説明

折り畳み式携帯無線機

【課題】 筐体を大きくすることなく、高いアンテナ性能を維持しかつ繰り返し開閉動作を行っても安定した開閉動作が可能な折り畳み式携帯無線機を提供すること。
【解決手段】 第1筐体101内にアンテナ素子121、第2筐体102内に無線回路113、2つの筐体をつなぐヒンジ部100がある。第1筐体101には円筒状軸受け101bが設けられ、その近傍には金属板117配置され、アンテナ素子121と電気的に接続されている、円筒状軸受け部101bと絶縁性円筒軸104は回転摺動面104aで摺動する。金属部材105は絶縁性円筒軸104の内側に固定されるとともに、回転摺動面104aと隣り合う位置に露出面105aを有し、その部分で金属板117との間で容量結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯無線機に関し、特に、ヒンジ部を介して2つの筐体を開閉自在に連結した折り畳み式携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの携帯無線機には折り畳み可能な構造を有するものが広く普及している。このような構造も持つものとしては一般的に上部筐体と下部筐体とがヒンジを介して連結され開閉自在となる構造を有しており、開いた状態と閉じた状態の2つの形態をとることが出来る。
【0003】
このような折り畳み式携帯無線機では、折り畳んだ状態ではコンパクトな形態を取れる為、カバンや洋服のポケットに収納しやすく、開いた状態では表示画面と操作部を上下筐体に各々配置することで使用できる部分の表面積を大きくできる。
このため表示画面を大型化させ視認性を向上させたり、操作ボタンのレイアウトに余裕を持たせることで操作性を向上させることが出来るなどの利点がある。また、筐体の薄型化、小型化のためアンテナの内蔵化も行われている。
【0004】
アンテナ内蔵化の例として、特許文献1では第1の筐体に内蔵され、アンテナとして動作する板状のエレメントと、第2の筐体に内蔵された、送受信回路とが給電線で接続されている形態が提案されている。しかしながら、給電線がヒンジ部内を通る構造であるために、給電線が、その他の導電線による影響や、ヒンジ部による影響を受けて、アンテナ性能が劣化してしまう課題がある。
これに対して、特許文献2では一方の筐体にある給電部からもう一方の筐体にあるアンテナ素子へ給電線で接続する代わりに金属製のヒンジ部を介して信号の受け渡しをする構造が提案されている。
【0005】
一般的には、下部筐体内に設けられ、グランドパターンを有する回路基板の無線部に接続された給電手段からヒンジ部に給電し、ヒンジ部を上部筐体のフレームに導通させて、フレームをアンテナ素子とし、フレーム、ヒンジ部およびグランドパターンをダイポールアンテナとして動作させる構造が知られている。ここでヒンジ部は金属製のトルク発生機構を有するヒンジ軸ユニットを用い、この軸の両端を上筐体、下筐体に各々固定することで上下筐体を回動自在にする場合が多い。
【0006】
ヒンジ軸ユニットは軸形状であって軸方向中央部を境にして両端がねじれるように回転動作するもので、バネとカムが内蔵されて、筐体の開き位置、閉じ位置でトルクを発生させるようになっている。また内部では電気的導通が維持される構造になっている。
一方、特許文献3のように、トルク発生機構を有するヒンジ側の他端にすべり軸受けを使用し、組立て性、コストを改善する例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−156898号公報
【特許文献2】特開2005−6096号公報
【特許文献3】特開2005−51655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、携帯端末の小型軽量化のためヒンジ軸ユニットも小型にすることが望まれている。そこで、小型のヒンジ部の動作を安定させるため、ヒンジ部の一端側にはヒンジ軸ユニットを配置し、他端側にはすべり軸受けを配置するのが一般的である。また、軸受けの中を、上下筐体に配置された回路基板をつなぐ柔軟性のある信号線を挿通させることにより、上下筐体間のデータ受け渡しが可能となる。
また、近年、これらの通信端末においては高機能化のため複数の無線アンテナを内蔵する必要がある。
【0009】
そこで、ヒンジ軸ユニット側だけでなく、軸受け側でも同様に軸受けを金属にしてダイポールアンテナ構造にすることが考えられる。しかしながら、すべり軸受けを使用する為、金属にした場合、摺動動作によって、相手の樹脂部材から発生する樹脂の削り粉により摺動抵抗が増大したり、上部筐体と下部筐体との開閉時にキシミ音が発生するといった課題がある。
【0010】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、筐体を大きくすることなく、高いアンテナ性能を維持しかつ繰り返し開閉動作を行っても安定した開閉動作が可能な折り畳み式携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の折り畳み式携帯無線機は、第1筐体と第2筐体とがヒンジ部によって開閉自在に連結された折り畳み式携帯無線機であって、前記ヒンジ部内にあり、前記第1筐体に設けられた円筒状軸受けと、前記ヒンジ部内にあり、前記円筒状軸受けと回転摺動する面を有する絶縁性円筒軸と、前記絶縁性円筒軸の内側に固定されるとともに、前記回転摺動面と隣り合う位置に露出面を有する金属部材とを備えたことを特徴とする折り畳み式携帯無線機である。
【0012】
上述の構成によれば、開閉動作によって、摺動部から樹脂の削り粉が発生した場合でも、樹脂の削り粉は金属部材の露出面に付着する。詳しく説明すれば、発生した前記樹脂の削り粉はヒンジの開閉動作によってヒンジ部内を移動する。その際、移動時にヒンジ部の部材と接触するため摩擦帯電してしまう。このため前記金属部材の露出面に接触するとクーロン力により強固に付着し、ヒンジ部内を自由に移動することなく前記金属部材の露出面に保持される。このため、樹脂の削り粉が摺動部に舞い戻ってしまうことがなくなり、摺動抵抗の増大や摺動時のキシミ音の発生を抑制することが出来る。
さらには金属部材の露出面と対向する部材とは離間しており、両者の間には空隙があるため樹脂の削り粉があってもそれが開閉動作時の抵抗になることはない。
【0013】
また、本発明では、前記折り畳み式携帯無線機において、前記金属部材の露出面が円筒状表面を有している。
【0014】
この構成によれば、前記金属部材の露出面の表面積を広くとることができ、多くの発生した樹脂粉を表面に付着させることが可能となる。
【0015】
また、本発明では、前記折り畳み式携帯無線機において、前記金属部材の露出面が円筒状表面を有するとともに、前記円筒状表面の少なくとも一部に円筒面から凹んだ部分を有する。
【0016】
この構成によれば、多量の樹脂粉が前記金属部材の露出面に付着した場合でも、樹脂粉が凹みにたまることで、樹脂粉は他の部分に移動することがない。
【0017】
また、本発明では、前記折り畳み式携帯無線機において、前記円筒状軸受け部と前記絶縁性円筒軸の各々の摺動面は緩やかなテーパ形状をなしている。
【0018】
この構成によれば、回転摺動動作時、前記円筒状軸受け部の内壁には前記絶縁性円筒軸の外周を押し返す力が働くが、テーパがあることで両者の間では軸方向にも力が発生する。このため、前記円筒状軸受け部に対して前記絶縁性円筒軸は軸方向で微小に動作する。このことから樹脂粉の摺動面からの掃きだし効果が生じ、前記金属部材の露出面に樹脂粉が移動しやすくなる。
【0019】
また、本発明では、第1筐体と第2筐体とがヒンジ部によって開閉自在に連結された折り畳み式携帯無線機であって、前記第1筐体内に設けられたアンテナ素子と、前記第2筐体内に設けられた無線回路と、前記ヒンジ部内にあり、前記第1筐体に設けられた円筒状軸受けと、前記第1筐体内にあり円筒状軸受けの近傍に配置され、前記アンテナ素子と電気的に接続された金属板と前記ヒンジ部内にあり、前記円筒状軸受けと回転摺動する面を有する絶縁性円筒軸と、前記絶縁性円筒軸の内側に固定されるとともに、前記回転摺動面と隣り合う位置に露出面を有する金属部材と、前記金属部材は、前記無線回路と電気的に接続されるとともに、前記アンテナ素子に電気的に接続された前記金属板との間で前記露出面にて容量結合している。
【0020】
この構成によれば、容量結合によりアンテナ信号の受け渡しをしていることから、金属同士の接点に樹脂粉が入り込んで接触不良を発生させるようなこともない。
【0021】
また、本発明では、前記折り畳み式携帯無線機において、前記金属部材の露出面から延伸した部分が前記絶縁性円筒軸に固定されている。
【0022】
この構成によれば、前記絶縁性円筒軸と前記円筒状軸受けは回転摺動可能なようにガタ無く嵌め合わさっていることから、前記絶縁性円筒軸に固定されている前記金属部材と前記金属板との距離も変動することが無く、容量結合部の容量性リアクタンスが変動することなく安定したアンテナ性能を維持できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る折り畳み式携帯無線機によれば、筐体を大きくすることなく、繰り返し開閉動作を行っても安定した開閉動作ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機の閉じた状態を示す斜視図
【図2】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機の開いた状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機のヒンジ部の内部構成を示す平面図
【図4】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機のヒンジ部内部で発生した樹脂削り粉の付着状態を示す平面図
【図5】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機の絶縁性円筒軸部の一実施例を示す平面図
【図6】本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機の絶縁性円筒軸部の一実施例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に掛かる折り畳み式携帯無線機の閉じた状態を示す斜視図である。
図2は本発明の一実施形態に掛かる折り畳み式携帯無線機の開いた状態を示す斜視図である。
【0026】
図1乃至図2に示すように、折り畳み式携帯無線機100は、第1筐体(上部筐体)101と第2筐体(下部筐体)102とがヒンジ部130によって回転自在に連結され、ヒンジ部130を中心に回動することで、開状態と閉状態の2つの形態をとることが出来る。ここでは第1筐体101と第2筐体102とが折り畳まれた状態が閉状態、展開された状態が開状態である。なお、ヒンジ部130は第1筐体101および第2筐体102に渡って形成されるものである。第1筐体101の一端(第2筐体102と連結する端面)の中央部には半円筒状の凸部131が形成されている。第2筐体102にある前記凸部131に対向する一端には凹部132が形成されている。第1筐体の凸部131と第2筐体の凹部132が係合することでヒンジ部130を形成している。
【0027】
第1筐体101の表面(閉状態で第2筐体に対向する面)には主として第1液晶表示部150、受話部(レシーバー)170等が配置されている。
第1筐体101の裏面には主として第2液晶表示部151が配置されている。
第2筐体の表面(閉状態で第1筐体に対向する面)には主として、送話部(マイクロフォン)160、情報入力ボタン140等が配置されている。
第2筐体の裏面には図示しないがスピーカー、バッテリーカバーが配置され、その内部にはバッテリーが内蔵されている。
【0028】
そして、折り畳み式携帯無線機100に閉状態で着信があった場合、第2液晶表示部151に表示された相手を確認した後、第1筐体101と第2筐体102を開状態にして通話できるようになっている。またメールを送受信する場合も、開状態にて情報入力ボタン140を操作して第1液晶表示部150に表示される文字を操作する。通話またはメールの送受信が終了したならば再び折り畳み式携帯無線機100を閉状態にして衣服のポケットまたはカバン等に収納するようになる。
このようにヒンジ部130を中心とする開閉動作は通話またはメール送受信のたびに繰り返し行われることになる。
【0029】
図3は本発明の実施形態における折り畳み式携帯無線機のヒンジ部の内部構成を示す平面図であり、ヒンジ部130についてより詳細に説明する。
上述したようにヒンジ部130では第2筐体102の凹部に第1筐体101の凸部が嵌まり込むように組み合わさっている。
【0030】
ヒンジ部130の回転軸心Xにはヒンジ軸ユニット103と絶縁性円筒軸104が配置されている。
ヒンジ軸ユニット103は円筒ケース108、固定カム110、可動カム109、圧縮バネ106、シャフト107等から構成されている。構成部品の材質はすべて金属である。
【0031】
固定カム110と円筒ケース108は軸心Xを中心に相対的に見て回転可能なようになっている。シャフト107は固定カム110に接合されていて同時に回転する。また、シャフト107は円筒ケース108に対しては回転可能なように固定されている。
可動カム109の中心には穴が開いていてシャフト107が貫通している。シャフト107の外周面にはDカットが施されており、円筒ケース108の内周面にもそれに対応するように平坦部が設けられている。このため可動カム109は円筒ケース108に対して、軸心Xの方向にスライドして動くことは可能であるが軸心Xを中心に回転することはない。さらに可動カム109は圧縮バネ106の反発力により固定カム110の方向に常に押し付けられている。
【0032】
可動カム109と固定カム110は当接面が互いに嵌り合うように各々山部と谷部を有しており、特定の位置で山部と谷部が嵌り合って状態を固定できるようになっている。可動カム109と円筒ケース108は同位相で回転するため、円筒ケース108の外周を固定して固定カム110を捻るように軸心中心に外部から強い回転力を加えると、カムの山部と谷部のスロープがぶつかり合って、可動カム109を圧縮バネ106側に押し返す力が生じ、山と谷の嵌り合いが解除される。
【0033】
このようにヒンジ軸ユニット103は固定カム110と円筒ケース108が軸心中心に捻り動作可能であり、特定角度でその位相は固定され、またさらに強い一定以上の回転力を加えれば固定が解除されるようになっている。
ヒンジ部130内においては、ヒンジ軸ユニット103は円筒ケース108の外周部分が第1筐体101の凸部の側面に設けられた穴101aに挿入され、動かないように固定されている。もう一方の固定カム110の外周部分は第2筐体102の凹部の内側側面102aに動かないように固定されている。
【0034】
このような構造にすることで第1筐体101と第2筐体102がヒンジ部130の軸心Xを中心に回転することが可能になるとともに、開状態、閉状態で位置が固定され、一定以上の力を加えなければその状態が維持され、また一定以上の力を加えれば開状態から閉状態へ、閉状態から開状態への形態の変化を生じさせることが可能になっている。
上述したようにヒンジ軸ユニット103は折り畳み式携帯無線機100の開閉動作の支軸になるとともにトルクを発生させ開閉状態を維持する機能を果たしている。
【0035】
一方、絶縁性円筒軸104はヒンジ部130のヒンジ軸ユニット103が配置された側の反対側に配置され、第2筐体102の凹部の内側側面102bに一端が固定される。もう一方の端は第1筐体101の凸部の側面に設けられた円筒状軸受け部101bに挿入され、回転動作可能な形で配置されている。
絶縁性円筒軸104は摺動抵抗の低い樹脂、例えばPOM、ポリプロピレン、ポリアミド等で形成され、摺動面104aで円筒状軸受け部101bとの間で軸と軸受けの関係で摺動回転動作をする。
【0036】
次にアンテナに関する部分について説明する。
第1筐体101には金属プレート121が装着されている。金属プレート121には高い導電性を有し、かつ軽く高強度の金属、例えばステンレススチール、アルミニウム合金、マグネシウム合金等が用いられる。これらの金属を用いることで、第1筐体101は薄型で高強度な筐体を実現できるとともに、金属プレート121をアンテナ素子として動作させることが可能となる。
【0037】
第2筐体102の内部には回路基板(図示せず)が設けられ、回路基板上には第1整合回路112、第1無線回路113が配置される。また、第1整合回路112には第1給電端子111が電気的に接続されている。
第1給電端子111は板バネになっており、金属部材105に接触押圧されることで導通を保っている。
【0038】
金属部材105は絶縁性円筒軸104に固定され、絶縁性円筒軸104と一体となって動作する。金属部材105の露出面105aは絶縁性円筒軸104の摺動面104aより直径が小さくなっていて、第1筐体101にある円筒状軸受け部101bに関し、絶縁性円筒軸104が接触して摺動動作しているのに対し、金属部材105の露出面105aは非接触になっている。
【0039】
絶縁性円筒軸104および金属部材105は円筒形の中空構造になっている。このため内部に信号線118を通過させ、上下筐体間の基板をつなぐことが出来る。信号線の代わりに可撓性基板を用いることも可能である。
信号線118が金属部材105に近接するのを防ぐ為、固定部材119を使って固定することが出来る。固定部材119は樹脂、ゴム、スポンジ、テープ等の絶縁材料で出来ており、金属部材105を通過するアンテナ信号が信号線118の影響を受けることを抑制し、安定したアンテナ動作を可能とする。
【0040】
金属部材105の露出面105aに対向する部分には第1筐体101に配置された金属プレート121から延伸して金属板117が配置されている。金属板117と金属部材105の露出面105aとの間で所定の容量性リアクタンスを発生させるように両者を配置することで、両者が電気的接触していない状態でも、容量結合することで信号の受け渡しが可能となり、高いアンテナ性能を確保することが可能となる。
【0041】
一方、本実施形態では金属製であるヒンジ軸ユニット103もアンテナ素子として使用している。第2給電端子114はヒンジ軸ユニット103と電気的に接続されるとともに第2整合回路115を通じて第2無線回路116に繋がっており、無線アンテナとして動作している。
【0042】
折り畳み式携帯無線機100にて筐体の開閉動作を繰り返し行った場合、絶縁性円筒軸104の摺動面104aと第1筐体101に設けられた円筒状軸受け部101bが摺動動作により次第に互いが削れ、樹脂の削り粉が発生する場合がある。このように削り粉が大量に発生した場合、摺動面に入り込んで摺動抵抗を増大させたり、キシミ音が発生することがある。
【0043】
しかし、本発明のような構造をとった場合、図4(b)に示すように樹脂の削り粉(樹脂粉)120は静電気を帯びている為、金属部材105の露出面105aの表面に鏡像力により強固に付着する。また、金属部材105の露出面105aの表面と第1筐体101に設けられた円筒状軸受け部101bの内壁との間には空隙が開いているため、樹脂粉120が第1筐体101に設けられた円筒状軸受け部101bの内壁と接触することは無く、摺動抵抗の増大やキシミ音の発生が抑制される。
【0044】
金属部材105は図4(a)に示すように、金属部材105の露出面105aの少なくとも一部を105bのように円筒外周部から凹ませることで樹脂粉120が第1筐体101に設けられた円筒状軸受け部101bと接触するのをさらに抑制することが出来る。この場合、第1筐体101に配置された金属板117に対向する部分以外に設置することで容量結合部分の電気的性能の劣化が起こることはない。
【0045】
また、アンテナ素子として使用される金属プレート121と金属部材105の間は導電体を接触させて電気的導通を確保しているわけではないので、絶縁性である樹脂粉が入り込んで導通を阻害することが無く、繰り返しの開閉動作を行ってもアンテナ性能が劣化することがない。
【0046】
また、図5のように、円筒状軸受け部101bと絶縁性円筒軸の摺動面104aを緩やかなテーパ形状をなすよう構成することもできる。こうした場合、回転摺動動作時、円筒状軸受け部101bの内壁には絶縁性円筒軸の摺動面104aを押し返す力F1が働くが、テーパがあることで両者の間では軸方向分力F2が発生する。このため、円筒状軸受け部101bに対して絶縁性円筒軸の摺動面104aは矢印Nのように軸方向で微小に動作する。このことから樹脂粉が摺動面から掃きだされ、金属部材の露出面105aに樹脂粉が移動しやすくなる。このため、樹脂粉120が摺動面に残ることが抑制され、摺動抵抗の増大やキシミ音の発生が抑制される。
【0047】
また、図6のように絶縁性円筒軸の摺動面104aの少なくとも一部に穴104bをあけ、金属部材105の表面を露出させることで、樹脂粉120をその部分で捕集することも可能である。このようにすれば、樹脂粉120が摺動面に残ることが抑制され、摺動抵抗の増大やキシミ音の発生が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上述べたように、本発明の折り畳み式携帯無線機によれば、筐体を大きくすることなく、繰り返し開閉動作を行っても安定した開閉動作ができるものであり、複数の筐体が開閉可能に連結された電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0049】
100 折り畳み式携帯無線機
101 第1筐体
101a 第1筐体101の凸部の側面に設けられた穴
101b 円筒状軸受け部
102 第2筐体
102a 第2筐体102の凹部の内側側面
102b 第2筐体102の凹部の内側側面
103 ヒンジ軸ユニット
104 絶縁性円筒軸
104a 摺動面
105 金属部材
105a 金属部材105の露出面
105b 露出面105aの一部
106 圧縮バネ
107 シャフト
108 円筒ケース
109 可動カム
110 固定カム
111 第1給電端子
112 第1整合回路
113 第1無線回路
114 第2給電端子
115 第2整合回路
116 第2無線回路
117 金属板
118 信号線
119 固定部材
120 樹脂の削り粉
121 金属プレート(アンテナ素子)
130 ヒンジ部
131 半円筒状の凸部
132 凹部
140 情報入力ボタン
150 第1液晶表示部
151 第2液晶表示部
160 送話部(マイクロフォン)
170 受話部(レシーバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とがヒンジ部によって開閉自在に連結された折り畳み式携帯無線機であって、
前記ヒンジ部内にあり、前記第1筐体に設けられた円筒状軸受けと、
前記ヒンジ部内にあり、前記円筒状軸受けと回転摺動する面を有する絶縁性円筒軸と、
前記絶縁性円筒軸の内側に固定されるとともに、前記回転摺動面と隣り合う位置に露出面を有する金属部材とを備えたことを特徴とする折り畳み式携帯無線機。
【請求項2】
前記金属部材の露出面が円筒状表面であることを特徴とする請求項1記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項3】
前記円筒状表面の少なくとも一部に円筒面から凹んだ部分を有することを特徴とする請求項2記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項4】
前記円筒状軸受け部と前記絶縁性円筒軸の各々の摺動面がテーパ形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項5】
第1筐体と第2筐体とがヒンジ部によって開閉自在に連結された折り畳み式携帯無線機であって、
前記第1筐体内に設けられたアンテナ素子と、
前記第2筐体内に設けられた無線回路と、
前記ヒンジ部内にあり、前記第1筐体に設けられた円筒状軸受けと、
前記第1筐体内にあり円筒状軸受けの近傍に配置され、前記アンテナ素子と電気的に接続された金属板と、
前記ヒンジ部内にあり、前記円筒状軸受けと回転摺動する面を有する絶縁性円筒軸と、
前記絶縁性円筒軸の内側に固定されるとともに、前記回転摺動面と隣り合う位置に露出面を有する金属部材と、
前記金属部材は、前記無線回路と電気的に接続されるとともに、前記アンテナ素子に電気的に接続された前記金属板との間で前記露出面にて容量結合していることを特徴とする折り畳み式携帯無線機。
【請求項6】
前記金属部材の露出面が円筒状表面であることを特徴とする請求項5記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項7】
前記円筒状表面の少なくとも一部に円筒面から凹んだ部分を有することを特徴とする請求項6記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項8】
前記円筒状軸受け部と前記絶縁性円筒軸の各々の摺動面がテーパ形状をなしていることを特徴とする請求項5記載の折り畳み式携帯無線機。
【請求項9】
前記金属部材の露出面から延伸した部分が前記絶縁性円筒軸に固定されていることを特徴とする請求項5記載の折り畳み式携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216977(P2012−216977A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80293(P2011−80293)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】