説明

振動波駆動装置の制御装置、及び、振動波駆動装置の制御方法

【課題】被駆動体を移動させる振動波駆動装置に対して位相差制御或いは電圧制御を行っている最中に、固定した振動子駆動周波数よりも振動子の共振周波数が高周波側にシフトする現象を抑制することを実現する。
【解決手段】制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子を備えた振動型アクチュエータに対して駆動信号を与え、この駆動信号の位相差及び電圧の少なくとも一方を変更して、振動型アクチュエータを駆動制御する。その際、駆動信号の位相差及び電圧の少なくとも一方を変更するときには、変更しないときに比較して、前記駆動信号の周波数を高周波側の所定の周波数に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータ等の振動波駆動装置の制御装置、及び、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の質点に楕円運動を生じさせ、被駆動体を駆動するタイプの振動型アクチュエータに関する様々な提案(例えば、特許文献1など)がなされており、例えば図15に示すような構成が知られている。
【0003】
図15は、従来の振動型アクチュエータの基本的な構成を示す一例を示す外観斜視図である。
【0004】
図15に示すように、この振動型アクチュエータの振動子は、矩形の板状に形成された金属材料から成る弾性体4を備え、弾性体4の裏面には圧電素子(電気−機械エネルギー変換素子)5が接合されている。弾性体4の上面の所定位置には、複数の突起部6が設けられている。
【0005】
この構成によれば、圧電素子5に交流電圧を印加することにより、弾性体4の長辺方向における2次の屈曲振動と、弾性体4の短辺方向における1次の屈曲振動とが同時に発生し、突起部6に楕円運動が励起される。そして、突起部6に被駆動体7を加圧接触させることにより、被駆動体7を突起部6の楕円運動によって直線的に駆動することができるようになっている。つまり、突起部6がこの振動子の駆動部として作用する。
【0006】
図16は、図15に示した振動型アクチュエータにおける圧電素子5の分極領域の一例を示す模式図である。また、図17(a),(b)は、弾性体4の振動モードを示す斜視図であり、図18は、弾性体4の突起部6に励起する楕円運動を説明するための説明図である。
【0007】
上記圧電素子5は、図16に示すように、分極処理されて2つの電極A1、A2を備えている。上記2つの電極A1、A2に同相の交流電圧V1,V2を印加することにより、上記矩形の弾性体4において長辺方向と平行な方向に延びた2本の節を有する1次の屈曲振動を励振する。これが図17(a)に示す第1の振動モードとなる。
【0008】
また、2つの電極A1、A2に逆相の交流電圧V1,V2を印加することにより、矩形の弾性体4の短辺方向と平行な方向に延びた3本の節を有する2次の屈曲振動を励振する。これが図17(b)に示す第2の振動モードとなる。
【0009】
そして、上記第1の振動モードと第2の振動モードの組み合わせにより突起部6に楕円運動を励振し、このとき、突起部6に被駆動体を加圧接触させると、被駆動体を直線的に駆動することができるようになっている。
【0010】
ここで、図17(a)に示す第1の振動モードによって、突起部6には、被駆動体7との加圧接触する接触面と垂直な方向に振動の振幅(以下、Z軸振幅という)が変化する振動が励起される。また、図17(b)に示す第2の振動モードによって、突起部6には、被駆動体の駆動方向と平行な方向に振動の振幅(以下、X軸振幅という)が変化する振動が励起される。
【0011】
上記第1の振動モードと第2の振動モードの2つの振動モードを組み合わせることにより、突起部6に図18に示すように楕円運動が励起することができ、Z軸振幅とX軸振幅の大きさの比が、楕円運動の楕円比を表す。
【0012】
図19は、2相の電圧V1,V2の位相差を−180度〜180度で変化させたときの第1の振動モード及び第2の振動モードにおける突起部6の振動の振幅の変化を説明するためのグラフである。
【0013】
分極された圧電素子5における2つの電極A1、A2に印加する2相の交流電圧V1、V2の位相差を−180度〜180度に変化させたときの、第1の振動モードと第2の振動モードでの突起部6の振動の振幅の変化は、それぞれ図19の曲線P1とP2に示すようになる。同図の横軸が位相差を示し、縦軸が第1の振動モードと第2の振動モードでの振動の振幅を示している。
【0014】
第1の振動モードと第2の振動モードの組み合わせにより突起部6に楕円運動が励起し、印加する交流電圧V1、V2の位相差を変更することにより、突起部6の励起する楕円運動の楕円比を調整することができる。図19の下部に、横軸の位相差に応じた楕円形状を示す。
【0015】
そして、交流電圧V1、V2の位相差をその正負の符号を切り替えるように変化させることにより、被駆動体7を直線的に駆動する振動型アクチュエータによる被駆動体7の駆動方向を切り替えることができる。さらに、位相差を任意の値から正負の符号を含めて連続的に切り替える(例えば、位相差を正負の符号を含めて90度から−90度まで連続的に変更する)ことにより、駆動方向と速度を連続的に変化させることが可能になる。
【0016】
また、圧電素子に印加する交流電圧の周波数を振動子の共振周波数に近づけることにより、駆動速度を速くすることができ、印加する交流電圧の周波数を振動子の共振周波数から遠ざけることにより、駆動速度を遅くすることができることが一般的に知られている。
【0017】
例えば、上記の図15に示した振動型アクチュエータの基本的構成において、駆動周波数と駆動速度の関係は、図20に示すような関係になる。即ち、振動子の共振周波数を駆動速度のピークとし、共振周波数よりも高周波側ではなだらかに駆動速度が減少し、且つ低周波側では急激に駆動速度が減少するようなアクチュエータ特性となる。
【0018】
このように、図16に示すように分極処理された圧電素子5を備えた振動型アクチュエータは、圧電素子5に印加する2つの交流電圧V1、V2の周波数を変化させることによって速度制御を行う(周波数制御)ことが可能である。また、交流電圧V1、V2の位相を変化させることによって速度制御を行う(位相差制御)ことが可能である。
【0019】
次に、図15に示した振動型アクチュエータの圧電素子5の分極領域の別の一例について説明する。
【0020】
図21は、図15の振動型アクチュエータにおける圧電素子5の分極領域の別の一例を示す模式図である。
【0021】
本例の圧電素子5は、図21に示すように、分極処理されて電極A1、A2を備え、さらに電極A1は、「+(プラス)」に分極処理された圧電領域と、「−(マイナス)」に分極処理された圧電領域を備えている。
【0022】
図21に示す圧電領域に配置された電極A2に交流電圧V2を印加すると、1次の屈曲振動を励振する。これが図17(a)に示す第1の振動モードとなる。また、図21に示す圧電領域に配置された電極A1に交流電圧V1を印加すると、2次の屈曲振動を励振する。これが図17(b)に示す第2の振動モードとなる。
【0023】
ここで、交流電圧V1とV2を位相の90°ずれた同一周波数とすることにより、突起部6に楕円運動が発生する。よって、突起部6に被駆動体7を加圧接触させることにより、被駆動体7を直線的に駆動することができるようになっている。
【0024】
そして、電極A2に印加する交流電圧V2の電圧振幅を調整することにより、図17(a)に示すZ軸振幅の大小を調整することができ、電極A1に印加する交流電圧V1の振幅を調整することにより、図17(b)に示すX軸振幅の大小を調整することができる。なお、デジタル回路またはロジック回路を用いて、電極A1、A2に印加する交流電圧V1とV2のデューティー比を調整することにより、X軸振幅、Z軸振幅の大小を調整することも可能である。
【0025】
また、図18に示すように、突起部6に励起する楕円運動のX軸振幅を大きくすることにより、被駆動体の移動速度を速くすることができ、X軸振幅を小さくすることにより、被駆動体の移動速度を遅くすることができる。このように、電極A1に印加する電圧V1の振幅を可変にすることにより、図22(a),(b)に示すように、楕円運動のX軸振幅を可変させて速度制御を行うことができる。
【0026】
このように、図21に示すように分極処理された圧電素子5を備えた振動型アクチュエータは、圧電素子5に印加する2つの交流電圧V1、V2の周波数或いは電圧振幅の大小を変化させることによって速度制御を行う(周波数制御または電圧制御)ことが可能である。
【0027】
したがって、上述した周波数制御、位相差制御、及び電圧制御を組み合わせて振動型アクチュエータの位置制御を行うことができる。
【0028】
従来、振動型アクチュエータの駆動において、位置制御における位置決め精度とダイナミックレンジを両立するために、周波数制御と位相差制御、或いは、周波数制御と電圧制御を組み合わせることが提案されている。周波数制御は、位置決め精度は高くないがダイナミックレンジに優れており、位相差制御及び電圧制御は、ダイナミックレンジは広くないが位置決め精度に優れている。そのため、周波数制御で素早くおおまかな位置制御を行ってから、位相差制御、或いは、電圧制御に切り替えて精度の高い位置決めを行うという提案である。
【特許文献1】特開平10−210775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、本願出願人は、楕円運動の被駆動体の進行方向における振幅が小さくなることにより、共振周波数が大きくなるということを見出した。これは、振動子の弾性体の剛性が非線形性を持ち、振幅変位に基づいて剛性が変化し、振動子の共振周波数が変更するためである。つまり、駆動周波数を変更せずとも、駆動信号の位相差や電圧を変更することによって、駆動周波数が共振周波数より低周波側となってしまい、急激に駆動速度が減少する現象(以下、急減速現象と記す)が生じてしまう。即ち、位置決め精度の高い位相差制御や電圧制御であっても不感帯が生じてしまうということである。
【0030】
図23は、圧電素子に印加する2相の電圧の位相差と駆動周波数と駆動速度との関係(すなわち、位相差と振動子の共振周波数との関係)を示すグラフである。例えば、図23に示すように、図16に示す圧電素子5の電極A1に印加する電圧V1と電極A2に印加する電圧V2の位相差が90度から遠ざかるほど、第2の振動モードでの振動の振幅が小さくなり、第2の振動モードでの振動子の共振周波数が高くなる。位相差を90度に設定した状態で、駆動周波数を位相差60度のときの共振周波数に設定した場合、このときの駆動周波数は位相差90度のときの共振周波数よりも高周波側にあるので急減速現象は生じない。ところが、駆動周波数を位相差60度のときの共振周波数に固定したまま、位相差を60度よりも小さくシフトさせると、駆動周波数が、60度未満の位相差での共振周波数より低周波側になって、突然急減速現象が発生することになる。
【0031】
別の例を説明する。図24は、圧電素子に印加する交流電圧のデューティー比と振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図24に示すように、図21に示す圧電素子5の電極A1に印加する電圧V1の振幅(デューティー比)を小さくするほど、第2の振動モードでの振動の振幅(駆動速度)が小さくなり、第2の振動モードでの振動子の共振周波数が高くなる。デューティー比を50%に設定した状態で、駆動周波数をデューティー比30%での共振周波数に設定した場合、このときの駆動周波数はデューティー比50%での共振周波数よりも高周波側にあるので急減速現象は生じない。ところが、駆動周波数をデューティー比50%のときの共振周波数に固定したまま、デューティー比を30%よりも小さくシフトさせると、30%未満のデューティー比での共振周波数が、固定した駆動周波数より高周波側にシフトして、急減速現象が発生することになる。
【0032】
このように、位置精度の高い位相差制御或いは電圧制御を行っている最中であっても、固定した駆動周波数よりも共振周波数が高周波側にシフトし、駆動速度が急減する急減速現象が発生し、振動波駆動装置による制御に不感帯が生ずる可能性があった。
【0033】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、次のような振動波駆動装置の制御装置及び振動波駆動装置の制御方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。即ち、被駆動体を移動させる振動波駆動装置に対して位相差制御或いは電圧制御を行っている最中に、固定した駆動周波数よりも共振周波数が高周波側にシフトする現象を抑制することを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は上記目的を達成するため、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御装置において、前記振動子の操作量を決定する操作量決定手段と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定手段と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の位相差を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定手段とを有し、前記周波数決定手段は、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする。
【0035】
また、本発明は、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御装置において、前記振動子の操作量を決定する操作量決定手段と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定手段と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の電圧を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定手段とを有し、前記周波数決定手段は、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御方法であって、前記振動子の操作量を決定する操作量決定工程と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定工程と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の位相差を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定工程とを有し、前記周波数決定工程は、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の位相差を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の位相差を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御方法であって、前記振動子の操作量を決定する操作量決定工程と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定工程と、前記操作量に基づいて前記駆動信号の電圧を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定工程とを有し、前記周波数決定工程は、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の電圧を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の電圧を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、被駆動体を移動させる振動波駆動装置に対して位相差制御或いは電圧制御を行っている最中に、固定した駆動周波数よりも共振周波数が高周波側にシフトする現象を抑制することができる。これにより、被駆動体に対する高精度な駆動制御が可能であり、しかも幅広いダイナミックレンジを保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態では、周波数制御と位相差制御を組み合わせて、振動型アクチュエータ(振動波駆動装置)を制御する制御装置について説明する。
【0041】
<第1の実施の形態における制御装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動型アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【0042】
この制御装置は、被駆動体の停止位置の目標値を生成する位置指令生成部17を有し、その出力側には、比較部18を介して操作量決定部22が接続されている。比較部18は、位置指令生成部17から出力された目標値と、位置検出部16から出力された被駆動体の現在位置とを比較する。操作量決定部22は、比較部18の比較結果から、振動型アクチュエータ15の残りの操作量eを演算する。位置検出部16は、振動型アクチュエータ15の被駆動体の位置を検出するものであり、例えば、リニアスケールやエンコーダにて構成される。振動型アクチュエータ15は、前述の図15に示した構成の振動型アクチュエータであり、矩形の板状に形成された金属材料から成る弾性体4の裏面に圧電素子5が接合され、弾性体4の表面に駆動部としての複数の突起部6が設けられた振動子を備えている。
【0043】
また、操作量決定部22の出力側には、楕円比決定部19と駆動周波数決定部20が接続され、さらに、楕円比決定部19及び駆動周波数決定部20の出力側が駆動信号生成部21に接続されている。駆動信号生成部21は、楕円比決定部19と駆動周波数決定部20の出力を受けて、実際に振動型アクチュエータ15の圧電素子5に印加する交流電圧を生成する。楕円比決定部19は、操作量決定部22の出力から、振動型アクチュエータ15の突起部6に生成する楕円運動のX軸振幅とZ軸振幅の比率を決定する。駆動周波数決定部20は操作量決定部22の出力から、振動型アクチュエータ15に印加する交流電圧の駆動周波数を決定する。そして、駆動信号生成部21は、楕円比決定部19と駆動周波数決定部20の出力を受けて、実際に振動型アクチュエータ15の圧電素子5に印加する交流電圧を生成する。
【0044】
本実施形態では、上述した楕円比決定部19、駆動周波数決定部20、及び駆動信号生成部21はCPU上でソフトウェアとして実現しており、駆動信号生成部21は関数発生器で構成される。ここで関数発生器はカウンタ主体で構成されるロジック回路から構成されている。操作量決定部22はPI制御器またはPID制御器で構成される。
【0045】
また、駆動周波数決定部20の出力は、駆動信号生成部21のロジック回路により、駆動周波数の基準となる第1の周期信号を生成する。さらにロジック回路は、楕円比決定部19の出力に従って、第1の周期信号に対して位相差を持たせて、第1の周期信号と同一周波数の第2の周期信号を生成する。
【0046】
駆動信号生成部21により生成された第1、第2の周期信号は電力増幅器により増幅され、駆動信号として振動型アクチュエータ15の圧電素子5に入力される。また前記第1と第2の周期信号を増幅するための電力増幅器はスイッチング素子または昇圧回路により構成されてもよい。
【0047】
本実施形態においては、振動型アクチュエータ15における弾性体4の裏面に接合された圧電素子5(図16参照)に印加する交流電圧V1、V2の位相差を制御することで、突起部6に生成する楕円運動の楕円比を変化させる。
【0048】
即ち、図16に示すように2つの電極A1、A2が分極配置された圧電素子5を有する振動型アクチュエータ15において、第1と第2の振動モードの組み合わせで突起部6に楕円運動を生じさせて被駆動体の駆動を行う場合、次のようになる。
【0049】
2つの電極A1、A2に印加する2相の交流電圧V1、V2の振幅と周波数を同一とし、且つ互いの位相差を180度とした場合、ある瞬間では電極A1の圧電領域が伸びるとともに、電極A2の圧電領域が縮むため、第2の振動モードが励起されることになる。
【0050】
逆に、交流電圧V1、V2の互いの位相差を0度とした場合、ある瞬間において電極A1と電極A2の圧電領域が同時に伸縮するため、第1の振動モードが励起されることになる。
【0051】
そして、交流電圧V1とV2の位相差を0度、180度、或いは−180度のいずれか以外とすることにより、第1の振動モードと第2の振動モードが同時に起こる。このときの、第1の振動モードでの振動子の突起部6の振動の振幅(A)と、第2の振動モードでの振動子の突起部6の振動の振幅(B)と、それぞれ電極A1、A2に印加する交流電圧V1、V2の位相差との関係が次式で示される。
【0052】
A=|2×cos((π−θ)/2)| ・・・(1)
B=|2×cos(θ/2)| ・・・(2)
図19に、上記の式(1),(2)の位相差を−180度〜180度に変化させたときの、第1の振動モード(P1)と第2の振動モード(P2)での振動の振幅を示す。前述したように、図19の下部に、横軸の位相差に応じた楕円形状を示す。このように、印加する交流電圧V1、V2の位相差θを変更することにより、突起部6の励起する楕円運動の楕円比を調整することができる。
【0053】
<楕円比決定部19及び駆動周波数決定部20の機能>
次に、楕円比決定部19及び駆動周波数決定部20の詳細な機能について、図2を参照して説明する。
【0054】
図2は、第1の実施の形態に係る楕円比決定部19及び駆動周波数決定部20の機能を説明するための説明図である。
【0055】
図2中のグラフにおいて、横軸が操作量eであり、縦軸がそれぞれ位相差θ、駆動周波数frを表わしている。操作量決定部22から出力された操作量eを楕円比決定部19の入力値とする。そして、この入力値により、楕円比決定部19が不図示のメモリに記憶された値を読み出して楕円比を決定し、この楕円比に応じて駆動周波数決定部20が駆動周波数frを演算する。
【0056】
楕円比決定部19によって決定される出力値は、圧電素子5に印加する交流電圧V1とV2の位相差θである。図2に示すように、楕円比決定部19における振幅比、即ち位相差θは、上限の閾値として90度に設定されており、被駆動体の駆動方向が逆であれば下限の閾値として−90度に設定されている。
【0057】
振動型アクチュエータ15の突起部6に生じる楕円運動は、位相差が上限の閾値、或いは下限の閾値に近いほど、被駆動体の移動方向における振幅が大きくなり、被駆動体の移動速度が速くなる。
【0058】
本実施形態では、操作量決定部22より入力された操作量eに応じてメモリから読み出した値が、図2に示すように、位相差θの上限の閾値或いは下限の閾値に達しない場合には、駆動周波数frを周波数上限値とし、前記読み出した値で位相差θを設定する。逆に、操作量決定部22より入力された操作量eに応じてメモリから読み出した値が、図2に示すように、位相差θの上限の閾値或いは下限の閾値に達している場合には、位相差θを上限の閾値或いは下限の閾値とし、不足分を周波数指令値として出力する。
【0059】
なお、ここで周波数上限値とは、振動型アクチュエータの駆動に用いる周波数帯域のうち、最も高周波となる値、或いはその近傍の値に設定される。また、事前に駆動周波数frをこの周波数上限値に設定した状態で、位相差を90度から−90度の間に設定したときの計測結果から、楕円比決定部19が設定すべき値を求めて、不図示のメモリに記憶させておく。
【0060】
このように、位相差制御を行う場合には、駆動周波数を、アクチュエータの駆動に用いる周波数帯域の最も高い周波数に固定する。言い換えれば、周波数制御を行うときに設定される駆動周波数は、位相差制御を行うときに設定される駆動周波数よりも、必ず低い周波数に設定される。これにより、位相差制御によって第2の振動モードでの振動子の共振周波数が高周波側にシフトした場合であっても、急減速現象を防止することができる。
【0061】
<第1の実施の形態に係る制御動作>
次に、第1の実施の形態に係る制御動作について、図3を参照して説明する。
【0062】
図3は、第1の実施の形態に係る、振動型アクチュエータ15の位置制御を行う際のCPU上の制御動作を示すフローチャートである。
【0063】
外部信号またはCPU内部で振動型アクチュエータ15を起動する命令が下されると、まずはSTEP1において制御開始関数が呼び出される。関数は割り込み処理により呼び出されてもよい、またループ関数内に構成されてもよい。
【0064】
次のSTEP2においては、位置指令生成部17から振動型アクチュエータの被駆動体の目標位置を読み込み、比較部18がこの目標位置と位置検出部16から出力された被駆動体の現状の位置を比較し、その差分を操作量決定部22に出力する。操作量決定部22は、比較部18の出力値に基づいて制御演算を行い、操作量eを出力する。
【0065】
続くSTEP3においては、STEP2で生成された操作量eに対して、楕円比決定部19が不図示のメモリから読み出した値が90度或いは−90度に達しているか否かを判断し、達している場合にはSTEP5に進む。逆に、楕円比決定部19が読み出した位相差の値が90度或いは−90度に達しない、即ち閾値未満である場合にはSTEP4に進む。
【0066】
STEP4においては、駆動周波数決定部20が駆動周波数を図2に示す周波数上限値に固定し、楕円比決定部19が操作量eに応じた位相差を読み出して設定する。
【0067】
STEP5においては、楕円比決定部19が被駆動体の移動方向に応じて、位相差θを上限の閾値と下限の閾値のいずれかに固定する。そして、楕円比決定部19が位相差θを図2に示す位相差上限値に固定し、駆動周波数決定部20が操作量eに応じた駆動周波数frを読み出して設定する。駆動周波数決定部20は、操作量eが位相差上限の閾値以上である場合には、式(3)のように操作量eと位相差上限との差に比例定数aを乗じた値を前記周波数上限値から減じた値に駆動周波数frを変更する。比例定数aは位相差変更に対する速度変化量を周波数変更に対する速度変化量相当に変換するための定数である。
【0068】
駆動周波数[Hz]=周波数上限値[Hz]−a・(位相差上限値[°]−操作量[°])…(3)
その後のSTEP6においては、駆動信号生成部21が、楕円比決定部19と駆動周波数決定部20で設定された位相差θと駆動周波数frに基づいて、交流電圧から成る2相の周波数信号を生成する。
【0069】
そして、STEP7において、制御を終了する。ここで割り込み処理で制御開始関数の呼び出しを行った場合は次の割り込み処理を待つ。またループ関数内に配置された制御開始関数の場合はSTEP1が呼び出される。
【0070】
<第1の実施の形態に係る利点>
以上のように、本実施形態では、制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子5を備えた振動型アクチュエータ15に対して駆動信号を与え、この駆動信号の位相差θを変更して、振動型アクチュエータ15を駆動制御する。その際、駆動信号の位相差θを変更するときには、変更しないときに比較して、駆動信号の周波数(駆動周波数fr)を高い周波数に固定する。これにより、位相差制御の最中に、位相差制御によって振動子の共振周波数が駆動周波数frよりも高周波側にシフトすることを抑制することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
上述した第1の実施形態では、周波数制御と位相差制御を組み合わせて振動型アクチュエータを駆動する構成を例にあげて説明を行った。第2の実施形態では、周波数制御と電圧制御を組み合わせて振動型アクチュエータを駆動する構成について説明を行う。
【0072】
<第2の実施の形態に係る構成>
本実施形態の制御装置の構成は、第1の実施形態と同様に図1で表わすことができる。また、振動型アクチュエータの構成は、図15に示した構造において弾性体4の裏面に接合された圧電素子5の分極構成が図21に示すものとなっている。
【0073】
そして、本実施の形態における、振動型アクチュエータに対する駆動制御は、圧電素子5に印加する交流電圧V1,V2の電圧比を制御することで、突起部6に励起する楕円運動の楕円比を変化させるものである。
【0074】
前述したように、図21に示す電極A2に交流電圧V2を印加すると、図17(a)に示す第1の振動モードとなる。また、電極A1に交流電圧V1を印加すると、図17(b)に示す第2の振動モードとなる。上記第1の振動モードと第2の振動モードの2つのモードを組み合わせることにより、突起部6に図18に示すように楕円運動を励起することができる。
【0075】
図4は、圧電素子5に印加する交流電圧V1,V2の波形図である。図21に示す電極A1に、図4に示すデューティー比の交流電圧V1を入力することにより、上記楕円運動の振幅比を調整することができる。
【0076】
<楕円比決定部19の機能>
次に、本実施の形態に係る楕円比決定部19の機能について説明する。
【0077】
図5は、第2の実施形態の楕円比決定部19の機能を説明するための説明図である。
【0078】
本実施形態は、楕円比決定部19の構成が第1の実施形態とは異なる。以下、この点について詳細に説明する。
【0079】
図5のグラフにおいて、横軸が操作量決定部22にて演算された操作量eであり、縦軸が上から順に、位相差θ、デューティー比ekv、駆動周波数frを表わしている。操作量決定部22から出力された操作量eを楕円比決定部19の入力値とする。そして、その入力値により、楕円比決定部19が不図示のメモリに記憶された値を読み出して楕円比を決定し、この楕円比に応じて駆動周波数決定部20が駆動周波数frを演算する。
【0080】
楕円比決定部19において決定される出力値は、圧電素子5に印加する交流電圧V1とV2の位相差θと、交流電圧V1、V2のデューティー比ekvである。図5中に記載された、楕円比決定部19における駆動方向決定値とは、入力値の正負の符号に基づく任意の値であり、2つの電極A1,A2に印加する電圧V1、V2の位相差θである。即ち、被駆動体を移動させる方向に応じて、電圧V1とV2の位相差θは、90度及び−90度のいずれかが選択される。
【0081】
図5に示すように、楕円比決定部19における振幅比、即ちデューティー比ekvは、上限の閾値として50%に設定されている。デューティー比が上限の閾値に近いほど、振動型アクチュエータの突起部6に生じる楕円運動は、被駆動体の移動方向における振幅が大きくなり、被駆動体の移動速度が速くなる。
【0082】
本実施形態では、操作量決定部22から入力された操作量eに応じて不図示のメモリから読み出した値が、図5におけるデューティー比ekvの上限の閾値に達しない場合には、駆動周波数frを周波数上限値とし、読み出したデューティー比を設定する。逆に、操作量決定部22から入力された操作量eに応じてメモリから読み出した値が、図5におけるデューティー比の上限の閾値に達している場合には、位相差を上限の閾値である50%に固定し、不足分を周波数指令値として出力する。
【0083】
このように、電圧制御を行う場合には、駆動周波数frを、アクチュエータの駆動に用いる周波数帯域の最も高い周波数に固定する。言い換えれば、周波数制御を行うときに設定される駆動周波数frは、電圧制御を行うときに設定される駆動周波数よりも、必ず低い周波数に設定される。これにより、電圧制御によって第2の振動モードでの振動子の共振周波数が高周波側にシフトした場合であっても、急減速現象を防止することができる。
【0084】
<第2の実施の形態に係る制御動作>
次に、第2の実施の形態に係る制御動作について、図6を参照して説明する。
【0085】
図6は、第2の実施の形態に係る、振動型アクチュエータ15の位置制御を行う際のCPU上の制御動作を示すフローチャートである。
【0086】
本フローにおけるSTEP11及びSTEP12の各処理は、前述した図3のフローにおけるSTEP1及びSTEP2の各処理とそれぞれ同じである。
【0087】
次のSTEP13において、STEP12で生成された操作量eに対して、楕円比決定部19が不図示のメモリから読み出したデューティー比ekvの値が上限の閾値に達していると判別された場合にはSTEP15に進む。逆に、楕円比決定部19が読み出したデューティー比ekvの値が上限の閾値に達しない、即ち閾値未満である場合にはSTEP14に進む。
【0088】
STEP14において、駆動周波数決定部20が駆動周波数frを図5に示す周波数上限値に固定し、楕円比決定部19が被駆動体の移動方向に応じた位相差θを設定するとともに、操作量eに応じたデューティー比ekvを読み出して設定する。
【0089】
STEP15において、楕円比決定部19が被駆動体の移動方向に応じた位相差θを設定し、且つデューティー比ekvを上限の閾値に固定する。楕円比決定部19がデューティー比を図5に示すデューティー比の上限値に固定し、駆動周波数決定部20が操作量eに応じた駆動周波数frを読み出して設定する。
【0090】
駆動周波数決定部20は、操作量eがデューティー比上限の閾値以上である場合には、式(4)のように、操作量eとデューティー比上限の差に比例定数aを乗じた値を前記周波数上限値から減じた値に駆動周波数frを変更する。
【0091】
ここで、比例定数aは、デューティー比ekvの変更に対する速度変化量を周波数変更に対する速度変化量相当に変換するための定数である。
【0092】
駆動周波数[Hz]=周波数上限値[Hz]−a・(デューティー比上限値[°]−操作量[°])…(4)
その後のSTEP16においては、駆動信号生成部21が、楕円比決定部19と駆動周波数決定部20において設定された位相差θ、デューティー比ekv及び駆動周波数frに基づいて、交流電圧からなる2相の周波数信号を生成する。
【0093】
そして、STEP17において、制御を終了する。ここで割り込み処理で制御開始関数の呼び出しを行った場合は次の割り込み処理を待つ。またループ関数内に配置された制御開始関数の場合はSTEP11が呼び出される。
【0094】
<第2の実施の形態に係る利点>
以上のように、本実施形態では、制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子5を備えた振動型アクチュエータ15に対して駆動信号を与え、この駆動信号の電圧を変更して、振動型アクチュエータ15を駆動制御する。その際、駆動信号の電圧を変更するときには、変更しないときに比較して、駆動信号の周波数(駆動周波数fr)を高い周波数に固定する。これにより、電圧制御の最中に、電圧制御によって振動子の共振周波数が駆動周波数frよりも高周波側にシフトすることを抑制することができる。
【0095】
[第3の実施形態]
上述した第1の実施形態では、周波数制御と位相差制御を組み合わせて振動型アクチュエータを駆動する構成を例にあげて説明を行った。
【0096】
第3の実施形態では、周波数制御と位相差制御に加え、振動型アクチュエータの個体差のばらつきと、環境温度の変化による特性変動を考慮して、振動型アクチュエータを駆動する構成について説明を行う。
【0097】
<第3の実施形態における制御装置の構成>
図7は、本発明の第3の実施形態に係る振動型アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の振動型アクチュエータの制御装置は、図1に示す構成に対して、パラメータ設定部23を追加したものであり、パラメータ設定部23以外の構成は図1に示すものと同様である。
【0098】
このパラメータ設定部23には、位置検出部16から出力された被駆動体の現在位置と、操作量決定部22から出力された操作量eが入力される。そしてパラメータ設定部23は周波数上限値を駆動周波数決定部20に出力し、駆動周波数決定部20はこの周波数上限値を、位相差制御を行う際の周波数上限値として設定する。
【0099】
<パラメータ設定部23の機能>
次に、本実施の形態に係るパラメータ設定部23の機能について説明する。
図10は、第3の実施形態のパラメータ設定部23の機能を説明するための説明図である。
【0100】
図10において、パラメータ設定部23は内部メモリ24、微分部25、および、比較部26を備えている。内部メモリ24は、操作量決定部22から出力された操作量eに応じて複数用意された参照速度を予め記憶している。この参照速度は、操作量eを与えたときの実際の振動型アクチュエータの駆動速度を実験的に求めたものでも良いし、操作量eを与えたときの振動型アクチュエータの駆動速度の理想値を求めたものでも良い。
【0101】
微分部25は位置検出部16から出力された被駆動体の現在位置を微分することで、被駆動体の実際の駆動速度を演算する。
【0102】
比較部26は、内部メモリ24から出力される参照速度と、微分部25から出力された被駆動体の実際の駆動速度を比較し、この比較結果から求めた周波数上限値を駆動周波数決定部20に出力する。
【0103】
ここで、図8は、2相の電圧V1とV2の位相差θを90度、デューティー比ekvを50%に設定したときの、振動型アクチュエータの圧電素子の環境温度と振動子の共振周波数の関係を示すグラフである。図8から、圧電素子の環境温度が高いほど、振動子の共振周波数が低くなることがわかる。これは、図23に示すように、2相の電圧V1とV2の位相差θを10度に設定した場合であっても、圧電素子の環境温度が60℃のときは、環境温度が25℃のときに比較して振動子の共振周波数が低くなる。
【0104】
別の例を説明する。図9は、2相の電圧V1とV2の位相差を90度、デューティー比を50%に設定したときの、3個の振動子(個体1、個体2および個体3)の共振周波数の関係を示すグラフである。図9から、製造誤差などに起因して、個々の振動子の共振周波数にはばらつきが生じることがわかる。例えば、図9に示す振動子の個体1の共振周波数は、個体3、個体2よりも低くなってしまっている。これは、図23に示すように、2相の電圧V1とV2の位相差θを10度に設定した場合であっても、個体1は、個体3および個体2に比較して共振周波数が低くなる。
【0105】
このように圧電素子の環境温度の変化や、振動子の個体差に起因して、振動子の共振周波数が高周波側に推移してしまっている場合には、急減速現象を防止するためにも、周波数上限値を高周波側にシフトさせる必要が生じる。
【0106】
しかしながら、不用意に周波数上限値を高周波側にシフトさせてしまうと、駆動周波数frが周波数上限値の近傍にあるときにおいて、駆動周波数の変化量に対する振動型アクチュエータの駆動力の変化量が小さくなってしまう。そのため、ダイナミックレンジに優れるという周波数制御の特性を活かすことができなくなる。
【0107】
そこで、比較部26が、操作量eに応じて読み出された被駆動体の参照速度と、被駆動体の実際の駆動速度を比較し、パラメータ設定部23が、その差分に応じて位相差制御を行う際の駆動周波数決定部20の周波数上限値を設定している。
【0108】
すなわち、実際の駆動速度が参照速度よりも遅ければ、図8および図9からわかるように、共振周波数が低周波数側にずれていると推定できるため、その差分に応じて周波数上限値を低く設定する。反対に実際の駆動速度が参照速度よりも早いのであれば、その差分に応じて周波数上限値を高く設定する。
【0109】
なお、パラメータ設定部23は、内部メモリ24に代えて、図11に示すように近似部27を備える構成としてもよい。近似部27は、操作量決定部22から出力された操作量eを予め記憶した近似式に適用することにより、参照速度を演算するものである。
【0110】
あるいは、パラメータ設定部23は、内部メモリ24に代えて、図12に示すように制御モデル部28を備える構成としてもよい。制御モデル部28は、予め周波数応答、または、ステップ応答により測定された被駆動体の駆動速度を伝達関数、または、状態方程式で示したものである。この制御モデル部28は、操作量決定部22から出力された操作量eを予め記憶した伝達関数、または、状態方程式に適用することにより、参照速度(推定速度)を演算するものである。
【0111】
本実施形態では、上述したパラメータ設定部23、楕円比決定部19、駆動周波数決定部20、及び駆動信号生成部21はCPU上でソフトウェアとして実現しており、駆動信号生成部21は関数発生器で構成される。ここで関数発生器はカウンタ主体で構成されるロジック回路から構成されている。操作量決定部22はPI制御器またはPID制御器で構成される。
【0112】
なお、被駆動体の駆動速度が安定しない振動型アクチュエータの起動直後には、パラメータ設定部23による周波数上限値の設定変更を行わない構成としてもよい。参照速度と実際の駆動速度の差分が変動する駆動初期時に、比較部26の比較結果に応じて周波数上限値を設定すると、周波数上限値が不安定になってしまうためである。
【0113】
<第3の実施の形態に係る利点>
以上のように、本実施形態では、制御装置は、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子5を備えた振動型アクチュエータ15に対して駆動信号を与え、この駆動信号の電圧を変更して、振動型アクチュエータ15を駆動制御する。その際、駆動信号の位相差θを変更するときには、操作量eに応じて読み出された被駆動体の参照速度と被駆動体の実際の駆動速度との比較結果に応じて設定された周波数上限値に駆動周波数frが固定される。
【0114】
これにより、振動子の個体差や、圧電素子の環境温度の変化による特性変動によって生じる共振周波数のばらつきを補償することができる。
【0115】
なお、本実施形態では、周波数制御と位相差制御を組みわせて振動型アクチュエータを駆動する構成を例にあげて説明を行った。しかしながらこれに限定されるものではなく、第2の実施形態で示すように、周波数制御と電圧制御を組み合わせて振動型アクチュエータを駆動する構成に本実施形態の構成を適用することも可能である。
【0116】
[変形例]
本発明は、上記第1ないし第3の実施の形態に限定されず種々の変形が可能である。例えばその変形例としては次のようなものがある。
【0117】
(1)図5において操作量eに応じてメモリから位相差θ、デューティー比ekv及び駆動周波数frを読み出す方法を示したが、CPUを用いて演算を行った場合にも同様の結果が得られる。また、CPUの代わりにロジック回路やDSP等を用いても同様な効果が得られるのはいうまでもない。
【0118】
(2)上述した第1、第2および第3の実施形態では、被駆動体をリニア駆動する振動型アクチュエータを例にあげて説明を行ったが、振動型アクチュエータの形態はこれに限定されるものではない。例えば図13に示すようなものも適用可能である。
【0119】
図13は、本発明の実施の形態に適用する振動型アクチュエータ(振動波駆動装置)の変形例を示す構造図である。
【0120】
この振動型アクチュエータは、円柱状の弾性体と、その軸方向に振動変位する圧電素子30と、円周方向に回転変位する圧電素子29とを有している。電気−機械エネルギー変換素子として機能する圧電素子29、30に交流電圧を印加することにより、弾性体にねじり共振振動と、軸方向共振振動(縦振動)を同時に発生させ、円柱状の弾性体の上端面(摩擦面)に楕円運動を生じさせるものがある。
【0121】
即ち、図13に示すように、圧電素子29は周方向に分極されており、交流電圧を印加することにより、周方向にねじり振動を励起する。圧電素子30は円柱状の弾性体の厚み方向(軸方向)に分極処理されており、交流電圧を印加することにより軸方向に縦振動を励起する。2相の交流電圧を印加することにより、円柱状の弾性体の摩擦面に楕円運動が励起されるようになっている。
【0122】
この摩擦面と不図示の被駆動体は加圧接触されており、摩擦面と被駆動体はクラッチ的役割をしており、2相の圧電素子に交流電圧を印加することにより、摩擦面と被駆動体を相対的に駆動することができる。
【0123】
この構成では、摩擦面に加圧接触させることにより、被駆動体を楕円運動によって駆動することができるようになっている。
【0124】
軸方向の振動を第1の振動モード、ねじり方向の振動を第2の振動モードとすると2つの振動モードの組み合わせで摩擦面に楕円運動を励起でき、第1と第2の振動モードでの振動振幅の相対比率を変更することにより楕円比を決定できる。
【0125】
このように、ねじり振動と軸方向の振動を組み合わせることでロータを回転させる形式の振動型アクチュエータも存在する。このような振動型アクチュエータにおいても、ねじり方向の振動を励起するための交流電圧のデューティー比を変更する場合に、圧電素子に印加する交流電圧の駆動周波数(円柱状の弾性体の振動周波数)を上述した周波数上限値に固定すればよい。この場合も、電圧制御によってねじり振動の共振周波数が高周波側にシフトした場合であっても、急減速現象を防止することができる。
【0126】
(3)図14(a),(b)は、本発明の実施の形態に適用する振動型アクチュエータの他の変形例を示す構造図である。
【0127】
図14(a),(b)に示すように、この振動型アクチュエータは、円環状の弾性体32の所定周方向位置に複数の突起部31が設けられ、円環状の弾性体32の円周方向に進行波を励起する。弾性体32の裏面に配置された2群の電気−機械エネルギー変換素子として機能する圧電素子33に交流電圧を印加することにより、突起部31に楕円運動を生じさせるものである。
【0128】
図14(a)では、説明を容易にするため、円環状の弾性体32を直線状に展開したものを図示している。
【0129】
弾性体32に接合した2群の圧電素子33に2相の交流電圧を印加することにより、弾性体32に形成された突起部31に楕円運動が励起されるようになっている。突起部31と被駆動体34は加圧接触されており、2群の圧電素子33に交流電圧を印加することにより、弾性体32と被駆動体34を相対的に駆動することができる。
【0130】
そして、この構成では、2群の圧電素子33に印加する交流電圧の位相差を変更することにより、突起部31に励起する楕円運動の楕円比を操作することができる。楕円比を操作するために一方の定在波に対する他方の定在波の位相を変更する場合に、圧電素子33に印加する交流電圧の駆動周波数を上述した周波数上限値に固定すればよい。この場合も、位相差制御によって一方の定在波の共振周波数が高周波側にシフトした場合であっても、急減速現象を防止することができる。
【0131】
なお、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0132】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0133】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0134】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0135】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第1の実施形態に係る振動型アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る楕円比決定部及び駆動周波数決定部の機能を説明するための説明図である。
【図3】第1の実施の形態に係る制御動作を示すフローチャートである。
【図4】圧電素子に印加する交流電圧の波形図である。
【図5】第2の実施形態における楕円比決定部の機能を説明するための説明図である。
【図6】第2の実施の形態に係る制御動作を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施形態に係る振動型アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】2相の電圧V1とV2の位相差を90度、デューティー比を50%に設定したときの、振動型アクチュエータの振動子の駆動周波数と駆動速度との関係を2つの環境温度のそれぞれについて示すグラフである。
【図9】相の電圧V1とV2の位相差を90度、デューティー比を50%に設定したときの、3つの圧電素子の各々について駆動周波数と駆動速度との関係を示すグラフである。
【図10】第3の実施形態のパラメータ設定部23の機能を説明するための説明図である。
【図11】第3の実施形態のパラメータ設定部23の機能を説明するための別の説明図である。
【図12】第3の実施形態のパラメータ設定部23の機能を説明するための別の説明図である。
【図13】実施の形態に適用する振動型アクチュエータの変形例を示す斜視図である。
【図14】実施の形態に適用する振動型アクチュエータの他の変形例を示す構造図である。
【図15】従来の振動型アクチュエータの基本的な構成を示す一例を示す外観斜視図である。
【図16】図15に示した振動型アクチュエータにおける圧電素子の分極領域の一例を示す模式図である。
【図17】弾性体の振動モードを示す斜視図である。
【図18】弾性体の突起部に励起する楕円運動を説明するための説明図である。
【図19】第1の振動モード及び第2の振動モードでの振動の振幅を説明するためのグラフである。
【図20】振動型アクチュエータの周波数と速度の関係を示すグラフである。
【図21】図15の振動型アクチュエータにおける圧電素子の分極領域の別の一例を示す模式図である。
【図22】弾性体の突起部に励起する楕円運動を説明するための説明図である。
【図23】圧電素子に印加する2相の電圧の位相差と駆動周波数と駆動速度との関係を示すグラフである。
【図24】圧電素子に印加する交流電圧のデューティー比と駆動周波数と駆動速度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0137】
4 弾性体
5 圧電素子
6 突起部
7 被駆動体
15 振動型アクチュエータ
16 位置検出部
17 位置指令生成部
18、26 比較部
19 楕円比決定部
20 駆動周波数決定部
21 駆動信号生成部
22 操作量決定部
23 パラメータ設定部
24 内部メモリ
25 微分部
27 近似部
28 制御モデル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御装置において、
前記振動子の操作量を決定する操作量決定手段と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定手段と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の位相差を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定手段とを有し、
前記周波数決定手段は、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする振動波駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記操作量が閾値未満である場合には、前記周波数決定手段が前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値に固定した状態で、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を変更し、
前記操作量が前記閾値以上である場合には、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の位相差を固定した状態で、前記周波数決定手段が前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数帯域で変更することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記楕円比決定手段は、
前記駆動信号の位相差を変更することによって、前記被駆動体の移動方向における前記楕円運動の振幅を変化させるように前記楕円運動における楕円の比率を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記被駆動体の駆動速度を検出する検出手段と、
前記操作量に応じて前記被駆動体の参照速度を求める手段と、
前記駆動速度と、前記参照速度の比較結果に応じて、前記周波数上限値を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項5】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御装置において、
前記振動子の操作量を決定する操作量決定手段と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定手段と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の電圧を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定手段とを有し、
前記周波数決定手段は、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする振動波駆動装置の制御装置。
【請求項6】
前記操作量が閾値未満である場合には、前記周波数決定手段が前記駆動信号を前記周波数上限値に固定した状態で、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を変更し、
前記操作量が前記閾値以上である場合には、前記楕円比決定手段が前記駆動信号の電圧を固定した状態で、前記周波数決定手段が前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数帯域で変更することを特徴とする請求項5に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項7】
前記楕円比決定手段は、
前記駆動信号の電圧を変更することによって、前記被駆動体の移動方向における前記楕円運動の振幅を変化させるように前記楕円運動における楕円の比率を変更することを特徴とする請求項5または6に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記被駆動体の駆動速度を検出する検出手段と、
前記操作量に応じて前記被駆動体の参照速度を求める手段と、
前記駆動速度と、前記参照速度の比較結果に応じて、前記周波数上限値を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
【請求項9】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御方法であって、
前記振動子の操作量を決定する操作量決定工程と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定工程と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の位相差を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定工程とを有し、
前記周波数決定工程は、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の位相差を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の位相差を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする振動波駆動装置の制御方法。
【請求項10】
電気−機械エネルギー変換素子を備えた振動子に駆動信号を与えることで前記振動子の駆動部に楕円運動を生じさせ、該楕円運動によって、前記振動子の駆動部に接触する被駆動体を移動させる振動波駆動装置の制御方法であって、
前記振動子の操作量を決定する操作量決定工程と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の周波数を決定する周波数決定工程と、
前記操作量に基づいて前記駆動信号の電圧を変更することで前記楕円運動における楕円の比率を決定する楕円比決定工程とを有し、
前記周波数決定工程は、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の電圧を変更するときには、前記駆動信号の周波数を周波数上限値に設定し、前記楕円比決定工程が前記駆動信号の電圧を変更しないときには、前記駆動信号の周波数を前記周波数上限値よりも低い周波数に設定することを特徴とする振動波駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−89586(P2009−89586A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206985(P2008−206985)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】