説明

押出防止ガスケット面シール

(a)表裏に第1の面および第2の面を有するほぼ平らで実質的に剛なシール保持具であって、第1の面に形成された第1の環状溝を有するシール保持具と、(b)第1の溝内に配置された第1の弾性シールと、(c)第1の弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、第1の弾性シールに固定された第1の環状バックアップリングであって、第1の弾性シールより実質的に硬い第1のバックアップリングとを備える流体継手用のシールアセンブリを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に流体継手に関し、より詳細には流体継手用のシール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の航空機用ガスタービンエンジンは、通常より高い圧力で作動する流体システムを用いており、したがって、漏洩を起こし易い。たとえば、ある種の適用例では、28MPa(4000psi)の燃料が、多数のエンジンアクチュエータを作動させる作動流体として使用されている。高圧および大流量のために、4ボルトフランジの面シールとして周知のタイプの継手が、様々な構成要素間の流体接続を行うために使用されている。押出解析に基づいて、標準タイプのシールは、フランジがシールから浮き上がるのを防ぐために、中圧システムに通常使用されるフランジより厚いフランジを必要とする。この厚目のフランジは、構造全体の重量を増し、それでもなお、組み立て中にフランジを適切に締結しないと、シールが不具合を起こし易い。
【0003】
従来、4ボルトフランジの面シールは、2つのタイプのシール構造の1つを組み入れている。その2つのタイプは、(1)米国44124オハイオ州クリーブランドのParker Hannifin Companyによって商標名GASK−O−SEALの下に販売されているもののような、金属とエラストマーの複合フランジガスケット、または(2)合わせバックアップリング付き遊合L字形断面エラストマーシールである。標準的フランジガスケットは、両面にエラストマーシールを有する金属製保持板から構成される。シールは、保守整備および組立を簡単にするために保持板に恒久的に取り付けられている。一方の側のシールはフランジに押し付けられ、他方のシールは、対合する構成要素またはフランジに押し付けられる。フランジガスケットタイプ構造の不利な面は、高圧下で限界があり、シールの押出を防ぐために小さな空隙を維持する必要があることである。これは、フランジの撓みを抑えるために厚く剛なフランジ連結部を必要とする。
【0004】
遊合L字形エラストマーは、対合する構成要素またはフランジのシール箱内に配置される。次いで、フランジが、シールに被せて締結されて、シールに圧縮力を加える。この構造は、シールがシール箱内に装着されていることを確認できる視覚表示が存在しないので、保守整備性を制約する。シールはまた、バックアップリングがシール箱の底に来るようになる逆向きに装着されて、作動中役に立たなくなる可能性もある。このタイプのシールはまた、適切に作動させるためには、フランジにシール箱を精密に機械加工する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2002/030326号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の技術のこれらおよび他の欠点が、統合的押出防止機構を組み込んだボルト締めフランジガスケットシールを提供する本発明によって対処される。
【0007】
一態様によれば、流体継手用のシールアセンブリが、(a)表裏に第1の面および第2の面を有するほぼ平らで実質的に剛なシール保持具であって、第1の面に形成された第1の環状溝を有するシール保持具と、(b)第1の溝内に配置された第1の弾性シールと、(c)第1の弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、第1の弾性シールに固定された第1の環状バックアップリングであって、第1の弾性シールより実質的に硬い第1のバックアップリングとを備える。
【0008】
本発明の別の態様によれば、流体継手が、(a)それを貫通する孔を有する第1のフェルールであって、その一方の端部にシール面が配置されている第1のフェルールと、(b)それを貫通する孔を有する第2のフェルールであって、その一方の端部にシール面が配置されている第2のフェルールと、(c)両フェルールの両シール面の間に締結されたほぼ平らで実質的に剛なシール保持具であって、表裏に第1の面および第2の面を有し、各面が、その面内に形成された環状溝を有する、シール保持具と、(d)それぞれの溝内に配置されたシールリングであって、(i)環状弾性シール、および(ii)弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、弾性シールに固定された環状バックアップリングであって、弾性シールより実質的に硬いバックアップリングを備えるシールリングとを具備する。
【0009】
本発明は、添付図面と併せて以下の説明を参照することにより、最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の態様によって構成された流体継手の側面図である。
【図2】図1の流体継手の半断面分解組立図である。
【図3】図1に示されたシールアセンブリの透視図である。
【図4】図3のシールアセンブリの半断面図である。
【図5】組立状態の配管継手の拡大半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
同一の参照番号は、様々な図全体に亘って同じ要素を表示する図面を参照すると、図1は、第1のフェルール14に連結された第1の導管12と、第2のフェルール18に連結された第2の導管16とを備えた流体継手アセンブリ10を示す。シールアセンブリ20が、フェルール14と18との間に配置されている。フェルール14および18は、1対の板状フランジ22と24との間に一体に締結され、フランジ22と24は図示のボルト26などの締結手段によって固締されている。図示の例では、第1の導管12および第2の導管16は、ガスタービンエンジンの高圧油圧作動流体として使用される、たとえば約28MPa(4000psi)の流体を移送する金属配管を構成する。本発明の原理は、信頼性の高い流体用面シールが必要なところにはどこにでも適用可能である。
【0012】
図2は、流体継手10の構成要素の半断面分解組立図である。第1のフェルール14は、実質的に剛であり、鋼またはアルミニウム合金などの材料から製作することができる。第1のフェルール14は、第1の端部30および第2の端部32を有するほぼ円筒形の本体28と、それを貫通する中央孔34とを有する。シール面36は、第1の端部30に配置される。環状リム38が、本体28から半径方向外向きに延出する。周知のタイプのパイプまたは管であり得る第1の導管12は、第1のフェルール14の第2の端部32に、たとえば締結具、接着剤、または熱もしくは音波接合を用いて流体密封接合状態に接合される開放端部40を有する。図示の例では、第1の導管12と第1のフェルール14とは、突合せ溶接によって接合されている。
【0013】
第2のフェルール18および第2の導管16は、それぞれ第1のフェルール14および第1の導管12と構造上同一であり、それらは互いに同様に接合される。
【0014】
図3および4は、シールアセンブリ20の構造を示す。シールアセンブリ20は、表裏の第1の面44および第2の面46と、流体を流す中央孔48とを有し、実質的に剛で、ほぼ平らなシール保持具42を備える。シール保持具42に適切な材料の例には、鋼およびアルミニウム合金が含まれる。環状溝48および50が、第1の面44および第2の面46にそれぞれ形成されている。同一のシールリング52が、溝48および50内に配置されている。
【0015】
シールリング52は、弾性シール56と、バックアップリング58とを備える。弾性シール56は、作動中に出会うと想定される物理的および化学的状態に適合可能な任意の弾性材料から製作することができる。高圧液体炭化水素燃料に使用することを意図する図示の適用例では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ化炭素ポリマーが、適切な材料の一例である。弾性シール56の硬度(デュロメータ)等級は、用途に応じて変わり、低環境温度が想定される場合には柔らか目の材料が使用される。図示の例では、弾性シール56は、ショア「A」スケールで約75の硬度を有する。弾性シール56は、断面でほぼ「L」字形であり、半径方向脚60と、軸方向脚62とを有する。軸方向脚62は、凸状の丸い先端を有し、シール保持具42の第1の面44から自由状態で突出する寸法になっている。突出量は、流体継手10が組み立てられたときに所望される圧縮量によって決定される。
【0016】
バックアップリング58は、半径方向脚60および軸方向脚62によって形成される「角部」内に配置される。バックアップリング58は、弾性シール56に固定される。2つの構成要素を固定する適切な方法の例には、締結具、接着剤、熱または音波接合、および弾性シール56とバックアップリング58の同時成形が含まれる。バックアップリング58は、弾性シール56が圧力を受けて流体継手10の構成要素の間に押し出されるのを防止するために、弾性シール56より硬く作られる。図示の例では、約90ショアA以上の硬度を有するあらゆる材料が、この目的を満たしている。多くの周知のプラスチックおよび金属が、この硬度要件を満たすことができる。
【0017】
任意選択で、シールリング52は、たとえば締結具または接着剤を用いて溝48および52内に固定することができる。これは、シールアセンブリ20を一体ユニットにする。
【0018】
図5は、組立状態の流体継手10を示し、シールアセンブリ20が、第1のフェルール14と第2のフェルール18との間に締結され、第1のフェルール14および第2のフェルール18は、さらに、フランジ22および24によって締結されている。シールリング52が、溝48および50内に配置されている。弾性シール56は圧縮され、バックアップリング58は、弾性シール56の外側寄りに配置され、それによって、弾性シール56が外に向かって押し出されるのを防止することができる。上記の通り、バックアップリング58は弾性シール56に固定されているので、バックアップリング58がシールアセンブリ20から不注意で外されることは起こり得ない。さらに、弾性シール56のL字形断面本来の形によって、弾性シール56が逆向きに装着されれば即座に明らかになる。シールリング52がシール保持具42固定された場合には、シールリング52がアセンブリから外されることは起き得ない。シールアセンブリ20は対称であるので、流体継手10の誤組立はさらに起こり得ない。
【0019】
上記のシールアセンブリには、従来技術のフランジシールと比較していくつかの利点がある。すなわち、(1)管継手重量の軽減、(2)シールの信頼性の向上、(3)シールが適切に装着されていることの視覚確認の容易化、(4)シールの誤装着による整備起因不具合の低減、(5)最小限の部品を使用することによる整備性の向上、および4ボルトフランジの製造プロセスの簡略化によるコストの低減である。これらの利点により、より軽く、より保守整備性の良い、信頼性が向上したシール構成が可能になる。
【0020】
上記では、流体継手構成およびシールアセンブリを説明した。本発明の特定の実施形態を説明して来たが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなくそれらの実施形態に様々な変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の好ましい実施形態および本発明を実施するための最良の形態についての上記の説明は、例示の目的のためにのみ提供されたものであり、限定することを目的として提供されたものではない。
【符号の説明】
【0021】
10 流体継手アセンブリ
12 第1の導管
14 第1のフェルール
16 第2の導管
18 第2のフェルール
20 シールアセンブリ
22 板状フランジ
24 板状フランジ
26 ボルト
28 本体
30 第1の端部
32 第2の端部
34 中央孔
36 シール面
38 環状リム
40 開放端部
42 シール保持具
44 第1の面
46 第2の面
48 中央孔
48 環状溝
50 環状溝
52 シールリング
56 弾性シール
58 バックアップリング
60 半径方向脚
62 軸方向脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表裏に第1の面および第2の面を有するほぼ平らで実質的に剛なシール保持具であって、前記第1の面に形成された第1の環状溝を有するシール保持具と、
(b)前記第1の溝内に配置された第1の弾性シールと、
(c)前記第1の弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、前記第1の弾性シールに固定された第1の環状バックアップリングであって、前記第1の弾性シールより実質的に硬い第1のバックアップリングと
を備える流体継手用のシールアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の弾性シールが前記第1の溝内に固定されている、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
(a)前記第1の弾性シールが、軸方向および半径方向に延出した脚を有するほぼL字形の断面形状を有し、
(b)前記第1のバックアップリングが、前記半径方向脚および軸方向脚によって画成される角部内に配置される、
請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記軸方向に延出した脚が、凸状の湾曲した先端を有する、請求項3記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記軸方向に延出した脚が、自由状態で、前記シール保持具の前記第1の面を越えて延出する、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の弾性シールがフッ化炭素エラストマーを含む、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の弾性シールが約75ショアA以下の硬度を有する、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記第1のバックアップリングが約90ショアA以上の硬度を有する、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
前記シール保持具が、前記第2の面に形成された第2の環状溝を有し、前記シールアセンブリが、
(a)前記第2の溝内に配置された第2の弾性シールと、
(b)前記第2の弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、前記第2の弾性シールに固定された第2の環状バックアップリングであって、前記第2の弾性シールより実質的に硬い第2の環状バックアップリングと
をさらに備える、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記第2の弾性シールが前記第2の溝内に固定されている、請求項9記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
(a)それを貫通する孔を有する第1のフェルールであって、その一方の端部にシール面が配置されている第1のフェルールと、
(b)それを貫通する孔を有する第2のフェルールであって、その一方の端部にシール面が配置されている第2のフェルールと、
(c)前記両フェルールの前記両シール面の間に締結されたほぼ平らで実質的に剛なシール保持具であって、表裏に第1の面および第2の面を有し、各面が、その面内に形成された環状溝を有する、シール保持具と、
(d)前記それぞれの溝内に配置されたシールリングであって、
(i)環状弾性シール、および
(ii)前記弾性シールの半径方向外側寄りに配置され、前記弾性シールに固定された環状バックアップリングであって、前記弾性シールより実質的に硬いバックアップリング
を備えるシールリングと
を具備する流体継手。
【請求項12】
前記シールリングが前記溝内に固定されている、請求項11記載の流体継手。
【請求項13】
(a)前記第1のフェルールを押さえる第1のフランジと、
(b)前記第2のフェルールを押さえる第2のフランジと、
(c)前記両フランジを一体に固定する締結手段と
をさらに備える、請求項11記載の流体継手。
【請求項14】
前記締結手段が、前記第1のフランジと第2のフランジとを相互に連結する機械的締結具を備える、請求項13記載の流体継手。
【請求項15】
(a)前記第1のフェルールと確実に流体連通する第1の導管と、
(b)前記第2のフェルールと確実に流体連通する第2の導管と
をさらに備える、請求項11記載の流体継手。
【請求項16】
(a)前記弾性シールのそれぞれが、軸方向および半径方向に延出した脚を有するほぼL字形の断面形状を有し、
(b)各シールに対応する前記バックアップリングが、前記半径方向脚および軸方向脚によって画成される角部内に配置される、
請求項11記載の流体継手。
【請求項17】
各弾性シールの前記軸方向に延出した脚が、凸状の湾曲した先端を有する、請求項16記載の流体継手。
【請求項18】
前記軸方向に延出した脚が、自由状態で、前記シール保持具の前記面を越えて延出する、請求項16記載の流体継手。
【請求項19】
前記弾性シールのそれぞれがフッ化炭素エラストマーを含む、請求項11記載の流体継手。
【請求項20】
前記弾性シールのそれぞれが約75ショアA以下の硬度を有する、請求項11記載の流体継手。
【請求項21】
前記バックアップリングのそれぞれが約90ショアA以上の硬度を有する、請求項11記載の流体継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528422(P2011−528422A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518749(P2011−518749)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/043872
【国際公開番号】WO2010/019296
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】