を用いて以下のようにHACAレベルを決定した。
【0250】
血清中のHACAを測定するためのモビリティシフトアッセイ手順。このアッセイの原理は、フリーのAlexa647標識されたREMICADE(商品名)に対する抗薬剤抗体、例えば、HACA、のAlexa647標識されたREMICADE(商品名)との複合体の、該複合体の分子量の増加によるサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)上でのモビリティシフトに基づく。このクロマトグラフィーは、分子量分画範囲5,000〜70,000及び移動相1X PBS、pH7.3、流速0.5〜1.0mL/minを有し蛍光標識検出、例えば、650nmでのUV検出、を備えたBio−Sep 300x7.8mm SEC−3000カラム(Phenomenex社)を用いて、Agilent−1200HPLCシステムにより実施する。Bio−Sep 300x7.8mmを用いたAgilent−1200HPLCシステムの前のSEC−3000カラムは、BioSep 75x7.8mm SEC−3000である分析用プレカラムである。各分析に対して試料体積100μLをカラム上にロードする。SE−HPLC分析の前に1X PBS、pH7.3、溶出バッファ中で室温において1時間にわたりREMICADE(商品名)治療された患者由来の血清及び標識されたREMICADE(商品名)をインキュベートすることによってHACA及び標識されたREMICADE(商品名)複合体の複合体を形成する。
【0251】
以下の方程式がこのアッセイに当てはまる:
方程式IV:REMICADE(商品名)+標識されたREMICADE(商品名)+HACA→(REMICADE(商品名)・HACA)複合体+(標識されたREMICADE(商品名)・HACA)複合体
方程式V:[REMICADE(商品名)]/[REMICADE(商品名)・HACA複合体]=[標識されたREMICADE(商品名)]/[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体
方程式VI:[HACA]=[REMICADE(商品名)・HACA]複合体+[標識されたREMICADE(商品名)・HACA]複合体
方程式VII:[REMICADE(商品名)・HACA複合体]=[REMICADE(商品名)]×[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体]/[標識されたREMICADE(商品名)]
方程式VIII:[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体]=[標識されたREMICADE(商品名)]×[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体]/[標識されたREMICADE(商品名)]
【0252】
方程式IX:[REMICADE(商品名)]有効量=[REMICADE(商品名)]−[HACA]
【0253】
ヒト抗TNFα薬抗体、例えば、HACA、の濃度レベルの決定。既知濃度の標識されたREMICADE(商品名)を血清試料に添加する。HACAはREMICADE(商品名)又は標識されたREMICADE(商品名)のいずれかと複合体を形成する(方程式IV参照)。[REMICADE(商品名)]を上記工程1において決定する。標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体に対する曲線下面積を積分しそしてこの数をフリーの標識されたREMICADE(商品名)に対する曲線下面積に対して得られる積分で除することによって、[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体]対[標識されたREMICADE(商品名)]の比を得る。[REMICADE(商品名)]対[REMICADE(商品名)・HACA複合体]の比は[標識されたREMICADE(商品名)]対[標識されたREMICADE(商品名)・HACA)複合体]の比に等しい(方程式V参照)。HACAはREMICADE(商品名)及び標識されたREMICADE(商品名)の双方と平衡して複合体を形成するので、HACAの総量はREMICADE(商品名)・HACA複合体の量と標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体の量の合計に等しい(方程式VI参照)。[REMICADE(商品名)]対[REMICADE(商品名)・HACA複合体]の比は[標識されたREMICADE(商品名)]対[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体]の比に等しいので、[REMICADE(商品名)−HACA]複合体及び[標識されたREMICADE(商品名)−HACA複合体]の双方は、[標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体)]/[標識されたREMICADE(商品名)]の比に、工程1において決定されたREMICADE(商品名)の濃度量、及び演繹的に知られる標識されたREMICADE(商品名)の濃度量をそれぞれ乗じることによって決定される(方程式VII及びVIII参照)。従って、HACAの総量は、(1)工程1からの[REMICADE(商品名)]に[標識されたREMICADE(商品名)・HACA)複合体]/[標識されたREMICADE(商品名)]を乗じた値と、(2)演繹的に知られる[標識されたREMICADE(商品名)]に[標識されたREMICADE(商品名)・HACA)複合体]/[標識されたREMICADE(商品名)]を乗じた値との合計に等しい。
【0254】
REMICADE(商品名)の有効濃度レベルの決定。HACAはREMICADE(商品名)と複合体を形成するので、血清試料中で利用することのできるREMICADE(商品名)の有効量は、工程1において測定されたREMICADE(商品名)の量から、工程2から測定されたHACAの量を引いた量である(方程式IX参照)。
【0255】
典型的な計算。V10での患者JAGにおける[REMICADE(商品名)]は7.5μg/mLであると決定された(図16c参照)。この結果は工程1に従いかつ方程式I〜IIIを用いることによって得られた。7.5μg/mLは30ng/4μLに等しい。試料4μLを工程2の測定に用いたので、分析された試料中に合計30.0ngのREMICADE(商品名)が存在していた。V10での患者JAGの[標識されたREMICADE(商品名)・HACA]複合体/[標識されたREMICADE(商品名)]の比は0.25であった(図16b参照)。試料中に導入された[標識されたREMICADE(商品名)]は37.5ng/100μLであった。工程2の測定に標識されたREMICADE(商品名)100μLを用いたので、分析された試料中に合計37.5ngの標識されたREMICADE(商品名)が存在していた。方程式VIIを用いると、REMICADE(商品名)・HACA複合体の総量は30ngに0.25を乗じた値であったが、これは標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体7.5ngに等しい。方程式VIIIを用いると、標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体の総量は37.5ngに0.25を乗じた値であったが、これは標識されたREMICADE(商品名)・HACA複合体9.4ngに等しい。方程式VIを用いると、HACAの総量は9.4ngと7.5ngとの合計に等しく、これはHACA16.9ngに等しい。HACA16.9ngが試料4μL中に存在していた。[HACA]は16.9ng/4μLであったが、これは4.23μg/mLに等しい。方程式IXを用いると、REMICADE(商品名)の有効量は、工程1から決定されたREMICADE(商品名)7.5μg/mLから工程2から決定されたHACA4.23μg/mLを引いたものに等しい。この典型的な計算では、有効な[REMICADE(商品名)]は3.27μg/mLに等しかった。
【0256】
実施例8.HUMIRA(商品名)及びヒト抗薬剤抗体の濃度レベルの決定
本例は、血清試料中のHUMIRA(商品名)のレベルを決定する方法並びにヒト抗ヒト抗体(HAHA)のレベルを決定する方法を説明する。
【0257】
工程1:試料中のHUMIRA(商品名)の濃度レベルの決定
【0258】
1つの典型的な実施形態において、フルオロフォア(例えば、Alexa647)を用いてTNFαを標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はそれらの双方によって検出することができる。標識されたTNFαを液相反応によりヒト血清とインキュベートして、血清中に存在する抗TNFα薬を結合させる。標識したTNFαを液相反応により既知量の抗TNFα薬とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識されたTNFαへの抗TNFα薬の結合は、標識されたTNFα単独に比べてピークを左側にシフトさせる。次いで、血清試料中に存在する抗TNFα薬の濃度を検量線及び対照と比較することができる。
【0259】
患者血清中のHUMIRA(商品名)レベルのSE−HPLC分析。製造業者の使用説明書に従って、ヒト組換え型TNFαをフルオロフォアAlexa Fluor(商標)488で標識した。標識されたTNFαを種々の量のHUMIRA(商品名)又は患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。蛍光標識検出を用いてフリーの標識されたTNFα及び結合した標識されたTNFα免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。検量線から血清中のHUMIRA(商品名)レベルを計算した。
【0260】
以下の方程式がこのアッセイに当てはまる:
方程式X:標識されたTNFα+HUMIRA(商品名)→(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体
方程式XI:[HUMIRA(商品名)]=[(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体
方程式XII:[HUMIRA(商品名)]=[(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体]/[標識されたTNFα]×[標識されたTNFα]
【0261】
工程1において、既知量の標識されたTNFαを、HUMIRA(商品名)含有血清試料と接触させる。標識されたTNFαとHUMIRA(商品名)とは複合体、(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体を形成する(方程式X参照)。ほとんど全てのHUMIRA(商品名)が標識されたTNFαと複合体を形成するので、標識されたTNFαの導入前に存在するHUMIRA(商品名)は、測定された[(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体]と等しくなる(方程式XI参照)。[(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体]/[標識されたTNFα]の比に[標識されたTNFα]を乗じることによって、[HUMIRA(商品名)]を計算する(方程式XII参照)。標識されたTNFαに対する曲線下面積及び(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体に対する曲線下面積を積分し、そして(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体に対して得られる積分を標識されたTNFαに対して得られる積分で除することによって、[(標識されたTNFα・HUMIRA(商品名))複合体]対[標識されたTNFα]の比が得られる。[標識されたTNFα]は演繹的に知られる。
【0262】
工程2:ヒト抗ヒト抗体、例えば、HAHAのレベルの決定。1つの典型的な実施形態において、抗TNFα薬、例えば、HUMIRA(商品名)、をフルオロフォア、例えば、Alexa647、で標識し、フルオロフォアは可視スペクトル及び蛍光スペクトルのいずれか一方又はその双方によって検出することができる。標識された抗TNFα薬を液相反応によりヒト血清とインキュベートして血清中に存在するHAHAを結合させる。標識された抗TNFα薬を液相反応により既知量の抗IgG抗体又はプールした陽性患者血清とインキュベートして検量線を作成することもできる。インキュベーション後、試料を直接にサイズ排除カラム上にロードする。標識された抗TNFα薬への自己抗体の結合は、標識された薬剤単独と比べてピークの左側へのシフトを生じさせる。次に、血清試料中に存在するHAHAの濃度を検量線及び対照と比較することができる。
【0263】
患者血清中のHAHAレベルのSE−HPLC分析。精製HUMIRA(商品名)をフルオロフォアで標識した。標識されたHUMIRA(商品名)を種々の希釈度のプールしたHAHA陽性血清又は希釈した患者血清と1時間にわたり室温でインキュベートした。体積100μLの試料をHPLCシステム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。蛍光標識検出を用いてフリーの標識されたHUMIRA(商品名)及び結合した標識されたHUMIRA(商品名)免疫複合体をそれらのリテンションタイムに基づいてモニターした。結合した標識されたHUMIRA(商品名)とフリーの標識されたHUMIRA(商品名)との比を用いて以下に説明するようにHAHAレベルを決定した。
【0264】
血清中のHAHAを測定するためのモビリティシフトアッセイ手順。このアッセイの原理は、フリーのAlexa647標識されたHUMIRA(商品名)に対する抗体、例えば、HAHA、が結合したAlexa647標識されたHUMIRA(商品名)複合体の、該複合体の分子量の増加によるサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)上でのモビリティシフトに基づく。このクロマトグラフィーは、分子量分画範囲5,000〜70,000及び移動相1X PBS、pH7.3、流速0.5〜1.0mL/minを有し蛍光標識検出、例えば、650nmでのUV検出、を備えたBio−Sep 300x7.8mm SEC−3000カラム(Phenomenex社)を用いて、Agilent−1200HPLCシステムにより実施する。Bio−Sep 300x7.8mmを用いたAgilent−1200HPLCシステムの前のSEC−3000カラムは、BioSep 75x7.8mm SEC−3000である分析用プレカラムである。各分析に対して試料体積100μLをカラム上にロードする。各分析に対して試料体積100μLをカラム上にロードする。SE−HPLC分析の前に1X PBS、pH7.3、溶出バッファ中で室温において1時間にわたりHUMIRA治療された患者由来の血清及び標識されたHUMIRA(商品名)をインキュベートすることによってHAHA結合した標識されたHUMIRA(商品名)複合体を形成する。
方程式XIII:HUMIRA(商品名)+標識されたHUMIRA(商品名)+HAHA→(HUMIRA(商品名)・HAHA)複合体+(標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA)複合体
方程式XIV:[HUMIRA(商品名)]/[HUMIRA(商品名)・HAHA複合体]=[標識されたHUMIRA(商品名)]/[標識されたHUMIRA・HAHA複合体
方程式XV:[HAHA]=[HUMIRA(商品名)・HAHA複合体]+[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体
方程式XVI:[HUMIRA(商品名)・HAHA複合体]=[HUMIRA(商品名)]×[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]/[標識されたHUMIRA(商品名)]
方程式XVII:[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]=[標識されたHUMIRA(商品名)]×[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]/[標識されたHUMIRA(商品名)]
【0265】
方程式XVIII:[HUMIRA(商品名)]有効量=[HUMIRA(商品名)]−[HAHA]
【0266】
工程2についての計算。既知濃度の標識されたHUMIRA(商品名)を血清試料に添加する。HAHAはHUMIRA(商品名)又は標識されたHUMIRA(商品名)のいずれかと複合体を形成する(方程式XIII参照)。[HUMIRA(商品名)]を上記したように工程1において決定する。標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体に対する曲線下面積及び標識されたHUMIRA(商品名)に対する曲線下面積を積分しそして標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体に対して得られる積分を標識されたHUMIRA(商品名)に対して得られる積分で除することによって、[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]対[標識されたHUMIRA(商品名)]の比を得る。[HUMIRA(商品名)]対[HUMIRA(商品名)・HAHA複合体]の比は[標識されたHUMIRA(商品名)]対[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]の比に等しい(方程式XIV参照)。HAHAはHUMIRA(商品名)及び標識されたHUMIRA(商品名)の双方と平衡して複合体を形成するので、HAHAの総量はHUMIRA(商品名)・HAHA複合体の量と標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体の量の合計に等しい(方程式XV参照)。[HUMIRA(商品名)]対[HUMIRA(商品名)・HAHA複合体]の比は[標識されたHUMIRA(商品名)]対[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]の比に等しいので、[HUMIRA(商品名)−HAHA複合体]及び[標識されたHUMIRA(商品名)−HAHA複合体]の双方の濃度は、[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体]/[標識されたHUMIRA(商品名)]の比に、工程1において決定された[HUMIRA(商品名)]、及び演繹的に知られる[標識されたHUMIRA(商品名)]をそれぞれ乗じることによって決定される(方程式XVI及びXVII参照)。HAHAはHUMIRA(商品名)と複合体を形成するので、血清試料中で利用することのできるHUMIRA(商品名)の有効量は、工程1から測定されたHUMIRA(商品名)の量から、工程2から測定されたHAHAの量を引いた量である(方程式XVIII参照)。
【0267】
典型的な計算。患者SL03246013(図25参照)において、[HUMIRA(商品名)]は16.9μg/mLであると決定された(図25参照)。この結果は工程1に従いかつ方程式X〜XIIを用いることによって得られた。16.9μg/mLは67.6ng/4μLに等しい。試料4μLを工程2の測定に用いたので、分析された試料中に合計67.6ngのHUMIRA(商品名)が存在していた。患者SL03246013の[標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA]複合体/[標識されたHUMIRA(商品名)]の比は0.055であった(図25参照)。試料中に導入された[標識されたHUMIRA(商品名)]は37.5ng/100μLであった。工程2の測定に標識されたHUMIRA(商品名)100μLを用いたので、分析された試料中に合計37.5ngの標識されたHUMIRA(商品名)が存在していた。方程式XVIを用いると、HUMIRA(商品名)・HAHA複合体の総量は67.6ngに0.055を乗じた値であって、標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体3.71ngに等しい。方程式XVIIを用いると、標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体の総量は37.5ngに0.055を乗じた値であって、これは標識されたHUMIRA(商品名)・HAHA複合体2.06ngに等しい。方程式XVを用いると、HAHAの総量は3.71ngと2.06ngとの合計に等しく、HAHA5.77ngに等しい。HAHA5.77ngが試料4μL中に存在していた。[HAHA]は5.77ng/4μLであったが、これは1.44μg/mLに等しい。方程式XVIIIを用いると、HUMIRA(商品名)の有効量は、工程1から決定されたHUMIRA(商品名)16.99μg/mLから、工程2から決定されたHAHA1.44μg/mLを引いたものに等しい。この典型的な計算では、有効な[HUMIRA(商品名)]は15.46μg/mLに等しかった。
【0268】
実施例9.REMICADE(商品名)、標識されたREMICADE(商品名)、HUMIRA(商品名)、又は標識されたHUMIRA(商品名)のいずれかとHACA又はHAHAとの複合体の量の決定
本例は、内部標準を参照してREMICADE(商品名)、標識されたREMICADE(商品名)、HUMIRA(商品名)、又は標識されたHUMIRA(商品名)のいずれかとHACA又はHAHAとの複合体の量を決定する方法を説明する。
【0269】
内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488、を用いることによって、或る試験から別の試験への血清人為産物(artifacts)及び変形を同定しそして正確に分析することができる。内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488の量は、分析される100μL当たり約50〜約200pgである。
【0270】
フルオロフォア(Fl)で標識されたHUMIRA(商品名)を患者血清とインキュベートして免疫複合体を形成した。Fl標識された小ペプチド、例えば、Biocytin−Alexa488、を各反応において内部標準として含めた。或る場合に、種々の量の抗ヒトIgGを用いて検量線を作成して血清中のHAHAレベルを測定した。別の場合には、精製HAHAを用いてキャリブレートされている滴定されたプール陽性患者血清を用いて検量線を作成して血清中のHAHAレベルを決定した。さらに別の場合には、実施例7に記載した方法を用いて検量線を作成して血清中のHAHAレベルを決定した。サイズ排除クロマトグラフィーによって、フリーの標識されたHUMIRAを抗体結合複合体からその分子量に基づいて分離した。各試料からフリーの標識されたHUMIRA対内部標準の比を用いて検量線からHAHA濃度を外挿した。同様の方法を用いて、標識されたTNF−αによって患者血清試料中のHUMIRAレベルを測定した。
【0271】
標識された薬剤、すなわち、標識されたREMICADE(商品名)又は標識されたHUMIRA、対内部標準の初期比は100に等しい。図23及び24に示したように、標識された薬剤対内部標準の比が95未満に低下したときは、標識された薬剤が抗薬剤結合性化合物、例えば、HACA、HAHAと複合体化されていると推定される。[標識された薬剤]対[内部標準]の比は、標識された薬剤に対する曲線下面積及び内部標準に対する曲線下面積を積分しそして次に標識された薬剤に対して得られる積分を内部標準に対して得られる積分で除することによって得られる。
【0272】
実施例10:複合体化された抗TNFα薬対複合体化されていない抗TNFα薬の比の決定
複合体化された抗TNFα薬対複合体化されていない抗TNFα薬の比は、複合体化された抗TNFα薬に対する曲線下面積及び複合体化されていない抗TNFα薬に対する曲線下面積の双方を積分しそして次に複合体化された抗TNFα薬に対して得られる積分を複合体化されていない抗TNFα薬に対して得られる積分で除することによって得られる。
【0273】
1つの実施形態において、複合体化されていない抗TNFα薬は、試料中約0ng〜100ngのレベルを有するREMICADE(商品名)である。標識されたREMICADE(商品名)は約37.5ngである。
【0274】
内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488、を用いることによって、或る試験から別の試験への血清人為産物及び変形を同定しそして正確に分析することができる。内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488、の量は、分析される100μL当たり約50〜約200pgである。
【0275】
標識された抗TNFα薬、例えば、REMICADE(商品名)又はHUMIRA(商品名)、対標識された内部標準の比は、標識された抗TNFα薬に対する曲線下面積及び標識された内部標準に対する曲線下面積の双方を積分しそして次に標識された抗TNFα薬に対して得られる積分を標識された内部標準に対して得られる積分で除することによって得られる。
【0276】
[(標識された抗TNFα薬・自己抗体)複合体]/[内部標準]の比は、サイズ排除HPLCからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから、(標識された抗TNFα薬・自己抗体)複合体ピークに対する曲線下面積を積分し、そして前記プロットから内部標準ピークに対する曲線下面積の結果として得られる積分でこの数を除することによって得られる。或る実施形態において、標識された抗TNFα薬は標識されたREMICADE(商品名)である。或る他の実施形態において、標識された抗TNFα薬は標識されたHUMIRA(商品名)である。
【0277】
実施例11:フリーの標識されたTNFαと複合体化された標識されたTNFαとの比の決定
本例は、標識されたTNFαのREMICADE(商品名)又はHUMIRA(商品名)との複合体の量を内部標準を参照して決定する方法を説明する。
【0278】
内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488、を用いることによって、或る試験から別の試験への血清人為産物及び変形を同定しそして正確に分析することができる。内部標準、例えば、Biocytin−Alexa488、の量は、分析される100μL当たり約1〜約25ngである。
【0279】
1つの実施形態において、複合体化されていない標識されたTNFαは試料中約50ng〜150ngのレベルを有している。或る場合に、標識されたTNFαの量は約100.0ngである。
【0280】
フルオロフォア(Fl)で標識されたTNFαを患者血清とインキュベートして免疫複合体を形成した。Fl標識された小ペプチド、例えば、Biocytin−Alexa488を各反応において内部標準としてインキュベートした。精製抗TNFα薬を既知濃度でスパイクすることによって検量線を作成しそして次にその検量線から外挿することによってμg/mL単位で濃度を決定した。
【0281】
標識されたTNFα対内部標準の初期比は100に等しい。標識されたTNFα対内部標準の比が95未満に低下したときは、標識されたTNFαが抗TNFα薬、例えば、REMICADE(商品名)、HUMIRA(商品名)と複合体化されていると推定される。[標識されたTNFα]対[内部標準]の比は、標識されたTNFαに対する曲線下面積及び内部標準に対する曲線下面積を積分しそして次に標識されたTNFαに対して得られる積分を内部標準に対して得られる積分で除することによって得られる。
【0282】
実施例12:抗TNFα薬及び/又は抗薬剤抗体(ADA)レベルを測定することによる抗TNFα薬治療の最適化
本例は、抗TNFα薬治療を受けている患者由来の試料中の抗TNFα薬の量(例えば、濃度レベル)(例えば、フリーの抗TNFα治療抗体のレベル)及び/又は抗薬剤抗体(ADA)の量(例えば、抗TNFα薬に対する自己抗体のレベル)を測定することによって、抗TNFα薬治療を最適化し、抗TNFα薬治療に関連した毒性を低減し、及び/又は抗TNFα薬を用いた治療的処置の有効性を監視する方法を説明する。従って、本例に示した方法は、例えば、抗TNFα薬の今後の用量をいつ又はどのように調整又は変更する(例えば、増量又は減量する)かを決定することによって、抗TNFα薬を(例えば、増量、減量、又は同量で)1種又は2種以上の免疫抑制剤、例えば、メトトレキセート(MTX)又はアザチオプリンといつ又はどのように組み合わせるかを決定することによって、及び/又は目下の治療過程をいつ又はどのように変更する(例えば、異なる抗TNFα薬に切り替える)かを決定することによって、治療決定を導くのに有効な情報を提供する。
【0283】
説明の目的だけのために、以下のシナリオは、本発明の方法が抗TNFα薬治療を受けている患者由来の試料中の抗TNFα薬のレベル(例えば、フリーの抗TNFα治療抗体のレベル)及び/又はADAのレベル(例えば、TNFα薬に対する自己抗体のレベル)に基づいて如何に有利に治療を最適化し及び毒性(例えば、副作用)を最小化若しくは低減することができるかを示す実例を提供する。本明細書に記載した新規なアッセイを用いて抗TNFα薬及びADAのレベルを測定することができる。
【0284】
シナリオ#1:低レベルの抗薬剤抗体(ADA)を伴う高レベルの抗TNFα薬
【0285】
薬剤レベル=10〜50ng/10μL;ADAレベル=0.1〜2ng/10μL。このプロファイルを有する患者試料として、ビジット10(「V10」)時の患者BAB及びJAA由来の試料を挙げることができる。図16b参照。
【0286】
抗TNFα薬治療を受けておりかつこの特定のプロファイルを有する患者は、抗TNFα薬(例えば、インフリキシマブ)とともにアザチオプリン(AZA)のような免疫抑制剤を用いて治療されなければならない。
【0287】
シナリオ#2:低レベルのADAを伴う中レベルの抗TNFα薬
【0288】
薬剤レベル=5〜20ng/10μL;ADAレベル=0.1〜2ng/10μL。このプロファイルを有する患者試料として、V10時の患者DGO、JAG、及びJJH由来の試料を挙げることができる。図16b参照。
【0289】
抗TNFα薬治療を受けておりかつこの特定のプロファイルを有する患者は、より多い用量の抗TNFα薬(例えば、インフリキシマブ)とともにアザチオプリン(AZA)のような免疫抑制剤を用いて治療されなければならない。当業者であれば、薬剤治療を最適化するように目下の治療過程を適切なより多い量又はより少ない量、例えば、目下の用量より少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、又は100倍多い又は少ない今後の用量に調整することができることがわかるであろう。
【0290】
シナリオ#3:中レベルのADAを伴う中レベルの抗TNFα薬
【0291】
薬剤レベル=5〜20ng/10μL;ADAレベル=0.5〜10ng/10μL。このプロファイルを有する患者試料として、ビジット10(「V10」)時の患者JMM及びビジット14(「V14」)時の患者J−L由来の試料を挙げることができる。図16b参照。
【0292】
抗TNFα薬治療を受けておりかつこの特定のプロファイルを有する患者は、異なる薬剤を用いて治療されなければならない。限定的でない例として、インフリキシマブ(IFX)治療中でありかつ中レベルのIFX及びADA(すなわち、HACA)を有する患者は、アダリムマブ(HUMIRA(商品名))を用いた治療に切り替えられなければならない。
【0293】
シナリオ#4:高レベルのADAを伴う低レベルの抗TNFα薬
【0294】
薬剤レベル=0〜5ng/10μL;ADAレベル=3.0〜50ng/10μL。このプロファイルを有する患者試料として、図16bのビジット14時の全ての患者に由来の試料を挙げることができる。
【0295】
抗TNFα薬治療を受けておりかつこの特定のプロファイルを有する患者は、異なる薬剤を用いて治療されなければならない。限定的でない例として、インフリキシマブ(IFX)治療中でありかつ高レベルのADA(すなわち、HACA)を伴う低レベルのIFXを有する患者は、アダリムマブ(HUMIRA(商品名))を用いた治療に切り替えられなければならない。
【0296】
理解の明確化のために図面及び実施例によってある程度詳細に本発明を記載してきたが、当業者であれば特許請求の範囲に記載の範囲内で所定の変更及び変形を行うことができることは理解されるところであろう。さらに、本明細書中に示した各文献は、それら各文献が個々に参照により組み込まれたかのごとくと同程度までその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者に対する前記抗TNFα薬の有効量を決定する方法であって、以下の工程:
(a)前記被験者由来の第一の試料中の前記抗TNFα薬のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第一の試料を或る量の標識されたTNFαと接触させて前記標識されたTNFαを前記抗TNFα薬と共に含む第一の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第一の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記抗TNFα薬の前記レベルを測定する工程と、
を含む工程と;
(b)前記被験者由来の第二の試料中の前記抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程であって、以下の工程:
(i)前記第二の試料を或る量の標識された抗TNFα薬と接触させて前記標識された抗TNFα薬を前記自己抗体と共に含む第二の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第二の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記自己抗体の前記レベルを測定する工程と、
を含む工程と;及び
(c)工程(a)において測定された前記抗TNFα薬のレベルから工程(b)において測定された前記自己抗体のレベルを減算し、それによって前記抗TNFα薬の有効量を決定する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記工程(a)(ii)における検出が、以下の工程:
(1)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の第一プロットから前記標識されたTNFαのピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(2)前記第一のプロットから前記第一の複合体のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(3)工程(2)から得られる積分を工程(1)から得られる積分で除することによって比を決定する工程と;及び
(4)前記標識されたTNFαの前記量に工程(3)の前記比を乗ずる工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)(ii)における前記検出が、以下の工程:
(1)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の第二プロットから前記標識された抗TNFα薬のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(2)前記第二のプロットから前記第二の複合体のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(3)工程(2)から得られる積分を工程(1)から得られる積分で除することによって比を決定する工程と;及び
(4)前記標識された抗TNFα薬の前記量に工程(3)の前記比を乗ずる工程と、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の試料及び第二の試料の双方が血清試料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)(ii)及び/又は工程(b)(ii)における前記検出が蛍光標識検出を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における前記抗TNFα薬の治療量を最適化する方法であって、以下の工程:
(a)請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に従って前記抗TNFα薬の有効量を決定する工程と;
(b)前記抗TNFα薬の前記有効量を前記抗TNFα薬の前記レベルと比較する工程と;及び
(c)工程(b)の比較に基づいて前記被験者に対する前記抗TNFα薬の今後の用量を決定し、それによって前記抗TNFα薬の治療量を最適化する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項7】
以下の工程:
(d)前記抗TNFα薬の有効量が前記抗TNFα薬の前記レベルより少ない場合に、前記抗TNFα薬の今後の用量を増加させる工程、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗TNFα薬の有効量が前記抗TNFα薬の前記レベルとほぼ等しくなるように前記抗TNFα薬の今後の用量を増加させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗TNFα薬が、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗TNFα薬がアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗TNFα薬がエタネルセプト(ENBREL(商品名))である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記標識されたTNFαがフルオロフォア標識されたTNFαである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記測定された抗TNFα薬を定量化する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
最初に前記第一の複合体が、次いでフリーの標識されたTNFαが溶出される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
最初に前記第二の複合体が、次いでフリーの標識されたTNFα薬が溶出される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記サイズ排除クロマトグラフィーがサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記自己抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記測定された抗体を定量化する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験者から前記抗TNFα薬を用いた治療の間に前記第一の試料及び第二の試料の双方を得る、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における治療を最適化し及び/又は前記抗TNFα薬に対する毒性を低減する方法であって、以下の工程:
(a)前記被験者由来の第一の試料中の前記抗TNFα薬のレベルを測定する工程と;
(b)前記被験者由来の第二の試料中の前記抗TNFα薬に対する自己抗体のレベルを測定する工程と;及び
(c)前記抗TNFα薬のレベル及び前記自己抗体のレベルに基づいて前記被験者に対する今後の治療過程を決定し、それによって治療を最適化し及び/又は前記抗TNFα薬に対する毒性を低減する工程、
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記抗TNFα薬の前記レベルが高レベルでありかつ前記自己抗体の前記レベルが低レベルである場合に、今後の治療過程が、前記抗TNFα薬と一緒に免疫抑制薬を同時投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗TNFα薬の前記レベルが中レベルでありかつ前記自己抗体の前記レベルが低レベルである場合に、今後の治療過程が、前記抗TNFα薬のレベルを増加させかつ免疫抑制薬を同時投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記抗TNFα薬の前記レベルが中レベルでありかつ前記自己抗体の前記レベルが中レベルである場合に、今後の治療過程が、異なる抗TNFα薬を投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記抗TNFα薬の前記レベルが低レベルでありかつ前記自己抗体の前記レベルが高レベルである場合に、今後の治療過程が、異なる抗TNFα薬を投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
インフリキシマブ(REMICADE(商品名))の代わりにアダリムマブ(HUMIRA(商品名))を投与する、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
以下の工程:
(i)前記第一の試料を或る量の標識されたTNFαと接触させて前記標識されたTNFαを前記抗TNFα薬と共に含む第一の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第一の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記抗TNFα薬の前記レベルを測定する工程と、
を含むアッセイを用いて前記抗TNFα薬を測定する、請求項22〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
以下の工程:
(i)前記第二の試料を或る量の標識された抗TNFα薬と接触させて前記標識された抗TNFα薬を前記自己抗体と共に含む第二の複合体を形成する工程と;及び
(ii)前記第二の複合体をサイズ排除クロマトグラフィーによって検出し、それによって前記自己抗体の前記レベルを測定する工程と、
を含むアッセイを用いて前記自己抗体を測定する、請求項22〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗TNFα薬がREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗TNFα薬がアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗TNFα薬がエタネルセプト(ENBREL(商品名))である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記測定された抗TNFα薬を定量化する、請求項22〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記測定された自己抗体を定量化する、請求項22〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第一の試料及び第二の試料の双方が血清試料である、請求項22〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記被験者から前記抗TNFα薬を用いた治療の間に前記第一の試料及び第二の試料の双方を得る、請求項22〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記自己抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項22〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫抑制剤がメトトレキセート、アザチオプリン、それらの代謝産物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項41】
抗TNFα薬を有する又は有すると疑われる試料中の前記抗TNFα薬の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、以下の工程:
(a)或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて前記標識されたTNFαと前記抗TNFα薬との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識されたTNFα及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識されたTNFαのピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の前記プロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識されたTNFαの前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;
(f)工程(c)から得られる積分を工程(d)から得られる積分で除することによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記抗TNFα薬の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項42】
工程(e)において決定された第一の比が約80〜約100である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
工程(e)において決定された第一の比が約100である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記標識された内部標準がBiocytin−Alexa488である、請求項41〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記標識された内部標準の前記量が分析された試料100μL当たり約1〜約25ngである、請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者における前記抗TNFα薬の治療量を最適化する方法であって、以下の工程:
請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法による前記第一の比と第二の比との比較に基づいて前記被験者に対する前記抗TNFα薬の今後の用量を決定する工程と;
それによって、前記抗TNFα薬の治療量を最適化する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項47】
以下の工程:
第一の比が約100:1でありかつ第二の比が約95:1より小さい場合に前記抗TNFα薬の今後の用量を増加させ、それによって前記抗TNFα薬の治療量を最適化する工程、
をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記抗TNFα薬が、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗TNFα薬がアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗TNFα薬がエタネルセプト(ENBREL(商品名))である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記標識されたTNFαがフルオロフォア標識されたTNFαである、請求項41〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記検出された標識された抗TNFα及び標識された内部標準を定量化する、請求項41〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
最初に前記複合体が、次いでフリーの標識されたTNFαが溶出される、請求項41〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記試料が血清である、請求項41〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から前記試料を得る、請求項41〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記サイズ排除クロマトグラフィーがサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)である、請求項41〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
抗TNFα薬に対する自己抗体を有する又は有すると疑われる試料中の前記自己抗体の存在又はレベルを内部標準を参照して決定する方法であって、以下の工程:
(a)或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を前記試料と接触させて前記標識された抗TNFα薬と前記自己抗体との複合体を形成する工程と;
(b)サイズ排除クロマトグラフィーによって前記標識された抗TNFα薬及び前記標識された内部標準を検出する工程と;
(c)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度のプロットから前記標識された抗TNFα薬のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(d)前記サイズ排除クロマトグラフィーからの溶出時間の関数としてのシグナル強度の前記プロットから前記標識された内部標準のピークに対する曲線下面積を積分する工程と;
(e)標識された抗TNFα薬の前記量を標識された内部標準の前記量で除することによって第一の比を決定する工程と;及び
(f)工程(c)及び工程(d)から得られる積分を除することによって第二の比を決定する工程と;及び
(g)工程(e)において決定された第一の比を工程(f)において決定された第二の比と比較し、それによって内部標準を参照して前記自己抗体の存在又はレベルを決定する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項60】
工程(e)において決定された第一の比が約80〜約100である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
工程(e)において決定された第一の比が約100である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記標識された内部標準がBiocytin−Alexa488である、請求項59〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記標識された内部標準の前記量が分析された試料100μL当たり約50〜約200pgである、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗TNFα薬が、REMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記抗TNFα薬がインフリキシマブ(REMICADE(商品名))である、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗TNFα薬がアダリムマブ(HUMIRA(商品名))である、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記抗TNFα薬がエタネルセプト(ENBREL(商品名))である、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記抗TNFα薬がCIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)である、請求項59〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記検出された標識された抗TNFα及び標識された内部標準を定量化する、請求項59〜68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
最初に前記複合体が、次いでフリーの標識された抗TNFα薬が溶出される、請求項59〜69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記試料が血清である、請求項59〜70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から前記試料を得る、請求項59〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記サイズ排除クロマトグラフィーがサイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)である、請求項59〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記自己抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項59〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
試料中の抗TNFα薬の存在又はレベル及び抗TNFα薬に対する自己抗体の存在又はレベルを測定するキットであって、以下:
(a)或る量の標識されたTNFαを含む第一の測定基体と;
(b)或る量の標識された抗TNFα薬を含む第二の測定基体と;
(c)場合により、或る量の標識されたTNFα及び或る量の標識された内部標準を含む第三の測定基体と;
(d)場合により、或る量の標識された抗TNFα薬及び或る量の標識された内部標準を含む第四の測定基体と;
(e)場合により、被験者から試料を抽出する手段と;及び
(f)場合により、前記キットを使用するための取扱説明書と、
を含む、前記キット。
【請求項76】
前記標識されたTNFα、前記標識された抗TNFα薬、及び/又は前記標識された内部標準を検出する手段をさらに含む、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
前記検出手段が蛍光標識検出、UV照射検出、又はヨウ素照射を含む、請求項76に記載のキット。
【請求項78】
サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)装置をさらに含む、請求項75〜77のいずれか一項に記載のキット。
【請求項79】
前記第一、第二、第三、及び第四の測定基体がニトロセルロース、シリカゲル、及びサイズ排除クロマトグラフ媒体からなる群から選択される、請求項75〜78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
前記抗TNFα薬がREMICADE(商品名)(インフリキシマブ)、ENBREL(商品名)(エタネルセプト)、HUMIRA(商品名)(アダリムマブ)、CIMZIA(商標)(セルトリズマブ ペゴル)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項75〜79のいずれか一項に記載のキット。
【請求項81】
前記標識されたTNFαがフルオロフォア標識されたTNFαである、請求項75〜80のいずれか一項に記載のキット。
【請求項82】
前記試料が血清である、請求項75〜81のいずれか一項に記載のキット。
【請求項83】
前記抗TNFα薬を用いた治療を受けている被験者から前記試料を得る、請求項75〜82のいずれか一項に記載のキット。
【請求項84】
前記自己抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)、ヒト抗キメラ抗体(HACA)、ヒト抗ヒト化抗体(HAHA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項75〜83のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2013−508739(P2013−508739A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536962(P2012−536962)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054125
【国際公開番号】WO2011/056590
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】