説明

振動減衰装置、特にトーション振動ダンパ、並びに力伝達装置

【課題】所定のトルクにおける可能な回転角を、トーションダンパ特性線の特定領域において拡大するもしくは当該特定領域におけるばね定数を減じることができるようにする。
【解決手段】振動減衰装置2であって、互いに同軸的に配置されている一次部分3と二次部分4とが、周方向において互いに相対的に制限されて回動可能であり、かつトルク伝達手段5と緩衝連結手段6とを用いて互いに連結されており、二次部分4が少なくとも間接的に、伝動装置入力軸14と連結可能であり、少なくとも間接的に二次部分(4)と結合されているランプ8が、周方向において二次部分の部分領域にわたって延びていて軸方向において変化する勾配を備えて形成されており、ランプ8がさらに、予負荷ユニット11を介して接続エレメント13に支持されかつ軸方向においてシフト可能に支承された少なくとも1つの対応エレメント9,9.1に対して作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動減衰装置、特にトーション振動ダンパであって、少なくとも一次部分と二次部分とが設けられていて、該一次部分と二次部分とが互いに同軸的に配置されていて、周方向において互いに相対的に制限されて回動可能であり、さらに一次部分と二次部分とがトルク伝達手段と緩衝連結手段とを用いて互いに連結されており、二次部分が少なくとも間接的に、接続エレメント、特に伝動装置入力軸と連結可能である形式のものに関する。本発明はまた、力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動減衰装置は、従来技術に基づいて種々様々な構成のものが公知である。これらの振動減衰装置は、使用される減衰原理もしくは緩衝原理の形式に応じて、機械式の緩衝形式、特に摩擦緩衝形式又はハイドロリック式緩衝形式又は、組み合わせられた緩衝形式、例えば機械・ハイドロリック式の緩衝形式に基づいている。機械式の緩衝装置では、トルク伝達及び緩衝連結は、ばねユニット、特に円弧ばね又は圧縮ばねの形のばねユニットを介して行われ、このようなばねユニットは、一次部分と二次部分との間において、交互に支持されながら該一次部分及び二次部分に配置されていて、このようなばねユニットを介して周方向における回転可能性は、予負荷の変化及び負荷によって生ぜしめられる。この場合伝達されるトルクの値及び可能な緩衝作業の値は、前記ばねユニットの数及び寸法に強く依存している。特に、一次部分と二次部分との間における回転角は、ばねユニットを相応に設計することなしに、任意に増大することは不可能であるが、ばねユニットの相応な設計によって、場合によっては必要な構造空間の著しい増大を引き起こすことがある。さらにばねユニットによって特定のダンパ特性線が決定される。
【0003】
そこでしばしば、例えばDE19626685に基づいて公知のいわゆるランプ式ダンパ(Rampendaempfer)が使用される。このようなランプ式ダンパでは、二次部分に対する一次部分の回動時に、周方向に配置されていて軸方向において上昇勾配を有しかつ間に配置されたころがりエレメント(特に玉)を備えたランプに基づいて、一方の部分が他方の部分に対して、特に一次部分が二次部分に対して軸方向移動するようになっており、この場合一次部分はばねユニットに支持されている。このような移動によって、玉と、両側に配置された相応なエレメントとの接触によって、相応な緩衝特性が生ぜしめられる。
【0004】
別のランプ式ダンパ装置は特にDE10017688A1に記載されている。このDE10017688A1には、いわゆるランプ式ダンパの形の多数の振動減衰装置が開示されており、この公知の振動減衰装置では、簡単化のためにばねエレメントが設けられており、このばねエレメントは板ばねを有していて、第1の接触領域において少なくとも1つの転動体と共働する。この転動体は板ばねの第1の接触領域において作用し、かつ対向して位置している第2の接触領域においてストッパに対して作用する。ストッパと板ばねとは相対的に可動に支承されている。このような相対運動時に板ばねは曲げられる。これによってばねエレメント全体は、極めて有利に製造可能な少数の構成部材から構成することができる。またばねエレメントは軸方向における小さな構造空間で実現することができ、種々様々な緩衝装置との組合せが可能である。この場合個々の転動体は、既に述べたように、周方向における切欠き内において案内され、これらの切欠きは、軸方向における種々異なった勾配によって特徴付けられている。
【0005】
DE3333536に基づいて公知の別の緩衝装置は、汎用の緩衝装置と組み合わせられていて、付加的に、それ自体とフランジとの間に配置された摩擦装置を有している。この摩擦装置は、回動不能な結合のための舌片構成を備えていて軸方向に作用するばね装置と、軸方向において並んで配置された摩擦プレートとから成っており、この場合ばね装置及び摩擦プレートは、それぞれ隣接した部分であるフランジ及びサイドプレートと回動不能に結合されており、ばね装置は、回転角に関連した軸方向のばね力を生ぜしめるために、軸方向において曲げられた波形の扁平成形ばねとして形成されており、この扁平成形ばねは軸方向において上昇する面で、摩擦ピストンと接触していて、ばね装置は、複数の波形を備えたリング状に閉鎖された波形ばね(Wellfeder)を有しており、摩擦プレートの、波形ばねに向けられた面は、接触している波形ばね面の波形形状に相応して波形に形成された形状を有している。フランジの内周部領域に配置された波形ばねを回動不能委に結合するための舌片構成は、軸方向において曲げられた舌片によって特徴付けられていて、この舌片はトーションばね用の窓開口に回動不能に係合している。
【0006】
円弧ばね又はコイルばねを備えた振動減衰装置の構成は、回転角が相対的に制限されていることによって特徴付けられている。ランプ形状における構成は、周方向におけるランプの長さと該ランプの寸法とによって制限されている。
【特許文献1】DE19626685
【特許文献2】DE10017688A1
【特許文献3】DE3333536
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゆえに本発明の課題は、特にコイルばね又は円弧ばねを備えた従来のダンパの、所定のトルクにおける可能な回転角を、トーションダンパ特性線の特定領域において拡大すること、もしくは当該特定領域におけるばね定数を減じることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、請求項1記載の本発明では、振動減衰装置、特にトーション振動ダンパであって、少なくとも一次部分と二次部分とが設けられていて、該一次部分と二次部分とが互いに同軸的に配置されていて、周方向において互いに相対的に制限されて回動可能であり、さらに一次部分と二次部分とがトルク伝達手段と緩衝連結手段とを用いて互いに連結されており、二次部分が少なくとも間接的に、接続エレメント、特に伝動装置入力軸と連結可能である形式のものにおいて、ランプが設けられていて、該ランプが少なくとも間接的に二次部分と結合されていて、周方向において二次部分の部分領域にわたって延びていて軸方向において変化する勾配を備えて形成されており、ランプがさらに、予負荷ユニットを介して接続エレメントに支持されかつ軸方向においてシフト可能に支承された少なくとも1つの対応エレメントに対して作用するようにした。
【0009】
また前記課題を解決するために、請求項23記載の本発明は、1つの入力部と少なくとも1つの出力部とを備えた車両において使用するための力伝達装置であって、ハイドロダイナミック式の構成部材と、該ハイドロダイナミック式の構成部材をロックアップする装置と、請求項1から22までのいずれか1項記載の少なくとも1つの振動減衰装置とを有している力伝達装置である。
【0010】
本発明による振動減衰装置の別の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一次部分と二次部分とを備えた振動減衰装置であって、一次部分と二次部分とが互いに同軸的に配置されていて、周方向において互いに相対的に制限されて回動可能であり、さらに一次部分と二次部分とがトルク伝達手段と緩衝連結手段とを用いて互いに連結されている形式のものにおいて、二次部分と少なくとも間接的に結合されていて軸方向において作用するランプが設けられており、該ランプが、軸方向において少なくとも1つの対応エレメントに対して作用し、該対応エレメントが少なくとも1つの予負荷ユニット、特にばねユニットを介して、接続エレメントに支持されていることを特徴とする。本発明のように、ランプと、汎用の振動減衰系、つまり例えばコイルばね又は円弧ばねのようなばねユニットの形の緩衝連結手段を介して一次部分と二次部分とを連結した連結体の形をした汎用の振動減衰系とを、組み合わせることによって、ばねユニットの形の緩衝連結手段をばね定数に関して小さく設計することができる。それというのは、余剰部分はランプによって緩衝されるからである。従って本発明による解決策によって、緩衝成分は種々様々に互いに組み合わせられ、この場合その都度両方の系の設計に関して、割合もしくは割り当てをシフトさせることができ、ひいては特定のダンパ特性線において有効にさせることができる。
【0012】
二次部分とランプとの結合は、フランジを介して行うことができる。フランジはこの場合回動不能にかつ周方向においては、特定の回転角を制限するために、遊びをもってボスと結合されることができ、このボスは、例えば伝動装置入力軸である二次部分のための接続エレメントと結合可能である。この場合フランジは、二次部分との機能集中のために、一体的な構成部材として形成されていることができる。この場合二次部分は有利には、ランプを加工するための相応な表面加工部を備えた成形構成部材として形成されているか、又は鋳造部材として形成されている。
【0013】
本発明の別の構成によれば、フランジを別体のエレメントとして、相応な結合手段を介して二次部分と回動不能に連結することも可能である。この場合には、汎用の二次構成部分は、後から、本発明によるランプを備えて、簡単に構成することも可能である。
【0014】
高い機能集中及び構成部材集中を得るために、ランプ機能が直接フランジによって引き受けられると有利である。この場合フランジは一体的に形成されていても又は複数部分から形成されていてもよい。
【0015】
対応エレメントは構成に応じて、滑り軸受又はころがり軸受を用いて案内されることができる。滑り軸受を用いて案内されるエレメントは、通常、軸方向において、小さな構造空間しか要しないことによって特徴付けられている。ころがり軸受によって案内されるエレメントを使用することには、摩擦を減じることができるという利点がある。この場合対応エレメントは例えば汎用の玉軸受又はころ軸受を有することができる。
【0016】
同様なことは、例えばばねユニットのような他の機能ユニットに対しても言える。ばねユニットは皿ばねとして構成されていても又は圧縮ばねとして構成されていてもよい。具体的な選択は、該当する専門家の判断に任せられる。例えば特に個々の皿ばねの設計、形状付与及び寸法設定によって、特定のばね特性及び特性のばね特性線を生ぜしめることができ、これに対して圧縮ばねの場合にはばね特性及びばね特性線は比較的変化不能に所定されている。
【0017】
支持エレメントはこの場合直接、ボスもしくは伝動装置入力軸によって形成されることができる。この場合ボスもしくは伝動装置入力軸には、相応に半径方向に張り出したカラーが設けられており、このカラーは、それぞれのばねエレメントのための軸方向のストッパ面を形成する。ボスの構成では、ボスは一体的に形成されていても又は複数部分から形成されていてもよく、しかしながらまた、他の位置固定のエレメントをストッパとして使用することも可能である。
【0018】
ランプを形成する個々の部材の設計、及び接続エレメント並びにランプの勾配によって、系全体のための緩衝率に、所定の枠内で影響を与えることができる。緩衝範囲全体にわたって連続的に存在する直線的な特性線が、ランプを介して調節されると有利である。
【0019】
本発明による解決策は、車両において使用されるハイドロダイナミック式及び機械式の伝動装置分岐路(Getriebezweig)を備えた力伝達装置において使用可能である。この伝動装置分岐路においてこのような装置は例えば、力伝達方向においてハイドロダイナミック式の出力分岐路をバイパスもしくは迂回するための装置に後置されている。
【0020】
ランプ機能を本発明のように実現することは、軸方向で見てランプの片側において行うことも又は両側において行うこともできる。いずれの場合においても、少なくとも1つのストッパにおける支持が必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1には、力伝達装置1の一部を断面した図で、本発明に基づいて構成された振動減衰装置2、特にねじり振動ダンパの基本構造が示されている。この振動減衰装置2は一次部分3と二次部分4とを有しており、両部分3,4は互いに同軸的に配置されていて、周方向において制限されてつまり一定範囲で互いに相対回動可能である。一次部分3及び二次部分4は一体的に構成されていても又は複数部分から構成されていてもよい。図示の実施例では、一次部分3は例えば円板状の2つのエレメント3.1,3.2から成っており、両エレメント3.1,3.2は軸方向において互いに間隔をおいて配置されていて、二次部分4を受容している。一次部分3と二次部分4とはトルク伝達手段5及び緩衝連結手段6を介して互いに連結されている。この場合トルク伝達手段5の機能は緩衝連結手段6によって一緒に引き受けられることもできる。振動減衰装置2は弾性的な連結体として働き、つまりトルクを伝達し、かつ同時に振動を相殺する。この場合一次部分3は少なくとも間接的に力伝達装置1において、図示されていない駆動機械と連結可能であり、これに対して二次部分4は被駆動装置と結合されており、この被駆動装置は例えば、力伝達装置1に後置された伝動装置構成ユニットの伝動装置入力軸によって形成される。図示の実施例では二次部分4と伝動装置入力軸14との連結はボス7を介して行われる。振動減衰装置2の中心軸線はこの場合、該振動減衰装置2の回転軸線Rと合致し、力伝達装置1の回転軸線Rにも相当する。駆動機械から被駆動装置への力伝達方向において一次部分3は入力部分として働き、二次部分4は出力部分として働く。トルク伝達手段5と緩衝連結手段6とは異なった構成を有することができる。図示の構成では、有利には純然たる機械的なダンパであり、トルク伝達手段5は緩衝連結手段6によってばねユニット32の形で形成される。二次部分4は少なくとも間接的に被駆動装置と、図示の実施例ではボス7と結合されている。この場合の連結はランプ8を介して行われる。ランプ8はこの場合二次部分4における周方向で見て少なくとも部分領域にわたって延びていて、軸方向においては上昇するように構成されており、つまりランプ8は軸方向に形成された突出部によって形成され、この突出部は周方向で見て軸方向において増大し、周方向で見て上昇又は下降している。このランプ8に基づいて周方向における回動時に、例えばランプ金属薄板10の形をした対応エレメント9は、回転軸線Rに関連した軸方向において変位させられる。対応エレメント9の軸方向運動は、プレロード可能なもしくは予負荷可能なユニット11によって、特にばねエレメント12によって、軸方向運動距離を制限される。この予負荷可能なユニット11は、この場合接続エレメント13に支持されている。接続エレメント13は有利には、いずれにせよ設けられている被駆動装置もしくは、伝動装置入力軸14と回動不能に連結されたボス7である。ランプ8との連結はフランジ15を介して行われ、このフランジ15は有利には二次部分4と一体的に形成されている。フランジ15は有利には一体的な金属薄板エレメント16として形成されている。図1に示されているように、ランプ8の機能はこのフランジ15に組み込まれている。フランジ15は回動不能にボス7と遊びをもって周方向において連結されている。この場合結合は、フランジ15の内周部19を形成するフランジ15の部分領域20における歯列エレメント17と、ボス7における外周部21を形成する部分領域22に配置された歯列エレメント18とを介して行われる。そしてこの場合歯列は、周方向においてフランジ15とボス7との間における遊びを許し、これによって規定された回転角、例えば5°の回転角を限定することができるように構成されている。
【0023】
図1に示された対応エレメント9は滑り軸受エレメント9.1として形成されていて、ランプ金属薄板10.1を形成する。このランプ金属薄板10.1は軸方向において二次部分4にボス7の領域において接続しており、このボス7と回動不能に結合されているが、軸方向においては摺動可能に案内されており、その結果、ねじりモーメントの導入に基づく一次部分3に対する二次部分4の回動時に、ねじりモーメントはランプ8を介して対応エレメント9に伝達される。対応エレメント9はランプ8に対して平行な表面を有している。言い換えれば、ヒルト歯列(Hirthverzahnung)に似た、対応エレメント9の端面側の歯列は、ランプ8の成形体に係合し、相対回動時に面は互いに滑る。
【0024】
ばねエレメント12は端面側に配置されたダイヤフラムばねもしくは皿ばね23として形成されていて、ボス7に支持されているので、対応エレメント9は軸方向においてボス7に支持される。ボス7における支持は、半径方向に方向付けられていて軸方向のストッパ面24を形成するカラー25において行われる。
【0025】
図1には基本的な可能性が示されており、他の実施形態も可能である。
【0026】
図2には、図1に示された実施例の変化実施例が示されており、この場合ランプ金属薄板10.11,10.12の形をした2つの対応エレメント9.11,9.12が、フランジ15の両側に配置されている。この両ランプ金属薄板10.11,10.12もまた、その内周部19.11,19.12の領域に歯列17.11,17.12を備えて形成されており、これらの歯列17.11,17.12は、ボス7の外周部21に設けられた相補形状を有する歯列18と共働する。両ランプ金属薄板10.11,10.12はこれにより同様にボス7と回動不能に結合されていて、軸方向においては摺動可能に案内されている。支持は両側において行われ、つまりランプ金属薄板10.11,10.12はそれぞれ、有利には皿ばね23.1,23.2の形をしたばねエレメント12.11,12.12を介して、少なくとも間接的にボス7に支持されており、つまり皿ばね23.1は、この実施例においても皿ばね23.1のためには図1におけると同様に、半径方向に方向付けられていて軸方向の接触面24を形成する、ボス7におけるカラー25に支持され、皿ばね23.2は、例えば素材結合(Stoffschluss)によってボス7と回動不能に結合された円板状のエレメント27における軸方向の接触面26に支持されている。その他の構成及び機能形式は、図1に示された実施形態に相当するので、同一エレメントに対しては同一符号が使用されている。
【0027】
図3には、図1及び図2に示された実施態様の変化実施態様が示されている。基本構造は、図1に示された基本構造に相当しており、従って同一エレメントに対しては同一符号が用いられている。図3に示されているように対応エレメント9.3はころがり軸受エレメントとして形成されている。ランプ金属薄板の代わりに、玉軸受28と金属薄板エレメント29とから成る組合せが設けられており、この場合玉軸受28はランプ28と金属薄板エレメント29との間に配置されていて、対応エレメント9.3を形成している。この対応エレメント9.3の支持はばねユニット12を介して行われ、このばねユニット12はこの実施例においても同様に皿ばね23として形成されており、この皿ばね23は、ボス7におけるカラー25の軸方向に向けられた面24に支持されている。
【0028】
図4には図3の変化実施例が示されており、この場合対応エレメント9.4は玉軸受28を有しているのではなく、ころ軸受30を有している。基本構造は図3に示されたのと同じである。
【0029】
図3及び図4にはそれぞれ対応エレメントユニット9.3,9.4の片側における配置形式が示されている。しかしながらまた、図2に示されたように、対応エレメントもしくは対応エレメント9.3,9.4を両側においてフランジもしくはランプ8に配属もしくは対応配置させることも可能である。
【0030】
図5には、図4に示された構成と似た構成が示されているが、この場合支持は両側において行われ、フランジ15もしくはランプを保持するエレメントは、ボス7に位置固定に支持されるのではなく、軸方向において摺動可能に支持エレメント31を介してボス7に支持されるか、又はボス7と回動不能に結合されたエレメント27に支持される。
【0031】
皿ばね23の形をした前記ばねユニット12の代わりに、図示のすべての実施形態において圧縮ばねを使用することも可能であり、この場合圧縮ばねは予負荷されてランプ8に押圧され、つまり接続エレメント特にボス7自体とランプ8との間に配置されていて、このランプ8に対して作用する。
【0032】
ランプ8によって、前記トルクMにおけるダンパの回転角をトーションダンパ特性線の特定の部分領域において拡大することもしくはばね定数の低減を規定することが、可能である。この場合ねじりモーメントはフランジ15に導入され、このフランジ15からランプ8にバイパスされる。ランプ8に基づいて対応エレメント9もしくは対応エレメントユニットが軸方向において変位させられる。この対応エレメントはばね弾性的にストッパにおいて、その軸方向運動距離を制限される。この軸方向運動距離は種々様々に形成されることができる。図6には線図を用いて、ばね定数のための目標関数の経過が示されており、つまり軸方向における移動距離Saxialと回転角βとの関係が示されており、この回転角βは、使用されるばねエレメント、特に皿ばね23又は圧縮ばねの特性とランプ勾配の特性とによって影響を与えられることができる。図6にはこの場合、回転角が横軸に軸方向運動距離が縦軸にとられている。図6の線図から分かるように、ほぼ直線的な特性線つまり一次関数が生ぜしめられ、回転角βの増大に連れて変位Sが増大している。これに対してはランプ勾配によって、大きな影響を与えることができ、つまり周方向で見たランプの軸方向変化の値によって、大きな影響を与えることができる。
【0033】
本発明による解決策は、図1〜5において、機械的な緩衝装置特に摩擦式緩衝装置を備えた振動減衰装置2を例にとって示されている。しかしながら他の実施形態も可能である。さらに本発明による解決策は、同様に液圧式の緩衝原理を備えた構成のためにも使用することができる。
【0034】
本発明による振動減衰ユニットもしくは振動減衰装置は、自体公知の形式で力伝達装置1において使用可能である。特に有利な使用例としては、例えばなお1つのハイドロダイナミック式の構成部材と該ハイドロダイナミック式の構成部材をロックアップする装置LUとを有する力伝達装置1における振動減衰装置2の使用を挙げることができる。この振動減衰装置2は両構成部材に後置されていて、力伝達装置1の出力部に前置されていてもよいし、又はハイドロダイナミック式の構成部材とロックアップのための装置LUとによって形成される一方の出力分岐路に配置されていて、他方の出力分岐路においては単に吸振器(Tilger)として作用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】力伝達装置の一部を軸線を含む平面で断面して、本発明による振動減衰装置を概略的に示す図である。
【図2】図1に示された振動減衰装置の別の実施例を示す図である。
【図3】図1に示された構成において、ころがり軸受によって支承された対応エレメントを備えた構成を示す図である。
【図4】図3に示された実施例の変化実施例を示す図であって、ころ軸受を備えた構成を示す図である。
【図5】図3及び図4に示された実施例のさらに別の実施例を示す図である。
【図6】本発明による振動減衰装置の緩衝特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0036】
1 力伝達装置、 2 振動減衰装置、 3 一次部分、 4 二次部分、 5 トルク伝達手段、 6 緩衝連結手段、 7 ボス、 8 ランプ、 9,9.1,9.11,9.12,9.3,9.4 対応エレメント、 10,10.1,10.11,10.12 ランプ金属薄板、 11 予負荷可能なユニット、 12 ばねエレメント、 13 接続エレメント、 14 伝動装置入力軸、 15 フランジ、 16 金属薄板エレメント、 17,18 歯列エレメント、 19 内周部、 20 部分領域、 21 外周部、 22 部分領域、 23 ダイヤフラムばね、 24 接触面、 25 カラー、 26 接触面、 27 エレメント、 28 玉軸受、 29 金属薄板エレメント、 30 ころ軸受、 31 圧縮ばね、 32 ばねユニット、 R 回転軸、 S 移動距離、 β 回転角、 LU ロックアップ装置、 M トルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動減衰装置(2)、特にトーション振動ダンパであって、少なくとも一次部分(3)と二次部分(4)とが設けられていて、該一次部分(3)と二次部分(4)とが互いに同軸的に配置されていて、周方向において互いに相対的に制限されて回動可能であり、さらに一次部分(3)と二次部分(4)とがトルク伝達手段(5)と緩衝連結手段(6)とを用いて互いに連結されており、二次部分(4)が少なくとも間接的に、接続エレメント、特に伝動装置入力軸(14)と連結可能である形式のものにおいて、
ランプ(8)が設けられていて、該ランプ(8)が少なくとも間接的に二次部分(4)と結合されていて、周方向において二次部分(4)の部分領域にわたって延びていて軸方向において変化する勾配を備えて形成されており、ランプ(8)がさらに、予負荷ユニット(11)を介して接続エレメント(13)に支持されかつ軸方向においてシフト可能に支承された少なくとも1つの対応エレメント(9,9.1,9.11,9.12,9.3,9.4)に対して作用することを特徴とする振動減衰装置(2)。
【請求項2】
二次部分(4)とランプ(8)との間における結合が、フランジ(15)を介して行われ、該フランジ(15)が回動不能にかつ周方向においては遊びをもって、ボス(7)の形の接続エレメントと結合されている、請求項1記載の振動減衰装置(2)。
【請求項3】
フランジ(15)が二次部分(4)と一体的に形成されている、請求項2記載の振動減衰装置(2)。
【請求項4】
フランジ(15)が別体のエレメントとして形成されていて、該エレメントが二次部分(4)と回動不能に結合されている、請求項2記載の振動減衰装置(2)。
【請求項5】
フランジ(15)が一体的に形成されていて、ランプ(8)の機能がフランジ(15)に組み込まれている、請求項2から4までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項6】
フランジ(15)が複数部分から構成されていて、ランプ(8)の機能が、フランジ(15)と回動不能に結合されたエレメントによって加えられる、請求項2から4までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項7】
軸方向においてランプ(8)の両側に各1つの対応エレメント(9,9.1,9.11,9.12,9.3,9.4)が配属もしくは対応配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項8】
1つの対応エレメント(9,9.1,9.11,9.12)が、滑り軸受によって支承されたエレメントとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項9】
対応エレメント(9,9.1,9.11,9.12)が、軸方向においてランプ(8)の片側に配属もしくは対応配置された少なくとも1つのランプ金属薄板(10,10.1,10.11,10.12)を有している、請求項8記載の振動減衰装置(2)。
【請求項10】
対応エレメント(9.3,9.4)がころがり軸受によって支承されたエレメントとして形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項11】
対応エレメント(9.3,9.4)が、軸方向においてランプ(8)に配属もしくは対応配置された少なくとも1つの玉軸受(28)を有している、請求項10記載の振動減衰装置(2)。
【請求項12】
対応エレメント(9.3,9.4)が、少なくとも1つのころ軸受(30)を有している、請求項10又は11記載の振動減衰装置(2)。
【請求項13】
予負荷ユニット(11)が少なくとも1つの皿ばね(23,23.1,23.2)を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項14】
予負荷ユニット(11)が少なくとも1つの圧縮ばねを有している、請求項1から13までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項15】
接続エレメントが予負荷ユニット(11)を介した支持のためにボス(7)によって形成される、請求項1から14までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項16】
ボス(7)が一体的に形成されている、請求項15記載の振動減衰装置(2)。
【請求項17】
ボス(7)が複数部分から形成されている、請求項15記載の振動減衰装置(2)。
【請求項18】
支持エレメントが位置固定の接続エレメントによって形成される、請求項1から15までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項19】
緩衝率が、ランプ勾配の関数として及び/又は緩衝連結手段(6)のばね定数の関数として形成される、請求項1から18までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項20】
トルク伝達手段(5)がばねユニット(32)によって形成される、請求項1から19までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項21】
緩衝連結手段(6)がばねユニット(32)によって形成される、請求項1から20までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項22】
緩衝連結手段(6)が、緩衝媒体によって満たされた室によって形成される、請求項1から20までのいずれか1項記載の振動減衰装置(2)。
【請求項23】
1つの入力部と少なくとも1つの出力部とを備えた車両において使用するための力伝達装置(1)であって、ハイドロダイナミック式の構成部材と、該ハイドロダイナミック式の構成部材をロックアップする装置(LU)と、請求項1から22までのいずれか1項記載の少なくとも1つの振動減衰装置(2)とを有している力伝達装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−309335(P2008−309335A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156394(P2008−156394)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】