説明

抵抗付き温度ヒューズの製造方法

【課題】次の工程への搬送や封止工程のときにリード導体とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント自体にクラックが生じるのを防止することができる抵抗付き温度ヒューズの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る抵抗付き温度ヒューズの製造方法は、絶縁基板4の他方の片面を支持基板8上に固着するとともに、この絶縁基板4と並置して一対のリード導体6を支持基板8上に固着する工程と、支持基板8上に固着された絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とに跨ってヒューズエレメント7を配してヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とを電気接続する工程と、支持基板8上の絶縁基板4及び支持基板8上の一対のリード導体6の部分を絶縁封止物9で封止する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器の保護素子である抵抗付き温度ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抵抗付き温度ヒューズとして、膜抵抗と、この膜抵抗の両側に電気接続した状態でリード導体用膜電極及びヒューズエレメント用膜電極とを配したセラミックス基板を使用したものがある。リード導体用膜電極にはリード導体が電気接続した状態で固着され、ヒューズエレメント用膜電極の両側方には一対のリード導体がそれぞれ配置されている。一対のリード導体及びヒューズエレメント用膜電極にはヒューズエレメントが跨った状態で設けられてこれら一対のリード導体及びヒューズエレメント用膜電極を電気接続している。このヒューズエレメントを含めてそのセラミックス基板全体が樹脂で塗布されて封止されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−87783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の抵抗付き温度ヒューズはその製造工程において、先ずセラミックス基板のヒューズエレメント用膜電極の両側方に一対のリード導体を配する。次に、この一対のリード導体に跨った状態でヒューズエレメントを配することで、ヒューズエレメントを上記一対のリード導体間およびヒューズエレメント用膜電極に接続する。その後、セラミックス基板は次の工程に搬送される。
この搬送のとき速度を上げれば上げるほど上記リード導体は強く振動する。この振動が、リード導体とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント自体に集中的に負荷されるため、上記接続した箇所あるいヒューズエレメント自体にクラックが生じるおそれがある。
また、この抵抗付き温度ヒューズの製造工程においては、セラミックス基板全体を樹脂で塗布して封止する工程がある。この工程では、上記一対のリード導体を持ち上げることで、セラミックス基板も持ち上げる。そして、この持ち上げた状態で、セラミックス基板全体を樹脂で塗布して封止することになる。しかしながら、上記持ち上げにおいても速度を上げれば上げるほど上記リード導体は強く振動する。したがって、この場合においても、振動が、リード導体とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント自体に集中的に負荷され、上記接続した箇所あるいヒューズエレメント自体にクラックが生じるおそれがある。
このクラックが生じると、ヒューズエレメントの抵抗値が変わって抵抗付き温度ヒューズの動作温度が設定温度と相違してくることになる。
【0005】
本願発明は、次の工程への搬送や封止工程のときにリード導体とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント自体にクラックが生じるのを防止することができる抵抗付き温度ヒューズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、膜抵抗(1)とこの膜抵抗(1)に電気接続するリード導体用膜電極(2)及びヒューズエレメント用膜電極(3)とが一方の片面に配された絶縁基板(4)と、前記リード導体用膜電極(2)に電気接続されたリード導体(5)と、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)の両側方に配された一対のリード導体(6)と、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)と前記リード導体(6)とに跨って配されてこれらヒューズエレメント用膜電極(3)と一対のリード導体(6)とを電気接続するヒューズエレメント(7)とを備えた抵抗付き温度ヒューズの製造方法であって、
前記絶縁基板(4)の他方の片面を支持基板(8)上に固着するとともに、この絶縁基板(4)と並置して前記一対のリード導体(6)を前記支持基板(8)上に固着する工程と、
前記支持基板(8)上に固着された前記絶縁基板(4)のヒューズエレメント用膜電極(3)と前記一対のリード導体(6)とに跨って前記ヒューズエレメント(7)を配して前記ヒューズエレメント用膜電極(3)と前記一対のリード導体(6)とを電気接続する工程と、
前記支持基板(8)上の前記絶縁基板(4)及び前記支持基板(8)上の前記一対のリード導体(6)の部分を絶縁封止物(9)で封止する工程と
を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記支持基板(8)上に一対の膜電極(13)が設けられ、
前記各膜電極(13)に、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)に電気接続される前記リード導体(6)を半田付けで固着することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記支持基板(8)上に、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)に電気接続される前記リード導体(6)を接着剤で固着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願請求項1に記載の発明によれば、ヒューズエレメントと接続するリード導体を支持基板上に固着させることにより、次の工程への搬送や封止工程においてリード導体が振動する場合に、そのリード導体の振動をリード導体と支持基板との固着部分で抑えることができる。このためリード導体からの振動により、リード導体とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極とヒューズエレメントを接続した箇所あるいはヒューズエレメント自体に負荷が集中してクラックが生じるのを防止することができる。
【0010】
本願請求項2に記載の発明によれば、リード導体を支持基板の膜電極に半田付けで固着させているため、スポット溶接などでリード導体を支持基板の膜電極に溶接する場合のように支持基板が変形するおそれがない。
【0011】
本願請求項3に記載の発明によれば、リード導体を接着剤で支持基板に固着させているため、半田付け又は溶接で固着させる場合のように支持基板に熱的ストレスを与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の抵抗付き温度ヒューズの製造方法により製造された抵抗付き温度ヒューズの一例を示す一部切り欠きの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの側面断面図である。
【図2】(a)は図1に示された抵抗付き温度ヒューズの絶縁基板の平面図であり、(b)は(a)の絶縁基板の裏側平面図である。
【図3】図1に示された抵抗付き温度ヒューズの支持基板の平面図である。
【図4】(a)は本発明の第1実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法であってヒューズエレメントを設ける前の抵抗付き温度ヒューズの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体側から示した図である。
【図5】(a)は本発明の第1実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法であってヒューズエレメントを設けた後の抵抗付き温度ヒューズの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体側から示した図である。
【図6】(a)は本発明の第1実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法であって図5のヒューズエレメントの外面にフラックス塗布した後の抵抗付き温度ヒューズの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体側から示した図である。
【図7】(a)は本発明の第1実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法であって図6の抵抗付き温度ヒューズに絶縁封止物を設けた後の抵抗付き温度ヒューズの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの裏側平面図であり、(c)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体側からを示した図であり、(d)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの側面図であり、(e)は(d)に示された抵抗付き温度ヒューズの部分断面図である。
【図8】本発明の抵抗付き温度ヒューズの製造方法において別例を示す平面図である。
【図9】(a)は本発明の第2実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法により製造された抵抗付き温度ヒューズを示す一部切り欠きの平面図であり、(b)は(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの絶縁基板の表面側を示す平面図であり、(c)は(b)に示された絶縁基板の裏面側を示す裏側平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る抵抗付き温度ヒューズの製造方法の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
本発明の第1実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法により製造された抵抗付き温度ヒューズは、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すように、膜抵抗1とこの膜抵抗1に電気接続するリード導体用膜電極2とヒューズエレメント用膜電極3とが一方の片面(表面)に配された絶縁基板4を備える。絶縁基板4のリード導体用膜電極2にはリード導体5が膜電極10を介して電気接続され、絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3の両側方には一対のリード導体6がそれぞれ配されている。絶縁基板4の他方の片面(裏面)は支持基板8上に固着され、この絶縁基板4と並置して、リード導体用膜電極2に電気接続されたリード導体5と、ヒューズエレメント用膜電極3に電気接続された一対のリード導体6とが支持基板8の一方の片面(表面)上に固着されている。ヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とにはヒューズエレメント7が跨って配されてこれらヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とを電気接続している。ヒューズエレメント7の外面にはフラックス11が塗布されている。さらに、支持基板8上において、絶縁基板4、リード導体5,6、ヒューズエレメント7及びヒューズエレメント7に塗布したフラックス11は絶縁封止物9に被覆されて封止されている。
【0015】
図1(a)及び図1(b)の抵抗付き温度ヒューズの動作メカニズムは、リード導体6及びヒューズエレメント7を介して電子・電気機器に給電するようにし、この電子・電気機器に異常が発生したときリード導体5を介して膜抵抗1に電流を流して膜抵抗1を通電発熱させ、この発生熱でヒューズエレメント7を溶断して上記給電を遮断するものである。この抵抗付きヒューズは種々の分野で使用でき、例えば、リチウムイオン二次電池の電池パックにその異常を検知したときリード導体5に電流を流すためのIC制御回路と共に組み込み、二次電池の過充電や過放電時での充電や放電の停止に使用できる。
【0016】
図1(a)及び図1(b)の抵抗付き温度ヒューズはヒューズエレメント7と一対のリード導体6とを直接に接続する構成にしているので、絶縁基板4の平面寸法を縮小でき、絶縁基板4の熱容量を小さくできる。従って、膜抵抗1の通電発熱速度を速めてヒューズエレメント7の溶断を迅速化でき、動作速度を速めることができる。
【0017】
なお、図2(a)(b)に示す絶縁基板4はこの厚みが0.3〜0.4mmの良熱伝導性のセラミックス基板であり、この基板4の表面上に膜抵抗1と、リード導体用膜電極2及びヒューズエレメント用膜電極3とが配されている。膜抵抗1は絶縁基板4の中間部に配され、リード導体用膜電極2は絶縁基板4の一端側(図2(a)の上側)に配され、ヒューズエレメント用膜電極3は絶縁基板4の他端側(図2(a)の下側)に配されている。膜抵抗1は、この一端側がリード導体用膜電極2に重畳接合した状態で電気接続され、この他端側がヒューズエレメント用膜電極3に重畳接合した状態で電気接続されている。この膜抵抗1は、抵抗ペースト、例えば酸化ルテニウムペーストの印刷・焼付けにより設けられる。リード導体用膜電極2及びヒューズエレメント用膜電極3は、導電ペースト、例えば銀ペーストの印刷・焼付けにより設けられている。リード導体用膜電極2は絶縁基板4の表面だけでなく、その表面から裏面にわたって設けられている。ヒューズエレメント用膜電極3は、ヒューズエレメント7の中間部7aに溶接等で接合されるヒューズエレメント接続部3aと、膜抵抗1と重畳接合される膜抵抗接続部3bとを備えた略T字形状に形成されている。ヒューズエレメント接続部3aは、膜抵抗1とは逆向きに膜抵抗接続部3bから突出形成されている。このヒューズエレメント接続部3aは、その通電発熱速度を速めるため膜抵抗1及び膜抵抗接続部3bより幅狭に形成されている。膜抵抗1上にはこの膜抵抗1を保護するための保護膜12(例えばガラス焼付け膜)が設けられている。
【0018】
リード導体用膜電極2に膜電極10を介して電気接続されたリード導体5は扁平状であり、例えば、銅、銅より熱抵抗の高い鉄、鉄合金等の鉄系又はニッケル等にSnメッキしたものが使用されている。ヒューズエレメント用膜電極3にヒューズエレメント7を介して電気接続された一対のリード導体6は扁平状であり、例えば銅等にSnメッキしたものが使用されている。上記リード導体5として熱抵抗の高い鉄、鉄合金等の鉄系又はニッケル等にSnメッキしたものを使用した場合、膜抵抗1のヒューズエレメント7を溶融させるべき発生熱がそのリード導体5を伝って漏洩することを防止するので、ヒューズエレメント7を迅速に溶断させることができる。
【0019】
ヒューズエレメント7は、図2(a)及び図5に示すように、その中間部7aがヒューズエレメント用膜電極3のヒューズエレメント接続部3aに溶接等により接合され、その両端部7bそれぞれが一対のリード導体6と溶接等により接合されている。ヒューズエレメント7には高い曲げ剛性の組成を有する可溶合金が望ましい。このヒューズエレメント7の外面に塗布される図6のフラックス11はロジンを主成分とし、フラックス11の融点がヒューズエレメント7の融点より低いものが使用される。フラックス11の塗布にはフラックス11を加熱溶融し、この溶融フラックスを塗布・凝固させる方法を使用できる。
【0020】
図1・図3・図4・図5〜図7に示す支持基板8は、厚みが0.1mm前後で、かつセラミックス製の絶縁基板4より熱抵抗の高いガラスエポキシ基板である。支持基板8の熱抵抗を絶縁基板4の熱抵抗より高くすることにより、絶縁基板4の膜抵抗1のヒューズエレメント7を溶融させるべき発生熱がその支持基板8を伝って漏洩することを防止するので、ヒューズエレメント7を迅速に溶断させることができる。
【0021】
支持基板8の表面は、一端側(図3の上側)に膜電極10が銅箔のエッチングにより設けられ、他端側(図3の下側)に一対の膜電極13が銅箔のエッチングにより設けられている。一対の膜電極13は、これら膜電極13間に絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3を配置可能な所定間隔を空けた状態で設けられている。
【0022】
絶縁封止物9は、図7に示すように、支持基板8上においてフラックス11と接触して配される保護シート9a(例えばセラミックスシート、ガラスクロスシート)と、絶縁基板4を囲むように支持基板8上の周縁に配されて保護シート9aと支持基板8との隙間を封止する硬化性樹脂(エポキシ樹脂)9bとを備えた構成にされている。硬化性樹脂9bはヒューズエレメント7の融点より低温で硬化する常温硬化性樹脂が用いられる。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態である図1に示された抵抗付き温度ヒューズの製造方法について図4,図5,図6及び図7を参照しながら説明する。
【0024】
図4(a)は、支持基板8上に、絶縁基板4、リード導体5,6を並置した状態に固着する工程における抵抗付き温度ヒューズの平面図を示し、図4(b)は図4(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体6側から示した図である。絶縁基板4の裏面を支持基板8上に固着する。具体的には絶縁基板4の裏面に存在するリード導体用膜電極2を支持基板8上の膜電極10に半田付け又は溶接で固着する。この絶縁基板4の固着と共に、支持基板8の一端側の膜電極10に、リード導体用膜電極2に電気接続されるリード導体5の先端部を半田付け又は溶接で固着する。他方、支持基板8の他端側において絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3の両側方に位置する膜電極13それぞれに、一対のリード導体6の各先端部を半田付け又は溶接で固着する。ただ、支持基板8の膜電極10,13にリード導体5,6の先端部をスポット溶接などにより溶接すると、支持基板8の変形が懸念されるので、膜電極10,13とリード導体5,6との接合は半田付けにより行うことが好ましい。
【0025】
図5(a)は、支持基板8上に固着された絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とに跨ってヒューズエレメント7を配してヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とを電気接続する工程における抵抗付き温度ヒューズの平面図を示す。図5(b)は図5(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体6側から示した図である。具体的には、ヒューズエレメント7の中間部7aを絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3のヒューズエレメント接続部3aに溶接等で接合し、ヒューズエレメント7の両端部7bそれぞれをリード導体6の各先端部に溶接等で接合する。
【0026】
図5(a)及び図5(b)で示された抵抗付き温度ヒューズは、絶縁基板4、リード導体5,6が固着された支持基板8の表面を上向きにした状態で次の工程へと搬送される。この場合、ヒューズエレメント7と接続するリード導体6が支持基板8上に固着されているので、次の工程への搬送においてそのリード導体6が振動した場合に、リード導体6の振動をリード導体6と支持基板8との固着部分で抑えることができる。このためリード導体6から振動が伝わることにより、リード導体6とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極3とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント7自体に負荷が集中してクラックが生じるのを防止することができる。
【0027】
図6(a)は、絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とに跨って配されたヒューズエレメント7にフラックス11を塗布する工程における抵抗付き温度ヒューズの平面図を示し、図6(b)に図6(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体6側から示した図である。フラックス11は、図6(a)及び図6(b)に示すようにヒューズエレメント7を被覆し、かつ支持基板8に及ばないように塗布される。
【0028】
図6(a)及び図6(b)で示された抵抗付き温度ヒューズはフラックス11が塗布された後、絶縁基板4、リード導体5,6が固着された支持基板8の表面を上向きにした状態で次の工程に搬送される。この抵抗付き温度ヒューズは、ヒューズエレメント7と接続するリード導体6が支持基板8上に固着されているので、次の工程への搬送においてそのリード導体6が振動した場合に、リード導体6の振動をリード導体6と支持基板8との固着部分で抑えることができる。このためリード導体6から振動が伝わることにより、リード導体6とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極3とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント7自体に負荷が集中してクラックが生じるのを防止することができる。
【0029】
図7(a)は、ヒューズエレメント7にフラックス11を塗布した後、支持基板8上の絶縁基板4及び支持基板8上の一対のリード導体6の部分を絶縁封止物9で封止する工程における抵抗付き温度ヒューズの平面図を示す。図7(b)は図7(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの裏側平面図であり、図7(c)は図7(a)に示された抵抗付き温度ヒューズを一対のリード導体6側から示した図である。図7(d)は図7(a)に示された抵抗付き温度ヒューズの側面図であり、図7(e)は図7(d)の部分断面図である。ここで絶縁封止物9は、保護シート9a(例えばセラミックスシート、ガラスクロスシート)と硬化性樹脂(エポキシ樹脂)9bとを備える。まず、硬化性樹脂9bを支持基板8の表面の周縁に滴下塗布してこの硬化性樹脂9bで支持基板8上の絶縁基板4及び支持基板8上のリード導体5,6の部分を囲むようにする。硬化性樹脂9bの滴下塗布はこの硬化性樹脂9bの厚み方向の長さが、支持基板8の表面からフラックス11の表面までの距離より大きくなるまで続けられる。次いで、硬化性樹脂9bの上端面に保護シート9aを載置し、この保護シート9aをこの裏面がフラックス11の表面に接触するまで支持基板8に向けて押圧し、この保護シート9aと支持基板8との隙間を硬化性樹脂9bで塞いで封止する。
この封止工程は支持基板8の一方の片面(絶縁基板4、リード導体5,6が固着された表面)のみを絶縁封止物9で封止するものであるから、従来のように基板を持ち上げてこの基板全体を樹脂で塗布して封止する封止工程と比して、リード導体6が強く振動することはない。また封止工程においてリード導体6が振動した場合でも、ヒューズエレメント7と接続するリード導体6が支持基板8上に固着されているので、そのリード導体6の振動をリード導体6と支持基板8との固着部分で抑えることができる。このためリード導体6とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント用膜電極3とヒューズエレメント7を接続した箇所あるいはヒューズエレメント7自体に負荷が集中してクラックが生じるのを防止することができる。
【0030】
図8は、本発明の抵抗付き温度ヒューズの製造方法において、支持基板8上に、絶縁基板4、リード導体5,6を並置した状態に固着する工程で製造される抵抗付き温度ヒューズの別実施例の平面図を示す。図8の抵抗付き温度ヒューズは、図4(a)の抵抗付き温度ヒューズと比して、支持基板8上の絶縁基板4、リード導体5,6の配置構成が相違する。図8に示されるように、絶縁基板4をこのヒューズエレメント用膜電極3のヒューズエレメント接続部3aが支持基板8の幅方向(図8の左右方向)の一方に向けられた状態で支持基板8上に固着する。この絶縁基板4の固着と共に、一対のリード導体6をそれぞれ支持基板8の一端側と他端側とに配して固着し、支持基板8の他端側に配されたリード導体6と並行してリード導体5をその支持基板8の他端側に配置して固着する。
【0031】
図9(a)は、本発明の第2実施形態である抵抗付き温度ヒューズの製造方法により製造される抵抗付き温度ヒューズの一例の平面図を示す。この第2実施形態で使用される絶縁基板4は、リード導体用膜電極2が、膜抵抗1及びヒューズエレメント用膜電極3が設けられた一方の片面のみに設けられ、反対側の他方の片面に設けられていないという点において、第1実施形態で使用される絶縁基板4と相違し、その他は同一の構成である(図9(b)及び図9(c)を参照)。また、第2実施形態で使用される支持基板8は、膜電極が設けられていないという点において、第1実施形態で使用される支持基板8と相違し、その他は同一の構成である。
【0032】
図9(a)の抵抗付き温度ヒューズは次の通り製造される。まず、支持基板8上に、絶縁基板4と、リード導体用膜電極2に電気接続されるリード導体5と、ヒューズエレメント用膜電極3に電気接続されるリード導体6とを並置した状態で接着剤で固着する。次いで、リード導体用膜電極2とリード導体5とに跨って銅等の良伝導性の金属製接続部Mを配してリード導体用膜電極2とリード導体5とを電気接続する。その後、支持基板8上に固着された絶縁基板4のヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とに跨ってヒューズエレメント7を配してヒューズエレメント用膜電極3と一対のリード導体6とを電気接続する。これ以降の工程は第1実施形態の工程と同様である(図5、図6及び図7を参照)。なお絶縁基板4、リード導体5,6は支持基板8上において図8に示すような配置構成にしてもよい。
【0033】
なお、上述の実施形態の抵抗付き温度ヒューズの製造方法に使用される絶縁封止物9は保護シート9aと硬化性樹脂(エポキシ樹脂)9bとを備えた構成であるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の絶縁封止物は支持基板上の絶縁基板及び支持基板上のリード導体の部分を保護するものであればよく、例えば、これら絶縁基板及びリード導体の部分を被覆するように寸法設定された絶縁ケースを使用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 膜抵抗
2 リード導体用膜電極
3 ヒューズエレメント用膜電極
4 絶縁基板
5 リード導体
6 リード導体
7 ヒューズエレメント
8 支持基板
9 絶縁封止物
13 膜電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜抵抗(1)とこの膜抵抗(1)に電気接続するリード導体用膜電極(2)及びヒューズエレメント用膜電極(3)とが一方の片面に配された絶縁基板(4)と、前記リード導体用膜電極(2)に電気接続されたリード導体(5)と、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)の両側方に配された一対のリード導体(6)と、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)と前記一対のリード導体(6)とに跨って配されてこれらヒューズエレメント用膜電極(3)と一対のリード導体(6)とを電気接続するヒューズエレメント(7)とを備えた抵抗付き温度ヒューズの製造方法であって、
前記絶縁基板(4)の他方の片面を支持基板(8)上に固着するとともに、この絶縁基板(4)と並置して前記一対のリード導体(6)を前記支持基板(8)上に固着する工程と、
前記支持基板(8)上に固着された前記絶縁基板(4)のヒューズエレメント用膜電極(3)と前記一対のリード導体(6)とに跨って前記ヒューズエレメント(7)を配して前記ヒューズエレメント用膜電極(3)と前記一対のリード導体(6)とを電気接続する工程と、
前記支持基板(8)上の前記絶縁基板(4)及び前記支持基板(8)上の前記一対のリード導体(6)の部分を絶縁封止物(9)で封止する工程と
を含むことを特徴とする抵抗付き温度ヒューズの製造方法。
【請求項2】
前記支持基板(8)上に一対の膜電極(13)が設けられ、
前記各膜電極(13)に、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)に電気接続される前記リード導体(6)を半田付けで固着することを特徴とする請求項1に記載の抵抗付き温度ヒューズの製造方法。
【請求項3】
前記支持基板(8)上に、前記ヒューズエレメント用膜電極(3)に電気接続される前記リード導体(6)を接着剤で固着することを特徴とする請求項1に記載の抵抗付き温度ヒューズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−171030(P2011−171030A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32076(P2010−32076)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】