説明

折り畳み式携帯用電子機器

【課題】 コンパクトで携帯性に優れているうえ、机上でも滑らずに安心して使用できること。
【解決手段】 入力部が設けられ、平面S上に載置される第1のケース本体2と、入力された情報を表示する表示パネルが設けられた第2のケース本体3と、第1のケース本体側に配置された状態で該両ケース本体を開閉可能に連結すると共に、第2のケース本体を一定角度以上開いたときに第1のケース本体の下面側に潜り込ませるように回転させるヒンジ部4と、第1のケース本体に複数固定されたメイン滑り止め部材30と、第2のケース本体が一定角度開いたときに、平面に接触するように該ケース本体に固定されたサブ滑り止め部材31と、を備え、該サブ滑り止め部材が、第2のケース本体が一定角度からそれ以上の角度で開いている間、メイン滑り止め部材と共に常時平面に接触している折り畳み式携帯用電子機器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運び可能であって、ヒンジ部を介して開閉可能な折り畳み式の携帯用電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機、PDA等の携帯情報端末、電子辞書やノート型パソコン等、数多くの携帯用電子機器が提供されている。この種の携帯用電子機器のうち、手に持ったまま使用するものと、机上等の平面上に載置した状態で使用するものとがある。いずれの状態で使用する携帯用電子機器であっても、コンパクト化を図るための対策の1つとして、折り畳み式のものが知られている。
【0003】
このような折り畳み式の携帯用電子機器は、図22に示すように、一方のケース100と他方のケース101とがヒンジ部102を介して略180度開閉可能に接続されている構造が一般的である。この際ヒンジ部102は、他方のケース101を閉じたときに、両ケース100、101から外側に突出した状態で設けられている場合が多い。これは、携帯用電子機器を開けたときに、一方のケース100と他方のケース101とが平らになるようにするためである。
【0004】
しかしながら、上述したタイプの携帯用電子機器は、小型化が図り難く、より一層のコンパクト化が難しい構造であった。即ち、携帯用電子機器が閉じているときに、ヒンジ部102が両ケース100、101から外側に突出している構造であるので、ケース部分の横幅L1を短く設計したとしてもヒンジ部102の出っ張りの影響を受けて、全体の横幅L2がどうしても長くなってしまう。そのため、コンパクト化を図ることが難しいものであった。
特に、携帯用電子機器を閉じた状態でバックやポケット等に携帯するので、サイズが大きいと邪魔になってしまい、持ち難く、使用者に不快感を与えてしまうものであった。
【0005】
そこで、ヒンジ部をケースの内側に配置して、該ヒンジ部が外側に出っ張ってしまうことを防止したヒンジ構造が知られている。このヒンジ構造は、各種の製品に採用されており、例えば、携帯電話機(特許文献1参照)や、化粧料や化粧用具を収容する容器(特許文献2参照)等に用いられている。
このヒンジ構造を採用することで、ヒンジ部の出っ張りをなくすことができるので、製品全体の幅を抑えることができ、コンパクト化に繋げることができる。
【特許文献1】特開2007−192284号公報
【特許文献2】特開2005−192709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヒンジ部をケースの内側に配置したヒンジ構造を採用した場合には、図23に示すように、両ケース100、101を開いたときに、開き角度が一定の角度以上になると、他方のケース101が一方のケース100の下側に潜り込んでしまう。そのため、両ケース100、101の下面が平らにならず、段差がついてしまうものであった。
【0007】
この点、携帯電話機の場合には、手に持って使用するため、両ケースに段差がついていたとしても何ら問題なく、使用することができる。一方、化粧料や化粧用具を収容する容器の場合には、使用時に両ケースの段差によって机上で斜めになってしまうが、単なる容器として使用するだけであるので、やはり使用にあたって問題ない。
【0008】
ところが、電子辞書やノートパソコン等のように、机上等の平面上に載置した状態で比較的長時間使用する携帯用電子機器に上記ヒンジ構造を採用した場合には、以下の不都合が生じてしまう。
はじめに、この種の携帯用電子機器は、近年多種多様な機能を内蔵するものが開発されており、使用頻度が高い。そのため、自宅で使用するのは当然のこと、大学等で講義を受ける際や、列車での移動の際等にも使用する場合が多々ある。この際、化粧用具を収容する容器とは違い、一方のケースにキーパッド等の入力部が設けられているので、指先から外力を受け易く机上で滑り易い。よって、一方のケースの下面に滑り止め用のラバーが装着されているのが一般的である。特に、大学等では机が若干斜めになっていたり、列車内の簡易テーブル上では走行時の振動を受けたりするので、滑り易く、ラバーが重要な役割を果している。
【0009】
しかしながら、上記ヒンジ構造を採用した結果、他方のケースが一方のケースの下面に潜り込んでしまうと、両ケースの段差によって一方のケースが机上から一部浮き上がってしまう。そのため、ラバーが意味をなさず、机上で滑り易くなってしまう。その結果、使用時に実際に滑ってしまって、使用することができなかったり、机上から滑って落下したりする可能性があった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、コンパクトで携帯性に優れているうえ、机上でも滑らずに安心して使用することができる折り畳み式携帯用電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するたに以下の手段を提供する。
本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、入力部が設けられ、平面上に載置される第1のケース本体と、前記入力部で入力された情報を表示する表示パネルが設けられた第2のケース本体と、前記第1のケース本体側に配置された状態で該第1のケース本体と前記第2のケース本体とを開閉可能に連結すると共に、第2のケース本体を一定角度以上開いたときに第1のケース本体の下面側に潜り込ませるように回転させるヒンジ部と、前記平面に接触するように前記第1のケース本体に複数固定された滑り止め用のメイン滑り止め部材と、前記第2のケース本体が前記一定角度開いたときに、前記平面に接触するように該ケース本体に固定された滑り止め用のサブ滑り止め部材と、を備え、該サブ滑り止め部材が、前記第2のケース本体が前記一定角度からそれ以上の角度で開いている間、前記メイン滑り止め部材と共に常時前記平面に接触していることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、まず第1のケース本体と第2のケース本体とを開閉可能に連結するヒンジ部が、第1のケース本体側に配置されている。そのため、ヒンジ部の出っ張りを抑えることができ、コンパクト化を図ることができる。従って、未使用時における携帯性に優れている。
【0013】
一方、使用する場合には、まず第1のケース本体を机上等の平面上に載置する。この際、第1のケース本体には、メイン滑り止め部材が複数固定されているので、折り畳み式携帯用電子機器自体が平面上で滑ることがない。続いて、ヒンジ部を介して第2のケース本体を回転させて、徐々に開かせる。すると、第2のケース本体は、第1のケース本体側に配置されたヒンジ部の影響を受けて、一定角度以上開くと第1のケース本体の下面側に潜り込むように回転する。そのため、第1のケース本体は、潜り込んだ第2のケース本体によって持ち上げられるので、ヒンジ部側の下面が平面上から浮いた状態となる。よって、複数のメイン滑り止め部材のうち、ヒンジ部側に固定された一部が同様に浮いてしまい、平面から離れてしまう。
【0014】
ところが、第2のケース本体が一定角度開いた時点で、サブ滑り止め部材が平面に接触する。つまり、メイン滑り止め部材の一部が浮いたと同時に、サブ滑り止め部材が平面に接触して、メイン滑り止め部材の代わりに滑り止め機能の役割を果たす。しかも、このサブ滑り止め部材は、第2のケース本体が一定角度以上開いている間、常時平面に接触している。
そのため、第2のケース本体が一定角度からそれ以上の角度で開いている間は、平面から浮かずに依然として該平面に接触し続けているメイン滑り止め部材の残りの一部と、サブ滑り止め部材とが、平面に確実に接触する。よって、第2のケース本体を閉じていたときと同じように、確実な滑り止め機能を発揮させることができる。
【0015】
従って、第1のケース本体に設けられた入力部で入力操作を行ったとしても、滑ることがないので、安心して確実な入力操作を行うことができる。よって、利便性を向上することができ、使用者にとって扱い易い高品質な電子機器とすることができる。
また、第2のケース本体を一定角度以上開くと、第1のケース本体は、該第2のケース本体によって持ち上げられるので平面に対して傾斜した状態となる。つまり、第2のケース本体を開いただけで、入力部が設けられた面が自然と傾いた面となる。よって、使用者は、入力操作を非常に行い易い。加えて、表示パネルが設けられた第2のケース本体も同様に傾斜するので、使用者は表示パネルを視認し易い。これらの点においても、使用者にとって扱い易い高品質な電子機器とすることができる。
【0016】
また、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、上記本発明の折り畳み式携帯用電子機器において、前記サブ滑り止め部材が、前記平面に対して線接触するように帯状に固定されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、サブ滑り止め部材が平面に対して線接触するので、使用中での姿勢がより安定する。よって、滑り止め機能をより効率良く発揮することができる。
【0018】
また、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、上記本発明の折り畳み式携帯用電子機器において、前記サブ滑り止め部材が、前記平面に対して多点接触するように複数固定されていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、サブ滑り止め部材が平面に対して多点接触するので、使用中での姿勢が安定する。よって、滑り止め機能をより効率良く発揮することができる。
【0020】
また、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、上記本発明の折り畳み式携帯用電子機器において、前記サブ滑り止め用部材が、前記第2のケース本体に対して引き出し自在に固定されていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、サブ滑り止め部材を第2のケース本体から引き出すことができるので、第1のケース本体の持ち上げ量を変化させることができる。つまり、第1のケース本体の傾斜角度を、状況に応じて変化させることができる。例えば、サブ滑り止め部材の引き出し量を多くするほど、傾斜角度を大きくすることができる。従って、使用者は、自分にあった最適な傾斜角度で入力操作を行うことができる。よって、操作性をさらに高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、上記本発明の折り畳み式携帯用電子機器において、前記サブ滑り止め用部材が、前記第2のケース本体が前記一定角度を超えて開くにつれて、前記ヒンジ部の回転中心からの回転半径が漸次大きくなる外形ラインを有するように、表面が湾曲に形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、サブ滑り止め用部材がカムの如く形成されているので、前記第2のケース本体を一定角度以上開くにつれて、第1のケース本体の持ち上げ量を大きくすることができる。つまり、第2のケース本体の開き角度を調整するだけで、傾斜角度を大きくすることができる。従って、使用者は、自分にあった最適な傾斜角度で入力操作を行うことができる。よって、操作性をさらに高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器は、上記本発明の折り畳み式携帯用電子機器において、前記サブ滑り止め部材が、前記第2のケース本体が前記一定角度を超えて開く際に、所定角度毎に開き角度が維持されるように、表面が多面状に形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る折り畳み式携帯用電子機器においては、サブ滑り止め用部材の表面が多面状に形成されているので、第2のケース本体を一定角度以上開く際に、所定角度毎に姿勢が安定する。つまり、第2のケース本体の開き角度を変更する度に、サブ滑り止め用部材の各一面が平面に順次面接触するので、その都度姿勢が安定する。そのため、ブレ等がなく第2のケース本体をより静止させることができる。従って、表示パネルが見易くなり、視認性を向上することができる。
更に、サブ滑り止め用部材が平面に対して面接触するので、接触抵抗を増すことができる。従って、滑り止め効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器によれば、コンパクトで携帯性に優れているうえ、机上等の平面上でも滑らずに安心して使用することができ、確実な入力操作を行うことができる。よって、使いやすい、高品質な電子機器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器の一実施形態を、図1から図21を参照して説明する。なお、本実施形態では、折り畳み式携帯用電子機器の一例として、電子辞書を例に挙げて説明する。
【0028】
本実施形態の電子辞書1は、図1から図4に示すように、ボトムケース(第1のケース本体)2と、トップケース(第2のケース本体)3とが、ヒンジ部4を介して開閉可能に連結された折り畳み式のもので、持ち運び可能な小型の携帯用電子機器である。つまり、不使用時にはトップケース3を閉じて折り畳むことができ、薄型でコンパクトなサイズにして、例えばバック等に容易に収納して携帯することができるようになっている。また、使用時には、ボトムケース2に対してトップケース3を回転させることで、使用者の目線に合うようにトップケース3の角度を調整でき、使い易い設計となっている。
なお、この電子辞書1は、ボトムケース2を机上等の平面S上に載置した状態で使用されるものである。
【0029】
ボトムケース2及びトップケース3の一部は、共にプラスチックや、アルミ、ステンレス等の金属材料により薄型の箱状に形成されている。このうち、ボトムケース2には、指先で押下可能な複数のキー10aが所定の鍵盤配列(キーボード配列)で整列されたキーパッド10と、やはり指先で押下可能な複数のファンクションキー11及び各種の機能ボタン12と、からなる入力部13が設けられている。
一方、トップケース3には、上記入力部13で入力された各種の情報を表示する表示パネル14が略全面に亘って設けられており、透明な保護カバー(例えば、プラスチック等の樹脂性のカバー)を通じて視認できるようになっている。なお、この表示パネル14は、例えば5インチ程度のカラー或いはモノクロの液晶パネルである。また、保護カバー15は、必須なものではない。
【0030】
また、ボトムケース2内には、図5に示すように制御部20、メモリ21、充電池22やスピーカ23等が実装された回路基板24が内蔵されている。制御部20は、CPU等の演算処理部、電子辞書1としての各種のプログラム等が記憶されているROM、一時記憶媒体であるRAM、表示パネル14の制御を行う表示制御部等を有している。そして制御部20は、キーパッド10の複数のキー10aやファンクションキー11や機能ボタン12が押下されたときに回路基板24を介して送られてくる信号に基づいて、各構成品を総合的に制御して電子辞書1として各種機能を作動させるようになっている。
【0031】
また、制御部20は、メモリ21に記憶されている音声情報をスピーカ23から音声出力させる機能を有している。なお、スピーカ23から出力された音声は、図3及び図4に示すように、ボトムケース2の表面に設けられた複数の音孔2aから外部に出力されるようになっている。これにより、例えば、検索した外国語を正しい音声(ネイティブ音声)で聞いて学習することも可能とされている。この際、制御部20は、音声出力の情報を表示パネル14にも表示している。そのため、使用者は、目と耳とで検索内容を確認することができるようになっている。なお制御部20は、音声出力の情報だけなく、指先で押下したキー10aを表示したり、その他各種情報(例えば、辞書の内容、単語の検索内容、充電池22の残量、時刻や日付等)を表示したりすることが可能とされている。
【0032】
上記ヒンジ部4は、ボトムケース2とトップケース3とを連結させたときに、図3に示すように、ボトムケース2側に配置されるように設けられている。このヒンジ部4は、トップケース3を閉じた状態から一定角度(略90度)開いたときに、ボトムケース2の下面側に潜り込ませるように回転させるようになっている。
【0033】
また、ボトムケース2の下面には、平面Sに接触する滑り止めラバー(メイン滑り止め部材)30が複数固定されている。この滑り止めラバー30は、所定の摩擦係数を有するラバーであり、本実施形態では、ヒンジ部4側に2箇所、キーパッド10側に2箇所の計4つ固定されている場合を例に示す。但し、4つに限定されるものではない。
【0034】
同様に、図1及び図2に示すように、トップケース3にも滑り止めラバー(サブ滑り止め部材)31が固定されている。この滑り止めラバー31は、上面から端面に亘って固定されており、トップケース3が一定角度開いたときに平面Sに接触するようになっている。つまり、滑り止めラバー31は、トップケース3が一定角度からそれ以上の角度で開いている間(略90度から180度開いている間)、ボトムケース2側の滑り止めラバー30と共に常時平面Sに接触するようになっている。
なお、本実施形態の滑り止めラバー31は、トップケース3の幅方向に沿って間隔を空けて2つ固定されている。よって、平面Sに対して多点接触するようになっている。
【0035】
なお、トップケース3側の滑り止めラバー31と、ボトムケース2側の滑り止めラバー30と、をそれぞれ同じ材質の材料で形成しても構わないし、材質の異なる異種材料で形成しても構わない。所定の摩擦係数を有し、滑り止め効果が期待できる材料であれば、自由に選択してそれぞれを形成して構わない。
特に、本実施形態では、滑り止めラバー30及び滑り止めラバー31をそれぞれ複数固定している場合を例にしているが、同じ滑り止めラバー同士であったとしても、取り付け位置によって材料をかえても構わない。最大の滑り止め効果を発揮させるために、状況に応じて材料を適宜使い分けて構わない。
【0036】
次に、このように構成された電子辞書1を使用する場合について、以下に説明する。
はじめに、使用する前の状態を簡単に説明すると、本実施形態の電子辞書1は、ボトムケース2とトップケース3とを開閉可能に連結するヒンジ部4が、ボトムケース2側に配置されている。そのため、ヒンジ部4の出っ張りを抑えることができ、コンパクト化を図ることができる。
この点、図面を参照して説明する。図6に示す上段は、外側に突出したヒンジ部4を仮に採用した場合の電子辞書であり、下段は本実施形態の電子辞書1を示す。図6に示すように、両ケース2、3を閉じている未使用時において、ヒンジ部4が外側に出っ張っていた距離L3をなくすことができる。
【0037】
加えて、ヒンジ部4がボトムケース2側に配置されているので、トップケース3に設けられている表示パネル14の位置をヒンジ部4側(紙面に対して右側)にずらすことができる。
詳細に説明すると、外側に突出するヒンジ構造を採用した場合には、図7に示すように、トップケース3の一端側にヒンジ部4用の切り欠き孔3aを形成する必要がある。そのため、表示パネル14を配置する際に、この切り欠き孔3aを考慮してトップケース3の下端から距離L4を空けて表示パネル14を配置せざるを得なかった。
これに対して、本実施形態の場合には、上記切り欠き孔3aが不要であるので、図8に示すように、上記距離L4より遥かに小さい距離L5をトップケース3の下端から空けるだけで、表示パネル14を配置することができる。つまり、距離L4と距離L5との差だけ表示パネル14をトップケース3の下端側にずらした状態で配置することができる。よって、その分だけトップケース3の横幅を短くすることができる。
【0038】
その結果、図6に示すように、トップケース3の横幅を従来よりも距離L6だけ短くすることができる。従って、電子辞書1全体の横幅をL7からL8に短くすることができ、コンパクト化を図ることができる。従って、未使用時における携帯性を向上することができる。
【0039】
次に電子辞書1を使用する場合について、説明する。
まず、図9に示すように、ボトムケース2を机上等の平面S上に載置する。この際、ボトムケース2には、4つの滑り止めラバー30が固定されているので、これら4つの滑り止めラバー30の接触によって、電子辞書1が平面S上で滑ることがない。
続いて、閉じているトップケース3を、ヒンジ部4を介して回転させて徐々に開かせる。すると、トップケース3は、ボトムケース2側に配置されているヒンジ部4の影響を受けて、図10に示す一定角度開いた状態からそれ以上の角度が開くと、図11に示すように、ボトムケース2の下面側に潜り込むように回転する。そのため、ボトムケース2は、潜り込んだトップケース3によって持ち上げられるので、ヒンジ部4側の下面が平面S上から浮いた状態となる。よって、4つの滑り止めラバー30のうち、ヒンジ部4側に固定された2つの滑り止めラバー30が同様に浮いてしまい、平面Sから離れてしまう。
【0040】
ところが、図10に示すように、トップケース3が一定角度開いた時点で、該トップケース3に固定されている滑り止めラバー31が平面Sに接触する。つまり、ボトムケース2側の滑り止めラバー30の一部(ヒンジ部4側の2つ)が浮いたと同時に、トップケース3側の滑り止めラバー31が平面Sに接触して、浮いてしまった滑り止めラバー30の代わりに滑り止め機能の役割を果す。しかも、トップケース3側の滑り止めラバー31は、図11に示すように、トップケース3が一定角度以上開いている間、常時平面Sに接触している。
【0041】
そのため、トップケース3が一定角度からそれ以上の角度で開いている間は、平面Sから浮かずに依然として該平面Sに接触し続けているボトムケース2側の滑り止めラバー30の残り2つと、トップケース3側の滑り止めラバー31とが、平面Sに確実に接触する。よって、トップケース3を閉じていたときと同じように、確実な滑り止め機能を発揮させることができる。
特に、トップケース3側の滑り止めラバー31は、2つあるので、平面Sに多点接触する。従って、電子辞書1がぐらつくことなく、姿勢が安定する。よって、滑り止め機能をより効率良く発揮させることができる。
【0042】
その結果、ボトムケース2に設けられたキートップ10等の入力部13で入力操作を行ったとしても、電子辞書1自体が平面S上で滑ることがないので、安心して確実な操作を行うことができる。よって、利便性を向上することができ、使用者にとって扱い易い高品質な電子機器とすることができる。
また、トップケース3を一定角度以上開くと、ボトムケース2はトップケース3によって持ち上げられるので、平面Sに対して傾斜角度θで傾斜した状態となる。つまり、トップケース3を開いただけで、入力部13が設けられた面が自然と傾いた状態となる。よって、使用者は、入力操作を非常に行い易い。加えて、表示パネル14が設けられたトップケース3も同様に傾斜するので、使用者は表示パネル14を視認し易い。これらの点においても、使用者にとって扱い易い高品質な電子機器とすることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、トップケース3側に滑り止めラバー31を2つ固定した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、図12及び図13に示すように、滑り止めラバー31を1つだけ固定しても構わない。但し、トップケース3を開けて、この滑り止めラバー31が平面Sに接触したときに、1点だけで接触した状態となってしまう。そのため、安定性の点において、1つだけ固定するよりも、上記実施形態のように間隔を空けて2つ固定することが好ましい。或いは、3つ以上、固定しても構わない。つまり、滑り止めラバー31が平面Sに対して多点接触するように構成することが好ましい。
なお、平面Sに対して点接触するように滑り止めラバー31を形成(例えば、滑り止めラバー31の先端を球面のように形成)し、これらをトップケース3に複数固定した場合も、複数の点接触を確保することができるので、やはり多点接触の構成に含まれる。
【0044】
更には、図14及び図15に示すように、平面Sに対して線接触するように、滑り止めラバー31を帯状に固定しても構わない。この場合であっても、滑り止めラバー31を2つ固定した場合と同様に、トップケース3を開けたときの姿勢が安定する。従って、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
また、上記実施形態において、滑り止めラバー31を、図16に示すように、トップケース3に対して引き出し自在に固定させても構わない。なお、図16では、帯状に形成された滑り止めラバー31を図示している。
引き出し自在にするためには、例えば図17に示すように、滑り止めラバー31にガイド板31aとストッパ31bとを一体的に形成すれば良い。そして、トップケース3側に図示しないガイド孔を形成し、該ガイド孔内でガイド板31aがスライドするように滑り止めラバー31を取り付ければよい。このように構成することで、使用者が滑り止めラバー31を自在に引き出すことができる。なお、最大限引き出したときに、ストッパ31bがトップケース3の内面に接触するので、滑り止めラバー31が抜け落ちてしまうことがない。
【0046】
このように、滑り止めラバー31を引き出し自在にすることで、ボトムケース2の持ち上げ量を変化させることができる。つまり、図11に示すボトムケース2の傾斜角度θを、状況に応じて変化させることができる。例えば、滑り止めラバー31の引き出し量を多くするほど、傾斜角度θを大きくすることができる。従って、使用者は、自分にあった最適な傾斜角度θで入力操作を行うことができる。よって、操作性をさらに高めることができる、
【0047】
また、上記実施形態において、滑り止めラバー31を、図18に示すように、カムの役割を果すように表面を湾曲させても構わない。具体的には、トップケース3が一定角度を越えて開くにつれて、ヒンジ部4の回転中心Gからの回転半径Rが漸次大きくなる外形ラインを有するように、表面を湾曲させても構わない。
このように、滑り止めラバー31をカムの如く形成することで、図19に示すように、トップケース3を一定角度以上開くにつれて、ボトムケース2の持ち上げ量を大きくすることができる。つまり、トップケース3の開き角度を調整するだけで、ボトムケース2の傾斜角度θを徐々に大きくすることができる。従って、使用者は、自分にあった最適な傾斜角度θで入力操作を行うことができ、操作性をさらに高めることができる。
【0048】
また、上記実施形態において、滑り止めラバー31を、図20に示すように、表面を多面状に形成しても構わない。
このように滑り止めラバー31を多面状に形成することで、トップケース3を一定角度以上開く際に、図21に示すように、所定角度毎に姿勢が安定する。つまり、トップケース3の開き角度を変更する度に、滑り止めラバー31の各一面が平面Sに順次面接触するので、その都度姿勢が安定する。そのため、ブレ等がなくトップケース3をより静止させることができる。従って、表示パネル14が見易くなり、視認性を向上することができる。更に、滑り止めラバー31が平面Sに対して面接触するので、接触抵抗を増すことができる。従って、滑り止め効果をより一層高めることができる。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上記各実施形態においては、携帯用電子機器を電子辞書1として説明したが、電子辞書1に限られるものではなく、机上等の平面S上に載置して使用する折り畳み式のものであれば、特に限定されるものではない。例えば、PDA等の携帯情報端末や、ノート型パソコン等でも構わない。
また、滑り止め用部材の一例として、滑り止めラバー30、31を例に挙げて説明したが、ラバーに限定されるものではない。例えば、所定の粘性を有する樹脂材料を用いて形成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る折り畳み式携帯用電子機器の一実施形態を示す図であって、閉じた状態を前方側から見た外観斜視図である。
【図2】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器を後方側から見た外観斜視図である。
【図3】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器を開けた状態の外観斜視図である。
【図4】図3に示す状態において、ボトムケースとトップケースとの接続を切り離した際の分解斜視図である。
【図5】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の機能ブロック図である。
【図6】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器が閉じている時のサイズを比較するための図であって、上段が外側に突出したヒンジ部を採用した場合の電子機器の断面図であり、下段が図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の断面図である。
【図7】外側に突出したヒンジ部を採用した場合のトップケースの正面図である。
【図8】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器を構成するトップケースの正面図である。
【図9】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器を平面上に載置した状態の側面図である。
【図10】図9に示す状態から、トップケースを略90度開いた状態の側面図である。
【図11】図10に示す状態から、さらにトップケースを開いた状態の側面図である。
【図12】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の変形例であって、トップケース側のサブ滑り止め部材が1つの場合の電子機器を前方側から見た外観斜視図である。
【図13】図12に示す折り畳み式携帯用電子機器を後方側から見た外観斜視図である。
【図14】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の変形例であって、トップケース側のサブ滑り止め部材が帯状に形成されている場合の電子機器を前方側から見た外観斜視図である。
【図15】図14に示す折り畳み式携帯用電子機器を後方側から見た外観斜視図である。
【図16】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の変形例であって、トップケース側のサブ滑り止め部材が飛び出し自在に固定されている場合の斜視図である。
【図17】図16に示すサブ滑り止め部材の斜視図である。
【図18】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の変形例であって、トップケース側のサブ滑り止め部材がカム状に形成されている場合の電子機器の側面図である。
【図19】(a)は、図18に示す状態からトップケースを開いた状態の側面図であり、(b)は(a)の状態からさらにトップケースを開いた状態の側面図である。
【図20】図1に示す折り畳み式携帯用電子機器の変形例であって、トップケース側のサブ滑り止め部材が多面状に形成されている場合の部分的な拡大側面図である。
【図21】図20に示す状態からトップケースを開いた状態の側面図である。
【図22】外側に突出したヒンジ部を有する従来の折り畳み式携帯用電子機器の側面図である。
【図23】一方のケースの内側に配置されたヒンジ部を有する従来の折り畳み式携帯用電子機器の側面図である。
【符号の説明】
【0052】
G…ヒンジ部の回転中心
S…平面
1…電子辞書(折り畳み式携帯用電子機器)
2…ボトムケース(第1のケース本体)
3…トップケース(第2のケース本体)
4…ヒンジ部
13…入力部
14…表示パネル
30…滑り止めラバー(メイン滑り止め部材)
31…滑り止めラバー(サブ滑り止め部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部が設けられ、平面上に載置される第1のケース本体と、
前記入力部で入力された情報を表示する表示パネルが設けられた第2のケース本体と、
前記第1のケース本体側に配置された状態で該第1のケース本体と前記第2のケース本体とを開閉可能に連結すると共に、第2のケース本体を一定角度以上開いたときに第1のケース本体の下面側に潜り込ませるように回転させるヒンジ部と、
前記平面に接触するように前記第1のケース本体に複数固定された滑り止め用のメイン滑り止め部材と、
前記第2のケース本体が前記一定角度開いたときに、前記平面に接触するように該ケース本体に固定された滑り止め用のサブ滑り止め部材と、を備え、
該サブ滑り止め部材は、前記第2のケース本体が前記一定角度からそれ以上の角度で開いている間、前記メイン滑り止め部材と共に常時前記平面に接触していることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の折り畳み式携帯用電子機器において、
前記サブ滑り止め部材は、前記平面に対して線接触するように帯状に固定されていることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の折り畳み式携帯用電子機器において、
前記サブ滑り止め部材は、前記平面に対して多点接触するように複数固定されていることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の折り畳み式携帯用電子機器において、
前記サブ滑り止め用部材は、前記第2のケース本体に対して引き出し自在に固定されていることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の折り畳み式携帯用電子機器において、
前記サブ滑り止め用部材は、前記第2のケース本体が前記一定角度を超えて開くにつれて、前記ヒンジ部の回転中心からの回転半径が漸次大きくなる外形ラインを有するように、表面が湾曲に形成されていることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の折り畳み式携帯用電子機器において、
前記サブ滑り止め部材は、前記第2のケース本体が前記一定角度を超えて開く際に、所定角度毎に開き角度が維持されるように、表面が多面状に形成されていることを特徴とする折り畳み式携帯用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−181280(P2009−181280A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18949(P2008−18949)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】