説明

折り畳み式電子機器

【課題】ヒンジ部を一体に有するケースとヒンジ部の強度向上を合理的に実現する。
【解決手段】ヒンジ部5を一体に有する樹脂の上ケース6と、この上ケース6にインサート成形され、ヒンジ部5内への立ち上がり部13を一体に有するステンレス板11と、を備える。そして、ステンレス板11から立ち上がり部に至る曲げ部にリブ14が形成されている。さらに、立ち上がり部13は、ステンレス板11の一端側に形成した突出部12の先端に形成されている。また、上ケース6の前記突出部12の側方がアンテナ配置領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ部を一体に有する折り畳み式電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話において、筐体の厚みを薄くすると、筐体の剛性確保が必要となり、その強度確保のため、樹脂のケースにステンレスなどの金属板をインサート成形したものがある(例えば特許文献1参照)。
そして、折り畳み式携帯電話において、ケースにヒンジフレームをインサート成形したものもある(特許文献2参照)。また、ケースに一体のヒンジ部にインサート金具をインサート成形したものもある(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006−53532号公報
【特許文献2】特開2002−51132号公報
【特許文献3】特開2007−159165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ケースの強度向上とヒンジ部の強度向上を併せて図ると、例えば特許文献1のような金属板と、特許文献2のようなヒンジフレームや、特許文献3のようなインサート金具などの強度部品が2個必要となり、部品点数を抑えて製造を容易化するためには好ましくない。
【0004】
本発明の課題は、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部を介して折り畳み自在なもので、ヒンジ部を一体に有する筐体とヒンジ部の強度向上を合理的に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部を介して折り畳み自在に結合される電子機器であって、
少なくとも前記第1の筐体あるいは第2の筐体の何れかに設けられ、前記ヒンジ部内への立ち上がり部を一体に有する金属板を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の折り畳み式電子機器であって、前記金属板から前記立ち上がり部に至る曲げ部にリブが形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の折り畳み式電子機器であって、前記立ち上がり部は、前記金属板の一端側に形成した突出部の先端に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の折り畳み式電子機器であって、前記突出部の側方がアンテナ配置領域であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の折り畳み式電子機器であって、前記金属板の一端側に形成した突出部に切欠き部を設け、その金属板を設けた筐体と切欠き部とが一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部を介して折り畳み自在なもので、ヒンジ部を一体に有する筐体とヒンジ部の強度向上を合理的に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した折り畳み式電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3はヒンジ部である。
【0011】
第1の筐体は表示画面による表示部1aを有する表示部筐体1であり、第2の筐体は各種操作キーによる操作部2aを有する操作部筐体2であり、これら表示部筐体1及び操作部筐体2はヒンジ部3を介して折り畳み自在に結合されている。このヒンジ部3は、図示例では、表示部筐体1の一端部に設けたヒンジボス4を、操作部筐体2の一端部に設けた左右一対のヒンジボス5間に、図示しないヒンジ軸を介して結合し装着することで、折り畳み状態から開放できるようになっており、更に、折り畳み状態から開放した状態において表示部筐体1を回転自在に構成されている。
【0012】
図2は操作部筐体2の構成を分解して示すもので、この操作部筐体2は、上ケース6及び下ケース7により構成され、内部に回路基板8等が収納されている。実施形態では、上ケース6がインサート成形ケースであり、回路基板8の端部に地デジ対応アンテナ9が搭載されている。この地デジ対応アンテナ9は操作部筐体2の端部で左右一対のヒンジボス5間に内蔵されている。
【0013】
図3はインサート成形ケースである上ケース6を反対側から見たもので、この上ケース6は樹脂からなるケースであって、その薄型化に伴い補強のため金属板、具体的にはステンレス板11がインサート成形されている。このステンレス板11はプレス加工による板金製で、図4のインサート成形ケースとの分解斜視図及び図5に示すように、上ケース6の各種操作キーによる操作部2aに対応する開口を覆って補強するもので、その長手方向の一端側に左右一対の突出部12を有するとともに、その突出部12の先端に立ち上がり部13を有している。この立ち上がり部13は、突出部12の先端にプレス加工による曲げ部を介して形成されている。
【0014】
また、突出部12は電波の送受信の性能を悪化させないため、後述するようなアンテナ領域を避けた形状となっている。更に、突出部12には切欠き部12aが設けられており、上ケース6を形成する樹脂が切欠き部12a内に充填されるようにインサート成形されるものである。このようにすることで突出部12が落下時のショックなどにより折り曲がって塑性変形してしまうことを防止している。即ち、金属の剛性と樹脂の弾性とを組み合わせることで落下時のショックなどで塑性変形しないようにしている。なお、ステンレス板11は。切欠き部12aを設けずに、その部分をプレスで凸形状、あるいは波板形状にしたりすることで補強するようにしてもよい。また、ステンレス板11の厚みをあつくしたり、金属の材質をかえて突出部12の強度を保てば必ずしも切欠き部12aは必要ない。
【0015】
以上のステンレス板11の立ち上がり部13は、図6に示すように、上ケース6のヒンジボス5内にインサートされている。ここで、図5(a)に示すように、立ち上がり部13を先端に有する左右一対の突出部12の間は、前述した地デジ対応アンテナ9を配置するアンテナ領域Aとなっている。
【0016】
図7はステンレス板11の曲げ加工部を含む端部を拡大して示したもので、突出部12に曲げ部を介して立ち上がり部13が連続するだけの直角に折り曲げた形状でも良いが、図7(a)に示すように、曲げ加工部13aを施した形状にすれば、その曲げ加工部13aにより補強して、曲げ部の強度を向上できる。また、図7(b)に示すように、曲げ部にリブ14を同時プレス加工して施した形状にすれば、その曲げ部をリブ14により補強して、曲げ部の強度を向上できる。なお、図4では、曲げ部をリブ14により補強したステンレス板11を示している。
【0017】
以上、実施形態の操作部筐体2の上ケース6の構造によれば、その上ケース6の各種操作キーによる操作部2aに対応する開口を覆って補強するステンレス板11に左右一対の立ち上がり部13を形成して、この立ち上がり部13をヒンジボス5にインサート成形したため、立ち上がり部13を有するステンレス板11によって、ヒンジボス5を一体に有する上ケース6とそのヒンジボス5の強度向上を合理的に実現できる。
【0018】
また、ステンレス板11を、各種操作キーによる操作部2a、回路基板8等のグランドとして使用でき、さらに、ステンレス板11による電気的なシールド効果も期待できる。
【0019】
そして、立ち上がり部13を先端に有する左右一対の突出部12の間を、地デジ対応アンテナ9を配置するアンテナ領域Aとして有効利用できる。
【0020】
(変形例1)
図8は変形例1を示したもので、前述した実施形態と同様、1は表示部筐体、1aは表示部、2は操作部筐体、2aは操作部、3はヒンジ部である。このヒンジ部3は、図示例では、表示部筐体1の両端部に設けたヒンジボス34に、ヒンジ軸33を装着し、操作部筐体2の中央部に設けたヒンジボス35をヒンジ軸33に装着した構成のものである。即ち、前述した実施形態のものでは操作部筐体2のヒンジボス5間にヒンジ軸を装着していたが、変形例1のものではヒンジ軸33を表示部筐体1のヒンジボス34間に装着するものである。
【0021】
このように、ヒンジ軸33を装着するヒンジボス34を有する表示部筐体1に、図示しない金属板をインサート成形するようにしても良い。
また、前述した実施形態は、表示部筐体1と操作部筐体2が折り畳み自在及び回転自在に構成されているが、変形例1のものでは表示部筐体1が回転はしないものであるが、このようなものにインサート成形するようにしても良い。
【0022】
(変形例2)
図9は変形例2として上ケース6の端部とステンレス板11を分離して示したもので、上ケース6の端部中央にヒンジボス5が形成されて、ステンレス板11の端部中央に突出部12及び立ち上がり部13が形成されている。この場合、表示部筐体1については図示しないが、その端部に左右一対のヒンジボス4が形成されている。
【0023】
そして、立ち上がり部13を先端に有する中央の突出部12の両側は、図示のように、一側方が第1アンテナ領域A1、他側方が第2アンテナ領域A2となっている。
【0024】
このように、端部中央にヒンジボス5を有する上ケース6に対応して、同じく端部中央に突出部12及び立ち上がり部13を有するステンレス板11をインサート成形するようにしても良い。
【0025】
(他の変形例)
なお、以上の実施形態においては、操作部筐体または表示部筐体に適用したが、両筐体に適用しても良い。
そして、実施形態では、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電卓、電子辞書、デジタルカメラ、ビデオカメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコンなどの折り畳み式電子機器すべてに用いることができる。
また、実施形態においては、ステンレス板としたが、他の金属板であっても良い。
また、ステンレス板をインサート成形するのに限らず、接着剤、接着テープなどによって上ケースに固定されたものであっても良い。
さらに、ステンレス板の形状や上ケースの形状及び材質等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した折り畳み式電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話を縦方向に開いた状態を示した斜視図である。
【図2】図1の一方の筐体の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図2のインサート成形ケースを反対側から見た斜視図である。
【図4】図3のインサート成形ケースとステンレス板の分解斜視図である。
【図5】図4のステンレス板の平面図(a)、側面図(b)及び背面図(c)である。
【図6】図3のインサート成形ケースの平面図(a)と、その矢印B-B線に沿った断面図(b)と、その矢印Cで示したヒンジ部の拡大図(c)である。
【図7】図4のステンレス板の曲げ加工部を含む端部の拡大図(a)と、さらにリブ加工を施した図(b)である。
【図8】変形例1を示すもので、携帯電話を縦方向に開いた状態を示した概略側面図である。
【図9】変形例2を示すもので、ケース端部とステンレス板を分離して示した概略平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の筐体
2 第2の筐体
3 ヒンジ部
4 ヒンジボス
5 ヒンジボス
6 上ケース
11 ステンレス板
12 突出部
13 立ち上がり部
14 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部を介して折り畳み自在に結合される電子機器であって、
少なくとも前記第1の筐体あるいは第2の筐体の何れかに設けられ、前記ヒンジ部内への立ち上がり部を一体に有する金属板を備えることを特徴とする折り畳み式電子機器。
【請求項2】
前記金属板から前記立ち上がり部に至る曲げ部にリブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式電子機器。
【請求項3】
前記立ち上がり部は、前記金属板の一端側に形成した突出部の先端に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の折り畳み式電子機器。
【請求項4】
前記突出部の側方がアンテナ配置領域であることを特徴とする請求項3に記載の折り畳み式電子機器。
【請求項5】
前記金属板の一端側に形成した突出部に切欠き部を設け、その金属板を設けた筐体と切欠き部とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の折り畳み式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−100085(P2009−100085A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267733(P2007−267733)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】