説明

押釦スイッチ用部材

【課題】キートップ天面をより均一に、かつ高輝度に照光できる押釦スイッチ用部材を提供する。
【解決手段】キートップとキーパッドとを備える押釦スイッチ用部材であって、キーパッドは、少なくとも、透光性樹脂フィルム層と、遮光印刷層と、ベース部とを備え、遮光印刷層は、透光部と遮光部とを有し、遮光印刷層の遮光部および透光性樹脂フィルム層は、ベース部の少なくとも側面を覆う押釦スイッチ用部材としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の押釦スイッチに好適な押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末装置等のモバイル機器に代表される押釦スイッチ用部材として、暗所でキートップ部の視認性を確保できる照光機能を有する照光式押釦スイッチが多く用いられている。特に、エレクトロルミネセンスシート(以下「ELシート」という)は、高輝度性、薄型性および面発光性を有するため、押釦スイッチの照光部材として適している。また、成形した照光式押釦スイッチ用部材については、均一な照光性および高輝度を有するものが強く要求されている。
【0003】
従来から、押釦スイッチに用いられる照光式押釦スイッチ用部材は、例えば、複数のキートップと、当該キートップを配置するためのキーパッドとから構成される。キーパッドを主に構成するベース部の表面に透光性着色層を形成し、次いで、この透光性着色層上に遮光性着色層を形成する。透光性着色層は、着色顔料が配合された透光性の塗料等の層がベース部の表面全面に形成される。各キートップは、接着剤層を介してキーパッドに固定される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、次のような方法で製造される押釦スイッチ用部材も知られている。まず、樹脂フィルムの表面には、キートップを備える上側シリコーン弾性部材を形成する。次に、樹脂フィルムの裏面には、スイッチ機能を表す文字、数字、記号、図柄等の模様を有する遮光性の着色層またはメタリック層を形成する。その後、ベース部と一体化して押釦スイッチ用部材が完成する(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−144550号公報(特許請求の範囲、段落番号〔0023〕等)
【特許文献2】特開2004−227867号公報(段落番号〔0038〕等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に開示された照光式押釦スイッチ用部材は、押釦部の照光を実現するために照光式押釦スイッチ用部材周囲に、例えば、外装ケース等の遮光カバーを設けているものの、光源からの光が、外装ケースと、押釦スイッチ用部材外周面との隙間から漏れるため、キートップ部天面に均一に照光することが難しかった。また、消費電力の割には輝度が低かった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、キートップ天面をより均一に、かつ高輝度に照光できる押釦スイッチ用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、キートップとキーパッドとを備える押釦スイッチ用部材であって、当該キーパッドは、少なくとも、透光性樹脂フィルム層と、遮光印刷層と、ベース部とを備え、その遮光印刷層は、透光部と遮光部とを有し、当該遮光印刷層の遮光部および透光性樹脂フィルム層は、当該ベース部の少なくとも側面を覆う押釦スイッチ用部材としている。
【0009】
このような押釦スイッチ用部材とすることで、より均一な照光性および高輝度性を有する押釦スイッチ用部材となる。すなわち、当該遮光印刷層の遮光部および透光性樹脂フィルム層は、そのベース部の少なくとも側面を覆うように折り曲げられることによって、外装ケースに押釦スイッチ用部材を装着した後、光源から発せられる光は、遮光印刷層の外周部により遮蔽されるため、外装ケースと押釦スイッチ用部材の外周面との隙間からの光洩れが発生しない。このため、押釦スイッチ用部材の天面を均一に照光することができ、照光ムラおよび輝度ムラが生じにくい。また、照光エネルギーを無駄にしないため、照光輝度を保つことができる。このように、遮光印刷層によるベース部の側面に折り曲げ部が形成されていない構造と比べると、より均一な照光性および高輝度性を発現しやすいので、キートップの部分の視認性の向上を図ることができる。
【0010】
また、別の発明は、上述の発明に加え、遮光印刷層は、透光性樹脂フィルム層の裏側に形成されている押釦スイッチ用部材としている。
【0011】
遮光印刷層を透光性樹脂フィルム層の裏側に形成することによって、遮光印刷層を外傷から保護することができる。このため、押釦スイッチ用部材の耐久性をより高めることができる。
【0012】
また、別の発明では、上述の発明に加え、透光性樹脂フィルム層の厚さを0.03mm以上0.2mm以下とした押釦スイッチ用部材としている。
【0013】
このような厚さの透光性樹脂フィルム層を用いることにより、遮光印刷層の透光部から透過した光は、透光性樹脂フィルム層の層内を通じて外装ケースの内部または外部へと洩れるのを回避できる。その結果、暗所でキートップ部の視認性が高くなると共に、押釦スイッチ用部材の薄型化にも寄与できる。
【0014】
また、別の発明では、上述の発明に加え、さらに、遮光印刷層とベース部との間に、遮光印刷層とベース部との接着性を高めるための改質処理層を設けた押釦スイッチ用部材としている。このため、遮光印刷層とベース部とをより強固に接着できる。
【0015】
本発明に係る押釦スイッチ用部材を構成するキートップの材料は、透光性を有する材料であればその材料および色調について特に限定されるものではなく、公知の樹脂、ガラスあるいは透光性セラミックス等を好適に用いることができる。また、樹脂を用いる場合、その硬化方法については特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化あるいは光硬化等の公知の硬化方法により硬化する樹脂を用いることができる。具体的なキートップ材料の好適な例としては、易成形性、表面状態が良好であることおよび成形後の装飾加工性が良いこと等の点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂またはABS樹脂を用いることができる。その中でも、特に、ポリカーボネート樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂材料は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。
【0016】
本発明に係る押釦スイッチ用部材に用いられる透光性樹脂フィルム層の材料は、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテル、ポリフェニレンサルファイドもしくはそのアロイ、共重合体等の変性物からなる樹脂、またはシリコーンゴム等の熱硬化性エラストマーにより形成される。これらの材料のうち、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートのアロイ、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリル、あるいはポリウレタン等は成形性が良いので、高低さ(凹凸)が1mm未満の浅い絞りであれば、予備成形をせず、本成形のみでベース部と一体化できる。特に、成形時に形状の追従性および可撓性が良いこと等の点から、ポリウレタンを用いるのがより好ましい。ただし、上述の材料は一例に過ぎず、他の材料を採用しても良い。なお、上記のような一種類の材料でも、二種類以上の材料の混合物でも良い。
【0017】
本発明に係る押釦スイッチ用部材に用いられるベース部の材料は、熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーにて形成される。熱硬化性エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴムの他、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系等のものが採用できる。この中でも、耐環境性、加工性および弾性等を考慮すると、特にシリコーンゴムが好ましい。ただし、上述のベース部の材料は一例に過ぎず、他のベース部の材料を採用しても良い。なお、二種類以上のベース部の材料の混合物を採用しても良い。
【0018】
本明細書において、「遮光印刷層」とは、LEDやEL等の光源から発せられる光を制御するための層である。「透光部」とは、光源からの光をキートップ側に透過させるための領域である。「遮光部」とは、光源からの光をキートップ側に透過させないための領域である。遮光印刷層には、遮光部と、それが形成されていない透光部が合わせて設けられている。外装ケースに本発明に係る押釦スイッチ用部材を装着した後、当該押釦用スイッチ部材の背面に配置されたLEDやEL等の光源から発せられる光は、ベース部を通過し、遮光印刷層に設けられた遮光部により遮蔽されると共に、遮光印刷層に設けられた透光部を通し、光が通過し、押釦用部材に設けられた表示部が照光される。なお、透光部には別途、光透過率が比較的高い材料を用い、着色しても良い。これにより、キーパッドから透過される光を調色することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キートップ天面をより均一に、かつ高輝度に照光できる押釦スイッチ用部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る押釦スイッチ用部材の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な各実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の正面図である。図2は、図1に示す押釦スイッチ用部材100のA−A線断面図である。
【0022】
図1および図2に示すように、押釦スイッチ用部材100は、キーパッド10と、その表側に配置される透光性を有する樹脂製キートップ(キートップの一例)5と、キーパッド10と樹脂製キートップ5とを接着する接着層6とを主に有している。この接着層6は、例えば、接着剤、粘着剤あるいは両面テープ等により形成される。ただし、接着層6という特別の層を形成せず、樹脂製キートップ5とキーパッド10とを溶着しても良い。
【0023】
樹脂製キートップ5は、好適には、ポリカーボネート樹脂製の部材である。樹脂製キートップ5の表面または底面の全面若しくは一部には、文字、数字あるいは図柄等の模様を有する装飾層が形成されても良い。装飾層の形成方法は、特に限定されず、インクまたは塗料等を用いた公知の方法によって形成することができる。なお、インクまたは塗料等の定着性、密着性あるいは発色性等を改善するために、樹脂製キートップ5の表面または底面に、予め各種公知の表面処理等を施して改質するのが好ましい。装飾層を形成することによって、押釦スイッチ用部材100の美的効果を向上させることができる。また、樹脂製キートップ5の表面に装飾層を形成する場合、装飾層の外側表面に透明樹脂から成る保護層を形成するのが好ましい。このような保護層を形成すれば、装飾層を外傷から効果的に保護できる。
【0024】
キーパッド10は、主に、透光性樹脂フィルム層12と、透光部20と遮光部とを有する遮光印刷層13と、押釦スイッチ用部材100の裏側に配置されるスイッチ(不図示)を押すための押圧凸部15を備えたベース部14とを積層して形成される。遮光印刷層13の遮光部および透光性樹脂フィルム層12は、ベース部14の側面を覆うように、樹脂製キートップ5と反対方向に向かって折り曲げられている。このような形態とすることによって、照光式の押釦スイッチ用部材として使用する際、光源(不図示)からの光は、外装ケース(図示せず)と押釦スイッチ用部材100との隙間から洩れず、遮光印刷層13の透光部20から樹脂製キートップ5内に入り、樹脂製キートップ5の所定領域から出射する。このため、樹脂製キートップ5の当該所定領域のより均一かつ高輝度な照光を実現できる。
【0025】
図3は、図2に示す押釦スイッチ用部材100のB部分の拡大図である。
【0026】
図3に示すように、遮光印刷層13とベース部14との間に改質処理層18が設けられている。この実施の形態では、改質処理層18としては、プライマー層を設けるのが好ましい。これによって、遮光印刷層13とベース部14との接着性が改善され、プライマー層を介して、遮光印刷層13とベース部14とをより強固に一体化できる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造方法について説明する。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100の製造工程を示すフローチャートである。
【0029】
まず、透光性樹脂フィルム層12の裏面に遮光印刷層13を形成する(ステップS101)。この遮光印刷層13は、透光部20と遮光部とを有し、加飾と共に、光源からの光が透光部20以外の部分から洩れるのを防止するための層である。この実施の形態において、好適には、透光性樹脂フィルム層12の裏面にあって、文字、数字あるいは図柄等の透光領域以外を遮光する遮光印刷層13は、塗装あるいは印刷等によって形成されている。遮光印刷層13を形成するインクまたは塗料の材料としては、特に限定されず、公知のインクや塗料を用いることができる。ただし、伸び性および密着性などの観点から、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂系、ウレタン樹脂系、ビニル樹脂系、ポリカーボネート樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系等のインクまたは塗料を用いることが好ましい。また、その硬化形態についても、特に限定されず、例えば、熱硬化または光硬化等の公知の硬化方法を採用しても良い。また、遮光印刷層13の形成方法は、特に限定されず、形成面となる透光性樹脂フィルム層12の裏面に、インクまたは塗料等を用いた公知の方法によって形成することができる。例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷、グラビア印刷、吹き付け塗装、ディップコーティング、スピンコート、蒸着等の手法を用いて行うことができる。
【0030】
また、後続工程では、遮光印刷層13を形成した透光性樹脂フィルム層12とベース部14の部材との接着を行う際に、ベース部14の部材に接する遮光印刷層13の接着性を高めるため、遮光印刷層13の表面改質処理を施すのが好ましい。表面改質処理の処理法としては、例えば、コロナ放電処理、低温プラズマ処理、プラズマ重合処理、火炎処理、紫外線処理、電子線処理、放射線処理、イオン注入処理、研磨処理等が挙げられる。製造コストおよび取扱い性を考慮すると、遮光印刷層13の裏面にプライマー層を設けるのがより好ましい。
【0031】
遮光印刷層13の厚さは光源からの光を遮蔽するための厚さが必要となる。一方、透光性樹脂フィルム層12の好適な厚さは、0.03mm以上0.2mm以下の範囲であり、特に好ましい厚さは、0.05mm以上0.1mm以下の範囲である。透光性樹脂フィルム層12の厚さが0.03mm以上の場合には、後工程の絞り工程を行う時に、透光性樹脂フィルム層12が絞られることによって破れる可能性を低減することができる。また、透光性樹脂フィルム層12の厚さが0.2mm以下の場合には、遮光印刷層13の透光部20から透過した光が、透光性樹脂フィルム層12の層内を通じて外装ケースの内部または外部への光洩れを回避できる。その結果、暗所で樹脂製キートップ5の視認性が良いものとなる。加えて、押釦スイッチ用部材100の薄型化にも寄与する。
【0032】
次に、遮光印刷層13の裏面に、ベース部14の部材を配置する(ステップS102)。この実施の形態では、平板状の熱硬化性エラストマーを用いて、遮光印刷層13の表面形態に合わせながら平板状の熱硬化性エラストマーを貼り合わせる。平板状のベース部14の部材は、耐環境性、加工性および弾性等を考慮すると、シリコーンゴムを好適に用いることができる。ベース部14の部材の配置の方法については、例えば、未硬化のシリコーンゴムをカレンダー加工により貼り合わせても良いし、透光性樹脂フィルム層12に形成した遮光印刷層13の裏面に塗布しても良い。特に、液状シリコーンゴムを遮光印刷層13の裏面に塗布するのがより好ましい。
【0033】
続いて、成形用金型を用いてキーパッド10の絞り成形を行う(ステップS103)。この実施の形態では、成形用金型内に、上述の工程にて得られた物を配置した後、型閉めて硬化する。その結果、透光性樹脂フィルム層12、遮光印刷層13およびベース部14を一体化したキーパッド10を成形できる。具体的には、ベース部14の裏方向に凸となる押圧凸部15が形成されると共に、透光部20を除く当該遮光印刷層13および透光性樹脂フィルム層12の外周部は、ベース部14の側面を被覆するように形成される。
【0034】
また、透光性樹脂フィルム層12の絞り量が高低さ(凹凸)1mm以上となる場合は、透光性樹脂フィルム層12を所定の形状に予備成形しておき、その予備成形樹脂フィルムをベース部14と一体成形するための金型にセットした後、ベース部14の部材と一体化しても良い。このため、予備成形工程を追加することによって、透光性樹脂フィルム層12に設けた遮光印刷層13の印刷位置の精度を高めることができる。
【0035】
続いて、成形用金型を型開きして、キーパッド10を取り出す(ステップS104)。この実施の形態では、取り出したキーパッド10に対して、不要部分を除去する。具体的には、例えば、得られたキーパッド10を精密プレス機械、またはレーザー加工装置を使用して不要部分を切断することにより、キーパッド10が得られる。ただし、不要部分を除去する方法は、特に限定されない。
【0036】
最後に、樹脂製キートップ5とキーパッド10を貼り合せる(ステップS105)。この実施の形態では、貼り合せる方法については、公知の方法、例えば、樹脂製キートップ5を吸着固定された接着用治具とキーパッド10を吸着固定された接着用治具とを対向配置し、接着剤を広げることによって、樹脂製キートップ5とキーパッド10を精度良く貼り合せる。これにより、押釦スイッチ用部材100が得られる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200について説明する。
【0038】
第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200は、先に説明した第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100と共通の部分を有している。なお、以後、第2の実施の形態以降の実施の形態の説明において、各共通の部分については、第1の実施の形態と同じ符号にて示し、また、同じ工程については、重複する説明を省略する。
【0039】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200を図1に示すA−A線と同様の線にて切断した断面図である。図6は、図5に示す押釦スイッチ用部材200のC部分の拡大図である。
【0040】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、図5および図6に示すように、押釦スイッチ用部材200は、キーパッド10と、その表側に配置される透光性を有する樹脂製キートップ(キートップの一例)5と、キーパッド10と樹脂製キートップ5とを接着する接着層6とを主に有している。このキーパッド10は、外側から順次に、保護層25と、透光部20と遮光部とを有する遮光印刷層13と、透光性樹脂フィルム層12と、押圧凸部15を有するベース部14とを一体成形して構成されている。遮光印刷層13の遮光部および透光性樹脂フィルム層12は、そのベース部14の側面を覆うように、樹脂製キートップ5と反対方向に向かって折り曲げられている。遮光印刷層13を透光性樹脂フィルム層12の外側に形成すると、樹脂製キートップ5の視認性および装飾性を向上することができ、多種多様なデザインの要望に応えることができる。また、保護層25により遮光印刷層13を覆うのは、遮光印刷層13を外傷から効果的に保護するためである。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造方法について説明する。
【0042】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材200の製造工程を示すフローチャートである。図7に示す製造工程において、図4に示す製造工程と同様の部分については、重複した説明を省略する。
【0043】
まず、透光性樹脂フィルム層12の表面に遮光印刷層13を形成する(ステップS201)。この工程は、透光性樹脂フィルム層12と遮光印刷層13とを一体化するためである。
【0044】
次に、遮光印刷層13の表面に保護層25を形成する(ステップS202)。この工程は、外傷から遮光印刷層13を保護する目的として、遮光印刷層13の表面に透明樹脂から成る保護層25を形成するためである。形成方法については、特に限定せず、公知の方法、例えば、塗装または印刷により形成しても良い。このため、押釦スイッチ用部材200の押圧操作によって遮光印刷層13が摩耗して模様が容易に消えることはない。
【0045】
続いて、成形用金型に上述の工程にて得られた一体物をセットして絞り成形を行う(ステップS203)。この実施の形態では、成形用金型の間に、一体物を挟むように配置し、型閉めすることにより、絞り成形体が得られた。
【0046】
その後、ベース部14の材料の射出成形を行う(ステップS204)。この実施の形態において、ベース部14の材料を射出成形することにより、保護層25、遮光印刷層13、透光性樹脂フィルム層12および裏方向に押圧凸部15を有するベース部14からなるキーパッド10を好適に一体化する。具体的には、製品形状に合致する凹部を有する射出成形用金型に、上述の工程にて得られた絞り成形体を配置した後、未硬化のベース部14の材料、例えば、シリコーンゴムを射出成形し、絞り成形体とシリコーンゴムからなるベース部14とが一体化し、押圧凸部15を有するキーパッド10を形成できる。
【0047】
必要に応じて射出成形を行う前に、ベース部14と接する透光性樹脂フィルム層12の表面に接着性を向上させる表面改質処理を施しても良い。このため、製造工程を、より簡単、かつ製造時間をより短縮することができる。
【0048】
続いて、射出成形用金型を型開きして、キーパッド10を取り出す(ステップS205)。最後に、樹脂製キートップ5とキーパッド10を貼り合せる(ステップS206)。これにより、押釦スイッチ用部材200が得られる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材100,200およびその製造方法の各実施の形態について説明したが、本発明に係る押釦スイッチ用部材100,200およびその製造方法は、上述の各実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0050】
例えば、遮光印刷層13の延伸程度によって、遮光印刷層13の遮光部および透光性樹脂フィルム層12は、ベース14の側面を全面的に覆ったり、ベース14の底面に入り込んだりする押釦スイッチ用部材100を製造しても良い。
【0051】
また、顧客ニーズの多様化に対応する押釦スイッチ用部材100のデザイン性に関わる遮光印刷層13の領域は、必ずしもキーパッド10の全面に設けられなく、必要に応じて適宜範囲を変更されても良い。
【0052】
また、例えば、表面に押釦形状部を形成した透光性樹脂フィルム層12、遮光印刷層13および平板状のベース部14の材料からなる一体物を絞り成形することによって、所望の形状を有する樹脂フィルム付き押釦スイッチ用部材100を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、押釦スイッチ用部材を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の正面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用部材のA−A線断面図である。
【図3】図2に示す押釦スイッチ用部材のB部分の拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材を図1に示すA−A線と同様の線にて切断した断面図である。
【図6】図5に示す押釦スイッチ用部材のC部分の拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
5…樹脂製キートップ(キートップ)
6…接着層
10…キーパッド
12…透光性樹脂フィルム層
13…遮光印刷層
14…ベース部
15…押圧凸部
18…改質処理層
20…透光部
25…保護層
100,200…押圧スイッチ用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップとキーパッドとを備える押釦スイッチ用部材であって、
上記キーパッドは、少なくとも、透光性樹脂フィルム層と、遮光印刷層と、ベース部とを備え、
上記遮光印刷層は、透光部と遮光部とを有し、当該遮光印刷層の上記遮光部および上記透光性樹脂フィルム層は、上記ベース部の少なくとも側面を覆うことを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記遮光印刷層は、前記透光性樹脂フィルム層の裏側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記透光性樹脂フィルム層は、その厚さを0.03mm以上0.2mm以下としていることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
さらに、前記遮光印刷層と前記ベース部との間に、前記遮光印刷層と前記ベース部との接着性を高めるための改質処理層を設けていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−259445(P2009−259445A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104236(P2008−104236)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】