説明

指示計器用免振構造及び携帯用測定機器

【課題】 指示計器に伝わる衝撃、振動を極力低減して、該指示計器の信頼性及び耐久性を向上する。
【解決手段】 指示計器が表面15aに固定される固定板15と、該固定板に対向して配され、該固定板が載置される載置台21を有する第1の載置板16と、固定板と載置台との間に、固定板の表面に直交する方向に対して所定の弾性力を有する第1の弾性体23を介在させた状態で、両者を互いに固定する第1のねじ部20を有する第1の固定手段17と、を備えている指示計器用免振構造6を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動コイル形指示計器等の指示計器に伝わる振動、衝撃を低減する指示計器用免振構造、及び、該指示計器用免振構造を備えた携帯用測定機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な機器や装置には、目的に応じて各種の指示計器類が取り付けられている。例えば、航空機には航空機用指示計器が取り付けられており、車両には車両用指示計器が取り付けられている。また、施設の保守点検を行う設備機器や、生産プラント等にも多くの指示計器が取り付けられている。また、人が携帯して使用する携帯用測定機器にも、指示計器が取り付けられている。例えば、電圧値や抵抗値等を測定するテスタや、放射能を測定する放射能測定器(ガイガーカウンタ)や、楽器の調律を行う調律器等にも、それぞれ専用の指示計器が取り付けられている。
【0003】
これら指示計器は、精密機器であるため正常に作動することができる環境条件が一般的に定められている。例えば、周囲の温度条件や湿度条件等が定められている。特に、衝撃や振動に弱いので、いくつかの対策がとられている。例えば、指示計器が取り付けられる架台等の周辺構造物を防振構造にすることが知られている。具体的には、航空機の計器板等である。また、衝撃を受けた際に破壊されて指示計器に悪影響を与えないようにフロントカバーに工夫をしたものも知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−103257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の指示計器では、以下の課題がまだ残されていた。
即ち、計器板やダッシュボート、地上に設置されている架台等に取り付けられた指示計器の場合には、上述したように衝撃、振動対策が比較的取りやすいが、携帯用測定機器に
取り付けられた指示計器に関しては、携帯用測定機器自身が携帯された状態で使用されるので、いまだ効果的な衝撃、振動対策が取られていない。そのため、携帯用測定機器を使用する際に、使用者がぶつけたり落としたりしないように注意しているのが現状である。
【0005】
特に、近年の小型化に伴って携帯用測定機器自身も小型化されており、携帯性が向上して使用者が容易に持ち運べるようになっている。そのため、使用中や携帯中に誤って落下させたり、ぶつけたりする回数がどうしても多くなってしまい、頻繁に指示計器に対して衝撃、振動を与えてしまうものであった。そのため、指示計器が正確に作動しない恐れがあると共に、耐久性に劣るものであった。
【0006】
しかも携帯用測定機器には、可動コイル形の指示計器が頻繁に使用されている。これは、永久磁石と、永久磁石の作る磁束中に軸受けを介して回転可能に配された鉄心と、鉄心に巻かれた可動コイルと、鉄心に固定された指針とからなる機械式のメータである。この機械式のメータは、微小なトルクを指針に伝える必要があるため、非常に精密な作りとなっている。そのため、衝撃、振動に弱く、上述した不具合が顕著に発生していた。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、指示計器に伝わる衝撃、振動を極力低減して、該指示計器の信頼性及び耐久性を向上することができる指示計器用免振構造、及び、該指示計器用免振構造を備えた携帯用測定機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る指示計器用免振構造は、指示計器が表面に固定される固定板と、該固定板に対向して配され、該固定板が載置される載置台を有する第1の載置板と、前記固定板と前記載置台との間に、固定板の表面に直交する方向に対して所定の弾性力を有する第1の弾性体を介在させた状態で、両者を互いに固定する第1のねじ部を有する第1の固定手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る指示計器用免振構造においては、指示計器が表面に固定されている固定板が、第1の固定手段によって第1の載置板の載置台に固定されている。この際、固定板と載置台とは、第1の弾性体を間に介在させた状態で第1のねじ部によって互いに固定されている。よって、固定板は、第1の弾性体が変形することで、固定板の表面に直交する方向に変位可能とされている。そのため、振動や衝撃が外部から第1の載置板を介して固定板に伝わってきたとしても、固定板の表面に直交する方向の振動や衝撃を第1の弾性体で吸収することができる。つまり、第1の弾性体は、振動や衝撃を受けて変形すると共に、自身の弾性力で振動や衝撃を吸収して減衰させている。従って、固定板に固定された指示計器に対して、振動や衝撃が伝わることを極力低減することができる。その結果、指示計器の信頼性及び耐久性を向上することができる。
【0010】
また、本発明に係る指示計器用免振構造は、上記本発明の指示計器用免振構造において、前記第1の弾性体が、前記第1のねじ部のヘッドと前記固定部との間にも介在されていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る指示計器用免振構造においては、第1の弾性体が、固定板と載置台との間に介在されているだけでなく、固定板と第1のねじ部のヘッドとの間にも介在されている。そのため、第1の載置板は、第1の弾性体によって両側から挟まれた状態となっている。従って、固定板の表面に直交する方向の振動や衝撃をより効果的に吸収して減衰させることができる。
【0012】
また、本発明に係る指示計器用免振構造は、上記本発明の指示計器用免振構造において、前記第1の載置板に対向して配され、該第1の載置板が載置される第2の載置板を備え、前記第1の載置板が、前記固定部の表面に平行な方向に対して所定の弾性力を有する第2の弾性体を介して、前記第2の載置板に固定されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明に係る指示計器用免振構造においては、第1の固定手段を介して固定板が固定されている第1の載置板が、第2の載置板上に載置されている。この際、第1の載置板は、第2の弾性体を介して第2の載置板に固定されている。そのため、振動や衝撃が外部から伝わってきたとしても、固定板の表面に平行な方向の振動や衝撃を第2の弾性体で吸収することができる。つまり第2の弾性体は、振動や衝撃を受けて変形すると共に、自身の弾性力で振動や衝撃を吸収して減衰させている。従って、固定板の表面に平行な方向の振動や衝撃が第1の載置板に伝わり難い。よって、固定板の表面に平行な方向の振動や衝撃が、固定板に固定された指示計器に伝わることを極力低減させることができる。
つまり、第1の弾性体及び第2の弾性体によって、固定板の表面に直交する方向及び平行な方向の2方向の振動及び衝撃を吸収することができる。従って、指示計器の信頼性及び耐久性をさらに向上することができる。
【0014】
また、本発明に係る指示計器用免振構造は、上記本発明の指示計器用免振構造において、前記第1の載置板と前記第2の載置板とを互いに固定する第2のねじ部を有する第2の固定手段を備え、前記第2の弾性体が、前記第2のねじ部の外周面と前記第1の載置板との間に介在されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る指示計器用免振構造においては、第1の載置板と第2の載置板とが、第2のねじ部によって互いに固定されている。この際、第2のねじ部の外周面と第1の載置板との間には、第2の弾性体が介在されている。よって、第1の載置板は、第2の弾性体が変形することで、固定板の表面に平行な方向に変位可能とされている。従って、固定板の表面に平行な方向の振動及び衝撃を確実に吸収して減衰させることができる。
【0016】
また、本発明に係る携帯用測定機器は、上記本発明のいずれかの指示計器用免振構造と、前記固定板、前記第1の載置板及び前記第2の載置板を内部に収納する持ち運び可能なケース本体と、該ケース本体の表面に設けられ、前記指示計器を外部から視認させる開口部と、前記ケース本体の表面に設けられ、前記指示計器を作動させるスイッチと、を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る携帯用測定機器においては、使用する場所までケース本体を持ち運びした後、スイッチをONにする。これにより、指示計器を作動させることができ、開口部を通して指示計器を視認しながら各種の測定を行うことができる。
特に、指示計器が指示計器用免振構造を介してケース本体内に収納されているので、測定中或いは持ち運び中に何らかの振動を受けたり、落下等により衝撃を受けたりしたとしても、これら振動や衝撃が指示計器に伝わり難い。従って、測定精度が向上して携帯用測定機器自体の信頼性を高めることができると共に、耐久性を向上することができる。
【0018】
また、本発明に係る携帯用測定機器は、上記本発明の携帯用測定機器において、前記第2の載置板が、前記ケース本体の一部を兼ねていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る携帯用測定機器においては、第2の載置板がケース本体の一部を兼ねているので、構成の簡略化を図ることができると共に、ケース本体のさらなる小型化、薄型化を図って携帯性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る指示計器用免振構造によれば、外部から振動や衝撃が伝わってきたとしても、これら振動や衝撃を吸収して減衰させることができ、指示計器に伝わることを極力低減できる。よって、指示計器の信頼性及び耐久性を向上することができる。特に、機械式メータである可動コイル形の指示計器に対して効果的である。
また、本発明に携帯用測定機器によれば、上述した指示計器用免振構造を備えているので、測定機器自体の信頼性及び耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る携帯用測定機器の第1実施形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、本実施形態では、携帯用測定機器の一例として、ギターや管楽器等の各種の楽器の調律を行う調律器を例に挙げて説明する。
【0022】
本実施形態の調律器1は、図1に示すように、指示計器2及び後述する指示計器用免振構造6を内部に収納するケース本体3と、ケース本体3の表面に設けられた開口部4及びスイッチ5と、を備えている。
ケース本体3は、図2及び図3に示すように、プラスチックやアルミ等の金属材料により薄型の箱状に形成されており、重ね合わせ可能な上部ケース10と下部ケース11とで構成されている。2つのケース10、11のうち下部ケース11には、一端側に板状の部材を挟むことができるクリップ板11aが取り付けられている。そのため本実施形態の調律器1は、図1に示すように、クリップ板11aを介して譜面台SのLアングルS1に取り付けることができるようになっている。
【0023】
上記開口部4は、図3に示すように、指示計器2を外部から視認させる開口であり、上部ケース10の略中央付近に取り付けられている。また、上記スイッチ5は、指で押圧可能なスイッチであり、上部ケース10の下側に取り付けられている。なお、本実施形態では、6個のスイッチ5が一列に並んだ状態で取り付けられている場合を例にしている。これらスイッチ5をONにすることで、調律器1としての様々な機能を作動させるようになっているが、そのうちの1つが図示しない制御部を介して指示計器2を作動させるスイッチとなっている。
【0024】
上記指示計器2は、可動コイル形指示計器である機械式のメータであって、永久磁石と、該永久磁石の作る磁束中に軸受を介して回転可能に配された鉄心と、該鉄心に巻かれた可動コイルと、鉄心に固定された指針2aとから構成されている。なお、永久磁石、鉄心及び可動コイルに関しては、図示を省略している。このように構成された指示計器2は、後述するメータフレーム(固定板)15の表面15aに固定されている。
【0025】
上記指示計器用免振構造6は、図2及び図3に示すように、メータフレーム15と、メータカバー(第1の載置板)16と、第1の固定手段17と、上述した上部ケース10と、第2の固定手段18とを備えている。なお、本実施形態では、上部ケース10が指示計器用免振構造6を構成する第2の載置板を兼ねている場合を例にしている。
メータフレーム15は、開口部4を通して指針2aが視認できるように表面側が上部ケース10側に向いた状態で配置されている。また、メータフレーム15の表面には、図1に示すように目盛り15bが記されている。また、メータフレーム15には、ねじ部20がそれぞれ挿通される挿通孔15cが両側の2箇所に形成されている。
【0026】
上記メータカバー16は、透明な材料で形成されており、メータカバー16が収納される凹部16aと、該凹部16aの両側から外方に向けてそれぞれ延びたフランジ部16bとを備えている。また、凹部16a内には、メータフレーム15を収納した際に該メータフレーム15が載置される載置台21が設けられている。この載置台21は、上述した挿通孔15cに対向するように設けられており、略中心には上記ねじ部20が螺合されるねじ孔21aが形成されている。また、2つのフランジ部16bには、後述するねじ部31が挿通される挿通孔16cがそれぞれ2箇所ずつ形成されている。
【0027】
メータフレーム15と載置台21との間には、メータフレーム15側から、ワッシャ22と、コイルバネ(第1の弾性体)23と、ワッシャ24とが順に介在されている。そして、ねじ部20は、これら2つのワッシャ22、24及びコイルバネ23を介在させた状態で、図4に示すように載置台21のねじ孔21aに螺合されている。これにより、メータフレーム15及びメータカバー16は、ねじ部20によって互いに固定されている。即ち、ねじ部20、2つのワッシャ22、24及びコイルバネ23は、上記第1の固定手段17として機能する。
なお、コイルバネ23は、メータフレーム15の表面15aに直交する方向(以下、縦方向Xと称する)に対して所定の弾性力(バネ力)を有した状態になっている。
【0028】
またメータカバー16は、図2及び図3に示すように、上部ケース10の表面に対向するように配されており、上部ケース10に設けられた4つの載置台30上にフランジ部16bが載ることで、上部ケース10に載置されるようになっている。
この4つの載置台30は、開口部4の周囲において、2つのフランジ部16bに形成された4つの挿通孔16cに対向するように設けられている。また、これら載置台30には、上記載置台21と同様に略中心にねじ部31が螺合されるねじ孔30aが形成されている。また、載置台30とフランジ部16bとの間、及び、フランジ部16bとねじ部31との間には、それぞれワッシャ32、33が介在されている。
そしてねじ部31は、2つのワッシャ32、33を介在させた状態で、図5に示すように載置台30のねじ孔30aに螺合されている。これにより、メータカバー16及び上部ケース10は、ねじ部31によって互いに固定されている。即ち、ねじ部31及び2つのワッシャ32、33は、上記第2の固定手段18として機能する。
【0029】
ところで、上述したフランジ部16bの挿通孔16cには、図3及び図5に示すように、ゴム等の弾性材料からなるブッシング(第2の弾性体)35が取り付けられている。このブッシング35は、突起部36とリング部37とから構成されており、フランジ部16bを両側から挟む形で挿通孔16cに取り付けられている。
具体的に説明すると、突起部36は、挿通孔16cの径より大きい外径の大径部36aと、挿通孔16c内に挿通される小径部36bとから一体的に形成されている。また、突起部36の中心には、ねじ部31の径より若干大きい径の貫通孔36cが大径部36a及び小径部36bを貫くように形成されている。また、リング部37は、大径部36aと同じ外径で形成され、中心には上記貫通孔36cと同じサイズの貫通孔37aが形成されたものである。
【0030】
つまり、ねじ部31とメータカバー16との間にはブッシング35が介在された状態となっている。これにより、メータカバー16は、メータフレーム15の表面15aに平行な方向(以下、横方向Yと称する)に対して所定の弾性力を有するブッシング35を介して上部ケース10に固定された状態となっている。
しかも、このブッシング35は、ねじ部31のヘッド31aとメータカバー16との間、及び、メータカバー16と上部ケース10との間にも介在された状態となっている。そのため、メータカバー16は、上記横方向Yだけでなく、縦方向Xに対しても所定の弾性力を有するブッシング35を介して上部ケース10に固定された状態となっている。
【0031】
次に、このように構成された調律器1を使用する場合について説明する。
まず、図1に示すように、下部ケース11に取り付けられているクリップ板11aを介して調律器1を譜面台Sに固定する。また、楽器に接続されている図示しないジャックをケース本体3に取り付ける。そして、上部ケース10に設けられたスイッチ5をONにして制御部を介して指示計器2を作動させる。すると、指示計器2は、楽器から入力された信号のピッチを測定すると共に、自身のもつ基準ピッチとの偏差を表示させるように指針2aを動かす。これにより使用者は、調律を行うことができる。
特に、調律器1が譜面台Sに取り付けられているので、使用者は譜面台Sに置かれた図示しない譜面を見ながら楽器を演奏している最中に、同時に指示計器2を視認することができる。そのため、演奏中であっても、容易に調律を行うことができる。
【0032】
ここで、調律器1を使用中に誤って落下させてしまった場合、或いは、ケース本体3を持ち運びしている最中に誤って落下させてしまった場合について説明する。
調律器1を落下させてしまった場合には、ケース本体3、メータカバー16及びメータフレーム15を介して振動や衝撃が指示計器2に伝わってくる。この際、メータフレーム15は、図4に示すように、コイルバネ23が変形することで縦方向Xに変位可能とされているので、振動や衝撃が伝わってきたとしても、上記方向の振動や衝撃をコイルバネ23で吸収することができる。つまり、コイルバネ23は、振動や衝撃を受けて変形すると共に、自身の弾性力で振動や衝撃を減衰させている。従って、メータフレーム15に固定された指示計器2に対して、上記縦方向Xの振動や衝撃が伝わることを極力低減することができる。
【0033】
また、ねじ部31とメータカバー16との間には、図5に示すように、ブッシング35、具体的には突起部36の小径部36bが介在されているので、メータカバー16は横方向Yに変位可能とされている。そのため、振動や衝撃がこの方向に伝わってきたとしても、ブッシング35で吸収することができる。つまり、ブッシング35は、上記コイルバネ23と同様に振動や衝撃を受けて変形すると共に、自身の弾性力で振動や衝撃を吸収して減衰させている。従って、横方向Yの振動や衝撃がメータカバー16に伝わり難く、結果的にこの方向の振動や衝撃が指示計器2に伝わることを極力低減することができる。
【0034】
つまり、コイルバネ23及びブッシング35によって、互いに直交する縦方向X及び横方向Yの2方向の振動や衝撃を吸収することができる。しかも、本実施形態のブッシング35は、ねじ部31とメータカバー16との間に介在されているだけでなく、ねじ部31のヘッド31aとメータカバー16との間、及び、メータカバー16と上部ケース10との間にも介在されている。そのため、縦方向Xの振動や衝撃に関してもブッシング35で吸収することができ、この方向の振動や衝撃をメータカバー16に伝わり難くしている。よって、縦方向Xの振動や衝撃が指示計器2に伝わってしまうことを効果的に防止することができる。
【0035】
上述したように、本実施形態の調律器1によれば、指示計器用免振構造6を備えているので、機械式メータである指示計器2に振動や衝撃が伝わり難く、指示計器2の不具合や故障を防止することができる。従って、指示計器2の信頼性及び耐久性を向上することができる。
また、異なる2方向の振動を吸収することができるので、複雑な振動にも対応することができる。また、調律器1の使用状態が変化して、対策を必要とする振動の種類が変わったとしても、所望の共振周波数を有するコイルバネ23やブッシング35に交換するだけで対応することが可能である。従って、調律器1の内部構造を機械的に変更する必要がないので、取り扱いに優れている。更に、本実施形態のブッシング35は、突起部36及びリング部37という2つのパーツに分かれている。そのため、ブッシング35全体の共振点を容易に下げることができ、振動対策を取り易い。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る指示計器用免振構造及び携帯用測定機器の第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態ではメータフレーム15とメータカバー16との間にコイルバネ23を介在させたが、第2実施形態ではねじ部20のヘッド20aとメータカバー16との間にさらにコイルバネ23を付加する点である。
【0037】
即ち、本実施形態の指示計器用免振構造40は、図6に示すように、ねじ部20のヘッド20aとメータカバー16との間に介在されたコイルバネ23を有している。なお、コイルバネ23の両側には、ワッシャ22、24が配されている。
このように構成された指示計器用免振構造40においては、メータカバー16がコイルバネ23によって両側から挟まれた状態になっている。よって、縦方向Xの振動や衝撃をより効果的に吸収して減衰させることができる。従って、指示計器2の信頼性及び耐久性をより向上させることができる。
【0038】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態において、メータフレーム15に伝わる振動や衝撃を吸収する弾性部材として、コイルバネ23を採用したが、コイルバネ23に限定されるものではない。例えば、ゴム等で板状に形成した部材でも構わない。
例えば、メータフレーム15とメータカバー16との間に介在されるコイルバネ23を、図7に示すように、ゴム等の弾性材料でワッシャ状に形成したリング部41に変えても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。なお、ねじ部20のヘッド20aとメータフレーム15との間のコイルバネ23をリング部41に変えても構わないし、両方のコイルバネ23をリング部41に変えても構わない。いずれの場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る指示計器用免振構造及び携帯用測定機器の第3実施形態について、図8から図10を参照して説明する。なお、第3実施形態において第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、メータカバー16と上部ケース10とが、ブッシング35を介在させた状態で第2の固定手段18により固定されていたが、第3実施形態では、メータカバー16はコイルバネ(第2の弾性体)51で位置決めされた状態で上部ケース10に固定されている点である。
【0040】
即ち、本実施形態の指示計器用免振構造50は、図8及び図9に示すように、メータカバー16が単に上部ケース10上に載置された状態となっている。また、本実施形態のメータカバー16には、フランジ部16bの代わりに2枚のプレート52が取り付けられている。このプレート52は、横方向Yに面が向くように取り付けられている。そしてプレート52の両面には、図10に示すように、面に垂直な方向に延びた円柱状の突起部52aが形成されている。
【0041】
また、上部ケース10には、一定距離を空けてプレート52の両面にそれぞれ対向するように、1枚のプレート52に対して2枚の押さえ板53が取り付けられている。そして、プレート52と2枚の押さえ板53との間には、上記コイルバネ51が介在されている。つまりコイルバネ51は、横方向Yに対して所定の弾性力(バネ力)を有した状態になっている。また、プレート52は、2つのコイルバネ51で挟まれた状態となっており、2枚のプレート52の略中間付近で釣り合いが保たれた状態となっている。よってメータフレーム15は、コイルバネ51によって、横方向Yに対して位置決めがされた状態となっている。
【0042】
なお、コイルバネ51内には、プレート52に取り付けられた突起部52aが挿入された状態となっている。これにより、コイルバネ51の姿勢が安定している。そのため、プレート52と押さえ板53との間に、コイルバネ51を長期的に安定した状態で介在させることができるようになっている。
【0043】
このように構成された指示計器用免振構造50においては、振動や衝撃が伝わってきた際に、コイルバネ51が変形するので、横方向Yの振動や衝撃を吸収して減衰させることができる。従って、この方向の振動や衝撃がメータカバー16に伝わり難い。特に、本実施形態の場合には、メータカバー16が2つのコイルバネ51によって挟まれた状態となっているので、第1実施形態に比べて、上記横方向Yの振動や衝撃を吸収することができる。
【0044】
ここで、図1に示すように、調律器1を譜面台Sに取り付けた状態で使用しているときに誤って落下させてしまった場合には、取り付け状態の姿勢を考慮すると、スイッチ5が取り付けられている側から床面に落下する可能性が高い。つまり、横方向Yの振動や振動が、ケース本体3には伝わってくる。本実施形態の指示計器用免振構造50によれば、この方向の振動や衝撃をより吸収できるので、落下による不具合を極力防止することができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上記各実施形態では、携帯用測定機器の一例として調律器1を例に挙げたが、調律器1に限定されるものではなく、手軽に持ち運び可能な携帯用の測定機器であれば構わない。例えば、電圧値や抵抗値等を測定するテスタでも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る携帯用測定機器及び指示計器用免振構造の第1実施形態を示す図であって、譜面台に取り付けられている状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す携帯用測定機器の斜視図であって、下部ケースと上部ケースとを離間させた状態の斜視図である。
【図3】図1に示す携帯用測定機器の分解斜視図である。
【図4】図2に示す断面矢視A−A図である。
【図5】図2に示す断面矢視B−B図である。
【図6】本発明に係る指示計器用免振構造の第2実施形態を示す断面図である。
【図7】図7に示す指示計器用免振構造の変形例を示す図である。
【図8】本発明に係る指示計器用免振構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8に示す指示計器用免振構造を上方から見た図である。
【図10】図9に示す断面矢視C−C図である。
【符号の説明】
【0048】
1 調律器(携帯用測定機器)
2 指示計器
3 ケース本体
4 開口部
5 スイッチ
6、40、50 指示計器用免振構造
10 上部ケース(第2の載置板)
15 メータフレーム(固定板)
16 メータカバー(第1の載置板)
17 第1の固定手段
18 第2の固定手段
20 ねじ部(第1のねじ部)
21、30 載置台
23 コイルバネ(第1の弾性体)
31 ねじ部(第2のねじ部)
35 ブッシング(第2の弾性体)
51 コイルバネ(第2の弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示計器が表面に固定される固定板と、
該固定板に対向して配され、該固定板が載置される載置台を有する第1の載置板と、
前記固定板と前記載置台との間に、固定板の表面に直交する方向に対して所定の弾性力を有する第1の弾性体を介在させた状態で、両者を互いに固定する第1のねじ部を有する第1の固定手段と、を備えていることを特徴とする指示計器用免振構造。
【請求項2】
請求項1に記載の指示計器用免振構造において、
前記第1の弾性体は、前記第1のねじ部のヘッドと前記固定部との間にも介在されていることを特徴とする指示計器用免振構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の指示計器用免振構造において、
前記第1の載置板に対向して配され、該第1の載置板が載置される第2の載置板を備え、
前記第1の載置板は、前記固定部の表面に平行な方向に対して所定の弾性力を有する第2の弾性体を介して、前記第2の載置板に固定されていることを特徴とする指示計器用免振構造。
【請求項4】
請求項3に記載の指示計器用免振構造において、
前記第1の載置板と前記第2の載置板とを互いに固定する第2のねじ部を有する第2の固定手段を備え、
前記第2の弾性体は、前記第2のねじ部の外周面と前記第1の載置板との間に介在されていることを特徴とする指示計器用免振構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の指示計器用免振構造と、
前記固定板、前記第1の載置板及び前記第2の載置板を内部に収納する持ち運び可能なケース本体と、
該ケース本体の表面に設けられ、前記指示計器を外部から視認させる開口部と、
前記ケース本体の表面に設けられ、前記指示計器を作動させるスイッチと、を備えていることを特徴とする携帯用測定機器。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯用測定機器において、
前記第2の載置板は、前記ケース本体の一部を兼ねていることを特徴とする携帯用測定機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−196987(P2008−196987A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33144(P2007−33144)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】