説明

指紋画像取得装置

【課題】指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに製造コストを安価に抑えることを課題とする。
【解決手段】施設の利用者の指を載置する指紋載置部と、この指紋載置部近傍に利用者IDのバーコードを表示するコード表示部と、撮像部に対して光路分離部および非光路分離部を含むように配設されるプリズムとを有するプリズムキー30を利用者に携帯させる。その上で、プリズムキー30がアドオンホルダー20付きの玄関子機10に装着された場合に、指紋載置部に載置された利用者の指紋の凹部の反射光を光路分離部で分離して凸部の反射光を透過させるとともにコード表示部に表示されたバーコードの反射光を非光路分離部で透過させ、凸部の反射光およびバーコードの反射光を玄関子機10の撮像部の撮像画角に収容させるようにプリズムキー30、アドオンホルダー20及び玄関子機10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の指紋を撮像する撮像部が本体部に設けられ、撮像部による撮像処理によって利用者の指紋画像を取得する指紋画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティの強化等の理由から扉等の解錠もしくは施錠と解錠を出入りする者の指紋に基づいて指紋認証を行う指紋錠装置が利用される機会が増大している。
【0003】
例えば、特許文献1には、指紋識別用光学部を構成するミラー、レンズおよびCCD部を可動させることにより、指紋画像だけでなく人物画像を併せて撮像させる人物像撮像方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、利用者が携帯するプリズムキーに利用者IDを示すIDコードを印字しておき、このプリズムキーが撮像部を有する本体部に装着された状態で指が載置されると、IDコード及び指紋の画像を撮像する認証装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−309447号公報
【特許文献2】特開2008−204394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1では、入力指紋画像と登録指紋画像の認証を行う場合に、どの登録指紋画像と比較すべき入力指紋画像であるのかを特定する術がないので、入力指紋画像に対して複数の登録指紋画像を認証する1対N認証を行わねばならず、指紋認証結果を得るまでのレスポンスが低下してしまうという問題がある。
【0007】
また、上記の特許文献2は、利用者が載置した指の指紋および登録指紋画像に対応付けられたIDコードをプリズムに付加するために必要な製造工程が煩雑になったり、それ専用の機器が必要となるので、製造コストが高価なものになってしまうという問題がある。
【0008】
すなわち、IDコードをプリズムキーに付加するためには、IDコードをプリズムに接着剤等を用いて接着したり、或いはプリズム自体にIDコードを印刷または刻印したりする必要がある。そして、前者の場合には、製造時にIDコードの印刷物に接着剤を塗布する工程、接着剤を乾燥させるための工程が必要となり、また、後者の場合には、レーザーマーカーなどの高価な機器が必要であり、さらには、IDコードを刻印する工程が必要になるので、製造コストがかさんでしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術による課題(問題点)を解消するためになされたものであり、指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに、製造コストを安価に抑えることができる指紋画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る指紋画像取得装置は、利用者の指紋を撮像する撮像部が本体部に設けられ、前記撮像部による撮像処理によって利用者の指紋画像を取得する指紋画像取得装置であって、前記本体部に対して着脱可能に形成された生体載置手段は、前記利用者の指を載置する生体載置部と、前記生体載置部近傍に前記利用者に予め割り当てられたIDコードを表示するコード表示部と、前記生体載置部に載置された物体の反射光をその入射角に応じて分離すると共に、前記コード表示部に表示されるIDコードの反射光を透過するように配設されるプリズムとを有し、前記生体載置手段が前記本体部に装着された場合に、前記生体載置部に載置された利用者の指の凹凸を含んで構成される紋様面のうち凸部の反射光に比較して拡散度合いが少ない凹部の反射光を分離して凸部の反射光を透過させるとともに前記コード表示部に表示されたIDコードの反射光を透過させ、前記凸部の反射光および前記IDコードの反射光を前記撮像部の撮像画角に収容させるように前記撮像部に対して配設したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る指紋画像取得装置は、上記の発明において、前記利用者の人物画像を撮像するインターホン用の撮像装置を前記撮像部として兼用することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る指紋画像取得装置は、上記の発明において、前記本体部に着脱可能に形成されるとともに前記生体載置手段を着脱可能に形成される追加用ホルダーを有し、前記追加用ホルダーが装着された本体部に装着された状態で当該追加用ホルダーに前記生体載置手段が装着された場合に、前記凸部の反射光および前記IDコードの反射光を前記撮像部の撮像画角に収容するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、利用者の指を載置する生体載置部と、生体載置部近傍に前記利用者に予め割り当てられたIDコードを表示するコード表示部と、生体載置部に載置された物体の反射光をその入射角に応じて分離すると共にコード表示部に表示されるIDコードの反射光を透過するように配設されるプリズムと有する生体載置手段を設け、生体載置手段が本体部に装着された場合に、生体載置部に載置された利用者の指の凹凸を含んで構成される紋様面のうち凸部の反射光に比較して拡散度合いが少ない凹部の反射光を分離して凸部の反射光を透過させるとともにコード表示部に表示されたIDコードの反射光を透過させ、凸部の反射光およびIDコードの反射光を本体部の撮像部の撮像画角に収容させるように撮像部に対して配設したので、良質な指紋画像およびIDコード画像を1度の撮像処理で得ることができ、指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに、認証精度を安定させることが可能になるという効果を奏する。また、プリズムとその外装でIDコードを表す印刷物を挟持するように構成すれば、製造時においては、IDコードを付加するための工程をプリズムとその外装とを組み立てる工程に含めることができ、特別な機器を不要化するとともに製造工程を簡略化する結果、製造コストを安価に抑えることができる。
【0014】
また、本発明によれば、利用者の人物画像を撮像するインターホン用の撮像装置を利用者の指紋画像を撮像する撮像部として兼用するように構成したので、既存のインターホンシステムに指紋認証システムを上乗せすることが可能になるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明によれば、本体部に着脱可能に形成されるとともに生体載置手段を着脱可能に形成される追加用ホルダーを設け、追加用ホルダーが装着された本体部に装着された状態で追加用ホルダーに生体載置手段が装着された場合に、凸部の反射光およびIDコードの反射光を撮像部の撮像画角に収容するように構成したので、人物撮像を行う場合と指紋撮像を行う場合とで光学系の配置を変えるためにカメラ、レンズやミラーを駆動させる複雑な機構部を設けずとも、インターホン用の撮像装置で人物画像に併せて指紋画像を撮像することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る指紋画像取得装置の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
まず、本実施例に係る指紋画像取得装置を含むインターホンシステムの概要を説明する。このインターホンシステムは、施設の出入口の外側にカメラ付きのインターホンを玄関子機として設置するとともに該インターホンカメラによって撮像される利用者の人物画像を親機で表示させるものであり、とりわけ人物撮像用のインターホンカメラを指紋撮像用に兼用させる仕組みを有するものである。
【0018】
図1は、本実施例に係るインターホンシステムの構成を示すシステム構成図である。同図に示すように、インターホンシステム1は、玄関子機10と、アドオンホルダー20と、プリズムキー30と、親機40と、指紋認証装置50と、管理パネル60と、電気錠コントローラ70と、電気錠80とを有する。
【0019】
玄関子機10は、施設の出入口(玄関)の外側に設置されるカメラ付きインターホンである。例えば、図2に示す例では、施設の外側から内部の人物を呼び出すための呼出ボタン11が付設されており、呼出ボタン11の押下操作を受け付けると、インターホンカメラ13に電源を供給して扉の解錠を要求する人物を撮像させ、該撮像させた人物の映像(例えば、顔画像を含む人物の映像)を表す映像信号を親機40に送信する。なお、ここでは、映像信号だけを送信することとしているが、実際には玄関子機10にマイク等の集音器が設けられており、訪問者の発話音等の音声信号を併せて親機40に通知される。
【0020】
アドオンホルダー20は、利用者が携帯しているプリズムキー30をインターホンカメラ13近傍に固定するためのホルダーである。例えば、図2に示すように、玄関子機10の正面の一部、天面および背面の一部を被覆する形状に形成されており、このアドオンホルダー20を玄関子機10の天面に覆い被せることにより、図示のように、玄関子機10の天面でアドオンホルダー20が固定支持され、アドオンホルダー付きの玄関子機(以下、ホルダー付き玄関子機と言う)10でプリズムキー30を装着可能な状態になる。
【0021】
つまり、本実施例では、利用者の人物画像を撮像することを基本用途とするインターホンカメラ13を利用者の指紋の撮像にも用いることができるように、アドオンホルダー20を玄関子機10に追加的に設置させることとした。
【0022】
これによって、上記従来技術で述べた特許文献1のように、人物撮像を行う場合と指紋撮像を行う場合とで光学系の配置を変えるためにカメラ、レンズやミラーを駆動させる複雑な機構部を設けずとも、インターホンカメラ13で人物画像に併せて指紋画像を撮像することが可能になる。また、単独でプリズムキー30を着脱可能な玄関子機を導入し直す設備改変を行わずとも、利用者が携帯するプリズムキー30をインターホンカメラ13近傍に固定することができる。
【0023】
なお、ここでは、玄関子機10に覆い被せるアドオンホルダー20を例示したが、玄関子機10の側面を挟み込む機構を設けることによりアドオンホルダー20をインターホンカメラ13近傍に支持させるなど他の形態により追加設置することとしてもかまわない。
【0024】
プリズムキー30は、施設の利用者(例えば、家の場合には家族、企業の場合には従業員)にあらかじめ付与される施設の鍵である。例えば、図3(a)及び(b)に示すプリズムキー30A及び30Bのように、アドオンホルダー20の形状(図4(a)参照)に咬合する型に形成されており、プリズムキー30をホルダー付き玄関子機10に咬合して固定装着された場合(図4(b)参照)に、後述する光路分離法を用いて得られた指紋画像が玄関子機10に入力されるように構成される。
【0025】
すなわち、本実施例では、ホルダー付き玄関子機10にプリズムキー30が装着されていない場合(図5(a)参照)に、訪問者(利用者及びそれ以外を含む不特定の人物)の人物画像を撮像し、また、ホルダー付き玄関子機10にプリズムキー30が装着された状態で指紋が載置された場合(図5(b))に、利用者の指紋画像を撮像することで、1つのインターホンカメラ13で人物画像および指紋画像の両方を撮像することとした。
【0026】
また、プリズムキー30では、指紋認証装置50に登録されている登録指紋画像のうちいずれの登録指紋画像を用いて入力指紋画像と照合すべきかを指紋画像の入力時に特定するために、登録指紋画像と紐付けられた利用者IDを表すバーコードをカバーとプリズム間に挟持することとし、利用者の指紋画像とともにバーコードをインターホンカメラ13に撮像させることとした。
【0027】
例えば、図3の(a)に示すように、プリズムキー30Aで指紋が載置されるプリズム31Aの載置面と同一平面上の表面に利用者IDを表すバーコードの印刷物を載置するようにしてもよいし、また、図3の(b)に示すように、プリズムキー30Bのプリズム31Bを保護するカバー32Bの裏面(プリズム31Bを包む面)であり、かつプリズム31Bの表面と接する部分の面にバーコードの印刷物を挟持するようにしてもかまわない。
【0028】
このように、プリズム31とその外装であるカバーで利用者IDを表すバーコードの印刷物を挟み込むことにより固定支持することにより、製造時においては、IDコードを付加するための工程をプリズム31とカバーとを組み立てる工程に含めることができ、特別な機器を不要化するとともに製造工程を簡略化する結果、製造コストを安価に抑えることができる。
【0029】
親機40は、施設の内側に配設される玄関子機10の管理装置である。具体的には、インターホンの親機としての機能を基本機能としており、玄関子機10から受信した映像信号および音声信号を表示出力および音声出力することにより、訪問者の人物画像および発話音から施設内部に招き入れてよい人物であるかを人に判断させ、施設内部に所在する人物から解錠操作を受け付けた場合に限り、電気錠コントローラ70に電気錠80を解錠するように指示を行う。
【0030】
また、親機40は、アドオンホルダー20、プリズムキー30、指紋認証装置50及び管理パネル60をオプションとしてインターホンシステム1に追加することにより、施設の利用者の指紋認証を行う機能を応用機能として発揮することができる。
【0031】
すなわち、親機40は、玄関子機10から指紋及びバーコードを含む画像を映像信号として受信した場合には、当該映像信号を指紋認証装置50に送信して指紋認証を依頼し、指紋認証装置50による認証結果の応答に基づき、電気錠80の解錠を電気錠コントローラ70に指示する。このとき、指紋認証装置50によって利用者の指紋であると認証された場合には、その利用者の属性情報(例えば、名前や所属など)を表示出力または音声出力することにより報知し、また、利用者の指紋ではないと認証された場合には、第三者によって解錠操作が行われている旨を報知することもできる。
【0032】
指紋認証装置50は、親機40から受信した映像信号を用いて、指紋認証を行う装置である。具体的には、親機40から受信したNTSC信号等の映像信号をA/D変換し、該変換したデジタル信号からなる指紋及びバーコードを含む画像から指紋画像とバーコード画像を区別して切り出し、該切り出したバーコード画像から該バーコード画像が表す利用者IDを解析する。そして、管理パネル60での操作を経て予め登録されている登録指紋画像及び利用者IDの対応関係を参照して、バーコード画像から解析された利用者IDに対応する登録指紋画像を認証対象とする登録指紋画像として特定するとともに、先に切出し処理された指紋画像を入力指紋画像として特定し、登録指紋画像と入力指紋画像の照合を行い、その照合結果を親機40に応答する。
【0033】
管理パネル60は、指紋認証装置50に対する操作を受け付ける装置であり、具体的には、指紋認証装置50に記憶管理される登録指紋画像の登録(追加を含む)及び削除を行う。
【0034】
なお、ここでは、人物画像の表示機能しか持たない既存のインターホンシステムを効率的に拡張する観点から、指紋認証装置50及び管理パネル60を後付けする例を説明したが、かかる拡張を行う必要がない場合等には、指紋認証装置50及び管理パネル60の機能を製品出荷時から親機40に持たせることとしてもよい。
【0035】
電気錠コントローラ70は、施設の出入口等に設けられた扉の電気錠80の施解錠を制御するコントローラである。具体的には、親機40からの解錠指示を受け付けた場合に、電気錠80を解錠し、その後、扉が開放されてから閉められたことを赤外線センサやスイッチ等により検知した場合に、電気錠80を自動的に施錠する。
【0036】
ここで、本実施例は、利用者の指の指紋および登録指紋画像に対応付けられたIDコードを1度に撮像する場合に、良質な指紋およびIDコードの画像を撮像する仕組みにその特徴がある。
【0037】
すなわち、本実施例では、施設の利用者の指を載置する指紋載置部と、この指紋載置部近傍に利用者IDのバーコードを表示するコード表示部と、指紋載置部に載置された物体の反射光をその入射角に応じて分離すると共にコード表示部に表示されるバーコードの反射光を透過するように配設されるプリズムとを有するプリズムキー30を利用者に携帯させることとした。
【0038】
その上で、本実施例では、プリズムキー30がホルダー付き玄関子機10に装着された場合に、インターホンカメラ13に対して、指紋載置部に載置された利用者の指の紋様面のうち凸部の反射光に比較して拡散度合いが少ない凹部の反射光を分離して凸部の反射光を透過するとともにコード表示部に表示されたバーコードの反射光を透過し、凸部の反射光およびバーコードの反射光をインターホンカメラ13の撮像画角に収容する位置関係を有するようにプリズムキー30をホルダー付き玄関子機10に咬合させることとした。
【0039】
例えば、図6に示すように、プリズム31の形状を直角プリズム(直角二等辺三角形)とし、その斜辺の平面を載置面として撮像範囲をA−Bと定めた時には、撮像範囲A−BのうちB−Sの範囲がプリズム上面で光を反射させる光路分離を行う範囲となり、S−Aの範囲が非光路分離を行う範囲(光が透光する範囲)となるような角度に設置したプリズム31を構成する。
【0040】
このように、プリズムキー30の装着時には、プリズムの上面に所在する被写体の反射光の角度が所定の角度以下である場合には反射する一方で所定の角度を超える場合には透光する光路分離角度範囲と、プリズムの上面に所在する被写体の反射光を透光する非光路分離角度範囲とが図示の如くなる位置関係に、プリズムキー30がホルダー付き玄関子機10に固定装着される。
【0041】
すなわち、指紋の凹部の反射光の入射角を90度とした時には、載置面上の空気の屈折率は1.0であり、プリズム(ガラス)の屈折率は1.5147・・・であるので、指紋の凹部の反射光の到達限界角度(反射と透過の境界角度である光路分離角度)は、プリズム31の表面で屈折した後には41.3度と定まる。なお、図6の例では、凹部の反射光を可及的に集光しない安全代を設定して光路分離角度を41.6度としている。
【0042】
ここで、インターホンカメラ13の撮像光学系が図7に示す受光素子13a及びレンズ13bを含んで構成され、図示のように撮像画角26度の性能を有するとした時には、図8に示すように、少なくとも撮像画角が撮像範囲A−Bを含む位置にプリズムキー30を装着できるようにプリズムキー30及びアドオンホルダー20を咬合させる必要がある。
【0043】
さらに、指紋の凹部の反射光をより完全に除外する観点から言えば、光路分離角度範囲の一端であるS点の光路分離角度の線X1よりもX2寄りにインターホンカメラ13の光軸が右側にあることが好ましい。
【0044】
しかしながら、指紋画像及びバーコード画像の両方とも良質な画像を1度の撮像機会で得るためには、コード表示部31aに表示されたバーコードの反射光を撮像画角に収める必要があるので、インターホンカメラ13の光軸がS点の光路分離角度の線X1と重なる位置にプリズムキー30を装着できるようにプリズムキー30及びアドオンホルダー20を咬合させるのが好ましい。
【0045】
このようにしてプリズム31を構成した場合には、図8に示すように、光路分離角度の範囲に含まれるように指紋載置部31bをプリズム31に形成するとともに、非光路分離角度の範囲に含まれるようにコード表示部31aをプリズム31に形成する。
【0046】
このような構成の下、ホルダー付き玄関子機10にプリズムキー30が装着された状態で指紋載置部31bに利用者の指が載置されると、指紋の反射光だけに光路分離を行われるので、凹部の反射光を可及的に分離して凸部の反射光をレンズ13bに集光させることができる結果、指紋の凸部は白いコントラスト、凹部は黒いコントラストというように凸部及び凹部の輪郭が鮮明な指紋画像を得ることができる。その一方で、コード表示部31aに表示されたバーコードの反射光は分離されずにそのまま集光されるので、鮮明なバーコード画像を得ることができる。
【0047】
したがって、本実施例では、良質な指紋画像およびIDコード画像を1度の撮像処理で得ることができ、指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに、認証精度を安定させることが可能になる。
【0048】
次に、本実施例に係るホルダー付き玄関子機により取得される指紋及びバーコードを含む画像を用いて指紋認証がなされるまでの処理の流れについて説明する。図9は、本実施例に係る指紋認証処理に関するホルダー付き玄関子機、親機及び指紋認証装置の制御シーケンスを示す図である。
【0049】
同図に示すように、ホルダー付き玄関子機10は、プリズムキー30が装着された状態で利用者の指紋が載置されるとともに呼出ボタン11が押下操作されると(ステップS101)、図示しない被写体を照明するためのLEDを点灯させる(ステップS102)。
【0050】
そして、ホルダー付き玄関子機10は、バーコードをカバーとプリズム間で挟持することによりプリズムキー30のコード表示部31aに表示されたバーコード及び指紋載置部31bに載置された利用者の指紋をインターホンカメラ13に撮像させ(ステップS103)、該撮像させた指紋及びバーコードからなる映像信号を親機40に送信する(ステップS104)。一方、この映像信号を受信した親機40は、当該映像信号を指紋認証装置50に送信する(ステップS105)。
【0051】
続いて、指紋認証装置50は、親機40から受信した映像信号をA/D変換し(ステップS106)、該変換したデジタル信号からなる指紋及びバーコードを含む画像から指紋画像とバーコード画像を区別して切り出し(ステップS107)、該切り出したバーコード画像から該バーコード画像が表す利用者IDを解析(特定)し、管理パネル60での操作を経て予め登録されている登録指紋画像及び利用者IDの対応関係を参照して、バーコード画像から解析された利用者IDに対応する登録指紋画像を認証対象とする登録指紋画像として読み出す(ステップS108)。
【0052】
その後、指紋認証装置50は、先に切出し処理された指紋画像を入力指紋画像とし、登録指紋画像との指紋認証を行い(ステップS109)、その認証結果を親機40に応答する(ステップS110)。なお、かかる指紋認証には、特徴点抽出方式やパターン・マッチング方式などの周知の認証技術を広く用いることができる。
【0053】
この認証結果を受け取った親機40では、指紋認証装置50によって利用者の指紋であると認証された場合には、電気錠80の解錠を電気錠コントローラ70に指示するとともに当該利用者の属性情報(例えば、名前や所属など)を表示出力または音声出力することにより報知したり、また、利用者の指紋ではないと認証された場合には、第三者によって解錠操作が行われている旨を報知したりすることができる。
【0054】
上述してきたように、本実施例では、施設の利用者の指を載置する指紋載置部31bと、この指紋載置部31b近傍に利用者IDのバーコードを表示するコード表示部31aと、指紋載置部31bに載置された物体の反射光をその入射角に応じて分離する光路分離部およびコード表示部31aに表示されるバーコードの反射光を透過する非光路分離部を含むように構成されるプリズム31と有するプリズムキー30を利用者に携帯させることとした。
【0055】
その上で、本実施例では、プリズムキー30がホルダー付き玄関子機10に装着された場合に、指紋載置部に載置された利用者の指の凹凸を含んで構成される紋様面のうち凸部の反射光に比較して拡散度合いが少ない凹部の反射光を光路分離部で分離して凸部の反射光を透過させるとともにコード表示部に表示されたバーコードの反射光を非光路分離部で透過させ、凸部の反射光およびIDコードの反射光をインターホンカメラ13の撮像画角に収容させるように構成した。
【0056】
このため、本実施例によれば、良質な指紋画像およびIDコード画像を1度の撮像処理で得ることができ、指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに、認証精度を安定させることが可能になる。
【0057】
さらに、プリズム31とその外装であるカバーで利用者IDを表すバーコードの印刷物を挟み込むことにより固定支持することにより、製造時においては、IDコードを付加するための工程をプリズム31とカバーとを組み立てる工程に含めることができ、特別な機器を不要化するとともに製造工程を簡略化する結果、製造コストを安価に抑えることができる。
【0058】
また、本実施例では、良質な指紋およびIDコードの像を撮像部に導入させるに際してアドオンホルダー20やプリズムキー30などの単純な機構を用いて実現することとしたので、キー入力やICタグを用いる場合のように場所的制約やコスト面の制約なく、入力指紋画像と比較すべき登録指紋画像を特定することができる。
【0059】
なお、本実施例では、アドオンホルダー20がプリズムキー30を装着する例を説明したが、さらに、プリズムキー30に加えて携帯電話やPHSなどの携帯端末を装着できるようにアドオンホルダー20を構成することもできる。
【0060】
例えば、図10に示すように、プリズムキー30を咬合する部分に加えて、携帯端末の側面を挟み込むことによって携帯端末をインターホンカメラ13近傍に固定支持する機構が付加されたアドオンホルダー100を玄関子機90に装着する。なお、アドオンホルダー100が携帯端末を挟み込む機構の両端の間隔を可動にする機構を付加することにより、特異な形状を有する携帯端末を併せて固定支持できるようにしてもよい。
【0061】
このホルダー付き玄関子機90にプリズムキー30を装着する場合には、図11に示すように、プリズムキー30をアドオンホルダー100に咬合させることによりプリズムキー30をインターホンカメラ13近傍に固定支持する一方で、このホルダー付き玄関子機90に携帯端末110を装着する場合には、図12に示すように、携帯端末110の表示画面がインターホンカメラ13に正対するように、アドオンホルダー100の両端に携帯端末110の両側面を挟み込ませることにより携帯端末110の表示画面をインターホンカメラ13近傍に固定支持する。
【0062】
このように、携帯端末110の表示画面をインターホンカメラ13近傍に固定支持することができれば、携帯端末110に画面表示されるQRコードの撮画像を用いて利用者の本人認証を行うこともできる。
【0063】
さらに、玄関子機90のインターホンカメラ13付近の部分91を鏡面等で構成することにより、携帯端末110をアドオンホルダー100に装着する際にインターホンカメラ13の撮像範囲に携帯端末110の表示画面が含まれているかを目視確認させることもできる。
【0064】
なお、本実施例では、プリズムキー30とアドオンホルダー20を咬合させることにより装着する例を説明したが、プリズムキー30及びアドオンホルダー20のいずれか一方に凹部を設け、他方に凸部を設けておき、プリズムキー30をアドオンホルダー20に差し込むことにより装着させるようにしてもかまわない。
【0065】
また、本実施例では、プリズムキー30内でプリズム31Bとカバー32Bとでバーコードの印刷物を挟持することとしたが、必ずしもバーコードである必要はなく、QRコードなどの他のIDコードを挟持することとしてもかまわない。
【0066】
さらに、本実施例では、プリズム31として直角プリズムを用いる場合を説明したが、本発明におけるプリズムの形状がこれに限定されるものではない。例えば、図8に示したプリズム31においてインターホンカメラ13の撮像画角に含まれない部分(図中の斜線部分)を削除することとしてもよい。
【0067】
また、本実施例では、指紋認証を行うインターホンシステム1について説明したが、指紋認証だけでなく、人物画像に含まれる顔画像を切り出して顔認証を併せて行うようにインターホンシステムを構成してもかまわない。
【0068】
また、本実施例では、入力指紋画像と登録指紋画像の1対1認証を基本としているが、必ずしも1対1認証に拘束される必要はなく、利用者IDを表すバーコードが欠損等により読取不能である場合には、1対N認証を行うこととしてもかまわない。
【0069】
なお、本実施例では、施設の出入口の施解錠を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特定の人物だけを出入りさせるスペースの出入口の施解錠を行う場合に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明に係る指紋画像取得装置は、指紋認証結果を得るまでの応答性を向上させるとともに認証精度を安定させる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施例に係るインターホンシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】アドオンホルダーを玄関子機に装着する場合の一態様を説明する説明図である。
【図3】プリズムキーの一例を示す図である。
【図4】プリズムキーをアドオンホルダーに装着する場合の一態様を説明する説明図である。
【図5】インターホンカメラを人物撮像および指紋撮像に兼用するイメージを示すイメージ図である。
【図6】光路分離角度と非光路分離角度の範囲を説明するための説明図である。
【図7】インターホンカメラの光学系の一例を示す図である。
【図8】インターホンカメラの撮像画角、光路分離角度及び非光路分離角度の相関関係を説明するための説明図である。
【図9】本実施例に係る指紋認証処理に関するホルダー付き玄関子機、親機及び指紋認証装置の制御シーケンスを示す図である。
【図10】アドオンホルダーを玄関子機に装着する場合の応用例を説明する説明図である。
【図11】プリズムキーをアドオンホルダーに装着する場合の一態様を説明する説明図である。
【図12】携帯端末をアドオンホルダーに装着する場合の一態様を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 インターホンシステム
10 玄関子機
11 呼出ボタン
13 インターホンカメラ
13a 受光素子
13b レンズ
20 アドオンホルダー
30 プリズムキー
31 プリズム
31a コード表示部
31b 指紋載置部
40 親機
50 指紋認証装置
60 管理パネル
70 電気錠コントローラ
80 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の指紋を撮像する撮像部が本体部に設けられ、前記撮像部による撮像処理によって利用者の指紋画像を取得する指紋画像取得装置であって、
前記本体部に対して着脱可能に形成された生体載置手段は、
前記利用者の指を載置する生体載置部と、
前記生体載置部近傍に前記利用者に予め割り当てられたIDコードを表示するコード表示部と、
前記生体載置部に載置された物体の反射光をその入射角に応じて分離すると共に、前記コード表示部に表示されるIDコードの反射光を透過するように配設されるプリズムとを有し、
前記生体載置手段が前記本体部に装着された場合に、前記生体載置部に載置された利用者の指の凹凸を含んで構成される紋様面のうち凸部の反射光に比較して拡散度合いが少ない凹部の反射光を分離して凸部の反射光を透過させるとともに前記コード表示部に表示されたIDコードの反射光を透過させ、前記凸部の反射光および前記IDコードの反射光を前記撮像部の撮像画角に収容させるように前記撮像部に対して配設した
ことを特徴とする指紋画像取得装置。
【請求項2】
前記利用者の人物画像を撮像するインターホン用の撮像装置を前記撮像部として兼用することを特徴とする請求項1に記載の指紋画像取得装置。
【請求項3】
前記本体部に着脱可能に形成されるとともに前記生体載置手段を着脱可能に形成される追加用ホルダーを有し、
前記追加用ホルダーが装着された本体部に装着された状態で当該追加用ホルダーに前記生体載置手段が装着された場合に、前記凸部の反射光および前記IDコードの反射光を前記撮像部の撮像画角に収容するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の指紋画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−160759(P2010−160759A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3881(P2009−3881)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】