説明

拡張可能なインペラポンプ

【課題】従来のインペラは、特定のブレード形状を有するインペラとして製造され、組立中および使用中に同一の形態を有している。しかし、組立時に運搬が制限された空間を通してなされるか、あるいは運転中の空間が拡大する場合があるので、格納形態から運転時における展開形態に移行することが出来る可撓性のインペラを提供する。
【解決手段】インペラは、ハブ80と、ハブに支持された少なくとも1つのブレード82、84を備えていて、ブレードがハブから外方に拡大する展開形態と、ブレードをハブの方に折畳むことによって、半径方向に圧縮される格納形態とを有している。このインペラは、ブレードの半径方向の圧縮を容易にするために、ブレード列に配置される複数のブレードで構成されていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2004年9月17日に出願された米国仮特許出願番号No.60/610,938の優先権を主張し、その内容の全体は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、流体ポンプのインペラ、特に、拡張可能なインペラに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のインペラは、特定のブレード形状を有するインペラとして製造され、一般的に、ブレードの有意な変形は望ましくない。従来、インペラは、格納中、その運転位置への移動中、および使用中に、同一の形態を有している。しかし、運転位置へのアクセスが制限された空間を通してなされるか、あるいは空間がインペラの格納中または移送中に拡大する場合があり、このような場合には、従来のインペラの使用が問題になることがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態によるインペラは、ハブと、ハブに支持された少なくとも1つのブレードとを備えている。このブレードは、ハブに取り付けられた近位端と、遠位端とを有している。インペラは、ブレードがハブから離れて延在する展開形態と、インペラが半径方向に圧縮された格納形態とを有している。格納形態では、ブレードの遠位端が展開形態における場合よりもハブに近接している。インペラは、ブレード列に配置される複数のブレードを備えていても良い。ブレードは、ハブに沿って互いに離間されても良く、各ブレード列は、1つまたは複数のブレードを備えている。例えば、各ブレード列は、2つまたは3つのブレードを備えていても良い。例示的なインペラは、2つのブレード列を備え、各ブレード列は、2つのブレードを備えている。
【0005】
インペラは、ハブとブレードとを備えた単一のインペラ体で構成されても良い。代替的に、ブレードとハブが異なる材料から形成されても良い。好ましくは、ブレードが可撓性を有し、それにより、格納形態においてハブ側に変形させることができる。ブレードは、ポリウレタンのようなポリマーから形成されても良い。例示的なインペラでは、ブレードは、運転応力に対して約10,000psi(69MPa、psi:pounds per square inch=lbf/in2;1lbf/in2=6.9×10Pa)の曲げ弾性率を有するポリマー、例えば、低曲げ弾性率ポリウレタンから形成される。例えば、インペラは、運転応力に対して約10,000psi(69MPa)の曲げ弾性率を有する材料の単一体から構成されても良く、この単一体は、ハブとブレードとを備えていても良い。弾性率は、インペラの格納状態へのブレードの変形に対して、小さいことが好ましい。例えば、運転応力に対する弾性率は、約10,000で、展開状態から格納状態へのインペラの半径方向の圧縮に対する弾性率は、これよりも約10倍小さい約1,000(6.9MPa)とすることが好ましい。
【0006】
1つ(または多数)のインペラブレードは運転中に変形でき、このブレードの運転形態は、展開および回転によってのみ達成されるようにすることができる。例えば、ブレードの最適な形態が、負荷時の変形によってのみ達成されるようにすることができる。従って、使用時におけるブレードの可撓性による変形が、ブレードとしての性能を低減させることがない。インペラが製造時の形状に比べて著しい変形を呈した状態においても良好な運転が可能である。また、このようなインペラは、設計に含まれる許容差を見込んで作製することが可能である。所定の回転速度でまたは所定の回転範囲内で回転する変形されたインペラの形態を最適化することができる。本発明のさらに他の形態では、インペラは、負荷時、例えば、流体中で展開形態のインペラが回転する時に、ブレードの弾性変形によって展開形態から移行しうる運転形態をさらに有している。可撓性インペラを最適化する改良された手法は、運転形態を最適化することである。従来は、無負荷時における展開形態に最適化されている。
【0007】
本発明によるインペラは、インペラに連結された一端を有する可撓性シャフト等のシャフトにさらに取り付けられ、シャフトの他端に作用するトルクによってインペラを回転させるようにしても良い。例えば、シャフトの他端が、インペラに回転をもたらすモータ等の回転要素に連結されても良い。また、シャフトは、インペラの展開、すなわち、インペラを格納形態から展開形態に移行させる手段として用いられても良い。例えば、シャフトは、インペラを金属チューブのような格納スリーブから外に押し出すのに用いられても良いし、インペラを格納スリーブ内で回転させるのに用いられても良い。格納スリーブ内におけるインペラの捩れが、インペラを格納スリーブから外に押出し、展開形態への移行を促進する。
【0008】
本発明によるインペラは、格納形態においてインペラに貯えられた歪エネルギーによって励起され、格納形態から展開形態に自己展開することが可能である。例えば、インペラが格納スリーブから外に押し出される場合には、ブレードに貯えられた歪エネルギーによって、他の如何なる機械的な駆動を必要とせずに展開形態に移行させることができる。
【0009】
本発明によるインペラは、種々の用途、例えば、流体(気体または液体)用の軸流ポンプ、乗物用の動力、または他の用途に用いることができる。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態では、インペラは、インペラの少なくとも1つのブレードの近位端に近接して配置された1つまたは複数の凹みを有している。インペラは、複数のブレードを有し、各ブレードが、少なくとも1つの関連する凹みを有していても良い。凹みは、ハブに形成された溝であっても良い。この溝は、ブレードがハブと交わるブレードの近位端(ブレードの基部)の少なくとも一部を包囲している。凹みは、ブレードの近位端と実質的に平行でかつ隣接して延在する溝のような細長く延びる凹みとすることができる。
【0011】
この凹みによって、流体がインペラに対して相対的に移動するときに形成される流れの渦を低減することが可能となる。また、この凹みによって、例えば、ブレードの遠位端のハブ側への移動が容易になり、インペラが格納形態に容易に圧縮されるようになる。典型的なブレードは正圧面および負圧面を有しており、凹みは、これらの面の片方または両方と平行でかつ隣接する溝から構成されても良い。ブレードは、翼断面形状(エアフォイル形状)を有していても良く、その場合、凹みは、ブレードの湾曲した近位端と平行にインペラに湾曲した溝として形成される。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、インペラは、ハブに支持されたブレードを備え、ハブに対するブレードの遠位端(ブレード先端)に小翼を有している。この小翼は、ブレードの遠位端においてブレードの断面積を増加させる。小翼は、ブレードから接線方向に延在することが好適であり、この接線は、インペラの回転時におけるブレード先端の円運動軌跡に対するものである。小翼は、インペラの運動方向(インペラの正圧面側)、インペラの運動方向と反対方向(インペラの負圧面側)のいずれか、または両方向に延在し得る。ブレードの回転によって正圧面および負圧面がもたらされる。ブレードは、回転方向を有し、小翼は、ブレードの回転方向と平行に片側または両側から延在し、後者の場合、小翼とブレードとが略T字状の断面を形成する。ブレードが、その遠位端において正圧面と負圧面との間に有する厚みを遠位厚みとした場合、小翼は、ブレードの回転方向と平行の方向において測定されたブレードの遠位厚みの約1〜3倍に相当する小翼幅を有することが好適である。ブレードが翼弦長を有する場合、小翼は、翼弦長と略等しい長さを有することができる。さらに、小翼は、流体を流通させるスリーブの内面と協働して、インペラの回転用の流体軸受を形成することができる。
【0013】
本発明の実施形態では、小翼を有するかまたは有しないブレードの遠位端は、円筒スリーブの内面も最も近くに配置され、ブレードの遠位端とスリーブの内径との間の距離(翼端間隙)は、ブレードの遠位端の最大厚みの約10〜50%である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aおよび図1Bは展開形態および格納形態にあるインペラをそれぞれ示す図である。
【図2】インペラの展開を概略的に例示する図である。
【図3A】格納スリーブ内における格納形態にあるインペラを示す図である。
【図3B】格納スリーブから外に出た後に自己展開するインペラを示す図である。
【図4】インペラの展開形態および運転形態を例示する図である。
【図5】低レイノルズ数を有するインペラ設計を例示する図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは3つのブレード列を有するインペラを示す図である。
【図7】図7Aおよび図7Bは小翼を有するインペラブレードを示す図である。
【図8】図8A〜図8Cは有力な小翼形態を例示する図であり、図8Dは有力な小翼縁の幾何学的形状を例示する図である。
【図9】図9A〜図9Dは有力な小翼の形態をさらに示す、インペラブレードの端面図である。
【図10】図10Aおよび図10Bはブレードの近位端の周囲に溝を有するブレードを例示する図である。
【図11】成形されたポリマーインペラの写真である。
【図12】インペラブレード材料の応力−歪曲線を示す図である。
【図13】翼端の間隙寸法の関数として表される正規化された平均流体せん断応力を示す図である。
【図14】翼端の間隙寸法の関数として表される正規化された平均流体せん断応力を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態によるインペラは、ハブと、ハブによって支持された少なくとも1つのブレードとを備えている。本発明の実施形態は、少なくとも1つの可撓性ブレードを有するインペラを含んでいる。この少なくとも1つの可撓性ブレードは、ブレードがハブから離れて延在する展開形態と、インペラが半径方向に圧縮される格納形態とを有する。例えば、ブレードは、金属チューブまたはカニューレのような格納スリーブによって、ハブ側に折り畳まれ、そこに保持されても良い。格納形態では、展開形態よりもブレードの遠位端がハブに接近し、その半径が、展開状態の半径よりも著しく小さく、例えば、半分よりも小さい。スリーブは、インペラが格納される非拡張性部分と、インペラが展開するように移動可能な拡張可能な形態とを備えていても良い。インペラは、スリーブの拡張された部分内において拡張する。
【0016】
本発明によるインペラは、ブレード列に配置された複数のブレードを備えていても良い。これらのブレード列は、ハブに沿って互いに離間され、各ブレード列は、1つまたは複数のブレードを備えていても良い。例えば、各ブレード列は、2つまたは3つのブレードを備えていても良い。例えば、ハブの周囲に湾曲する単一の長いブレードよりも、複数のブレード列を設けるほうが、格納形態を得るのが容易である。単一の長いブレードは、ハブの方に折畳むのが極めて困難になる場合がある。
【0017】
本発明の実施形態は、スリーブをさらに備えても良く、インペラの少なくとも一部が、このスリーブ内に配置され、インペラが回転すると、流体が、このスリーブ内を流れる。スリーブは、拡張可能であり、インペラが展開形態にあるときの拡張形態と、インペラが格納形態にあるときの格納形態とを有している。スリーブは、インペラを格納形態に拘束するように作用しても良い。代替的に、別の格納スリーブを設けても良く、インペラと拡張可能なスリーブの両方を、格納スリーブの外に押し出されたときに拡張するようにしても良い。拡張可能なスリーブは、例えば、形状記憶合金からなる金属骨組(framework)から構成することができる。この金属骨組を被覆する弾性ポリマーフィルムが配設されていても良い。インペラブレードは、ブレードの遠位端に小翼を有しても良く、この小翼とスリーブが、インペラの回転に対する流体軸受を構成する。例えば、スリーブは、円筒状の内面を有し、この円筒状の内面に沿ってインペラが回転する。インペラが回転するときに近位側から円筒状の内面に移動する各ブレードの小翼によって、流体がスリーブ内に流れ、小翼と円筒状内面との間の流体は、インペラの回転に対する流体軸受を形成する。
【0018】
インペラは、格納スリーブ内に格納され、インペラが回転されるときに流体を流通させる流体パイプ内で展開される。格納スリーブは、流体パイプの直径の半分以下の直径を有することができる。格納スリーブは、金属チューブであっても良く、金属チューブ内に、インペラが展開前に格納される。流体パイプは、公共(水、ガス、下水など)パイプ、(血管のような)体腔、車両用の推進ユニットの一部、または流体が流れる他の構造体であっても良い。インペラは、格納形態で所望の場所に搬送され、拡張状態、すなわち、展開状態に自己拡張する。格納形態は、インペラの所望位置への搬送を容易にし、インペラを展開状態の直径よりも小さい開口内に通過させることができる。
【0019】
流体パイプは、格納スリーブの拡張形状であっても良い。この格納スリーブの拡張によって、インペラを拡張させることができる。この場合、インペラは、展開形態に移行するためにスリーブの外に押し出される必要がない。例えば、本発明の例によるインペラは、格納形態で、小さい入口孔から大きな直径のパイプ内に挿入させることができる。インペラは、駆動シャフトを用いて、格納スリーブの外に押し出すことによって展開させることができる。この際、インペラは、ブレード材料の内部に貯えられた歪エネルギーによって展開形態に拡げられる。
【0020】
インペラが回転することによって、ブレードの形態は、さらに運転形態に変化することができる。インペラは、設計負荷条件下で回転動作する場合に流体力学的な最適形状に変形する可撓性ブレードを有することができる。
【0021】
本発明の実施形態は、小翼を有する少なくとも1つのブレードを有するインペラを備えている。運転状態では、小翼が、インペラの流体力学的性能を改良することができ、流体内に存在するせん断応力を低減させる。インペラは、ブレードを格納状態に折畳むのを容易にする複数のブレードを備えていても良い。これらのブレードは、ハブに沿って同じ距離だけ延在する1つのブレードを折畳む場合と比較して、ブレードを格納状態に折畳むのを容易にする複数の列に配置されても良い。ブレードおよび(任意選択的に)ハブは、ポリマーのような低弾性係数の材料から構成されても良い。インペラは、例えば、ポリマーを成形することによって、同一材料から形成されたブレードとインペラとを有する一体構造であっても良い。
【0022】
また、複数のブレード列を有するインペラは、大きな値の流体ヘッド、すなわち、出口圧力の上昇を得るのを容易にする。本発明による軸流インペラの比速度は、混成ポンプの比速度と同程度である。
【0023】
インペラは、折畳まれた状態でパイプ内に挿入され、その後に展開されるようにすることができる。インペラは、流体パイプ内で展開されると、流体がインペラの回転で送り出されることによって、さらに運転形態に変形することができる。インペラの運転が終了すると、インペラは、例えば、流体パイプの直径または展開形態の直径よりも小さい直径を有する入口孔内に引込まれ、可撓性ブレードが再び折畳まれることによって、容易に圧縮され、格納形態に復元することができる。例えば、ブレードは、取り付けられた回転駆動シャフトまたはガイドワイヤによって、再び折畳まれ、インペラが円筒状の格納空洞内に引込まれるようにすることができる。
【0024】
本発明によるインペラは、境界層が管内流の大半をなす低レイノルズ数管内流(層流)で運転することができる。つまり、ブレードの全体にわたる相対流れのレイノルズ数を、従来のインペラおよびポンプと比較して低くすることができる。
【0025】
このインペラは、非ニュートン流体における運転に対して最適化されるようにすることができる。このインペラは、流体内の過剰なせん断応力によって損傷する(乳化液滴、細胞などのような)繊細な粒子を含む流体内での運転に対して最適化されるようにすることができる。このインペラは、無負荷時の展開形態と必ずしも同じでない運転形態が最適化されるように設計することができる。
【0026】
ブレード根元の周りに位置するようにハブに形成された凹みを有するインペラは、格納形態にあるときに、ブレード内の内部的な機械的応力を低下させることができる。また、この凹みは、運転形態のインペラによって生じる流体せん断応力をさらに低減させるのに用いられても良い。
【0027】
ブレードは、好適には、ポリウレタンのようなポリマー材料から形成される。10,000psi(69MPa)の弾性率を有するポリウレタン等のポリマーを用いることができる。場合により、ブレードは、肉厚のボムバンドに近似する剛性を有していても良い。従って、ブレードは、ある程度の剛性を有するものの、運転負荷によって変形可能である。例えば、運転応力に対しては、負荷時の予測変形を可能にする線形の弾性率を有する一方、ブレードを格納形態に折畳むのに用いられる高応力に対しては、非線形の弾性率を有するように材料を選択することが好適である。
【0028】
図1Aは、展開形態にあるインペラを示している。このインペラは、ハブ10と、多数のブレード、例えば、ブレード12とを備えている。インペラは、ハブの中心長軸から最外ブレード先端までの距離として測定される半径Rを有している。流体スリーブ14も示されている。流体が、スリーブ14内を通ってインペラに対して相対的に流れる。このインペラは、スリーブ内を通して流体を送出する軸流ポンプとして利用可能である。代替的に、このインペラを乗物用の動力源として利用しても良い。例えば、このインペラは、ジェットボートのようなボートまたは他の船舶に動力を供給することもできる。この場合、スリーブは、乗物を取り囲む水に浸漬されるチューブである。この形態では、ブレードが展開されている。
【0029】
図1Bは、ブレード12がハブ10側に折畳まれるか、または他の方法で変形された格納形態にあるインペラを示している。この形態での半径Rは、図1Aに示される半径Rよりも小さい。
【0030】
本発明の実施形態によるインペラは、可撓性ブレードを有している。これらの可撓性ブレードは、折畳まれた状態にあるインペラの最大直径が、運転状態にあるインペラの直径の約半分またはそれ以下になるように折畳可能である。これは、図1A,1Bを参照すると、R≒(R/2)、およびR≦(R/2)で表される。
【0031】
図2は、インペラの展開を例示する概略図である。このインペラは、ハブ20と、多数のブレード、例えば、ブレード22とを有し、格納スリーブ24によって格納形態に保持されている。インペラを駆動するのに回転シャフト30が用いられる。この図は、回転シャフト内のガイドワイヤ28も示している。ガイドワイヤ28は、インペラを位置決めするのに用いられ、また、インペラを格納スリーブの外に押し出すのを促進するのに用いられる。格納スリーブは、例えば、金属チューブとすることができる。また、格納スリーブの内面に螺旋条を有している場合、シャフトを回転させて、例えば、インペラを捩じることによって、インペラが格納スリーブの外に展開するのを促進できる。流体パイプ26が左側に示されている。インペラが展開し、かつ回転すると、この流体パイプ26内を通して流体が流れる。
【0032】
格納形態にあるインペラは、流体パイプ26の直径の略半分以下の直径を有する格納スリーブ24によって形成された円筒状の空洞内に格納することができる。
【0033】
格納スリーブは、金属チューブで構成することができる。この金属チューブ内に展開前のインペラが格納される。流体パイプ26は、流体をインペラに対して流通させる任意の構造体、例えば、チューブまたは体内管である。インペラは、格納形態で流体パイプ内の所望の位置に搬送され、次いで、拡張された展開形態に自己展開可能である。インペラは、格納形態をとることで、ブレードの回転によって外方に拡張された展開状態の断面積よりも小さい面積を有する開口を通過することができる。
【0034】
代替的に、流体パイプ26が、格納スリーブ24の拡張形態であっても良い。すなわち、拘束スリーブの拡張によってインペラを展開させることができる。この場合、インペラが展開形態に移行するのに、スリーブの外に押し出される必要がない。例えば、インペラを、小さい孔、小さい分岐パイプまたはパイプ壁の孔を通して、流体パイプ内に挿入することができる。次いで、駆動シャフトを用いてインペラを格納スリーブの外に移動させることによって、インペラを展開することができる。展開は、ブレードが格納形態にあるときにブレード内部に貯えられた歪エネルギーによって、如何なる外部エネルギーをも入力させることなく励起される。
【0035】
図3Aは、多数のブレード、例えば、ブレード34とハブ30とを有し、格納形態にあるインペラをさらに示している。これらのブレードは、格納スリーブ36によって、ハブに対して折畳まれて保持されている。図3Bは、格納スリーブの外に押し出されて自己拡張したインペラを示している。このインペラは、展開状態でより明瞭に示されているが、2つのブレード列、すなわち、ブレード34を備える第1列とブレード32を備える第2列とを有している。
【0036】
図4は、ハブ60と、複数のブレードとを備えるインペラを示している。これらのブレードは、展開形態と運転形態の両方で示されている。展開形態は、無負荷時のブレード形態であり、運転形態は、インペラが運転時の回転速度で回転するときの形態である。ブレードは、展開形態では、62A,64A,66Aで示されている。ブレードは、負荷時、例えば流体内において回転する場合に運転形態に変形し、この運転形態におけるブレードは、62B,64B,66Bで示されている。インペラの回転によって、ブレードの形態は、(無負荷時の)展開形態から運転形態に変化する。可撓性ブレードは、設計負荷条件下で回転し、運転されるとき、最適化された流体力学的形状に変形することができる。
【0037】
図4は、展開したブレード形状を運転ブレード形状と比較している。ハブとブレードが同一のポリマーから形成される場合、シミュレーションによれば、第2ブレード列が、第1ブレード列と比較して、根元で回転されるので、ハブも回転して僅かに撓むことが分かっている。一般に、ブレードの揚力は、推力を生じるように作用するので、ブレードは、前方に撓む。すなわち、図の左側に向かう力は、ブレードを図の右側の方に移動させる。第2ブレード列の前縁は、隠れている。2つのブレード列があり、各々が、2つの同じブレードを有している。
【0038】
ブレードの形状は、標準的な数値流体力学(CFD)解析によって最適化することができる。従来のブレード形状は、非回転で非負荷の形態に最適化されていた(もしインペラが拡張可能でないなら、展開した形状は、回転していないときのインペラの形状であり、格納形態が存在しない)。しかし、改良されたインペラでは、最適化された運転形態を有し、インペラを設計する改良された方法は、運転形態を最適化するステップを含んでいる。構造計算によって、展開状態を基準とする負荷時の変形の許容差が決定される。
【0039】
図5は、低レイノルズ数を有するインペラ設計を例示している。このインペラは、ハブ80と、各々が2つのブレードを有する2つのブレード列とを備えている。第1列は、ブレード82,84を備え、第2列は、ブレード86,88を備えている。
【0040】
この図は、流体パイプ壁における流れの境界層がパイプの直径と同程度の厚みを有する低レイノルズ数インペラの設計要素を示している。インペラは、著しく湾曲した前縁ラインと後縁ラインとを有し、ブレードのピッチ角が、相対流れ角の局所値に対して調整される。第2列ブレードは、前縁から後縁に向かって螺旋経路を取る溝形状を有している。これは、翼幅の方向にける負荷の変動に対処するためのものである。これによって、このインペラを用いる軸流ポンプは、斜流ポンプにおけるのと同様のポンプ出口圧力を達成することができる。ブレードの翼幅の中間部には、比較的大きな負荷が作用するので、この溝形状を設けたのである。第2列ブレードは、さらに2つの分離したブレード列に分割されても良い。この一般的な特徴は、それほど明瞭ではないが、後でさらに示す。
【0041】
図6A,6Bは、インペラの端面図および斜視図をそれぞれ例示している。このインペラは、ハブ100と、ブレード102,104を備える第1ブレード列と、ブレード106,108を備える第2ブレード列と、ブレード110,112を備える第3ブレード列とを備えている。
【0042】
同様の性能を有する斜流インペラの場合、ハブ直径が一般的にかなり大きいので、展開形態における直径の半分の直径を有する格納形態への折畳みは不可能である。
【0043】
図7A,7Bは、遠位端に小翼122を有するブレード120の側面図および端面図を示している。図7Aは、ブレードの遠位側の断面を破線によって示している。図7Bは、流体スリーブ124の内面の近くを移動する小翼を示している。この形態は、インペラのための流体軸受として用いることができる。
【0044】
インペラは、小翼を有する少なくとも1つのブレードを有することができる。ある実施形態では、ブレード列内の全てのブレードが小翼を備え、その他のブレードは、小翼を有していても良いし、または小翼を有していなくても良い。小翼は、インペラの流体力学的な性能を改良することができる。また、小翼は、流体内に存在するせん断応力を低減させ、例えば、流体内に存在し得る細胞のような生物学的構造物の劣化を低減することもできる。
【0045】
図8A〜8Cは、好適な小翼の形態を示している。インペラのブレードは、典型的に、1対の対向面、すなわち、ブレードが流体内で回転するときに圧力によって流体の相対的な運動を生じさせる正圧面と、負圧によって流体の運動を生じさせる負圧面と、を有している。また、ブレードは、ブレードが回転するときに流体を横断する前縁と、後縁と、(ブレード先端またはブレードの遠位端の縁とも呼ばれる)外縁と、を有している。小翼は、翼断面形状(エアフォイル形状)を有する外縁またはブレード先端によって支持される。図示されるように、ブレードの負圧側は、右側であり、正圧側は、左側である。
【0046】
図8Aは、負圧側小翼、すなわち、ブレード140の外縁の負圧側から延在する小翼142を示している。この図は、前縁から見た断面図である。従って、この図において、ブレードは、視野の方向に向かって回転している。図8Bは、ブレード144の正圧側から延在する正圧側小翼146を示している。パラメータは、負圧側小翼と同様で良い。正圧側小翼の機能は、間隙を通る流量を低減させることである。正圧側小翼は、流体軸受を生じさせる効果は少ないが、低運動量の流体を流体パイプの内面から剥離させることによって、この流体が間隙に流入して翼端渦の核になるのを防ぐ。これによって、流体の流れにおけるせん断応力を低減させることができる。
【0047】
図8Cは、外縁の正圧側と負圧側の両方から延在する組合せ小翼を例示している。本発明の実施形態は、図8A〜8Cに示される形態を備えている。数値解析を用いて小翼の形態を設計することができる。ブレードの翼弦長が長く、ブレードの螺旋の度合いが著しく大きい場合、ブレード先端と小翼の配置と形状が複雑になることがある。
【0048】
図8Dは、使用され得る有力な小翼の縁の幾何学的形状を示している。この図は、丸縁150、角縁152、および楔形縁(チゼルエッジ)154,156を示している。
【0049】
図9A〜9Dは、小翼の形態をさらに例示している。小翼を支持するブレードは、これらの例では、同じ形状を有している。図9Aは、小翼を有していないブレード160の外縁を例示している。
【0050】
図9Bは、部分164に及ぶ、ブレード外縁の正圧側から延在する正圧側小翼を示している。小翼の部分162は、図9Aに示されるブレードの元の外縁領域に対応している。
【0051】
図9Cは、負圧側の小翼を示している。部分166は、ブレードの外縁の負圧側から延在し、部分168は、ブレードの元の外縁に対応している。本発明の実施形態では、ブレードの正圧側は、ブレードの厚みまたは幅の約1/3〜1/2の半径を有している。小翼の大きさは、ブレード厚みの1/2〜3倍であれば良い。ブレード厚みと略等しい厚みが示されている。小翼は、図示されるように、主にブレードの下流側の半分の個所に位置している。この目的は、小翼の外面が、ブレードが内部で作動している流体パイプの内面に近接する場所に、流体軸受を生成することである。間隙における流れの強さが低減し、翼端渦が形成され難い。これによって、流体内のせん断応力が低減される。間隙は、ブレードの基本最大厚みの約10%から約25%の範囲内にあれば良い。間隙をなす面は、ケーシングのパイプと殆ど平行の面である。この間隙の形状は、半径がブレード要素の軸方向位置の関数である円柱状の円筒、円錐状の円筒、または湾曲した円筒であっても良い。正圧側小翼のパラメータと(以下に述べる)組合せ小翼のパラメータは、同様とすることができる。
【0052】
図9Dは、ブレードの正圧面と負圧面の両方から延在する組み合わされた正圧側および負圧側小翼を示している。部分170は、正圧面から延在し、部分174は、負圧面から延在し、部分172は、ブレードの元の外縁に対応している。
【0053】
小翼は、好ましくは、空力学的に滑らかな形状を有している。小翼は、流れが衝突する前縁と、流れが小翼面から放出される後縁とを有している。小翼は、好ましくは、ブレード先端面に沿った流れの方向と平行である平均流れの方向に略沿った滑らかな空力学的な断面を有している。
【0054】
図10A,10Bは、凹みの設置を例示している。この場合、凹みは、ブレードの基部に近接する円弧溝である。図10Aは、溝182によって取り囲まれたブレード180を示している。この溝は、ハブ184に形成され、ブレードの近位縁と平行で、かつブレードの近位縁に隣接している。ブレードの近位縁は、ハブと交わるブレードの基部の周囲に延在している。図10Bは、溝182およびブレード180を示す断面図である。凹みは、ディレット(dillet)と呼ばれることもある。
【0055】
ブレード根元に近い凹み、例えば、ブレード根元の一部または全てを取り巻く溝は、ブレードが格納形態にあるとき、例えば、ハブに対して折畳まれるとき、ブレードの内部の機械的な応力を低減させるのに役に立つ。この凹みは、運転状態において、流体のせん断応力を低減させるのに用いることができる。
【0056】
図11は、本発明の実施形態による構成に合わせて成形されたインペラの写真である。このインペラは、各々が3つのブレードを有する2つのブレード列を有する、鋳型から取り出されたポリウレタン製インペラである。
【0057】
図12は、本発明によるインペラを形成するのに用いることができる非線形材料の応力−歪関係を示している。左側(低応力)の黒丸と右側(高応力)の黒丸は、それぞれ、インペラの運転点と格納状態に対応している。応力/歪関係は、インペラ運転点において、略線形である。ブレードがハブに対して折畳まれた格納状態は、材料特性曲線の高歪の非線形部分内にある。これによって、格納形態は、材料の引張破壊点を通過することなく達成することができる。例示的なインペラでは、格納形態における最大の材料伸びは、約75%である。
【0058】
好ましくは、非線形特性の材料が、ブレードに用いられる。ブレード材料は、運転負荷において、比較的剛性とすることができ、同じ材料が、例えば、ブレードが格納形態に折畳まれるとき、高歪を生じる比較的可撓性とすることができる。例えば、この歪は、運転負荷において、10%であり、折畳まれるとき、75%である。応力/歪曲線は、運転負荷で高弾性率(例えば、10,000(69MPa))を有し、折畳みと関連する高負荷で低弾性率(例えば、1,000(6.9MPa))を有する。応力/歪曲線は、破断点が運転点の歪と折畳み点の歪との間にある2つの略線形領域を有していても良い。
【0059】
図13,14は、例示的インペラの流体せん断応力の最適化を例示している。インペラブレードの遠位端は、円筒スリーブの内面の最も近くに移動し、ブレードの遠位端とスリーブの内径との間の翼端間隙は、ブレードの遠位端の最大厚みの約10〜50%である。
【0060】
これらの曲線は、いずれも正規化(無次元化、normalized)され、設計点の値は、いずれも1.0で示され、目盛は、設計流れの百分率で表され、因子は、設計点の応力の値の倍数で表されている。例えば、図13は、設計流れの70%で、せん断応力は、設計条件の値の1.3倍である。図14は、翼端間隙を小さくすると、せん断応力が大きくなり、翼端間隙を大きくすると、せん断応力がわずかに小さくなることを示している。従って、流体のせん断応力を、ポンプ効率に著しい影響を与えることなく、低減させることができる。
【0061】
実施形態によるインペラは、対象物内に挿入する場合、金属チューブ、カテーテル、または他の構造物のような格納スリーブ内に、圧縮して収容することができる。生体のような対象物の場合、格納スリーブの直径は、約3〜4mm以下とすることができる。挿入されると、この装置、すなわち、インペラは、その場で、約6〜7mmの直径を有する形状に展開させることができる。次いで、インペラは、対象物の外の外部駆動モータに連結された可撓性駆動シャフトを用いて回転させることができる。本発明によるインペラは、格納状態で挿入され、次いで、(格納状態に対して)拡張された形態に展開され、例えば、医療支援装置として、毎分4リットルの流体を送出することができる。このような装置の代表的な例では、インペラは、約30,000rpmで回転する。インペラは、2つ以上の翼断面形状のブレードを備え、これによって軸流ポンプを構成することができる。インペラは、ガイドワイヤを用いて位置決めされても良く、可撓性シャフトを用いて回転されても良い。ガイドワイヤは、可撓性シャフトの中空の中心部内に延在することができ、中空の中心部は、注入、冷却、および/または潤滑の目的で、生理食塩水または他の流体を運ぶことができる。ガイドワイヤは、必要に応じて取り出すことができる。生体内への移植は、外科的介入を行なうことなく、3〜4mmの直径を有するカニューレを通すことによって達成することができる。医学的な移植の場合、金属編組、またはポリマーまたは複合材料の編組からなる駆動シャフトを用いることができ、このような駆動シャフトの直径は、約1.5〜2mmであり、ガイドワイヤを通過させるために中空とすることができる。
【0062】
さらに他の実施形態では、スリーブは、拡張可能な部分および非拡張可能な部分を有している。インペラは、非拡張可能な部分内に格納された状態で挿入され、所望の位置またはその近くに配置される。次いで、インペラはスリーブの非拡張可能な部分から付勢されて拡張可能な部分内に移送されると、可撓性ブレード内部に貯えられた弾性エネルギーによってインペラの自己拡張が生じ、スリーブの拡張可能な部分の拡張も生じる。拡張されたスリーブは、インペラが回転するときに流体を流通させる流体パイプの役割を有することもできる。拡張可能なスリーブは、金属またはポリマーのメッシュ、または織繊維と、可撓性のある拡張可能なチューブをもたらす滑らかなシースとから構成することができる。
【0063】
拡張可能なスリーブは、可撓性材料、例えば、ポリマー、金属、または他の材料から形成されたメッシュから構成することができる。一例では、メッシュは、形状記憶合金であるニチノール(nitinol)から作製される。厚さ約1/1000インチ(約25.4μ)の金属の薄板または薄円筒をレーザを用いてメッシュ構造を残すように切断される。代替的に、メッシュは、ポリマーから形成することもできる。メッシュ用の他の適切な材料として、(形状記憶合金を含む合金のような)他の金属、ポリマーなどが挙げられる。次いで、弾性被膜のような被膜がメッシュ上に施される。例えば、エステン(EstaneTM、登録商標)のような弾性ポリマー、または他のポリウレタンを用いることができる。
【0064】
従って、拡張可能なスリーブは、メッシュ、例えば、織ったワイヤのマトリックス、ワイヤ間の空間に相当するレーザ切断されたすき間を有する機械加工された金属円筒、または一方向に変形したときに直交する方向に細長く延びる他の材料から構成することができる。次いで、このメッシュは、エラステン(elastane)の薄膜によって被覆され、流体を流通させる流体パイプを形成することができる。このメッシュは、遠位端に流入口のすき間を有し、近位端に流出用のすき間を有する円筒に形成することができる。近位端は、対象物、例えば、パイプまたは生体内への挿入点に近い。例えば、ガイドワイヤを用いて、スリーブの長さが短縮されると、円筒は大きな直径に拡張され、これによって、大きな流量が可能になる。六角形のセルマトリックス設計または他の設計を、メッシュに用いることもできる。被膜(例えば、生体適合性、耐食性、または流れを改良する被膜)を、例えば、溶液流延法によって、スリーブに施すこともできる。
【0065】
スリーブのメッシュまたは織繊維の方位は、2つの安定した形態、すなわち、格納形態および展開形態を可能とするように、選択することができる。格納姿勢で被検者に移植されるように設計された一例では、展開形態にある拡張可能なスリーブは、その長さを約20〜30cmとし、その直径を約6〜7mmにした。この直径によって、流量を大きくし、摩擦圧の損失を低減させることができた。格納形態では、拡張部分は、展開形態に対して約30%細長く延ばされ、直径は、約3mmであった。アセンブリの最終部分(遠位端)は、送り出される流体を流入させるための入口または開口をもたらす二次的な開口および板の組を備えている。スリーブは、流体を吐出させるためのガイドワイヤが取り付けられる開口も備えている。スリーブの短い区域(例えば、1cm)が、スリーブの中心軸の周りに配置されたベーンを含むこともでき、このベーンを通して流体が吐出される。これらのベーンは、静止したステータブレードとして作用し、インペラの吐出流から渦巻き速度成分を取除くようにしても良い。これらのベーンは、翼断面形状を有するように作製されても良い。拡張可能なスリーブ内で展開するインペラの用途として、一体構造のブースタポンプを有する折畳み消火ホース、折畳み推進器、生体液用の生物医学的ポンプなどが挙げられる。
【0066】
インペラブレードを、流体内の壊れ易い粒子(例えば、乳化液滴、懸濁液、細胞のような生物学的構造体など)の破壊を最小限に抑えるように設計することができる。CFDモデルを用いてインペラを通過する粒子が受けるせん断応力をシミュレートした。粒子が受ける媒介物のせん断応力の時間積分を用いて、生物学的な用途における細胞の破壊の確率を評価した。前述したような複数のブレード列を含む分割ブレードの設計によって、細胞が媒介物のせん断応力領域に存在する滞在時間を低減させ、これによって、従来のインペラ設計と比較して、細胞または他の粒子の破壊を有利に低減させることができる。
【0067】
インペラブレードは、インペラが格納状態にあるとき、例えば、インペラの圧縮された体積に対して95%に至る大きな比率を占めることができる。ブレードは、スリーブから押し出されたときに拡張するのに充分な弾性を有するゴムのような弾性材料または他の弾性材料から形成することができる。他の例では、ブレードは、他の可撓性ポリマー、任意選択的にスキンを有する発泡体、または他の金属を含む圧縮可能または変形可能な材料から形成されても良い。
【0068】
本発明の実施形態によるインペラは、長い連続的な螺旋状のブレードよりも、むしろ複数の個別のブレード組を有していることが好適である。従来技術のインペラは、通常、長い連続的な螺旋状のブレードを有しているが、このようなブレードは、ハブに対して折畳むのが困難である。長いブレードを2つまたは3つの短い部分に分割することによって、このブレードを、円筒状の容積部または空間部内に容易に折畳むことができ、適切に配置させた状態で容易に展開させることができる。ブレード列の数は、1〜5、またはそれ以上であっても良い。捩れピッチ角は、可変とすることができる。
【0069】
インペラ設計の1つの方法として、中心ハブの周りに巻き付けられる程度が著しく大きいブレードを有する2ブレードインペラを設ける方法が挙げられる。しかし、これらのブレードの三次元的な形状は、これらのブレードを変形または破壊を生じることなく折畳みうる限度を制限する。単一のブレードを、ハブの周りに巻き付けられる程度を最小限に抑えるブレードの2つ、3つ(または可能であれば、それ以上)の列に、分割することによって、これらのブレードは、より2次元的な形状を有し、これによって、格納プロセス中における曲げを容易にすることができる。3つまたは2つのブレード列の組合せであっても、単一のブレード列におけるのと同一の流量および圧力を生じさせることができる。2つのブレード列を有する軸流ポンプを設計し、CFD(数値流体力学)解析した結果、このポンプ設計が医療支援用途に用いられるのに充分であることが示された。1つのモデルを可撓性ポリウレタン材料から作製したが、このモデルは金属スリーブ内に良好に折畳まれた。
【0070】
インペラは、極めて小さいレイノルズ数の流れ、例えば、低速または低流量の比較的粘性のある流体を送り出すのに用いることができる。約6mm直径の極めて小さいインペラポンプを、精密金型から引出されたポリマーによって作製することができる。これによって、インペラを極めて低コストで作製することが可能になる。ポリマー製ブレードを用いることによって、ポンプインペラを型締めされる金型から引出すことができ、これによって、複数の金型、すなわち、分割金型の代わりに一体の金型を用いることが可能になる。このような小さいインペラポンプは、少量の生体液を送り出すのに有利である。インペラは、典型的なレイノルズ数の流れでも用いることができる。また、インペラの直径は、数インチから数フィートの範囲内とすることができる。
【0071】
前述の改良されたインペラ設計の用途として、化学工業用のポンプ、船または飛行船用のプロペラ、または水ポンプなどが挙げられる。改良されたインペラ設計は、インペラが小さい形態で格納されるどのような用途にも有効である。インペラは、例えば、折畳み可能な形態にある金属シート、プラスチック、および非弾性材料から形成されても良い。展開の例として、ブレードを拡げるモータまたは他の機械装置を使用する展開、または遠心力によって生じる自動展開などを含む。本発明の例として、流体を送り出すために対象物内に配置可能な装置が挙げられる。この装置は、挿入断面を有する挿入形態で対象物内に挿入され、挿入断面よりも大きい運転断面を有する運転形態で、対象物内において運転される。(回転されるときにインペラブレードの外縁によって拡げられる最大円である)運転直径は、インペラの挿入直径に対して50%よりも大きくても良く、さらに挿入直径に対して100%よりも大きくても良い。
【0072】
本発明は、前述した具体例に制限されない。実施例は、本発明の範囲を制限することを意図していない。ここに記載された方法、装置、組成などは、例示にすぎず、本発明の範囲を制限することを意図していない。ここでの変更および他の用途が当業者に想起され得る。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【0073】
この明細書に挙げられる特許、特許出願、または刊行物は、各文献が具体的にかつ個別に述べられて参照されるかのように引用することによって、ここに含まれるものとする。特に、2004年9月17日に出願された米国仮特許出願番号No.60/610,938は、その全体がここに含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを有し、流体の相対的な移動を誘起する装置であって、前記インペラは、ハブと、前記ハブによって支持され、前記ハブに取り付けられた近位端と遠位端とを有するブレードと、を備え、
前記インペラは、前記ブレードが前記ハブから離れて延在する展開形態と、前記インペラが半径方向に圧縮され前記ブレードの前記遠位端が前記ハブ側に移動した格納形態とを有する、装置。
【請求項2】
前記インペラが、前記ブレードを複数備え、前記各ブレードが、前記ハブに沿ったブレード列に配置され、前記ブレード列の各々が、1つまたは複数のブレードで構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ブレード列が、各々2つのブレードで構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記インペラが、2つのブレード列を備え、前記ブレード列の各々が2つのブレードで構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
スリーブをさらに備え、前記インペラの少なくとも一部が前記スリーブ内に配置され、前記インペラが回転するときに、前記流体が前記スリーブ内を流れるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スリーブが拡張可能であり、前記インペラが展開形態にある状態で拡張形態となるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記スリーブは、前記インペラが前記格納状態において配置される非拡張部分と、前記インペラが前記展開形態において配置される拡張可能部分とを有する、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記ブレードが、前記ブレードの前記遠位端に小翼を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記インペラが、単一のインペラ体で構成され、前記インペラ体が前記ハブと前記ブレードとを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ブレードがポリマーで構成され、前記ポリマーが、運転負荷時において前記展開形態を変形させる第1の弾性率と、前記ブレードを前記格納形態に変形させる第2の弾性率とを有し、前記第1の弾性率が、前記第2の弾性率よりも略10倍大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ポリマーが、低曲げ弾性率のポリウレタンである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記インペラは、運転形態をさらに備え、前記運転形態は、前記展開形態の前記インペラの回転による前記ブレードの変形によって達成され、
前記インペラの前記運転形態が数値的に最適化されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
第1端と第2端とを有する可撓性シャフトをさらに備え、前記可撓性シャフトの前記第1端は、前記インペラに機械的に連結されており、前記インペラが、前記可撓性シャフの前記第2端に作用するトルクによって回転するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記インペラは、前記格納形態から前記展開形態に自己拡張可能であり、前記インペラの自己拡張が、前記格納形態にある前記インペラに貯えられた歪エネルギーによってなされる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が液体用軸流ポンプである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記インペラが、前記ハブと前記ブレードとを備える単一ポリマー体を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
インペラを有し、流体の相対的な移動を誘起する装置であって、前記インペラは、ハブと、前記ハブに取り付けられた近位端を有するブレードと、を備え、
前記インペラは、前記ブレードの前記近位端に隣接して凹みを有し、前記凹みは、前記ブレードの前記近位端の少なくとも一部に沿って細長く延在している、装置。
【請求項18】
前記ブレードが可撓性を有し、前記インペラは、前記ブレードが前記ハブから離れて延在する展開形態と、前記インペラが半径方向に圧縮され前記ブレードの前記遠位端が前記ハブ側に移動した格納形態とを有しており、前記凹みは、前記格納形態に移行すべく前記ブレードの前記遠位端を前記ハブ側に移動させるのを容易にする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記凹みが、前記ブレードの前記近位端の一部と実質的に平行でかつ隣接して延在する前記ハブ内の溝である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記ブレードが第1面と第2面とを有し、前記凹みが、前記ブレードの前記第1面の前記近位端と平行でかつ隣接して延在する第1溝である、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記ブレードの前記第2面の前記近位端と平行でかつ隣接して延在する第2溝をさらに備えている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記ブレードが翼断面形状をなし、前記凹みが、前記ブレードの近位端と平行に前記インペラに形成された湾曲した溝である、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記装置が液体用軸流ポンプである、請求項17に記載の装置。
【請求項24】
前記装置が、乗物の動力源を構成している、請求項17に記載の装置。
【請求項25】
前記インペラが、前記ハブによって支持された複数のブレードを備え、前記ブレードの各々が前記凹みを有している、請求項17に記載の装置。
【請求項26】
インペラを有し、流体の相対的な移動を誘起する装置であって、前記インペラは、ハブと、前記ハブによって支持され、前記ハブに取り付けられた近位端と遠位端とを有すると共に第1面と第2面とを有しかつ可撓性を有するブレードと、を備え、
前記インペラは、前記ブレードが前記ハブから離れて延在する展開形態と、前記インペラが半径方向に圧縮され前記ブレードの前記遠位端が前記ハブ側に移動した格納形態とを有しており、前記ブレードが、前記ブレードの前記遠位端において前記ブレードの前記第1面から延出した小翼を有する、装置。
【請求項27】
前記インペラが前記スリーブ内で回転する際に、前記小翼が、前記スリーブの内面と協働して流体軸受を形成するように構成されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記インペラは、前記格納形態から前記展開形態に自己拡張可能であり、前記インペラの自己拡張が、前記格納形態にある前記インペラに貯えられた歪エネルギーによってなされる、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記第1面が前記ブレードの正圧面である、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記第2面が前記ブレードの負圧面である、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
前記小翼が、前記ブレードの前記第2面からも延出している、請求項26に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−157961(P2011−157961A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−620(P2011−620)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【分割の表示】特願2007−532569(P2007−532569)の分割
【原出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(500273296)ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション (14)
【出願人】(510267982)ソラテック コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】