説明

押圧式入力装置

【課題】 キーボード装置などに設けられた押圧式入力装置において、キートップである操作体を常に安定した姿勢で昇降させることができるようにする。
【解決手段】 基板2にスイッチ機構を有するメンブレンシート3が重ねられており、その上に案内部材5がY方向に移動自在に支持され、さらに操作体6が昇降自在に支持されている。操作体6に斜めに突出する複数の突部68が形成され、それぞれの突部68が案内部材5に形成された凹部58に挿入されている。偏った押圧力F1が作用すると、下降力(a)によって案内部材5にY2方向のスライド力(b)が作用し、Y2側に位置する突部68に下降案内力(c)が作用する。そのため、操作体6は水平姿勢で安定して下降できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置などの入力部に配置される押圧式入力装置に係り、特に、操作体の偏った位置に押圧力が作用しても、操作体を安定した姿勢で下降させることができる押圧式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1と特許文献2に、キーボード装置に使用される押圧式入力装置が開示されている。
【0003】
この押圧式入力装置は、基板の上にX状に組まれたリンク機構が設けられ、キートップが前記リンク機構に支持されて、基板の表面に接近する下降方向と基板の表面から離れる上昇方向へ動作できるようになっている。キートップは弾性体によって上昇方向へ付勢されている。基板の表面にスイッチ機構が設けられており、キートップが押されると、キートップが下降する力によってスイッチ機構が動作させられる。
【0004】
X状に組まれたリンク機構によって、キートップの背面が4箇所で支持されているため、キートップの表面の偏った位置に押圧力が作用しても、キートップが水平姿勢を保って下降しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−164066号公報
【特許文献2】特開2001−155580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2に記載されている押圧式入力装置は、基板とそれぞれのキートップとの間に、複数の部品を組み合わせたリンク機構を配置しているため、1つのキートップを組み付けるための部品点数が多くなる。また、リンク機構の4つの軸部を1つのキートップの背部に回動自在に組み付けることが必要であり、組み付け作業も煩雑である。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、少ない部品点数で構成できて、操作体を安定した姿勢で昇降させることができ、しかも組み立てが容易である押圧式入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板と、基板の面に向かう下降方向と前記面から離れる上昇方向へ移動自在な操作体と、前記基板の面と前記操作体との間に位置して前記面に沿って移動自在な案内部材と、前記操作体を上昇方向に付勢する付勢部材と、前記操作体によって動作させられる検知部とが設けられ、
前記操作体と前記案内部材は、前記面に沿う方向に離れて位置する複数の当接部で互いに当接しており、第1の当接部は、前記操作体の下降力を前記案内部材の移動力に変換する傾斜案内部を有し、第2の当接部は、前記案内部材の移動力を前記操作体の下降力に変換する傾斜案内部を有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の押圧式入力装置は、操作体が押されるとその下降力によって案内部材が水平に移動し、案内部材の移動力によって操作体が水平姿勢を保って下降できるようになる。よって、操作体に偏った押圧力が作用しても安定した姿勢で下降動作できるようになる。操作体と基板との間に案内部材を配置するだけであるため、部品点数が少なく、組み立てが容易である。また案内部材を薄くすることで、薄型化も実現しやすい。
【0010】
この場合に、前記第1の当接部と前記第2の当接部とが、前記操作体の中心を通過して前記面と並行に延びる中心線を挟む両側に位置していることが好ましい。
【0011】
本発明は、前記第1の当接部と前記面に沿う方向に離れて位置する第3の当接部と、前記第2の当接部と前記面に沿う方向に離れて位置する第4の当接部とが設けられ、前記第3の当接部は、前記操作体の下降力を前記案内部材の移動力に変換する傾斜案内部を有し、前記第4の当接部は、前記案内部材の移動力を前記操作体の下降力に変換する傾斜案内部を有しているものとして構成できる。
【0012】
上記構成では、操作体に対して複数箇所の偏った押圧力が作用しても、操作体を安定した姿勢で下降させることが可能になる。
【0013】
この場合も、前記第3の当接部と前記第4の当接部とが、前記操作体の中心を通過して前記面と並行に延びる中心線を挟む両側に位置していることが好ましい。
【0014】
本発明は、前記操作体と前記案内部材に、一方に形成された突部と他方に形成された凹部とが係合する係合部が、少なくとも2箇所に設けられており、一方の係合部に、前記第1の当接部と前記第4の当接部が設けられ、他方の係合部に、前記第2の当接部と前記第3の当接部が設けられているものとして構成できる。
【0015】
ただし、本発明は、第1の当接部と第2の当接部と第3の当接部および第4の当接部を、互いに異なる係合部に配置することも可能である。
【0016】
本発明は、前記案内部材は、前記面に沿って直線的に往復移動する。あるいは、前記案内部材は、前記面に沿って往復回動するものである。
【0017】
本発明は、前記付勢部材は、前記操作体の中央部を付勢できる位置に配置され、前記案内部材に、その内側に前記付勢部材を配置する逃げ穴が形成されているものが好ましい。
【0018】
付勢部材の付勢力が操作体の中央部に作用することで、操作体を安定した姿勢で昇降させることができるようになる。
【0019】
本発明は、前記付勢部材が弾性体で形成され、前記基板の上に前記検知部であるスイッチ機構が配置され、前記弾性体で前記スイッチ機構が押圧されるものである。
【0020】
あるいは、前記付勢部材が弾性体で形成され、前記基板の下に前記検知部であるスイッチ機構が配置され、前記弾性体が、前記基板に形成された開口部を経て前記スイッチ機構を押圧するものである。
【0021】
上記構成では、前記基板の下側に導光部材が配置され、導光部材で案内された光が前記開口部を通過して前記操作体に与えられるものとして構成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、基板と操作体との間に案内部材を配置するという簡単な構造で、操作体が水平姿勢を保って下降できるようになる。また組み立てが容易であり、案内部材を薄くすることで、薄型化も実現しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態の押圧式入力装置を示す分解斜視図、
【図2】組み立てられた状態の第1の実施の形態の押圧式入力装置を、図1のII−II線で切断した断面図、
【図3】組み立てられた状態の第1の実施の形態の押圧式入力装置を、図1のIII−III線で切断した断面図、
【図4】組み立てられた状態の第1の実施の形態の押圧式入力装置を、図1のIV−IV線で切断した断面図、
【図5】図4と同じ断面図において、操作体が押圧された動作状態を示す、
【図6】図2に示す弾性体と検知部(スイッチ機構)の構造を示す拡大断面図、
【図7】本発明の第2の実施の形態の押圧式入力装置の構造を示す図6と同じ拡大断面図、
【図8】本発明の第3の実施の形態の押圧式入力装置を示す分解斜視図、
【図9】組み立てられた状態の第3の実施の形態の押圧式入力装置を、図8のIX−IX線で切断した断面図、
【図10】組み立てられた状態の第3の実施の形態の押圧式入力装置を、図8のX−X線で切断した断面図、
【図11】本発明の第4の実施の形態の押圧式入力装置を示す分解斜視図、
【図12】(A)(B)は、第4の実施の形態の押圧式入力装置を動作別に示す平面図、
【図13】本発明の第5の実施の形態の押圧式入力装置を示す部分断面図、
【図14】本発明の第6の実施の形態の押圧式入力装置を示す部分断面図、
【図15】本発明の第7の実施の形態の押圧式入力装置を示す平面図、
【図16】(A)は、図15のA−A線で切断した断面図、(B)は図15のB−B線で切断した断面図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す第1の実施の形態の押圧式入力装置1は、基板2とその上に設置されたメンブレンシート3を有している。メンブレンシート3の上に付勢部材である弾性体4および案内部材5が設置され、その上にキートップである操作体6が配置されている。
【0025】
押圧式入力装置1は、パーソナルコンピュータなどに装備されるキーボード装置に搭載される。したがって、実際の基板2およびメンブレンシート3は図1に示すものよりも広い面積を有しており、弾性体4と案内部材5および操作体6が、基板2およびメンブレンシート3の上に複数組配列している。ただし、各図では、基板2とメンブレンシート3を、1つの押圧式入力装置1の単位を構成する大きさのものとして示している。
【0026】
図1に示す押圧式入力装置1は、基板2の表面2aに沿う方向がX方向とY方向である。Z1方向が表面2aから離れる上昇方向であり、Z2方向が表面2aに接近する下降方向である。
【0027】
図1に示す基板2は金属板で形成されており、X方向に対向する対を成す案内掛止部21,21がZ1方向に折り曲げられて形成されている。それぞれの案内掛止部21には、Y方向に延びる係止長穴21aが形成されている。それぞれの案内掛止部21のX方向に向く対向面が摺動案内面21bであり、Y方向に向く両端面は、Z方向に延びる昇降案内面21c,21cとなっている。
【0028】
基板2には、Z方向に貫通する複数の昇降案内穴22および複数の逃げ穴23が形成されている。昇降案内穴22は、案内掛止部21に形成された昇降案内面21cと連続する矩形穴である。逃げ穴23は、昇降案内穴22よりも押圧式入力装置1の中央側に位置する矩形穴である。
【0029】
メンブレンシート3は、X方向に間隔を空けた位置に、Y方向に延びる切り欠き部3a,3aを有している。メンブレンシート3は、基板2の表面2aに粘着剤を介して固定されている。このとき、基板1に形成された案内掛止部21は、切り欠き部3aを通過してZ1方向に延び出ており、基板2に形成された昇降案内穴22と逃げ穴23は、切り欠き部3aの内部に露出している。
【0030】
図6に、メンブレンシート3の断面構造が拡大されて示されている。
メンブレンシート3は、基部シート31と可撓性の上部シート32と、両シート31,32の間に位置するスペーサシート33とを有している。基部シート31と上部シート32およびスペーサシート33は、絶縁性の合成樹脂シートであり、互いに接着固定されている。
【0031】
メンブレンシート3に、検知部としてのスイッチ機構34が形成されている。スイッチ機構34は、押圧式入力装置1の中央部に位置している。スイッチ機構34では、スペーサシート33に穴が形成されて、基部シート31と上部シート32との間に空間部35が形成されている。空間部35の内部において、基部シート31の上面に対を成す固定接点36,36が形成され、上部シート32の下面に可動接点37が形成されている。固定接点36,36と可動接点37は、金や銀などの薄膜で形成されている。
【0032】
付勢部材である弾性体4は、合成ゴムなどで形成されている。図2と図6に示すように、弾性体4は、リング状の基部41の下面が、メンブレンシート3の表面3bに、粘着剤または接着剤を介して固定されている。弾性体4は、基部41の上部にテーパ形状の弾性変形部42を有している。基部41と弾性変形部42の内部は空洞部46であり、空洞部46の内部に、上部45からZ2方向に延びる押圧部44が一体に形成されている。
【0033】
弾性体4は、Z方向へ圧縮された状態で基板2と操作体6との間に配置されており、弾性体4の上部45によって、操作体6が常に上昇方向(Z1方向)へ付勢されている。弾性体4は操作体6の中央部に当接しており、操作体6はその中央部が上昇方向へ付勢されている。操作体6がZ2方向へ押されると、操作体6によって弾性体4が押し潰され、押圧部44によってスイッチ機構34が押される。この押圧力により、スイッチ機構34において、上部シート32が空間部35内に向けて撓み、可動接点37が固定接点36,36に接触してスイッチ機構34がOFFからONに切り換えられる。
【0034】
なお、スイッチ機構は図6に示す構造に限定されない。例えば、基部シート31の上面に高抵抗体の膜が形成され、上部シート32の下面に、前記高抵抗体よりも比抵抗の小さい低抵抗体の膜が形成され、高抵抗体の両端の抵抗値が電圧変化などで検知されるものであってもよい。このスイッチ機構では、上部シート32が撓んで低抵抗体が高抵抗体に接触したときに、検知出力を得ることができるとともに、低抵抗体と高抵抗体との接触面積の変化も検知することができる。よって、操作体6の押圧力の変化を検知することが可能になる。
【0035】
また、メンブレンシート3の上部シート32とスペーサシート33を無くし、固定接点36,36を有する基部シート31だけを使用し、可動接点を弾性体4の押圧部44の下端に設けて、弾性体4に設けられた可動接点を固定接点36,36に接触させる構造であってもよい。さらに、スイッチ機構が他の構造のものであってもよい。
【0036】
案内部材5は合成樹脂材料で形成されている。図1に示すように、案内部材5はZ方向の板厚寸法が、X方向とY方向の幅寸法よりも十分に薄い板形状である。案内部材5のX1方向およびX2方向に向くそれぞれの側面に、摺動面51a,51aが形成されている。摺動面51aと摺動面51aの間に、摺動面51bが形成されている。摺動面51a,51aと摺動面51bは、切り欠き部53によって分離されて、互いに同一面上に位置している。案内部材5には、摺動面51bからZ2側に延びる弾性片52が一体に形成されており、弾性片52の下部に、摺動面51bから離れる方向に延びる係止突部52aが形成されている。また、案内部材5には、下面5aからZ2方向へ突出する摺動突部54が複数箇所に設けられている。図4に示すように、摺動突部54は、メンブレンシート3の切り欠き部3aの内部に位置し、基板2の表面2aに当接する。
【0037】
図2に示すように、案内部材5は、基板2のX1側に形成された案内掛止部21とX2側に形成された案内掛止部21との間に配置される。図4に示すように、案内部材5の下面5aに形成された摺動突部54が、基板2の表面2a当接し、図2に示すように、案内部材5に設けられた係止突部52aが案内掛止部21に形成された係止長穴21aに掛止されることで、案内部材5が、Z1−Z2方向へ大きくがたつくことなく設置される。また、案内部材5のX1側とX2側に形成された摺動面51a,51bが、それぞれの案内掛止部21の対向面である摺動案内面21bに当接することで、案内部材5がX1−X2方向へ大きくがたつくのが規制される。そして、図3に示すように、係止突部52aが係止長穴21a内で移動できる範囲内において、案内部材5は、基板2およびメンブレンシート3の上でY1−Y2方向へスライド移動可能である。
【0038】
図1に示すように、案内部材5の中央部に、Z1−Z2方向に貫通する穴55が形成されている。案内部材5が、基板2とメンブレンシート3の上に設置されると、前記弾性体4が前記穴55の内部に位置する。弾性体4はメンブレンシート3の上面に固定され、案内部材5がY1−Y2方向へ移動自在であるため、穴55はX方向の内径寸法よりもY方向の内径寸法が大きい長穴である。
【0039】
キートップである操作体6は合成樹脂材料で形成されている。図1ないし図5に示すように、操作体6は、押圧部61と、その周囲からZ2方向へ延びる周壁部62を有している。操作体6は、押圧部61の下面61aと周壁部62の内面62aとで囲まれた空間部63を有している。前記弾性体4の上部45は、空間部63の内部に位置し、弾性体4の上面が押圧部61の下面61aに当接している。
【0040】
図3に示すように、X2側の周壁部62のすぐ内側にY方向に間隔を空けて一対の摺動突部64,64が一体に形成されている。それぞれの摺動突部64,64は、基板2に形成された案内掛止部21のY方向の両側部の昇降案内面21c,21cを摺動し、さらに昇降案内穴22に案内される。摺動突部64,64が案内掛止部21をY方向の両側部から挟む位置にあるため、操作体6が、Y1−Y2方向へがたつくことなく、昇降方向(Z1−Z2方向)へのみ移動可能となっている。
【0041】
図1と図4および図5に示すように、案内部材5には4箇所に凹部58が形成されている。それぞれの凹部58は、案内部材5をZ1−Z2方向に貫通し且つZ1−Z2方向に対して斜めに形成されている。図4と図5に示すように、操作体6には、押圧部61の下面61aから下降方向(Z2方向)に延びる4つの突部68が一体に形成されている。それぞれの突部68はZ2方向に対して斜めに延びている。それぞれの凹部58と突部68とで4箇所の係合部70が形成されている。
【0042】
図1に示すように、4箇所の係合部70は、操作体6の中心を通って基板2の表面2aと平行に延びる中心線Oxを挟んで両側に2箇所ずつ配置され、同じく中心線Oyを挟んで両側に2箇所ずつ配置されている。
【0043】
図4と図5に示すように、係合部70を構成する凹部58と突部68は、Z2方向に下降するにしたがってY1方向へ向けられるように傾斜して形成されており、それぞれの突部68が凹部58内に最小の隙間を介して摺動自在に挿入されている。
【0044】
図4に示すように、Y1側に位置する2箇所の係合部70は、Y2側に第1の当接部71が形成され、Y1側に第4の当接部74が形成されている。第1の当接部71は、凹部58のY2側に形成された傾斜案内部71aと、突部68のY2側に形成された傾斜案内部71bとで形成されている。第4の当接部74は、凹部58のY1側に形成された傾斜案内部74aと、突部68のY1側に形成された傾斜案内部71bとで形成されている。
【0045】
Y2側に位置する2箇所の係合部70は、Y1側に第2の当接部72が形成され、Y2側に第3の当接部73が形成されている。第2の当接部72は、凹部58のY1側に形成された傾斜案内部72aと、突部68のY1側に形成された傾斜案内部72bとで形成されている。第3の当接部73は、凹部58のY2側に形成された傾斜案内部73aと、突部68のY2側に形成された傾斜案内部73bとで形成されている。
【0046】
次に、前記押圧式入力装置1の動作を説明する。
図2と図3および図4に示すように、操作体6にZ2方向の押圧力が作用していないときは、弾性体4のZ1方向への付勢力によって、操作体6が基板1から離れて上昇している。操作体6の突部68が上昇していると、操作体6に形成された傾斜案内部71a,72a,73a,74aと、案内部材5に形成された傾斜案内部71b,72b,73b,74bとの摺動動作により、案内部材5がY1方向へ移動させられている。
【0047】
図3に示すように、操作体6が上昇しているときは、案内部材5に設けられた係止突部52aが、基板2に形成された係止長穴21aのY1側の内縁部に当たっており、案内部材5はそれ以上Y1方向へ移動できない。また、操作体6に設けられた摺動突部64,64が、案内掛止部21をY方向の両側から挟む位置に設けられており、操作体6はY1−Y2方向への移動が拘束されている。そして、操作体6が上昇しているときに、操作体6に形成された4箇所の突部68が、案内部材5に形成された凹部58から抜け出ることがない。以上から、操作されていない状態の操作体6は、Z1方向へ外れることがない。
【0048】
上記のように、基板2に設けられた一対の案内掛止部21によって、案内部材5のY1−Y2方向への移動範囲が決められ、さらに同じ案内掛止部21によって操作体6が昇降方向に案内されている。よって、基板2に一対の案内掛止部21を折り曲げるだけで、案内部材5と操作体6とを支持することができ、基板2の構造を簡略化できる。
【0049】
操作体6の押圧部61がZ2方向へ押し下げられると、4箇所の係合部70において、下向きに斜めに延びる突部68と凹部58とが摺動し、案内部材5がY2方向へスライド移動することで、操作体6が水平姿勢を維持したまま下降できるようになる。
【0050】
例えば、図4に示すように、操作体6に対してY1側に偏った位置に押圧力F1が与えられると、Y1側に位置する第1の当接部71において、突部68の傾斜案内部71bから凹部58の傾斜案内部71aに下降力(a)が与えられ、その分力により、案内部材5に対してY2方向へのスライド力(b)が作用し、案内部材5がY2方向へ移動させられる。このときY2側では、第2の当接部72において、凹部58の傾斜案内部72aから突部68の傾斜案内部72bに対して、Z2方向への下降案内力(c)が与えられる。そのため、押圧力F1がY1側に偏って与えられても、操作体6に対してY1側とY2側の双方で下降力を与えることができる。
【0051】
逆に、図4に示すように、操作体6に対してY2側に偏る押圧力F2が与えられると、Y2側に位置する第3の当接部73において、突部68の傾斜案内部73bから凹部58の傾斜案内部73aに下降力(d)が作用し、その分力によって、案内部材5に対してY2方向へのスライド力(e)が作用し、案内部材5がY2方向へ移動する。このときY1側では、第4の当接部74において、凹部58の傾斜案内部74aから突部68の傾斜案内部74bに対して、Z2方向への下降案内力(f)が与えられる。そのため、偏った位置に押圧力F2が与えられても、操作体6に対してY1側とY2側の双方で下降力を与えることができる。
【0052】
したがって、操作体6は水平な姿勢を支持したままZ1方向へ下降することができる。操作体6が下降すると、図6に示す弾性体4の押圧部44によって、スイッチ機構43の上部シート32が押され、可動接点37が固定接点36,36に接触して、スイッチ機構43がONに切り換えられる。
【0053】
スイッチ機構43がONに切り換えられた後に、操作体6に与えられるZ2方向への押圧力が解除されると、弾性体4の復元力が、操作体6の中央部に対してZ1方向へ作用する。操作体6は中央部が押されて安定した姿勢でZ1方向へ移動する。このとき、Y1側とY2側のそれぞれの係合部70において、突部68の傾斜案内部72b,74bから凹部58の傾斜案内部72a,74aに均等な力が与えられ、案内部材5がY1方向へ移動して復帰する。
【0054】
図5に示すように、操作体6が下降すると、Y2方向へスライドした案内部材5が操作体6の空間部63の内部に入り込む。さらに、操作体6に設けられた突部68の下端部が、メンブレンシート3の切り欠き部3aおよび基板2の逃げ穴23の内部に入り込む。したがって、操作体6をメンブレンシート3の表面2aにほぼ当接する位置まで下降させることができる。そのため、押圧式入力装置1の基板2の表面2aからの高さ寸法を、操作体6の厚さ寸法と、操作体6の下降ストローク量とを加算した寸法にほぼ一致させることができ、薄型に構成できる。
【0055】
さらに、案内部材5の厚みを調整することで、操作体6の押圧時のストロークを変化させることができる。例えば、図5において案内部材5を薄くすれば、操作体6の押圧時のストロークをさらに大きくできる。
【0056】
図7に示す第2の実施の形態の押圧式入力装置101は、基本的な構造が図1ないし図6に示した第1の実施の形態の押圧式入力装置1と同じである。
【0057】
図7に示す押圧式入力装置101は、金属製の基板102の下にメンブレンシート3が粘着剤などを介して固定されており、メンブレンシート3の下側に透光性の合成樹脂材料で形成された導光部材103が設置されている。また、導光部材103の端部などに対向して導光部材103の内部に光を与えるLEDなどの光源が設けられている。基板102には、メンブレンシート3に形成されたスイッチ機構34の上方に開口部102aが形成されている。
【0058】
操作体6がZ2方向へ押圧されて弾性体4が圧縮されると、弾性体4に設けられた押圧部44が、開口部102aの内部を通過してスイッチ機構34を押圧する。
【0059】
メンブレンシート3の基部シート31と上部シート32を透光性シートで形成し、弾性体4を透光性の合成ゴムなどで形成することで、導光部材103の内部を通過した光が、メンブレンシート3および開口部102aを通過し、弾性体4を透過して操作体6に与えられる。操作体6の一部に光を透過する照光表示部を設けておけば、この照光表示部を照らすことが可能になる。
【0060】
図8ないし図10に示す第3の実施の形態の押圧式入力装置201は、図1以下で説明した第1の実施の形態の押圧式入力装置1に比べて、X1−X2方向の寸法が長くなっている。キーボード装置に装備される場合に、第1の実施の形態の押圧式入力装置1が、アルファベット入力キーや数字入力キーなどとして使用され、第3の実施の形態の押圧式入力装置201が、スペース入力キーなどとして使用される。
【0061】
図8ないし図10に示す押圧式入力装置201の説明では、第1の実施の形態の押圧式入力装置1と同じ機能を発揮する部材を、X方向とY方向の寸法の違いに拘わらず、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0062】
基板202に形成されている案内掛止部21,21のX方向の間隔は、基板202のX方向の全長寸法よりも短くなっており、X1側の案内掛止部21とX2側の21の間に、案内部材5が、Y1−Y2方向へスライド移動自在に支持されている。
【0063】
図9に示すように、案内部材5と操作体206との間に、図4と図5に示したのと同じ構造の4箇所の係合部70が設けられ、第1の当接部71、第2の当接部72、第3の当接部73および第4の当接部74が設けられている。
【0064】
基板202には、案内掛止部21よりもX1方向の外側に軸支持部202aと202bが形成され、X2方向の外側にも軸支持部202aと202bが形成されている。
【0065】
基板202およびメンブレンシート3の上には、X方向に延びる一対のリンク203,204が設けられている。一方のリンク203の両端部が軸支持部202a,202aに回動自在に支持されており、図9と図10に示すように、リンク203の中間部が操作体206の下面のY1側に形成された軸支持部206aに回動自在に支持されている。他方のリンク204の両端部は軸支持部202b,202bに回動自在に支持されており、リンク204の中間部が操作体206の下面のY2側に形成された軸支持部206bに回動自在に支持されている。
【0066】
この押圧式入力装置201は、図4と図5に示した押圧式入力装置1と同様に、第1の当接部71と第2の当接部72と第3の当接部73および第4の当接部74の傾斜案内部の働きで、操作体206が水平姿勢を保った状態で昇降動作できる。さらに、操作体206がX方向の全長においてリンク203とリンク204で支えられるために、X方向に長い寸法の操作体206がさらに安定した姿勢で昇降できるようになる。
【0067】
図11と図12に示す第4の実施の形態の押圧式入力装置301は、操作体306が昇降する際に、案内部材305が回動動作する。なお、図11では、弾性体4の図示を省略している。
【0068】
基板302には、掛止部321,321が形成され、それぞれの掛止部321に係止長穴321aが形成されている。基板302の中央部には、円形に形成された回動案内部323が形成されている。案内部材305には、その外周面からX1方向とX2方向へ突出する係止突部352が一体に形成され、中央の穴355の周囲の下面には、複数の回動摺動部354が一体に突出形成されている。
【0069】
案内部材305の係止突部352が係止長穴321aに嵌合し、回動摺動部354が回動案内部323の外周を摺動することで、案内部材305は、基板302およびメンブレンシート3の表面から離れることなく、基板302の中心部から垂直に延びる回動中心線Ovを中心として回動自在である。また、その回動範囲は、回動案内部323の円周方向の長さで制限されている。
【0070】
操作体306には、X1側とX2側に、それぞれ一対の摺動突部364,364が下向きに形成されている。基板302のX1側とX2側とに設けられた掛止部321のそれぞれには、Y1側とY2側の両側部に昇降案内面321c,321cが形成され、さらに基板302に、昇降案内穴322,322が形成されている。摺動突部364,364が、昇降案内面321c,321cおよび昇降案内穴322,322に案内されて、操作体306は、基板302上において回動が規制されてZ1−Z2方向へ昇降自在である。
【0071】
案内部材305には2箇所に凹部358が形成され、操作体306にも2箇所に突部368が形成されている。それぞれの突部368が、凹部358に個別に摺動自在に挿入されて、2箇所の係合部370が形成されている。2箇所の係合部370では、凹部358に、Z2方向に向かうにしたがって円周方向(β方向)に向けられる傾斜案内部371a,372a,373a,374aが形成されており、突部368にも同様に、Z2方向に向かうにしたがって円周方向(β方向)に向けられる傾斜案内部371b,372b,373b,374bが形成されている。
【0072】
図11と図12に示すように、傾斜案内部371aと371bとで第1の当接部371が形成され、傾斜案内部372aと372bとで第2の当接部372が形成され、傾斜案内部373aと373bとで第3の当接部373が形成され、傾斜案内部374aと374bとで第4の当接部374が形成されている。
【0073】
図12に示すように、操作体306に押圧力が作用していないときは、弾性体4によって操作体306がZ1方向に向けて押し上げられ、2箇所の凹部358と突部368の傾斜案内部の働きで、案内部材305がβ方向へ回動している。
【0074】
例えば、図11に示すように、X1側に偏った押圧力F1によって操作体306が押し下げられると、X1側の突部368の傾斜案内部371bで凹部358の傾斜案内部371aが押されて、案内部材305にα方向への回動力が与えられる。この回動力が、X2側の凹部358の傾斜案内部372aから突部368の傾斜案内部372bに与えられ、傾斜案内部372bにZ2方向への下降力が与えられる。
【0075】
逆に、X2側に偏った押圧力F2によって、操作体306が押し下げられると、X2側の突部368の傾斜案内部373bで凹部358の傾斜案内部373aが押されて、案内部材305にα方向への回動力が与えられる。この回動力が、X1側の凹部358の傾斜案内部374aから突部368の傾斜案内部374bに与えられ、傾斜案内部374bにZ2方向への下降力が与えられる。そのため、操作体306は常に安定した水平姿勢で下降する。
【0076】
図13に示す第5の実施の形態の押圧式入力装置401は、操作体406に凹部468が形成され、案内部材405に突部458が形成されている。それぞれの突部458が凹部468に嵌合して、複数の当接部470が形成されている。
【0077】
Y1側の突部458と凹部468に、第1の当接部471と第4の当接部474を構成する傾斜案内部が形成され、Y2側の突部458と凹部468に、第2の当接部472と第3の当接部473を構成する傾斜案内部が形成されている。
【0078】
図13に示す押圧式入力装置401は、偏った位置で操作体406が押されても、案内部材405が矢印方向へ移動することで、操作体406が水平姿勢で安定して下降動作できるようになる。
【0079】
図14に示す第6の実施の形態の押圧式入力装置501は、操作体506に、下向きに斜めに延びる突部568が形成されている。基板と操作体506の間には複数の案内部材505a,505bが形成されており、それぞれが独立してY2方向へ移動する。なお、下側の案内部材505bはばねの力でY1方向へ付勢されている。案内部材505aに凹部558a,558aが形成され、案内部材505bに凹部558b,558bが形成されている。前記突部568,568と、凹部558a,558aならびに凹部558b,558bとによって、係合部570が形成されている。
【0080】
前記押圧式入力装置501は、操作体506が下降すると、突部568が上側の案内部材505aの凹部558aと、下側の案内部材505bの凹部558bに順番に嵌合し、案内部材505aと案内部材505bが異なったタイミングでY2方向へ移動させられる。複数の案内部材505a,505bの案内動作により、操作体506が水平の安定した姿勢で下降できるようになる。
【0081】
図15と図16に示す第7の実施の形態の押圧式入力装置601は、操作体606の4箇所に突部664が形成されている。基板と操作体606との間に案内部材605が設けられている。
【0082】
この実施の形態では、A−A断面で示しているX1側の2つの突部664と案内部材605との間に、第1の当接部671と第2の当接部672が形成され、B−B断面で示しているX2側の2つの突部664と案内部材605との間に、第3の当接部673と第4の当接部674が形成されている。
【0083】
図16(A)に示すように、Y1側に偏った力F1で操作体606が押されると、A−A断面に現れている第1の当接部671の傾斜案内部671a,671bの摺動により、案内部材605にY2方向への移動力が与えられる。このとき、第2の当接部672では、傾斜案内部672a,672bの摺動により、Y2側の突部664がZ2方向へ押し下げられる。
【0084】
図16(B)に示すように、Y2側に偏った力F2で操作体606が押されると、B−B断面に現れている第3の当接部673の傾斜案内部673a,673bの摺動により、案内部材605にY2方向への移動力が与えられる。このとき第4の当接部674では、傾斜案内部674a,674bの摺動により、Y1側の突部664がZ2方向へ押し下げられる。これにより、操作体606が安定した水平姿勢で下降することができる。
【0085】
図15と図16に示すように、第1の当接部671と第2の当接部672と第3の当接部673および第4の当接部674を、それぞれ異なる突部664に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 押圧式入力装置
2 基板
3 メンブレンシート
4 弾性体
5 案内部材
6 操作体
21 案内掛止部
21a 係止長穴
21b 摺動案内面
21c 昇降案内面
22 昇降案内穴
23 逃げ穴
31 基部シート
32 上部シート
33 スペーサシート
34 スイッチ機構
36 固定接点
37 可動接点
44 押圧部
52a 係止突部
55 穴
58 凹部
61 押圧部
63 空間部
68 突部
70 係合部
71 第1の当接部
71a,71b 傾斜案内部
72 第2の当接部
72a,72b 傾斜案内部
73 第3の当接部
73a,73b 傾斜案内部
74 第4の当接部
74a,74b 傾斜案内部
102 基板
102a 開口部
103 導光部材
302 基板
305 案内部材
306 操作体
370 係合部
371 第1の当接部
371a,371b 傾斜案内部
372 第2の当接部
372a,372b 傾斜案内部
373 第3の当接部
373a,373b 傾斜案内部
374 第4の当接部
374a,374b 傾斜案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板の面に向かう下降方向と前記面から離れる上昇方向へ移動自在な操作体と、前記基板の面と前記操作体との間に位置して前記面に沿って移動自在な案内部材と、前記操作体を上昇方向に付勢する付勢部材と、前記操作体によって動作させられる検知部とが設けられ、
前記操作体と前記案内部材は、前記面に沿う方向に離れて位置する複数の当接部で互いに当接しており、第1の当接部は、前記操作体の下降力を前記案内部材の移動力に変換する傾斜案内部を有し、第2の当接部は、前記案内部材の移動力を前記操作体の下降力に変換する傾斜案内部を有していることを特徴とする押圧式入力装置。
【請求項2】
前記第1の当接部と前記第2の当接部とが、前記操作体の中心を通過して前記面と並行に延びる中心線を挟む両側に位置している請求項1記載の押圧式入力装置。
【請求項3】
前記第1の当接部と前記面に沿う方向に離れて位置する第3の当接部と、前記第2の当接部と前記面に沿う方向に離れて位置する第4の当接部とが設けられ、
前記第3の当接部は、前記操作体の下降力を前記案内部材の移動力に変換する傾斜案内部を有し、前記第4の当接部は、前記案内部材の移動力を前記操作体の下降力に変換する傾斜案内部を有している請求項1または2記載の押圧式入力装置。
【請求項4】
前記第3の当接部と前記第4の当接部とが、前記操作体の中心を通過して前記面と並行に延びる中心線を挟む両側に位置している請求項3記載の押圧式入力装置。
【請求項5】
前記操作体と前記案内部材に、一方に形成された突部と他方に形成された凹部とが係合する係合部が、少なくとも2箇所に設けられており、一方の係合部に、前記第1の当接部と前記第4の当接部が設けられ、他方の係合部に、前記第2の当接部と前記第3の当接部が設けられている請求項3または4記載の押圧式入力装置。
【請求項6】
前記案内部材は、前記面に沿って直線的に往復移動する請求項1ないし5のいずれかに記載の押圧式入力装置。
【請求項7】
前記案内部材は、前記面に沿って往復回動する請求項1ないし5のいずれかに記載の押圧式入力装置。
【請求項8】
前記付勢部材は、前記操作体の中央部を付勢できる位置に配置され、前記案内部材に、その内側に前記付勢部材を配置する逃げ穴が形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の押圧式入力装置。
【請求項9】
前記付勢部材が弾性体で形成され、前記基板の上に前記検知部であるスイッチ機構が配置され、前記弾性体で前記スイッチ機構が押圧される請求項1ないし8のいずれかに記載の押圧式入力装置。
【請求項10】
前記付勢部材が弾性体で形成され、前記基板の下に前記検知部であるスイッチ機構が配置され、前記弾性体が、前記基板に形成された開口部を経て前記スイッチ機構を押圧する請求項1ないし8のいずれかに記載の押圧式入力装置。
【請求項11】
前記基板の下側に導光部材が配置され、前記導光部材で案内された光が前記開口部を通過して前記操作体に与えられる請求項10記載の押圧式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−233406(P2011−233406A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103690(P2010−103690)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】