説明

振動制御装置

【課題】 制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供する。
【解決手段】 荷重支持部10に対して相対移動する第2移動手段32と、一端側35a1を第2移動手段32に当接された第1ねじりバネ35aと、一端側35b1を設置部Fに当接された第2ねじりバネ35bと、一端を第2移動手段32に、他端を設置部Fに回動可能に枢支されると共に、第1ねじりバネ35aと第2ねじりバネ35bとの間に配置されるバネ支持部材33とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の搭乗部、特に移動体等に設置されるシート等の搭乗部に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて シート下の直動型電動アクチュエータを動作制御してシートに加わる振動を抑制するシート用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図17(a)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121のみでする場合、停止状態を含め常にアクチュエータ121の出力が必要となる。また、図17(b)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121とトーションスプリング122でする場合、停止状態ではアクチュエータ121の出力を0とすることができるが、シートSの振動を制御する場合、トーションスプリング122のバネ力が反力となってしまい、振動制御分の出力の他にバネの反力分の出力がアクチュエータ121に必要となり、大きな出力が要求されていた。また、トーションスプリング122自体も大きくなり、組み付け性が悪かった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであって、小型のねじりバネで組み付け性の良い振動制御装置及び制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、設置部と、荷重を支持する荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、一端側を前記第2移動手段に当接された第1ねじりバネと、一端側を前記設置部に当接された第2ねじりバネと、一端を前記第2移動手段に、他端を前記設置部に回動可能に枢支されると共に、前記第1ねじりバネと前記第2ねじりバネとの間に配置されるバネ支持部材とを有することを特徴とする。
【0006】
また、前記第1ねじりバネの一端側と前記第2移動手段との間に配置されると共に、前記第1ねじりバネの一端側との当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記第2ねじりバネの一端側と前記設置部との間に配置されると共に、前記第2ねじりバネの一端側との当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記調整手段は、スライド式アクチュエータであることを特徴とする。
【0009】
また、前記バネ支持部材に回動可能に配置されると共に、前記バネ支持部材と前記第1ねじりバネ及び前記第2ねじりバネの他端側との当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記調整手段は、前記バネ支持部材に軸支されたカム式アクチュエータであることを特徴とする。
【0011】
また、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、設置部と、荷重を支持する荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、一端側を前記第2移動手段に当接された第1ねじりバネと、一端側を前記設置部に当接された第2ねじりバネと、一端を前記第2移動手段に、他端を前記設置部に回動可能に枢支されると共に、前記第1ねじりバネと前記第2ねじりバネとの間に配置されるバネ支持部材とを有するので、小型のねじりバネを適用することができ、組み付け性が良好になり、さらに調整幅も大きくとることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、前記第1ねじりバネの他端側と前記第2移動手段との間に配置されると共に、前記第1ねじりバネの一端側との当接位置を調整する調整手段を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振手段の出力を低減し小型の制振手段で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、前記第2ねじりバネの一端側と前記設置部との間に配置されると共に、前記第2ねじりバネの一端側との当接位置を調整する調整手段を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振手段の出力を低減し小型の制振手段で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記調整手段は、スライド式アクチュエータであるので、荷重に対する強度を強くすることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、前記バネ支持部材に回動可能に配置されると共に、前記バネ支持部材と前記第1ねじりバネ及び前記第2ねじりバネの他端側との当接位置を調整する調整手段を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振手段の出力を低減し小型の制振手段で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、前記調整手段は、前記バネ支持部材に軸支されたカム式アクチュエータであるので、前記第1ねじりバネ及び前記第2ねじりバネの角度を均等に変化させ、装置のバランスが良くなり、寿命が延びる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、10は荷重支持部、11は荷重支持部材、12は第1移動手段の一例としての第1スライダ、13は第1案内手段の一例としての第1スライダレール、20は振動制御部、21は制振手段の一例としての制振用アクチュエータ、22は検知手段の一例としての荷重センサ、23は検知手段の一例としての加速度センサ、31は第2案内手段の一例としての第2スライダレール、32は第2移動手段の一例としての第2スライダ、33はバネ支持部材、35はねじりバネ、Fは設置部、Sはシートである。
【0020】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床等の設置部Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上のシートS等の荷重の振動をアクティブに制御するものである。
【0021】
荷重支持部10は、シートSを支持する荷重支持部材11、荷重支持部材11に設けた第1スライダ12及び設置部Fに設置された第1スライダレール13等を有する。荷重支持部材11は、シートSの下方に設置され、第1スライダレール13により上下方向に案内される第1スライダ12を有し、振動制御部20及びねじりバネ35に載置されている。第1スライダ12は、荷重支持部材11に設けられ、第1スライダレール13により上下方向に案内され、設置部Fに対して相対移動する。第1スライダレール13は、設置部Fに設置され、第1スライダ12及び荷重支持部材11を上下方向に案内する。
【0022】
振動制御部20は、ボイスコイルモータ等の制振用アクチュエータ21、ロードセル等の荷重センサ22、加速度センサ23等を有する。制振用アクチュエータ21は、下部を設置部Fに設置、上部を荷重支持部材11に当接され、荷重センサ22や加速度センサ23等の状態を検知するセンサからの信号により、上下動可能に制御される。荷重センサ22は、シートSと荷重支持部材11の間に備えられ、加速度センサ23は、荷重支持部10上の加速度を検知するもので、その検出値により制振用アクチュエータ21を制御するものである。なお、本実施形態では、加速度センサ23を適用したが、速度センサや変位センサ等の荷重支持部10上の状態を検知するものを適用してもよい。
【0023】
第2スライダレール31は、荷重支持部材11に設置され、第2スライダ32を移動可能に案内する。第2スライダ32は、バネ支持部材33の一端に連結されると共に、第2スライダレール31に案内され、荷重支持部10に対して相対移動するものである。
【0024】
バネ支持部材33は、ねじりバネ35を支持するもので、第1ねじりバネ35aと第2ねじりバネ35bの間に配置される。ねじりバネ35は、コイル部35a3の中心で回動可能に第2スライダ32に支持され、一端側35a1を第2スライダ32に連結し、他端側35a2をバネ支持部材33に連結する第1ねじりバネ35aと、一端側35b1を設置部Fに連結し、コイル部33b3及び他端側35b2をバネ支持部材33に連結する第2ねじりバネ35bとを有する。また、コイル部35c中心軸に棒状又は筒状等の部材を挿入し、第2スライダ32に枢支してもよい。
【0025】
なお、それぞれの部材の配置は、相互に干渉せず、正常に機能すれば、様々なものを考慮できる。
【0026】
このような構造の振動制御装置1では、シートSに乗員等の荷重が搭載されると、第1スライダ12及び第2スライダ32が移動する。それと共に、第1ねじりバネ35a及び第2ねじりバネ35bは、それぞれ付勢力に抗して一端側35a1,35b1と他端部35a2,35b2の角度が小さくなる。
【0027】
このように、シートS上の荷重を第1ねじりバネ35a及び第2ねじりバネ35bで受けるので、一つのバネで受けるよりも負荷の小さいバネで形成することができ、装置の組み付け性が向上する。
【0028】
図2は、第2実施形態における振動制御装置1を示す。本実施形態は、図1の構造に、荷重によるモーメントと、ねじりバネの負荷に対するモーメントを釣り合わせるカウンタバランス部30として、第2スライダレール31、第2スライダ32、バネ支持部材33、ねじりバネ35の他に、ねじりバネ35bの取付角度を調整することができるプリロード調整用アクチュエータ34及び第2バネ支持部材36を付加したものである。
【0029】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床等の設置部Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上のシートS等の荷重の振動をアクティブに制御すると共に、カウンタバランス部30で荷重に対する力の釣り合いを設定し、自重をキャンセルするものである。
【0030】
カウンタバランス部30は、第2スライダレール31、第2スライダ32、バネ支持部材33、ねじりバネ35、第2バネ支持部材36等を有する。第2スライダレール31、第2スライダ32、バネ支持部材33及びねじりバネ35については、第1実施例と同様なので、説明は省略する。
【0031】
プリロード調整用アクチュエータ34は、設置部Fと第2ねじりバネ35bの間に設置され、第2バネ支持部材36を支持し、荷重センサ22や加速度センサ23等からの荷重信号により、第2バネ支持部材36との当接箇所を移動し、ねじりバネ35の取付角度を変更するものである。本実施形態では、第2バネ支持部材36の角度を変更可能なスライド式プリロード調整用アクチュエータ34を使用する。
【0032】
図3は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。加速度センサ23及び荷重センサ22からの入力信号を制御手段としてのECU40に入力し、制振用アクチュエータ21及びプリロード調整用アクチュエータ34を制御することで、荷重にあわせてアクティブに振動を制御する。
【0033】
次に、プリロード調整制御について説明する。図4は、プリロード調整制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、振動のない停止時における荷重を荷重センサ22により検出する(ST1)。次に、ステップ2で、検出した荷重値の一定時間分をECU40に読み込む(ST2)。続いて、ステップ3で、一定時間分の荷重値から例えば平均値を計算して基準荷重値を算出する(ST3)。次に、ステップ4で、算出した基準荷重値にあわせてプリロード調整用アクチュエータ34を作動制御する(ST4)。
【0034】
図5は、プリロード調整制御前後の振動制御装置1の状態を示すもので、図5(a)はプリロード調整制御前、図5(b)はプリロード調整制御後の状態を示すものである。また、図6は、プリロード調整用アクチュエータ34及びねじりバネ35部分の拡大図である。図5(a)に示すプリロード調整制御前の状態から、図5(b)に示すように、例えば乗員PがシートSに座り、初期荷重に乗員Pの荷重が足されると、カウンタバランス部30のバネ支持部材33が時計方向に回動し、ねじりバネ35に負荷がかかり、第1ねじりバネ35aの他端側35a2と第2スライダ32の間の角度θ1及び第2ねじりバネ35bの他端側35b1と設置部Fの間の角度θ2が変更する。そこで、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させ、図6に示すように、第2ねじりバネ35の一端側35b2の角度φを変更することにより、荷重とねじりバネ35による負荷とを釣り合わせる。
【0035】
図7は、荷重によるモーメントとねじりバネによるモーメントの関係を示すグラフである。横軸は水平面に対するバネ支持部材33及びねじりバネ35の一端側35a1,35b1の角度θ、縦軸はモーメントの大きさを示す。また、M1はシートS上に何もない初期状態での荷重による第1モーメント、M1'はシートS上に人等が載置された状態での荷重による第1'モーメント、M2は初期状態でのねじりバネ35の第2モーメント、M2'はシートS上に人等が載置された状態でのねじりバネ35の第2'モーメントである。
【0036】
図7に示すように、初期状態で、第1モーメントM1と第2モーメントM2は、ほぼ釣り合いを保持しており、荷重が変化した場合でも第2ねじりバネ35の他端側35b2の水平面に対する角度φを調整することで、第1'モーメントM1'と第2'モーメントM2'の釣り合いを保持することができる。
【0037】
このように、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させることにより、荷重がキャンセルされ、その状態から振動制御をすることができるようになる。
【0038】
次に、本実施形態の振動制御について説明する。図8は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ11で、振動時の加速度を加速度センサ23により検出する(ST11)。次に、ステップ12で、ECU40において制振用アクチュエータ21の推力を計算する(ST12)。推力計算は、例えば、加速度×フリクション×ゲイン×(−1)等の計算式やあらかじめ加速度に対応する推力の値を記憶しておくことにより実行する。ここで、計算式におけるゲインは制御の遅れ分、−1は向きの反転を表す。続いて、ステップ13で、ステップ12において計算した推力を制振用アクチュエータ21に指示する。
【0039】
次に、他の振動制御の実施形態について説明する。この実施形態では、加速度センサ23に代えて、加重センサ22を適用する。図9は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ21で、振動時の荷重を荷重センサ22により検出する(ST21)。次に、ステップ22で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値と同じか比較する(ST22)。同じ場合、制振用アクチュエータ21を作動せず、振動制御を終了する。同じでない場合、ステップ23で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きいか判断する(ST23)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合、ステップ24で、制振用アクチュエータ21を縮ませる(ST24)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合、ステップ25で、制振用アクチュエータ21を伸ばす(ST25)。
【0040】
図10は、振動制御の状態を示すもので、図10(a)は制振用アクチュエータ21を収縮した状態、図10(b)は制振用アクチュエータ21を伸張した状態を示すものである。
【0041】
図10(a)は、ステップ13に対応する加速度から求めた推力指示が制振用アクチュエータ21の収縮の場合又はステップ24に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を収縮すると、第2スライダ32が前方に移動すると共に、カウンタバランス部30のバネ支持部材33が時計方向に回動する。この時、ねじりバネ35の一端側35a1,35b1と他端側35a2,35b2との間の角度が変化し小さくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力、つまりモーメントギャップ(第1モーメントM1と第2モーメントM2の差)は小さいものとなり、制振用アクチュエータ21の出力も小さく抑えることができる。
【0042】
図10(b)は、ステップ13に対応する加速度から求めた推力指示が制振用アクチュエータ21の伸張の場合又はステップ25に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を伸張すると、第2スライダ32が後方に移動すると共に、カウンタバランス部30のバネ支持部材33が反時計方向に回動する。この時、ねじりバネ35の一端側35a1,35b1と他端側35a2,35b2との間の角度が変化し大きくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力、つまりモーメントギャップ(第1モーメントM1と第2モーメントM2の差)は小さいものとなり、アクチュエータの推力も小さく抑えることができる。
【0043】
図11は、本実施形態の振動制御装置1を用いた場合と、図17に示す従来技術の場合とをシミュレーションで比較した結果を示す。シミュレーションは、振幅25mm周期750mmの波状路を速度70km/hで走行する条件で、荷重の振動を0にするために必要な制振用アクチュエータを求めた。
【0044】
図11(a)は、図17(a)に示すように、シートの支持をアクチュエータのみでする場合、図11(b)は、図17(b)に示すように、シートの支持をアクチュエータとねじりバネでする場合、図11(c)は、本実施形態の場合である。
【0045】
このように、荷重とねじりバネ35による負荷は、ほぼ釣り合い状態を保持することができるので、制振用アクチュエータ21の出力を小さくし、小さなスペースに設置することができる。
【0046】
図12は、第3実施形態を示すもので、第2実施形態で用いたスライダ式のプリロード調整用アクチュエータ34を第2スライダに設置したものである。
【0047】
図13は、第4実施形態を示すもので、第2実施形態で用いたスライダ式のプリロード調整用アクチュエータ34に代えて、カム式のプリロード調整用アクチュエータ37を適用し、設置部Fに配置したものである。なお、カム式のプリロード調整用アクチュエータ37を第2スライダに設置してもよい。
【0048】
図14は、第5実施形態のプリロード調整制御前後の振動制御装置1の状態を示すもので、図15は、プリロード調整用アクチュエータ38及びねじりバネ35部分の拡大図である。
【0049】
図14(a)は、第5実施形態のプリロード調整制御前の振動制御装置1の状態を示すもので、カム式のプリロード調整用アクチュエータ38を適用し、バネ支持部材33に設置したものである。カム式のプリロード調整用アクチュエータ38は、バネ支持部材33に軸支される軸部38aと略楕円形のカム部38bを有する。
【0050】
図14(b)は、第5実施形態のプリロード調整制御後の振動制御装置1の状態を示すもので、例えば乗員PがシートSに座り、初期荷重に乗員Pの荷重が足されると、カウンタバランス部30のバネ支持部33が時計方向に回転し、ねじりバネ35に負荷がかかり、第1ねじりバネ35aの他端側35a2と第2スライダ32の間の角度θ及び第2ねじりバネ35bの他端側35b2と設置部Fの間の角度θが変更する。そこで、プリロード調整用アクチュエータ38を作動させ、カム部38aを回動させる。そして、図15に示すように、第1ねじりバネ35aの他端側35a2及び第2ねじりバネ35bの他端側35b2のバネ支持部33に対する角度φを変更することにより、荷重とねじりバネ35による負荷とを釣り合わせる。
【0051】
図16は、第5実施形態の振動制御の状態を示すもので、図16(a)は制振用アクチュエータ21を収縮した状態、図16(b)は制振用アクチュエータ21を伸張した状態を示すものである。
【0052】
図16(a)は、ステップ13に対応する加速度から求めた推力指示が制振用アクチュエータ21の収縮の場合又はステップ24に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を収縮すると、第2スライダ32が前方に移動すると共に、カウンタバランス部30のバネ支持部材33が時計方向に回動する。この時、ねじりバネ35の一端側35a1,35b1と他端側35a2,35b2との間の角度が変化し小さくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力は小さいものとなり、制振用アクチュエータ21の出力も小さく抑えることができる。
【0053】
図16(b)は、ステップ13に対応する加速度から求めた推力指示が制振用アクチュエータ21の伸張の場合又はステップ25に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を伸張すると、第2スライダ32が後方に移動すると共に、カウンタバランス部30のバネ支持部材33が反時計方向に回動する。この時、ねじりバネ35の一端側35a1,35b1と他端側35a2,35b2との間の角度が変化し大きくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力は小さいものとなり、アクチュエータの推力も小さく抑えることができる。
【0054】
このように、本実施形態の振動制御装置1は、設置部Fと、荷重を支持する荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する制振用アクチュエータ21を有する振動制御部20とを備えた振動制御装置1において、荷重支持部10は、設置部Fに対して相対移動する第1スライダ13を有し、前記カウンタバランス部30は、荷重支持部10に対して相対移動する第2スライダ32と、一端側35a1を前記第2スライダ32に当接された第1ねじりバネ35aと、一端側35b1を設置部Fに当接された第2ねじりバネ35bと、一端を第2スライダ32に、他端を設置部Fに回動可能に枢支されると共に、第1ねじりバネ35aと第2ねじりバネ35bとの間に配置されるバネ支持部材33とを有するので、小型のねじりバネを適用することができ、組み付け性が良好になり、さらに調整幅も大きくとることができる。
【0055】
また、第1ねじりバネ35aの一端側35a1と設置部Fとの間に配置されると共に、第1ねじりバネ35aの一端側35a1との当接位置を調整するプリロード調整用アクチュエータ34を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振用アクチュエータ21の出力を低減し小型の制振用アクチュエータ21で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0056】
また、第2ねじりバネ35bの一端側35b1と設置部Fとの間に配置されると共に、第2ねじりバネ35bの一端側35b1との当接位置を調整するプリロード調整用アクチュエータ34を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振用アクチュエータ21の出力を低減し小型の制振用アクチュエータ21で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0057】
また、プリロード調整用アクチュエータ34は、スライド式アクチュエータであるので、荷重に対する強度を強くすることができる。
【0058】
また、バネ支持部材33に回動可能に配置されると共に、バネ支持部材33と第1ねじりバネ35a及び第2ねじりバネ35bの他端側35b2との当接位置を調整するプリロード調整用アクチュエータ38を有するので、自重をキャンセルすることができ、制振用アクチュエータ21の出力を低減し小型の制振用アクチュエータ21で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0059】
また、プリロード調整用アクチュエータ38は、バネ支持部材33に軸支されたカム式アクチュエータであるので、第1ねじりバネ35a及び第2ねじりバネ35bの角度を均等に変化させ、装置のバランスが良くなり、寿命が延びる。
【0060】
また、荷重支持部10上の状態を検知する加重センサ22又は加速度センサ23等を備え、荷重センサ22又は加速度センサ23等で検知した状態に応じてプリロード調整用アクチュエータ34又は制振用アクチュエータ21を作動するECU40を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】第2実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図3】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図4】プリロード調整制御のフローチャートを示す図である。
【図5】プリロード調整制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図6】プリロード調整用アクチュエータ及びねじりバネ部分の拡大図である。
【図7】荷重によるモーメントとねじりバネによるモーメントの関係を示すグラフである。
【図8】振動制御のフローチャートを示す図である。
【図9】他の振動制御のフローチャートを示す図である。
【図10】振動制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図11】第2実施形態の振動制御装置と従来の技術とを比較したシミュレーションを示す図である。
【図12】第3実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図13】第4実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図14】第5実施形態のプリロード調整制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図15】プリロード調整用アクチュエータ及びねじりバネ部分の拡大図である。
【図16】振動制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図17】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…振動制御装置、10…荷重支持部、11…荷重支持部材、12…第1移動手段(第1スライダ)、13…第1案内手段(第1スライダレール)、20…振動制御部、21…制振用アクチュエータ(制振手段)、22…荷重センサ(検知手段)、23…加速度センサ(検知手段)、30…カウンタバランス部、31…第2案内手段(第2スライダレール)、32…第2移動手段(第2スライダ)、33…バネ支持部材、34…スライド式プリロード調整用アクチュエータ(調整手段)、35…ねじりバネ(付勢手段)、36…第2バネ支持部材、37,38…カム式プリロード調整用アクチュエータ(調整手段)、40…ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部と、荷重を支持する荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、
前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、
前記カウンタバランス部は、
前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、
一端側を前記第2移動手段に当接された第1ねじりバネと、
一端側を前記設置部に当接された第2ねじりバネと、
一端を前記第2移動手段に、他端を前記設置部に回動可能に枢支されると共に、前記第1ねじりバネと前記第2ねじりバネとの間に配置されるバネ支持部材と
を有することを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記第1ねじりバネの一端側と前記第2移動手段との間に配置されると共に、前記第1ねじりバネの一端側との当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
前記第2ねじりバネの一端側と前記設置部との間に配置されると共に、前記第2ねじりバネの一端側と当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項4】
前記調整手段は、スライド式アクチュエータであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の振動制御装置。
【請求項5】
前記バネ支持部材に回動可能に配置されると共に、前記バネ支持部材と前記第1ねじりバネ及び前記第2ねじりバネの他端側との当接位置を調整する調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項6】
前記調整手段は、前記バネ支持部材に軸支されたカム式アクチュエータであることを特徴とする請求項5に記載の振動制御装置。
【請求項7】
前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の振動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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