説明

押出吹込成形に有用なポリエステル−ポリカーボネートブレンド

押出吹込成形可能なポリカーボネートとコポリエステルとのブレンドが記載されている。これらのブレンドは、好ましくは(I)線状又は分岐ポリカーボネート約1〜99重量%及び(II)(i)約40〜約100重量%の第1のコポリエステルと(ii)約0〜60重量%の第2のコポリエステルとの混合物約1〜99重量%を含む。第1のコポリエステルは、好ましくは(A)テレフタル酸残基を含む二酸残基;(B)約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基及び約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに(C)約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基を含む。任意の第2のコポリエステルは、好ましくは(A)テレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに(B)約52〜90モル%のCHDM残基及び約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基を含む。好ましくはコポリエステル混合物II中のCHDM残基の平均量は52〜75モル%の範囲である。意外なことに、第1のコポリエステル中の三官能価残基の存在が、押出吹込成形されるブレンドに充分な溶融強度を与えることができることが判明した。これらのブレンドから製造される容器及び造形品並びにこれらの造形品の製造方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出吹込成形可能なポリカーボネートとコポリエステルとのブレンドに関する。本発明は、また、これらのブレンドから製造される容器及び造形品並びに造形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在ガラスから製造されている種々の型の容器は、重量、嵩高性及びガラス容器に固有の破損しやすさのために、プラスチック容器に取って代わられつつある。多くの場合、これらの容器は、既存のポリマー、例えば特許文献1に記載されたポリエステルから製造することができる。ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリカーボネート(PC)は、押出吹込成形容器によく使用される他の材料である。しかし、場合によっては、これらのポリマーは、純粋な形態で用いられる場合には、使用適合性基準を満たさない。例えば容器が75℃より高温の液体を収容しなければならない場合には、特許文献1に記載されたポリエステル及びPVCは、軟化点が低いために適切でない。同様に、ポリカーボネートは、内容物又はボトルの処理時に使用されるクリーナーに対する耐薬品性に劣るため、同一の用途において許容され得ないことが多い。更に、ポリカーボネートは、加工時に生じる残留応力の除去のために複雑なアニール操作を必要とすることが多い。
【0003】
種々のポリマーの特定の性質、例えば高い耐熱性及び良好な耐薬品性を利用するために、それらはブレンドされることが多い。しかし、全てのブレンドが透明とは限らず;従って、ブレンドすることができる材料の選択は透明な容器を作成する必要性によって更に制限される。
【0004】
ポリカーボネートとある種のポリエステルとのブレンドは射出成形及びシート押出用途において使用される。これらのブレンドは明澄であり、耐薬品性及び耐熱性の良好なバランスを提供できる。しかし、ポリカーボネートとポリエステルとの既存の市販透明ブレンドは、溶融強度の欠如のために、押出吹込成形によって加工することができない。
【0005】
製造装置及び方法は、種々の型及び寸法の容器を高速且つ高コスト効率で製造するために設計され、使用されてきた。これらの製造方法の1つは押出吹込成形であり、ポリマーメルトがダイから下向きに中空円筒又はキューブの形状に押出される。ボトル及び他の造形品は、溶融された中空円筒の周囲に金型を固定し、そして成形され且つ閉じこめられた円筒中に気体、例えば空気を注入して、金型中に溶融ポリマーを押し込むことによって、製造される。ポリマーが押出吹込成形法において有用であるためには、ポリマーは充分な溶融強度を有さなければならない。硬質(自立)容器、特に比較的大きい容器、例えば3L(リットル)又はそれ以上の容積の包装を目的とする容器及び不規則な形状を有する容器の製造に有用であるためには、ポリマーは、また、適切な物理的性質、引張特性及び熱的性質を有する必要がある。
【0006】
多くのポリマー材料は、押出吹込成形に適当になるのに充分な溶融強度を有さず、ダイから下向きに押出される場合に、ポリマーメルトは急速に落下し、細いひも(string)及び/又は裂け目(break)を生じる。押出吹込成形に適当なポリマーは、ポリマーの重量を支持するのに充分な溶融強度を有する。均一な壁厚を有する容器の押出吹込成形による製造には、良好な溶融強度が要求される。
【0007】
溶融強度は、主として重力によって引き起こされる低速流れに関連するので、溶融強度は、低剪断速度、例えば1ラジアン/秒において測定されるポリマーの粘度に関連づけることができる。粘度は、平行板粘度計(parallel plate viscometer)のような典型的な粘度計によって測定することができる。典型的には、粘度は、ポリマーの典型的な加工温度において、測定し、また、一連の剪断速度、多くの場合、1〜400ラジアン/秒において測定する。押出吹込成形において、加工温度における1ラジアン/秒での粘度は、典型的には、ボトルの吹込成形には30,000ポアズより大きいことが必要である。パリソンが大きいほど高い粘度が必要である。
【0008】
しかし、溶融粘度は、押出吹込成形において要求されるポリマー加工特性の1つを規定するにすぎない。別の望ましい特性は、高剪断速度における流れ易さである。ポリマーは、ダイ/押出機中で約10〜1000s-1の範囲内の任意の剪断速度において「溶融加工(melt processed)」される。押出吹込成形又は異形押出時にバレル又はダイにおいて生じる典型的な剪断速度は400ラジアン/秒である。これらの高剪断速度は、ポリマーが押出機スクリューを流下する際に、又はダイを通過する際に生じる。これらの高剪断速度は、適度に速い生産速度を維持するのに望ましい。残念ながら、高剪断速度における高溶融粘度は、剪断発熱と称するプロセスにおいて、熱の粘性散逸をもたらすおそれがある。剪断発熱はポリマーの温度を上昇させ、温度の上昇度はその剪断速度における粘度に正比例する。粘度は温度の増加と共に低下するので、剪断発熱はポリマーの低剪断速度粘度を低下させ、従って、その溶融粘度は低下する。
【0009】
更に、高剪断速度における高粘度(例えばダイ中で見られるような)は、溶融破壊として知られる状態を又は押出品の表面に「シャークスキン(sharkskin)」を生じるおそれがある。溶融破壊は、熱可塑性ポリマーの押出時に成形加工面/ポリマーメルトの境界において起こる流動不安定現象である。溶融破壊の発生は、押出物がオリフィスからで出てくる際に押出物にひどい表面不整をもたらす。肉眼では、溶融破壊のない押出物が明澄に見えるのとは異なり、溶融破壊されたサンプル中にはこの表面粗さが霜白の外観(frosty appearance)又は艶消仕上げとして検出される。溶融破壊は、ダイ中の壁剪断応力が一定の値、典型的には0.1〜0.2MPaを超える場合には常に起こる得る。壁剪断応力は、容積処理量又はライン速度(剪断速度に影響する)及びポリマーメルトの粘度に直接関係する。高剪断速度における粘度又はライン速度を減少させると、壁剪断応力は低下し、溶融破壊が起こる可能性が減少する。ダイにおける正確な剪断速度は押出量並びに成形用具の形状寸法及び仕上げの関数であるが、溶融破壊の開始に関連する典型的な剪断速度は400ラジアン/秒である。同様に、この剪断速度における粘度は典型的には10,000ポアズ未満でなければならない。
【0010】
これらの望ましい性質の全てを結びつけるためには、加工性の観点から理想的な押出吹込成形用ポリマーは、高剪断速度における低粘度と共に低剪断速度における高粘度を有するものであろう。幸いにも、ほとんどのポリマーは、もともと、低剪断速度と高剪断速度の間において、「剪断減粘(sheen thinning)」として知られる、少なくともある程度の粘度低下を示し、それがそれらの加工性に役立つ。前述に基づき、押出吹込成形に関連する剪断減粘の1つの定義は、(1ラジアン/秒において測定される粘度)対(400ラジアンにおいて測定される粘度)の比(両粘度とも同一温度で測定)であろう。選択される測定温度は、実際の加工条件に典型的であって、且つ400rad/秒において10,000ポアズ又はそれ以下の粘度を生じるものでなければならない。この定義を、本発明に関連して剪断減粘を記載するのに用いるものとする。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,983,711号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記に基づくと、良好な押出吹込成形用材料は、400rad/秒において10,000ポアズ又はそれ以下の粘度を生じる温度において測定した場合に3.0又はそれ以上の剪断減粘比を有するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本発明は、押出吹込成形可能なブレンドに関する。このブレンドは、
I.約90〜100モル%の4,4’−イソプロピリデンジフェノール単位及び約0〜10モル%の炭素数2〜16の改質用ジオール単位を含むジオール成分を含むポリカーボネート約1〜99重量%と
II.A.好ましくはインヘレント粘度が約0.5〜1.1及び剪断減粘比が少なくとも約5であり、且つ
(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;
(2)約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;及び
(3)約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む第1のコポリエステル約40〜100重量%;並びに
B.(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;及び
(2)約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含む第2のコポリエステル約0〜60重量%
を含む混合物約1〜99重量%(前記第1及び第2のコポリエステル中の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の平均量は52〜75モル%である)
を含む。
【0014】
好ましい実施態様において、本発明のブレンドは、コポリエステル混合物45〜90重量%及びポリカーボネート10〜55重量%を含み、第1のコポリエステルが好ましくは約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約52〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は明澄な物品の製造方法に関する。この方法は、
(a)ポリカーボネート、第1のコポリエステル及び、場合によっては、第2のコポリエステルをブレンドし;
(b)前記工程(a)の前、(a)の間又は(a)の後に、ポリカーボネート、第1のコポリエステル及び、場合によっては、第2のコポリエステルを溶融させて、溶融ブレンドを形成し;そして
(c)前記溶融ブレンドを冷却して、明澄な物品を形成する
工程を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は本発明に係るブレンドから押出吹込成形された造形品に関する。
【0017】
更に別の態様において、本発明は本発明に係るブレンドから押出吹込成形された容器に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
意外なことに、ある種のコポリエステルをポリカーボネートとブレンドすると、押出吹込成形に充分な溶融強度を提供できることが判明した。得られるブレンドは明澄であり、押出吹込成形プロセスの間に結晶化に関連する問題を生じない。好ましくは、これらのブレンドは、少なくとも約3の剪断減粘比を有し、且つ(A)線状又は分岐ポリカーボネート約1〜99重量%(より好ましくは10〜55重量%)及び(B)第1のコポリエステル40〜100重量%と第2のコポリエステル0〜60重量%との混合物約1〜99重量%(より好ましくは45〜90重量%)から成る。好ましくは、第1のコポリエステルと第2のコポリエステルとの混合物中の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の平均量は52〜75モル%の範囲である。
【0019】
本発明によって供給される第1のコポリエステルは、好ましくは約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し、且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む。
【0020】
特に好ましい群の第1のコポリエステルは、約0.6〜0.9のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し、且つ
A.テレフタル酸残基から本質的に成る二酸残基;
B.約52〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜48モル%のエチレングリコール残基から本質的に成るジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のトリメリット酸又はその無水物残基
を含む。
【0021】
本発明によって供給される任意の第2のコポリエステルは好ましくは、約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約2の剪断減粘比を有し、且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに
B.約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含む。
【0022】
これらのコポリエステルは、透明な非晶質物品、例えば容器を製造するために押出吹込成形できる、ポリカーボネートとのブレンドの製造に有用であることが判明した。これらの容器は、85℃まで加熱された液体を充填した場合に、良好な耐変形性を示し、一部の組成物は100℃(水の沸点)まで加熱された液体を充填した場合に、良好な耐変形性を示す。意外なことに、第1のコポリエステル中の三官能価残基の存在は、非分岐ポリカーボネートをブレンド中に使用する場合でも、押出吹込成形に充分な溶融強度をブレンドに与えることができることが判明した。
【0023】
二酸残基Aは、好ましくは少なくとも40モル%、より好ましくは100モル%のテレフタル酸残基を含む。二酸成分Aの残りは、ポリエステル中によく存在する1種又はそれ以上の脂環式及び/又は芳香族ジカルボン酸で構成することができる。このようなジカルボン酸の例としては、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;2,6−及び2,7−ナフタレンジカルボン酸;イソフタル酸などが挙げられる。二酸残基Aは、これらのジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、例えばジアルキルエステル若しくは酸塩化物に由来することができる。
【0024】
三官能価残基Cは、トリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、例えばトリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)及びその無水物、ヘミメリット酸(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸)及びその無水物、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)並びにトリカルバリ酸(tricarballyic acid)(1,2,3−プロパントリカルボン酸)に由来することができる。一般に、炭素数約6〜9の任意のトリカルボキシル残基を成分Cとして使用できる。三官能価残基は、また、炭素数約3〜8の脂肪族トリオール、例えばグリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパンに由来することができる。第1のコポリエステル中に存在する三官能価モノマー残基の量は、好ましくは約0.10〜0.25モル%の範囲である。好ましい三官能価モノマー残基は、ベンゼントリカルボン酸(無水物を含む)、特にトリメリット酸又はその無水物の残基である。
【0025】
本明細書中で言及するモル百分率は、100モル%(又は総モル数)の、問題となっている特定の成分に基づく。例えば「少なくとも40モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基」という表現は、コポリエステル中の二酸残基のモル数の少なくとも40%がテレフタル酸残基であることを意味する。二酸残基の残りは、他の何らかの種であることができる。第1のコポリエステル中の三官能価成分Cのモル%は、(1)成分Cが三酸残基である場合には二酸成分Aのモル数又は(2)成分Cがトリオール残基である場合にはジオール成分Bのモル数に基づく。
【0026】
単語「約」が数値範囲に先行する場合には、この単語は範囲の下端値及び上端値の両方を修飾するものとする。
【0027】
本発明のブレンドがコポリエステルの混合物を含む場合は、特に好ましい群の本発明の第1のコポリエステルは約0.6〜0.9のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し、且つ
A.テレフタル酸残基から本質的に成る二酸残基;
B.約48〜65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール及び約35〜52モル%のエチレングリコール残基から本質的に成るジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のトリメリット酸又はトリメリット酸無水物残基
を含む。
【0028】
本発明のコポリエステルは、高分子量ポリエステルの製造のための、当業界でよく知られた方法を用いて製造できる。例えば、本発明のコポリエステルは、ジカルボン酸を用いて直接縮合によって又はジカルボン酸ジアルキルを用いてエステル交換によって製造できる。従って、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸ジアルキルは、高温において触媒の存在下で、ジオールとエステル交換する。重縮合は、所望のインヘレント粘度を有するコポリエステルが得られるまで、次第に増加する温度において減圧下において実施する。本明細書中に報告するインヘレント粘度(I.V.,dl/g)は、フェノール60重量部及びテトラクロロエタン40重量部から成る溶媒100mL当たりポリマー0.5gを用いて25℃において測定した粘度である。ポリエステルのジオール残基のモル百分率は核磁気共鳴によって測定した。
【0029】
本発明において使用するポリエステルの合成に使用できる触媒材料の例はチタン、マンガン、亜鉛、コバルト、アンチモン、ガリウム、リチウム、カルシウム、珪素及びゲルマニウムを含む。このような触媒系は、米国特許第3,907,754号;第3,962,189号;第4,010,145号;第4,356,299号;第5,017,680号;第5,668,243号;及び第5,681,918号に記載されており、これらの特許の内容を全て引用することによって本明細書中に組み入れる。好ましい触媒金属としてはチタン及びマンガンが挙げられ、最も好ましいのはチタンである。触媒金属の使用量は約5〜100ppmの範囲であることができるが、良好な色、熱安定性及び電気的性質を有するポリエステルを提供するためには、チタン約5〜35ppmの触媒濃度の使用が好ましい。リン化合物が前記触媒金属と併用されることが多く、ポリエステルの製造に通常使用される任意のリン化合物を使用できる。典型的には、約100ppm以下のリンを使用できる。
【0030】
本発明のブレンドのポリカーボネート部分は、好ましくは約90〜100モル%のビスフェノールA単位を含むジオール成分を有し、0〜約10モル%を、ビスフェノールA以外の、炭素数2〜16の他の改質用脂肪族又は芳香族ジオールの単位で置き換えることができる。ポリカーボネートは、分岐剤、例えばテトラフェノール系化合物、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びその他(米国特許第6,160,082号;第6,022,941号;第5,262,51号;第4,474,999号;及び第4,286,083号に記載)を含むことができる。他の適当な分岐剤は以下に記載する。ポリカーボネート中のジオール単位の少なくとも95モル%はビスフェノールAであるのが好ましい。改質用芳香族ジオールの適当な例としては、米国特許第3,030,335号及び第3,317,466号に開示された芳香族ジオールが挙げられる。
【0031】
本発明に係るブレンドのポリカーボネート部分のインヘレント粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で25℃において測定した場合に、好ましくは少なくとも約0.3dL/g、より好ましくは少なくとも0.5dL/gである。
【0032】
本発明に係るブレンドのポリカーボネート部分のメルトフローは、ASTM D1238に従って300℃の温度において1.2kgの加重を用いて測定した場合に、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜18である。
【0033】
本発明のブレンドのポリカーボネート部分は、メルトで、溶液で又は当業界でよく知られた界面重合法によって製造できる。適当な方法は、約0〜315℃の温度において約0.1〜760mmHgの圧力でポリカーボネートを形成するのに充分な時間、カーボネート源をジオールとを反応させる工程を含む。本発明において使用できる、商業的に入手可能なポリカーボネートは、通常は芳香族ジオールをカーボネート源、例えばホスゲン、炭酸ジブチル又は炭酸ジフェニルと反応させて、ポリカーボネート中に100モル%のジオール単位と共に100モル%のカーボネート単位を組み入れることによって製造される。ポリカーボネートの製造方法の例については、米国特許第5,498,688号;第5,494,992号;及び第5,489,665号(引用することによってそれらの全体を本明細書中に組み入れる)を参照されたい。
【0034】
ポリカーボネートの製造方法は当業界で知られている。本明細書中に開示した本発明に使用できる線状又は分岐ポリカーボネートは、そのポリカーボネート型又はその製造方法に限定するものでも、それによって拘束されるものでもない。一般に、二価フェノール、例えばビスフェノールAは、任意の一官能価化合物を連鎖停止剤として及び三官能価又はそれ以上の官能価の化合物を分岐又は架橋剤として用いて、ホスゲンと反応させる。反応性ハロゲン化アシルは、また、縮合重合性であり、停止用化合物(一官能価)、コモノマー(二官能価)又は分岐剤(三官能価又はそれ以上)として、これまでポリカーボネート中に使用されてきた。
【0035】
例えば米国特許第4,001,884号に開示された分岐ポリカーボネートの1つの形成方法は、従来のポリカーボネート形成性反応混合物中に芳香族ポリカルボン酸又はその官能性誘導体を組み込むことを含む。この米国特許中の実施例は、典型的には10超のpHを含むアルカリ性条件下でホスゲンがビスフェノールとの反応を受ける反応におけるこのような組み込みを示している。経験によって、好ましい芳香族ポリカルボン酸誘導体はトリメリット酸三塩化物であることがわかっている。また、前記特許には、分子量調整剤としての一価フェノールの使用が開示され;それは、次第に形成されていくポリカーボネート鎖上のクロロ蟻酸エステル基との反応によって連鎖停止剤として機能する。
【0036】
米国特許第4,367,186号は、連鎖停止剤としてメタクリル酸塩化物を含む架橋性ポリカーボネートの製造方法を開示している。ビスフェノールA、水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレンの混合物が製造される。これに、メタクリル酸塩化物の塩化メチレン中溶液が添加される。次いで、ホスゲンが添加され、pHを13〜14に保持するために追加量の水酸化ナトリウム水溶液が添加される。最後に、トリエチルアミンカップリング触媒が添加される。
【0037】
EP(欧州特許文献)273 144は、式−C(O)−CH=CH−R[式中、Rは水素又はC1〜C3アルキルである]の反応性構造で末端キャップされた分岐ポリ(エステル)カーボネートを開示している。このポリカーボネートは、反応性末端基を提供する塩化アクリロイル及び三塩化トリメリチルのような分岐剤を用いて、常法に従って製造される。実施例によれば、この方法は水、塩化メチレン、トリエチルアミン、ビスフェノールA及び、場合によっては、連鎖停止剤としてのp−t−ブチルフェノールを混合することによって実施する。pHは、水酸化ナトリウム水溶液の添加によって9〜10に保持する。二塩化テレフタロイル、二塩化イソフタロイル、塩化メチレン及び、場合によっては、塩化アクリロイル並びに三塩化トリメリチルの混合物を滴加する。次いで、この反応混合物にホスゲンをゆっくりと導入する。
【0038】
米国特許第4,001,184号から、ランダム分岐ポリカーボネート及びそれらの製造方法が知られている。化学量論量の少なくとも20重量%のカーボネート前駆体、例えばハロゲン化アシル又はハロホルメートが、二価フェノールと少なくとも0.05モル%の多官能価芳香族化合物との、水及びポリカーボネート用溶媒の媒体中混合物と反応させる。この媒体は少なくとも1.2モル%の重合触媒を含む。この反応媒体に、pHを3〜6に保持するのに充分なアルカリ金属水酸化物を添加し、次いで、残りのカーボネート前駆体を反応させながら、pHを少なくとも9であって12未満に上昇させるのに充分なアルカリ金属水酸化物を添加する。
【0039】
米国特許第6,225,436号は、回分法及び連続法において適当な方法で、ポリカーボネート中へのハロゲン化アシル化合物の、重縮合反応による取り込みを可能にする、ポリカーボネートの製造方法を開示している。このようなハロゲン化アシル化合物は、一官能価、二官能価、三官能価又はそれ以上の官能価であることができ、好ましくはポリマー分子を分岐又は停止させるか、或いはポリマー分子の末端位置又はペンダント位置に他の官能部分をもたらすものである。
【0040】
米国特許第5,142,088号は、分岐ポリカーボネートの製造、より詳しくは、この製造に有用な新規中間体及びこの中間体をクロロホルメートオリゴマーを介して分岐ポリカーボネートに転化する方法を開示する。高い溶融強度を有する分岐ポリカーボネートの製造方法の1つは、炭酸ジフェニル及びビスフェノールAを、分岐剤としての多官能価アルコール又はフェノールと一緒に重合させる溶融−重縮合法の変法である。
【0041】
DE(ドイツ特許文献)19727709は、脂肪族アルコールを用いる溶融−重合法における分岐ポリカーボネートの製造方法を開示している。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類化合物は、溶融プロセスのモノマー段階に添加される触媒として使用される場合には、目的とするポリカーボネート化合物を生成するだけでなく、「Fries」転位として知られる転位反応後に他の生成物を生成することが知られている。これは、米国特許第6,323,304号において論じられている。ある範囲のFries転位生成物の存在は、ポリカーボネート樹脂の溶融強度を増加させて、ポリカーボネートをボトル及びシート用途に適当するようにすることができる。高い溶融強度を有するポリカーボネート樹脂のこの製造方法は、「分岐剤」の添加による分岐ポリカーボネートの製造方法に比べて原料コストが低い点で有利である。一般に、これらの触媒は、分岐剤に比べて安価であり、必要量がはるかに少ない。
【0042】
JP(日本特許文献)09059371は、分岐剤を用いずに重縮合触媒の存在下で、芳香族ポリカーボネートを製造する方法を開示しており、この方法では、分岐構造を特定の比率で有するポリカーボネートが得られる。詳細には、JP(日本特許文献)09059371は、アルカリ金属化合物及び/アルカリ土類金属化合物及び/又は窒素含有塩基性化合物の存在下における特定の型の芳香族ジヒドロキシ化合物とジエステルカーボネートとの溶融重縮合反応による、極限粘度数(intrinsic viscosity)が少なくとも0.2のポリカーボネートの製造を開示している。ポリカーボネートは、次にL/D比(Lは水平回転車軸の長さであり、Dは撹拌ファンユニットの回転直径である)が2〜30の指定範囲の特殊な自浄式水平型2軸反応器中で更なる反応に供される。JP(日本特許文献)09059371は、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジエステルカーボネートモノマーへの触媒の直接添加を教示している。
【0043】
米国特許第6,504,002号は、溶融重縮合法におけるポリカーボネートオリゴマーへの分岐誘発触媒の遅延添加による、増大された溶融強度を有する分岐ポリカーボネート組成物の製造方法、得られる分岐ポリカーボネート組成物及びその分岐ポリカーボネート化合物の種々の用途を開示している。界面で製造される高溶融強度の吹込成形用ポリカーボネート30樹脂のための分岐剤として、分子当たり3個又はそれ以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール、例えば、1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)、1,3,5−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,4−ビス−[ジ−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメチル]ベンゼンなどを使用することが、米国再発行特許第27,682号及び米国特許第3,799,953号に記載されている。
【0044】
不均一界面重合法によって分岐ポリカーボネートを製造することが知られている他の方法は、分岐剤としての塩化シアヌルの使用(米国特許第3,541,059号)、分岐剤としての分岐二価フェノールの使用(米国特許第4,469,861号)及び分岐剤としての3,3−ビス−(4−ヒドロキシアリール)−オキシインドールの使用(米国特許第4,185,009号)を含む。更に、分岐アルキルアシルハロゲン化物及び/又は酸で末端キャップされた、改善された性質を有すると言われる芳香族ポリカーボネートが米国特許第4,431,793号に記載されている。
【0045】
トリメリット三酸塩化物も、分岐ポリカーボネートの界面製造において分岐剤としてこれまで使用されている。米国特許第5,191,038号は、改善された溶融強度を有する分岐ポリカーボネート組成物及び溶融平衡法における芳香族環状ポリカーボネートオリゴマーからのそれらの製造方法を開示している。
【0046】
本発明の新規ポリマーブレンドは、好ましくはリン触媒失活剤成分(catalyst quencher component)、典型的には1種又はそれ以上のリン化合物、例えばリン酸及び/若しくは亜リン酸類のようなリンの酸又はリン酸エステル若しくは亜リン酸エステルのようなリンの酸のエステルを含む。リン触媒失活剤の更なる例は米国特許第5,907,026号及び第6,448,334号に記載されている。存在するリン触媒失活剤の量は典型的には、ブレンドの総重量に基づき、約0〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.25重量%の元素リン含量をもたらす。
【0047】
ブレンドは、更に、他の添加剤、例えば、熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、殺生物剤、可塑剤又は充填剤、例えばクレイ、マイカ、タルク、セラミック球、ガラス球、ガラスフレークなどを含むこともできる。これらのような添加剤は典型的には比較的少量で使用する。これらの添加剤は、コンセントレートとして本発明のブレンド中に組み入れることができる。これらのコンセントレートは、前記組成物のポリエステルではないポリエステルを使用することができる。その場合には、これらの他のポリエステルは、5重量%を超える量では添加しないのが好ましい。
【0048】
ブレンドは、一軸スクリュー押出機中での配合、二軸スクリュー押出機中での配合又は押出吹込成形前における成分の単なるペレットブレンドを含む(これらに限定するものではない)当業界で知られた方法を用いて製造できる。
【0049】
ブレンドの典型的な製造方法は、1)ポリカーボネートのペレット、第1のコポリエステルのペレット及び、場合によっては、第2のコポリエステルのペレットを、添加物供給装置を用いて、メルト供給装置を用いて、又はペレットのプレブレンドによって、押出機に添加し;2)前記押出機中で前記ポリカーボネート、前記第1のコポリエステル及び、場合によっては、前記第2のコポリエステルを溶融させ;3)押出機スクリューの剪断作用によって、前記ポリカーボネート、前記第1のコポリエステル及び、場合によっては、前記第2のコポリエステルをブレンドして、溶融ブレンドを生成し;そして4)前記溶融ブレンドを冷却して、明澄なペレットを生成することを含む。押出機の温度設定は、230℃超、好ましくは250℃超としなければならない。配合プロセスは一軸又は二軸スクリュー押出機を用いることができる。別法として、ポリカーボネートのペレット、第1のコポリエステルのペレット及び、場合によっては、第2のコポリエステルのペレットを、事前の配合工程を用いずに、最終製品の押出ブロー成形に使用する押出機中に直接入れることもできる。
【0050】
本発明のポリマーブレンドからの造形品又は容器の製造には、周知の押出吹込成形法を使用できる。典型的な、押出吹込成形による製造法は、1)押出機中で樹脂を溶融させ;2)前記溶融樹脂をダイを通して押出して、均一な側壁厚を有する溶融ポリマーのチューブ(即ちパリソン)を形成し;3)前記パリソンの周囲に所望の最終形状を有する金型を固定し;4)前記パリソン中に空気を吹き込んで、前記金型を埋めるように押出物を伸張及び膨張させ;5)成形品を冷却し;そして6)前記金型から前記成形品を突出すことを含む。
【0051】
本発明のポリマーブレンドが押出吹込成形可能である場合には、それらはまた、溶融押出又は射出成形も可能である。本発明は、本発明のポリマーブレンドを含む成形品若しくは二次成形品、フィルム、シート及び/又は繊維を含む。それらは、当業界で知られた任意の常法によって、並びにポリマーブレンドを射出成形し、押出吹込成形し、フィルム/シート押出し又はカレンダー成形する工程を含む、このような成形品、フィルム、シート及び/又は繊維の製造方法によって形成できる。
【0052】
フィルム又はシートへのポリエステル又はポリエステルブレンドの従来の加工は、典型的には、ポリエステルメルトをフラットダイのマニホールドを通して押出することを含む。材料のウェブを横切る厚さの制御には、手動又は自動ダイリップ調整を使用する。溶融ウェブを急冷し且つ平滑な表面仕上げを与えるために、水冷チルロールを用いる。
【0053】
本発明のポリマーブレンドは、低いヘイズを含む性質の新規組合せを特徴とする。ヘイズは2つの方法で測定できる。第1の方法はブレンド押出物の目視観察である。この方法では、溶融ブレンドされた材料約300gを積み重ねて回収し、取っておき、そしてゆっくりと室温に冷却させる。次に、冷却されたブレンドの積み重ねを、ヘイズに関して目視検査する。第2の方法は、押出成形ボトル側壁について、ASTM D1003に従って、HunterLab UltraScan Sphere 8000を用いてヘイズを測定する。%ヘイズ=100*拡散透過率/全透過率。拡散透過率は、積分球の、サンプルポートとは反対側に光トラップを置き、従って、直進光路を排除することによって得られる。2.5°より大きく散乱された光のみを測定する。全透過率は、サンプル中を直進して通る光及び更に、サンプルによってセンサーに向けて散乱された軸外の光の測定を含む。サンプルは、真球(full sphere)内部からの軸外の光が散乱に使用可能であるように球の出口ポートに置く。(正透過は、直進光線のみの測定に与えられた名称である−サンプルはセンサーのすぐ前に、球の出口ポートから約20cm離して置く−これは、軸外の光がサンプルに衝突するのを避ける)。
【0054】
本明細書中で使用する材料の溶融粘度は240℃において、Rheometrics Mechanical Spectrometer(RMS 800)によって25mmの平行板を用いて測定する。サンプルは、試験前に70℃において一晩又はそれ以上真空乾燥させる。単位はポアズ(P)で報告する。
【0055】
ブレンドのガラス転移温度(Tg)は、TA Instruments 2950示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の走査速度で測定した。以下に報告する値は、第2DSC走査からのものである。
【実施例】
【0056】
本発明によって提供されるポリマーブレンド及び代表的なポリエステルの製造を含むそれらの製造について、以下の例によって更に説明する。
【0057】
比較例1〜3及び実施例1〜5
ポリエステルとポリカーボネート及びリン添加剤とを合することによって、ブレンドを製造した。使用した材料の概要を表Iに示す。
【0058】
ブレンド中に使用したコポリエステル及びポリカーボネートを以下に記載する。それらは、高分子量ポリエステルを製造するための当業界でよく知られた方法によって製造した。
【0059】
コポリエステルAは、100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分並びに59〜63モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)残基及び37〜41モル%のエチレングリコール残基を含むジオール成分を含み、更に0.18モル%のトリメリット酸無水物(TMA)残基を含む分岐コポリエステルである。
【0060】
コポリエステルBは、100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分並びに56モル%のCHDM残基及び44モル%のエチレングリコール残基を含むジオール成分を含み、更に0.18モル%のTMA残基を含む分岐コポリエステルである。
【0061】
コポリエステルCは、100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分並びに48〜52モル%のCHDM残基及び52〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール成分を含み、更に0.18モル%のTMA残基を含む分岐コポリエステルである。
【0062】
コポリエステルDは、100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分並びに62モル%のCHDM残基及び38モル%のエチレングリコール残基を含むジオール成分を含み、更に0.18モル%のTMA残基を含む線状コポリエステルである。
【0063】
コポリエステルEは、100モル%のテレフタル酸残基を含む二酸成分並びに81モル%のCHDM残基及び19モル%のエチレングリコール残基を含むジオール成分を含む線状コポリエステルである。
【0064】
ポリカーボネートXは、Dow Chemical Company製の商品名Calibre 300−10である線状ポリカーボネートである。これは、ASTM D1238に従って、300℃において1.2kgの質量を用いて測定したメルトフローレート(MFR)が10である。
【0065】
ポリカーボネートYは、Dow Chemical Company製の商品名Calibre 603−3である分岐ポリカーボネートである。これは、ASTM D1238に従って、300℃において1.2kgの質量を用いて測定したメルトフローレート(MFR)が3である。
【0066】
リンのコンセントレート(表Iでは「conc」と示す)は、最初にWeston 619、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(GE Specialty Plasticsから入手可能)を一軸スクリュー押出機上で270℃においてコポリエステルD中に配合することによって製造した。次いで、この組成物を80℃において8時間5重量%の水とタンブルブレンドして、Weston 619を加水分解させる。ペレットの最終リン含量は、総ペレット重量に基づき、元素リン5重量%である。
【0067】
全てのブレンドをSterling 1.25インチ一軸スクリュー押出機上で260℃の溶融温度及び90rpmにおいて製造した。コポリエステルは70℃において、ビスフェノールAポリカーボネートは120℃において一晩乾燥させた。各ブレンド例において、コポリエステル47重量部をビスフェノールAポリカーボネート50重量部及びリン添加剤3重量部と合する比較例2を除いて、コポリエステル57重量部をビスフェノールAポリカーボネート40重量部及びリン添加剤3重量部と合した。
【0068】
比較例1は、純粋なコポリエステルCの例である。この材料は優れた剪断減粘比を有するが、高熱用途のために充分に高いガラス転移温度を有さない。
【0069】
比較例2は、分岐コポリエステルを含まないブレンドの例である。このブレンドは、高熱用途のために充分に高いガラス転移温度を有するが、ボトルに吹込成形できる充分に高い剪断減粘比を有さない。
【0070】
比較例3は、ポリカーボネートとCHDMレベルが過度に低いコポリエステルとのブレンドの例である。このブレンドは曇っている。
【0071】
実施例1〜5は、高いガラス転移温度を有し、良好な剪断減粘比を有し且つ曇りのない、本発明の例である。
【0072】
【表1】

【0073】
比較例4
比較例3において製造したブレンドから、バリアスクリューを装着した80mm Bekum H−121連続押出吹込成形機を用いてボトルを生成した。材料は、押出前に65℃(150°F)において12時間乾燥させた。押出機は、215℃(420°F)のバレル温度及び199℃(390°F)のヘッド温度を用いて12回転/分(RPM)で運転した。メルトの温度は、ダイから出た5mmのパリソン中にメルトプローブを直接挿入することによって測定したところ、232℃(449°F)であった。材料を、100mmのダイを用いて容積3.785リットル(1 U.S.ガロン)のウォーターボトルに押出した。ボトルの重さは175gであった。ボトル側壁のヘイズは、3.94%であることが測定された。
【0074】
実施例6
実施例1において製造されたブレンドから、バリアスクリューを装着した80mm Bekum H−121連続押出吹込成形機を用いてボトルを生成した。材料は、押出前に65℃(150°F)において12時間乾燥させた。押出機は199℃(390°F)のバレル温度及び199℃(390°F)のヘッド温度を用いて27回転/分(RPM)で運転した。メルトの温度は、ダイから出た5mmのパリソン中にメルトプローブを直接挿入することによって測定したところ、239℃(452°F)であった。材料を、100mmのダイを用いて容積3.785リットル(1 U.S.ガロン)のウォーターボトルに押出した。ボトルの重さは150gであった。ボトル側壁のヘイズは、0.38%であることが測定された。
【0075】
実施例7
実施例2において製造されたブレンドから、バリアスクリューを装着した80mm Bekum H−121連続押出吹込成形機を用いてボトルを生成した。材料は、押出前に65℃(150°F)において8時間乾燥させた。押出機は200℃(392°F)のバレル温度及び190℃(375°F)のヘッド温度を用いて21回転/分(RPM)で運転した。メルトの温度は、ダイから出た5mmのパリソン中にメルトプローブを直接挿入することによって測定したところ、218℃(425°F)であった。材料を、100mmのダイを用いて容積3.785リットル(1 U.S.ガロン)のウォーターボトルに押出した。ボトルの重さは150gであった。ボトル側壁のヘイズは、0.71%であることが測定された。
【0076】
実施例8
実施例3において製造されたブレンドから、Maddockk混合セクションを含むバリアスクリューを装着した80mm Bekum H−121連続押出吹込成形機を用いてボトルを生成した。材料は、押出前に65℃(150°F)において8時間乾燥させた。押出機は232℃(450°F)のバレル温度及び232℃(450°F)のヘッド温度を用いて10回転/分(RPM)で運転した。メルトの温度は、ダイから出た5mmのパリソン中にメルトプローブを直接挿入することによって測定したところ、249℃(481°F)であった。材料を、70mmのダイを用いて容積1.89リットル(64オンス)のハンドルウェア(handleware)ボトルに押出した。ボトルの重さは120gであった。ボトル側壁のヘイズは、0.59%であることが測定された。
【0077】
実施例9
実施例4において製造されたブレンドから、Maddock混合セクションを含むバリアスクリューを装着した80mm Bekum H−121連続押出吹込成形機を用いてボトルを生成した。材料は、押出前に65℃(150°F)において8時間乾燥させた。押出機は232℃(450°F)のバレル温度及び232℃(450°F)のヘッド温度を用いて10回転/分(RPM)で運転した。メルトの温度は、ダイから出た5mmのパリソン中にメルトプローブを直接挿入することによって測定したところ、250℃(483°F)であった。材料を、70mmのダイを用いて容積1.89リットル(64オンス)のハンドルウェア(handleware)ジュースボトルに押出した。ボトルの重さは90gであった。ボトル側壁のヘイズは、0.67%であることが測定された。
【0078】
本発明を、特にその実施態様及び実施例について詳述したが、添付した「特許請求の範囲」によって定義された本発明の範囲及び精神から逸脱しなければ、変動及び変更が可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート及びコポリエステルを含んでなる押出吹込成形可能なブレンド。
【請求項2】
45〜90重量%のコポリエステル及び10〜55重量%のポリカーボネートを含む請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
少なくとも約3の剪断減粘比を有する請求項1に記載のブレンド。
【請求項4】
前記ポリカーボネートが2〜18のメルトフローレートを有する請求項1に記載のブレンド。
【請求項5】
前記ポリカーボネートが分岐剤を含む請求項1に記載のブレンド。
【請求項6】
前記コポリエステルが約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し、且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約52〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む請求項1に記載のブレンド。
【請求項7】
前記コポリエステルが
A.少なくとも40モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約52〜65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約35〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%のベンゼントリカルボン酸又はその無水物の残基
を含む請求項6に記載のブレンド。
【請求項8】
前記コポリエステルが約0.6〜0.9のインヘレント粘度を有し、且つ
A.少なくとも40モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約52〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のベンゼントリカルボン酸又はその無水物の残基
を含む請求項6に記載のブレンド。
【請求項9】
前記コポリエステルが約0.6〜0.9のインヘレント粘度を有し、且つ
A.テレフタル酸残基から本質的に成る二酸残基;
B.約52〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜48モル%のエチレングリコール残基から本質的に成るジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のトリメリット酸又はその無水物の残基
を含む請求項6に記載のブレンド。
【請求項10】
前記三官能価モノマーがトリカルボン酸又はそのエステル及び脂肪族トリオールからなる群から選ばれる請求項6に記載のブレンド。
【請求項11】
前記三官能価モノマーがベンゼントリカルボン酸又はその無水物である請求項10に記載のブレンド。
【請求項12】
ポリカーボネート及び少なくとも1種のコポリエステルを含む、押出吹込成形可能なブレンド。
【請求項13】
45〜90重量%のコポリエステル及び10〜55重量%のポリカーボネートを含む請求項12に記載のブレンド。
【請求項14】
少なくとも約3の剪断減粘比を有する請求項12に記載のブレンド。
【請求項15】
前記ポリカーボネートが2〜18のメルトフローレートを有する請求項12に記載のブレンド。
【請求項16】
前記ポリカーボネートが分岐剤を含む請求項12に記載のブレンド。
【請求項17】
約40〜100重量%の第1のコポリエステル及び約0〜60重量%の第2のコポリエステルを含み、前記第1のコポリエステルが約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約5の剪断減粘比を有し且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含み、前記第2のコポリエステルが約0.5〜1.1のインヘレント粘度及び少なくとも約2の剪断減粘比を有し且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに
B.約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含み、前記第1及び第2のコポリエステル中の1,4−シクロヘキサンジメタノールの平均量が52〜75モル%である請求項12に記載のブレンド。
【請求項18】
前記第1のコポリエステルが
A.少なくとも40モル%のテレフタル酸残基を含む二酸残基;
B.約45〜65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約35〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.05〜1.0モル%のベンゼントリカルボン酸又はその無水物の残基
を含む請求項17に記載のブレンド。
【請求項19】
前記第1のコポリエステルが約0.6〜0.9のインヘレント粘度を有し、且つ
A.少なくとも40モル%のテレフタル酸を含む二酸残基;
B.約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のベンゼントリカルボン酸又はその無水物の残基
を含み、前記第2コポリエステルが約0.6〜0.9のインヘレント粘度を有し且つ
A.テレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに
B.約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含む請求項17に記載のブレンド。
【請求項20】
前記第1のコポリエステルが約0.6〜0.9のインヘレント粘度を有し、且つ
A.テレフタル酸残基から本質的に成る二酸残基;
B.約48〜65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基及び約35〜52モル%のエチレングリコール残基から本質的に成るジオール残基;並びに
C.約0.1〜0.25モル%のトリメリット酸又はその無水物の残基
を含む請求項17に記載のブレンド。
【請求項21】
I.約90〜100モル%の4,4’−イソプロピリデンジフェノール単位及び約0〜10モル%の炭素数2〜16の改質用ジオール単位を含むジオール成分を含むポリカーボネート約1〜99重量%と
II.A.(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;
(2)約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;及び
(3)約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む第1のコポリエステル約40〜100重量%;並びに
B.(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;及び
(2)約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含む第2のコポリエステル約0〜60重量%
を含む混合物約1〜99重量%(前記第1及び第2のコポリエステル中の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の平均量は52〜75モル%である)
を含んでなる押出吹込成形可能なブレンド。
【請求項22】
45〜90重量%の前記混合物及び10〜55重量%の前記ポリカーボネートを含む請求項21に記載のブレンド。
【請求項23】
(a)ポリカーボネート、第1のコポリエステル及び、場合によっては、第2のコポリエステルをブレンドし;
(b)前記工程(a)の前、(a)の間又は(a)の後に、前記ポリカーボネート、前記第1のコポリエステル及び、場合によっては、前記第2のコポリエステルを溶融させて、溶融ブレンドを形成し;そして
(c)前記溶融ブレンドを冷却して、明澄な物品を形成する
工程を含む請求項21に記載のブレンドからの明澄な物品の製造方法。
【請求項24】
請求項1に記載のブレンドから押出吹込成形された造形品。
【請求項25】
請求項12に記載のブレンドから押出吹込成形された造形品。
【請求項26】
請求項21に記載のブレンドから押出吹込成形された造形品。
【請求項27】
請求項9に記載のブレンドから押出吹込成形された容器。
【請求項28】
請求項20に記載のブレンドから押出吹込成形された容器。
【請求項29】
請求項21に記載のブレンドから押出吹込成形された容器。
【請求項30】
I.約90〜100モル%の4,4’−イソプロピリデンジフェノール単位及び約0〜10モル%の炭素数2〜16の改質用ジオール単位を含むジオール成分を含むポリカーボネート約1〜99重量%と
II.A.(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;
(2)約45〜75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約25〜55モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基;及び
(3)約0.05〜1.0モル%の三官能価モノマーの残基
を含む第1のコポリエステル約40〜100重量%;並びに
B.(1)テレフタル酸残基を含む二酸残基;及び
(2)約52〜90モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基と約10〜48モル%のエチレングリコール残基を含むジオール残基
を含む第2のコポリエステル約0〜60重量%
を含む混合物約1〜99重量%(前記第1及び第2のコポリエステル中の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の平均量は52〜75モル%である)
を含んでなる、押出吹込成形及び溶融押出可能なブレンド。
【請求項31】
45〜90重量%の前記混合物及び10〜55重量%の前記ポリカーボネートを含む請求項30に記載のブレンド。
【請求項32】
(a)ポリカーボネート、第1のコポリエステル及び、場合によっては、第2のコポリエステルをブレンドし;そして
(b)続いて前記ブレンドを溶融押出して、フィルム又はシートを形成する
工程を含む請求項30に記載のブレンドからの明澄な物品の製造方法。
【請求項33】
請求項30に記載のブレンドから溶融押出された造形品。
【請求項34】
請求項32に記載の方法を用いて製造されたフィルム又はシート。
【請求項35】
請求項1、12、21又は30に記載のブレンドからの射出成形品。
【請求項36】
請求項32に記載の方法を用いた射出成形品。

【公表番号】特表2008−519130(P2008−519130A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540051(P2007−540051)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039886
【国際公開番号】WO2006/052697
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】