説明

振動アクチュエータ

【課題】シャフトの径方向におけるマグネットのがたつきを防止することができる振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ1では、第1及び第2の錘部6,7に、シャフト20に対して摺動可能な軸受25,26を設け、移動規制部36,37によって、第1及び第2の錘部6,7に対してマグネット4がシャフト20の径方向に移動することを規制する。軸受25,26を有する第1及び第2の錘部6,7との協働により、シャフト20の径方向におけるマグネット4のがたつきを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯無線装置の着信を利用者に知らせるための振動発生源や、タッチパネルの操作感触や遊戯機の臨場感を指や手に伝えるための振動発生源などに利用される小型の振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載されるように、円筒状の筐体内にシャフトが固定され、このシャフトに沿って可動子が振動する振動アクチュエータが知られている。この振動アクチュエータの可動子は、シャフト上に配設されたカップ状のヨークと、ヨークの外周底面に接着された錘と、ヨーク内に配置されたマグネットとからなり、これらのヨーク、錘、及びマグネットがシャフトと同軸状に設けられている。可動子は、軸線方向の両側でコイルばねによって保持される。カップ状のヨークとマグネットとの間には、マグネットを包囲するようにしてコイルボビン及び駆動コイルが配置されている。
【0003】
上記のように構成された可動子は、振動の際、シャフトに沿って摺動する。さらに、シャフトの一部において径が縮小された段部を設けることにより、可動子のマグネットを段部から離間させ、段部にマグネットが接触することを防止している。これによって、可動子とシャフトとの間に生じる摩擦を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−220363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の振動アクチュエータでは、ヨークに対するマグネットの固定方法については何ら開示されていない。そのため、ヨークに対するマグネットの固定が不十分な場合には、マグネットの位置がシャフトの径方向にずれることによって、マグネットがシャフトの径方向にがたつく虞がある。
【0006】
本発明は、シャフトの径方向におけるマグネットのがたつきを防止することができる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る振動アクチュエータは、筒状の筐体内に配置されたコイルと、このコイルに包囲されて筐体内に配置されたマグネットとの協働により、マグネットが筐体の振動軸線に沿ってリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、振動軸線に沿って配置され、振動軸線方向における筐体の両端に設けられた端壁に両端が固定されたシャフトと、シャフトが貫通すると共に、シャフトの延在方向に移動自在なマグネットと、筐体内に配置され、シャフトが貫通すると共にマグネットと一体に移動自在な錘部と、を有する可動子と、可動子と端壁との間に配置され、可動子を振動軸線方向に付勢する弾性部材と、を備え、錘部は、シャフトに沿って摺動可能な軸受部を有し、可動子には、錘部に対してマグネットがシャフトの径方向に移動することを規制する移動規制部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この振動アクチュエータによれば、マグネット及び錘部を有する可動子が、弾性部材からの付勢力を受けながら、シャフトの延在方向すなわち振動軸線方向に振動する。ここで、錘部は、シャフトに対して摺動可能な軸受部を有しており、マグネットとシャフトとの間には、所定の間隔を有することになる。そこでマグネットは、移動規制部により、軸受部を有する錘部に対してシャフトの径方向に移動することが規制されているので、シャフトの径方向におけるマグネットのがたつきを、軸受部をもった錘部との協働により防止することができる。
【0009】
また、可動子は、シャフトが貫通すると共に、マグネットと錘部との間に配置されたヨークを有し、移動規制部は、錘部とヨークとの凹凸嵌合およびヨークとマグネットとの凹凸嵌合によって、マグネットがシャフトの径方向に移動することを規制すると好適である。この場合、可動子を構成する部材同士の凹凸嵌合によって、マグネットの径方向への移動が規制されるので、錘部、ヨーク、マグネットの各接合端面の形状変更のみで良く、簡易な構成によりマグネットのがたつきを防止することができる。
【0010】
また、ヨークは、シャフトの周囲に配置される第1の環状部と、第1の環状部の外周側に位置すると共に、第1の環状部に対して振動軸線方向にずれて配置される第2の環状部と、を有すると好適である。この場合、第1の環状部と第2の環状部とによって、振動軸線方向における凹凸形状が形成される。よって、このような凹凸形状を有するヨークの接合端面と、錘部およびマグネットのそれぞれの接合端面との凹凸嵌合により、マグネットの径方向への移動を確実に規制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャフトの径方向におけるマグネットのがたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る振動アクチュエータの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の振動アクチュエータの斜視図である。
【図3】図1中の可動子の分解斜視図である。
【図4】図1中のマグネット付近を拡大して示す断面図である。
【図5】振動アクチュエータの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図6】振動アクチュエータの第3実施形態を示す縦断面図である。
【図7】振動アクチュエータの第4実施形態を示す縦断面図である。
【図8】振動アクチュエータの第5実施形態を示す縦断面図である。
【図9】振動アクチュエータの第6実施形態を示す縦断面図である。
【図10】振動アクチュエータの第7実施形態を示す縦断面図である。
【図11】振動アクチュエータの第8実施形態を示す縦断面図である。
【図12】振動アクチュエータの第9実施形態を示す縦断面図である。
【図13】振動アクチュエータの第10実施形態を示す斜視図である。
【図14】可動子の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜図3に示すように、振動アクチュエータ1は、直径が約4.5mmの円筒状の筺体2を有している。この筺体2内には、筺体2の振動軸線Aを中心に環状に巻かれたコイル3と、このコイル3に包囲された円筒状のマグネット4と、筺体2の振動軸線A方向においてマグネット4の両側に配置された第1及び第2の錘部6,7と、が収容されている。マグネット4と第1及び第2の錘部6,7との間には、磁性体からなる円環状のポールヨーク14,15がそれぞれ配置されている。このポールヨーク14,15は、コイル3、マグネット4及び第1の筺体10と一緒になって磁気回路を効率良く形成するためのものである。
【0015】
この振動アクチュエータ1では、マグネット4、第1及び第2の錘部6,7、及びポールヨーク14,15からなる可動子8が一体となって、コイル3とマグネット4との協働により、筺体2の振動軸線A方向に沿ってリニアに振動する。
【0016】
筺体2は、振動軸線A方向において2分割されている。より具体的には、筺体2の第1の筺体10は、筺体2の振動軸線A方向の一端に位置する円板状の端壁10aと、この端壁10aから振動軸線A方向に円筒状に延びた周壁10bとによって、第1の錘部6、コイル3、マグネット4、及びポールヨーク14,15を収容している。筺体2の第2の筺体11は、第1の筺体10に振動軸線A方向で対向して配置される。この第2の筺体11は、筺体2の振動軸線A方向の他端に位置する円板状の端壁11aと、この端壁11aから振動軸線A方向に円筒状に延びた周壁11bとによって、第2の錘部7を収容している。第1及び第2の筺体10,11は、磁性体により形成されている。そして、第1の筺体10と第2の筺体11との間から、樹脂製のボビン12の一部をなす端子台12dが露出している。
【0017】
ボビン12は、第1及び第2の筺体10,11の周壁10b,11bよりも直径が小さく、周壁10b内に挿入されてコイル3が巻かれる筒状部12aと、筒状部12aの振動軸線A方向における両端に連設されたフランジ部12b,12cと、肉厚のフランジ部12bに連設されて筺体2から突出する端子台12dと、を有している。筒状部12aは、振動軸線A方向における筺体2の略中央に位置し、一方のフランジ部12cは、第1の筺体10の周壁10bの内周面に当接している。他方の肉厚のフランジ部12bは、周壁10b,11bの各端部の内周面に当接している。端子台12dには、端子13が固定され、端子13にはコイル3の端部が絡げられている。
【0018】
第1及び第2の筺体10,11の周壁10b,11bの端部同志は、ボビン12の端子台12dが露出する部分を除く位置で互いに突き合わされており、数箇所の溶接部により連結されている。
【0019】
両端壁10a,11aのそれぞれにおける中心位置には、シャフト保持孔16,17が形成されており、これらのシャフト保持孔16,17の周囲には、バーリング加工によって、端壁10a,11aから筺体2の内方に向けて突出する円環状の突起18,19が形成されている。そして、このシャフト保持孔16,17に、直径約0.6mmの非磁性体からなるシャフト20の両端が圧入されており、さらに、シャフト20の端部は、溶接によって両端壁10a,11aに固定されている。このようにして、シャフト20は、筺体2の振動軸線Aに沿って配置されると共に、振動軸線A方向において第1の筺体10と第2の筺体11とを強固に連結している。このシャフト20は、前述したマグネット4、第1及び第2の錘部6,7、及びポールヨーク14,15からなる可動子8に貫通している。
【0020】
可動子8についてより詳しく説明すると、マグネット4には、振動軸線A方向にS極とN極とが着磁されると共に、シャフト20の外径よりも直径が若干大きいシャフト貫通孔4aが形成されている。このマグネット4は、ボビン12の筒状部12a内に配置されている。
【0021】
第1の錘部6は、ボビン12の筒状部12aの一方の開口から挿入された胴部6aと、第1の筺体10の端壁10a側で胴部6aよりも拡径されたフランジ部6bと、を有している。第2の錘部7は、ボビン12の筒状部12aの他方の開口から挿入された胴部7aと、第2の筺体11の端壁11a側で胴部7aよりも拡径されたフランジ部7bと、を有している。ボビン12のフランジ部12bが肉厚に形成されてシャフト20の延在方向の空間を占有する分、第2の錘部7のフランジ部7bは、第1の錘部6のフランジ部6bよりも延在方向における厚みが薄くなっている。錘部6,7にフランジ部6b,7bが形成されることで、非常に小さな筺体2内にあっても、錘部6,7における重量の増大を図ることができる。
【0022】
第1及び第2の錘部6,7の胴部6a,7aには、シャフト20の外径よりも直径が若干大きいシャフト貫通孔23,24が形成されている。また、第1及び第2の錘部6,7のフランジ部6b,7bには、胴部6a,7aのシャフト貫通孔23,24よりもさらに拡径された円柱形状のばね受入孔27,28が、シャフト貫通孔23,24に連通すると共にシャフト貫通孔23,24と同軸に形成されている。
【0023】
ばね受入孔27,28内には、円筒状の軸受(軸受部)25,26が圧入されている。軸受25,26の外周面は、ばね受入孔27,28の周面に当接すると共に、軸受25,26の内周面は、シャフト20に当接している。軸受25,26のマグネット4側の端面は、ばね受入孔27,28とシャフト貫通孔23,24との間に形成された円環状の段部32,33に当接している。軸受25,26は、第1及び第2の錘部6,7を支持しながら、シャフト20に沿って摺動する。このように、第1及び第2の錘部6,7が上記の軸受25,26を有することにより、マグネット4及びポールヨーク14,15と、シャフト20との間には、所定の間隔を有することになる。
【0024】
さらに、第1の錘部6と端壁10aとの間には、ばね受入孔27に挿入された第1の圧縮コイルばね30が配置され、この第1の圧縮コイルばね30内をシャフト20が貫通する。第2の錘部7と端壁11aとの間には、ばね受入孔28に挿入された第2の圧縮コイルばね31が配置され、この第2の圧縮コイルばね31内をシャフト20が貫通する。第1の圧縮コイルばね30及び第2の圧縮コイルばね31としては、同一の部品が用いられている。
【0025】
第1及び第2の圧縮コイルばね30,31の一端には、シャフト保持孔16,17の周囲に形成された前述の突起18,19が嵌入されており、これにより、第1及び第2の圧縮コイルばね30,31がシャフト20に当たることなく確実に保持されている。一方、第1及び第2の圧縮コイルばね30,31の他端は、第1及び第2の錘部6,7のばね受入孔27,28内に挿入されると共に、上記の軸受25,26に圧接されている。
【0026】
ここで、振動アクチュエータ1にあっては、可動子8のマグネット4は、第1及び第2の錘部6,7に対してシャフト20の径方向に移動することを規制されている。具体的には、円環状のポールヨーク14は、シャフト20の周囲に配置される第1の環状部14aと、第1の環状部14aの外周側に位置すると共に、第1の環状部14aに対して振動軸線A方向で端壁10a側にずれて配置される第2の環状部14bとを有している。円環状のポールヨーク15は、シャフト20の周囲に配置される第1の環状部15aと、第1の環状部15aの外周側に位置すると共に、第1の環状部15aに対して振動軸線A方向で端壁11a側にずれて配置される第2の環状部15bとを有している。
【0027】
図4に示すように、第1の環状部14a,15aと第2の環状部14b,15bとの間には、マグネット4側において、シャフト20の径方向外方に面するリング状の段状面14c,15cが形成される。第1の環状部14a,15aと第2の環状部14b,15bとの間には、第1及び第2の錘部6,7側において、シャフト20の径方向内方に面するリング状の段状面14d,15dが形成される。このように、ポールヨーク14,15は、異径の環状部の境界で段付き形状をなしており、シャフト20の延在方向において凹凸形状をなしている。ポールヨーク14,15としては、同一の部品が用いられており、部品の共有化が図られている。
【0028】
マグネット4の両端には、段状面14c,15cに当接すると共に、第2の環状部14b,15bに当接する円環状の突出部4b,4cが形成されている。また、第1の錘部6の胴部6aには、段状面14dに当接すると共に、第1の環状部14aに当接する円柱状の突出部6cが形成されている。第2の錘部7の胴部7aには、段状面15dに当接すると共に、第1の環状部15aに当接する円柱状の突出部7cが形成されている。
【0029】
言い換えれば、図2に示すように、第1の錘部6とポールヨーク14との間の接合端面C、ポールヨーク14とマグネット4との間の接合端面D、第2の錘部7とポールヨーク15との接合端面E、及びポールヨーク15とマグネット4との接合端面Fは、それぞれ段付きの円環状に形成されている。
【0030】
このようにして、ポールヨーク14に対し、第1の錘部6及びマグネット4が凹凸嵌合されると共に、ポールヨーク15に対し、第2の錘部7及びマグネット4が凹凸嵌合される。これらの凹凸嵌合により、マグネット4は、軸受25,26を有する第1及び第2の錘部6,7に対してシャフト20の径方向に移動することを規制される。ポールヨーク14、突出部4b、及び突出部6cによって、移動規制部36が構成され、ポールヨーク15、突出部4c、及び突出部7cによって、移動規制部37が構成されている(図2及び図3参照)。
【0031】
上記構成により、第1及び第2の錘部6,7、ポールヨーク14,15、及びマグネット4は、同軸上に配置された状態で第1及び第2の圧縮コイルばね30,31により振動軸線A方向に付勢され、この付勢力により、互いに圧着されて一体化されている。しかも、移動規制部36,37によって、第1及び第2の錘部6,7、ポールヨーク14,15、及びマグネット4が同軸上にセンタリングされており、マグネット4やポールヨーク14,15がシャフト20の径方向にずれることが防止されている。よって、マグネット4やポールヨーク14,15のシャフト20への接触が防止されている。さらに、第1及び第2の錘部6,7、ポールヨーク14,15、及びマグネット4を、接着剤を用いることなく互いに連結することができる。
【0032】
なお、ここで、フランジ部7bのマグネット4側には、シャフト20の延在方向に対して垂直に延びる円環状の端面7cが形成されており、この端面7cは、ボビン12のフランジ部12bにおける端壁11a側の端面12eに対向している。そして、フランジ部7bの端面7cから、マグネット4の突出部4bの表面までの長さは、フランジ部12bの端面12eからフランジ部12cの端壁10a側の端面12fまでの長さに略等しくなっている。このような構成により、振動アクチュエータ1の組立時において、第2の筺体11にシャフト20を圧入し、このシャフト20に第2の圧縮コイルばね31、軸受26、第2の錘部7、ポールヨーク15、及びマグネット4を通して重ね合わせ、これらをボビン12内に挿入しつつボビン12を第2の筺体11に取り付けると、マグネット4の突出部4bの表面がフランジ部12cの開口から露出するため、その後ポールヨーク14や第1の錘部6等を組み易くなる。
【0033】
また、ボビン12の筒状部12aに巻かれたコイル3は、振動軸線A方向に多少離間して並設された第1のコイル34と第2のコイル35とからなっており、第1及び第2のコイル34,35は、周壁10bに内接するようにして周壁10bにより包囲されている。すなわち、第1及び第2のコイル34,35は、ボビン12の筒状部12aと周壁10bとによって囲まれた空間B内に配置されている。さらに、第1のコイル34と第2のコイル35には、巻かれる方向において、逆の向きの電流が流される。
【0034】
以上のように構成された振動アクチュエータ1では、外部からリード線(図示せず)及び端子13を介してコイル3に通電されると、コイル34,35によって磁界が形成され、マグネット4がこの磁界に吸引・反発して、可動子8が軸受25,26によって支持されながら、第1及び第2の圧縮コイルばね30,31による付勢力を両側から受けつつ振動軸線A方向にリニアに振動する。これにより、振動アクチュエータ1が搭載された携帯電話などの機器類に振動を発生させる。
【0035】
振動アクチュエータ1によれば、第1及び第2の錘部6,7は、シャフト20に対して摺動可能な軸受25,26を有しているので、マグネット4とシャフト20との間には、所定の間隔が形成される。マグネット4は、移動規制部36,37により、軸受25,26を有する第1及び第2の錘部6,7に対してシャフト20の径方向に移動することが規制されているので、シャフト20の径方向におけるマグネット4のがたつきが、軸受25,26を有する第1及び第2の錘部6,7との協働により防止されている。従って、マグネット4とシャフト20との間のクリアランスが確保され、マグネット4のシャフト20への接触が確実に防止されている。
【0036】
また、移動規制部36,37は、第1及び第2の錘部6,7とポールヨーク14,15との凹凸嵌合およびポールヨーク14,15とマグネット4との凹凸嵌合によって、マグネット4がシャフト20の径方向に移動することを規制するので、可動子8を構成する部材同士の凹凸嵌合によって、マグネット4の径方向への移動が規制されている。よって、第1及び第2の錘部6,7、ポールヨーク14,15、マグネット4の各接合端面(図2の各接合端面C〜F)の形状変更のみによって、簡易な構成によりマグネット4のがたつきが防止されている。
【0037】
また、ポールヨーク14,15は、第1の環状部14a,15aと、第1の環状部14a,15aの外周側に位置すると共に、第1の環状部14a,15aに対して振動軸線A方向にずれて配置される第2の環状部14b,15bと、を有することにより、第1の環状部14a,15aと第2の環状部14b,15bとによって、振動軸線A方向における凹凸形状が形成されている。そして、このような凹凸形状を有するポールヨーク14,15の接合端面と、第1及び第2の錘部6,7およびマグネット4のそれぞれの接合端面との凹凸嵌合により、マグネット4の径方向への移動が確実に規制されている。
【0038】
さらに、筺体2の各端壁10a,11aにそれぞれの端が固定されたシャフト20はマグネット4及び錘部6,7を貫通し、固定されたシャフト20に案内されながら、マグネット4及び錘部6,7が一体となって振動するので、錘部6,7の重心の位置が振動軸線Aからずれて暴れることが防止され、安定した振動を確保できる。さらに、落下衝撃が生じた場合であっても錘部6,7が筺体2に衝突することが防止され、耐落下衝撃性を向上させることができる。
【0039】
また、振動軸線Aを分割する方向において筺体2は2分割されているので、シャフト20の両端が筺体2の両端壁10a,11aに固定されていると、シャフト20が連結バーとして機能し、これにより、筺体2を構成する第1の筺体10と第2の筺体11との連結強度がアップする。従って、落下衝撃時に、筺体2が振動軸線A方向に分断されてしまって、筺体2から錘部6,7やマグネット4が飛び出してしまうような事態を回避させることができる。
【0040】
さらに、錘部6,7、ポールヨーク14,15、及びマグネット4は、第1の圧縮コイルばね30と第2の圧縮コイルばね31とにより両側から付勢力を受けながら振動するので、安定した振動を確実かつ容易に得ることができる。さらに、錘部6,7、ポールヨーク14,15、及びマグネット4は、対向する圧縮コイルばね30と圧縮コイルばね31を採用することによって、振動軸線A方向で互いに圧着されて一体化されるので、接着剤を用いなくとも、各部品同志を連結させておくことができる。特に、錘部6,7、マグネット4、ポールヨーク14,15にはシャフト20が貫通しているので、接着剤がハミ出していると、接着剤とシャフト20とが摺り合うことで摩擦抵抗を発生するが、振動アクチュエータ1では、このような事態を回避させることができる。
【0041】
また、振動軸線A方向においてマグネット4の両側に配置された第1の錘部6と第2の錘部7とを配置させているので、より一層安定した振動を確保することができる。さらに、第1及び第2の錘部6,7は、軸受部25,26を介してシャフト20に沿って移動させているので、シャフト20に沿ったバランスの良い振動が得られる。
【0042】
また、第1の筺体10の周壁10bが磁気回路を形成するためのヨーク板を兼ねているので、コイル34,35を包囲するヨーク板を別途用意する必要がなく、径方向における小型化が図られている。さらにまた、第1の圧縮コイルばね30と第2の圧縮コイルばね31とは、同一の部品であるため、部品の共有化が図られている。
【0043】
図5は、振動アクチュエータの第2実施形態を示す縦断面図である。図5に示す振動アクチュエータ1Aが図1に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、第2の錘部7を有しておらず、第1の錘部6Aが片側のみに配置された可動子8Aを備えた点である。第2の圧縮コイルばね31は、ポールヨーク15を直接付勢している。この振動アクチュエータ1Aによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0044】
図6は、振動アクチュエータの第3実施形態を示す縦断面図である。図6に示す振動アクチュエータ1Bが図1に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、第2の錘部7を有しておらず、軸受部51aが形成された第1の錘部51が片側のみに配置されると共に、第1の錘部51とマグネット4との間にカップ状のポールヨーク14Bが設けられた可動子8Bを備えた点と、ボビン12を有しておらず、コイル3に代えて、ポールヨーク14Bとマグネット4との間に配置された空芯コイル3Bを備えた点と、第2の圧縮コイルばね31の着座安定化を図るための凹部50が形成された第2の筺体11Bを備えた点である。この振動アクチュエータ1Bによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0045】
図7は、振動アクチュエータの第4実施形態を示す縦断面図である。図7に示す振動アクチュエータ1Cが図1に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、第1及び第2の圧縮コイルばね30,31に代えて、第1の板ばね30C及び第2の板ばね31Cを用いて第1及び第2の錘部6,7を支持した点である。各軸受25,26は、板ばね30C,31Cのばね受けとして利用されている。第1の板ばね30C及び第2の板ばね31Cは、同一形状を有し、円板に複数の円弧状スリットと中央開口とを抜き打ち加工することで、円錐台形状のばねになっている。なお、円錐コイルばねの適用も可能である。この振動アクチュエータ1Cによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0046】
図8は、振動アクチュエータの第5実施形態を示す縦断面図である。図8に示す振動アクチュエータ1Dが図1に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、第1及び第2の錘部6,7に代えて、軸受部60a,70aが形成された第1及び第2の錘部60,70を有する可動子8Dを備えた点である。第1〜第4実施形態のような各軸受25,26は設けられておらず、第1及び第2の圧縮コイルばね30,31が、第1及び第2の錘部60,70を直接付勢している。この振動アクチュエータ1Dによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0047】
図9は、振動アクチュエータの第6実施形態を示す縦断面図である。図9に示す振動アクチュエータ1Eが図5に示した第2実施形態の振動アクチュエータ1Aと違う点は、第1の錘部6Aに代えて、軸受部61aが形成された第1の錘部61を有する可動子8Eを備えた点である。軸受25は設けられておらず、第1の圧縮コイルばね30が、第1の錘部61を直接付勢している。この振動アクチュエータ1Eによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0048】
図10は、振動アクチュエータの第7実施形態を示す縦断面図である。図10に示す振動アクチュエータ1Fが図6に示した第3実施形態の振動アクチュエータ1Bと違う点は、第1の錘部51に代えて、軸受部62aが形成された第1の錘部62を有する可動子8Fを備えた点である。軸受25は設けられておらず、第1の圧縮コイルばね30が、第1の錘部62を直接付勢している。この振動アクチュエータ1Fによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0049】
図11は、振動アクチュエータの第8実施形態を示す縦断面図である。図11に示す振動アクチュエータ1Gが図7に示した第4実施形態の振動アクチュエータ1Cと違う点は、第1及び第2の錘部6,7に代えて、軸受部63a,73aが形成された第1及び第2の錘部63,73を有する可動子8Gを備えた点である。各軸受25,26は設けられておらず、第1及び第2の板ばね30C,31Cが、第1及び第2の錘部63,73を直接付勢している。この振動アクチュエータ1Gによっても、上記したマグネット4のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0050】
図12は、振動アクチュエータの第8実施形態を示す縦断面図である。図10に示す振動アクチュエータ1Hが図2に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、移動規制部36,37に代えて、凹凸形状がポールヨーク14,15とは逆になっているポールヨーク54,55を有する可動子8Hを備えた点である。ポールヨーク54,55では、第1の環状部54a,55aに対して第2の環状部54b,55bはマグネット4側にずれて配置されている。この変更に伴い、マグネット41には、円柱状の突出部41b,41cが形成されると共に、第1及び第2の錘部64,74には、円環状の突出部64c,74cが形成されている。また、移動規制部36,37は、移動規制部56,57に変更されている。この振動アクチュエータ1Hによっても、マグネット41のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0051】
図13は、振動アクチュエータの第10実施形態を示す斜視図である。図13に示す振動アクチュエータ1Jが図2に示した第1実施形態の振動アクチュエータ1と違う点は、第1及び第2の筺体10,11に代えて、断面四角形の第1及び第2の筐体80,81からなる筐体2Jを備えた点と、第1及び第2のコイル34,35に代えて、断面四角形の第1及び第2のコイル部82A,82Bからなるコイル82を備えた点と、可動子8に代えて、断面四角形のマグネット83、ポールヨーク84,85、及び第1及び第2の錘部86,87からなる可動子8Jを備えた点である。この変更に伴い、移動規制部36,37は、移動規制部66,67に変更されている。接合端面C〜Fは四角環状であれば、互いに周方向にずれることがない。なお断面形状は多角形であってもよい。また接合端面C〜Fも、円環状、四角を含む多角環状から適宜選択できる。この振動アクチュエータ1Jによっても、上記したマグネット83のがたつき防止効果等を得ることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。上記各実施形態では、ポールヨークが異径の環状部の境界で段付き形状をなす場合について説明したが、これに限られない。ヨークとマグネット、及び、ヨークと錘部は、他の形状をなす接合端面で凹凸嵌合されてもよい。例えば、図14に示すように、ポールヨーク94,95のマグネット90側の面(一方の面)に十字の凸部94a,95aが形成されると共に、第1及び第2の錘部96,97側の面(他方の面)に十字の溝94b,95bが形成されて、このポールヨーク94,95にマグネット90及び第1及び第2の錘部96,97が凹凸嵌合されてなる可動子8Kであってもよい。この場合、マグネット90の両側の面には、十字の凸部94a,95aに接合する十字の溝90a,90bが形成される。第1及び第2の錘部96,97には、十字の溝94b,95bに接合する十字の凸部96c,97cが形成される。そして、マグネット90の十字の溝90aを除く部分90c、ポールヨーク94、及び第1の錘部96の十字の凸部96cによって、移動規制部76が形成される。マグネット90の十字の溝90bを除く部分90d、ポールヨーク95、及び第2の錘部97の十字の凸部97cによって、移動規制部77が形成される。
【0053】
また、上記各実施形態では、移動規制部が、錘部とヨークとの凹凸嵌合およびヨークとマグネットとの凹凸嵌合によってマグネットの移動を規制する場合について説明したが、これに限られない。例えば、錘部とヨーク、及び、ヨークとマグネットとの間の摩擦抵抗を大きくすることによって、摩擦係合によりマグネットの移動を規制することもできる。この場合、ヨークの表面の摩擦係数を増大させる処理を施してもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、錘部、ポールヨーク、及びマグネットが接着剤を用いずに連結される場合について説明したが、非接着に限られず、接着剤を用いてこれらを接合してもよい。
【0055】
さらにまた、ポールヨークを用いることなく磁気回路を形成できる場合には、移動規制部は、錘部とマグネットとの凹凸嵌合や摩擦係合であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、1A〜1H,1J…振動アクチュエータ、2,2J…筺体、3、3B,34、35,82,82A,82B…コイル、4,41,83,90…マグネット、6、6A,7,51,60,61,62,63,64,70,73,74,86,87,96,97…錘部、8,8A〜8H,8J,8K…可動子、10a、11a…端壁、14,14B,15,54,55,84,85,94,95…ポールヨーク、14a,15a,54a,55a…第1の環状部、14b,15b,54b,55b…第2の環状部、20…シャフト、25,26…軸受(軸受部)、51a,60a,61a,62a,63a,70a,73a…軸受部、30,31…圧縮コイルばね、30C,31C…板ばね、36,37,56,57,66,67,76,77…移動規制部、A…振動軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体内に配置されたコイルと、このコイルに包囲されて前記筐体内に配置されたマグネットとの協働により、前記マグネットが前記筐体の振動軸線に沿ってリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、
前記振動軸線に沿って配置され、前記振動軸線方向における前記筐体の両端に設けられた端壁に両端が固定されたシャフトと、
前記シャフトが貫通すると共に、前記シャフトの延在方向に移動自在な前記マグネットと、前記筐体内に配置され、前記シャフトが貫通すると共に前記マグネットと一体に移動自在な錘部と、を有する可動子と、
前記可動子と前記端壁との間に配置され、前記可動子を前記振動軸線方向に付勢する弾性部材と、を備え、
前記錘部は、前記シャフトに沿って摺動可能な軸受部を有し、
前記可動子には、前記錘部に対して前記マグネットが前記シャフトの径方向に移動することを規制する移動規制部が設けられていることを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子は、前記シャフトが貫通すると共に、前記マグネットと前記錘部との間に配置されたヨークを有し、
前記移動規制部は、前記錘部と前記ヨークとの凹凸嵌合および前記ヨークと前記マグネットとの凹凸嵌合によって、前記マグネットが前記シャフトの径方向に移動することを規制する請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記ヨークは、前記シャフトの周囲に配置される第1の環状部と、前記第1の環状部の外周側に位置すると共に、前記第1の環状部に対して前記振動軸線方向にずれて配置される第2の環状部と、を有する請求項2記載の振動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−213710(P2012−213710A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80506(P2011−80506)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】