説明

押釦スイッチ用カバー部材

【課題】 電気的なノイズを簡易に除去する。
【解決手段】 透明電極32、発光層33、誘電体層34および対向電極35が積層してなるELシート30と、このELシート30の透明電極32側に形成され、複数のキートップ11aを有するキーパッド10と、このキーパッド10のELシート30側に形成され、導電性を有する導電層20とを備えるとともに、この導電層20の一端をELシート30の下方に設けられる回路基板50に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光機能を有する電子機器に用いる押釦スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機等の入力部に用いられる押釦スイッチ用カバー部材には、暗所でのキーの視認性を確保するためにキートップを下方から照光するELシートが用いられている。これにより、ユーザが暗所で携帯電話機を使用する場合であっても、各キーの機能を容易に認識することができる。
【0003】
ここで、ELシートを形成する透明電極と対向電極には交流電流が入力され、これにより各電極は正極と負極が交互に入れ替わる。透明電極と対向電極に交流電流が入力されると各電極は帯電し、各電極の外側にあるELシートの表面には、静電誘導により、透明電極や対向電極とは異なる電荷が現れる。そして、このELシートの表面に現れた電荷が放電されることで電気的なノイズが発生する。
【0004】
下記特許文献1には、上述した電気的なノイズを減少させるために、ELシートの透明電極側にノイズ減少用の電極をさらに形成し、このノイズ減少用の電極と透明電極とを連結して接地させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−158451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ELシートにノイズ減少用の電極を形成して接地用のアース端子を設けると、ELシートの製造工程が煩雑になり、製造効率が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、電気的なノイズを簡易に除去することができる押釦スイッチ用カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極が積層してなるELシートと、ELシートの透明電極側に形成され、複数のキートップを有するキーパッドと、キーパッドのELシート側に形成され、導電性を有する導電層とを備え、この導電層が導電性部材に接続可能に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、キーパッドのELシート側に形成された導電層を導電性部材に接続するだけで、静電誘導によってELシートの表面に現れた電荷を、導電層と導電性部材を通じて外部に放出させることができる。したがって、ELシートに生じる電気的なノイズを簡易に除去することができる。
【0009】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、ELシートの発光領域に対応する部分に形成される導電層を、透光性を有する材料により形成するか、ELシートの発光領域に対応する部分には導電層を形成しないことが好ましい。このようにすれば、ELシートから発せられる光を有効に外部に放出させることができる。
【0010】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、導電性部材は、ELシートの下方に設けられる回路基板であることが好ましい。これにより、簡易にアース機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材によれば、電気的なノイズを簡易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材について説明する。図1は、携帯電話機の押釦スイッチ部分の要部を拡大した断面図である。図1に示すように、押釦スイッチ用カバー部材は、キーパッド10と、導電層20と、ELシート30とを備える。この押釦スイッチ用カバー部材は、回路基板50上に取り付けられた後に携帯電話機の本体ケース70に収容される。回路基板50と本体ケース70は、金属等の導電性部材により製造されている。
【0014】
なお、本体ケース70は、必ずしも金属製の導電性部材により製造されていることを要しない。例えば、本体ケース70が、合成樹脂を主成分とする材料に導電性物質を被覆または添加することにより製造されていてもよい。また、合成樹脂製のケースに、例えば、イオンプレーティング、蒸着または塗装により導電層を形成して本体ケース70を製造してもよい。
【0015】
キーパッド10は、キーシート11とプッシャーシート12とが積層して形成される。キーシート11の上面には、複数の樹脂製キートップ11aが形成される。プッシャーシート12の下面には、複数の樹脂製プッシャー12aが形成されている。このプッシャー12aは、キートップ11aに対応する位置に形成されており、キートップ11aが押下されると、回路基板50上に設けられた金属製皿バネ部材61を押し下げて、金属製皿バネ部材61と固定接点62とを接触させる。金属製皿バネ部材61と固定接点62とが接触することにより、押釦スイッチが導通状態となる。
【0016】
キーシート11は、透光性を有する樹脂フィルムにより形成される。この樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミドからなるフィルムにより形成される。また、これらのアロイ、共重合体等の変性物からなるフィルムにより形成されてもよいし、これらのフィルム数種をラミネーションした複層品により形成されてもよい。
【0017】
プッシャーシート12は、透光性を有する樹脂フィルムにより形成される。樹脂フィルムの具体例は、上述したキーシート11と同様である。プッシャー12aは、光硬化性の樹脂により形成される。なお、プッシャーシート12は、シリコーンゴムによって形成されてもよい。
【0018】
導電層20は、プッシャーシート12の下面に、導電性を有するインク(材料)を印刷することにより形成される。導電性を有するインクとしては、例えば、導電性ポリマー、ITOインク等の透光性の高いインクや、銀、カーボン等の透光性の低いインクを用いることができる。ただし、透光性の高いインクは、プッシャーシート12の下面のうち、ELシートの発光領域に対応する部分に印刷し、透光性の低いインクは、プッシャーシート12の下面のうち、ELシートの発光領域以外に対応する部分に印刷する。これにより、ELシートから発せられる光を有効に外部に放出させることができる。
【0019】
ここで、本実施形態において、透光性が高いとは、電子機器の照光機能を発揮し得る程度の光を透過させるレベルをいい、透光性が低いとは、電子機器の照光機能を発揮し得ない程度の光を透過させるレベルおよび光を全く透過させないレベルをいうこととする。なお、ELシートの発光領域は、透明電極32と発光層33と対向電極35とが積層する部分の上方に形成される。また、インクの印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷やパッド印刷等の湿式印刷を用いることができる。
【0020】
なお、導電層20を形成する方法は、印刷には限定されない。例えば、導電性を有するインクを塗装することにより導電層20を形成してもよい。この場合には、例えば、導電層以外の部分にマスキングテープを貼るか、マスキング用の治具で導電層以外の部分を被覆した後に、スプレー等により塗装すればよい。
【0021】
導電層20の一端は回路基板50上のGNDに接続される。つまり、導電層20と回路基板50とで、アース機構を構成する。このようなアース機構を設けることで、ELシート30の表面が帯電した場合には、導電層20と回路基板50を通じて放電することができる。本実施形態におけるアース機構は、導電層20の一端を回路基板50上のGNDに接続するだけで実現できるためとても簡易である。
【0022】
導電層20の一端を回路基板50上のGNDに接続する方法としては、例えば、本体ケース70でキーパッド10および導電層20を加圧することで接続してもよいし、導電層20を固定基板50にネジ止めすることで接続してもよい。また、導電性を有する感圧接着剤(PSA)や、異方性導電接着剤(ACA)を用いて接続してもよい。さらに、プッシャーシート12がシリコーンゴムによって形成されており、かつプッシャーシート12の外周に固定基板50と接するリブが設けられている場合には、導電層20をリブの下面にまで引き延ばして形成し、このリブの下面に形成された導電層20を回路基板50上のGNDに接続させてもよい。
【0023】
なお、導電層20の一端は、必ずしも回路基板50上のGNDに接続することを要しない。例えば、本体ケース70や、本体ケースの内部に実装されるシールドケースカバー(不図示)等に、GNDに接続され、かつ導電性を有するシールド塗装部分を形成し、このシールド塗装部分に導電層20の一端を接続してもよい。GNDに接続されたシールド塗装部分は、以下のように形成することができる。例えば、銀、銅、ニッケル等の水性塗料または溶剤塗料を塗装することや、例えば、銅、ニッケル、金等の導電性金属によるめっき処理を施すことでGNDに接続されたシールド塗装部分を形成する。また、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の導電性の金属箔を貼り付けることでGNDに接続されたシールド塗装部分を形成する。
【0024】
ELシート30は、樹脂フィルム31と透明電極32と発光層33と誘電体層34と対向電極35と絶縁層36とを有する。これらELシート30を形成する各層のうち、透明電極32と発光層33と誘電体層34と対向電極35とでEL素子が形成される。
【0025】
樹脂フィルム31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリアミドからなるフィルムにより形成される。また、これらのアロイ、共重合体等の変性物からなるフィルムにより形成されてもよいし、これらのフィルム数種をラミネーションした複層品により形成されてもよい。
【0026】
透明電極32は、導電性ポリマーにより形成されるが、より好ましくは、透明性を有し、かつ導電性が高いポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンの誘導体により形成するのがよい。
【0027】
発光層33は、例えば、防湿被膜をコーティングした硫化亜鉛等の無機蛍光体粉を、バインダーに分散することにより形成される。バインダーとしては、例えば、フッ素系、ポリエステル系、アクリル系およびエポキシ系の樹脂やゴム、またはこれらの共重合物が該当する。ここで、誘導率の高いバインダーを選択することによって、発光層33をより高輝度に発光させることが可能となる。
【0028】
誘電体層34は、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体粉を、バインダーに分散することにより形成される。なお、バインダーに関しては、発光層33に用いられるバインダーと同様であるため説明を省略する。
【0029】
対向電極35は、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金、またはカーボンブラック、グラファイト等の導電性フィラーを、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系の樹脂もしくはゴム、またはこれらの共重合物に分散したものからなる導電膜により形成される。また、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金からなる金属膜、またはこれらの複合膜により形成してもよい。なお、複合膜は、例えば、電着、転写、化学メッキ、蒸着により形成される。
【0030】
絶縁層36は、絶縁性および防湿性を有する材料により形成することが望ましい。このような材料としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリカーボネート系、シリコーン系およびフッ素系の樹脂やゴム、またはこれらの複合物が該当する。また、絶縁層36を絶縁フィルムにより形成してもよい。
【0031】
以上のように、キーパッド10の下面に導電層20を形成して、この導電層20の一端を回路基板50に接続することで、静電誘導によってELシートの表面が帯電した場合であっても、ELシートの表面に現れた電荷を、導電層と導電性部材を通じて外部に放電させることができる。すなわち、ELシートに生じる電気的なノイズを簡易に除去することができる。
【0032】
なお、上述した実施形態においては、導電層20がプッシャーシート12の下面に形成されているが、導電層20を形成する場所はこれに限定されない。例えば、図2に示す押釦スイッチ用カバー部材のように、キーパッド10が、キーシート11のみにより形成されている場合には、このキーシート11の下面に導電層20を形成すればよい。すなわち、ELシート30に接するキーパッド10の下面に導電層20を形成することとすればよい。なお、図2に示す押釦スイッチ用カバー部材が、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材とことなる点は、プッシャーシート12の形成場所が異なる点である。具体的に説明すると、図1に示す押釦スイッチ用カバー部材では、プッシャーシート12が、キーシート11と導電層20との間に形成されているのに対し、図2に示す押釦スイッチ用カバー部材では、プッシャーシート12が、ELシート30の下面に形成されている点で異なる。
【0033】
また、上述した実施形態においては、プッシャーシート12の下面のうち、ELシートの発光領域に対応する部分には、透光性の高いインクを印刷して導電層20を形成しているが、導電層20を形成する方法は、これに限定されない。例えば、プッシャーシート12の下面のうち、ELシートの発光領域に対応する部分には、導電層20を形成しなくてもよい。この場合には、ELシートの発光領域以外に対応する部分に形成された導電層20が互いに連結され、かつ、この導電層20の一部が回路基板50に接続されていればよい。
【0034】
また、導電層20を形成する他の方法として、例えば、プッシャーシート12の下面のうち、ELシートの発光領域に対応する部分に、透光性の低いインクをメッシュ状に印刷して導電層20を形成してもよい。
【0035】
さらに、導電層20を形成する他の方法として、例えば、プッシャーシート12の下面のうち、ELシート30と当接する面にのみ導電層20を形成し、形成した導電層20が分離している場合には、分離した各導電層20を、導電性を有するインクで連結してもよい。具体的に説明すると、例えば、プッシャー12aやリブ(不図示)等の突起部分にのみ導電層20を形成し、これらを相互に連結させることとしてもよい。ただし、ELシートの発光領域にあるプッシャー12aに導電層20を形成する場合には、透光性の高いインクを用いることが好ましい。
【0036】
また、上述した実施形態においては、導電層20と回路基板50とで、アース機構を構成しているが、アース機構の構成は、これに限定されない。例えば、導電層20と本体ケース70とでアース機構を構成してもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、押釦スイッチ用カバー部材が携帯電話機に取り付けられた場合について説明しているが、本願発明に係る押釦スイッチ用カバー部材が取り付けられる電子機器は、携帯電話機には限定されず、照光機能を有する電子機器であればいずれの電子機器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態における押釦スイッチ用カバー部材を含む携帯電話機の要部断面図である。
【図2】変形例における押釦スイッチ用カバー部材を含む携帯電話機の要部断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10・・・キーパッド、11・・・キーシート、11a・・・キートップ、12・・・プッシャーシート、12a・・・プッシャー、20・・・導電層、30・・・ELシート、31・・・樹脂フィルム、32・・・透明電極、33・・・発光層、34・・・誘電体層、35・・・対向電極、36・・・絶縁層、50・・・回路基板、61・・・金属製皿バネ部材、62・・・固定接点、70・・・本体ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極が積層してなるELシートと、
前記ELシートの前記透明電極側に形成され、複数のキートップを有するキーパッドと、
前記キーパッドの前記ELシート側に形成され、導電性を有する導電層と、を備え、
前記導電層が、導電性部材に接続可能に形成されていることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記ELシートの発光領域に対応する部分に形成される前記導電層は、透光性を有する材料により形成されることを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記導電層は、前記ELシートの発光領域に対応する部分には形成されないことを特徴とする請求項1記載の押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項4】
前記導電性部材は、前記ELシートの下方に設けられる回路基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−184118(P2007−184118A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245(P2006−245)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【出願人】(000132518)株式会社セコニック (22)
【Fターム(参考)】