説明

押しボタン構造

【課題】操作荷重を軽減し、ボタン外形の小型化を図ることができる押しボタン構造を提供する。
【解決手段】開口部7aの周縁に設けた係合凹部6と、押しボタン2の外形の一端部に設けられ、電子機器内のスイッチ9に向けて延びたスイッチ押しボス部4と、押しボタン2の外形のスイッチ押しボス部4から離間した方向の端部に設けられ、係合凹部6に嵌合する位置決め用凸部5と、押しボタン2に設けられ、押下操作に対して当該押しボタン2を元の位置へ復帰させる復帰力を与えるとともに、係合凹部6におけるスイッチ押しボス部4側の壁面部6aに位置決め用凸部5が当接するよう付勢するばね部3とを備え、押しボタン2が、位置決め用凸部5とスイッチ押しボス部4側の壁面部6aとの当接部を支点として回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載用電子機器の操作パネルなどに用いる押しボタン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子機器のケースに設けた開口部に外部からキートップを組み付ける構造が開示されている。この構造では、ケース内でキートップが押下方向に動作可能に支持され、上記開口部から外部に露出したキートップの部分を押下することで、キートップに設けたボス部によってケース内のスイッチが押圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−111113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の外面(操作パネルなど)に設けた開口部から組み付けられる押しボタンは、ボタン外形から極端に突出した部分があると、その部分が開口部に引っ掛かるなどして、正常に組み付けが行えなくなる。つまり、押しボタンにおけるヒンジ部やボス部の配置はボタン外形の大きさで制限され、ボタン外形からあまり突出させることができない。
一方、ヒンジ部を有する押しボタンの操作に必要な荷重は、支点(ヒンジ部)から力点(ボス部)までの距離に大きく依存するため、ヒンジ部のばねの剛性が一定である場合、ヒンジ部からボス部までの距離が短いほど押下操作に大きな荷重が必要となる。
【0005】
このように、電子機器の外面から押しボタンを組み付ける従来の押しボタン構造では、上記寸法上の制限から押下操作に必要な荷重を軽減することが困難であった。
例えば、特許文献1の構造では、ケース側の係止部が片持ち支持構造のばねと同方向に延設された板状部材で構成されており、キートップをケース外面に設けた開口部から組み付けた場合に、この係止部がキートップ外形の端部に設けたストッパを係止する。これにより、キートップはストッパを支点として動作する。
【0006】
この構造において、ヒンジ部のばねの剛性を一定にしたまま押下操作の荷重を軽減するには、ストッパ(支点)に対してボス部(力点)位置を離すか、ボス部(力点)に対してストッパ(支点)位置を離すことで、支点から力点までの距離を長くする必要がある。
ストッパに対してボス部の位置を離す場合、ストッパから離せるボス部の限界位置は、キートップ外形のストッパから離間する方向の端部付近となる。
一方、ボス部に対してストッパの位置を離す場合は、キートップ外形を大きくし、係止部である板状部材を長くする必要がある。特に、ボス部が既にキートップ外形のストッパから離間する方向の端部付近に配置されていると、特許文献1の構造で押下操作の荷重をさらに軽減するには、ボタン外形を大きくする以外になく、小型化が著しく制限される。
【0007】
なお、ヒンジ部のばねの剛性を下げれば、押下操作の荷重を軽減できるが、特許文献1の構造では、ヒンジ部のばねに相当する片持ち支持構造のばねの板厚を薄くするか、板状部材を長くする必要がある。
しかしながら、ヒンジ部のばねは、操作荷重に対する機械的な強度が必要であるため、板厚の薄型化には限界があり、さらに加工性も劣化する。
また、片持ち支持構造のばねである板状部材を長くすると、それに応じてボタン外形を大きくする必要があり、小型化が制限される。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、操作荷重を軽減し、ボタン外形の小型化を図ることができる押しボタン構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る押しボタン構造は、電子機器の外面に設けた開口部に押しボタンを組み付ける押しボタン構造において、開口部の周縁に設けた係合凹部と、押しボタンの外形の一端部に設けられ、電子機器内のスイッチに向けて延びたボス部と、押しボタンの外形のボス部から離間した方向の端部に設けられ、係合凹部に嵌合する係合凸部と、押しボタンに設けられ、押下操作に対して当該押しボタンを元の位置へ復帰させる復帰力を与えるとともに、係合凹部におけるボス部側の壁面部に係合凸部が当接するよう付勢するばね部とを備え、押しボタンが、係合凸部とボス部側の壁面部との当接部を支点として回動する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、操作荷重を軽減し、ボタン外形の小型化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る押しボタン構造を適用した車載用電子機器のパネルの正面図である。
【図2】実施の形態1に係る押しボタン構造の押しボタンの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る押しボタン構造のパネルの構造を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る押しボタン構造のパネルへの組み付けを示す斜視図である。
【図5】実施の形態1に係る押しボタン構造の正面図である。
【図6】図5のA−A線で切った押しボタン構造の断面図である。
【図7】実施の形態1に係る押しボタン構造で押しボタンが押圧操作された状態を示す側面図である。
【図8】実施の形態1に係る押しボタン構造における押しボタンの支点の周辺部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る押しボタン構造を適用した車載用電子機器のパネルの正面図である。図2は、実施の形態1に係る押しボタン構造の押しボタンの構成を示す図であり、図3は、実施の形態1に係る押しボタン構造のパネルの構造を示す図である。図4は、実施の形態1に係る押しボタン構造のパネルへの組み付けを示す斜視図であり、図5は、実施の形態1に係る押しボタン構造の正面図である。また、図6は、図5のA−A線で切った押しボタン構造の断面図である。
【0013】
図1に示すように、実施の形態1に係る押しボタン構造は、例えばオーディオ機器などの車載用電子機器の外面を構成する操作用のパネル1に適用される。パネル1において、押しボタン2は、ボタン面に形成した凸部2aを押下することで適切に操作される。この押しボタン2には、図2(a)〜(c)に示すように、ばね部3、スイッチ押しボス部4および位置決め用凸部5が形成されている。
【0014】
ばね部3は、図2(b)に示すように、ボタン面の裏側でスイッチ押しボス部4と対向する位置に設けられる。また、ばね部3は、図2(a)に示すように、ばね端部3aから二股に曲線部3aを介してボタン外形の端辺に接続している。この曲線部3aを蛇行形状とすることにより、ばね端部3bからボタン外形の端辺に接続する基部までの距離を長くすることができ、ばねの剛性が下がり、ばね性を向上させることができる。なお、曲線部3aの形状は、ばね端部3bからボタン外形の端辺に接続する基部までの距離を長くし、かつ取り付けで許容される寸法に収まる形状であれば、蛇行形状に限らず、その他の形状であってもよい。
【0015】
スイッチ押しボス部4は、図2(b)および図2(c)に示すように、押しボタン2のボタン外形における、位置決め用凸部5が形成された端辺から離間する方向の端辺(対向する端辺)に形成される。すなわち、スイッチ押しボス部4は、図2(b)に示すように位置決め用凸部5から離せる限界位置に配置されている。
位置決め用凸部5は、押しボタン2の外形のスイッチ押しボス部4から離間した方向の端部に設けられ、係合凹部6に嵌合する係合凸部である。
【0016】
パネル1には、図3に示すように係合凹部6、開口部7aおよび孔部7bが形成されており、押しボタン2は、パネル1の前面から組み付けられる。また、係合凹部6は、図3に示すように開口部7aの周縁部における、開口部7aを介して対向した位置にそれぞれ設けられる。係合凹部6には、押しボタン2を開口部7aに組み付けた際に押しボタン2の位置決め用凸部5が嵌合する。
【0017】
図2(b)に示すように、ばね部3は、ばね端部3bを突き出すように曲がっている。このように構成することで、押しボタン2をパネル1に組み付けるとき、ばね端部3bが開口部7aの内壁面に当接して曲線部3aを撓ませながら、ばね部3がパネル1の開口部7aに挿入される。そして、ばね部3が係合凸部8と係合して組み付けが完了すると、ばね端部3bが開口部7aの内壁面に圧接した状態となる。このようにばね端部3bを開口部7aの内壁面に圧接させることで、振動等による押しボタン2のがたつきを抑えることができる。
【0018】
ばね端部3bが開口部7aの内壁面に圧接されると、押しボタン2は、図6に示す−Y方向の力を受ける。このとき、係合凹部6に嵌合した位置決め用凸部5が、図6に示すように、係合凹部6におけるスイッチ押しボス部4側の壁面部(−Y方向の壁面部)6aに当接し、押しボタン2の−Y方向への動きが規制される。これにより、押しボタン2の−Y方向の位置が決められる。
【0019】
壁面部6aは、図4(a)に示すように、他の壁面部よりも低くなるように構成されており、壁面部6aの上面は、位置決め用凸部5が接続するボタン面の裏面に当接しない。すなわち、壁面部6aが位置決め用凸部5以外に当接しないように構成する。
このようにして押しボタン2を開口部7aに組み付けることで、スイッチ押しボス部4の先端部は、パネル1の孔部7bを通って図4(b)に示す基板10上に実装したスイッチ9に対向する。これにより、図5に示すように押しボタン2がパネル1に組み付けられる。
【0020】
なお、ばね端部3bが開口部7aの内壁面に圧接されると、ばね端部3bを基点として押しボタン2がZ方向へ移動する回転モーメントが生じる。
そこで、図6に示すように、スイッチ押しボス部4にフランジ部4aを設けることで、押しボタン2の組み付けた際、フランジ部4aがパネル1の孔部7bの周縁部11に当接する。これにより、回転モーメントによって押しボタン2がパネル1の開口部7aから抜けようとする動きが規制され、押しボタン2の+Z方向の位置が決定される。
【0021】
図7は、実施の形態1に係る押しボタン構造で押しボタンが押圧操作された状態を示す側面図である。図7(a)は、押しボタンの押下操作前の状態を示しており、図7(b)は、押下操作後の状態を示している。図7(a)および図7(b)に示すように、実施の形態1に係る押しボタン構造では、係合凹部6の壁面部6aを、位置決め用凸部5が接続するボタン面の裏面に当接させず、位置決め用凸部5と壁面部6aとの当接部が押しボタン2の動作の支点となるように構成している。このように構成することで、押しボタン2の動作の支点を、力点であるスイッチ押しボス部4から離れた位置にすることができる。
【0022】
従来の押しボタン構造では、スイッチ押しボス部と押しボタンの支点(回転中心)までの距離が短く、ヒンジ部のばねの剛性を下げて操作荷重を軽減することが多かった。この場合、ばねの寸法や製造上の理由から制限を受けやすかった。
これに対して、本発明に係る押しボタン構造を適用すれば、押しボタン2の動作の支点とスイッチ9を押す力点との距離を長くすることができ、操作荷重の軽減を実現することができる。すなわち、押しボタン2をパネル1の前面から組み付ける押しボタン構造において、図7(a)に示すように、スイッチ押しボス部4がボタン外形の端辺に配置されている場合であっても、係合凹部6の壁面部6aが、位置決め用凸部5が接続するボタン面の裏面に当接しないようにして支点Cをスイッチ押しボス部4から離すことにより、押しボタン2の支点と力点との距離を長くすることができる。
【0023】
壁面部6aがボタン面の裏面に当接しない場合に、押下操作による押しボタン2の動作の支点(回動中心)は、位置決め用凸部5と壁面部6aとの当接部である支点Cとなる。この場合、図7(a)に示すように、押しボタン2のボタン面は、側面から見て押下操作により距離D1の範囲で可動し、スイッチ押しボス部4は、側面から見て押下操作により距離D2の範囲で可動する。
一方、壁面部がボタン面の裏面に当接する場合、押下操作によって押しボタン2の動作の支点は、位置決め用凸部5が接続するボタン面の裏面部と壁面部6aとの当接部である支点C’となる。この場合、図7(a)に示すように、押しボタン2のボタン面は、側面から見て押下操作により距離D1’の範囲で可動し、スイッチ押しボス部4は、側面から見て押下操作により距離D2’の範囲で可動する。
D1>D1’およびD2>D2’であることから、支点と力点の距離が長くなり、操作荷重を軽減できる。なお、ばね性を向上させたばね部3を設ければ、さらなる操作荷重の軽減が可能である。
【0024】
なお、実施の形態1において、スイッチ押しボス部4の先端部4bは、押しボタン2の外形から突き出るように形成される。つまり、押しボタン2のボタン面表側の寸法は、ボタン面の端部から先端部4bまでの寸法よりも小さくなる。
このように、スイッチ押しボス部4の先端部4bを、押しボタン2のボタン外形よりも大きくすることで、支点Cから先端部4bまでの距離が長くなり、さらに操作荷重を軽減することができる。
【0025】
図8は、実施の形態1に係る押しボタン構造における押しボタンの支点の周辺部を示す図である。係合凹部6の壁面部6aは、ボタン面の裏面に当接しないように構成するが、上述したように、ばね部3で付勢された押しボタン2の−Y方向への動きを規制する機能を持たせる必要がある。すなわち、壁面部6aが、上部から下部へ下る傾斜面や曲面で、位置決め用凸部5と当接する場合、ばね部3の付勢力によって位置決め用凸部5が壁面部6aを乗り越えてしまう可能性がある。
そこで、壁面部6aにおいて、押しボタン2をパネル1に組み付けたときに、位置決め用凸部5との当接部を含む領域に対して、位置決め用凸部5におけるスイッチ押しボス部4側の側面(−Y方向に向かう側面)と略平行な位置規制用の平面部6bを形成する。
図8(a)では、壁面部6aにおいて、Z方向に距離A1の平面部6bを形成した場合を示している。例えば、位置決め用凸部5のZ方向の寸法が1.5mm程度であれば、距離A1は0.5mm程度となる。
これにより、位置決め用凸部5の側面と壁面部6aの平面部6bが面と面で合わさり、位置決め用凸部5の−Y方向への移動が確実に規制される。
【0026】
また、上述までの説明では、壁面部6aを他の壁面部よりも低くしてボタン面の裏面に当接しないように構成した場合を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、図8(b)に示すようにボタン面の裏面側に凹部2bを形成し、係合凹部6の他の壁面部と同じ高さの壁面部6a’が、ボタン面の裏面に当接しないように構成してもよい。
【0027】
以上のように、この実施の形態1によれば、開口部7aの周縁に設けた係合凹部6と、押しボタン2の外形の一端部に設けられ、電子機器内のスイッチ9に向けて延びたスイッチ押しボス部4と、押しボタン2の外形のスイッチ押しボス部4から離間した方向の端部に設けられ、係合凹部6に嵌合する位置決め用凸部5と、押しボタン2に設けられ、押下操作に対して当該押しボタン2を元の位置へ復帰させる復帰力を与えるとともに、係合凹部6におけるスイッチ押しボス部4側の壁面部6aに位置決め用凸部5が当接するよう付勢するばね部3とを備え、押しボタン2が、位置決め用凸部5とスイッチ押しボス部4側の壁面部6aとの当接部を支点として回動する。
このように構成することで、ボタン外形から突出することなく、支点と力点との距離を長くすることができ、操作荷重を軽減し、かつボタン外形の小型化を図ることができる。
【0028】
また、この実施の形態1によれば、壁面部6aが、位置決め用凸部5におけるスイッチ押しボス部4側にある側面と平行な平面部6bを有するので、ばね部3の付勢力によって位置決め用凸部5がスイッチ押しボス部4側へ移動することを確実に規制できる。
【0029】
なお、本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 パネル、2 押しボタン、2a 押圧操作用の凸部、2b 切り欠き部、3 ばね部、3a 曲線部、4 スイッチ押しボス部、4a フランジ部、4b 先端部、5 位置決め用凸部、6 係合凹部、6a,6a’ 壁面部、6b 平面部、7a 開口部、7b 孔部、8 係合凸部、9 スイッチ、10 基板、11 ボタン取り付け部の一部、C,C’ 支点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外面に設けた開口部に押しボタンを組み付ける押しボタン構造において、
前記開口部の周縁に設けた係合凹部と、
前記押しボタンの外形の一端部に設けられ、前記電子機器内のスイッチに向けて延びたボス部と、
前記押しボタンの外形の前記ボス部から離間した方向の端部に設けられ、前記係合凹部に嵌合する係合凸部と、
前記押しボタンに設けられ、押下操作に対して当該押しボタンを元の位置へ復帰させる復帰力を与えるとともに、前記係合凹部における前記ボス部側の壁面部に前記係合凸部が当接するよう付勢するばね部とを備え、
前記押しボタンは、前記係合凸部と前記ボス部側の壁面部との当接部を支点として回動することを特徴とする押しボタン構造。
【請求項2】
前記壁面部は、前記係合凸部における前記ボス部側にある側面と平行な平面部を有することを特徴とする請求項1記載の押しボタン構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−89300(P2013−89300A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225744(P2011−225744)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】