説明

折畳み式テントを有した搬送車両

【課題】折畳み式テントを備えた搬送車両において、テントを折畳んだとき、その屋根部に溜まっていた雨水がテントから遠くに飛散することを防止する。
【解決手段】搬送車両1は、テント3を車体2の荷台21に備え、テント3はテント空間の屋根部41と側面部42とを成すシート4と、シート4を支持してテント空間を形成するための、互いに略平行で、かつ間隔を調整可能に配設された複数のアーチ型支柱5とを備え、シート4はアーチ型支柱5の間隔を狭めて折畳まれ、かつ、導水用の紐部6を有する。紐部6は一端側が屋根部41の互いに隣接するアーチ型支柱5間に固定され、他端側が側面部42に沿って垂れ下がるように配設される。これにより、屋根部41に雨水200が付着したテント3を折畳んだとき、雨水200は紐部6を伝って屋根部41から側面部42に沿って車体2の近くに落下される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアーチ型支柱で防水カバーシートを支える折畳み式テントを有した搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の折り畳み式テントを有した従来の搬送車両を図7及び図8に示す。この搬送車両100は、その車体101の荷台に折畳み式テント(以下、テントという)102が設けられている。テント102は、テント空間の屋根部121と側面部122とを成す防水カバーシート(以下、シートという)120を、互いに略平行で、かつ間隔を調整可能に配設された複数のアーチ型支柱123で支持してテント空間を形成し、アーチ型支柱123の間隔を狭めることにより、車体2の長手方向に折畳まれる。
【0003】
搬送車両100が雨天時にテント102内に搬送物(不図示)を収納して屋外を走行後、屋内で搬送物を直ぐに取り出す際、テント102は屋根部121表面に雨水200が残っている状態で折畳まれることになる。このとき、テント102が折畳まれるに連れて、雨水200は屋根部121のアーチ型支柱123間にできる谷間124に溜まって行き、谷間124に沿って次第に勢いを増して側面部122に向って流れ、特にテント102がある程度のスピードで勢いよく折畳まれると、側面部122を越えて車体101から比較的遠く離れた位置まで飛散するようになる。このため、倉庫内で搬送車両100から離れて置かれてある製品130等に不用意に雨水200が掛かることがあり、保管製品等が濡れて被害を受けるという問題があった。
【0004】
ところで、4本のテント支柱間にトラスト構造を成す複数の折畳み可能なXフレームを架け渡し、Xフレームに沿うように屋根幕の縁部を連結させて谷線を形成し、この谷線に沿って雨水を流下させ、屋根幕に雨水が溜まらないようにしたテントの屋根幕構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この屋根幕構造を用いる折畳み式テントでは、雨天時に使用後など、雨水が屋根幕に残っているテントを折畳んだとき、雨水が谷線に沿って流れ、テントから遠くに飛散することがある。
【0005】
また、2本のロープの間に張り渡されたシートの最も垂れ下がった部分の付近に設けた排水孔と、シートの裏側に配置された排水管とを連結する排水構造を持つテントが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、テント軒先に向うシートの傾斜面に沿って直線状の重り部材を取付けて形成される凹溝により排水する導水構造を持つテントが知られている(例えば、特許文献3参照)。また、シートの裾を下方に延長し、外側に折り返して形成される集水溝に排水口を設けた雨除用シートを持つ軒先用テントが知られている(例えば、特許文献4参照)。また、テントの前後または全周の雨水の雫が垂れる位置に伸縮自在の雨樋を取付けた雨樋付きテントが知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、これら特許文献2乃至特許文献5に示される各種テントは、テント張設時に屋根幕に雨水が溜まらないようにはできるが、テント構造が折畳み式でなく、使用時に設置する組立て式のものであるので、使用後にテントを折畳んで収納したり、必要な時に直ぐに開放して使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3931157号
【特許文献2】特開昭63−300176号公報
【特許文献3】実開平5−67773号公報
【特許文献4】実公平3−23457号公報
【特許文献5】登録実用新案第3057257号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、テントを折畳んだとき、テント上に溜まった雨水のテントからの飛散を防止することができる折畳み式テントを有する搬送車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、折り畳み式テントを車体の荷台に備えた搬送車両において、前記折り畳み式テントは、テント空間の屋根部と側面部とを成す防水カバーシートと、このカバーシートを支持してテント空間を形成するための、互いに略平行で、かつ間隔を調整可能に配設された複数のアーチ型支柱と、を備え、前記アーチ型支柱は、車体の前後又は左右方向に移動自在で、かつ該アーチ型支柱の間隔を任意に調整自在に設けられ、前記カバーシートは、前記アーチ型支柱の間隔を狭めて折畳まれる構造とされ、かつ、導水用の紐部が備えられているものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の折り畳み式テントを有する搬送車両において、前記紐部は、一端側が前記カバーシートの屋根部の互いに隣接する前記アーチ型支柱間に固定され、他端側が側面部に沿って垂れ下がるように配設されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、カバーシート上に雨水が溜まった状態でテントが折畳まれたとき、雨水が紐部により、その紐部に沿う方向に流れるように導水されるので、テント上からの雨水の飛散を防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、雨天時に屋外を走行後、屋内でテントが折畳まれたときなどに、カバーシートの屋根部に溜まっていた雨水が紐部を伝って屋根部から側面部に沿って車体近くの地面側に流れ落ちるので、テントから遠くに飛散することを防止することができ、テントから離れている人や物を不用意に濡らすことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る折り畳み式テントを備えた搬送車両の一部破断斜視図。
【図2】同搬送車両の正面図。
【図3】同搬送車両の側断面図。
【図4】同搬送車両のテントを折畳んだ状態を示す図。
【図5】同上におけるテント上に溜った雨水が流れ落ちる状態を示す斜視図。
【図6】同上状態での搬送車両の正面図。
【図7】従来の折り畳み式テントを備えた搬送車両の斜視図。
【図8】同搬送車両のテント折畳み時におけるテント上に溜った雨水が流れ落ちる状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る折り畳み式テントを有した搬送車両について図1乃至図5を参照して説明する。図1及び図2は、本実施形態における折り畳み式テントを有した搬送車両(以下、搬送車両という)1の構成を示す。搬送車両1は、地面と略平行な矩形状の平面を有する荷台21を備えた車体2と、荷台21上に装着された折り畳み式テント(以下、テントという)3とを有する。
【0015】
車体2は、荷台21を支える車輪22と、車輪22を駆動させるため、荷台21の長手方向の一端側に設けられた操作駆動部23と、荷台21の長手方向の両縁側に沿ってそれぞれ形成されたL字型の溝部24とを有する。操作駆動部23はユーザの操作に基づき車体2を、例えば道路の予め設定された動線にしたがって移動させるように制御する。この搬送車両1は、例えば、工場、倉庫等で使用される荷搬送用車両であり、走行経路の路面上に敷設される誘導線を検知する誘導線センサを備えるなどして、誘導線に沿って無人で自動走行することが可能である。溝部24は荷台21上のテント3の折畳み移動をガイドするためのガイド溝であり、L字型に限らず、凹形溝等も可能である。
【0016】
テント3は、テント空間の屋根部41と側面部42とを成す防水カバーシート(以下、シートという)4と、このシート4を支持してテント空間を形成するための、複数のアーチ型支柱5とを備える。アーチ型支柱5は互いに略平行で、かつ間隔を調整可能に荷台21上に略直角に配設される。アーチ型支柱5は、車体2の前後方向に移動自在で、かつアーチ型支柱5の間隔を任意に調整自在に設けられる。
【0017】
シート4は、アーチ型支柱5の間隔を狭めて折畳まれる構造とされ、かつ、ビニールや布製等から成る導水用の紐部6を複数本備える。紐部6の各々は一端側が屋根部41の互いに隣接するアーチ型支柱5間の略中間ライン上に固定され、他端側がテント3の長手方向の側面部42に沿って垂れ下がるように配設されている。また、紐部6は屋根部41から側面部42に密着するように直線的に折り曲がって垂れてもよいが、ここでは、ある程度の曲線を成して側面部42に密着しないように配置している。また、紐部6は細いビニールや布紐で編んだ所定の太さの綱状やビニールの管状でもよく、また、複数本の紐を略平行に配置するものや、紐の一方の先端側をばらして短冊状に垂れ下げるようにしてもよい。
【0018】
アーチ型支柱5は、パイプ状等の部材から成り、屋根部41を支える山形部51と、山形部51の両端からそれぞれ荷台21に略直角に立設される直線柱部52と、これら直線柱部52間の上部を一定間隔で支持する梁部53とを有する。直線柱部52はその足元にアーチ型支柱5を移動可能とするコマ部50を備える。コマ部50は回転止めを持つコマ車輪を有し、アーチ型支柱5を荷台21の溝部24に沿って移動および係止可能とする。
【0019】
図3は、テント3内からその長手方向の側面部42側を見たテント内側面を示す。テント3は、シート4を折畳むために、車体2の長手方向に開閉される多段パンタグラフ機構7を有している。多段パンタグラフ機構7は、互いにX字状を成す2つの矩形のフレーム71を組として順次、互いに各アーチ型支柱5に回転可能に取り付けることにより形成される。ここでは、各アーチ型支柱5の直線柱部52は、その上下に異なるフレーム71の各一端を係止するための、上係止部54及び下係止部55がそれぞれ設けられている。
【0020】
上係止部54は、直線柱部52の上部に固定される矩形の筐体を有し、筐体はそのテント3内を臨む側面側の上下方向に縦長のスロット孔56が設けられている。この上係止部54は、フレーム71の上端側をスロット孔56内で上下移動、及び回転可能にねじ止めして係止する。下係止部55は、直線柱部52に設けられたねじ孔とねじから成り、X字状を成すフレーム71の下端側を直線柱部52に回転自由にねじ止めして係止する。
【0021】
ここでは、X字状を成す各組のフレーム71は、それらの中間点72で互いにクロスされ、回転自由にねじ止めされる。また、各フレーム71の両端は、一列を成すアーチ型支柱の前後両端の支柱を除いて、隣接するアーチ型支柱5の上、下係止部54、55で回転自由に1つのねじで互いに共締めされる。このとき、上、下係止部54、55で各2本づつねじ止めされる4本のフレーム71により、それらフレーム71の略1/2の長さの4辺で囲まれた菱形枠70(一点鎖線で示す)が順次形成される。
【0022】
これらの菱形枠70は、上係止部54及び下係止部55で各固定される点を上下方向の頂点とし、X字状の各中間点72を左右方向の頂点とするので、上下左右に変形自在に互いに連動して動くことができ、パンタグラフ動作を行うことができる。したがって、各アーチ型支柱5が菱形枠70により互いに連結して支持されていることにより、テント3は、ユーザによってアーチ型支柱5の間隔が伸縮されると、これと連動して菱形枠70が伸縮することにより、シート4が折畳まれてスムーズに開閉される。すなわち、各アーチ型支柱5は車体2の前後方向に一列に配列されて移動自在に折畳まれ、アーチ型支柱5の間隔を任意に調整自在とされる。なお、各アーチ型支柱5を車体2の左右方向に配列して、前記と同様に折畳むこともできる。
【0023】
図4は、テント3が折畳まれた状態の内部側面を示す。ここでは、テント3は車体2の前後方向の一端側に折畳まれ、多段パンタグラフ機構7が長手方向に収縮された状態となる。ここで、シート4が折畳まれていくと、互いに隣接するアーチ型支柱5間の屋根部41には、その中間ラインに沿ってV字形状の谷部41aが形成される。このとき、紐部6はこの谷部41aの底側を這うように位置される。なお、紐部6は、谷部41aの底部の近傍となる屋根部41の略中間ライン上に沿って、予め固定されていてもよい。
【0024】
ここで、雨水が付着したテント3を折畳んだときのシート4からの雨水の落下状態について図5及び図6を参照して説明する。搬送車両1が雨天時にテント3内に搬送物(不図示)を収納して屋外を走行後に、倉庫内などの屋内で、テント3内の搬送物を取り出すために、テント3が折畳まれる。このとき、シート4は屋根部41の表面に雨水200が残っている。そのため、屋根部41の雨水200は、シート4が折畳まれるにしたがって深くなる谷部41aに流れ込むと共に、谷部41aの底側に横たわる紐部6に沿い、シート4が屋根部41から側面部42側に折れ曲がるテント3の軒側に向って流れて行く。
【0025】
さらに、屋根部41上の紐部6に沿って流れてきた雨水200は、テント3の軒側で、紐部6との表面張力により、テント3がある程度のスピードをもって勢いよく折畳まれた場合にも、側面部42に沿って垂れ下がる紐部6を伝って地面に流れ落ちる。紐部6は側面部42と密着せず、少し離れて垂れ下がっているので、雨水200は紐部6の側面の全周囲を伝って車体2の近くに落ちる。
【0026】
このように、本実施形態の搬送車両1によれば、テント3の屋根部41から側面部42に沿って地面に垂れ下がる導水用の紐部6を備えたことにより、屋根部41に雨水200が溜まった状態でテント3を折畳んだ際、雨水200が紐部6を伝って車体2近くの地面側に落ちるようにガイドされるので、テント3から遠く離れた位置に飛散することを防止することができ、倉庫内で車体2から遠くに離れた場所に居る人や保管製品などを雨水200で不用意に濡らすことがない。
【0027】
また、従来では、雨水200の飛散距離の予想が困難であるので、倉庫内の荷物を雨水飛散で濡れないように、十分余裕をみた距離を取って車体2から遠ざける必要があり、比較的広い倉庫を必要としたが、本実施形態では、雨水200は殆ど車体2から遠くに飛散しないので、狭い倉庫内でも雨水飛散の影響を受けずに、荷下ろしすることが可能となる。
【0028】
また、紐部6の長さを地面近くまで延ばすことにより、地面に落下する雨水200の飛散をより抑制できる。なお、紐部6は晴天時には折り重ねて小さくし、テント3の屋根部41や側面部42に接着テープなどを用いて固定してもよく、また、テント3での固定を取り外し自由とし、雨天時にのみ、テント3に取り付けるようにしてもよい。
【0029】
なお、本発明は上記各種実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、テント3は車体2上に配設され、幌用としての使用される場合を示したが、これに限らず、例えば店舗やホテルの出入口の通路など、地面に直接設置する雨避け用の折畳み式アーケードなどとして使用することもできる。また、上記テント3は、折畳みが手動式の場合を示したが、例えばアーチ型支柱5のコマ部50のコマ車輪にスプロケット(歯車)を設け、スプロケットにチェーンを組合わせ、チェーンにモータの回転を動力伝達してアーチ型支柱5間隔を自動調整するなどによる自動折畳み式であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 搬送車両
2 車体
21 荷台
3 テント(折畳み式テント)
4 シート(防水カバーシート、カバーシート)
41 屋根部
42 側面部
5 アーチ型支柱
6 紐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み式テントを車体の荷台に備えた搬送車両において、
前記折り畳み式テントは、
テント空間の屋根部と側面部とを成す防水カバーシートと、
このカバーシートを支持してテント空間を形成するための、互いに略平行で、かつ間隔を調整可能に配設された複数のアーチ型支柱と、を備え、
前記アーチ型支柱は、車体の前後又は左右方向に移動自在で、かつ該アーチ型支柱の間隔を任意に調整自在に設けられ、
前記カバーシートは、前記アーチ型支柱の間隔を狭めて折畳まれる構造とされ、かつ、導水用の紐部が備えられていることを特徴とする折り畳み式テントを有した搬送車両。
【請求項2】
前記紐部は、一端側が前記カバーシートの屋根部の互いに隣接する前記アーチ型支柱間に固定され、他端側が側面部に沿って垂れ下がるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式テントを有した搬送車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−73608(P2011−73608A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227991(P2009−227991)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】