説明

押圧スイッチ

【課題】押圧操作により動作するスイッチにおいて、全高が低くケースとステムとの摺動長さが短いスイッチにおいても、外形を大きくすることなくステムの隅部での押圧による過度の摺動摩擦を抑え円滑な動作が可能な押圧スイッチを提供する。
【解決手段】ケースに、スイッチ機構部を配置する第一開口部11と、第一開口部11の周囲に第二開口部12を設け、第二開口部の第一開口部11側に位置する湾曲状側壁17はケース外壁18方向に凸状に湾曲面に形成され、第二開口部12に摺動可能に設けられたステムの天面から垂直に突出した摺動突出部42の第一開口部11側に位置する突出部摺動面44は平面状に形成されることにより、天面の隅部に押圧力が加わり、湾曲状側壁17と突出部摺動面44との摺動が傾斜を有して摺動することとなった際にも「点」における摺動となり、これによって摩擦力の影響が軽減された円滑な押圧動作が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧動作により動作するスイッチに関するものであり、特にスイッチの全高が低く押圧操作を受けるステムとケースとの摺動長が大きくとれないスイッチにおいてもステムの隅を押圧した際にステムをスムーズに適切な荷重で押圧しスイッチ動作させることを可能にするスイッチ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の押圧スイッチ100の断面を示したものである。従来の押圧スイッチ100はケース101、接触子102、弾性体103、ステム104からなる。ケース101は一方が開口し、開口部底面にはほぼ中央に導電性金属の端子が露出した中央電極と、該中央電極の周囲に配置された導電性金属の端子が露出したサイド電極とが一体成形された第一開口部105が形成され、各端子の一端は押圧スイッチ100が実装される基板(図示せず)にはんだ付け等で接続される。さらに第一開口部105の周囲には複数の第二開口部106が押圧方向に開口され、後述するステム104の摺動突出部107が摺動することとなる。
【0003】
ケース101の第一開口部には、円環の内側に中央方向に延出した舌片を有する導電性の薄板金属からなる接触子102が組み入れられ、接触子102の円環部がサイド電極に載置され、中央部の舌片部先端は中央電極に離間することとなる。この接触子102の上には略円錐形状のラバー等の弾性絶縁材料からなる弾性体103が、弾性体の環状底辺を接触子の円環に載置して配置される。さらにその上から第一開口部および第二開口部を覆う平面状の天面と、天面からほぼ垂直に突出し、第二開口部に挿入され摺動可能な第二開口部よりやや小さく相似形に形成され第一開口部105の側壁に対向する側面が第二開口部の対向する面と平行に形成された複数の摺動突出部107と、ケースの係止部に係止される天面の縁部から突出した係止片とを有するステムが、係止片をケースに係合することにより組み入れられ押圧スイッチ100が組み立てられる。
【0004】
こうして組立てられた押圧スイッチ100は、ステム104の天面を押圧することにより、略円錐形状の弾性体の頂部が押圧され頂部の内側に形成された開口部の底面方向に突出した凸部が接触子102の舌片を押圧して中央電極に接触することとなり、これによって中央電極とサイド電極とが接触子を介して電気的に導通し、スイッチがON状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2007−323967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、この種の押圧スイッチ100は小型化に伴いスイッチの高さをより低くすることが求められ、これによってステム104の天面の四隅辺りを押圧操作する際、ステム104の傾きをより小さくするために設けたステム104の摺動突出部とケース101の第二開口部との摺動機構における摺動長L1をより短くせざるを得なくなり、これによってステム104の天面の四隅辺りを押圧した際にはステム104は大きく傾き、摺動突出部と第二開口部の間で生じる摩擦力によってステム104の上下方向の円滑な動きが妨げられ、スイッチを円滑に切り換えることが困難となっていた。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、押圧スイッチにおいて全高が低くなりステムとケースとの摺動長さが短くなった場合にもステムの縁部近傍を押圧する操作に対しても、ステムの上下方向へのスムーズな動作およびスイッチの切り換えが得られるスイッチ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、押圧スイッチにおいて中央電極と中央電極の外側に位置するサイド電極が形成された底面を有する第一開口部と、第一開口部の周囲に位置する複数の第二開口部とを有するケースと、中央電極とサイド電極との電気的導通の切り換えを行なうスイッチ機構部と、第一開口部を覆う天面と、天面からほぼ垂直に第二開口部へ摺動可能に突出した複数の摺動突出部とを有するステムと、からなる押圧スイッチであり、摺動突出部の第一開口部側の突出部摺動面と突出部摺動面に対向する第二開口部の対向側面の少なくとも一方は、対向する面に対し凸状に湾曲していることを特徴とする
【0009】
請求項2記載の発明は、前記スイッチ機構部が、サイド電極に載置される外環部と外環部から延出し中央電極に離間して位置する舌片部を有する導電性の薄板金属からなる接触子と、外環部に載置される底辺側基部と、舌片部に離間し且つ中央電極に向けて突起部を有する頂上基部とが傾斜部によって連続した弾性体とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、押圧スイッチのステムの縁部近傍を押圧操作した際には、摺動突出部の第一開口部側の突出部摺動面が傾きつつ、突出部摺動面に対向する第二開口部の側面に摺動することとなり、この際、前記突出部摺動面と前記突出部摺動面に対向する第二開口部の側面との少なくとも一方が前記対向する面に頂部を向かわせて湾曲しているため、前記の摺動は「面」と「面」とによる大きな摺動面積でなされる摺動ではなく、一方が面であり他方が湾曲部の頂部である「点」における摺動、あるいは両者が湾曲部の頂部である「点」での摺動となり、これによってステムとケースとの摺動は円滑に行なわれ、押圧操作によるステムの円滑な上下の動作およびスイッチの切り換えが可能となる。
【0011】
請求項2の発明によると、スイッチ機構部が導電性の薄板金属からなる接触子と、弾性体とから構成されているため、スイッチの荷重特性が弾性体によって決定され、中央電極とサイド電極との導通が導電性金属からなる接触子によって行われるため、荷重特性にバリエーションをもたせることが可能であり、且つ確実な接触を可能とし安定したスイッチの切り換えが行なえることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る押圧スイッチの斜視図
【図2】本発明に係る押圧スイッチの分解斜視図
【図3】図1のA−A線における断面図
【図4】図1のB−B線における一部断面による動作状態図
【図5】従来の押圧スイッチの構造断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1乃至図4は本発明の実施の形態を示したものであり、図1は本発明に係る押圧スイッチの斜視図、図2は本発明に係る押圧スイッチの分解斜視図、図3は図1のA−A線における断面図、図4は図1のB−B線における一部断面による動作状態図、図5は従来の押圧スイッチの構造断面図である。押圧スイッチ01は、中央電極13およびサイド電極14を一体成形したケース10、接触子50、弾性体30、ステム40からなる。
【0014】
ケース10は絶縁材料からなる略直方体であり、ほぼ中央に導電性金属からなり表面を露出させた中央電極13を配置し中央電極13の周囲には同じく導電性金属からなる複数のサイド電極14を配置した底面15を有する一方側に開口した略円筒状の第一開口部11が形成され、第一開口部11の周囲には中央電極13を中心としてケース10の四隅にほぼ90度の角度毎に対称に配置された四つの第二開口部12が形成されており、第二開口部12は、略円筒状の第一開口部11の側壁であり第一開口部11の内側側面に平行な湾曲状側壁17を成す対向側面16と、略直方形状のケース外形を形成しているケース外壁の四つの隅部に位置しほぼ90度の角度を有して形成された外壁側面19、および底面とによって形成されており、平面方向からの矢視は図3に示すように対向側面16を底辺とする略二等辺三角形状にあらわれることとなる。また、ケース10の一対の外壁にはステム40から延出した係止片43が係止されることとなる凹部20が形成されている。
【0015】
接触子50は薄板状の導電性金属からなり、環状の外環部51と、外環部51の内側縁から中央部分に向けて外環部51に対して厚み方向に一定角度を有して延出した舌片部52とからなり、舌片部52の先端53は円板状に形成され外環部21のほぼ中央部に位置して形成されたものである。
【0016】
弾性体30は絶縁材料であるラバーからなる内側が中空の略円錐形状に形成されており、底辺側にはほぼ垂直に切り立ち、円錐のテーパー部よりも厚く形成された底辺側基部31を有し、そして頂上部にも厚く形成された頂上基部32が形成され、頂上部より中空な内部に向かって押圧突起部(図示せず)が突出している。
【0017】
ステム40は絶縁材料からなりケース10の第一開口部11および第二開口部12を覆う略正方形状の天面41と天面41の四箇所の隅から延出する四個の摺動突出部42とからなる。摺動突出部42は、第二開口部12に挿入され摺動可能であり、水平方向の断面は略二等辺三角形状に形成されており、概略二等辺三角形の底辺となるケース10の対向側面16に対向する突出部摺動面44は平面であり、摺動突出部42が第二開口部12に挿入された際には、四つの各々の対向側面16と突出部摺動面44との隙間a(内側摺動クリアランス)が等分になるように置かれた状態において0.02mmから0.05mmの範囲となるよう設定されている。また前記二等辺三角形のその他の二辺となっており、ケース10の外壁側面19に対向する突出部外側壁46は、外壁側面19に平行であり、且つ四つの各々の外壁側面19と突出部外側壁46との隙間b(外側クリアランス)が等分になるように置かれた状態において0.1mm以上となるよう設定されている。
【0018】
そして、以上の部品を用いて以下のように組み立てることにより押圧スイッチは完成する。まず、ケース10の第一開口部11に接触子50を組み入れる。この際、接触子50の外環部51がサイド電極14に載置され、且つ舌片部52の先端53が中央電極13に離間するよう位置される。そして、この接触子50の外環部51に弾性体30が底辺側基部を載置して組み入れられ、これによって弾性体30の押圧突起部が接触子50の先端53に離間して位置することとなる。
【0019】
このように第一開口部11に接触子20と弾性体30を入れた状態で最後にステム40を組み込む。ステム40の四箇所の摺動突出部42を第二開口部12に挿入させ、ステム40の係止片43をケース10の凹部20に係止させることによって組立は完了し、第一開口部11と第二開口部12とがステム40の天面41で覆われ、さらに天面41が弾性体30の頂上基部32を僅かに押圧した状態で押圧スイッチの初期状態となる。
【0020】
この初期状態から押圧スイッチ01は、まずステム40の天面41のほぼ中央を押圧されることにより天面41は傾くことなくほぼ水平に移動し、弾性体30の頂上基部32が押圧され、押圧突起部が接触子50の先端53に接触し、更なる押圧操作を受けて先端53が中央電極13に接触することとなり、これによって中央電極13とサイド電極14が接触子50を介して導通し、押圧スイッチがON状態となる。そして、この押圧動作の過程において弾性体30が円錐形状であることから、ある一定の押圧ストロークにおいて円錐形状が略反転され、これによってクリック感を伴った押圧操作がなされることとなる。
【0021】
このようにステム40の天面41のほぼ中央を押圧した場合には、天面41が傾くことなく移動し押圧した距離の分だけ弾性体30の頂上基部32が移動するのは当然のことであるが、押圧スイッチ01においてはステム40の天面41の隅を押圧した際においても天面41の傾きをできる限り小さくし、天面41の中央を押圧した場合の動作状態により近づけることが可能であるので、以下にその動作を説明する。
【0022】
押圧操作する位置をステム40の天面41における中央ではなく、角部に近い隅とした場合、天面41は隅を押圧されることにより傾き始める。これによって天面41の隅から垂直に延出した摺動突出部42も傾き始め、先に述べたように隙間aが隙間bに比べて小さく設定されていることから押圧位置に最も近い位置に
ある摺動突出部42の突出部摺動面44の最下部47が第二開口部12の対向側面16に当接し、この摺動突出部42に天面41の中心位置または中央電極の中心位置に対して対称位置にあるもう一つの摺動突起部42の突出部摺動面44が対向するもう一方の対向側面16の頂上角部21に当接することとなる。そして最下部47と頂上角部21における当接は、天面41が傾きつつ押圧されていることにより押圧力によって平面方向の分力が最下部47と頂上部21に働き、これによって天面41を押し込むことを妨げる摩擦力が生じることとなる。しかしながら本発明の押圧スイッチ01においては対向側面16は押圧操作方向に垂直な平面における断面が円弧状である曲面であり、突出部摺動面44が平面であることから最下部47と頂上角部21における当接はそれぞれ「点」における当接となる。そしてこの「点」での当接は、本来、対向側面16および突出部摺動面44が平面であることによって生じる「線」での当接に比較し、摩擦係数が極めて小さくなり、これによって最下部47と頂上角部21における上記摩擦力も小さくなる。
【0023】
よって天面41の隅を押圧操作した際にも、押圧初期状態における天面41の傾きはあるものの、摺動突出部42と第二開口部12との摺動が摩擦力により妨げられることは少なくなり、摺動突出部42が第二開口部12の中を円滑に摺動することとなる。そして、その後押圧操作が続けられることにより序々に摺動突出部42と第二開口部12とが重なり合う距離、つまり摺動距離が長くなり、これによって序々に天面41の傾きも小さくなり、接触子50の先端53が中央電極13に接触する際には、天面41の中央部を押圧した際の動作状態とほぼ同じ動作状態となり押圧スイッチ01がON状態となるものである。
【0024】
このように押圧スイッチ01は摺動突出部42と第二開口部12との当接が「点」で行なわれる構造としたことによって押圧操作の際、たとえ天面41の隅を押圧したとしても円滑な押圧操作が可能となり、スイッチ高さが小さく摺動距離が短くなるスイッチにおいても円滑な動作が可能となる。そして、これによって押圧スイッチ01を電気機器に組み入れた際にも押圧するポイントが小さく限られることはなく、電気機器の組立て等をより容易にすることも可能となる。
【0025】
また本実施例においては対向側面16を曲面、突出部摺動面44を平面としたが、これに限るものではなく対向側面16を平面、突出部摺動面44を曲面としてもよく、また対向側面16と突出部摺動面44の両者を、断面において互いに凸方向が向かい合う曲面にしてもよい。つまり摺動突出部42と第二開口部12との当接が「点」においてなされるものであれば、天面41の隅を押圧した際にも円滑な動作が行なわれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、高さが小さく、ケースとステムとの摺動距離が短くなる押圧スイッチに用いられ、ケースに設けた第二開口部の側面を曲面とし、ステムの摺動突出部の側面を平面とすることによりステムの天面の隅部を押圧しステムの天面が傾いた状態においても摺動の際の当接が「点」で行なわれ、摺動時の摩擦力が軽減されることによって円滑な動作を得ることが必要である押圧スイッチに利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
01 押圧スイッチ 10 ケース 11 第一開口部 12 第二開口部 13 中央電極 14 サイド電極 15 底面 16 対向側面 17 湾曲状側壁 18 ケース外壁 19 外壁側面 20 凹部 21 頂上角部 30 弾性体 31 底辺側基部 32 頂上基部 33 傾斜部 40 ステム 41 天面 42 摺動突出部 43 係止片 44 突出部摺動面 46 突出部外側壁 47 最下部 50 接触子 51 外環部 52 舌片部 53 先端 100 従来の押圧スイッチ L1 摺動長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央電極(13)と中央電極(13)の外側に位置するサイド電極(14)が形成された底面(15)を有する第一開口部(11)と、第一開口部(11)の周囲に位置する複数の第二開口部(12)とを有するケース(10)と、中央電極(13)とサイド電極(14)との電気的導通の切り換えを行なうスイッチ機構と、第一開口部(11)を覆う天面(41)と、天面(41)からほぼ垂直に第二開口部(12)へ摺動可能に突出した複数の摺動突出部(42)とを有するステム(40)と、からなる押圧スイッチであり、 摺動突出部(42)の第一開口部(11)側の突出部摺動面(44)と、突出部摺動面(44)に対向する第二開口部(12)の対向側面(16)の、どちらか一方は対向する面に対し凸状に湾曲しており、他方は平面状または対向する面に対し凸状に湾曲していることを特徴とする押圧スイッチ。
【請求項2】
前記スイッチ機構は、サイド電極(14)に載置される外環部(51)と外環部(51)から延出し中央電極(13)に離間して位置する舌片部(52)を有する導電性の薄板金属からなる接触子(50)と、外環部(51)に載置される底辺側基部(31)と、舌片部(52)に離間し且つ中央電極(13)に向けて突起部を有する頂上基部(32)とが傾斜部(33)によって連続した弾性体(30)と、からなる請求項1に記載の押圧スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108429(P2011−108429A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260555(P2009−260555)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】