説明

振動エネルギー吸収装置を有する建物

【課題】建物の振動エネルギーの吸収量が孔の径の大きさにより制限されることがないようにし、前記振動エネルギーが効果的に吸収されるようにすること。
【解決手段】建物は、上端部に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部を有する柱と、間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有し、該梁部分の間に前記柱の前記伸長部を受け入れる梁と、該梁の前記梁部分の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを含む。前記振動エネルギー吸収装置は、一端部が前記柱の前記伸長部に取り付けられた棒状部材と、該棒状部材の他端部を貫く回転軸であって前記梁に取り付けられた回転軸と、該回転軸により貫かれた板状部材と、該板状部材に密接する摩擦材とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギー吸収装置を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層の建物には、該建物の中央部を取り囲む耐震壁と、該耐震壁の周囲に間隔を置いて配置された複数の柱と、それぞれが前記耐震壁と結合され、該耐震壁から前記柱の上へ伸びる複数の梁と、各梁の両側に配置された制震装置とを含むものがある(特許文献1参照)。前記制震装置は、前記梁に取り付けられた、上下方向に伸びるシリンダーと、該シリンダーの内部に前記シリンダーと同軸的に配置され、前記柱に取り付けられたロッドと、前記シリンダーの内部にあって前記ロッドに固定されたピストンとを有する。前記シリンダーの内部に、前記ピストンにより隔てられた2つの空間が存在し、該空間は、前記ピストンを貫く孔を介して連通している。
【特許文献1】特開平8−60895号公報
【0003】
前記建物は地震力又は風力を受けて振動することがある。このとき、前記耐震壁は曲げ変形を生じ、該耐震壁と結合された前記梁は前記柱に対して上下方向に移動する。これにより、前記ピストンが前記シリンダーに対して上下方向に動き、該シリンダーの内部の油が前記孔を経て一方の空間から他方の空間へ流れる。前記油は、前記孔を経て流れるときに粘性抵抗を受ける。このため、前記油が前記孔を経て流れることにより前記建物の振動エネルギーが消費される。このようにして前記制震装置は前記振動エネルギーを吸収する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記孔の径の大きさは、前記梁が前記柱に対して移動したときに前記ピストンが前記シリンダーに対して動くことができる程度に大きい。仮に前記孔の径を小さくすると、前記ピストンが前記シリンダーに対して動かなくなり、前記制震装置は前記振動エネルギーを吸収できなくなる。このため、前記孔の径を小さくして前記粘性抵抗を大きくすることができず、前記振動エネルギーの吸収量を増やすことができない。このように前記振動エネルギーの吸収量は前記孔の径の大きさにより制限される。このため、前記制震装置は前記振動エネルギーを効果的に吸収することができない。
【0005】
本発明の目的は、前記振動エネルギーの吸収量が前記孔の径の大きさにより制限されることがないようにし、前記振動エネルギーが効果的に吸収されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、摩擦材に密接する板状部材の回転により前記振動エネルギーが消費されるようにする。これにより、油が孔を経て流れることにより前記振動エネルギーが消費される場合のように前記振動エネルギーの吸収量が前記孔の径の大きさにより制限されることがないようにし、前記振動エネルギーが効果的に吸収されるようにする。
【0007】
本発明に係る建物は、上端部に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部であって縦断面で見て前記上端部の幅より小さい幅を有する伸長部を有する柱と、該柱の前記伸長部の前記幅の方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有し、該梁部分の間に前記柱の前記伸長部を受け入れる梁と、該梁と結合された他の柱と、前記梁部分の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを含む。前記振動エネルギー吸収装置は、前記梁の前記梁部分に平行な棒状部材であって一端部が前記柱の前記伸長部に取り付けられた棒状部材と、該棒状部材の他端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸であって前記梁に取り付けられた回転軸と、該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、該板状部材に密接する摩擦材とを有する。
【0008】
前記棒状部材の前記一端部が前記柱に取り付けられ、前記棒状部材の前記他端部を貫く前記回転軸が前記梁に取り付けられ、前記回転軸により貫かれた前記板状部材に前記摩擦材が密接しているため、前記梁が前記柱に対して上下方向に移動したときに前記棒状部材の前記一端部が上下方向に動いて前記回転軸及び前記板状部材が回転し、該板状部材と前記摩擦材との間に摩擦抵抗が生じる。このため、前記板状部材の回転により前記振動エネルギーが消費される。このようにして前記振動エネルギー吸収装置は前記振動エネルギーを吸収する。これにより、油が孔を経て流れることにより前記振動エネルギーが消費される場合のように前記振動エネルギーの吸収量が前記孔の径の大きさにより制限されることはなく、前記振動エネルギーが効果的に吸収される。
【0009】
前記振動エネルギー吸収装置は、前記板状部材から間隔を置いて配置され、かつ該板状部材の下端部を収容する、上方に開放されたケーシングを有し、前記摩擦材は、前記ケーシングに入れられた粘性体からなる。
【0010】
本発明に係る振動エネルギー吸収装置は、棒状部材と、該棒状部材の端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸と、該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、該板状部材に密接する摩擦材とを含む。
【0011】
本発明に係る、上端部に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部であって縦断面で見て前記上端部の幅より小さい幅を有する伸長部を有する柱と、該柱の前記伸長部の前記幅の方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有し、該梁部分の間に前記柱の前記伸長部を受け入れる梁と、該梁と結合された他の柱とを含む建物における振動エネルギーを吸収する方法は、一端部が前記柱の前記伸長部に取り付けられる棒状部材と、該棒状部材の他端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸と、該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、該板状部材に密接する摩擦材とを含む振動エネルギー吸収装置を、前記棒状部材が前記梁の前記梁部分に平行になるように前記梁の前記梁部分の間に配置すること、前記振動エネルギー吸収装置の前記棒状部材の前記一端部及び前記回転軸をそれぞれ前記柱の前記伸長部及び前記梁に取り付けることを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、棒状部材の一端部が柱に取り付けられ、前記棒状部材の他端部を貫く回転軸が梁に取り付けられ、前記回転軸により貫かれた板状部材に摩擦材が密接しているため、前記梁が前記柱に対して上下方向に移動したときに前記棒状部材の前記一端部が上下方向に動いて前記回転軸及び前記板状部材が回転し、該板状部材と前記摩擦材との間に摩擦抵抗が生じる。このため、前記板状部材の回転により前記振動エネルギーが消費される。これにより、油が孔を経て流れることにより前記振動エネルギーが消費される場合のように前記振動エネルギーの吸収量が前記孔の径の大きさにより制限されることはなく、前記振動エネルギーが効果的に吸収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1、2に示すように、振動エネルギー吸収装置10を有する建物12が存在する。建物12は、ほぼ四角形の平面形状を有し、該平面形状と対応する平面形状を有する中央部12aを有する。建物12は、中央部12aに間隔を置いて配置された複数の内柱14、16と、前記四角形の辺に間隔を置いて配置された複数の外柱18、20、22、24とを含む。内柱14、16は、中央部12の隅部に位置する4つの第1内柱14と、該第1内柱の間に位置する少なくとも1つの第2内柱16とを含む。第1内柱14は、第2内柱16より断面積及び断面二次モーメントが大きい。
【0014】
外柱18、20、22、24は、それぞれが第1内柱14を縦方向に結ぶ直線上に位置する複数の第1外柱18と、それぞれが第1内柱14を横方向に結ぶ直線上に位置する複数の第2外柱20とを含む。また、外柱18、20、22、24は、前記横方向に互いに隣接する2つの第1外柱18の間及び前記縦方向に互いに隣接する2つの第2外柱20の間のそれぞれに位置する少なくとも1つの第3外柱22と、建物12の隅部に位置する複数の第4外柱24とを含む。第1外柱18及び第2外柱20のそれぞれは、第3外柱22及び第4外柱24より断面積及び断面二次モーメントが大きい。
【0015】
建物12は、互いに隣接する2つの内柱14、16の間、前記縦方向に互いに隣接する第1内柱14と第1外柱18との間、前記横方向に互いに隣接する第1内柱14と第2外柱20との間及び互いに隣接する2つの外柱18、20、22、24の間のそれぞれに上下方向に間隔を置いて配置された複数の第1梁30a、30b、30cを含む。
【0016】
図3、5に示すように、第3外柱22は、その上端部36に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部38を有する。伸長部38は、前記四角形の辺に垂直な縦断面で見て上端部36の幅36aより小さい幅38aを有する。
【0017】
建物12は、第3外柱22の伸長部38の幅38aの方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分40を有する第2梁42を含む。第2梁42は、梁部分40の間に第3外柱22の伸長部38を受け入れている。第2梁42は、前記横方向に互いに隣接する2つの第1外柱18の間及び前記縦方向に互いに隣接する2つの第2外柱20の間のそれぞれに配置されており、各端部が第1外柱18又は第2外柱20と結合されている。
【0018】
第1梁30a、30b、30cは、図1に示したように、複数の第1大梁30aと、各第1大梁の上方及び下方のそれぞれに位置する複数の小梁30bと、第1大梁30a及び小梁30bの上方にあって第2梁42と同じ高さに位置する第2大梁30cとを含む。第1大梁30a及び第2大梁30cは、小梁30bより断面積及び断面二次モーメントが大きい。
【0019】
第1内柱14と、第1外柱18と、前記縦方向に互いに隣接する2つの内柱14、16間の第1大梁30a及び第2大梁30cと、第1内柱14と第1外柱18との間の第1大梁30a及び第2大梁30cとは、地震時に建物10が受ける水平力の前記縦方向の成分に抵抗するラーメン構造を構成する。また、第1内柱14と、第2外柱20と、前記横方向に互いに隣接する2つの内柱14、16間の第1大梁30a及び第2大梁30cと、第1内柱14と第2外柱20との間の第1大梁30a及び第2大梁30cとは、前記水平力の前記横方向の成分に抵抗するラーメン構造を構成する。内柱14、16、外柱18、20、22、24、第1梁30a、30b、30c及び第2梁42のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0020】
第1外柱18、第2外柱20及び第4外柱24は、建物10の周方向と直交する方向における幅寸法26が前記周方向における幅寸法28より大きい。これにより、第1外柱18、第2外柱20及び第4外柱24は、前記周方向の幅寸法28を小さくしても前記直交する方向の幅寸法26を大きくすることにより、外力に対して十分な強度を備えることができる。このため、第1外柱18、第2外柱20及び第4外柱24の前記周方向の幅寸法28を小さくして、互いに隣接する2つの外柱の間の間隔を広くすることができ、建物10内への採光と該建物からの眺望とを良くすることができる。
【0021】
内柱14、16及び外柱18、20、22、24のそれぞれは免震装置32により基礎34上に支持されている(図1)。免震装置32は、例えば、積層ゴム、すなわち鋼板とゴムとを交互に重ねた構造を有する装置からなる。免震装置32は、地震時に基礎34から建物10へ伝わる振動を軽減する。
【0022】
図3に示したように、振動エネルギー吸収装置10は第2梁42の梁部分40の間に配置されている。振動エネルギー吸収装置10は、一端部44が第3外柱22の伸長部38に取り付けられた、第2梁42の梁部分40に平行な棒状部材46と、該棒状部材の他端部48を貫く、棒状部材46に垂直な回転軸50と、該回転軸により貫かれた、回転軸50に垂直な少なくとも1つの板状部材52と、該板状部材に密接する摩擦材54とを有する。
【0023】
棒状部材46の一端部44の第3外柱22の伸長部38への取り付けは、図5に示したように、棒状部材46の両側にあって第3外柱22の伸長部38に固定された取付用部材56と、該取付用部材及び棒状部材46を貫くピン58とによりなされている。このため、棒状部材46は第3外柱22の伸長部38に対してピン58を中心に回転可能である。
【0024】
回転軸50の一端部58は第2梁42の一方の梁部分40に取り付けられており、回転軸50の他端部60は第2梁42の他方の梁部分40に取り付けられている。回転軸50はその軸線を中心に回転可能である。板状部材52は、回転軸50に固定されており、回転軸50が回転することにより回転する。
【0025】
図4、6に示すように、振動エネルギー吸収装置10は、板状部材52から間隔を置いて配置された、上方に開放されたケーシング62を有する。ケーシング62は、第2梁42に取り付けられており、板状部材52の下端部を収容している。摩擦材54は、ケーシング62に入れられた、油、アスファルト等のような粘性体からなり、板状部材52の両側に存在する。摩擦材54は、ケーシング62を介して第2梁42に支持されており、板状部材52の回転により該板状部材と摩擦材54との間に摩擦を生じさせる。
【0026】
板状部材52の数は、図6に示した例では、複数であり、各板状部材52は他の板状部材52から間隔を置かれている。ケーシング62の内部に、それぞれが板状部材52の下端部を受け入れる複数の空間64が設けられており、各空間の内部に前記粘性体が存在する。互いに隣接する2つの空間64は、ケーシング62の内部に設けられた隔壁66により隔てられている。なお、ケーシング62の内部に隔壁66が設けられている図6に示した例に代え、ケーシング62の内部に隔壁66が設けられていなくてもよい。この場合、ケーシング62の内部に、全ての板状部材52の下端部を受け入れる1つの空間(図示せず)が設けられており、該空間の内部に前記粘性体が存在する。板状部材52の数は、任意に変更することができ、複数である図示の例に代え、1つでもよい。棒状部材46、回転軸50、板状部材52及びケーシング62のそれぞれは、金属からなるものでもよいし、合成樹脂のような他の材料からなるものでもよい。
【0027】
ところで、建物12は地震又は風による水平力を受けて振動することがある。このとき、図7に示すように、建物12が変形して該建物の頂部が水平方向に変位する。建物12の頂部がその一方の側(図7における右側)へ変位したとき(図7において前記頂部が変位する前の建物12を破線で示し、前記頂部が変位した後の建物12を実線で示す。)、前記水平方向に間隔を置かれた2つの第2梁42のうち前記一方の側に位置する第2梁42はその下方へ僅かに変位し、他方の側(図7における左側)に位置する第2梁42はその上方へ僅かに変位する。その後、建物12の頂部が前記他方の側へ変位したとき(図示せず)、前記他方の側に位置する第2梁42はその下方へ僅かに変位し、前記一方の側に位置する第2梁42はその上方へ僅かに変位する。このように第2梁42はその上方への変位とその下方への変位とを繰り返す。
【0028】
第2梁42が第1外柱18又は第2外柱20と結合されているため、第2梁42は第1外柱18又は第2外柱20の変形に伴って上下方向に変位する。第2梁42が第3外柱22と結合されていないため、第2梁42が上下方向に変位することにより、第2梁42は第3外柱22に対して上下方向に相対移動する。すなわち、図8に示すように、第2梁42がその上方へ変位することにより、第2梁42は第3外柱22に対して上方へ移動する(図8において移動前の第2梁42を破線で示し、移動後の第2梁42を実線で示す。)。また、図10に示すように、第2梁42がその下方へ変位することにより、第2梁42は第3外柱22に対して下方へ移動する(図10において移動前の第2梁42を破線で示し、移動後の第2梁42を実線で示す。)。
【0029】
図9に示すように、第2梁42が第3外柱22に対して上方へ移動したとき、棒状部材46は、その一端部44が第3外柱22から下向きの力を受けて回転軸50を中心に回転する。また、図11に示すように、第2梁42が第3外柱22に対して下方へ移動したとき、棒状部材46は、その一端部44が第3外柱22から上向きの力を受けて回転軸50を中心に回転する。このように棒状部材46が回転軸50を中心に回転することにより、回転軸50及び板状部材52が回転し、該板状部材と摩擦材54との間に摩擦抵抗が生じる。このため、板状部材52の回転により建物12の振動エネルギーが消費される。このようにして振動エネルギー吸収装置10は前記振動エネルギーを吸収する。これにより、従来の建物において油が孔を経て流れることにより前記振動エネルギーが消費される場合のように前記振動エネルギーの吸収量が前記孔の径の大きさによって制限されることはなく、前記振動エネルギーが効果的に吸収される。
【0030】
摩擦材54は、図6に示した例では、板状部材52における、回転軸50の下方に位置する領域の一部に密接しているが、これに代え、前記領域のほぼ全部に密接していてもよい。摩擦材54が板状部材52に密接する範囲を変更することにより、前記摩擦抵抗の大きさを変えることができる。例えば、前記範囲を広げることにより、前記摩擦抵抗を大きくすることができ、前記範囲を狭めることにより、前記摩擦抵抗を小さくすることができる。これにより前記振動エネルギーの吸収量を任意に変更することができる。
【0031】
図6に示した例では、棒状部材46と各梁部分40との間に複数の板状部材52が存在し、板状部材52は、互いに異なる直径を有する円形を呈している。板状部材52の形状は、互いに異なる直径を有する円形である図6に示した例に代え、等しい直径を有する円形でもよい。板状部材52の数及び前記円形の径は任意に変更することがでる。これにより、前記摩擦抵抗の大きさを変えることができ、前記振動エネルギーの吸収量を任意に変更することができる。
【0032】
図6に示した例では、円形を呈する板状部材52は、前記円形の中心に位置する中央部が回転軸50により貫かれている。ところで、一般に、第2梁42の第3外柱22に対する移動により板状部材52が回転する角度は非常に小さい。このため、板状部材52が回転しても該板状部材の上部が摩擦材54に接触することはなく、板状部材52における、回転軸50の上方に位置する領域は、前記振動エネルギーの吸収に寄与しない。このため、板状部材52は、前記中央部が回転軸50により貫かれている図6に示した例に代え、板状部材52の上端部が回転軸50により貫かれているものでもよい。この場合、板状部材52の形状は、下方に突状を呈する半円形又は扇形とすることができる。
【0033】
摩擦材54は、ケーシング62に入れられた粘性体からなる図6に示した例に代え、棒状部材46の両側に配置された、ブレーキパッドのような部材(図示せず)からなるものでもよい。前記部材は第2梁42に支持されている。この場合においても、摩擦材54は、板状部材52の回転により該板状部材と摩擦材54との間に摩擦を生じさせる。
【0034】
建物12における振動エネルギーを吸収する方法は、まず、棒状部材46と、棒状部材の他端部48を貫く、棒状部材46に垂直な回転軸50と、該回転軸により貫かれた、回転軸50に垂直な少なくとも1つの板状部材52と、該板状部材に密接する摩擦材54とを有する振動エネルギー吸収装置10を用意する。次に、振動エネルギー吸収装置10を、棒状部材46が第2梁42の梁部分40に平行になるように第2梁42の梁部分40の間に配置する。その後、棒状部材46の一端部44及び回転軸50をそれぞれ第3外柱22の伸長部38及び第2梁42に取り付ける。
【0035】
第2梁42は、図2に示した例では、両持ち梁であるが、これに代え、片持ち梁であってもよい。例えば、第3外柱22が第2内柱16を前記縦方向に結んだ直線上に位置し、第3外柱22の伸長部38が前記縦方向に垂直な縦断面で見て上端部36の幅より小さい幅を有し、建物12が、第3外柱22の伸長部38の前記幅の方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有する梁(図示せず)を含み、該梁が第2内柱16と結合されていてもよい。この場合、前記梁は前記梁部分の間に第3外柱22の伸長部38を受け入れており、前記梁部分の間に振動エネルギー吸収装置10が配置されている。振動エネルギー吸収装置10の棒状部材46は前記梁部分に平行であり、回転軸50は前記梁に取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る建物の正面図。
【図2】図1の線2における建物の平面図。
【図3】図2の線3における振動エネルギー吸収装置の平面図。
【図4】図3の線4における振動エネルギー吸収装置の側面図。
【図5】図3の線5における第3外柱及び第2梁の断面図。
【図6】図3の線6における振動エネルギー吸収装置の断面図。
【図7】建物が地震力又は風力を受けたときの、図1の線7における建物の側面図。
【図8】第2梁がその上方へ変位したときの第3外柱及び第2梁の断面図。
【図9】第2梁がその上方へ変位したときの振動エネルギー吸収装置の側面図。
【図10】第2梁がその下方へ変位したときの第3外柱及び第2梁の断面図。
【図11】第2梁がその下方へ変位したときの振動エネルギー吸収装置の側面図。
【符号の説明】
【0037】
10 振動エネルギー吸収装置
12 建物
18 第1外柱
20 第2外柱
22 第3外柱
36 上端部
38 伸長部
40 梁部分
42 第2梁
44 一端部
46 棒状部材
48 他端部
50 回転軸
52 板状部材
54 摩擦材
62 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部であって縦断面で見て前記上端部の幅より小さい幅を有する伸長部を有する柱と、
該柱の前記伸長部の前記幅の方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有し、該梁部分の間に前記柱の前記伸長部を受け入れる梁と、
該梁と結合された他の柱と、
前記梁部分の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを含み、
該振動エネルギー吸収装置は、前記梁の前記梁部分に平行な棒状部材であって一端部が前記柱の前記伸長部に取り付けられた棒状部材と、
該棒状部材の他端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸であって前記梁に取り付けられた回転軸と、
該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、
該板状部材に密接する摩擦材とを有する、建物。
【請求項2】
前記振動エネルギー吸収装置は、前記板状部材から間隔を置いて配置され、かつ該板状部材の下端部を収容する、上方に開放されたケーシングを有し、前記摩擦材は、前記ケーシングに入れられた粘性体からなる、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
棒状部材と、
該棒状部材の端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸と、
該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、
該板状部材に密接する摩擦材とを含む、振動エネルギー吸収装置。
【請求項4】
上端部に設けられた、該上端部から上方へ伸びる伸長部であって縦断面で見て前記上端部の幅より小さい幅を有する伸長部を有する柱と、該柱の前記伸長部の前記幅の方向に間隔を置かれた、互いに平行な2つの梁部分を有し、該梁部分の間に前記柱の前記伸長部を受け入れる梁と、該梁と結合された他の柱とを含む建物における振動エネルギーを吸収する方法であって、
一端部が前記柱の前記伸長部に取り付けられる棒状部材と、該棒状部材の他端部を貫く、前記棒状部材に垂直な回転軸と、該回転軸により貫かれた、前記回転軸に垂直な少なくとも1つの板状部材と、該板状部材に密接する摩擦材とを含む振動エネルギー吸収装置を、前記棒状部材が前記梁の前記梁部分に平行になるように前記梁の前記梁部分の間に配置すること、
前記振動エネルギー吸収装置の前記棒状部材の前記一端部及び前記回転軸をそれぞれ前記柱の前記伸長部及び前記梁に取り付けることを含む、振動エネルギーを吸収する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−228226(P2009−228226A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71647(P2008−71647)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】