説明

拡径掘削用バケット、中間拡径部の掘削方法、及び拡底部の掘削方法

【課題】杭孔の中間拡径部又は拡底部を形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができる拡径掘削用バケット、中間拡径部の掘削方法、及び拡底部の掘削方法を提供する。
【解決手段】掘削機本体16に懸架された回転軸24に設けられた拡翼部30の拡縮によって縦孔20に拡径部56を形成する。また、連結手段98によって受け皿96と桶状容器105とが回転軸24の下端部に交換可能に取り付けられる。また、拡径部56下部を形成するときには、受け皿96を回転軸24の下端部に取り付けてアーム部34を取り付けられるようにする。よって、アーム部34により拡径部56下部を形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭孔に拡径部を形成する拡径掘削用バケット、中間拡径部を形成する中間拡径部の掘削方法、及び拡底部を形成する拡底部の掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の大型化や高層化に伴い、高い鉛直支持性能が基礎杭に要求されている。そこで、図35に示すように、基礎杭500の先端部502を拡径した拡底部を形成することによって鉛直支持力を大きくする場所打ちコンクリート杭が採用されている。
【0003】
さらに、図36に示すように、基礎杭504の先端部506だけでなく、中間にも拡径した中間拡径部508を設けた場所打ちコンクリート杭が提案されている。この杭は、中間拡径部508が地中でネジ山のような働きをするので、周囲の地盤から大きな鉛直支持力及び引抜抵抗力を得ることができる。
【0004】
図35、36に示すような場所打ちコンクリート杭は、杭径を小さくしても十分な鉛直支持力及び引抜抵抗力が得られるので、建設副産物となる掘削土や杭施工時に使用する孔壁安定液を削減でき、環境負荷低減を図ることができる。
【0005】
また、杭材料であるコンクリートや鉄筋を削減することができるので、コスト低減や工期短縮を図ることができる。
【0006】
図37(A)に示す、特許文献1の分割バケット型回転掘削装置512では、ケリーバ514の下端に連結された角筒状の外筒516の内側に、スライド可能に嵌合された角筒状の内筒518が設けられている。そして、内筒518の下端部には、下面にビット(不図示)が配設された底板520が水平に取付けられている。
【0007】
外筒516の内部には、外筒516の頂部に後端部が回転可能に連結された油圧シリンダ526が備えられており、油圧シリンダ526のピストンロッド528の先端部に設けられたピン530によってピストンロッド528の先端部と内筒518の下端部が連結されているので、油圧シリンダ526のピストンロッド528を伸縮させることにより、内筒518が伸縮する。
【0008】
外筒516及び内筒518の周りには、外壁面にビット(不図示)が配設された湾曲側壁板522が設けられており、外筒516及び内筒518と、湾曲側壁板522とが平行リンク機構524によって連結されている。
【0009】
よって、油圧シリンダ526のピストンロッド528が最長の状態になると、湾曲側壁板522は平行リンク機構524の作用によって内側に平行移動するので、バケットの径は図37(A)のように最小になる。
【0010】
そして、この状態の分割バケット型回転掘削装置512を拡径する杭孔の底部に載置し、回転駆動装置(不図示)によりケリーバ514を介して分割バケット型回転掘削装置512を回転させると共に、油圧シリンダ526のピストンロッド528を縮めながら、分割バケット型回転掘削装置512を沈下させていくと杭孔の底部は拡径掘削される。そして、分割バケット型回転掘削装置512は図37(B)のような全開状態になる。
【0011】
杭孔底部の拡径掘削により掘削された土砂は、湾曲側壁板522を再び図37(A)の状態に戻すことによって、全閉状態となったバケット内に収容される。そして、分割バケット型回転掘削装置512は、クレーンによって地上に吊り上げられた後にバケット内に収容した土砂を地上に排出する。
【0012】
ここで、1回の掘削ステップで排出できる掘削土砂量はバケット容量に依存する。特許文献1の分割バケット型回転掘削装置512のように、バケットの側壁(湾曲側壁板522)が土砂掘削のカッターの役割りを兼ねる装置では、バケット容量を大きくするために側壁を高くすると掘削負荷が大きくなってしまうので好ましくない。
【0013】
よって、特許文献1の分割バケット型回転掘削装置512では、1回の掘削ステップで排出できる掘削土砂量を大きくすることが難しく、このようなバケット容量の小さい分割バケット型回転掘削装置512で拡径掘削を行う場合、掘削土砂を地上に排出するための分割バケット型回転掘削装置512の昇降回数を多くしなければならないので施工効率が低下してしまう。
【0014】
また、杭孔中間に中間拡径部を形成した後に杭孔底部の拡底掘削を行う場合、杭孔底部の掘削土砂を地上に排出するための分割バケット型回転掘削装置512の昇降回数が多くなると、掘削が完了した中間拡径部の法尻等に分割バケット型回転掘削装置512が接触して崩落し、杭孔の品質が低下することが懸念される。
【0015】
ここで、容量の大きな土砂回収用バケットを分割バケット型回転掘削装置512の湾曲側壁板522の下方に別途設けることが考えられるが、例えば、中間拡径部の下部に傾斜面を形成するために、湾曲側壁板522の下端部にカッターを取り付けようとする場合、土砂回収用バケットは、このカッターの下端よりも下に設けられることになるので、分割バケット型回転掘削装置512の機械高さがかなり大きくなり、クレーンによって吊り上げるのが困難になってしまう。
【0016】
また、拡底部を形成する場合には、土砂回収用バケットが邪魔になって、拡底部の下部を形成することができない。
【特許文献1】特開昭60−242292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は係る事実を考慮し、杭孔の中間拡径部又は拡底部を形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができる拡径掘削用バケット、中間拡径部の掘削方法、及び拡底部の掘削方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられ、拡縮して縦孔の孔壁を掘削し、前記縦孔に拡径部を形成する拡翼部と、前記拡翼部の下端部に着脱可能に取り付けられ、前記拡径部の下部に前記縦孔の下方中心に向う傾斜面を形成するアーム部と、前記アーム部の下端に開口面が位置するように設けられる受け皿と前記拡翼部の下端に開口面が位置するように設けられる桶状容器とを前記回転軸の下端部に交換可能に取り付ける連結手段と、を備え、前記受け皿及び前記桶状容器は前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであり、前記桶状容器の側壁は前記受け皿の側壁よりも高いことを特徴としている。
【0019】
請求項1に記載の発明では、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に拡翼部が設けられている。拡翼部は拡縮することによって縦孔の孔壁を掘削し、縦孔に拡径部を形成する。
【0020】
拡翼部の下端部には、アーム部が着脱可能に取り付けられている。アーム部は、拡翼部の拡縮によって拡径部の下部に縦孔の下方中心に向う傾斜面を形成する。
【0021】
そして、連結手段によって、受け皿と桶状容器とが回転軸の下端部に交換可能に取り付けられる。
【0022】
受け皿は、アーム部の下端に開口面が位置するように設けられ、桶状容器は、拡翼部の下端に開口面が位置するように設けられる。
【0023】
受け皿及び桶状容器は縦孔の孔壁に外周が接触する大きさになっている。また、桶状容器の側壁の高さは、受け皿の側壁の高さよりも高い。
【0024】
よって、受け皿が連結手段によって回転軸の下端部に取り付けられている状態では、拡翼部及びアーム部によって掘削された孔壁の掘削物を受け皿が回収し、桶状容器が連結手段によって回転軸の下端部に取り付けられている状態では、拡翼部によって掘削された孔壁の掘削物を桶状容器が回収するので、縦孔の底部に落ちて溜まる掘削物をなくす、又は少なくすることができる。
【0025】
これにより、縦孔の底部に溜まった掘削物を地上に排出するために土砂回収用バケットを昇降させる作業をなくす、又は土砂回収用バケットを昇降させる回数を減らすことができる。
【0026】
また、拡径部の下部の傾斜面を形成するときには、受け皿を連結手段によって回転軸の下端部に取り付けてアーム部を取り付けられるようにし、それ以外の掘削のときには、アーム部を取り付けずに受け皿よりも1回の掘削ステップで多くの掘削物を回収することができる桶状容器を連結手段によって回転軸の下端部に取り付ける。
【0027】
これにより、アーム部により拡径部の下部に傾斜面を形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができ、施工効率が向上する。
【0028】
また、桶状容器は、拡翼部の下端との間にアーム部を設けずに、拡翼部の下端に開口面が位置するように回転軸の下端部に取り付けられるので、受け皿の側壁よりも側壁が高い桶状容器を取り付けたときの拡径掘削用バケットの機械高さを、アーム部及び受け皿を取り付けたときの拡径掘削用バケットの機械高さ程度に抑えることが可能になる。
【0029】
これにより、アーム部及び受け皿を設けた拡径掘削用バケットを懸架する掘削機本体(例えば、クレーン)によって、桶状容器を設けた拡径掘削用バケットを地上で吊り上げることができる。
【0030】
また、拡径掘削用バケットを縦孔の上から下に移動させながら孔壁の掘削を行う場合に、受け皿及び桶状容器が回転軸の中心を縦孔の中心位置にガイドするので、拡径部の真円度を高めることができる。また、桶状容器の側壁の高さは、受け皿の側壁の高さよりも高いので、孔壁に接触する周面積が大きくなる。
【0031】
これにより、拡径掘削用バケットの回転をより安定させることができる。
【0032】
請求項2に記載の発明は、縦孔の孔壁を掘削して前記縦孔の中間部に中間拡径部を形成する中間拡径部の掘削方法において、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端部にアーム部を取り付け、かつ前記アーム部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に受け皿を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して前記アーム部により前記中間拡径部の下部傾斜面の形成を行う中間拡径下部形成工程と、前記アーム部が取り外された前記拡翼部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に桶状容器を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記中間拡径部の上部傾斜面及び鉛直面の形成を行う中間拡径上中部形成工程と、を有し、前記受け皿及び前記桶状容器は前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであり、前記桶状容器の側壁は前記受け皿の側壁よりも高いことを特徴としている。
【0033】
請求項2に記載の発明では、中間拡径下部形成工程と中間拡径上中部形成工程とによって、縦孔の孔壁を掘削して縦孔の中間部に中間拡径部を形成する。
【0034】
中間拡径下部形成工程では、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端部にアーム部を取り付け、さらに、アーム部の下端に開口面が位置するように回転軸の下端部に受け皿を取り付ける。
【0035】
そして、この状態で拡翼部を拡縮してアーム部により中間拡径部の下部傾斜面の形成を行う。
【0036】
中間拡径上中部形成工程では、アーム部が取り外された拡翼部の下端に開口面が位置するように回転軸の下端部に桶状容器を取り付ける。
【0037】
そして、この状態で拡翼部を拡縮してこの拡翼部により中間拡径部の上部傾斜面及び鉛直面の形成を行う。
【0038】
ここで、受け皿及び桶状容器は縦孔の孔壁に外周が接触する大きさになっている。さらに、桶状容器の側壁の高さは、受け皿の側壁の高さよりも高い。
【0039】
よって、中間拡径部の下部傾斜面を形成するときには、受け皿を回転軸の下端部に取り付けてアーム部が取り付けられるようにし、中間拡径部の上部傾斜面及び鉛直面を形成するときには、アーム部を取り付けずに受け皿よりも1回の掘削ステップで多くの掘削物を回収することができる桶状容器を回転軸の下端部に取り付ける。
【0040】
これにより、アーム部により中間拡径部の下部傾斜面を形成できると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができ、施工効率が向上する。
【0041】
また、桶状容器は、拡翼部の下端との間にアーム部を設けずに、拡翼部の下端に開口面が位置するように回転軸の下端部に取り付けられるので、受け皿よりも側壁の高さが高い桶状容器を取り付けたときの拡径掘削用バケットの機械高さを、アーム部及び受け皿を取り付けたときの拡径掘削用バケットの機械高さ程度に抑えることが可能になる。
【0042】
これにより、アーム部及び受け皿を設けた拡径掘削用バケットを懸架する掘削機本体(例えば、クレーン)によって、桶状容器を設けた拡径掘削用バケットを地上で吊り上げることができる。
【0043】
請求項3に記載の発明は、縦孔の孔壁を掘削して前記縦孔の底部に拡底部を形成する拡底部の掘削方法において、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に桶状容器を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記拡底部の上部を形成する拡底上部形成工程と、前記拡翼部の下端に上面が位置するように前記回転軸の下端部に板状の底蓋部材を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記拡底部の下部を形成する拡底下部形成工程と、を有し、前記受け皿及び前記底蓋部材は、前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであることを特徴としている。
【0044】
請求項3に記載の発明では、拡底上部形成工程と拡底下部形成工程とによって、縦孔の孔壁を掘削して縦孔の底部に拡底部を形成する。
【0045】
拡底上部形成工程では、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端に開口面が位置するように回転軸の下端部に桶状容器を取り付ける。
【0046】
そして、この状態で拡翼部を拡縮してこの拡翼部により前記拡底部の上部を形成する。
【0047】
拡底下部形成工程では、掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端に上面が位置するように回転軸の下端部に板状の底蓋部材を取り付ける。
【0048】
そして、この状態で拡翼部を拡縮してこの拡翼部により拡底部の下部を形成する。
【0049】
ここで、桶状容器及び底蓋部材は縦孔の孔壁に外周が接触する大きさになっている。
【0050】
よって、拡底部の上部を形成するときには、拡翼部と底蓋部材とによって形成されるバケットよりも1回の掘削ステップで多くの掘削物を回収することができる桶状容器を取り付け、拡底部の下部を形成するときには底蓋部材を取り付ける。
【0051】
これにより、拡底部の下部を形成できると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができ、施工効率が向上する。
【発明の効果】
【0052】
本発明は上記構成としたので、杭孔の中間拡径部又は拡底部を形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットを説明する。
【0054】
図1には、場所打ちコンクリート杭を構築するための杭孔20の中間に中間拡径部を形成する掘削機10の全体構成が示されている。
【0055】
ケリーバ12が、掘削機本体としてのクレーン16のワイヤー88に接続されて懸架されている。また、ケリーバ12の途中には旋回装置14が設けられており、ケリーバ12の上下方向の移動を拘束せずに、ケリーバ12を回転させる。
【0056】
クレーン16の前方から張出した位置決めアーム18は、旋回装置14の水平位置を調整し、縦孔としての杭孔20の中心位置にケリーバ12を配置する。
【0057】
図9(C)に示すように、回転軸としての固定ポスト24の上端部には、軸部材60が接続されている。そして、この軸部材60上に設けられた連結ブラケット26にケリーバ12がピン連結されている。
【0058】
なお、図1の杭孔20は、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して形成したものであり、杭孔20内には孔壁の倒壊を防止するベントナイト等の安定液Lが満たされている。
【0059】
拡径掘削用バケット22は、図2に示すように、上部スタビライザ部36、拡縮バケット部38、下部スタビライザ部40によって構成され、上からこの順に配置されている。
【0060】
上部スタビライザ部36は、図3の平面図に示すように、軸部材60を囲む円弧状のガイド部材42を対角状に4つ配置したものである。
【0061】
各ガイド部材42の内側には、角筒状のスライド部材44の後端部が固定され、スライド部材44の先端部は軸部材60に向っている。スライド部材44は、軸部材60の各コーナー部から外側に張出した角筒状の支持部材46の内側に、スライド可能に嵌合されている。これにより、図3の状態よりも外側(矢印Nの方向)にガイド部材42を拡げることができる。
【0062】
支持部材46にはボルト48を通す2つの貫通孔50が開けられており、スライド部材44にはボルト48を通す7つの貫通孔52が等間隔に開けられている。
【0063】
杭孔20の孔壁面とガイド部材42の間にわずかな隙間を残す程度に、スライド部材44をスライドさせてガイド部材42の位置を調整し、貫通孔50と貫通孔52が一致する位置で、2本のボルト48によって固定する。
【0064】
このとき、各スライド部材44のスライド量を等しくすることによって、軸部材60に接続された固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドすることができる。
【0065】
図2に示すように、拡縮バケット部38には、固定ポスト24を囲む拡翼部としての側壁板30が4つ設けられている。4つの側壁板30はすべて同形状であり、側壁板30の平断面は円弧状になっている。また、側壁板30の下部30Bは略鉛直面を形成しており、側壁板30の上部30Aは内側に傾斜している。
【0066】
各側壁板30の回転方向(矢印Mの方向)先頭側の端部には、掘削ビット32が上下方向に等間隔で配設されている。掘削ビット32は、図2のA−A断面図の図4に示すように、杭孔20の孔壁面に向って尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30が杭孔20の孔壁面側に移動することにより、杭孔20の孔壁が掘削されて中間拡径部が形成される。
【0067】
図2の各側壁板30の下端部には、先端部が下方内側に向うように、アーム部としてのアーム部材34が着脱可能に取付けられている。対向するアーム部材34の長さは同じであり、隣り合うアーム部材34同士の長さは異なっている。すなわち、対向する1組のアーム部材34の長さは長く、対向するもう1組のアーム部材34の長さは短くなっている。これにより、拡径掘削用バケット22のバケット径が最小のときに、長い方のアーム部材34は交差し、短い方のアーム部材34は、この交差した長い方のアーム部材34にぶつからないようになっている。図5に示すように、側壁板30の下部30Bは、鉛直線62と略平行な鉛直面を形成しており、側壁板30の上部30Aは、鉛直線62に対して角度Eだけ内側に傾斜している。この角度Eが、中間拡径部56を掘削した際の中間拡径部上部の傾斜面56Aの傾斜角度になる。
【0068】
また、アーム部材34は、鉛直線62に対して角度Fだけ内側に傾斜するように、側壁板30の内側に設けられたブラケット74の下端部に固定されている。この角度Fが、中間拡径部56を掘削した際の中間拡径部下部の傾斜面56Cの傾斜角度になる。
【0069】
図5のアーム部材34を外側から見た正面図の図6(A)に示すように、アーム部材34にも、側壁板30の掘削ビット32と同様の掘削ビット58が上下方向に等間隔で配設されている。
【0070】
掘削ビット58は、図6(A)のB−B断面図の図6(B)に示すように、中間拡径部下部の傾斜面56C側に尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30と共にアーム部材34が外側に移動することにより杭孔20の孔壁が削られ、中間拡径部下部の傾斜面56Cが形成される。
【0071】
アーム部材34は、図7に示す構造によって側壁板30の下端部に着脱可能に取り付けられる。アーム部材34の上端部に設けられたブラケット160には、ボルト163の貫通孔161A、161Bが形成されている。
【0072】
側壁板30の内側に設けられたブラケット74にも、ボルト163の貫通孔162A、162Bが形成されており、アーム部材34を側壁板30の下端部に装着してブラケット160をブラケット74に添わせたときに、貫通孔162A、162Bは貫通孔161A、161Bと一致する。
【0073】
そして、図7の右図に示すように、貫通孔161A、161Bと貫通孔162A、162Bの位置を合わせてボルト163を通し、ナットで締め付けてアーム部材34を固定する。
【0074】
なお、このアーム部材34の取付け構造は、アーム部材34の着脱が容易にでき、かつ杭孔の孔壁をアーム部材34が掘削できる程度にしっかりと固定できるものであればよく、図8のような構造にしてもよい。
【0075】
図8では、アーム部材34の上端部に設けられたブラケット164に、ボルト168の貫通孔165A、165Bが上向きに形成されている。
【0076】
ブラケット74の下端部に設けられたブラケット166にも、ボルト168の貫通孔167A、167Bが下向きに形成されており、アーム部材34を側壁板30の下端部に装着したときに、貫通孔167A、167Bは貫通孔165A、165Bと一致する。
【0077】
そして、図8の右図に示すように、貫通孔165A、165Bと貫通孔167A、167Bの位置を合わせてボルト168を通し、ナット169で締め付けてアーム部材34を固定する。
【0078】
側壁板30及びアーム部材34は、図9に示すリンク機構66によって拡縮される。
【0079】
図9(C)に示すように、ケリーバ12の下端部が、軸部材60上の連結ブラケット26にピン連結されている。そして、この軸部材60は、拡径掘削用バケット22の回転軸としての角筒状の固定ポスト24の上端部に接続されている。
【0080】
固定ポスト24の外側には、角筒状の昇降ポスト64が設けられている。昇降ポスト64の長さは固定ポスト24の長さよりも短く、固定ポスト24の長さ方向に沿って昇降ポスト64がスライドするように、昇降ポスト64の内側に固定ポスト24が嵌合されている。
【0081】
昇降ポスト64の左右には、ブラケット68が固定されており、ブラケット68の上部には、ブラケット72がさらに外側に食み出るように設けられている。そして、油圧シリンダ70の中央部は、このブラケット72に回転可能に連結されている。
【0082】
リンク部材76の両端は、ブラケット68の外側中央部と、側壁板30の内側に設けられたブラケット74の上部にそれぞれ回転可能に連結されており、このリンク部材76と平行になるように設けられたリンク部材78の両端は、ブラケット68の下部と、ブラケット74の下部に回転可能に連結されている。
【0083】
リンク部材80の両端は、リンク部材76、78の略中央部にそれぞれ回転可能に連結されており、リンク部材82の両端は、リンク部材80の下端部と、固定ポスト24の下端部に設けられたブラケット84にそれぞれ回転可能に連結されている。
【0084】
略三角形状のブラケット90はリンク部材78と連動するように、その下辺がリンク部材78に固定されており、ブラケット90の頂部連結部92は、油圧シリンダ70のピストンロッド86の先端部と回転可能に連結されている。
【0085】
ここで、図9(A)に示すような、拡径掘削用バケット22のバケット径が最小の状態において、油圧シリンダ70を作動させ、油圧シリンダ70のピストンロッド86を矢印Pの方向に縮めるとブラケット90の頂部連結部92は、リンク部材78のブラケット68との連結部78Aを回転中心として矢印Qの方向に回転する。
【0086】
すると、このブラケット90の動きに連動して、リンク部材76、78が矢印Rの方向に旋回し、これに伴って昇降ポスト64は矢印Sの方向へ、側壁板30は矢印Tの方向へ移動し、図9(B)の状態になる。
【0087】
さらに、油圧シリンダ70のピストンロッド86を矢印Pの方向に縮めると、最終的には図9(C)に示すような、拡径掘削用バケット22のバケット径が最大の状態になる。
【0088】
このように、図9(A)、(B)、(C)の順に動作することによって拡径掘削用バケット22は拡径し、また、この逆の動作手順(図9(C)、(B)、(A))によって拡径掘削用バケット22は縮径する。
【0089】
このようなリンク機構66によって、油圧シリンダ70がリンク機構66内にコンパクトに収めることができるので、大きな拡径率(孔杭の拡径部と軸部との断面積の比率)の中間拡径部を孔杭の中間に形成することができる。
【0090】
従来の拡径掘削用バケットで掘削できるのは、3.2以下程度の拡径率の拡径部であったが、本実施形態の拡径掘削用バケット22においては、リンク機構66を用いることによって最大で約5.0程度の拡径率の拡径部の掘削を行うことができる。
【0091】
また、油圧シリンダ70をリンク機構66に組込んだ構造としたことで、拡縮バケット部38の高さを低く抑えることができるので、拡径掘削用バケット22の機械高さを小さくすることができる。
【0092】
また、側壁板30の支持アームとなるリンク部材78を油圧シリンダ70で直接動作させるので、伝達力のロスがなく、機械効率を向上させることができる。
【0093】
なお、図9では2つの油圧シリンダ70のみが示されているが、4つの側壁板30のそれぞれに油圧シリンダ70及びリンク機構66が設けられている。すなわち、拡縮バケット部38には4つの油圧シリンダ70が搭載されている。
【0094】
図2に示すように、スタビライザ部としての下部スタビライザ部40は、吊り支柱94と、受け皿としての土砂回収用バケット96とによって構成されている。土砂回収用バケット96は、底板100を有する円筒状の容器であり、杭孔20の孔壁に外周が接触する大きさになっている。すなわち、土砂回収用バケット96の外径は、土砂回収用バケット96の側壁面と杭孔20の孔壁の間に若干の隙間が形成される程度に、杭孔20の径よりも小さくなっている。
【0095】
図10に示すように、スタビライザ部としての下部スタビライザ部40は、回転軸としての固定ポスト24の下端部に着脱可能に設けられている。4つの吊り支柱94の上端部が、固定ポスト24の下端部に着脱可能に取付けられた連結手段としての接続部材98の下面に接合され、下方外側に向かって四方に広がっている。吊り支柱94の下端部は、土砂回収用バケット96の側壁上部に接合されている。
【0096】
図11に示すように、下部スタビライザ部40の接続部材98上部は、円筒状の嵌入部170となっている。また、嵌入部170にはボルト174の貫通孔171が形成されている。
【0097】
回転軸としての固定ポスト24下部には、嵌入部170の嵌入孔172が設けられている。嵌入孔172の上方は、嵌入した嵌入部170の頂部が当って止まるように、角筒状の固定ポスト24の中空部分が埋められている。また、固定ポスト24下部には、嵌入部170が嵌入孔172に完全に嵌入されたときの貫通孔171と一致するように、貫通孔173が形成されている。
【0098】
そして、図11の右図に示すように、貫通孔171と貫通孔173の位置を合わせてボルト174を通し、ナット175で締め付けて嵌入部170を固定ポスト24に連結する。このとき、土砂回収用バケット96の開口面はアーム部材34の下端に位置するように設けられる(図9参照のこと)。なお、土砂回収用バケット96は、図9に示すように、土砂回収用バケット96の開口面が常にアーム部材34の先端部よりも低い位置になるように取付けられていればよい。
【0099】
なお、この下部スタビライザ部40の取付け構造は、固定ポスト24下端部への着脱が容易にでき、かつ固定ポスト24下端部にしっかりと下部スタビライザ部40を固定できるものであればよく、ピンによって固定ポスト24と嵌入部170を連結してもよい。
【0100】
図10に示すように、土砂回収用バケット96の蓋となる円盤状の底板100は、土砂回収用バケット96の側壁下部の内側に設けられたヒンジ102によって矢印Vの方向に開閉可能に連結されている。この開閉によって、土砂回収用バケット96に積載された掘削土砂を地上にて排出する。
【0101】
土砂回収用バケット96のヒンジ102と対向する側壁付近には、底板100のロック機構104が設けられている。土砂回収用バケット96の側壁下部及び上部に設けられ、内側に張出した上部サポート106及び下部サポート108に、丸棒110が回転可能に支持されて、蓋をした状態の底板100の水平面に対して略垂直に立設している。
【0102】
丸棒110の上端部にはハンドル112が設けられており、下端部にはロック部材114が設けられている。ロック部材114の下部は、図12に示すような、傾斜面114A、114Bを有する形状をしている。
【0103】
土砂回収用バケット96を上から見た図13に示すように、ハンドル112の略中央部と、上部サポート106から張出したブラケット120との間にはスプリング118が設けられており、矢印Wと逆の方向にハンドル112を付勢している。このとき、上部サポート106の上面に固定されたストッパー部材122にハンドル112が当たるので、ハンドル112はこの位置よりもさらにブラケット120側に回ることはない。さらに、上部サポート106の上面には、ハンドル112が矢印Wの方向に回って符号112Aの位置に達したときに当たるストッパー部材126が固定されている。
【0104】
底板100には、ロック部材114の平面外形(幅d)よりも若干大きい開口部124(幅d)が形成されている。この開口部124は、ハンドル112を矢印Wの方向に回しストッパー部材126に当たったときにロック部材114と嵌合する位置に形成されている。
【0105】
図13(A)では、ロック部材114の角部と、これに対向するロック部材114のもう一方の角部との間の長さdが開口部124の幅dよりも大きくなっているので、ロック部材114が開口部124の縁に引掛かりロックされる。これによって、底板100が閉まった状態を維持する。
【0106】
スプリング118に抗してハンドル112を矢印Wの方向に回すと、図13(B)に示すように、ロック部材114が開口部124と嵌合する位置(d>d)に配置されてロックが解除される。
【0107】
そして、土砂の重量によってヒンジ102を回転中心にして矢印Yの方向に底板100が回転して開放される。
【0108】
開放した底板100を閉じるには、底板100を外力によって押し上げるか、又は拡径掘削用バケット22を地上に下ろせば、装置の自重によって底板100が閉じられる。
【0109】
底板100を下から見た平面図の図14に示すように、底板100が押し上げられると開口部124の縁部128の裏側がロック部材114の傾斜面114A、114B、と接し(図14(A)参照のこと)、さらに底板100を押し上げることによってロック部材114が、丸棒110の中心を軸としてスプリング118に抗して回転し(図14(B)参照のこと)、ついにロック部材114が開口部124と嵌合する位置になったときに(図14(C)参照のこと)開口部124がロック部材114を通過して底板100が閉じられる。
【0110】
開口部124を通過したロック部材114は、スプリング118の付勢力により図14(A)と同じ位置に戻り底板100が自動的にロックされる(図14(D)参照のこと)。
【0111】
図15には、スタビライザ部としての下部スタビライザ部101を固定ポスト24の下端部に取り付けた拡径掘削用バケット23が示されている。また、図16に示すように、下部スタビライザ部101は、支持部材103と、桶状容器としての土砂回収用バケット105とによって構成されている。
【0112】
土砂回収用バケット105は、土砂回収用バケット96と同様の底板100を有する円筒状の容器であり、杭孔20の孔壁に外周が接触する大きさになっている。すなわち、土砂回収用バケット105の外径は、土砂回収用バケット105の側壁面と杭孔20の孔壁の間に若干の隙間が形成される程度に、杭孔20の径よりも小さくなっている。また、土砂回収用バケット105の側壁の高さは、土砂回収用バケット96の高さよりも高くなっており、土砂回収用バケット96よりも多くの掘削土砂を積載することができる。
【0113】
図16に示すように、下部スタビライザ部101は、回転軸としての固定ポスト24の下端部に着脱可能に設けられている。4つの支持部材103の一端は、固定ポスト24の下端部に着脱可能に取付けられた連結手段としての接続部材98の下部に突設された軸部材107に接合され、土砂回収用バケット105の側壁に向かって放射状に配置されている。また、支持部材の103の他端は、土砂回収用バケット105側壁の内側に接合されている。このとき、土砂回収用バケット105の開口面は側壁板30の下端に位置するように設けられる(図16参照のこと)。
【0114】
接続部材98及びこの接続部材98によって固定ポスト24の下端部に取り付けられる方法は図11と同様なので、説明を省略する。なお、この下部スタビライザ部101の取付け構造は、着脱が容易にでき、かつ固定ポスト24下部にしっかりと下部スタビライザ部101を固定できるものであればよく、ピンによって固定ポスト24と嵌入部170を連結してもよい。
【0115】
また、底板100を開閉させるロック機構104についても、図10に示したロック機構104と同じなので、説明を省略する。但し、下部スタビライザ101のロック機構104に設けられた丸棒110は、土砂回収用バケット105及び側壁板30を通過して、ハンドル112が側壁板30の上端部よりも上方に位置するような長さになっている。
【0116】
このように、土砂回収用バケット96と土砂回収用バケット105とは、連結手段としての接続部材98によって交換可能に取り付けられる。
【0117】
図17には、図1の杭孔20に中間拡径部56を形成した杭孔154において、この底部に拡底部を形成する掘削機130の全体構成が示されている。
【0118】
杭孔の底部に配置された拡径掘削用バケット132以外の構成は、図1とほぼ同様であるので、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0119】
ケリーバ12の下端部は、拡径掘削用バケット132の固定ポスト24の上端部に接続された軸部材60上の連結ブラケット26にピン連結されている。
【0120】
杭孔154は、拡径掘削されていない軸部54と拡径掘削用バケット22によって掘削された中間拡径部56とによって構成されている。また、この中間拡径部56は、上部傾斜面56A、鉛直面56B、下部傾斜面56Cからなり、杭孔154の中間2箇所に形成されている。
【0121】
拡径掘削用バケット132は、図18に示すように、上部スタビライザ部36、拡縮バケット部136、底蓋部138によって構成され、上からこの順に配置されている。
【0122】
拡縮バケット部136は、図2の拡縮バケット部38のアーム部材34と下部スタビライザ部40を外して、着脱可能な底蓋部138を取付けたものである。
【0123】
そして、図19に示すような、図9と同様の動作手順で、側壁板30の拡縮が行われる。
【0124】
図20(A)に示すように、固定ポスト24の下端部に支持部材140が着脱可能に固定されている。そして、支持部材140の端部に設けられたヒンジ142に底蓋部材としての底蓋144が回転可能に連結されている。図21に示すように、支持部材140の上面に嵌入部170が設けられており、下部スタビライザ40と同様の構造によって、回転軸としての固定ポスト24に底蓋部138が着脱可能に取付けられている。このとき、底蓋144の上面が側壁板30の下端に位置するように、底蓋144は固定ポスト24の下端部に取り付けられている(図20参照のこと)。
【0125】
また、底蓋144の径は、杭孔154の径とほほ等しく、側壁板30の内壁が底蓋144の外周に接触した状態で、この側壁板30の外周が杭孔154の孔壁に接触する大きさになっている。
【0126】
図20(A)に示すように、板状の底蓋144は下方向に尖った円錐形状になっており、ヒンジ142によって矢印Kの方向に開閉可能になっている。これによって、拡縮バケット部136に積載された掘削土砂を地上にて排出する。
【0127】
底蓋144のロック機構104は、土砂回収用バケット96に設けられたものと同じなので説明を省略する。
【0128】
ヒンジ142は底蓋144の直径方向において、約1/4ほど内側の位置に設けられているので、底蓋144を開放したときに、拡縮バケット部136の下端から地上面までの距離を小さくすることができる。よって、土砂排出時の拡径掘削用バケット132の機械高を小さくすることができるので、掘削土砂の排出を容易にするために底蓋を大きくした場合でも拡径掘削用バケット132の機械高は大きくならない。
【0129】
底蓋144を下から見た平面図である図20(B)に示すように、底蓋144には底蓋144の中心に対して対称な位置に2つの略扇状の開口部146が形成されている。開口部146の回転方向端部の一方には長尺な掘削ビット148が取付けられており、さらに、底蓋144には、開口部146を底蓋144の上面側から覆う開閉板150が設けられている。
【0130】
開閉板150は、図20(B)のC−C断面図である図22に示すように、掘削ビット148に対向するように開口部146の縁部付近に設けられたヒンジ152によって矢印Gの方向に開閉する。
【0131】
掘削ビット148は下方に尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30と共に底蓋144を回転させると、孔底に溜まっている掘削土砂、及び掘削ビット148によって掘削された土砂は、矢印Jの方向に流れ、これによって底蓋144上に掘削土砂が集められる。
【0132】
土砂排出のために拡径掘削用バケット132をクレーン16で地上へ持ち上げる際には、開閉板150上に載った土砂の自重で開閉板150は閉まった状態になるので、開口部146から土砂がこぼれ落ちることはない。
【0133】
次に、本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの作用及び効果について説明する。
【0134】
図23〜27の施工手順図に示すように、本実施形態では、まず中間拡径部の掘削を行い、最後に拡底部の掘削を行う。
【0135】
まず、図23(A)においては、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して孔杭20を形成する。そして、孔壁の倒壊を防止するベントナイト等の安定液Lで満たされた孔杭20内の中間拡径部を形成する位置に拡径掘削用バケット23を配置する。このときの拡径掘削用バケット23には、下部スタビライザ部101が設けられ、アーム部材34は取り付けられていない。
【0136】
ここで、拡径掘削用バケット23上部に設けられた上部スタビライザ部36は、杭孔20の孔壁とガイド部材42の間にわずかな隙間を残す程度に、スライド部材44をスライドさせてガイド部材42の位置を調整し、貫通孔50と貫通孔52が一致する位置で、2本のボルト48によって固定されている。また、全てのスライド部材44のスライド量は等しくなっている。
【0137】
これにより、ガイド部材42が、杭孔20の孔壁に接触して、軸部材60に接続された固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドする。よって、上部スタビライザ部36により、回転軸となる固定ポスト24の中心が常に杭孔20の中心位置にあるので、下から上へ中間拡径部を掘削したときの真円度を高めることができる。
【0138】
また、アーム部材34の下方にも下部スタビライザ部101が設けられている。この下部スタビライザ部101の土砂回収用バケット105の側壁面が、杭孔20の孔壁に接触して固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドする。よって、下部スタビライザ部101により、固定ポスト24の中心が常に杭孔20の中心位置にあるので、上から下へ中間拡径部を掘削したときの真円度を高めることができる。
【0139】
次に、図23(B)においては、図9と同様の動作手順に従い、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させながら側壁板30を外側に拡げていく。
【0140】
このとき、側壁板30の掘削ビット32が杭孔20の孔壁を掘削し、中間拡径部56の上部傾斜面としての傾斜面56A及び鉛直面56Bが形成される。側壁板30に設けられた掘削ビット32によって掘削された土砂は、土砂回収用バケット105に流れ込む(図9(C)の矢印Uを参照のこと)。このとき、土砂回収用バケット105の側壁面と杭孔20の孔壁の間の隙間が小さい方が、この隙間からこぼれ落ちる土砂も少なくなるので、土砂回収用バケット105の外径は杭孔20の径に出来るだけ近い長さであることが好ましい。
【0141】
流れ込んだ掘削土砂で土砂回収用バケット105が一杯になったら、図23(C)に示すようにクレーン16により拡径掘削用バケット23を地上に引上げて、下部スタビライザ部101の底板100を開放し、掘削土砂を排出する。
【0142】
そして、図23(B)、(C)の作業を適宜繰返し、中間拡径部56の傾斜面56A及び鉛直面56Bの形成が終了したならば、図24(D)に示すように、拡径掘削用バケット23の下部スタビライザ部101を外し、固定ポスト24の下端部に下部スタビライザ部40を取り付け、側壁板30の下端部にアーム部材34を取り付ける。
【0143】
そして、図24(E)に示すように、孔杭20内の中間拡径部の傾斜面56Cを形成する位置に拡径掘削用バケット22を配置し、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させながら側壁板30を外側に拡げていく。
【0144】
このとき、アーム部材34の掘削ビット58が杭孔20の孔壁を掘削し、中間拡径部56の下部傾斜面56Cが形成される。アーム部材34の掘削ビット58によって掘削された土砂は、土砂回収用バケット96に流れ込む(図9(C)の矢印Uを参照のこと)。このとき、土砂回収用バケット96の側壁面と杭孔20の孔壁の間の隙間が小さい方が、この隙間からこぼれ落ちる土砂も少なくなるので、土砂回収用バケット96の外径は杭孔20の径に出来るだけ近い長さであることが好ましい。
【0145】
流れ込んだ掘削土砂で土砂回収用バケット96が一杯になったら、図24(F)に示すようにクレーン16により拡径掘削用バケット22を地上に引上げて、下部スタビライザ部101の底板100を開放し、掘削土砂を排出する。
【0146】
そして、図24(E)、(F)の作業を適宜繰返し、中間拡径部56の傾斜面56Cを形成する。
【0147】
このように、中間拡径部56は、段階掘削によって行う。段階掘削とは、中間拡径部56を鉛直方向に複数回に分けて掘削する方法である。この段階掘削による中間拡径部56の掘削方法には、図28、29に示すような、上から下へ掘削する方法と、図30、31に示すような、下から上へ掘削する方法がある。どちらの方法を用いるかは、中間拡径部の形状、土質、拡縮回数等を考慮して適宜決めればよい。
【0148】
図28(A)に示すように、まず、下部スタビライザ部101が設けられた拡径掘削用バケット23の径を最小にした状態で、クレーン16により拡径掘削用バケット23を所定の位置まで下ろして配置する。
【0149】
次に、図28(B)に示すように、固定ポスト24、及び側壁板30を回転させながら、予定した中間拡径部上部の傾斜面56Aの位置まで側壁板30を拡げていく。この掘削が終わった後に、拡径掘削用バケット22の径を最小にした図28(A)の状態に戻し、次の掘削位置まで拡径掘削用バケット23を下ろす。
【0150】
そして、この位置で、図28(B)のときと同じような掘削を行い(図28(C)参照のこと)、この手順(図28(B)、28(C))を繰返し、図28(D)の状態になる(側壁板30の下端が中間拡径部56の傾斜面56Cの上端部に達する)まで拡径掘削用バケット23を徐々に下方へ移動させて行き、中間拡径部56の傾斜面56A及び鉛直面56Bを形成する。
【0151】
このように、中間拡径上中部形成工程(図28(A)〜(D))では、アーム部材34が取り外された側壁板30の下端に開口面が位置するように固定ポスト24の下端部に土砂回収用バケット105を取り付けた状態で、側壁板30を拡縮してこの側壁板30により中間拡径部56の傾斜面56A及び鉛直面56Bの形成を行う。
【0152】
次に、図29(E)に示すように、下部スタビライザ部101を取り外して、アーム部材34及び下部スタビライザ部40が設けられた拡径掘削用バケット22の径を最小にした状態で、アーム部材34の上端部が中間拡径部56の傾斜面56Cの上端部の高さに位置するように、クレーン16により拡径掘削用バケット22を下ろす。
【0153】
次に、図29(F)に示すように、固定ポスト24、側壁板30、及びアーム部材34を回転させながら、予定した中間拡径部下部の傾斜面56Cの位置まで側壁板30を拡げていく。この掘削が終わった後に、拡径掘削用バケット22の径を最小にした図29(E)の状態に戻し、次の掘削位置まで拡径掘削用バケット22を下ろす。
【0154】
そして、この位置で、図29(F)のときと同じような掘削を行い、この手順を繰返し、図29(G)の状態になる(中間拡径部56の傾斜面56Cの形成が完了する)まで拡径掘削用バケット22を徐々に下方へ移動させて行く。すなわち、アーム部材34によって、中間拡径部56下部に杭孔20の下方中心に向う傾斜面56Cを形成する。
【0155】
このように、中間拡径下部形成工程(図29(E)〜(G))では、側壁板30の下端部にアーム部材34を取り付け、かつアーム部材34の下端に開口面が位置するように固定ポスト24の下端部に土砂回収用バケット96を取り付けた状態で、側壁板30を拡縮してこのアーム部材34により中間拡径部56の傾斜面56Cの形成を行う。
【0156】
よって、中間拡径部上部の傾斜面56Aは側壁板上部30Aの掘削ビット32によって掘削され、中間拡径部56の最も大きな径の部分の鉛直面56Bは側壁板下部30Bの鉛直な壁面に設けられた掘削ビット32によって削られ、中間拡径部56下部の傾斜面56Cはアーム部材34に設けられた掘削ビット58によって掘削される。
【0157】
図30、31においては、図28、29とほぼ逆の手順で、下から上へ中間拡径部56を掘削していく。
【0158】
なお、本実施形態では、掘削予定の位置まで一度に側壁板30及びアーム部材34を拡げたが、拡径掘削用バケット22を中間拡径部56の上下範囲に渡って上下に複数回往復させて、少しずつ拡径するような横分割の掘削を併用してもよい。
【0159】
また、中間拡径部56は、杭孔20の必要な箇所に、必要な数だけ形成すればよい。
【0160】
すべての中間拡径部56の掘削が終了したならば、図25(G)に示すように、拡径掘削用バケット22のアーム部材34及び下部スタビライザ部40を取り外し、下部スタビライザ部101を取付けて拡径掘削用バケット23とし、拡径掘削用バケット23の径を最小にした状態でクレーン16によって杭孔の底部まで下ろす。
【0161】
次に、図25(H)、(I)に示すように、固定ポスト24、及び側壁板30を回転させながら、図19と同様の動作手順で拡底部158上部の拡底掘削を行う。側壁板30に設けられた掘削ビット32によって掘削された土砂は、土砂回収用バケット105に流れ込む(図9(C)の矢印Uを参照のこと)。
【0162】
次に、回収した土砂が、土砂回収用バケット105の最大積載量に達したときに、側壁板30を内側に移動させて拡径掘削用バケット23の径を最小の状態にし、図26(J)に示すように、クレーン16にて拡径掘削用バケット23を地上に引上げて、底蓋100を開放し、掘削土砂を排出する。
【0163】
土砂を地上に排出した後には、拡径掘削用バケット23を再び杭孔154の底部に下ろし、拡底掘削を行う。そして、図25(H)、(I)、図26(J)の作業を繰返して拡底部158上部を形成し、拡径掘削用バケット23に取り付けられた下部スタビライザ部101の底板100の底面が杭孔154の底面付近に到達したときに、地上にて拡径掘削用バケット23の下部スタビライザ部101を取り外して、底蓋部138を取り付ける(図26(K)参照のこと)。
【0164】
このように、拡底上部形成工程(図25(H)、(I)、図26(J))では、側壁板30の下端に開口面が位置するように固定ポスト24の下端部に土砂回収用バケット105を取り付けた状態で、側壁板30を拡縮してこの側壁板30により拡底部158の上部の形成を行う。
【0165】
次に、図26(L)に示すように、拡径掘削用バケット132の径を最小にした状態でクレーン16によって杭孔の底部まで下ろす。
【0166】
次に、図27(M)に示すように、固定ポスト24、側壁板30、及び底蓋144を回転させながら、図19と同様の動作手順で拡底部158下部の拡底掘削を行う。側壁板30に設けられた掘削ビット32によって掘削された土砂は、土砂回収用バケット105に流れ込み(図9(C)の矢印Uを参照のこと)、また、杭孔154の底部に溜まっている掘削土砂、及び底蓋144に設けられた掘削ビット148によって掘削された土砂は図20、22の矢印Jの方向に流れて底蓋144上に溜まる。
【0167】
次に、回収した土砂が、拡径掘削用バケット132の最大積載量に達したときに、側壁板30を内側に移動させて拡径掘削用バケット132の径を最小の状態にし、図27(N)に示すように、クレーン16にて拡径掘削用バケット132を地上に引上げて、底蓋144を開放し、掘削土砂を排出する。そして、図27(M)、(N)の作業を繰返して拡底部158下部を形成し、図27(O)に示すような、多段に拡径された杭孔156を構築する。
【0168】
このように、拡底下部形成工程(図26(L)、図27(M)、(N))では、側壁板30の下端に上面が位置するように固定ポスト24の下端部に底蓋144を取り付けた状態で、側壁板30を拡縮してこの側壁板30により拡底部158の下部の形成を行う。
【0169】
図25(H)、(I)、図26(J)〜(L)、図27(M)〜(O)に示したように、拡底部158は中間拡径部56と同様に段階掘削によって行う。この段階掘削による拡底部158の掘削方法には、図32に示すような、上から下へ((A)から(D)へ)掘削する方法と、図33に示すような、下から上へ((A)から(D)へ)掘削する方法がある。どちらの方法を用いるかは、中間拡径部の形状、土質、拡縮回数等を考慮して適宜決めればよい。
【0170】
なお、拡径掘削用バケット132の油圧シリンダ70は伸びる動作のときの方が大きなパワーを出力することができる。また、杭孔の孔壁を掘削する際の側壁板30の拡径動作よりも掘削土砂を中央に集める縮径動作の際に大きなパワーを必要とする。よって、リンク機構66は、油圧シリンダ70のピストンロッド86が伸びたときに側壁板30が縮径する機構なので、油圧シリンダ70を有効に作用させることができる。
【0171】
これまで述べたように、本実施形態では、以下の(1)、(2)の効果を得ることができる。
【0172】
(1)拡径掘削用バケットに、下部スタビライザ部40、101、及びアーム部材34が着脱可能なので、下部スタビライザ部40、101、及びアーム部材34を外して、固定ポスト24の下端部に拡底掘削用の着脱可能な底蓋部138を取付けることが可能となる。これにより、1つの拡径掘削用バケットで中間拡径と拡底の両方の掘削を行うことができるので、施工機械の低コスト化を図ることができる。
【0173】
(2)上部スタビライザ部36及び下部スタビライザ部40、101により、回転する固定ポスト24の中心を杭孔の中心位置にガイドすることができるので、中間拡径部56や拡底部158の真円度を高めることができる。
【0174】
また、中間拡径部56の形成においては、以下の(3)〜(8)の効果を得ることができる。
【0175】
(3)アーム部材34が側壁板30の下端部に着脱可能に設けられているので、掘削予定の中間拡径部56下部の傾斜面に合ったアーム部材34を装着することによって、中間拡径部下部のさまざまな傾斜面56Cの掘削に対応することができる。
【0176】
(4)傾斜面56Cを有する中間拡径部56を形成することができるので、掘削後の中間拡径部56下部の法尻の崩落を防止し、孔壁安定液中のスライム等が中間拡径部56下部に堆積しないようにすることができる。
【0177】
(5)土砂回収用バケット96が接続部材98によって取り付けられている状態では、側壁板30及びアーム部材34によって掘削された孔壁の掘削物を土砂回収用バケット96が回収し、土砂回収用バケット105が接続部材98によって取り付けられている状態では、側壁板30によって掘削された孔壁の掘削物を土砂回収用バケット105が回収するので、杭孔の底部に落ちて溜まる掘削物をなくす、又は少なくすることができる。これにより、杭孔の底部に溜まった掘削物を地上に排出するためのバケットを昇降させる作業をなくす、又はバケットを昇降させる回数を減らすことができる。
【0178】
(6)中間拡径部56の下部の傾斜面56Cを形成するときには、土砂回収用バケット96を接続部材98によって取り付けてアーム部材34を取り付けられるようにし、それ以外の掘削のときには、アーム部材34を取り付けずに土砂回収用バケット96よりも1回の掘削ステップで多くの掘削物を回収することができる土砂回収用バケット105を接続部材98によって取り付ける。これにより、アーム部材34により中間拡径部56の下部に傾斜面56Cを形成することができると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができ、施工効率が向上する。
【0179】
(7)土砂回収用バケット105は、側壁板30の下端との間にアーム部材34を設けずに、側壁板30の下端に開口面が位置するように固定ポスト24の下端部に取り付けられるので、土砂回収用バケット96よりも側壁の高さが高い土砂回収用バケット105を取り付けたときの拡径掘削用バケット23の機械高さ(図34(B)参照のこと)を、アーム部材34及び土砂回収用バケット96を取り付けたときの拡径掘削用バケット22の機械高さ(図34(C)参照のこと)程度のHに抑えることが可能になる。これにより、アーム部材34及び土砂回収用バケット96を設けた拡径掘削用バケット22を懸架するクレーン16によって、土砂回収用バケット105を取り付けた拡径掘削用バケット23を地上で吊り上げることができる。拡翼部の下端部にアーム部材34を設けた状態で土砂回収用バケット105を設けると、拡径掘削用バケットの機械高さHは高すぎてしまうか(図34(A)参照のこと)、又は土砂回収用バケット105にアーム部材34が干渉してしまう(図34(C)参照のこと)。
【0180】
(8)拡径掘削用バケットを杭孔の上から下に移動させながら孔壁の掘削を行う場合に、土砂回収用バケット96、105が固定ポスト24の中心を縦孔の中心位置にガイドするので、中間拡径部の真円度を高めることができる。また、土砂回収用バケット105の側壁の高さは、土砂回収用バケット96の側壁の高さよりも高いので、孔壁に接触する周面積が大きくなる。これにより、拡径掘削用バケットの回転をより安定させることができる。
【0181】
また、拡底部158の形成においては、以下の(9)の効果を得ることができる。
【0182】
(9)拡底部158の上部を形成するときには、側壁板30と底蓋144とによって形成されるバケットよりも1回の掘削ステップで多くの掘削物を回収することができる土砂回収用バケット105を取り付け、拡底部158の下部を形成するときには、底蓋144を取り付けるので、拡底部158の下部を形成できると共に、地上に掘削物を排出するための拡径掘削用バケットの昇降回数を減らすことができ、施工効率が向上する。
【0183】
このように、本実施形態の拡径掘削用バケット22、23、132を用いることによって、杭孔に中間拡径部や拡底部を形成することができるので、この杭孔に杭を構築したときに中間拡径部や拡底部が地中でネジ山のような働きをして周囲の地盤から大きな鉛直支持力と引抜抵抗力を得ることができる。そして、杭の径を小さくしても十分な鉛直支持力と引抜抵抗力が得られるので、建設副産物となる掘削土や杭施工時に使用する孔壁安定液を削減でき、環境負荷低減を図ることができる。
【0184】
さらに、杭の材料であるコンクリートや鉄筋を削減することができるので、コスト低減や工期短縮を図ることができる。高強度コンクリートは、杭自体の強度を上げることができるので、高拡径率の中間拡径部や拡底部を有する杭の材料として適している。
【0185】
なお、本実施形態において、中間拡径部56の掘削を行った後に拡底部158の掘削を行った例を示したが、これに限らずに、拡底部158の掘削を行った後に中間拡径部56の掘削を行ってもよい。中間拡径部の掘削を行った後に拡底部の掘削を行う場合、杭孔の底部に溜まった掘削土砂を最後にまとめて回収することができる。
【0186】
また、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して孔杭20のすべてを形成した後に中間拡径部56及び拡底部158を掘削する例を示したが、孔杭を段階的に掘り進めながら、中間拡径部を掘削するようにしてもよい。すべての孔杭を形成した後に中間拡径部及び拡底部を掘削する方が、掘削が完了した中間拡径部を掘削用バケットが通過する回数を減らすことができるので、掘削が完了した中間拡径部の法尻等の崩落を防ぐことができる。
【0187】
また、杭孔20は、拡径掘削用バケット132によって掘削してもよい。
【0188】
また、4つの側壁板30を設けた例を示したが、側壁板30は分割できるように2つ以上で構成されていればよい。側壁板30が2つの場合、拡縮する力が2方向に偏ってしまって十分な真円度の確保が難しく、また、側壁板30を多くすると構造が複雑になり多くの油圧シリンダを必要とするので、側壁板30は4つとするのが好ましい。
【0189】
また、掘削ビット32、58、148は、地盤を掘削できるものであればよく、大きさや配置等については、必要に応じて適宜決めればよい。
【0190】
また、底板100の開閉を行うヒンジ102は、土砂回収用バケット96の側壁下部の内側に設けられているが、構造的に可能であれば、底蓋144のようにヒンジをさらに内側に入った位置に設けてもよい。これにより、底板100を開放したときに、土砂回収用バケット96、105の下端から地上面までの距離を小さくすることができるので、掘削土砂を排出し易くするために大きな底板100を用いた場合においても、土砂排出時の拡径掘削用バケット22、23の機械高は大きくならない。
【0191】
また、拡縮バケット部38は、下部スタビライザ部、アーム部、及び底蓋部が着脱可能に取付けられ、拡翼部が拡縮するものであればよく、リンク機構66を用いたものでなくてもよい。
【0192】
また、拡径掘削用バケット22は、掘削予定の中間拡径部下部の傾斜面に合ったアーム部材34を装着することによって、中間拡径部下部のさまざまな傾斜面の掘削に対応することができるものであるが、中間拡径部下部の傾斜面の傾斜角は45度程度であることが施工及び構造的に好ましい。
【0193】
また、杭孔20の中間の2箇所に中間拡径部56を形成した例を示したが、中間拡径部の配置や数は、杭に求められる鉛直支持性能等に応じて適宜決めればよい。
【0194】
また、油圧シリンダ70は、ピストンロッド86に相当する部材を伸縮する装置であればよい。
【0195】
また、吊り支柱94や支持部材103は、土砂回収用バケット96、105を固定ポスト24の下端部に、固定ポスト24を杭孔の中心位置にガイドする強度を確保するように取付けられ、掘削土砂が入り込めるものであればよい。
【0196】
また、上部スタビライザ部36は、拡径掘削用バケット22、23、132の回転軸を杭孔の中心位置にガイドできるものであれば、どのような形状でもよく、拡径部の十分な真円度が得られる掘削が可能であれば上部スタビライザ部36はなくてもよい。
【0197】
また、下部スタビライザ部40、101にガイド機能を持たせなくてもよい場合には、下部スタビライザ部40、101の径を小さくしてもよいし、平面視にて正方形や多角形等の他の形状にしてもよい。
【0198】
また、連結手段としての接続部材98は、土砂回収用バケット96と土砂回収用バケット105とを回転軸の下端部に交換可能に取り付けることができるものであれば、他の接続部材や接続方法を用いてもよい。
【0199】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本発明の実施形態に係る掘削機を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る上部スタビライザ部を示す平面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットを示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るアーム部材を示す正面図及び断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るアーム部材の着脱方法を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るアーム部材の着脱方法を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの拡縮動作を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部を示す正面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部の着脱方法を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部のロック部材を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部のロック機構を示す説明図である。
【図14】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部のロック機構を示す説明図である。
【図15】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットを示す斜視図である。
【図16】本発明の実施形態に係る下部スタビライザ部を示す正面図である。
【図17】本発明の実施形態に係る掘削機を示す概略図である。
【図18】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットを示す斜視図である。
【図19】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの拡縮動作を示す説明図である。
【図20】本発明の実施形態に係る底蓋部を示す正面図及び平面図である。
【図21】本発明の実施形態に係る底蓋部の着脱方法を示す説明図である。
【図22】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの土砂回収方法を示す説明図である。
【図23】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの施工手順を示す説明図である。
【図24】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの施工手順を示す説明図である。
【図25】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの施工手順を示す説明図である。
【図26】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの施工手順を示す説明図である。
【図27】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの施工手順を示す説明図である。
【図28】本発明の実施形態に係る中間拡径部の掘削方法を示す説明図である。
【図29】本発明の実施形態に係る中間拡径部の掘削方法を示す説明図である。
【図30】本発明の実施形態に係る中間拡径部の掘削方法を示す説明図である。
【図31】本発明の実施形態に係る中間拡径部の掘削方法を示す説明図である。
【図32】本発明の実施形態に係る拡底部の掘削方法を示す説明図である。
【図33】本発明の実施形態に係る拡底部の掘削方法を示す説明図である。
【図34】本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケットの機械高さを示す説明図である。
【図35】従来の拡底杭を示す概略図である。
【図36】従来の中間拡径杭を示す概略図である。
【図37】従来の分割バケット型回転掘削装置を示す概略図である
【符号の説明】
【0201】
16 クレーン(掘削機本体)
20、154 杭孔(縦孔)
22、23、132 拡径掘削用バケット
24 固定ポスト(回転軸)
30 側壁板(拡翼部)
34 アーム部材(アーム部)
56 中間拡径部(拡径部)
56C 傾斜面
96 土砂回収用バケット(受け皿)
98 接続部材(連結手段)
105 土砂回収用バケット(桶状容器)
144 底蓋(底蓋部材)
158 拡底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられ、拡縮して縦孔の孔壁を掘削し、前記縦孔に拡径部を形成する拡翼部と、
前記拡翼部の下端部に着脱可能に取り付けられ、前記拡径部の下部に前記縦孔の下方中心に向う傾斜面を形成するアーム部と、
前記アーム部の下端に開口面が位置するように設けられる受け皿と前記拡翼部の下端に開口面が位置するように設けられる桶状容器とを前記回転軸の下端部に交換可能に取り付ける連結手段と、
を備え、
前記受け皿及び前記桶状容器は前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであり、前記桶状容器の側壁は前記受け皿の側壁よりも高いことを特徴とする拡径掘削用バケット。
【請求項2】
縦孔の孔壁を掘削して前記縦孔の中間部に中間拡径部を形成する中間拡径部の掘削方法において、
掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端部にアーム部を取り付け、かつ前記アーム部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に受け皿を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して前記アーム部により前記中間拡径部の下部傾斜面の形成を行う中間拡径下部形成工程と、
前記アーム部が取り外された前記拡翼部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に桶状容器を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記中間拡径部の上部傾斜面及び鉛直面の形成を行う中間拡径上中部形成工程と、
を有し、
前記受け皿及び前記桶状容器は前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであり、前記桶状容器の側壁は前記受け皿の側壁よりも高いことを特徴とする中間拡径部の掘削方法。
【請求項3】
縦孔の孔壁を掘削して前記縦孔の底部に拡底部を形成する拡底部の掘削方法において、
掘削機本体に懸架されて回転する回転軸に設けられた拡翼部の下端に開口面が位置するように前記回転軸の下端部に桶状容器を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記拡底部の上部を形成する拡底上部形成工程と、
前記拡翼部の下端に上面が位置するように前記回転軸の下端部に板状の底蓋部材を取り付けた状態で、前記拡翼部を拡縮して該拡翼部により前記拡底部の下部を形成する拡底下部形成工程と、
を有し、
前記受け皿及び前記底蓋部材は、前記縦孔の孔壁に外周が接触する大きさであることを特徴とする拡底部の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2009−7835(P2009−7835A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170322(P2007−170322)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】