説明

押出導光板用メタクリル樹脂組成物及びそれより構成される導光板

【課題】耐熱性の点で十分な押出導光板を調製するのに適したメタクリル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のメタクリル樹脂組成物は、押出導光板用メタクリル樹脂組成物であって、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルの共重合体を含有し、熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位の比率が96重量%以上であり、濃度0.01g/cmのクロロホルム溶液として25℃で測定した還元粘度が60〜80cm/gであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLED光源を備えた液晶ディスプレイのバックライトを構成する導光板を押出成形によって製造する際に使用されるメタクリル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導光板は、例えば液晶テレビ、ノートブック型パーソナルコンピュータやデスクトップ型パーソナルコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラなどの液晶ディスプレイにおいて、側面に配置された光源からの光を液晶表示面に導くための光学部材として知られている。かかる導光板は、一般にメタクリル酸メチルを主成分とする重合性原料をキャスト重合してキャスト板を得た後、この端部を切断加工して得られることが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、かかるキャスト重合法では前記切断加工により生じたロス分を再利用することができないため、導光板の製法としてロス分を再利用しうる押出成形法が要望されており、その方法として95重量部のメタクリル酸メチル及び5重量部のアクリル酸エステルの共重合体を含むメタクリル樹脂組成物を押出成形する方法が提案されている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−144813号公報
【特許文献2】WO2006/054509号公報
【特許文献3】WO2006/046638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、前述した液晶ディスプレイの光源としてLED(発光ダイオード)アレイを使用することが検討されているが、LED光源を使用すると発熱によりディスプレイ内部の温度が高くなり、導光板が長時間高温に曝されることがあるため、当該導光板には耐熱性が要求されている。しかしながら、前記従来の押出成形法により得られる押出導光板は、耐熱性の点で必ずしも十分なものではなく、これを構成するメタクリル樹脂組成物は押出導光板の原料として必ずしも満足のいくものではなかった。そこで、本発明の目的は、耐熱性の点で十分な押出導光板を調製するのに適したメタクリル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(I)、(II)及び(III)を満たすことを特徴とする押出導光板用メタクリル樹脂組成物を提供するものである。
(I)メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルの共重合体を含有すること
(II)熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位の比率が96重量%以上であること
(III)濃度0.01g/cmのクロロホルム溶液として25℃で測定した還元粘度が60〜80cm/gであること
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性の点で十分な押出導光板を調製するのに適したメタクリル樹脂組成物を提供することができる。また、該メタクリル樹脂組成物は押出成形の原料として適しており、前述した切断加工時に発生するロス分を再度押出成形の原料として再利用することにより、生産性よく導光板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】メタクリル樹脂組成物を加熱溶融状態でダイから押し出して押出樹脂板を製造する方法の一例を示す模式図である。
【図2】メタクリル樹脂組成物を加熱溶融状態でダイから押し出して押出樹脂板を製造する方法の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルの共重合体を含有するものである〔前記(I)〕。ここでいう共重合体を構成する単量体成分は、メタクリル酸メチル(a)とアクリル酸エステル(b)とを必須とし、これら以外に、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸エステルと共重合可能な単量体(c)を含みうるものである。
【0010】
前記アクリル酸エステル(b)としては、得られる共重合体のガラス転移温度を下げうるアクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルが好ましく、より好ましくはアクリル酸メチルであるのがよい。なお、前記アクリル酸エステル(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0011】
前記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体(c)としては、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体や、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体が挙げられる。具体的には、ラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロペンタジエン等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;等が挙げられ、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートの如きグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。なお、前記単量体(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0012】
前記単量体成分を重合する際の重合方法については、特に制限はなく、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合などの公知の重合法を採用することができるが、中でも、塊状重合、溶液重合が好ましい。塊状重合は、例えば、単量体成分及び重合開始剤等を反応容器の中に連続的に供給しながら、反応容器内に所定時間滞留させて得られる部分重合体を連続的に抜き出すことにより行う連続塊状重合が好ましく、溶液重合は、例えば、単量体成分と溶媒及び重合開始剤等を反応容器の中に連続的に供給しながら、反応容器内に所定時間滞留させて得られる部分重合体を連続的に抜き出すことにより行う連続溶液重合が好ましく、いずれも高い生産性で重合体を得ることができる。
【0013】
前記単量体成分を重合する際に用いられる重合開始剤は、特に制限されるものではなく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物等が挙げられる。なお、重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、例えば、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、フェニルメルカプタン、チオクレゾール、エチレンチオグリコール等のメルカプタン類が好ましく挙げられる。なお、連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
前記単量体成分を共重合する際の重合温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類や量により適宜調整されるが、通常100〜200℃、好ましくは120〜180℃である。重合温度が高すぎると、得られる共重合体のシンジオタクティシティーが低くなるため、得られた成形体(導光板)がその形状を維持しうるだけの充分な耐熱性が得られないおそれがある。
【0016】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位の比率が96重量%以上となるものである〔前記(II)〕。従って、この条件を満たすように、前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の比率は適宜調整される。具体的には、前記単量体成分におけるメタクリル酸メチル(a)及びアクリル酸エステル(b)の含有割合が適宜調整される。
【0017】
前記単量体成分におけるメタクリル酸メチル(a)の含有割合は、前記単量体成分総量に対し、通常96重量%以上であり、好ましくは96〜99.9重量%、より好ましくは96〜99.5重量%、さらに好ましくは96〜99.0重量%である。前記単量体成分におけるアクリル酸エステル(b)の含有割合は、前記単量体成分総量に対し、通常4重量%以下であり、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1.0〜4重量%である。アクリル酸エステル(b)が前記単量体成分総量に対して4重量%を超えると、得られる成形体(導光板)の耐熱性を充分に高めることができず、0.1重量%未満であると、成形時に分解ガスが発生しやすくなることが懸念される。
【0018】
熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析法としては、公知の分析法を採用することができる。例えば本発明のメタクリル樹脂組成物を熱分解炉にて所定の温度(400℃以上)にて熱分解し、発生した分解ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、前記共重合体の単量体成分に対応するピークの面積比を求め、重量比に換算することで求めることができる。面積比を重量比に換算する方法としては、例えば前記単量体成分の種類及び含量が既知のメタクリル樹脂の標準品について上記と同様にして面積比を求めることで面積比より重量比を換算するファクターを算出し、また必要に応じて、複数の標準品を用いて検量線を作成して、ファクターを算出することが可能である。なお、これらのピークが一部重なる場合には、重複する面積を補正して前記比率を算出する。
【0019】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位の比率が96重量%以上であり、好ましくは96〜99.9重量%、より好ましくは96〜99.5重量%、さらに好ましくは96〜99.0重量%である。一方、アクリル酸エステルとして、アクリル酸メチルを使用した場合、熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるアクリル酸メチル単位の比率は、通常4重量%以下であり、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1.0〜4重量%である。
【0020】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、濃度0.01g/cmのクロロホルム溶液として測定した25℃における還元粘度が60〜80cm/gである〔前記(III)〕。前記還元粘度は、好ましくは63〜78cm/g、より好ましくは65〜75cm/gであるのがよい。前記還元粘度が60cm/g未満であると、得られる成形体(導光板)の耐熱性を充分に高めることができない。一方、前記還元粘度が80cm/gを超えると、樹脂組成物の流動性が低下し、押出成形がしにくくなるため押出成形温度を上げなければならず、得られる導光板が着色したり、焼けが発生するなどの問題が生じる。なお、還元粘度を前記範囲とするには、前記単量体成分を重合する際に用いる連鎖移動剤の使用量を調整すればよく、具体的には、連鎖移動剤の量を増やせば、還元粘度を低くすることができる。
【0021】
前記流動性は、37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRで評価する。前記MFRは、通常0.5〜7g/10分、好ましくは1〜6g/10分、より好ましくは1.8〜5g/10分である。MFRが高すぎると、押出成形時にメタクリル樹脂組成物が柔らかくなりすぎて、均一な厚みの導光板が得られにくい。MFRが低すぎると、メタクリル樹脂組成物の流動性が低下し、押出成形がしにくくなるため押出成形温度を上げなければならず、得られる導光板が着色したり、焼けが発生するなどの問題が生じる。なお、MFRは、還元粘度、前記単量体成分の組成(アクリル酸エステル及び多官能単量体の含有割合)、及び単量体成分を重合する際の重合温度に依存されるものであり、MFRを前記範囲とするには、例えば、所定の重合温度とした際に還元粘度や前記単量体成分の組成を調整すればよい。具体的には、所定の重合温度において、還元粘度を低く設定するか、単量体成分中のアクリル酸エステルの含有割合を増やすか、単量体成分中の多官能単量体の含有割合を増やすようにすると、MFRを高くすることができる。
【0022】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記共重合体とともに、メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜0.1重量%の離型剤を含有することが好ましい。かかる含有量は、メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜0.08重量%であるのが好ましく、0.01〜0.05重量%であるのがより好ましい。前記離型剤の含有量が0.01重量%よりも少ないと、押出成形時に樹脂がロールにとられてきれいに成形できないことがあり、0.1重量%よりも多いと、成形時に発煙が生じ、ロール汚れによる収率の低下などが懸念される。
【0023】
前記離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0024】
前記高級脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸プロピル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチルの如き飽和脂肪酸アルキル;オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸オクチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸ブチル、リノール酸オクチルの如き不飽和脂肪酸アルキル;ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド、ベヘン酸ジグリセリド、ベヘン酸トリグリセリドの如き飽和脂肪酸グリセリド;オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノール酸トリグリセリドの如き不飽和脂肪酸グリセリド;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド等が好ましい。
【0025】
前記高級脂肪族アルコールとしては、具体的には、例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールの如き飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール、リノリルアルコールの如き不飽和脂肪族アルコール;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリルアルコールが好ましい。
【0026】
前記高級脂肪酸としては、具体的には、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸の如き飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸の如き不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
【0027】
前記高級脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドの如き飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、リノール酸アミド、エルカ酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−オレイルステアロアミドの如きアミド類;等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
【0028】
前記高級脂肪酸金属塩としては、例えば、上述した高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
【0029】
前記離型剤としては、これらの中でも、ステアリルアルコールが最も好ましい。
【0030】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記共重合体とともに、前記共重合体の熱分解を抑制するための熱安定化剤を含有することが好ましく、熱安定化剤の含有量がメタクリル樹脂組成物総量に対して1〜2000重量ppmであるのがより好ましい。本発明のメタクリル樹脂組成物を押出成形して所望の導光板を成形する際、成形効率を高める目的で成形温度を高めに設定することがあり、そのような場合に熱安定化剤を配合するとより効果的である。
【0031】
前記熱安定化剤としては、特に制限されないが、例えば、リン系熱安定化剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられ、中でも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
前記リン系熱安定化剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0033】
前記有機ジスルフィド化合物としては、例えば、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどが挙げられる。これらの中でも、ジ-tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
【0034】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、共重合体とともに、離型剤や熱安定化剤の他に、光拡散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよいが、メタクリル樹脂組成物総量に対する共重合体の含有量は96〜99.999重量%が好ましい。
【0035】
本発明のメタクリル樹脂組成物が上述した離型剤、熱安定化剤、光拡散剤もしくは各種添加剤(以下、纏めて「添加物」と称する)を含有する場合、それらは、(ア)前記単量体成分を重合して得られた共重合体と添加物とを単独押出機や二軸押出機に入れて加熱溶融混練により混合する方法、(イ)前記単量体成分と添加物とを混合し、これを重合反応に付すことにより重合する方法、(ウ)上記(ア)の重合体からなるペレットもしくはビーズの表面に添加物を付着させておき、成形時に同時に混合する方法、等の方法によって含有させればよい。
【0036】
本発明のメタクリル樹脂組成物は、前記要件を備えることにより、押出成形の原料として適したものとなる。加えて、前記メタクリル樹脂組成物を押出成形して調製した導光板は耐熱性に優れるものとなるため、該樹脂組成物は導光板原料としても適したものとなる。
【0037】
本発明の導光板は、前記メタクリル樹脂組成物を押出成形して得られる樹脂板を切断加工等して製造することができる。このように押出成形法を採用することにより、従来のキャスト重合法ではできなかった切断加工時に発生するロス分の再利用が可能となり、加えて、キャスト重合法に比べ所望のサイズへの加工が容易となる。
【0038】
押出成形に使用される押出機としては特に限定されないが、操作性や設備コストの観点から、一軸押出機が好ましい。なお、本発明の導光板を作製する際の諸条件(例えば、成形材料の溶融温度、成形材料の押出温度、押出圧力など)については、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0039】
次に、本発明のメタクリル樹脂組成物を加熱溶融状態でダイから押し出して押出樹脂板を製造する一連の操作について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1及び図2は、それぞれメタクリル樹脂組成物を加熱溶融状態でダイから押し出して押出樹脂板を製造する方法の一例を示す模式図であるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0040】
図1及び図2に示すように、メタクリル樹脂組成物(P)を加熱溶融状態でダイ(1)から押し出すには、通常の押出成形法と同様に押出機(2)を用いてメタクリル樹脂組成物(P)を加熱し、溶融混練しながらダイ(1)に圧送すればよい。押出機(2)から圧送されたメタクリル樹脂組成物(P)は、加熱溶融状態のままダイ(1)により、板状に広げられ、ダイ(1)から押し出される。ダイ(1)としては通常、Tダイが用いられる。
【0041】
ダイ(1)から押し出されたメタクリル樹脂組成物(P1)は、第一冷却ロール(R1)と第二冷却ロール(R2)との間に挟み込まれる。
【0042】
第一冷却ロール(R1)及び第二冷却ロール(R2)として通常は、互いにほぼ等しい直径のものが用いられる。第一冷却ロール(R1)及び第二冷却ロール(R2)は通常、ステンレスなどの金属材料で構成され、鏡面状に鍍金仕上げされたものが用いられる。第一冷却ロール(R1)及び第二冷却ロール(R2)は、それぞれ、ダイ(1)から押し出されたメタクリル樹脂組成物(P1)を所定の温度まで冷却するように温度調節されている。
【0043】
第一冷却ロール(R1)及び第二冷却ロール(R2)は、例えば電動モーター(図示せず)などにより、所定の周速度比にて回転駆動される。この場合の所定の周速度比とは概ね1であるが、得られるシートの反り、面状態に応じて、調整される。
【0044】
第一冷却ロール(R1)と第二冷却ロール(R2)との間に挟み込まれたのちのメタクリル樹脂組成物(P1)は通常、第二冷却ロール(R2)に密着した状態のまま、この第二冷却ロール(R2)に巻き掛けられる。
【0045】
第二冷却ロール(R2)に巻き掛けられたのちのメタクリル樹脂組成物(P2)は、1本の後段冷却ロール(R3)に巻き掛けられるか、または複数本の後段冷却ロール(R3、R4・・・)に順次巻き掛けられる。
【0046】
後段冷却ロール(R3、R4・・・)としては通常、第一冷却ロール(R1)及び第二冷却ロール(R2)とほぼ等しい直径のものが用いられ、通常は、その表面がステンレスなどの金属材料で構成され、鏡面仕上げされたものが用いられる。後段冷却ロール(R3、R4・・・)は、ダイ(1)から押し出されたメタクリル樹脂組成物(P1)を所定の温度まで冷却するように温度調節されている。
【0047】
図1には、後段冷却ロールを1本単独で用いる例を示す。この例では、第二冷却ロール(R2)に巻き掛けられたメタクリル樹脂組成物(P2)は通常、この第二冷却ロール(R2)と、後段冷却ロール(R3)との間に挟み込まれたのちに、この後段冷却ロール(R3)に密着した状態のまま、巻き掛けられる。
【0048】
1本の後段冷却ロール(R3)は、例えば電動モーター(図示せず)などにより回転駆動される。
【0049】
図2には、複数本の後段冷却ロールを用いる例を示す。後段冷却ロール(R3、R4・・・)を複数本用いる場合、その本数は通常2本〜4本程度であり、図2には2本の後段冷却ロール(R3、R4)を用いる例を示している。
【0050】
第二冷却ロール(R2)に巻き掛けられたメタクリル樹脂組成物(P2)は通常、この第二冷却ロール(R2)と、複数の後段冷却ロールの最初のロール(R3)との間に挟み込まれたのちに、この最初のロール(R3)に巻き掛けられ、その後、順次、次の後段冷却ロール(R4・・・)との間に挟み込まれ、巻き掛けられる。
【0051】
複数の後段冷却ロール(R3、R4・・・)は、それぞれ、例えば電動モーター(図示せず)などにより回転駆動される。
【0052】
かくして1本の後段冷却ロール(R3)に巻きかけるか(図1)、または複数本の後段冷却ロール(R3、R4・・・)に順次巻き掛けることにより(図2)、冷却されたのちのメタクリル樹脂組成物(Pr)は、表面近傍のみ固化され、ロール鏡面がシート表面に転写された状態で、かつシート内部としては未だ十分に固化せずに熱変形し得る軟化状態であり、その温度はメタクリル樹脂組成物の熱変形温度以上であることが好ましい。
【0053】
次いで、図1及び図2に示すように、このメタクリル樹脂組成物(Pr)を平坦状態に維持したまま更に冷却して固化させる。メタクリル樹脂組成物(Pr)を平坦状態に維持したまま更に冷却して固化させるには、通常の押出成形法と同様に、例えば複数の搬送ローラー(Rt)から構成されたローラーテーブル(Tr)の上を大気中で搬送することにより、放冷すればよい。平坦状態に維持したままのメタクリル樹脂(Pr)の冷却は、35℃以上の雰囲気中で行われることが好ましく、メタクリル樹脂組成物(Pr)が固化するまでの移動距離を短くしうる点で、通常65℃以下、好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下、特に好ましくは45℃以下である。
【0054】
図1及び図2に示すように、固化したのちのメタクリル樹脂組成物(Pt)は、一対の引取ロール(N1、N2)により引き取られる。一対の引取ロール(N1、N2)としては通常、それぞれ表面がステンレスなどの金属材料で構成され、鏡面仕上げされたもの、表面がゴムで構成されたものなどが用いられ、例えば電動モーター(図示せず)などにより、互いに概ね同じ周速度となるように回転駆動される。固化したのちのメタクリル樹脂組成物(Pt)は、かかる引取ロール(N1、N2)に挟み込まれて、引き取られる。
【0055】
引取ロール(N1、N2)に引き取られた後の押出樹脂板(A)の厚みは、例えばダイ(1)から押し出されるメタクリル樹脂組成物(P1)の厚み、第一冷却ロール(R1)と第二冷却ロール(R2)との間隔などにより調整することができる。
【0056】
引取ロール(N1、N2)に引き取られた後の押出樹脂板(A)は、通常、両面にマスキングフィルムを貼合された後に、所望の大きさに切断される。さらに、必要に応じて、端面を研磨し、また、反射パターンを付与するために、片面にドット印刷やドット状にレーザー加工等が施される。そうして、本発明の導光板が得られる。
【0057】
前述した切断の際、製品となる部分以外のロス分(端材)が生じることになるが、かかるロス分を粉砕した後、押出成形の原料として再利用することができる。
【0058】
かくして本発明の導光板を製造することができる。本発明の導光板の厚みは、通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜5mmである。なお、LED光源を備えた液晶ディスプレイに使用される場合、好ましくは1mm以上である。導光板の厚みは、押出樹脂板(A)の厚みを前述のとおり調整することにより、調整することができる。
【0059】
本発明の導光板は、耐熱性の点で優れたものであるため、例えば、LED光源を備えた液晶ディスプレイのバックライトに好適に利用される。LED光源を備えた液晶ディスプレイとしては、テレビ、パーソナルコンピュータなどのモニターや、携帯電話、デジタルカメラなどの液晶画面といったものが挙げられる。本発明の導光板は、特に、テレビのような大画面のLED光源を備えた液晶ディスプレイに好適に使用される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、得られたメタクリル樹脂組成物及び押出樹脂板の各種物性の測定及び評価は下記の方法で行った。
【0061】
<共重合体組成比>
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を以下に示す条件で熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析し、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルに対応する各ピーク面積を測定した。
(熱分解条件)
試料調製:メタクリル樹脂組成物を精秤(目安2〜3mg)し、樋状にした金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んで両端を軽くペンチで押さえて封入した。
熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP−22(日本分析工業(株)製)
金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
恒温槽の設定温度:200℃
保温パイプの設定温度:250℃
熱分解温度:590℃
熱分解時間:5秒
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:GC−14B((株)島津製作所製)
検出方法:FID
カラム:7G 3.2m×3.1mmφ((株)島津製作所製)
充填剤:FAL−M((株)島津製作所製)
キャリアーガス:Air/N/H=50/100/50(kPa)、80ml/min
カラムの昇温条件:100℃で15分保持→10℃/minで150℃まで昇温→150℃で14分保持
INJ温度:200℃
DET温度:200℃
上記熱分解条件でメタクリル樹脂組成物を熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b)を測定した。そして、これらピーク面積からピーク面積比A(=b/a)を求めた。
一方、メタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比がW(既知)であるメタクリル樹脂の標準品を上記熱分解条件で熱分解させ、発生した分解生成物を上記ガスクロマトグラフィー分析条件で測定を行った時に検出されるメタクリル酸メチルに対応するピーク面積(a)及びアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b)を測定し、これらピーク面積からピーク面積比A(=b/a)を求めた。そして、前記ピーク面積比Aと前記重量比Wとから、ファクターf(=W/A)を求めた。
前記ピーク面積比Aに前記ファクターfを乗じることにより、前記メタクリル樹脂組成物に含まれる共重合体におけるメタクリル酸メチル単位に対するアクリル酸エステル単位の重量比Wを求め、該重量比Wから、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位の合計に対するメタクリル酸メチル単位の比率(重量%)と前記合計に対するアクリル酸エステル単位の比率(重量%)を算出した。
【0062】
<還元粘度>
ISO 1628−6に準拠して、得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物0.5gをクロロホルム50mLに溶解させ、25℃でキュノフェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0063】
<MFR>
JIS− K7210に準拠して、得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物について、230℃、37.3N荷重で測定した。
【0064】
<耐熱性(ビカット軟化温度)>
JIS−K7206(B50法)に準拠して、ヒートディストーションテスター((株)安田精機製作所製「148−6連型」)を用いて、得られた押出樹脂板のビカット軟化温度を測定した。ビカット軟化温度が高いほど、耐熱性に優れていると言える。
【0065】
<耐熱性(ヒートサグ値)>
JIS−K7195に準拠して、得られた押出樹脂板について、85℃と100℃における1時間後のそり量(ヒートサグ値)を測定した。この値が小さいほど、耐熱性に優れていると言える。
【0066】
<光学特性>
得られた押出樹脂板の試験片の端面を研磨機〔「プラビューティー PB−100」、旭メガロ社製〕で研磨してから、分光光度計〔「U−4000」、日立製作所製〕にて波長380〜780nmの範囲で、5nm間隔で300mmパス透過率を測定した。得られた透過率から平均の透過率(Tt)を計算した。また、透過率から、JIS Z−8722記載の方法に従ってXYZ値を求め、JIS K−7105記載の方法に従って黄色度(YI)を求めた。YIが0に近いほど、着色が少ないことを示す。
【0067】
<異物>
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を160g採取し、圧縮成形により厚さ3.0mm、210mm角の板状サンプルを作製した。得られた板状サンプルを歪み検査機(新東科学(株)製の「HEIDON−13」)を用いて、目視にて含まれる黒色異物と白色異物の個数を確認し、さらに倍率20倍の光学顕微鏡にて異物の大きさを計測し、「きょう雑物測定図表」(大蔵省造幣局発行)を用いて0.05mm以上の黒色異物と、0.1mm以上の白色異物の個数を求めた。
【0068】
(実施例1)
攪拌機を備えた重合反応器に、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と略す)97.5重量部、及びアクリル酸メチル(以下「MA」と略す)2.5重量部の混合物(単量体成分)と、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.020重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.15重量部と、熱安定化剤として、ジ−tert−ドデシルジスルフィド0.001重量部とを、175℃にて平均滞留時間33分間となるように連続的に供給するとともに反応液を連続的に排出しながら重合し、次いで、重合反応器から出てきた反応液(部分共重合体)を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収するとともに、離型剤として、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.035重量%に相当する量(0.035重量部)のステアリルアルコールを添加し、十分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物の生成量より算出される重合率は56%であった。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物について、共重合体組成比、還元粘度、MFR、及び異物を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、一軸押出機を用いて250〜260℃で溶融混練し、Tダイを介して押し出した。押出された溶融樹脂を、鏡面状に鍍金仕上げされた金属ロールからなる、第一冷却ロールと第二冷却ロールの間に、バンクを形成しつつ、挟み込んで成形・冷却した。さらに後段の冷却ロールにまきかけて、搬送ローラーテーブル上で搬送することで、平坦状態で維持、冷却して完全に固化させた。引き続き、一対の引き取りロールで引き取り、両面にマスキングフィルムを貼り、押出樹脂板を得た。押出樹脂板を切削し、マイクロメーターを用いて板厚を測定したところ、4.0mmであった。得られた押出樹脂板のビカット軟化温度、ヒートサグ値、及び光学特性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
攪拌機を備えた重合反応器に、MMA94.7重量部、及びMA5.3重量部の混合物(単量体成分)と、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.017重量部と、連鎖移動剤としてn−オクチルメルカプタン0.10重量部と、熱安定化剤として、ジ−tert−ドデシルジスルフィド0.001重量部とを、175℃にて平均滞留時間33分間となるように連続的に供給するとともに反応液を連続的に排出しながら重合し、次いで、重合反応器から出てきた反応液(部分共重合体)を脱揮押出機に供給し、未反応の単量体成分を気化させて回収するとともに、離型剤として、最終的に得られる樹脂組成物総量の0.05重量%に相当する量(0.05重量部)のステアリルアルコールを添加し、十分に混練した後、賦形して、ペレット状のメタクリル樹脂組成物を得た。得られたメタクリル樹脂組成物の生成量より算出される重合率は56%であった。得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物について、共重合体組成比、還元粘度、MFR、及び異物を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
得られたペレット状のメタクリル樹脂組成物を、一軸押出機を用いて250〜260℃で溶融混練し、Tダイを介して押し出した。押出された溶融樹脂を、鏡面状に鍍金仕上げされた金属ロールからなる、第一冷却ロールと第二冷却ロールの間に、バンクを形成しつつ、挟み込んで成形・冷却した。さらに後段の冷却ロールにまきかけて、搬送ローラーテーブル上で搬送することで、平坦状態で維持、冷却して完全に固化させた。引き続き、一対の引き取りロールで引き取り、両面にマスキングフィルムを貼り、押出樹脂板を得た。押出樹脂板を切削し、マイクロメーターを用いて板厚を測定したところ、4.0mmであった。得られた押出樹脂板のビカット軟化温度、ヒートサグ値、及び光学特性を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例2)
市販の三星電子社製のLED光源を備えた液晶TV(UN40B6000グレード)を分解し、内部に搭載の導光板を採取し、各物性(共重合体組成比、還元粘度、MFR、ビカット軟化温度、ヒートサグ値、及び光学特性)の評価を行った。共重合体組成比と還元粘度は、導光板を細かく裁断したものを用いて評価した。結果を表1に示す。なお、所定濃度で溶解しなかったため、還元粘度は80cm/gよりも大きいと判断した。また、分子量が高いために、MFRを測定することが出来なかった。
【0073】
(比較例3)
市販のソニー(株)製のLED光源を備えた液晶TV(BRAVIA KDL−40ZX1)を分解し、内部に搭載の導光板を採取し、各物性(共重合体組成比、還元粘度、MFR、ビカット軟化温度、ヒートサグ値、及び光学特性)の評価を行った。共重合体組成比と還元粘度は、導光板を細かく裁断したものを用いて評価した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
MMA:メタクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
BA:アクリル酸n−ブチル
*1):クロロホルムに不溶であったため、測定不能。
*2):分子量が高く、測定不能。
【符号の説明】
【0076】
1:ダイ
2:押出機
P、P1、P2、P3、P4、Pr、Pt:メタクリル樹脂
R1:第一冷却ロール
R2:第二冷却ロール
R3:後段冷却ロール
R4:後段冷却ロール
Rt:搬送ロール
Tr:ローラーテーブル
N1、N2:引取ロール
A:押出樹脂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)、(II)及び(III)を満たすことを特徴とする押出導光板用メタクリル樹脂組成物。
(I)メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルの共重合体を含有すること
(II)熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるメタクリル酸メチル単位の比率が96重量%以上であること
(III)濃度0.01g/cmのクロロホルム溶液として25℃で測定した還元粘度が60〜80cm/gであること
【請求項2】
熱分解ガスクロマトグラフィーによる分析から求められる前記共重合体におけるアクリル酸エステル単位の比率が0.1重量%以上である請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル酸エステルがアクリル酸メチルである請求項1または2に記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項4】
37.3N荷重で測定した230℃におけるMFRが0.5〜7g/10分の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合体が、メタクリル酸メチル及びアクリル酸エステルを連続塊状重合または連続溶液重合することにより得られる請求項1〜4のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項6】
メタクリル樹脂組成物総量に対して0.01〜0.1重量%の離型剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物から構成される導光板。
【請求項8】
LED光源を備えた液晶ディスプレイに使用される請求項7に記載の導光板。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のメタクリル樹脂組成物を押出成形する導光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−140626(P2011−140626A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184718(P2010−184718)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】