説明

折板屋根、折板屋根材及びタイトフレーム

【課題】加工が簡単でコストを抑えることができるにもかかわらず、負圧荷重に対する折板屋根材の取付強度を高めることができる折板屋根を提供する。
【解決手段】折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成される折板屋根に関する。折板屋根材Aは谷部1の両側に斜め上方に突出する山部半体2、2を有すると共に谷部1の略中央部に嵌合係止部9を有する。タイトフレームBは断面逆U字状の固定突部6と固定突部6の両側に突出する固定部16とを有すると共に固定部16は上方に突出する被嵌合係止部10を有する。隣接するタイトフレームBの被嵌合係止部10、10を近接させた状態で折板屋根材Aの嵌合係止部9を嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や工場などの屋根を構成する折板屋根及びこの折板屋根を形成する際に用いられる折板屋根材並びにタイトフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋根下地にタイトフレームを取り付けると共にこのタイトフレームに折板屋根材を取り付けて保持させることによって、折板屋根を形成することが行われているが、折板屋根材をその谷部においても屋根下地に固定して取付強度を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−183884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1のものでは、金属成形板を下地部材に取り付けるための固定具の中間部分に一対の中間固定部を曲げ加工等により形成しているため、中間固定部の形成が難しいという問題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、加工が簡単でコストを抑えることができるにもかかわらず、負圧荷重に対する折板屋根材の取付強度を高めることができる折板屋根、及びこれに用いられる折板屋根材とタイトフレームとを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る折板屋根は、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成される折板屋根であって、折板屋根材Aは谷部1の両側に斜め上方に突出する山部半体2、2を有すると共に谷部1の略中央部に嵌合係止部9を有し、タイトフレームBは断面逆U字状の固定突部6と固定突部6の両側に突出する固定部16とを有すると共に固定部16は上方に突出する被嵌合係止部10を有し、隣接するタイトフレームBの被嵌合係止部10、10を近接させた状態で折板屋根材Aの嵌合係止部9を嵌合して成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る折板屋根材Aは、タイトフレームBにより保持する折板屋根材Aであって、谷部1の両側に斜め上方に突出する山部半体2、2を形成し、隣接するタイトフレームB、Bの固定部16、16に設けた被嵌合係止部10、10を近接した状態で嵌合するための嵌合係止部9を谷部1の略中央部に形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係るタイトフレームBは、折板屋根材Aを保持するためのタイトフレームBであって、断面逆U字状の固定突部6の両側に固定部16、16を突出して形成し、折板屋根材Aの谷部1の略中央部に形成した嵌合係止部9を嵌合するための被嵌合係止部10、10を固定部16、16に形成し、隣接させた固定部16、16の被嵌合係止部10、10同士を近接自在に形成して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、嵌合係止部9を被嵌合係止部10に嵌合して弾性的に係止することによって、折板屋根材Aの谷部1をタイトフレームBに連結して保持することができ、屋根下地に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができるものである。しかも、折板屋根材Aの谷部1の略中央部でタイトフレームB、Bが左右に分割し、被嵌合係止部10、10が合掌形状に接合するなどして近接されているので、折板屋根材Aに負圧の力が作用した場合に、近接した状態の被嵌合係止部10、10を互いに競り合わせることができ、負圧荷重に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができるものである。また、左右に分割されたタイトフレームBの被嵌合係止部10、10を接合するので、タイトフレームBの中間部分に複数の被嵌合係止部10を形成する必要が無く、タイトフレームBの加工が簡単でコストを抑えることができるものである。
【0009】
請求項2の発明は、嵌合係止部9を被嵌合係止部10に嵌合して弾性的に係止することによって、谷部1をタイトフレームBに連結して保持することができ、屋根下地に対する取付強度を高めることができるものである。しかも、谷部1の略中央部でタイトフレームB、Bが左右に分割し、被嵌合係止部10、10が合掌形状に接合するなどして近接されているので、負圧の力が作用した場合に、近接した状態の被嵌合係止部10、10を互いに競り合わせることができ、負圧荷重に対する取付強度を高めることができるものである。
【0010】
請求項3の発明は、嵌合係止部9を被嵌合係止部10に嵌合して弾性的に係止することによって、折板屋根材Aの谷部1を連結して保持することができ、屋根下地に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができるものである。しかも、折板屋根材Aの谷部1の略中央部で左右に分割し、被嵌合係止部10、10が合掌形状に接合するなどして近接されているので、折板屋根材Aに負圧の力が作用した場合に、近接した状態の被嵌合係止部10、10が互いに競り合わせることができ、負圧荷重に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができるものである。また、左右に分割された被嵌合係止部10、10を接合するので、中間部分に複数の被嵌合係止部10を形成する必要が無く、加工が簡単でコストを抑えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明の折板屋根は、折板屋根材AをタイトフレームBにより保持して形成されるものである。
【0013】
図2に示すように、本発明の折板屋根材Aは塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板屋根材Aは断面略U字状に形成されており、谷部1と、その両方の側端部から斜め上方に向かって突出する山部半体2、2とを備えて形成されている。谷部1の幅方向(折板屋根材Aの長尺方向と直交する方向)の略中央部には嵌合係止部9が折板屋根材Aの長手方向の略全長にわたって設けられている。嵌合係止部9は表面側(上側)に向かって突出するように折り曲げ加工することにより形成するものであり、下面が開口する断面略逆U字状に形成するものである。また、嵌合係止部9の下面開口はその幅寸法がやや狭められるように絞られており、その下面開口縁部は係止部9a、9aとして形成されている。上記の一方の山部半体2aは、谷部1の一方の側端から外側方(谷部1と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部3と、この傾斜部3の上端から外側方(谷部1と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状の嵌合部24とから構成されている。また、他方の山部半体2bは、谷部1の一方の側端から外側方(谷部1と反対側)の斜め上方に向かって突出する傾斜部3と、この傾斜部3の上端から外側方(谷部1と反対側)に向かって略水平に突出する頂部23と、この頂部23の端部から上方に向かって突出する断面略倒L字状の被嵌合部25とから構成されている。
【0014】
図3に示すように、本発明のタイトフレームBは矩形状(帯状)の鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、断面逆U字状の固定突部6と、固定突部6の両方の下端から外側(側方)に向かって突出する平板状の固定部16、16と、各固定部16の端部から上側に向かって突出する被嵌合係止部10とを備えて形成されている。固定突部6は略水平板状の頂部8と、頂部8の両側端から外側方(頂部8と反対側)の斜め下方に向かって突出する脚部32、32とを備えて形成されており、脚部32の下端に固定部16が延設されている。また、被嵌合係止部10は固定部16の端部から上側に向かって延設される突出片11と、突出片11の端部(上端)に延設される被係止部12とを備えて形成されている。被係止部12はその上下方向の略中央部が固定突部6の方に向かって突出する断面略く字状又は逆く字状に形成されている。
【0015】
そして、本発明の折板屋根を形成するあたっては、次のようにして施工することができる。まず、複数個のタイトフレームB、B…を建物の母屋などの屋根下地の上に固定する。このとき、タイトフレームBの固定部16を屋根下地の上に載せ、固定部16を溶接などにより屋根下地に接合することによって、タイトフレームBを屋根下地に固定することができる。タイトフレームBは屋根下地の長手方向に並べて複数個取り付けることができ、これにより、屋根下地の長手方向(屋根の傾斜方向と直交する方向)のほぼ全長にわたってタイトフレームBを並設することができる。また、この場合、固定突部6の頂部8の幅方向が屋根下地の長手方向と一致している。そして、隣り合うタイトフレームB、Bの端部に設けた被嵌合係止部10、10同士を接合する。このように隣接する被嵌合係止部10、10を接合するにあたっては、突出片11、11の外面同士を接触させると共に被係止部12、12の先端(上端)同士を接触させるものであり、これにより、隣接する被嵌合係止部10、10を合掌させた状態で接合して近接することができる。
【0016】
次に、屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に一枚の折板屋根材Aを架設する。このとき、屋根下地に取り付けた上記タイトフレームBに折板屋根材Aを上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けた上記タイトフレームBの隣り合う固定突部6、6の間に上記折板屋根材Aの谷部1を位置させて上記タイトフレームBの固定部16の上に載置する。このとき、図4(a)に示すように、接合して近接した状態の被嵌合係止部10、10に折板屋根材Aの谷部1に形成した嵌合係止部9を上側から嵌合し、被嵌合係止部10の被係止部12の下側に嵌合係止部9の係止部9aを係止する。このようにして折板屋根材Aを谷部1の部分でタイトフレームBに連結して取り付ける。また、上記折板屋根材Aの被嵌合部25を設けた方の山部半体2bの頂部23は固定突部6の頂部8の上側に配置する。
【0017】
次に、上記とは別の他の折板屋根材Aを屋根の傾斜方向に並設された複数本の屋根下地の上に架設する。ここで、新たに架設する折板屋根材Aは上記既設の折板屋根材Aに隣接して配置するものであり、これにより、上記の固定突部6、6のうちの一方を挟んで折板屋根材A、Aが隣り合う状態となる。また、新たに架設する折板屋根材Aは、上記と同様に、屋根下地に取り付けたタイトフレームBに上側から被せるように配置し、屋根下地に取り付けたタイトフレームBの隣り合う固定突部6、6の間に谷部1を位置させると共に上記と同様にして嵌合係止部9と被嵌合係止部10とを嵌合して弾性的に係止する。また、新たに架設する折板屋根材Aの既設の折板屋根材Aに近い方の山部半体2aの嵌合部24を、既設の折板屋根材Aの上記山部半体2bの被嵌合部25に上側から嵌め込む。これにより、新たに架設する折板屋根材Aの嵌合部24の内側に既設の折板屋根材Aの被嵌合部25を位置させ、この後、新たに架設した折板屋根材Aの嵌合部24を折り曲げて既設の折板屋根材Aの被嵌合部25の下側に係止させる。このようにして隣接する折板屋根材A、Aの山部半体2a、2b同士をはぜ締め(馳締め)により接合することによって、隣接する山部半体2a、2bとを接続して山部22を形成する。尚、はぜ締めの代わりに、ボルト締めなどの連結方法を採用しても良い。また、タイトフレームBの頂部8に吊子を突設してこの吊子も上記はぜ締めにしてもよい。そして、このようにして複数枚の折板屋根材A、A…を順次接続しながら敷設していくことにより、図1に示すように、山部22と谷部1とが交互に連続して連なった本発明の折板屋根を形成することができる。
【0018】
本発明の折板屋根では、折板屋根材Aの谷部1に嵌合係止部9を設けると共にタイトフレームBの固定部16に被嵌合係止部10を設け、嵌合係止部9と被嵌合係止部10とを嵌合して係止することにより、折板屋根材AとタイトフレームBとを連結するので、折板屋根材Aの上部の山部22での固定(はぜ締めやボルト締め)に加えて、折板屋根材Aの底部の谷部1での固定も組み合わせることができ、タイトフレームB及び屋根下地に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができる。従って、図5に示す従来例の場合、施工後の折板屋根材Aに負圧がかかって、波線で示すように、谷部1が浮き上がってしまうおそれがあるが、本発明では、谷部1が負圧によって浮き上がらないようにすることができる。また、タイトフレームB、Bが左右に分割し、被嵌合係止部10、10が合掌形状に接合するなどして近接されているので、接合して近接した状態の被嵌合係止部10、10を互いに競り合わせることができ、負圧に対する折板屋根材Aの取付強度を高めることができる。また、左右に分割されたタイトフレームBの被嵌合係止部10、10を接合するので、タイトフレームBの中間部分に複数の被嵌合係止部10を形成する必要が無く、タイトフレームBの加工が簡単でコストを抑えることができる。
【0019】
尚、被嵌合係止部10の形状は特に限定されず、嵌合係止部9に嵌合して係止することができれば良く、例えば、図4(b)に示すものでは、被嵌合係止部10は固定部16の端部から上側に向かって延設される突出片11と、突出片11の端部(上端)に延設される被係止部12とを備えて形成されているが、被係止部12は突出片11の上端から固定突部6側の斜め下方に向かって突出して形成されている。そして、この場合、隣接する被嵌合係止部10、10は突出片11、11の外面同士を接触させることによって、合掌状態に接合されるものであり、また、被係止部12の先端(下端)に係止部9aを係止することによって、嵌合係止部9と被嵌合係止部10とを嵌合して係止し、折板屋根材AとタイトフレームBとを連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の折板屋根の実施の形態の一例を示す一部の断面図である。
【図2】同上の折板屋根材の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図3】同上のタイトフレームの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)は本発明の折板屋根の実施の形態の一例を示す一部の拡大図である。
【図5】従来例を示す一部の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 谷部
2 山部半体
6 固定突部
9 嵌合係止部
10 被嵌合係止部
16 固定部
A 折板屋根材
B タイトフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根材をタイトフレームにより保持して形成される折板屋根であって、折板屋根材は谷部の両側に斜め上方に突出する山部半体を有すると共に谷部の略中央部に嵌合係止部を有し、タイトフレームは断面逆U字状の固定突部と固定突部の両側に突出する固定部とを有すると共に固定部は上方に突出する被嵌合係止部を有し、隣接するタイトフレームの被嵌合係止部を近接させた状態で折板屋根材の嵌合係止部を嵌合して成ることを特徴とする折板屋根。
【請求項2】
タイトフレームにより保持する折板屋根材であって、谷部の両側に斜め上方に突出する山部半体を形成し、隣接するタイトフレームの固定部に設けた被嵌合係止部を近接した状態で嵌合するための嵌合係止部を谷部の略中央部に形成して成ることを特徴とする折板屋根材。
【請求項3】
折板屋根材を保持するためのタイトフレームであって、断面逆U字状の固定突部の両側に固定部を突出して形成し、折板屋根材の谷部の略中央部に形成した嵌合係止部を嵌合するための被嵌合係止部を固定部に形成し、隣接させた固定部の被嵌合係止部同士を近接自在に形成して成ることを特徴とするタイトフレーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174251(P2009−174251A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16375(P2008−16375)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】